(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】光酸発生剤及びフォトリソグラフィー用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20220803BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20220803BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20220803BHJP
C07D 221/14 20060101ALN20220803BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
C09K3/00 K
C07D221/14
(21)【出願番号】P 2018219017
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000106139
【氏名又は名称】サンアプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118061
【氏名又は名称】林 博史
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 智幸
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-535595(JP,A)
【文献】国際公開第2016/043558(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/110399(WO,A1)
【文献】特開2018-112670(JP,A)
【文献】特開2018-091939(JP,A)
【文献】特表2018-523640(JP,A)
【文献】特開2017-037300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/039
C09K 3/00
C07D 221/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする非イオン系光酸発生剤(A)。
【化1】
[式(1)中、Xは酸素原子、又は硫黄原子、R1は水素原子、又はカルボン酸基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、R2は水素原子、又は炭素数1~12のアルキル基、Rfは水素の一部又は全部がフッ素で置換されている炭素数1~12の炭化水素基を表す。]
【請求項2】
一般式(1)において、RfがCF
3,C
2F
5、C
3F
7、C
4F
9、またはC
6F
5である請求項1に記載の非イオン系光酸発生剤(A)。
【請求項3】
一般式(1)において、R2が水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基である請求項1又は2に記載の非イオン系光酸発生剤(A)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の非イオン系光酸発生剤(A)を含むフォトリソグラフィー用樹脂組成物(Q)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光酸発生剤及びフォトリソグラフィー用樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、紫外線(i線)を作用させて強酸を発生させるのに適する非イオン系光酸発生剤、及びそれを含有するフォトリソグラフィー用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体の製造に代表される微細加工の分野では、露光光として波長365nmのi線を用いたフォトリソグラフィー工程が広く用いられている。
フォトリソグラフィー工程に用いられるレジスト材料としては、例えば、カルボン酸のtert-ブチルエステル基、又はフェノールのtert-ブチルカーボネート基を有する重合体と光酸発生剤とを含有する樹脂組成物が用いられている。光酸発生剤として、トリアリールスルホニウム塩(特許文献1)、ナフタレン骨格を有するフェナシルスルホニウム塩(特許文献2)等のイオン系光酸発生剤、及びオキシムスルホネート構造を有する酸発生剤(特許文献3)、スルホニルジアゾメタン構造を有する酸発生剤(特許文献4)等の非イオン系酸発生剤が知られている。さらに露光後加熱(PEB)を行うことで、この強酸により重合体中のtert-ブチルエステル基、又はtert-ブチルカーボネート基が解離し、カルボン酸、又はフェノール性水酸基が形成され、紫外線照射部がアルカリ現像液に易溶性となる。この現象を利用してパターン形成が行われている。
【0003】
しかしフォトリソグラフィー工程がより微細加工になるに従い、アルカリ現像液により未露光部のパターンが膨潤する膨れの影響が大きくなり、レジスト材料の膨潤を抑制する必要がある。
これらを解決するためにレジスト材料中の重合体に脂環式骨格、又はフッ素含有骨格等を含有させ疎水性にすることで、レジスト材料の膨潤を抑制する方法が提案させている。
【0004】
これら脂環式骨格、及びフッ素含有骨格等を含有する疎水性材料に対し、イオン系光酸発生剤は相溶性が不足しているため、レジスト材料中で相分離するため十分なレジスト性能を発揮できず、パターン形成できない問題がある。一方、非イオン系光酸発生剤は疎水性材料に対する相溶性が良好であるが、アルカリ現像工程において露光部にスカムが生じる問題がある。またi線に対する感度が不足する問題、及び耐熱安定性が不足するため露光後加熱(PEB)で分解するためアローアンスが狭い問題をもつ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭50-151997号公報
【文献】特開平9-118663号公報
【文献】特開平6-67433号公報
【文献】特開平10-213899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、i線に高い光感度を有し、レジスト溶液への相溶性及び溶解性に優れ、また耐熱安定性に優れる非イオン系光酸発生剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする非イオン系光酸発生剤(A);及び該非イオン系光酸発生剤(A)を含むフォトリソグラフィー用樹脂組成物(Q)である。
