(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】水処理システムおよびその運転方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20060101AFI20220803BHJP
E03B 3/08 20060101ALI20220803BHJP
C02F 5/00 20060101ALI20220803BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20220803BHJP
C02F 1/42 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
C02F1/00 D
C02F1/00 S
E03B3/08 Z
C02F5/00 610Z
C02F5/00 620C
C02F5/00 620D
C02F1/44 A
C02F1/44 D
C02F1/42 A
C02F1/42 B
(21)【出願番号】P 2018222650
(22)【出願日】2018-11-28
【審査請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和史
(72)【発明者】
【氏名】石橋 光
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-008435(JP,A)
【文献】特開2017-000940(JP,A)
【文献】特開2008-132400(JP,A)
【文献】特開平07-295654(JP,A)
【文献】特開2013-086034(JP,A)
【文献】米国特許第5746923(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00-9/14
E03B1/00-11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水源から原水を汲み上げる水中ポンプと、汲み上げられた原水を貯留する水槽と、前記水槽の原水を引き出す原水ポンプとを備えた水処理システムを運転する方法であり、
前記原水ポンプが稼働している間、前記水中ポンプを稼働し続ける、水処理システムの運転方法。
【請求項2】
水源から原水を汲み上げる水中ポンプと、汲み上げられた原水を貯留する水槽と、前記原槽の原水を引き出す原水ポンプとを備えた水処理システムを運転する方法であり、
前記水槽の水位を満水状態と空状態との間に保ちつつ、前記水中ポンプを稼働し続ける、水処理システムの運転方法。
【請求項3】
前記水槽内の原水の水量に応じて、前記水中ポンプから前記水槽に導入される原水の水量を調整する、請求項1または2に記載の水処理システムの運転方法。
【請求項4】
前記水中ポンプから前記水槽に導入される原水の水量を、前記水中ポンプの回転数を制御することによって調整する、請求項3に記載の水処理システムの運転方法。
【請求項5】
前記原水が、地下水である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水処理システムの運転方法。
【請求項6】
水源から原水を汲み上げる水中ポンプと、
汲み上げられた原水を貯留する水槽と、
前記水槽の原水を引き出す原水ポンプと、
前記原水ポンプが稼働している間、前記水中ポンプが稼働し続けるように前記水中ポンプを制御する制御装置と
を備えた、水処理システム。
【請求項7】
水源から原水を汲み上げる水中ポンプと、
汲み上げられた原水を貯留する水槽と、
前記水槽の原水を引き出す原水ポンプと、
前記水槽の水位を満水状態と空状態との間に保ちつつ、前記水中ポンプが稼働し続けるように前記水中ポンプを制御する制御装置と
を備えた、水処理システム。
【請求項8】
前記水槽が、開放式または密閉式である、請求項6または7に記載の水処理システム。
【請求項9】
前記水中ポンプから前記水槽に導入される原水の水量を調整する導入水量調整手段をさらに備え、
前記制御装置が、前記水槽内の原水の水量に応じて、前記導入水量調整手段を制御する、請求項6~8のいずれか一項に記載の水処理システム。
【請求項10】
前記導入水量調整手段が、前記水中ポンプの回転数を制御するインバーターである、請求項9に記載の水処理システム。
【請求項11】
前記原水が、地下水である、請求項6~10のいずれか一項に記載の水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システムおよびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下にある原水(地下水等)を地上に汲み上げて処理する水処理システムとしては、例えば、地下から原水を汲み上げる水中ポンプと、汲み上げられた原水を貯留する原水槽と、原水槽の原水を引き出す原水ポンプと、引き出された原水を処理する水処理装置(逆浸透膜装置等)とを備えたものが挙げられる(特許文献1)。
【0003】
水処理システムにおいては、通常、原水槽が渇水しないように管理されている。そのため、水処理システムにおいては、原水槽が空になる直前に水中ポンプを稼働させ、原水を揚水して原水槽に補充する。原水槽が満水になったとき水中ポンプを停止する。このように、水中ポンプは、稼働と停止とを繰り返す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水処理システムにおいては、後段の水処理装置における時間当たりの処理量よりも、水中ポンプにおける時間当たりの汲み上げ量のほうが多い。そのため、水処理システムにおいては、原水槽が一旦満水になった後は、水中ポンプはしばらく停止されたままとなる。そうすると、水中ポンプと原水槽との間にある揚水管等の配管内に原水が長時間滞留することになる。水中ポンプが停止している間、揚水管内の水柱の水頭の位置と、地下にある原水の水位との差(以下、「水頭差」とも記す。)によって、揚水管内に滞留した原水が地下に向かう方向に流れようとする。これによって、揚水管内が負圧になる。
【0006】
揚水管内に滞留した原水が、水頭差に由来する負圧を受けると、原水に溶けている二酸化炭素の溶解度が低くなり、原水の脱炭酸が起きる。そのため、原水のpHが変動する。また、原水のpHが高くなるため、原水に溶解した地下水由来の無機物(鉄分、マンガン分、ケイ素分等)が酸化し、析出する。このようにして、原水の水質が変化してしまう。原水の水質の変動が大きくなると、後段の水処理装置における配管にスケールが発生し、水流量が低下するため、配管の交換作業が必要になる等、水処理のコストが増加する傾向がある。
