(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04M 3/42 20060101AFI20220803BHJP
H04W 16/14 20090101ALI20220803BHJP
H04W 4/16 20090101ALI20220803BHJP
【FI】
H04M3/42 101
H04W16/14
H04W4/16
(21)【出願番号】P 2018174829
(22)【出願日】2018-09-19
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 久太
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-339712(JP,A)
【文献】特開2013-162142(JP,A)
【文献】特開2004-072241(JP,A)
【文献】特開2014-241550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B23/00-31/00
H04B7/24-7/26
H04H20/00-20/46
20/51-20/86
20/91-40/27
40/90-60/98
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作卓と、
第1の基地局と、
前記第1の基地局と通信方式が異なる第2の基地局と、
前記第1の基地局の配下の複数の第1の子局施設と、
前記第2の基地局の配下の第2の子局施設と、を含み、
前記操作卓は、
前記第1の基地局へ音声を通報すると同時に、前記音声を録音し、
前記第1の基地局への通報が完了した後、前記録音した音声を前記第2の基地局へ通報する処理を実行
し、
前記第2の基地局への通報の終話後、前記複数の第1の子局施設の監視呼出を開始し、
前記複数の第1の子局施設からの監視応答を受信した後、前記第2の子局施設の監視呼出を行う、
無線通信システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の基地局が送信する信号と前記第2の基地局が送信する信号は、同一または近傍の周波数帯である、無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信システムに関し、特に、複数の基地局を通報に使用するデジタル同報通信システムに適用可能である。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムの1つに、デジタル同報通信システムがある。デジタル同報通信システムは市町村単位で整備されるシステムで、市役所等に設置される親局設備と住民らの世帯側に設置される子局設備を持ち、親局設備から子局設備に対し音声による通報で防災情報や住民へのお知らせを行うシステムである。
図1は、このシステムの構成例である。無線通信システム10は、自治体職員(ユーザともいう)Aが操作する操作卓20と基地局1とを含み、市役所等に設置される親局設備(操作卓20、基地局1)と、住民らBの世帯側に設置される子局設備30と、を有する。本システムの親局設備(操作卓20、基地局1)は、子局設備30に対し、音声やデータを送信することで、防災情報を通報する。このようなシステムには、以下の無線規格が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「市町村デジタル同報通信システム ARIB-STD-T86」社団法人電波産業会
【文献】「市町村デジタル同報通信システム TYPE2 ARIB-STD-T115」社団法人電波産業会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デジタル同報通信システムにおいて、複数の基地局を近接して配置する場合、互いの干渉を考慮しなければならない。
【0005】
一方で、ユーザによるサービスエリア構築の希望や無線規格の異なるシステムを併用運用する場合には、基地局の設置場所の制限やサービスエリアを確保する都合上、異なる無線規格の基地局同士の物理的な配置は隣接とする必要がある。
【0006】
しかし、各システムが使用できる周波数は、電波の有効利用の都合上、互いの周波数が干渉しないような近傍でない周波数を選定できない場合もあり、この場合同一または近傍の周波数を使用しなければならない。
【0007】
このとき、1つの操作卓で両システムの基地局の呼出制御を行う場合、呼出信号を送出するタイミングが同時となるため、同一または近傍の周波数を使用すると干渉する。
【0008】
また、システム毎に1つの操作卓を割当て、システム毎に基地局の呼出制御を行う場合、基地局間で信号の干渉は起こらなくなるが、ユーザは複数の操作卓を操作しなければならないため、操作が煩雑になる。
【0009】
本開示の課題は、異なる通信方式が混在した無線通信システムにおいて、1台の操作卓を用いて1度の操作で両システムの放送ができる技術を提供することにある。
【0010】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0012】
すなわち、無線通信システムは、操作卓と、第1の基地局と、前記第1の基地局と通信方式が異なる第2の基地局と、を含む。前記操作卓は、前記第1の基地局へ音声を通報すると同時に、前記音声を録音する。前記操作卓は、前記第1の基地局への通報が完了した後、前記録音した音声を前記第2の基地局へ通報する処理を実行する。
【発明の効果】
【0013】