【0008】
【0009】
[式(1)中、Xは酸素原子、又は硫黄原子、R1は水素原子、又はカルボン酸基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、R2は水素原子、又は炭素数1~12のアルキル基、Rfは水素の一部又は全部がフッ素で置換されている炭素数1~12の炭化水素基を表す。]
【発明の効果】
【0010】
本発明の非イオン系光酸発生剤(A)は、非イオン系であるナフタルイミド骨格上にエーテル基、またはチオエーテル基を持ちナフタレン環上の電子状態に作用することができるため、i線に対し非常に高い吸収を持ち高感度となる。これによりi線を照射することで非イオン系光酸発生剤(A)は容易に分解し、強酸であるスルホン酸を発生することができる。また側鎖にエステル構造を持つためPGMEA等エステル構造を有する溶剤への溶解性が優れる。またエーテル基、又はチオエーテル基とC=O基が炭素数1の距離で近接しているため、金属基板への配向性に優れ、レジストパターン形状の形成性に優れる。
併せてナフタルイミド骨格を有するため、200℃以上の熱分解温度を持ち熱安定性に優れ、露光後加熱(PEB)を行うことができる。
【0011】
このため本発明の非イオン系光酸発生剤(A)を含有するフォトリソグラフィー用樹脂組成物(Q)は、i線に対する感度が優れ、またレジスト溶液への相溶性、および溶解性が良好である。また露光後加熱(PEB)での許容幅が広いため作業性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の非イオン系酸発生剤(A)は下記一般式(1)で表される。
【0013】
【0014】
[式(1)中、Xは酸素原子、又は硫黄原子、R1は水素原子、又はカルボン酸基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、R2は水素原子、又は炭素数1~12のアルキル基、Rfは水素の一部又は全部がフッ素で置換されている炭素数1~12の炭化水素基を表す。]
【0015】
Xは酸素原子、又は硫黄原子であるため、ナフタレン環上の電子状態に作用し、i線に対し、非常に高い吸収を持たせることができる。
【0016】
R1は水素原子、又はカルボン酸基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基を表す。
炭素数1~12のアルキル基としては、直鎖のアルキル基、および分岐のアルキル基、環状のアルキル基があげられる。
【0017】
直鎖アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デカン基、及びドデカン基等が挙げられる。
分岐のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、及び2-エチルヘキシル基等が挙げられる。
環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及び3-メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0018】
カルボン酸基を有する炭素数1~12のアルキル基としては、例えば、カルボキシメチル基、2-カルボキシエチル基、4-カルボキシブチル基、2-カルボキシブチル基、6-カルボキシヘキシル基、3-カルボキシヘプタン基、4-カルボキシシクロヘキシル基、4-カルボキシメチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0019】
これらR1のうち、溶剤溶解性の観点、及び合成の容易さの観点から、好ましくは、水素原子、及び炭素数1~12のアルキル基、さらに好ましくは、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、特に好ましくは水素原子、及び直鎖の炭素数1~8のアルキル基である。
【0020】
R2は水素原子、又は炭素数1~12のアルキル基を表す。
炭素数1~12のアルキル基としては、直鎖のアルキル基、分岐のアルキル基、及び環状のアルキル基があげられる。直鎖のアルキル基、分岐のアルキル基、及び環状のアルキル基としては、上記と同様のものが使用できる。
【0021】
これらR2のうち、レジストパターンの形状の観点から、好ましくは、水素原子、及び炭素数1~8のアルキル基、さらに好ましくは、水素原子、及び炭素数1~4のアルキル基、特に好ましくは水素原子、及びtert-ブチル基である。
【0022】
Rfは水素の一部又は全部がフッ素で置換されている炭素数1~12の炭化水素基である。Rfの水素の一部又は全部がフッ素で置換されているため、十分な光感度を有するとともに、強酸を発生することができる。
【0023】
炭素数1~12の炭化水素基の水素の一部又は全部がフッ素で置換された基としては、CxFyで表される水素原子がフッ素原子で置換された直鎖アルキル基(Rf1)、分岐鎖アルキル基(Rf2)、シクロアルキル基(Rf3)、及びアリール基(Rf4)等が挙げられる。
【0024】
水素原子がフッ素原子で置換された直鎖アルキル基(Rf1)としては、例えば、トリフルオロメチル基(x=1,y=3)、ペンタフルオロエチル基(x=2,y=5)、ヘプタフルオロプロピル基(x=3,y=7)、ノナフルオロブチル基(x=4,y=9)、パーフルオロヘキシル基(x=6,y=13)、及びパーフルオロオクチル基(x=8,y=17)等が挙げられる。
【0025】
水素原子がフッ素原子で置換された分岐鎖アルキル基(Rf2)としては、例えば、パーフルオロイソプロピル基(x=3,y=7)、パーフルオロ-tert-ブチル基(x=4,y=9)、及びパーフルオロ-2-エチルヘキシル基(x=8,y=17)等が挙げられる。
【0026】
水素原子がフッ素原子で置換されたシクロアルキル基(Rf3)としては、例えば、パーフルオロシクロブチル基(x=4,y=7)、パーフルオロシクロペンチル基(x=5,y=9)、パーフルオロシクロヘキシル基(x=6,y=11)、及びパーフルオロ(1-シクロヘキシル)メチル基(x=7,y=13)等が挙げられる。
【0027】
水素原子がフッ素原子で置換されたアリール基(Rf4)としては、例えば、ペンタフルオロフェニル基(x=6,y=5)、及び3-トリフルオロメチルテトラフルオロフェニル基(x=7,y=7)等が挙げられる。