【0007】
本発明は、原水の水質の変動が抑えられた水処理システムおよびその運転方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、原水槽から原水が溢れ出さないように原水槽に導入される原水の水量を調整するなどして、水中ポンプをできるだけ長時間稼働させることにより、汲み上げられる原水の水質の変動が抑えられることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の態様を有する。
<1>水源から原水を汲み上げる水中ポンプと、汲み上げられた原水を貯留する水槽と、前記水槽の原水を引き出す原水ポンプとを備えた水処理システムを運転する方法であり、前記原水ポンプが稼働している間、前記水中ポンプを稼働し続ける、水処理システムの運転方法。
<2>水源から原水を汲み上げる水中ポンプと、汲み上げられた原水を貯留する水槽と、前記原槽の原水を引き出す原水ポンプとを備えた水処理システムを運転する方法であり、前記水槽の水位を満水状態と空状態との間に保ちつつ、前記水中ポンプを稼働し続ける、水処理システムの運転方法。
<3>前記水槽内の原水の水量に応じて、前記水中ポンプから前記水槽に導入される原水の水量を調整する、前記<1>または<2>の水処理システムの運転方法。
<4>前記水中ポンプから前記水槽に導入される原水の水量を、前記水中ポンプの回転数を制御することによって調整する、前記<3>の水処理システムの運転方法。
<5>前記原水が、地下水である、前記<1>~<4>のいずれかの水処理システムの運転方法。
<6>水源から原水を汲み上げる水中ポンプと、汲み上げられた原水を貯留する水槽と、前記水槽の原水を引き出す原水ポンプと、前記原水ポンプが稼働している間、前記水中ポンプが稼働し続けるように前記水中ポンプを制御する制御装置とを備えた、水処理システム。
<7>水源から原水を汲み上げる水中ポンプと、汲み上げられた原水を貯留する水槽と、前記水槽の原水を引き出す原水ポンプと、前記水槽の水位を満水状態と空状態との間に保ちつつ、前記水中ポンプが稼働し続けるように前記水中ポンプを制御する制御装置とを備えた、水処理システム。
<8>前記水槽が、開放式または密閉式である、前記<6>または<7>の水処理システム。
<9>前記水中ポンプから前記水槽に導入される原水の水量を調整する導入水量調整手段をさらに備え、前記制御装置が、前記水槽内の原水の水量に応じて、前記導入水量調整手段を制御する、前記<6>~<8>のいずれかの水処理システム。
<10>前記導入水量調整手段が、前記水中ポンプの回転数を制御するインバーターである、前記<9>の水処理システム。
<11>前記原水が、地下水である、前記<6>~<10>のいずれかの水処理システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水処理システムによれば、原水の水質の変動が抑えられる。
本発明の水処理システムの運転方法によれば、原水の水質の変動が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の水処理システムの一例を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の水処理システムの他の例を示す概略構成図である。
【
図3】本発明の水処理システムの他の例を示す概略構成図である。
【
図4】本発明の水処理システムの他の例を示す概略構成図である。
【
図5】水中ポンプを連続稼働したときの原水中の鉄分の濃度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
図1~
図4における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
【0013】
<水処理システム>
本発明の水処理システムは、水源から原水を汲み上げる水中ポンプと、汲み上げられた原水を貯留する水槽と、水槽の原水を引き出す原水ポンプと、原水ポンプ、水中ポンプ等を制御する制御装置とを備える。
本発明の水処理システムは、水中ポンプから水槽に導入される原水の水量を調整する導入水量調整手段をさらに備えることが好ましい。
本発明の水処理システムは、必要に応じて、水槽内の原水の水量を測定する原水槽水量測定手段をさらに備えていてもよい。
本発明の水処理システムは、必要に応じて、水槽に導入される原水の水量を測定する導入水量測定手段をさらに備えていてもよい。
本発明の水処理システムは、必要に応じて、水槽から引き出される原水の水量を測定する引出水量測定手段をさらに備えていてもよい。
本発明の水処理システムは、必要に応じて、引き出された原水を処理する水処理装置をさらに備えていてもよい。
【0014】
水槽としては、開放式と密閉式の両方がある。開放式の水槽としては、蓋を有する原水槽等が挙げられる。密閉式の水槽としては、密閉式のバッファ等が挙げられる。
【0015】
水中ポンプとしては、水中カスケードポンプ、水中渦巻ポンプ、水中タービンポンプ、水中斜流ポンプ等が挙げられる。
【0016】
導入水量調整手段としては、原水の流量の異なる複数の配管と、原水が流れる配管を選択するためのバルブとを組み合わせたもの;水中ポンプの回転数を制御するインバーター;水中ポンプから水槽に原水を導入する配管の途中に設けられた流量調整弁等が挙げられる。
【0017】
水槽水量測定手段としては、水位計、質量計等が挙げられ、コストの点から、水位計が好ましい。水位計としては、電極式水位計、水晶式水位計、水圧式水位計、電波式水位計、超音波式水位計、光波式水位計、フロート式水位計、デジタル式水位計、静電容量式水位計等が挙げられる。水槽が密閉式のバッファの場合には、水槽水量測定手段として、バッファ内の空気層の圧力を測定する気体用圧力センサを用いてもよい。
【0018】
導入水量測定手段および引出水量測定手段としては、流量計等が挙げられる。流量計としては、電磁式流量計、カルマン渦式流量計、羽根車式流量計、浮き子式流量計、熱式流量計、ダイヤフラム式流量計、超音波式流量計、コリオリ式流量計等が挙げられる。
【0019】
水処理装置としては、装置を連続稼働させることで安定稼働が可能な逆浸透膜装置が好ましいが、pH調整装置、ろ過装置、イオン交換処理装置等が追加でついていてもよい。
【0020】
本発明の第1の態様における制御装置は、原水ポンプが稼働している間、水中ポンプが稼働し続けるように水中ポンプを制御するものである。
