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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】ブーム散布装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20220803BHJP
   B05B 17/00 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A01M7/00 D
B05B17/00 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018248193
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020103248
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2018年(平成30年)7月9日発行の農経しんぽう第3230号の記事で公開。 2018年(平成30年)7月12日から7月16日に開催された「第34回国際農業機械展in帯広」に展示。
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】保田 秀彬
(72)【発明者】
【氏名】斗ケ澤 龍太
(72)【発明者】
【氏名】長島 一泰
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真尚人
(72)【発明者】
【氏名】湯木 正一
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-53891(JP,A)
【文献】特開2008-29305(JP,A)
【文献】特開2006-271320(JP,A)
【文献】特開2012-60899(JP,A)
【文献】特開2013-17393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00
B05B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場面を進行する機体と該機体の進行方向と交差する略水平方向に展開自在なブームとを備え、前記ブームの長さに対応する散布幅で散布材を圃場面に向けて散布するブーム散布装置であって、
GPS信号に基づく前記機体の位置情報に応じて散布幅を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
予め設定されている散布予定領域の境界線と散布幅の端が合致するように、前記ブームの長さを伸縮制御し、
認識される前記機体の進行速度が、前記ブームの長さを伸縮させる速度によって決まる設定速度を超えた場合には、機体の進行速度低減を促す警報信号と機体の進行速度を低減させる制御信号の一方又は両方を出力することを特徴とするブーム散布装置。
【請求項2】
前記ブームの長さを伸縮させる速度は、前記ブームを最短状態から最長状態に伸ばすのに要する時間を計測することで校正され、校正された前記速度に応じて前記設定速度が決められることを特徴とする請求項1記載のブーム散布装置。
【請求項3】
前記制御部による散布幅の制御状態を随時画面に表示する表示部を備え、
前記表示部は、
前記機体の現在位置と、前記現在位置の進行方向前方側に延びる前記境界線と、設定される現在の散布幅とを表示することを特徴とする請求項1又は2項記載のブーム散布装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記警報信号に応じた表示画像を表示画面に表示することを特徴とする請求項3記載のブーム散布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブーム散布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブーム散布装置は、所謂、ブームスプレーヤに代表されるように、自走乗用式、トラクタ牽引式、トラクタ直装式などで、圃場面を走行しながら進行方向と交差する略水平方向に展開したブームの長さに対応する散布幅で、薬液等の散布材を圃場面に向けて散布する作業機である。このブーム散布装置は、圃場面を進行しながら散布作業を行い、1行程で移動距離×散布幅の面積を散布作業し、往復の行程を繰り返すことで、圃場面全体に散布作業を施すものである。
【0003】
このようなブーム散布装置は、左右水平方向に展開するブーム(サイドブーム)を第1ブームとこの第1ブームの長手方向に移動可能な第2ブームによって構成し、第1ブームに対して第2ブームをどれだけ突出させたかによって決まるブーム長さを任意に調整自在にすることで、散布幅を変更できるようにしたものが知られている(下記特許文献1参照)。
【0004】