【0028】
Rfのうち、スルホン酸エステル部分の分解性、フォトレジストの脱保護性、および原料の入手のしやすさの観点から、好ましくは、水素原子がフッ素原子で置換された直鎖アルキル基(Rf1)、及びアリール基(Rf4)であり、さらに好ましくはトリフルオロメチル基(x=1,y=3)、ペンタフルオロエチル基(x=2,y=5)、ヘプタフルオロプロピル基(x=3,y=7)、ノナフルオロブチル基(x=4,y=9)、及びペンタフルオロフェニル基(x=6,y=5)であり、特に好ましくはトリフルオロメチル基(x=1,y=3)である。
【0029】
本発明の非イオン系光酸発生剤(A)を構成する置換基{-X-CH(R1)-COO-R2}の結合位置は特に制限はないが、2位に持たせることで貯蔵安定性(クエンチャーアミン耐性)、3位に持たせることで量子収率、4位に持たせることでモル吸光係数を向上することができる。
置換基{-X-CH(R1)-COO-R2}結合位置としては、合成面、及び感度面から、3位、又は4位が好ましい。
【0030】
本発明の非イオン系光酸発生剤(A)の合成方法は目的物を合成できれば特に限定はされないが、例えば、3-ヒドロキシ-1,8-ナフタル酸無水物と下記一般式(2)の化合物、又は4-ブロモ-ヒドロキシ-1,8-ナフタル酸無水物と下記一般式(3)の化合物等を反応させて得られる前駆体(P1)にヒドロキシルアミンを反応させる。ついで対応するスルホン酸無水物又はスルホン酸クロリドを反応させることによって合成できる。
【0031】
【0032】
[式(2)中、R1は水素原子、又はカルボン酸基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、R2は水素原子、又は炭素数1~12のアルキル基、Halは塩素、臭素、又はヨウ素を表す。]
【0033】
【0034】
[式(3)中、R1は水素原子、又はカルボン酸基を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、R2は水素原子、又は炭素数1~12のアルキル基を表す。SHはチオール基を表す。]
【0035】
3-ヒドロキシ-1,8-ナフタル酸無水物と一般式(2)の化合物、又は4-ブロモ-ヒドロキシ-1,8-ナフタル酸無水物と一般式(3)の化合物等との反応条件としては、温度-30~100℃にて1~50時間であり、反応を速やかに収率良く完結するために、反応溶媒、及び塩基触媒を使用することが好ましい。
反応溶媒としては特に限定されるものではないが、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム等が好ましい。塩基触媒としては、例えば、ピリジン、メチルモルホリン、ジメチルアミノピリジン、2,6-ルチジン、トリエチルアミン、イミダゾール、DBU、水素化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等が好ましく、通常3-ヒドロキシ-1,8-ナフタル酸無水物に対し、1~100mol%を添加する。
3-ヒドロキシ-1,8-ナフタル酸無水物と一般式(2)の化合物、又は4-ブロモ-ヒドロキシ-1,8-ナフタル酸無水物と一般式(3)の化合物等のモル比は、通常、1:1~1:4で行う。
【0036】
前駆体(P1)にヒドロキシルアミンを反応させ、ついで対応するスルホン酸無水物又はスルホン酸クロリドを反応させて得られる本発明の非イオン系光酸発生剤(A)は、必要に応じて適当な有機溶媒で再結晶することで精製することができる。
【0037】
本発明の非イオン系光酸発生剤(A)は、レジスト材料への溶解を容易にするため、あらかじめ反応を阻害しない溶剤に溶かしておいてもよい。
【0038】
溶剤としては、カーボネート(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネート等);エステル(酢酸エチル、乳酸エチル、β-プロピオラクトン、β―ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン及びε-カプロラクトン等);エーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等);及びエーテルエステル(エチレングリコールモノメチルエーテル酢酸エステル、プロピレングリコールモノエチルエーテル酢酸エステル及びジエチレングリコールモノブチルエーテル酢酸エステル等)等が挙げられる。
【0039】
溶剤を使用する場合、溶剤の使用割合は、本発明の光酸発生剤100重量部に対して、15~1000重量部が好ましく、さらに好ましくは30~500重量部である。
【0040】
本発明のフォトリソグラフィー用樹脂組成物(Q)は、非イオン系光酸発生剤(A)を必須成分として含むため、紫外線照射及び露光後加熱(PEB)を行うことで、露光部と未露光部の現像液に対する溶解性に差がつく。非イオン系光酸発生剤(A)は1種単独、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
フォトリソグラフィー用樹脂組成物(Q)としては、ネガ型化学増幅樹脂(QN)と非イオン系光酸発生剤(A)との混合物;及びポジ型化学増幅樹脂(QP)と非イオン系光酸発生剤(A)との混合物が挙げられる。
【0041】
ネガ型化学増幅樹脂(QN)としては、フェノール性水酸基含有樹脂(QN1)と架橋剤(QN2)から構成される。
【0042】
フェノール性水酸基含有樹脂(QN1)としてはフェノール性水酸基を含有している樹脂であれば特に制限はなく、例えば、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシスチレンの共重合体、ヒドロキシスチレンとスチレンの共重合体、ヒドロキシスチレン、スチレン及び(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、フェノール-キシリレングリコール縮合樹脂、クレゾール-キシリレングリコール縮合樹脂、フェノール-性水酸基を含有するポリイミド、フェノール性水酸基を含有するポリアミック酸、フェノール-ジシクロペンタジエン縮合樹脂等が用いられる。これらのなかでも、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシスチレンの共重合体、ヒドロキシスチレンとスチレンの共重合体、ヒドロキシスチレン、スチレン及び(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、フェノール-キシリレングリコール縮合樹脂が好ましい。尚、これらのフェノール性水酸基含有樹脂(QN1)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