本発明の第2の態様における制御装置は、水槽の水位を満水状態と空状態との間に保ちつつ、水中ポンプが稼働し続けるように水中ポンプを制御するものである。
制御装置が、少なくとも原水ポンプが稼働している間、水中ポンプが稼働し続けるように水中ポンプを制御する、または水槽の水位を満水状態と空状態との間に保ちつつ、水中ポンプが稼働し続けるように水中ポンプを制御することによって、従来のように水槽が空になる直前に水中ポンプを稼働させ、水槽が満水になったとき水中ポンプを停止する水処理システムに比べ、水中ポンプを長時間稼働できる。そのため、水中ポンプと水槽との間にある揚水管等の配管内における原水の滞留時間が短くなる。その結果、配管内に滞留した原水が水頭差に由来する負圧を受ける時間が短くなり、原水の脱炭酸が抑えられ、原水の水質の変動が抑えられる。例えば、原水が鉄分を含む場合には、脱炭酸が起こると原水のpHが上がり、原水に溶解した鉄分が酸化して析出するが、本発明によれば、原水の脱炭酸が抑えられ、鉄分の酸化が抑えられる。このように原水の水質の変動が抑えられると、後段の水処理装置において、原水中の無機物(鉄分等)が配管においてスケール化することが抑制される。これにより、配管の交換作業が減少し、水処理のコストも低減できる。
【0021】
本発明においては、揚水管等の配管内における原水の滞留時間がさらに短くなり、原水の水質の変動がさらに抑えられる点から、制御装置は、原水ポンプが停止している間も、水中ポンプをできるだけ稼働し続けるように水中ポンプを制御することが好ましい。
ただし、水処理システムにおいては、後段の水処理装置における時間当たりの処理量よりも、水中ポンプにおける時間当たりの汲み上げ量のほうが多い。そのため、原水ポンプが停止している間も、水中ポンプを稼働し続けると、水槽から原水が溢れ出すことになる。
【0022】
そこで、水槽が開放式の原水槽の場合には、原水槽から原水が溢れ出さないように、制御装置が、原水槽内の原水の水量に応じて、導入水量調整手段を制御することが好ましい。これにより、原水ポンプの稼働や停止にかかわらず、水中ポンプを長時間稼働し続けることができる。
具体的には、制御手段は、原水槽内の原水の水量が多いときには、水中ポンプから原水槽に導入される原水の水量を、原水槽から引き出される原水の水量よりも少なくするように導入水量調整手段を制御する。制御手段は、原水槽内の原水の水量が少ないときには、水中ポンプから原水槽に導入される原水の水量を、原水槽から引き出される原水の水量よりも多くするように導入水量調整手段を制御する。
【0023】
水槽が密閉式のバッファの場合には、バッファにおいて原水が満水にならないように、制御装置が、バッファ内の空気層の圧力に応じて、導入水量調整手段を制御することが好ましい。これにより、原水ポンプの稼働や停止にかかわらず、水中ポンプを長時間稼働し続けることができる。
具体的には、制御手段は、バッファ内の空気層の圧力が高いときには、水中ポンプからバッファに導入される原水の水量を、バッファから引き出される原水の水量よりも少なくするように導入水量調整手段を制御する。制御手段は、バッファ内の空気層の圧力が低いときには、水中ポンプからバッファに導入される原水の水量を、バッファから引き出される原水の水量よりも多くするように導入水量調整手段を制御する。
【0024】
制御装置は、例えば、インターフェイス部(図示略)、記憶部(図示略)、処理部(図示略)等を備える。
インターフェイス部は、ポンプ、バルブ、水位計、気体用圧力センサ、流量計、インバーター等と処理部との間を電気的に接続するものである。
記憶部は、原水槽内の原水の水量に応じた水処理システムの運転条件、原水槽に導入された原水の水量および原水槽から引き出された原水の水量に応じた水処理システムの運転条件等を記憶するものである。
【0025】
処理部は、原水槽水量測定手段からの水量情報(水位、空気層の圧力、容量、質量等)に応じて、ポンプの稼働または停止、バルブの開閉、ポンプのインバーター制御、流量調整弁の開度の調整を行ったり;導入水量測定手段および引出水量測定手段からの水量情報(積算流量等)から原水槽内の原水の水量を算出し、この水量に応じて、ポンプの稼働または停止、バルブの開閉、ポンプのインバーター制御、流量調整弁の開度の調整を行ったりするものである。
【0026】
処理部は、専用のハードウエアによって実現されるものであってもよく、メモリおよび中央演算装置(CPU)によって構成され、処理部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによってその機能を実現させるものであってもよい。
制御装置には、周辺機器として、入力装置、表示装置等が接続されていてもよい。入力装置としては、ディスプレイタッチパネル、スイッチパネル、キーボード等の入力デバイスが挙げられ、表示装置としては、液晶表示装置、CRT等が挙げられる。
【0027】
本発明においては、なるべく水中ポンプを停止させないように運転することが望ましい。例えば、原水が地下水の場合には、24時間以上連続運転することが好ましく、3日間以上連続運転することがより好ましく、1週間以上連続運転することがさらに好ましい。設備点検や消耗品交換を考えると、3年間以下連続運転することが好ましく、2年間以下連続運転することがより好ましく、1年間以下連続運転することがさらに好ましい。
【0028】
<水処理システムの運転方法>
本発明の水処理システムの運転方法の第1の態様は、水源から原水を汲み上げる水中ポンプと、汲み上げられた原水を貯留する水槽と、水槽の原水を引き出す原水ポンプとを備えた水処理システムを運転する方法であり、原水ポンプが稼働している間、水中ポンプを稼働し続けることに特徴がある。
本発明の水処理システムの運転方法の第2の態様は、水源から原水を汲み上げる水中ポンプと、汲み上げられた原水を貯留する水槽と、水槽の原水を引き出す原水ポンプとを備えた水処理システムを運転する方法であり、水槽の水位を満水状態と空状態との間に保ちつつ、水中ポンプを稼働し続けることに特徴がある。
以下、水槽が開放式の原水槽である場合の水処理システムの運転方法について説明する。
【0029】
少なくとも原水ポンプが稼働している間、水中ポンプを稼働し続ける、または水槽の水位を満水状態と空状態との間に保ちつつ、水中ポンプを稼働し続けることによって、従来のように原水槽が空になる直前に水中ポンプを稼働させ、原水槽が満水になったとき水中ポンプを停止する水処理システムの運転方法に比べ、水中ポンプを長時間稼働できる。そのため、水中ポンプと原水槽との間にある揚水管等の配管内における原水の滞留時間が短くなる。その結果、配管内に滞留した原水が水頭差に由来する負圧を受ける時間が短くなり、原水の脱炭酸が抑えられ、原水の水質の変動が抑えられる。