また、ブーム散布装置においては、GPS信号を演算処理して散布幅端の位置を設定し、機体の位置情報から機体の移動軌跡を記憶して、移動軌跡と設定されている散布幅端の位置によって既に散布がなされている既散布領域を記憶し、既散布領域と旋回後の機体位置とに基づいて、既散布領域とこれから散布する散布予定領域が重ならないように、散布幅端の位置を設定するものが提案されている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-157775号公報
【文献】特開2015-53891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来技術を参照すると、GPS信号に基づく位置情報に対応して、ブーム長さを制御して散布幅を自動調整することで、位置情報として予め記憶されている散布予定領域の境界線に合わせるように散布幅を調整しながら、機体を進行させて散布作業を行う、自動散布幅制御が考えられる。
【0007】
このような自動散布幅制御を実際に行うには、機体の進行速度(作業速度)とブーム長さを制御する際のブームの伸縮速度との関係が問題になる。機体の進行方向が散布予定領域の境界線と平行な場合は、機体の進行時にブーム長さは一定になるが、機体の進行方向と散布予定領域の境界線とが常に平行で無い場合には、機体の進行に応じてブーム長さを随時可変調整する必要がある。その際、機体の進行速度が速すぎると、ブーム長さの伸縮が間に合わなくなり、散布幅の端を散布予定領域の境界線に精度良く合わせることができなくなって、散布予定領域外の散布や散布予定領域内の散布漏れが生じ易くなる問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものである。すなわち、散布予定領域の境界線に合わせるようにブーム長さの調整によって散布幅を可変に調整するブーム散布装置において、機体の進行速度とブームの伸縮速度を考慮することで、散布予定領域外の散布や散布予定領域内の散布漏れなどを抑止すること、などを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
圃場面を進行する機体と該機体の進行方向と交差する略水平方向に展開自在なブームとを備え、前記ブームの長さに対応する散布幅で散布材を圃場面に向けて散布するブーム散布装置であって、GPS信号に基づく前記機体の位置情報に応じて散布幅を制御する制御部を備え、前記制御部は、予め設定されている散布予定領域の境界線と散布幅の端が合致するように、前記ブームの長さを伸縮制御し、認識される前記機体の進行速度が、前記ブームの長さを伸縮させる速度によって決まる設定速度を超えた場合には、機体の進行速度低減を促す警報信号と機体の進行速度を低減させる制御信号の一方又は両方を出力することを特徴とするブーム散布装置。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を備えたブーム散布装置によると、散布予定領域の境界線に合わせるようにブーム長さの調整によって散布幅を可変に調整するブーム散布装置において、機体の進行速度とブームの伸縮速度を考慮することで、散布予定領域外の散布や散布予定領域内の散布漏れなどを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るブーム散布装置の全体構成を示した説明図((a)が側面図、(b)が斜め後方視の斜視図)である。
図2】ブーム長さ調整機構の概略構成を示した説明図である。
図3】ブーム(サイドブーム)の伸縮動作を説明する説明図である。
図4】制御部の機能を示す説明図である。
図5】散布幅制御の動作フローの一例を示した説明図である。
図6】表示部によって制御される表示画面の一例を示した説明図である((a)は進行速度が設定速度で作業している状態を示し、(b)は進行速度が設定速度を超えて作業している状態を示している。)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
図1(a),(b)に示すように、ブーム散布装置1は、圃場面を進行する機体2と、その機体2に搭載される散布装置3と、機体2の進行方向と交差する略水平方向に展開自在なブーム4を備えており、ブーム4の長さに対応する散布幅で薬剤などの散布材を圃場面に向けて散布するものである。図示の例では、機体2はトラクタ(走行装置)に牽引される牽引型の機体を示しているが、これに限らず、トラクタの3点リンクに装着される直装型の機体や自走乗用式の機体であってもよい。
【0014】
図示した牽引式の機体2には、走行車輪2Aが装備されており、機体2の前方には、トラクタに連結される連結部2Bと、ユニバーサルジョイントなどの伝動手段を介してトラクタのPTOからの動力が入力される入力部2Cを備えている。機体2に搭載される散布装置3は、入力部2Cに入力される動力によって駆動するポンプ3Aと薬剤などの散布材が収納されるタンク3Bなどを備えている。
【0015】