上記ノボラック樹脂は、例えば、フェノール類とアルデヒド類とを触媒の存在下で縮合させることにより得ることができる。
上記フェノール類としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、α-ナフトール、β-ナフトール等が挙げられる。
また、上記アルデヒド類としてはホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0044】
具体的なノボラック樹脂としては、例えば、フェノール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、フェノール-ナフトール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂等が挙げられる。
【0045】
また、上記フェノール性水酸基含有樹脂(QN1)には、成分の一部としてフェノール性低分子化合物が含有されていてもよい。
上記フェノール性低分子化合物としては、例えば、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,3-ビス[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]ベンゼン、1,4-ビス[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]ベンゼン、4,6-ビス[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]-1,3-ジヒドロキシベンゼン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-〔1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル〕フェニル]エタン、1,1,2,2-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’-{1-[4-〔1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール等が挙げられる。これらのフェノール性低分子化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
このフェノール性低分子化合物のフェノール性水酸基含有樹脂(QN1)中における含有割合は、フェノール性水酸基含有樹脂(QN1)を100重量%とした場合、40重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1~30重量%である。
【0047】
フェノール性水酸基含有樹脂(QN1)の重量平均分子量は、得られる絶縁膜の解像性、熱衝撃性、耐熱性、残膜率等の観点から、2000以上であることが好ましく、より好ましくは2000~20000程度である。
また、ネガ型化学増幅樹脂(QN)中におけるフェノール性水酸基含有樹脂(QN1)の含有割合は、溶剤を除いた組成物の全体を100重量%とした場合に、30~90重量%であることが好ましく、より好ましくは40~80重量%である。このフェノール性水酸基含有樹脂(QN1)の含有割合が30~90重量%である場合には、感光性絶縁樹脂組成物を用いて形成された膜がアルカリ水溶液による十分な現像性を有しているため好ましい。
【0048】
架橋剤(QN2)としては、非イオン系光酸発生剤(A)から発生した強酸によりフェノール性水酸基含有樹脂(QN1)を架橋し得る化合物であれば特に限定されない。
【0049】
架橋剤(QN2)としては、例えば、ビスフェノールA系エポキシ化合物、ビスフェノールF系エポキシ化合物、ビスフェノールS系エポキシ化合物、ノボラック樹脂系エポキシ化合物、レゾール樹脂系エポキシ化合物、ポリ(ヒドロキシスチレン)系エポキシ化合物、オキセタン化合物、メチロール基含有メラミン化合物、メチロール基含有ベンゾグアナミン化合物、メチロール基含有尿素化合物、メチロール基含有フェノール化合物、アルコキシアルキル基含有メラミン化合物、アルコキシアルキル基含有ベンゾグアナミン化合物、アルコキシアルキル基含有尿素化合物、アルコキシアルキル基含有フェノール化合物、カルボキシメチル基含有メラミン樹脂、カルボキシメチル基含有ベンゾグアナミン樹脂、カルボキシメチル基含有尿素樹脂、カルボキシメチル基含有フェノール樹脂、カルボキシメチル基含有メラミン化合物、カルボキシメチル基含有ベンゾグアナミン化合物、カルボキシメチル基含有尿素化合物及びカルボキシメチル基含有フェノール化合物等を挙げることができる。
【0050】
これら架橋剤(QN2)のうち、メチロール基含有フェノール化合物、メトキシメチル基含有メラミン化合物、メトキシメチル基含有フェノール化合物、メトキシメチル基含有グリコールウリル化合物、メトキシメチル基含有ウレア化合物及びアセトキシメチル基含有フェノール化合物が好ましく、さらに好ましくはメトキシメチル基含有メラミン化合物(例えばヘキサメトキシメチルメラミン等)、メトキシメチル基含有グリコールウリル化合物及びメトキシメチル基含有ウレア化合物等である。メトキシメチル基含有メラミン化合物は、CYMEL300、CYMEL301、CYMEL303、CYMEL305(三井サイアナミッド(株)製)等の商品名で、メトキシメチル基含有グリコールウリル化合物はCYMEL1174(三井サイアナミッド(株)製)等の商品名で、またメトキシメチル基含有ウレア化合物は、MX290(三和ケミカル(株)製)等の商品名で市販されている。
【0051】
架橋剤(QN2)の含有量は、残膜率の低下、パターンの蛇行や膨潤及び現像性の観点から、フェノール性水酸基含有樹脂(QN1)中の全酸性官能基に対して、通常、5~60モル%、好ましくは10~50モル%、さらに好ましくは15~40モル%である。
【0052】
ポジ型化学増幅樹脂(QP)としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、又はスルホニル基等の1種以上の酸性官能基を含有するアルカリ可溶性樹脂(QP1)中の酸性官能基の水素原子の一部あるいは全部を、酸解離性基で置換した保護基導入樹脂(QP2)が挙げられる。