【0030】
本発明においては、揚水管等の配管内における原水の滞留時間がさらに短くなり、原水の水質の変動がさらに抑えられる点から、原水ポンプが停止している間も、水中ポンプをできるだけ稼働し続けることが好ましい。
ただし、水処理システムにおいては、後段の水処理装置における時間当たりの処理量よりも、水中ポンプにおける時間当たりの汲み上げ量のほうが多い。そのため、原水ポンプが停止している間も、水中ポンプを稼働し続けると、原水槽から原水が溢れ出すことになる。
【0031】
そこで、本発明においては、原水槽から原水が溢れ出さないように、原水槽内の原水の水量に応じて、水中ポンプから原水槽に導入される原水の水量を調整することが好ましい。これにより、原水ポンプの稼働や停止にかかわらず、水中ポンプを長時間稼働し続けることができる。
具体的には、原水槽内の原水の水量が多いときには、水中ポンプから原水槽に導入される原水の水量を、原水槽から引き出される原水の水量よりも少なくする。原水槽内の原水の水量が少ないときには、水中ポンプから原水槽に導入される原水の水量を、原水槽から引き出される原水の水量よりも多くする。
【0032】
原水槽内の原水の水量は、原水槽水量測定手段からの水量情報(水位、容量、質量等)によって把握できる。また、原水槽内の原水の水量は、導入水量測定手段および引出水量測定手段からの水量情報(積算流量等)から算出できる。
水中ポンプから原水槽に導入される原水の水量は、上述した導入水量調整手段によって調整できる。
【0033】
本発明の水処理システムの運転方法は、水源の水面と、水中ポンプと原水槽との間にある揚水管等の配管の最高点との高低差が5m以上である場合に適用することが好ましい。この高低差が5m以上であると、配管内に滞留した原水が受ける水頭差に由来する負圧が大きくなるため、本発明の効果が十分に発揮される。この高低差は、5~100mがより好ましく、35~100mがさらに好ましい。
【0034】
水源としては、井戸、海、湖沼、河川、池、ダム、プール等が挙げられる。
原水としては、地下水、海水、湖沼水、河川水、池水、ダム水、プールの水等が挙げられる。
原水は、通常、無機物を含む。無機物としては、原水に溶解したケイ素分(溶性ケイ酸)、カルシウム分、マグネシウム分、アルミニウム分、鉄分、マンガン分等が挙げられる。
【0035】
原水中の鉄およびその化合物の濃度は、0mg/Lが好ましい。原水中の鉄およびその化合物の濃度は、上水試験方法に準拠して測定する。
【0036】
原水のpHは、7.0が好ましい。原水のpHが前記範囲内であれば、無機物の酸化を抑制することができる。原水のpHは、上水試験法に準拠して測定する。
【0037】
原水中の炭酸濃度は、0.4mg/Lが好ましい。原水の炭酸濃度は、上水試験方法に準拠して測定する。
【0038】
以下、本発明の水処理システムおよびその運転方法の実施形態例について、図面を用いて詳細に説明する。
【0039】
<第1の実施形態>
(水処理システム)
図1は、本発明の水処理システムの第1の実施形態を示す概略構成図である。
水処理システム1は、井戸100から地下水を汲み上げる水中ポンプ10と;汲み上げられた原水を貯留する原水槽12と;原水槽12の原水を引き出す原水ポンプ14と;引き出された原水を処理する水処理装置16と;下端が水中ポンプ10に接続し、地下から地上に延びる揚水管20と;一方の端部が揚水管20の上端に接続し、他端が原水槽12に接続する導水管22と;一方の端部が原水槽12に接続し、途中が原水ポンプ14を経由し、他端が水処理装置16に接続する原水引出配管24と;導水管22の途中に設けられた導入水量調整手段30と;原水槽12に設けられた電極式水位計40と;原水ポンプ14が稼働している間、水中ポンプ10が稼働し続けるように水中ポンプ10を制御する制御装置50とを備える。
【0040】
導水管22は、途中で第1の導水管22Aおよび第2の導水管22Bに分岐する。
第1の導水管22Aの途中には、第1の導水管22Aの流路の開閉を行う第1の電磁弁32Aと、第1の導水管22Aにおける原水の流量をF1に調整する第1の定流量弁34Aとが設けられる。
第2の導水管22Bの途中には、第2の導水管22Bの流路の開閉を行う第2の電磁弁32Bと、第2の導水管22Bにおける原水の流量をF2に調整する第2の定流量弁34Bとが設けられる。
【0041】
導入水量調整手段30は、第1の定流量弁34Aによって原水の流量がF1に調整された第1の導水管22Aと、第2の定流量弁34Bによって原水の流量がF2に調整された第2の導水管22Bと、原水が流れる配管を選択するための第1の電磁弁32Aおよび第2の電磁弁32Bとを組み合わせたものである。
第1の導水管22Aにおける原水の流量F1と、第2の導水管22Bにおける原水の流量F2と、原水引出配管24における原水の流量F3とがF1>F3>F2の関係となるように、第1の定流量弁34Aおよび第2の定流量弁34Bは調整される。
【0042】
原水槽12の水位は、HH(満水状態)、H(標準)、L(低い)、LL(非常に低い)およびE(空)に設定されている。
電極式水位計40は、それぞれの水位に対応した、長さの異なる5つの電極を有する。5つの電極は、設定された水位に応じて、それぞれ電極HH、電極H、電極L、電極LL、電極Eとする。
電極式水位計40は、電極に原水槽12内の原水が触れている間、原水が触れている電極ごとに異なる電気信号(水量情報)を発信する。電極ごとの電気信号を、それぞれ電気信号HH、電気信号H、電気信号L、電気信号LL、電気信号Eとする。
【0043】
制御装置50には、水中ポンプ10、原水ポンプ14、第1の電磁弁32A、第2の電磁弁32B、電極式水位計40等が電気的に接続されている。
制御装置50は、水中ポンプ10の稼働および停止、原水ポンプ14の稼働および停止、第1の電磁弁32Aの開閉、第2の電磁弁32Bの開閉等を制御する。制御装置50は、電極式水位計40からの電気信号(水量情報)を受信する。
【0044】
(水処理システムの運転方法)
原水ポンプ14は、後段の水処理装置16における原水の処理頻度や処理量に応じて、連続的または断続的に稼働する。
以下、運転開始時に原水槽12の水位がHよりも下にある場合について説明する。
【0045】