上記無線通信システムによれば、異なる通信方式が混在した無線通信システムであっても、1台の操作卓を用いて、1度の操作で、第1の基地局と第2の基地局とに放送することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】デジタル同報通信システムの構成例を説明する図である。
【
図2】実施形態に係る2つの無線規格が混在する無線通信システムを示す図である。
【
図3】1つの基地局でカバーしていた通信範囲を示す図である。
【
図4】2つの基地局でカバーする通信範囲を示す図である。
【
図5】比較例1に係る通信シーケンスを示す図である。
【
図6】比較例2に係る通信シーケンスを示す図である。
【
図7】実施形態に係る通信シーケンスを示す図である。
【
図8】比較例に係る子局施設の監視を行う場合の通信シーケンスを示す図である。
【
図9】実施形態に係る子局施設の監視を行う場合の通信シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態および比較例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0016】
図2は、実施形態に係る2つの無線規格が混在する無線通信システムを示す図である。
【0017】
変調方式の違う2つの無線規格(STD-T86、STD-T115)は、同じ周波数帯を使用するが、無線区間上の互換性はない。自治体は基本的にはどちらかの規格を採用し、防災無線設備を整備するが、自治体の整備状況によっては、
図2に示すように、両規格(STD-T86、STD-T115)が混在した整備をすることも考えられる。
【0018】
図3は、1つの基地局でカバーしていた通信範囲を示す図であり、
図4は2つの基地局でカバーする通信範囲を示す図である。
図3に示す通信範囲(サービスエリア)に、
図4に示すように、基地局1、2を複数台設することにより、両規格(STD-T86、STD-T115)が混在した基地局1、2を整備することが可能である。
図4の場合、基地局1、2はサービスエリア構築のために隣接した設置となる。この際、1つの操作卓20で複数の基地局1、2を呼出制御しようとすると、同時に、基地局1、2に呼出信号の送出を行う。しかし、周波数が同一または近傍の場合だと、周波数が互いに干渉するため、子局設備(30、31)との通信を行うことが出来ない。
【0019】
図5は、比較例1に係る通信シーケンスを示す図である。比較例1では、1つの操作卓20で複数の基地局1、2を呼出制御(呼出操作)し、子局設備(30,31)へ音声を送話している。
図5のシーケンスにおいて、操作卓20は、同時に、基地局1、2に呼出信号の送出を行う(S60参照)。
【0020】
この場合、周波数が異なる場合は、子局設備(30、31)との通信を行うことが出来る。しかし、周波数が同一または近傍の場合だと、周波数が互いに干渉するため、子局設備(30、31)との通信を行うことが出来ない。
【0021】
図6は、比較例2に係る通信シーケンスを示す図である。比較例2では、複数の操作卓(20、20a)を設け、操作卓と基地局とを1:1(操作卓20と基地局1、操作卓20aと基地局2)で対応させることで、時間をずらして音声を送話している。
【0022】
この場合、ユーザ(A)が所望する一つの通報に対し、複数回操作卓で呼出操作(70、70a)する必要があるため、操作が煩雑となる。
【0023】
図7は、実施形態に係る通信シーケンスを示す図である。
図7の通信シーケンスは、1つの操作卓20に対して複数の基地局(1~n)が設けられた場合の通信シーケンスを示している。なお、
図7では、図面の簡素化の為、基地局1、2のみが示される。また、基地局1と基地局1の受信対象(子局設備)30が使用する無線規格と、基地局2と基地局2の受信対象(子局設備)31が使用する無線規格は、異なる無線規格であるが、同一または近傍の周波数帯を使用する。また、同様に、基地局1と基地局1の受信対象(子局設備)30が使用する無線規格と、他の基地局(3~n)と基地局(3~n)の受信対象(子局設備)が使用する無線規格とは、異なる無線規格であるが、同一または近傍の周波数帯を使用する。
【0024】
以下、通信シーケンスを説明する。
ユーザAは、操作卓20に対し、呼出操作をする(ステップS1)。
操作卓20は、基地局1に対して呼出電文を送出する(ステップS2)。
基地局1は、基地局1の配下の受信対象(子局設備)30に対し、呼出電文を送出する(ステップS3)。
基地局1は操作卓20に対し、通報可電文を送出する(ステップS4)。
操作卓20は、基地局1への音声経路を開設し、ユーザAは音声送話を行う(ステップS5)。
音声は基地局1を経由し、受信対象30まで伝達される(ステップS6)。
操作卓20は、送話された音声を送話と同時に録音する(ステップS7)。
ユーザAは、音声送話が終わったのち、終話操作を操作卓20に対して行う(ステップS8)。
操作卓20は基地局1へ終話電文を送出する(ステップS9)。
基地局1は、基地局1の配下の受信対象(子局設備)30に対し、終話電文を送出する(ステップS10)。
【0025】
操作卓20は、待受け状態となったのち、ユーザAの操作なしに、次の基地局2に対して、呼出電文を送出する(ステップS11)。
基地局2は、基地局2の配下の受信対象(子局設備)31に対し、呼出電文を送出する(ステップS12)。
基地局2は、操作卓20に対し、通報可電文を送出する(ステップS13)。
操作卓20は、基地局2への音声経路を開設する。操作卓20は基地局1の音声送話時に録音しておいた音声を再生する(ステップS14)。
再生された音声は、基地局2を経由し、受信対象31まで伝達される(ステップS15)。
操作卓20は音声送話が終わったのち、基地局2へ終話電文を送出する(ステップS16)。