なお、酸解離性基は非イオン系光酸発生剤(A)から発生した強酸の存在下で解離することができる基である。
保護基導入樹脂(QP2)は、それ自体としてはアルカリ不溶性又はアルカリ難溶性である。
【0053】
アルカリ可溶性樹脂(QP1)としては、例えば、フェノール性水酸基含有樹脂(QP11)、カルボキシル基含有樹脂(QP12)、及びスルホン酸基含有樹脂(QP13)等が挙げられる。
フェノール性水酸基含有樹脂(QP11)としては、上記水酸基含有樹脂(QN1)と同じものが使用できる。
【0054】
カルボキシル基含有樹脂(QP12)としては、カルボキシル基を有するポリマーであれば特に制限はなく、例えば、カルボキシル基含有ビニルモノマー(Ba)と、必要により疎水基含有ビニルモノマー(Bb)とをビニル重合することで得られる。
【0055】
カルボキシル基含有ビニルモノマー(Ba)としては、例えば、不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、クロトン酸および桂皮酸など]、不飽和多価(2~4価)カルボン酸[(無水)マレイン酸、イタコン酸、フマル酸およびシトラコン酸など]、不飽和多価カルボン酸アルキル(炭素数1~10のアルキル基)エステル[マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステルおよびシトラコン酸モノアルキルエステルなど]、並びにこれらの塩[アルカリ金属塩(ナトリウム塩およびカリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩およびマグネシウム塩等)、アミン塩およびアンモニウム塩等]が挙げられる。
これらのうち好ましいのは重合性、及び入手のしやすさの観点から不飽和モノカルボン酸、さらに好ましいのは(メタ)アクリル酸である。
【0056】
疎水基含有ビニルモノマー(Bb)としては、(メタ)アクリル酸エステル(Bb1)、及び芳香族炭化水素モノマー(Bb2)等が挙げられる。
【0057】
(メタ)アクリル酸エステル(Bb1)としては、例えば、アルキル基の炭素数1~20のアルキル(メタ)アクリレート[例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレートおよび2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなど]および脂環基含有(メタ)アクリレート[ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シジクロペンテニル(メタ)アクリレートおよびイソボルニル(メタ)アクリレートなど]などが挙げられる。
【0058】
芳香族炭化水素モノマー(Bb2)としては、例えば、スチレン骨格を有する炭化水素モノマー[例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレンおよびベンジルスチレン]およびビニルナフタレンなどが挙げられる。
【0059】
カルボキシル基含有樹脂(QP12)における、(Ba)/(Bb)の仕込みモノマーモル比は、通常10~100/0~90、現像性の観点から、好ましくは10~80/20~90、さらに好ましくは25~85/15~75である。
【0060】
スルホン酸基含有樹脂(QP13)としては、スルホン酸基を有するポリマーであれば特に制限はなく、例えば、スルホン酸基含有ビニルモノマー(Bc)と、必要により疎水基含有ビニルモノマー(Bb)とをビニル重合することで得られる。
疎水基含有ビニルモノマー(Bb)としては、上記と同じものが使用できる。
【0061】
スルホン酸基含有ビニルモノマー(Bc)としては、例えば、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、α-メチルスチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸およびこれらの塩が挙げられる。塩としてはアルカリ金属(ナトリウムおよびカリウム等)塩、アルカリ土類金属(カルシウムおよびマグネシウム等)塩、第1~3級アミン塩、アンモニウム塩および第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0062】
スルホン酸基含有樹脂(QP13)における、(Bc)/(Bb)の仕込みモノマーモル比は、通常10~100/0~90、現像性の観点から、好ましくは10~80/20~90、さらに好ましくは25~85/15~75である。
【0063】
アルカリ可溶性樹脂(QP1)のHLB値は、アルカリ可溶性樹脂(QP1)の樹脂骨格によって好ましい範囲が異なるが、好ましくは4~19、さらに好ましくは5~18、特に好ましくは6~17である。
HLB値が4以上であれば現像を行う際に、現像性がさらに良好であり、19以下であれば硬化物の耐水性がさらに良好である。
【0064】
なお、本発明におけるHLB値は、小田法によるHLB値であり、親水性-疎水性バランス値のことであり、有機化合物の有機性の値と無機性の値との比率から計算することができる。
HLB≒10×無機性/有機性
また、無機性の値及び有機性の値は、文献「界面活性剤の合成とその応用」(槇書店発行、小田、寺村著)の501頁;または、「新・界面活性剤入門」(藤本武彦著、三洋化成工業株式会社発行)の198頁に詳しく記載されている。
【0065】
保護基導入樹脂(QP2)中の酸解離性基としては、例えば、置換メチル基、1-置換エチル基、1-分岐アルキル基、シリル基、ゲルミル基、アルコキシカルボニル基、アシル基及び環式酸解離性基等を挙げることができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