まず、制御装置50によって、第1の電磁弁32Aを開き、第2の電磁弁32Bを閉じることによって、原水が流れる配管として第1の導水管22Aを選択し、水中ポンプ10を稼働する。水中ポンプ10で汲み上げられた原水が、第1の導水管22Aを通って流量F1で原水槽12に導入される。このとき、原水ポンプ14が稼働していても、F1>F3であるため、原水槽12内の原水は増加し、原水槽12の水位が上がる。原水ポンプ14が停止している場合も、原水槽12内の原水が増加し、原水槽12の水位が上がる。
【0046】
原水槽12の水位がHに到達したとき、電極式水位計40の電極Hに原水が触れて電極式水位計40が電気信号Hを発信する。電気信号Hを受信した制御装置50によって、第1の電磁弁32Aを閉じ、第2の電磁弁32Bを開くことによって、原水が流れる配管として第2の導水管22Bを選択する。水中ポンプ10で汲み上げられた原水が、第2の導水管22Bを通って流量F2で原水槽12に導入される。このとき、原水ポンプ14が稼働していた場合、F2<F3であるため、原水槽12内の原水は減少し、原水槽12の水位が下がる。原水が流れる配管が第2の導水管22Bである状態は、次に電極式水位計40からの電気信号Lが途切れるまで続く。
【0047】
なお、原水ポンプ14が長時間停止している場合、原水槽12内の原水が増加し続け、原水槽12の水位がHHに到達してしまう。このような非常時には、電極式水位計40の電極HHに原水が触れて電極式水位計40が電気信号HHを発信する。電気信号HHを受信した制御装置50によって、水中ポンプ10を停止し、水処理システムの運転自体を中止する。
【0048】
原水槽12の水位がLよりも下に下がったとき、電極式水位計40の電極Lに原水が触れなくなり、電極式水位計40からの電気信号Lが途切れる。電気信号Lが途切れたことを感知した制御装置50によって、第1の電磁弁32Aを開き、第2の電磁弁32Bを閉じることによって、原水が流れる配管として第1の導水管22Aを選択する。水中ポンプ10で汲み上げられた原水が、第1の導水管22Aを通って流量F1で原水槽12に導入される。このとき、原水ポンプ14が稼働していても、F1>F3であるため、原水槽12内の原水は増加し、原水槽12の水位が上がる。原水ポンプ14が停止している場合も、原水槽12内の原水が増加し、原水槽12の水位が上がる。原水が流れる配管が第1の導水管22Aである状態は、次に電極式水位計40が電気信号Hを発信するまで続く。
【0049】
なお、何らかの原因で水中ポンプ10が長時間停止している場合、原水槽12内の原水が減少し続け、原水槽12の水位がLLよりも下に下がってしまう。このような非常時には、電極式水位計40の電極LLに原水が触れなくなり、電極式水位計40からの電気信号LLが途切れる。電気信号LLが途切れたことを感知した制御装置50によって、原水ポンプ14を停止し、水処理システムの運転自体を中止する。
【0050】
(作用機序)
以上説明した水処理システム1およびその運転方法にあっては、原水槽12の水位がHHに到達したり、原水槽12の水位がLLよりも下に下がったりするような非常時以外においては、常時、水中ポンプ10が稼働しているため、水中ポンプ10と原水槽12との間にある揚水管20内に原水が滞留することがない。その結果、原水の脱炭酸が抑えられ、原水の水質の変動が抑えられる。
【0051】
<第2の実施形態>
(水処理システム)
図2は、本発明の水処理システムの第2の実施形態を示す概略構成図である。
水処理システム2は、井戸100から地下水を汲み上げる水中ポンプ10と;汲み上げられた原水を貯留する原水槽12と;原水槽12の原水を引き出す原水ポンプ14と;引き出された原水を処理する水処理装置16と;下端が水中ポンプ10に接続し、地下から地上に延びる揚水管20と;一方の端部が揚水管20の上端に接続し、他端が原水槽12に接続する導水管22と;一方の端部が原水槽12に接続し、途中が原水ポンプ14を経由し、他端が水処理装置16に接続する原水引出配管24と;導水管22の途中に設けられた導入水量調整手段30と;導入水量調整手段30よりも上流側の導水管22の途中に設けられた導入水流量計42と;原水ポンプ14よりも上流側の原水引出配管24の途中に設けられた引出水流量計44と;原水ポンプ14が稼働している間、水中ポンプ10が稼働し続けるように水中ポンプ10を制御する制御装置50とを備える。
【0052】
第2の実施形態は、第1の実施形態における電極式水位計40の代わりに、導入水流量計42および引出水流量計44を設けた実施形態である。
以下、第1の実施形態と同じ構成のものについては、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0053】
制御装置50には、水中ポンプ10、原水ポンプ14、第1の電磁弁32A、第2の電磁弁32B、導入水流量計42、引出水流量計44等が電気的に接続されている。
制御装置50は、水中ポンプ10の稼働および停止、原水ポンプ14の稼働および停止、第1の電磁弁32Aの開閉、第2の電磁弁32Bの開閉等を制御する。制御装置50は、導入水流量計42からの積算流量V1を電気信号として受信し、引出水流量計44からの積算流量V2を電気信号として受信する。
【0054】
原水槽12の水位は、HH(満水状態)、H(標準)、L(低い)、LL(非常に低い)およびE(空)に設定されている。
制御装置50の記憶部には、それぞれの水位の閾値が入力されている。
制御装置50の記憶部には、水処理システム2の運転開始時の原水槽12の水位が初期値W0として入力されている。
【0055】
(水処理システムの運転方法)
原水ポンプ14は、後段の水処理装置16における原水の処理頻度や処理量に応じて、連続的または断続的に稼働する。
以下、運転開始時に原水槽12の水位W0がHよりも下にある場合について説明する。
【0056】
まず、制御装置50によって、第1の電磁弁32Aを開き、第2の電磁弁32Bを閉じることによって、原水が流れる配管として第1の導水管22Aを選択し、水中ポンプ10を稼働する。水中ポンプ10で汲み上げられた原水が、第1の導水管22Aを通って流量F1で原水槽12に導入される。このとき、原水ポンプ14が稼働していても、F1>F3であるため、原水槽12内の原水は増加し、原水槽12の水位が上がる。原水ポンプ14が停止している場合も、原水槽12内の原水が増加し、原水槽12の水位が上がる。
【0057】
運転中においては、制御装置50は、導入水流量計42からの積算流量V1(m3)を電気信号として受信し、引出水流量計44からの積算流量V2(m3)を電気信号として受信する。制御装置50は、現在の原水槽12の水位W(m)を、W=W0+{(V1-V2)/S}によって算出する。ここで、Sは、原水槽12の底面の面積(m2)である。