ブーム4は、センターブーム4Aと左右のサイドブーム4Bを備えている。センターブーム4Aは、水平装置5を介して機体2に支持されている。サイドブーム4Bは、センターブーム4Aの左右端にそれぞれ収納・展開自在に連結されると共に、自身が伸縮自在に構成されている(図においては、サイドブーム4Bを収納して最短状態に縮めた状態を示している。)。センターブーム4Aとサイドブーム4Bには、複数の散布ノズル6を備えたパイプ又はホースが装着されており、タンク3B内の薬剤などの散布材がポンプ3Aによって圧送されて複数の散布ノズル6から散布される。
【0016】
サイドブーム4Bは、機体2の進行方向に対して交差する水平方向に展開して、最大長さに伸ばすことで、最大の散布幅を実現でき、その長さを適宜伸縮することで、散布幅を可変に調整できるようになっている。また、サイドブーム4Bは、最も短い状態(最短長さ)に縮めて、機体2の進行方向に沿って折り畳み且つ先端を上げて傾斜させることで収納状態にすることができる。左右のサイドブーム4Bの収納・展開・伸縮は、図示省略したブーム動作機構(ブーム収納機構、ブーム展開機構、ブーム長さ調整機構)によって個別に動作できるようになっている。
【0017】
図2は、サイドブーム4Bを伸縮させてブーム長さを調整するブーム長さ調整機構10を示している。サイドブーム4Bは、複数のブーム(ブーム11とブーム12)を備えている。ここでは2本のブームを備える例を示しているが、同様の構成を多段にして3本以上のブームを備えるようにしてもよい。
【0018】
ブーム長さ調整機構10は、複数のブーム(ブーム11とブーム12)の長手方向に沿った重なり状態を可変にすることでブーム長さを調整する機構である。具体的な機構は従来技術と同様であり、ブーム11とブーム12は、長手方向に沿って互いに摺動自在に支持されており、基端側のブーム11の基端部に設けられたスプロケット13がモータ19の出力軸に接続されている。スプロケット13にはチェーン15が掛け回されており、チェーン15の一端が連結部17を介してワイヤ16の一端に接続され、ワイヤ16は、ブーム11の先端部に設けられたプーリ14に掛け回され、その他端が連結部18を介してチェーン15の他端に接続されている。そして、ブーム12の基端部がワイヤ16に接続されている。
【0019】
ブーム長さ調整機構10は、モータ19を回転駆動することで、スプロケット13を回転させて、チェーン15に接続されているワイヤ16を摺動させることで、基端側が水平装置5に支持されているブーム11の長手方向にブーム12を移動させて、ブーム4(サイドブーム4B)の長さを調整するものである。
【0020】
ブーム長さの制御は、制御部20の出力でモータ19の回転量を制御することで行われる。制御部20には、近接センサなどで構成される最短位置センサ21とスプロケット13の回転を検出する回転センサ22からの検出信号が入力される。最短位置センサ21は、ブーム11の基端側に取り付けられており、ブーム12の基端が接近して最短位置になったことを検出する。回転センサ22は、スプロケット13の回転によって生じるパルス(例えば、エンコーダパルス)を検出して、スプロケット13(或いはモータ19の出力軸)の回転量を検出する。
【0021】
制御部20による制御動作としては、作業前にモータ19を回転させて、ブーム12を基端側に移動させ、ブーム12の変位量が最小になったことを最短位置センサ21が検出して検出信号を制御部20に送信する。この検出信号によって制御部20はブーム12が最短位置にあることを認識する。そして、そこからモータ19を逆回転させて回転量(パルス数)を回転センサ22にて検出することで、制御部20は、ブーム12が所定の変位量だけ移動し、ブーム4(サイドブーム4B)が所定の長さになったことを認識する。これにより、制御部20は、入力信号に応じて、ブーム12の変位量を制御してブーム4(サイドブーム4B)の長さを任意の長さに調整することができる。
【0022】
前述したように、ブーム4には、複数の散布ノズル6が配備されている。サイドブーム4Bにおいては、ブーム11とブーム12にそれぞれ、同じ間隔で散布ノズル6A,6Bが配備されている。また、ブーム11とブーム12には、散布ノズル6A,6Bに散布材を供給するための流路(ホース又はパイプ)11A,12Aが配備されている。
【0023】
ブーム長さを調整する際には、ブーム11とブーム12の重なり部分に配置されている散布ノズル6A,6Bのうち、一方のブームに配備されている散布ノズルへの流路バルブ(図示省略)が閉止操作される。また、ブーム長さの調整は、散布ノズル6A,6Bの配備間隔単位で行われる。これによって、ブーム4に配備されている散布ノズル6は、ブーム4がどのような長さに調整されていても、設定された等間隔で配備されることになる。ブーム4の任意の長さにおいて等間隔で配備されている開閉可能な散布ノズル6(6A,6B)を有効ノズルと呼ぶ。
【0024】