1-置換メチル基としては、例えば、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、エトキシメチル基、エチルチオメチル基、メトキシエトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、ベンジルチオメチル基、フェナシル基、ブロモフェナシル基、メトキシフェナシル基、メチルチオフェナシル基、α-メチルフェナシル基、シクロプロピルメチル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、ブロモベンジル基、ニトロベンジル基、メトキシベンジル基、メチルチオベンジル基、エトキシベンジル基、エチルチオベンジル基、ピペロニル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、n-プロポキシカルボニルメチル基、i-プロポキシカルボニルメチル基、n-ブトキシカルボニルメチル基、tert-ブトキシカルボニルメチル基等を挙げることができる。
【0067】
1-置換エチル基としては、例えば、1-メトキシエチル基、1-メチルチオエチル基、1,1-ジメトキシエチル基、1-エトキシエチル基、1-エチルチオエチル基、1,1-ジエトキシエチル基、1-エトキシプロピル基、1-プロポキシエチル基、1-シクロヘキシルオキシエチル基、1-フェノキシエチル基、1-フェニルチオエチル基、1,1-ジフェノキシエチル基、1-ベンジルオキシエチル基、1-ベンジルチオエチル基、1-シクロプロピルエチル基、1-フェニルエチル基、1,1-ジフェニルエチル基、1-メトキシカルボニルエチル基、1-エトキシカルボニルエチル基、1-n-プロポキシカルボニルエチル基、1-イソプロポキシカルボニルエチル基、1-n-ブトキシカルボニルエチル基、1-tert-ブトキシカルボニルエチル基等を挙げることができる。
【0068】
1-分岐アルキル基としては、例えば、i-プロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基等を挙げることができる。
【0069】
シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、メチルジエチルシリル基、トリエチルシリル基、i-プロピルジメチルシリル基、メチルジ-i-プロピルシリル基、トリ-i-プロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、メチルジ-tert-ブチルシリル基、トリ-tert-ブチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等のトリカルビルシリル基を挙げることができる。
【0070】
ゲルミル基としては、例えば、トリメチルゲルミル基、エチルジメチルゲルミル基、メチルジエチルゲルミル基、トリエチルゲルミル基、イソプロピルジメチルゲルミル基、メチルジ-i-プロピルゲルミル基、トリ-i-プロピルゲルミル基、tert-ブチルジメチルゲルミル基、メチルジ-tert-ブチルゲルミル基、トリ-tert-ブチルゲルミル基、フェニルジメチルゲルミル基、メチルジフェニルゲルミル基、トリフェニルゲルミル基等のトリカルビルゲルミル基を挙げることができる。
【0071】
アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0072】
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、p-トルエンスルホニル基、メシル基等を挙げることができる。
【0073】
環式酸解離性基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、4-メトキシシクロヘキシル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、3-ブロモテトラヒドロピラニル基、4-メトキシテトラヒドロピラニル基、4-メトキシテトラヒドロチオピラニル基、3-テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド基等を挙げることができる。
【0074】
これらの酸解離性基のうち、tert-ブチル基、ベンジル基、1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基、トリメチルシリル基、tert-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニルメチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基及びテトラヒドロチオフラニル基等が好ましい。
【0075】
保護基導入樹脂(QP2)における酸解離性基の導入率{保護基導入樹脂(QP2)中の保護されていない酸性官能基と酸解離性基との合計数に対する酸解離性基の数の割合}は、酸解離性基や該基が導入されるアルカリ可溶性樹脂の種類により一概には規定できないが、好ましくは10~100%、さらに好ましくは15~100%である。
【0076】
保護基導入樹脂(QP2)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、好ましくは1,000~150,000、さらに好ましくは3,000~100,000である。
【0077】
また、保護基導入樹脂(QP2)のMwとゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」という。)との比(Mw/Mn)は、通常1~10、好ましくは1~5である。
【0078】
フォトグラフィー用樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づく非イオン系光酸発生剤(A)の含有量は、0.001~20重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01~15重量%、特に好ましくは0.05~7重量%である。
0.001重量%以上であれば紫外線に対する感度がさらい良好に発揮でき、20重量%以下であればアルカリ現像液に対し不溶部分の物性がさらに良好に発揮できる。
【0079】
本発明のフォトグラフィー用樹脂組成物(Q)を用いたレジストは、例えば、所定の有機溶剤に溶解(無機微粒子を含んだ場合は溶解と分散)した樹脂溶液を、スピンコート、カーテンコート、ロールコート、スプレーコート、スクリーン印刷等公知の方法を用いて基板に塗布後、加熱又は熱風吹き付けにより溶剤を乾燥させることで形成することができる。
【0080】
フォトグラフィー用樹脂組成物(Q)を溶解させる有機溶剤としては、樹脂組成物を溶解させることができ、樹脂溶液をスピンコート等に適用できる物性(粘度等)に調整できるものであれば特に限定されない。例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、エタノール、シクロヘキサノン、メタノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセトン及びキシレン等の公知の溶媒が使用できる。