基地局2は基地局2の配下の受信対象(子局設備)31に対し、終話電文を送出する(ステップS17)。
以降、呼出対象となるすべての受信対象の通報を終えるまで、ステップS11~ステップS17を繰り返す(ステップS18)。
【0026】
以上のようにして、操作卓20からの基地局(1-n)の制御において、基地局(1~n)を呼び出すためのタイミングを基地局(1-n)毎に制御する。
【0027】
ユーザAによる呼出操作の後に、第1の基地局(1)の呼出信号を送出し、第1の基地局(1)の受信対象となる子局設備30への通報を実施する。この通報の音声送話の際に、操作卓20に、ユーザAの送話した音声を録音する。
【0028】
ユーザAが終話操作した後、第1の基地局(1)の受信対象となる子局30への通報を終話する。操作卓20は、自発的に第2の基地局(2)への呼出を開始する。このとき、ユーザAにとっては、第2の基地局(2)の受信対象の子局設備31へも同一の内容を通報するので、音声送話は第1の基地局(1)の音声送話で録音しておいた音声を再生する。再生音声とすることで、ユーザAは1度の操作卓20の操作をするだけで、複数の基地局(1~n)への音声送話を行うことが出来る。音声の再生が終了した後、操作卓20は自発的に終話信号を送出する。これを、操作卓20に接続されている基地局の数分繰返し行う。
【0029】
したがって、異なる通信方式(STD-T86、STD-T115)が混在した無線通信システム10であっても、1台の操作卓20を用いて、1度の操作で、第1の基地局(1)と第2の基地局(2)とに放送することが可能である。
【0030】
図8は、比較例に係る子局施設の監視を行う場合の通信シーケンスを示す図である。
【0031】
図8に示す例では、子局設備30、32が基地局1の配下の子局設備であり、子局設備31が基地局2の配下の子局設備である場合を示している。また、子局設備30、31、32には、この順に、子局番号として、1、2、3が割り当てられているものとする。また、n個の基地局(1-n)が設けられているが、
図8では、基地局1、2のみが記載されている。
【0032】
図8に示すように、子局設備(30、31、32)の監視を行う場合、子局の番号順に監視していくことが考えられる。このシステム構成の場合、子局設備(30、31、32)の番号毎に送信する基地局(1、2)を切り替えなければならず(S90,S91,S92を参照)、切り替え時間が増大し、監視による無線通信システムの通信シーケンスが多くなり、結果としてシステムの占有時間が大きくなってしまうという課題があった。
【0033】
図9は、実施形態に係る子局施設の監視を行う場合の通信シーケンスを示す図である。
図9に示す例では、
図8と同様に、子局設備(30、32)が基地局(1)の配下の第1の子局設備であり、子局設備(31)が基地局(2)の配下の第2の子局設備である場合を示している。また、子局設備30、31、32には、この順に、子局番号として、1、2、3が割り当てられているものとする。また、n個の基地局(1-n)が設けられているが、
図9では、
図8と同様に、基地局1、2のみが記載されている。また、基地局1と基地局1の受信対象(子局設備)30、32が使用する無線規格と、基地局2と基地局2の受信対象(子局)31が使用する無線規格は、異なる無線規格であるが、同一または近傍の周波数帯を使用する。また、同様に、基地局1と基地局1の受信対象(子局設備)30、32が使用する無線規格および基地局2と基地局2の受信対象(子局)31が使用する無線規格と、他の基地局(3~n)と基地局(3~n)の受信対象(子局設備)が使用する無線規格とは、異なる無線規格であるが、同一または近傍の周波数帯を使用する。
【0034】
呼出信号動作までは、
図7と同様である。基地局2の通報の終話後に、基地局毎の監視呼出を開始するようにする。
【0035】
ステップS101:操作卓20は基地局1を介して受信対象30へ監視要求を送信する。
ステップS102:受信対象30は、操作卓20へ基地局1を介して、監視応答を返送する。
ステップS103:操作卓20は、基地局1を介して受信対象32へ監視要求を送信する。
ステップS104:受信対象32は、操作卓20へ基地局1を介して、監視応答を返送する。
ステップS105:操作卓20は、基地局2を介して受信対象31へ監視要求を送信する。
ステップS106:受信対象31は、操作卓20へ基地局2を介して、監視応答を返送する。
以降、基地局3~nの受信対象の監視が完了するまで、基地局を切替えて繰り返し行われる。
つまり、操作卓20は、基地局2への通報の終話後、基地局1の配下の複数の第1の子局施設30,32への監視呼出を開始し、複数の第1の子局施設30、32からの監視応答を受信した後、基地局2の配下の第2の子局施設31への監視呼出を行う。
【0036】
このように、基地局毎(基地局配下毎)の監視呼出(監視要求)を開始することにより、子局設備の監視も効率よく行うことが出来る。そのため、全体のシステム占有時間を削減することができる。
【0037】
実施形態によれは、以下の1または複数の効果を得ることができる。
【0038】
1)同一周波数の信号を送信し、通信方式がそれぞれ異なる複数の基地局において、干渉することなく、通報を行うことが出来るようになる。
【0039】
2)ユーザは、基地局毎に操作を実行せずとも、一度の操作卓での操作で、通報を行うことが出来るようになる。
【0040】
3)子局設備の監視も効率よく行うことが出来る。
【0041】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1、2:基地局
20:操作卓
30、31、32:子局施設
A:自治体職員(ユーザ)
B:住民