散布ノズル6A,6Bの間隔は、予め制御部20に設定しておくことができる。設定の仕方としては、作業前の較正(キャリブレーション)操作によって行うことができ、例えば、図3の(a)に示すように、サイドブーム4Bにおけるブーム11,12の長さを最短長さの状態にしてから、(b)に示すように最大長さになるまでモータ19を駆動し、その間の総変位量Lを回転センサ22のパルス数でカウントする。そして、総変位量Lを、変位したブーム12に配備されている散布ノズル6Bの間隔数nで除して、配備間隔D(=L/n)のパルス数を求める。制御部20は、常に配備間隔Dの整数倍のパルス数でモータ19を駆動することで、ブーム4の長さを散布ノズル6A,6Bの配備間隔単位で調整することができる。
【0025】
次に、制御部20による散布幅の制御について説明する。制御部20には、図4に示すように、前述した最短位置センサ21と回転センサ22の検出信号が入力されると共に、GPS受信機23からのGPS信号が入力される。GPS信号は、機体2の現在位置を随時把握するために入力されるものである。
【0026】
また、制御部20には、予め設定されている散布予定領域24の位置情報が入力される。散布予定領域24は、ブーム散布機1がこれから散布を行う予定の領域であって、ブーム散布装置1が過去に作業した作業領域に基づく圃場全体の位置情報や、今回の作業で既に散布が行われた既散布領域の位置情報などが図示省略した記憶手段(メモリ)に記憶されており、この記憶手段に記憶されているデータに基づいて予め設定されている。
【0027】
制御部20は、進行速度算出部25、ブーム長さ制御部26、警報信号出力部27、表示部40などの機能を有している。
【0028】
進行速度算出部25は、入力されるGPS信号に基づいて機体2の進行速度Vを算出する。この進行速度算出部25は、機体2がトラクタに直装又は牽引されるものであり、制御部20がトラクタのECU50から速度信号を受信している場合には、その速度信号に基づいて機体2の進行速度を算出するようにしてもよい。
【0029】
ブーム長さ制御部26は、ブーム4(サイドブーム4B)の長さを調整することで散布幅を制御するものであり、予め設定されている散布予定領域24の境界線と散布幅の端が一致するように、ブーム4(サイドブーム4B)の長さを伸縮制御する。
【0030】
ブーム長さ制御部26による散布幅の制御においては、ブーム4の長さを伸縮させる速度と進行速度算出部25にて算出される機体2の進行速度との関係が重要になる。機体2の進行速度が速すぎる場合には、前述した境界線に散布幅の端を合わせるようにブーム4の長さを伸縮させることができなくなるので、機体2の進行速度に、ブーム4の伸縮で散布幅を境界線に合わせることが可能な設定速度を定めておき、その設定速度を超えない範囲で機体2が進行している場合に、ブーム長さ制御部26による散布幅の制御を行う。
【0031】
この際の設定速度は、ブーム4の長さを伸縮させる速度に応じて設定されるので、作業前にブーム4の長さを実際に伸縮させてその伸縮速度を計測することで、正確な設定速度を随時設定する較正(キャリブレーション)機能を設けるすることが好ましい。この較正機能においては、図3の(a)に示すように、サイドブーム4Bにおけるブーム11,12の長さを最短状態にしてから、(b)に示すように最大長さになるまでモータ19を駆動し、その間変量がゼロから総変位量Lになるまでの時間を計測し、ブーム4の長さを伸縮させる速度を求める。
【0032】
警報信号出力部27は、機体2の進行速度が前述した設定速度を超えた場合に、警告信号出力する機能である。制御部20が警告信号を出力すると、表示部40において警告信号に対応する表示画像が表示されたり、音声発生手段を備える場合には、警告音などを出力させることができる。
【0033】
このような警報信号出力部27の機能に加えて、或いは警報信号出力部27の機能に換えて、制御部20は、進行速度が前述した設定速度を超えた場合に、制御信号を走行機体(トラクタ直装式や牽引式の場合はトラクタであり、自走式の場合は自走機体)のECU(電子制御ユニット)50に出力して、進行速度を低下させる制御を行うようにしても良い。
【0034】
図5は、ブーム長さ制御部26による散布幅制御の動作フローの一例を示している。散布幅制御が開始されると、制御部20には、所定時間間隔でGPS信号が入力され(S01)、入力されたGPS信号によって機体2の現在位置の確認がなされる(S02)。そして、前回入力のGPS信号による機体位置と今回のGPS信号による現在位置との差によって求められる移動距離とGPS信号の入力間隔の時間によって機体2の進行速度Vが算出される(S03)。
【0035】
設定されている散布予定領域24によって、制御部20に現在位置の前方の境界線位置が入力される(S04)。前方の境界線位置の入力は、散布幅制御によって散布幅の端と境界線の位置とを一致させることができるように、現在位置に対して数センチから数十センチ前方の境界線位置が入力される。
【0036】
次に、算出された進行速度Vと設定速度Vsとを比較する(S05)。設定速度Vsは、前述したように、ブーム4の伸縮で散布幅を境界線に合わせることができる進行速度の限界値であり、作業前にブーム4の長さを実際に伸縮させてその伸縮速度を計測することで予め設定されるものである。