これらの溶剤のうち、乾燥温度等の観点から、沸点が200℃以下のもの(トルエン、エタノール、シクロヘキサノン、メタノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセトン及びキシレン)が好ましく、単独又は2種類以上組み合わせで使用することもできる。
有機溶剤を使用する場合、溶剤の配合量は、特に限定されないが、フォトグラフィー用樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づいて、通常30~1,000重量%が好ましく、さらに好ましくは40~900重量%、特に好ましくは50~800重量%である。
【0081】
塗布後の樹脂溶液の乾燥条件は、使用する溶剤により異なるが好ましくは50~2000℃で2~30分の範囲で実施され、乾燥後のフォトグラフィー用樹脂組成物(Q)の残留溶剤量(重量%)等で適宜決定する。
【0082】
基板にレジストを形成した後、配線パターン形状の光照射を行う。その後、露光後加熱(PEB)を行った後に、アルカリ現像を行い、配線パターンを形成する。
【0083】
光照射する方法として、配線パターンを有するフォトマスクを介して活性光線により、レジストの露光を行う方法が挙げられる。光照射に用いる活性光線としては、本発明の
フォトグラフィー用樹脂組成物(Q)中の非イオン系光酸発生剤(A)を分解させることができれば特に制限はない。
活性光線としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハロゲンランプ、電子線照射装置、X線照射装置、レーザー(アルゴンレーザー、色素レーザー、窒素レーザー、LED、ヘリウムカドミウムレーザー等)等がある。これらのうち、好ましくは高圧水銀灯及び超高圧水銀灯である。
【0084】
露光後加熱(PEB)の温度としては、通常40~200℃であって、好ましくは50~190℃、さらに好ましくは60~180℃である。40℃未満では脱保護反応、又は架橋反応が十分にできないため、紫外線照射部と紫外線未照射部の溶解性に差が不足しパターンが形成できず、200℃より高いと生産性が低下する問題がある。
加熱時間としては、通常0.5~120分未満では時間と温度の制御が困難で、120分より大きいと生産性が低下する問題がある。
【0085】
アルカリ現像する方法としては、アルカリ現像液を用いて配線パターン形状に溶解除去する方法が挙げられる。アルカリ現像液としては、フォトグラフィー用樹脂組成物(Q)の紫外線照射部と紫外線未照射部の溶解性に差ができる条件であれば特に制限はない。
アルカリ現像液としては水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム及びテトラメチルアンモニウム塩水溶液等がある。
これらアルカリ現像液は水溶性の有機溶剤を加えてもよい。水溶性の有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン等がある。
【0086】
現像方法としては、アルカリ現像液を用いたディップ方式、シャワー方式、及びスプレー方式があるが、スプレー方式の法が好ましい。
現像液の温度は、好ましくは25~40℃で使用される。現像時間は、レジストの厚さに応じて適宜決定される。
【実施例】
【0087】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0088】
<実施例1>
3角フラスコ中で3-ヒドロキシ-1,8-ナフタル酸無水物(東京化成工業社製)21部、および炭酸カリウム27部をアセトニトリル400部に分散させた後、クロロ酢酸tert-ブチル(東京化成工業社製)30部を投入し、75℃で6時間反応させた。
次いで、炭酸カリウムをろ過除去した後、50%ヒドロキシルアミン水溶液(東京化成工業社製)18部を滴下投入し、室温で2時間反応させた。反応終了後、イオン交換水に反応液を投入した後、塩酸をpH5になるまで投入した。しばらく撹拌後、析出物をろ過回収し、70℃で減圧乾燥を行い、淡黄色固体の前駆体を得た。
乾燥した前駆体をジクロロメタン500部、およびピリジン20部に溶解させた後、10℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(三菱マテリアル電子化成社製、EF-18)42部を滴下投入した。滴下投入後、室温で1時間反応させた後、イオン交換水による水洗を行った。この水洗後の反応液を濃縮し、メタノールを投入することで結晶を析出させた。この結晶をろ過回収し、50℃で減圧乾燥することで、本発明の非イオン系光酸発生剤(A-1)を得た。
【0089】
<実施例2>
クロロ酢酸tert-ブチル30部を2-ブロモ酪酸エチル(東京化成工業社製)40部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、本発明の非イオン系光酸発生剤(A-2)を得た。
【0090】
<実施例3>
クロロ酢酸tert-ブチル30部を2-ブロモヘキサン酸メチル(東京化成工業社製)40部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、本発明の非イオン系光酸発生剤(A-3)を得た。
【0091】
<実施例4>
3-ヒドロキシ-1,8-ナフタル酸無水物21部を4-ブロモ-1,8-ナフタル酸無水物(東京化成工業社製)28部、炭酸カリウム27部をトリエチルアミン11部、およびクロロ酢酸tert-ブチル30部をチオグリコール酸ブチル(東京化成工業社製)16部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、本発明の非イオン系光酸発生剤(A-4)を得た。
【0092】
<実施例5>
チオグリコール酸ブチル16部をチオグリコール酸2-エチルヘキシル(東京化成工業社製)22部に変更した以外は、実施例4と同様の操作を行い、本発明の非イオン系光酸発生剤(A-5)を得た。
【0093】
<実施例6>
チオグリコール酸ブチル16部をチオりんご酸(東京化成工業社製)16部、トリエチルアミン11部を35部に変更した以外は、実施例4と同様の操作を行い、本発明の非イオン系光酸発生剤(A-6)を得た。