【0058】
原水槽12の水位WがHの閾値以上となったとき、制御装置50によって、第1の電磁弁32Aを閉じ、第2の電磁弁32Bを開くことによって、原水が流れる配管として第2の導水管22Bを選択する。水中ポンプ10で汲み上げられた原水が、第2の導水管22Bを通って流量F2で原水槽12に導入される。このとき、原水ポンプ14が稼働していた場合、F2<F3であるため、原水槽12内の原水は減少し、原水槽12の水位が下がる。原水が流れる配管が第2の導水管22Bである状態は、次に原水槽12の水位WがLの閾値以下になるまで続く。
【0059】
なお、原水ポンプ14が長時間停止している場合、原水槽12内の原水が増加し続け、原水槽12の水位WがHHの閾値以上となってしまう。このような非常時には、制御装置50によって、水中ポンプ10を停止し、水処理システムの運転自体を中止する。
【0060】
原水槽12の水位WがLの閾値以下になったとき、制御装置50によって、第1の電磁弁32Aを開き、第2の電磁弁32Bを閉じることによって、原水が流れる配管として第1の導水管22Aを選択する。水中ポンプ10で汲み上げられた原水が、第1の導水管22Aを通って流量F1で原水槽12に導入される。このとき、原水ポンプ14が稼働していても、F1>F3であるため、原水槽12内の原水は増加し、原水槽12の水位が上がる。原水ポンプ14が停止している場合も、原水槽12内の原水が増加し、原水槽12の水位が上がる。原水が流れる配管が第1の導水管22Aである状態は、次に原水槽12の水位WがHの閾値以上になるまで続く。
【0061】
なお、何らかの原因で水中ポンプ10が長時間停止している場合、原水槽12内の原水が減少し続け、原水槽12の水位WがLLの閾値以下になってしまう。このような非常時には、制御装置50によって、原水ポンプ14を停止し、水処理システムの運転自体を中止する。
【0062】
(作用機序)
以上説明した水処理システム2およびその運転方法にあっては、流量計からの情報に基づいて算出した原水槽12の水位WがHHの閾値以上となったり、原水槽12の水位WがLLの閾値以下となったりするような非常時以外においては、常時、水中ポンプ10が稼働しているため、水中ポンプ10と原水槽12との間にある揚水管20内に原水が滞留することがない。その結果、原水の脱炭酸が抑えられ、原水の水質の変動が抑えられる。
【0063】
<第3の実施形態>
(水処理システム)
図3は、本発明の水処理システムの第3の実施形態を示す概略構成図である。
水処理システム3は、井戸100から地下水を汲み上げる水中ポンプ10と;汲み上げられた原水を貯留する原水槽12と;原水槽12の原水を引き出す原水ポンプ14と;引き出された原水を処理する水処理装置16と;下端が水中ポンプ10に接続し、地下から地上に延びる揚水管20と;一方の端部が揚水管20の上端に接続し、他端が原水槽12に接続する導水管22と;一方の端部が原水槽12に接続し、途中が原水ポンプ14を経由し、他端が水処理装置16に接続する原水引出配管24と;導水管22の途中に設けられた導入水流量計42と;原水ポンプ14よりも上流側の原水引出配管24の途中に設けられた引出水流量計44と;原水ポンプ14が稼働している間、水中ポンプ10が稼働し続けるように水中ポンプ10を制御する制御装置50とを備える。
【0064】
第3の実施形態は、第2の実施形態における導入水量調整手段30の代わりに、水中ポンプ10に対するインバーター制御を採用した実施形態である。
以下、第1の実施形態および第2の実施形態と同じ構成のものについては、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0065】
水中ポンプ10には、インバーター(図示略)が内蔵されている。
インバーターとは、もともとは「直流電力を交流電力に変換する回路」を指している。しかし、現在では「商用電源等の交流電力から可変周波数の交流電力に変換するパワーエレクトロニクスを利用した電力変換装置」までも含めて広い範囲の装置をインバーターと呼んでいる。インバーター制御とは、インバーターを使って交流電力の電圧、周波数等を制御することで、水中ポンプの出力(電動機の速度)をコントロールする方式である。
【0066】
水中ポンプ10におけるインバーターは、水中ポンプ10の電源周波数を変えることによって水中ポンプ10の回転数を制御する装置である。水中ポンプ10をインバーター制御しない場合は、水中ポンプ10を常にF1以上の流量となるような回転数で稼働させる必要があり、配管やバルブへの負担が大きく、かつ消費電力も多くなる。一方、水中ポンプ10をインバーター制御することによって、水中ポンプ10の回転数を必要に応じて下げることができ、配管やバルブへの負担、消費電力が抑えられる。
【0067】
制御装置50には、水中ポンプ10、原水ポンプ14、導入水流量計42、引出水流量計44等が電気的に接続されている。
制御装置50は、水中ポンプ10の稼働および停止、原水ポンプ14の稼働および停止、水中ポンプ10のインバーター等を制御する。制御装置50は、導入水流量計42からの積算流量V1を電気信号として受信し、引出水流量計44からの積算流量V2を電気信号として受信する。
【0068】
原水槽12の水位は、HH(満水状態)、H(標準)、L(低い)、LL(非常に低い)およびE(空状態)に設定されている。
制御装置50の記憶部には、それぞれの水位の閾値が入力されている。
制御装置50の記憶部には、水処理システム2の運転開始時の原水槽12の水位が初期値W0として入力されている。
【0069】
(水処理システムの運転方法)
原水ポンプ14は、後段の水処理装置16における原水の処理頻度や処理量に応じて、連続的または断続的に稼働する。
以下、運転開始時に原水槽12の水位W0がHよりも下にある場合について説明する。
【0070】
まず、制御装置50によって、水中ポンプ10を稼働するとともにインバーター制御し、導水管22における原水の流量がF1となるように水中ポンプ10の回転数を調整する。水中ポンプ10で汲み上げられた原水が、導水管22を通って流量F1で原水槽12に導入される。このとき、原水ポンプ14が稼働していても、F1>F3であるため、原水槽12内の原水は増加し、原水槽12の水位が上がる。原水ポンプ14が停止している場合も、原水槽12内の原水が増加し、原水槽12の水位が上がる。
【0071】