【0037】
進行速度Vと設定速度Vsとを比較した結果、V≦Vsである場合(S05:YES)、前方の境界線位置がブーム4(サイドブーム4B)の最大長さの外側に位置するか否かの判断がなされる(S06)。
【0038】
そして、V≦Vsであり(S05:YES)、前方の境界線位置がブーム4(サイドブーム4B)の最大長さの外側で無い(S06:NO)場合に、有効ノズルを全て開状態に制御して(S07)、ブーム長さ制御部26による散布幅の制御で、散布幅の端を境界線位置に一致させる制御がなされる(S08)。
【0039】
これに対して、進行速度Vが設定速度Vsを超えている場合(S05:NO)には、ブーム長さの制御では散布幅の端を境界線位置に一致させることができないので、この場合には、警報信号出力部27によって警報信号を出力させる。
【0040】
そして、前方の境界線位置がブーム4(サイドブーム4B)の最大長さの外側に位置する場合(S06:YES)には、この場合もブーム長さ制御部26によって散布幅の端を境界線位置に合わせることができないので、機体2の進行方向変更を促す警報信号を出力(S10)して、有効ノズルを全て開状態にし(S11)、ブーム長さを最大に制御する(S12)。
【0041】
そして、引き続き散布幅制御を継続する場合(S13:YES)には、次のタイミングでGPS信号を入力し(S01)、前述したステップを繰り回し、散布幅制御を継続しない場合(S13:NO)には、制御を終了する。
【0042】
表示部40は、制御部20による散布幅の制御状態を随時画面に表示する。図6は、その表示例を示している。表示部40によって表示画面40Gに表示される画像は、機体2の現在位置と進行方向を示す三角図形の表示画像41(三角形の頂角位置が現在位置を指し、頂角の方向が進行方向を指している。)と、機体2の現在位置の進行方向前方側に延びる境界線の表示画像42と、設定されている現在の散布幅を示す矩形図形の表示画像43と、ブーム4の最大長さ範囲を示す矩形図形の表示画像44と、既散布領域を示す表示画像45と、現在の機体2の進行速度Vの数値を示す表示画像46と、前述した設定速度Vsの数値を示す表示画像47である。
【0043】
ここで、表示画像43と表示画像44によって、ブーム4の最大長さ範囲に対する現在の散布幅の相対関係が示されている。このような表示部40の表示画像は、制御部20の時系列毎の出力によって随時変化することになり、散布幅を示す表示画像43の両端が境界線の表示画像42に沿って移動する状態が、随時表示画面40Gに表示されることになる。
【0044】
表示画面40Gを見ながら作業を行うオペレータは、図6(a)に示すように、現在の機体2の進行速度Vを表示する表示画像46と設定速度Vsを表示する表示画像47の数値を比較しながら作業を進めることができる。これによって、オペレータは、設定速度Vsを超えないように進行速度Vを調整しながら作業を行うことができる。
【0045】
そして、進行速度Vが設定速度Vsを超えてしまった場合には、警報信号出力部27から警報信号が出力されて、例えば図6(b)に示すように、警告信号に応じた表示画像48が表示画面40Gに表示される。表示画像48に加えて、或いは表示画像48に換えて、警告音等を発信させるようにしてもよい。
【0046】
以上説明したように、ブーム散布装置1は、ブーム散布装置1は、機体2の進行速度がブーム4の伸縮速度に対して速すぎる場合には、警報が出力されるので、オペレータは、この警報によって進行速度を低下させることができるので、適正な散布幅制御が可能な進行速度を保って作業を進めることができる。
【0047】
また、ブーム散布装置1は、オペレータが表示部40によって制御される表示画面40Gを見ながら作業を行うことができるので、現在設定されている散布幅と散布予定領域の境界線の状態を確認しながら、所望の作業速度で作業を進めることができる。更には、表示画面40Gには、ブーム4の最大長さ範囲に対する散布幅の相対関係が表示されているので、散布幅を最大限制御できる範囲を確認しながら、機体2の位置と境界線の位置関係を調整しながら作業を進めることができる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1:ブーム散布装置,
2:機体,2A:走行車輪,2B:連結部,2C:入力部,
3:散布装置,3A:ポンプ,3B:タンク,
4,11,12:ブーム,4A:センターブーム,4B:サイドブーム,
5:水平装置,6,6A,6B:散布ノズル,
10:ブーム長さ調整機構,
13:スプロケット,14:プーリ,15:チェーン,
16:ワイヤ,17,18:連結部,19:モータ,
20:制御部,21:最短位置センサ,22:回転センサ,
11A,12A:流路,
23:GPS受信機,24:散布予定領域,
25:進行速度算出部,26:ブーム長さ制御部,27:警報信号出力部,
40:表示部,40G:表示画面,41~48:表示画像,
50:ECU
図1
図2
図3
図4
図5
図6