【0094】
<実施例7>
チオグリコール酸ブチル16部をチオ乳酸(東京化成工業社製)12部、トリエチルアミン11部を22部に変更した以外は、実施例4と同様の操作を行い、本発明の非イオン系光酸発生剤(A-7)を得た。
【0095】
<実施例8>
実施例1で得た光酸発生剤(A-1)10部を、酢酸エチル100部、塩化水素・酢酸エチル溶液(約4mol/L)(和光純薬社製)50部に溶解した後、75℃で6時間反応し、エステル基を外した。次いで水洗により酸を除去した後に、溶剤を減圧除去することで、本発明の非イオン系光酸発生剤(A-8)を得た。
【0096】
<実施例9>
3角フラスコ中で2-ブロモ酪酸40部、ジメチルアミノピリジン4部、及びtert-ブチルアルコール80部をジクロロメタン800部に溶解させた後、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩50部を投入し、室温で3時間反応させた。次いで、1%塩酸水溶液で洗浄した後、溶剤を減圧除去することでブロモ酪酸tert-ブチルを得た。
次いで、クロロ酢酸tert-ブチル30部を、上記により得た2-ブロモ酪酸tert-ブチル40部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、本発明の非イオン系光酸発生剤(A-9)を得た。
【0097】
<実施例10>
2-ブロモ酪酸を2-ブロモヘキサン酸に変更した以外は、実施例9と同様の操作を行い、本発明の非イオン系光酸発生剤(A-10)を得た。
【0098】
<実施例11>
光酸発生剤(A-1)を実施例9で得た光酸発生剤(A-9)に変更した以外は、実施例8と同様の操作を行い、本発明の非イオン系光酸発生剤(A-11)を得た。
【0099】
<実施例12>
光酸発生剤(A-1)を実施例11で得た光酸発生剤(A-11)に変更した以外は、実施例8と同様の操作を行い、本発明の非イオン系光酸発生剤(A-12)を得た。
【0100】
<比較例1>
下記式(4)で表される1,8-ナフタル酸イミドトリフルオロメタンスルホネート(Aldlich社製)をそのまま使用した。
【0101】
【0102】
<比較例2>
下記式(5)で表される3-メトキシ-1,8-ナフタル酸イミドp-トルエンスルホン酸をJ.Chem.Soc.(C),1966,p523記載の方法に従って合成し、使用した。
【0103】
【0104】
<実施例1~9、比較例1~2>
光酸発生剤の性能評価として、実施例1~9で得られた非イオン系光酸発生剤(A-1)~(A-9)、比較のための非イオン系光酸発生剤(A’-1)~(A’-2)のモル吸光係数、光分解率、レジスト感度、溶剤溶解性について以下の方法で評価し、その結果を表1に記載した。
【0105】
<モル吸光係数>
合成した光酸発生剤をアセトニトリルにより0.025mmol/Lに希釈し、紫外可視分光光度計(島津製作所社製、UV-2550)を用いて、200nmから500nmの範囲で1cmのセル長の吸光度を測定した。下記式からi線(365nm)のモル吸光係数(ε365)を算出した。
ε365(L・mol-1・cm-1)=A365/(0.00025mol/L×1cm)
[式中、A365は365nmの吸光度を表す。]
【0106】
<光分解率>
上記で調整した0.025mmol/Lの溶液を直径1cmの試験管に入れ、50mJ/cm2(365nm)の光を照射した。この溶液の光照射前後の液体クロマトグラフィー(LC)の面積比より、光酸発生剤の光分解率を算出した。
光分解率(%)= (S0-S1)/S0×100
S0: 光照射前の光酸発生剤のLCピーク面積
S1: 光照射後の光酸発生剤のLCピーク面積
【0107】
<レジスト感度>
非イオン系光酸発生剤0.2部、ESCAP系ポリマー(ヒドロキシスチレンとt-ブチルアクリレート共重合体)100部、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)900部で調整したレジスト溶液を、シリコンウェハ上にスピンコート後、100℃で4分乾燥することで、6μmの膜厚のレジスト膜を得た。
このレジスト膜に紫外線照射装置(株式会社オーク製作所社製、HMW-661F-01)を用いて、L-34(株式会社ケンコー光学製、340nm未満の光をカットするフィルター)フィルターによって波長を限定した紫外光を所定量全面に露光した。なお積算露光量は365nmの波長を測定した。次いで110℃で90秒アフターベークを行った後、2.38%TMAH水溶液で60秒間ディップ処理し現像を行った。この露光部分のレジスト膜が完全に除去されている最小露光量(Eth)から、レジスト感度を以下の基準により評価した。
○: 最小露光量が50mJ/cm2以下
△: 最小露光量が50mJ/cm2超かつ100mJ/cm2以下
×: 最小露光量が100mJ/cm2超
【0108】
<溶剤溶解性>
合成した光酸発生剤を0.3g試験管にとり、25℃温調下でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を0.2~0.5gずつ加え、光酸発生剤が完全に溶解するまで加えた。この溶解した際の固形分濃度を溶剤溶解性とした。なお30g加えても完全に溶解しない場合には、溶解しないものと評価した。
【0109】
【0110】
本発明の非イオン系光酸発生剤は、i線(365nm)に対するモル吸光係数が高く、また光分解率が優れているため、薄膜レジスト用途として有用である。また、溶剤に対する溶解性も5%以上であり、フォトレジストとして使用するために十分な性能を有していることが分かる。
一方、置換基を有さないナフチルイミド骨格からなる比較例1では、i線に対する吸収が不十分で、かつナフチル骨格同士が分子配向しやすく結晶性が高くなるため、溶剤に対する溶解性が低くすぎることが分かる。またRfの水素原子がフッ素で置換されていない比較例2では、i線に対する吸収は十分なものの、光分解率が低いことがわかる。また置換基がメトキシ基であり、十分な極性、および大きさを持たないため、溶剤溶解性が不足していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の非イオン系光酸発生剤(A)はi線に高い光感度を有し、レジスト溶液への相溶性及び溶解性に優れ、また耐熱安定性に優れるため、半導体の製造に代表される微細加工用のフォトリソグラフィー材料として有用である。