運転中においては、制御装置50は、導入水流量計42からの積算流量V1(m3)を電気信号として受信し、引出水流量計44からの積算流量V2(m3)を電気信号として受信する。制御装置50は、現在の原水槽12の水位W(m)を、W=W0+{(V1-V2)/S}によって算出する。ここで、Sは、原水槽12の底面の面積(m2)である。
【0072】
原水槽12の水位WがHの閾値以上となったとき、制御装置50によって、水中ポンプ10をインバーター制御し、導水管22における原水の流量がF2となるように水中ポンプ10の回転数を下げる。水中ポンプ10で汲み上げられた原水が、導水管22を通って流量F2で原水槽12に導入される。このとき、原水ポンプ14が稼働していた場合、F2<F3であるため、原水槽12内の原水は減少し、原水槽12の水位が下がる。導水管22における原水の流量がF2である状態は、次に原水槽12の水位WがLの閾値以下になるまで続く。
【0073】
なお、原水ポンプ14が長時間停止している場合、原水槽12内の原水が増加し続け、原水槽12の水位WがHHの閾値以上となってしまう。このような非常時には、制御装置50によって、水中ポンプ10を停止し、水処理システムの運転自体を中止する。
【0074】
原水槽12の水位WがLの閾値以下になったとき、制御装置50によって、水中ポンプ10をインバーター制御し、導水管22における原水の流量がF1となるように水中ポンプ10の回転数を上げる。水中ポンプ10で汲み上げられた原水が、導水管22を通って流量F1で原水槽12に導入される。このとき、原水ポンプ14が稼働していても、F1>F3であるため、原水槽12内の原水は増加し、原水槽12の水位が上がる。原水ポンプ14が停止している場合も、原水槽12内の原水が増加し、原水槽12の水位が上がる。導水管22における原水の流量がF1である状態は、次に原水槽12の水位WがHの閾値以上になるまで続く。
【0075】
なお、何らかの原因で水中ポンプ10が長時間停止している場合、原水槽12内の原水が減少し続け、原水槽12の水位WがLLの閾値以下になってしまう。このような非常時には、制御装置50によって、原水ポンプ14を停止し、水処理システムの運転自体を中止する。
【0076】
(作用機序)
以上説明した水処理システム3およびその運転方法にあっては、流量計からの情報に基づいて算出した原水槽12の水位WがHHの閾値以上となったり、原水槽12の水位WがLLの閾値以下となったりするような非常時以外においては、常時、水中ポンプ10が稼働しているため、水中ポンプ10と原水槽12との間にある揚水管20内に原水が滞留することがない。その結果、原水の脱炭酸が抑えられ、原水の水質の変動が抑えられる。
【0077】
<第4の実施形態>
(水処理システム)
図4は、本発明の水処理システムの第4の実施形態を示す概略構成図である。
水処理システム4は、井戸100から地下水を汲み上げる水中ポンプ10と;汲み上げられた原水を貯留する原水槽12と;原水槽12の原水を引き出す原水ポンプ14と;引き出された原水を処理する水処理装置16と;下端が水中ポンプ10に接続し、地下から地上に延びる揚水管20と;一方の端部が揚水管20の上端に接続し、他端が原水槽12に接続する導水管22と;一方の端部が原水槽12に接続し、途中が原水ポンプ14を経由し、他端が水処理装置16に接続する原水引出配管24と;導水管22の途中に設けられた流量調整弁36と;流量調整弁36よりも上流側の導水管22の途中に設けられた導入水流量計42と;原水ポンプ14よりも上流側の原水引出配管24の途中に設けられた引出水流量計44と;原水ポンプ14が稼働している間、水中ポンプ10が稼働し続けるように水中ポンプ10を制御する制御装置50とを備える。
【0078】
第4の実施形態は、第3の実施形態における水中ポンプ10に対するインバーター制御の代わりに、流量調整弁36を設けた実施形態である。
以下、第1の実施形態、第2の実施形態および第3の実施形態例と同じ構成のものについては、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0079】
制御装置50には、水中ポンプ10、原水ポンプ14、流量調整弁36、導入水流量計42、引出水流量計44等が電気的に接続されている。
制御装置50は、水中ポンプ10の稼働および停止、原水ポンプ14の稼働および停止、流量調整弁36の開度等を制御する。制御装置50は、導入水流量計42からの積算流量V1を電気信号として受信し、引出水流量計44からの積算流量V2を電気信号として受信する。
【0080】
原水槽12の水位は、HH(満水状態)、H(標準)、L(低い)、LL(非常に低い)およびE(空)に設定されている。
制御装置50の記憶部には、それぞれの水位の閾値が入力されている。
制御装置50の記憶部には、水処理システム2の運転開始時の原水槽12の水位が初期値W0として入力されている。
【0081】
(水処理システムの運転方法)
原水ポンプ14は、後段の水処理装置16における原水の処理頻度や処理量に応じて、連続的または断続的に稼働する。
以下、運転開始時に原水槽12の水位W0がHよりも下にある場合について説明する。
【0082】
まず、制御装置50によって、水中ポンプ10を稼働するとともに、導水管22における原水の流量がF1となるように流量調整弁36の開度を調整する。水中ポンプ10で汲み上げられた原水が、導水管22を通って流量F1で原水槽12に導入される。このとき、原水ポンプ14が稼働していても、F1>F3であるため、原水槽12内の原水は増加し、原水槽12の水位が上がる。原水ポンプ14が停止している場合も、原水槽12内の原水が増加し、原水槽12の水位が上がる。
【0083】
運転中においては、制御装置50は、導入水流量計42からの積算流量V1(m3)を電気信号として受信し、引出水流量計44からの積算流量V2(m3)を電気信号として受信する。制御装置50は、現在の原水槽12の水位W(m)を、W=W0+{(V1-V2)/S}によって算出する。ここで、Sは、原水槽12の底面の面積(m2)である。
【0084】
原水槽12の水位WがHの閾値以上となったとき、制御装置50によって、導水管22における原水の流量がF2となるように流量調整弁36の開度を調整する。水中ポンプ10で汲み上げられた原水が、導水管22を通って流量F2で原水槽12に導入される。このとき、原水ポンプ14が稼働していた場合、F2<F3であるため、原水槽12内の原水は減少し、原水槽12の水位が下がる。導水管22における原水の流量がF2である状態は、次に原水槽12の水位WがLの閾値以下になるまで続く。
【0085】
なお、原水ポンプ14が長時間停止している場合、原水槽12内の原水が増加し続け、原水槽12の水位WがHHの閾値以上となってしまう。このような非常時には、制御装置50によって、水中ポンプ10を停止し、水処理システムの運転自体を中止する。
【0086】
原水槽12の水位WがLの閾値以下になったとき、制御装置50によって、導水管22における原水の流量がF1となるように流量調整弁36の開度を調整する。水中ポンプ10で汲み上げられた原水が、導水管22を通って流量F1で原水槽12に導入される。このとき、原水ポンプ14が稼働していても、F1>F3であるため、原水槽12内の原水は増加し、原水槽12の水位が上がる。原水ポンプ14が停止している場合も、原水槽12内の原水が増加し、原水槽12の水位が上がる。導水管22における原水の流量がF1である状態は、次に原水槽12の水位WがHの閾値以上になるまで続く。
【0087】
なお、何らかの原因で水中ポンプ10が長時間停止している場合、原水槽12内の原水が減少し続け、原水槽12の水位WがLLの閾値以下になってしまう。このような非常時には、制御装置50によって、原水ポンプ14を停止し、水処理システムの運転自体を中止する。
【0088】
(作用機序)
以上説明した水処理システム4およびその運転方法にあっては、流量計からの情報に基づいて算出した原水槽12の水位WがHHの閾値以上となったり、原水槽12の水位WがLLの閾値以下となったりするような非常時以外においては、常時、水中ポンプ10が稼働しているため、水中ポンプ10と原水槽12との間にある揚水管20内に原水が滞留することがない。その結果、原水の脱炭酸が抑えられ、原水の水質の変動が抑えられる。
【0089】
<他の実施形態>
本発明の水処理システムは、水源から原水を汲み上げる水中ポンプと、汲み上げられた原水を貯留する原水槽と、原水槽の原水を引き出す原水ポンプと、原水ポンプが稼働している間、水中ポンプが稼働し続けるように水中ポンプを制御する制御装置とを備えたものであればよく、図示例の第1~第4の実施形態に限定されない。
また、本発明の水処理システムの運転方法は、水源から原水を汲み上げる水中ポンプと、汲み上げられた原水を貯留する原水槽と、原水槽の原水を引き出す原水ポンプとを備えた水処理システムを運転する方法であり、原水ポンプが稼働している間、水中ポンプを稼働し続ける方法であればよく、図示例の第1~第4の実施形態に限定されない。
【0090】
例えば、第1の実施形態において、電極式水位計40の代わりに、他の方式の水位計を用いてもよい。
第1の実施形態または第2の実施形態において、導水管を3つ以上に分岐させ、それぞれに電磁弁および定流量弁を設けてもよい。
第1~第4の実施形態において、水中ポンプ10を停止した後、水処理システムの運転を再開したときに、配管に滞留した原水を排水する機能を備えていてもよい。例えば、揚水管20にドレン配管を設けてもよい。
第1~第4の実施形態において、揚水管20の途中、導水管22の途中または原水槽12内に酸を供給する酸供給手段をさらに設けてもよい。
【0091】
また、図示しないが、水槽が密閉式のバッファの場合には、バッファタンクの原水が満水にならないように、バッファ内の空気層の圧力応じて、導入水量調整手段を制御する。例えば、水中ポンプの回転数を制御する。これにより、原水ポンプの稼働や停止にかかわらず、水中ポンプを長時間稼働し続けることができる。
具体的な運転方法は、バッファ内の空気層の圧力が高いときには、水中ポンプからバッファに導入される原水の水量を、バッファから引き出される原水の水量よりも少なくするように導入水量調整手段を制御する。バッファ内の空気層の圧力が低いときには、水中ポンプからバッファに導入される原水の水量を、バッファから引き出される原水の水量よりも多くするように導入水量調整手段を制御する。
【実施例】
【0092】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
(原水中の鉄およびその化合物の濃度)
原水槽から原水を採取し、上水試験方法に準拠して原水中の鉄およびその化合物の濃度を測定した。原水を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した後、ろ液中の鉄およびその化合物の濃度を同様に測定した。ろ過前の原水中の鉄およびその化合物の濃度からろ過後のろ液中の鉄およびその化合物の濃度を引いて、不溶性の鉄およびその化合物の濃度を求めた。
【0094】
(比較例1)
水処理システム1を用いて、鉄を含む井戸原水の汲み上げを行った。
水中ポンプ10を一旦停止した後、水処理システム1の運転を再開した直後の原水を原水槽から採取し、ろ過前の原水中の鉄およびその化合物の濃度、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過後のろ液中の鉄およびその化合物の濃度、不溶性の鉄およびその化合物の濃度を求めた。結果を
図5に示す。
【0095】
(実施例1)
その後、水中ポンプ10を60時間連続で運転した。運転再開から30分後および60分後の原水を原水槽から採取し、ろ過前の原水中の鉄およびその化合物の濃度、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過後のろ液中の鉄およびその化合物の濃度、不溶性の鉄およびその化合物の濃度を求めた。結果を
図5に示す。
【0096】
運転再開直後の原水中の不溶性の鉄およびその化合物の濃度は0.8mg/Lであり、水中ポンプ10が停止したときに、揚水管20内に滞留した原水が、水頭差に由来する負圧を受けて脱炭酸し、不溶性の鉄およびその化合物が析出したと考えられる。その後、水中ポンプ10を連続で運転すると、原水中の鉄およびその化合物の濃度は安定し、また、不溶性の鉄およびその化合物は析出しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の水処理システムおよびその運転方法は、井戸等から汲み上げた原水を処理する水処理システムおよびその運転方法として有用である。
【符号の説明】
【0098】
1 水処理システム、
10 水中ポンプ、
12 原水槽、
14 原水ポンプ、
16 水処理装置、
20 揚水管、
22 導水管、
22A 第1の導水管、
22B 第2の導水管、
24 原水引出配管、
30 導入水量調整手段、
32A 第1の電磁弁、
32B 第2の電磁弁、
34A 第1の定流量弁、
34B 第2の定流量弁、
36 流量調整弁、
40 電極式水位計、
42 導入水流量計、
44 引出水流量計、
50 制御装置、
100 井戸。