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特許7116680コーティングされたマイクロニードルアレイのための亜鉛組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】コーティングされたマイクロニードルアレイのための亜鉛組成物
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20220803BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61M37/00 520
A61K9/00
A61K47/02
A61K47/12
A61K38/19
A61K38/22
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018517877
(86)(22)【出願日】2016-10-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-01
(86)【国際出願番号】 US2016055924
(87)【国際公開番号】W WO2017062727
(87)【国際公開日】2017-04-13
【審査請求日】2019-10-03
(31)【優先権主張番号】62/239,773
(32)【優先日】2015-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/239,774
(32)【優先日】2015-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/239,801
(32)【優先日】2015-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/268,757
(32)【優先日】2015-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/324,336
(32)【優先日】2016-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/353,249
(32)【優先日】2016-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/396,196
(32)【優先日】2016-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520448463
【氏名又は名称】キンデーバ ドラッグ デリバリー リミティド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】ケネス イー.ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル エム.ドーマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン ティー.モーゼマン
(72)【発明者】
【氏名】イン チャン
(72)【発明者】
【氏名】アラン ハリス
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー ハッタスリー
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/115207(WO,A1)
【文献】特表2008-509747(JP,A)
【文献】特表2008-520370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A61K 9/00
A61K 47/02
A61K 47/12
A61K 38/19
A61K 38/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の活性薬剤、及び活性薬剤のピーク血清濃度(C max )、曲線下面積(AUC)、又は活性薬剤のピーク血清濃度を実現するための時間(T max )を増加させるための塩化亜鉛を含む組成物と、
マイクロニードルのアレイとを備え、
前記組成物の少なくとも一部が前記マイクロニードルの少なくとも一部の上のコーティングとして存在し
記活性薬剤が、ヒト成長ホルモン(hGH)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、ゴセレリン、ロイプロリド、ブセレリン、トリプトレリン、ゴナドレリン、ナプファレリン、メノトロピン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト閉経期ゴナドトロピン(hMG)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、バソプレシン、デスモプレシン、インスリン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、ACTH(1-24)、カルシトニン、パラチロイドホルモン(PTH)、パラチロイドホルモン拮抗剤、パラチロイドホルモン関連タンパク質(PTHrP)、オキシトシン、デアミノ[Val4,D-Arg8]アルギニンバソプレシン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、腫瘍壊死因子(TNF)、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-10(IL-10)、グルカゴン及び成長ホルモン放出因子(GRF)からなる群から選択され
前記塩化亜鉛の前記活性薬剤に対するモル比が、0.1~2.0である、医療デバイスであって、
前記医療デバイスを哺乳動物の皮膚に適用したときに、以下のいずれかの性能を呈する、医療デバイス:
前記哺乳動物において達成される活性薬剤のピーク血清濃度(C max )が、塩化亜鉛を含まない組成物を有する同様のデバイスを前記哺乳動物にある時間適用した場合に達成される活性薬剤のピーク血清濃度(C max )よりも1.2倍大きい、又は
前記哺乳動物において達成される曲線下面積(AUC)が、塩化亜鉛を含まない組成物を有する同様のデバイスを前記哺乳動物に前記ある時間適用した場合に達成される曲線下面積(AUC)よりも1.2倍大きい、又は
前記哺乳動物において達成される活性薬剤のピーク血清濃度を実現するための時間(T max )が、塩化亜鉛を含まない組成物を有する同様のデバイスを前記哺乳動物に前記ある時間適用した場合に達成される活性薬剤のピーク血清濃度を実現するための時間(T max )よりも1.2倍大きい
【請求項2】
前記塩化亜鉛の量が、組成物の総重量の1%~8%である、請求項1記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記塩化亜鉛の量が、組成物の総重量の2%~6%である、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記組成物の50重量%よりも多くが、前記マイクロニードル上のコーティングとして存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記組成物の90重量%よりも多くが、前記マイクロニードル上のコーティングとして存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有用な組成物を有するマイクロニードルアレイに関する。本開示は、治療活性薬剤を、哺乳動物に、コーティングされたマイクロニードルアレイで送達する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
たとえ認可された化学的促進剤を使用しても、実証された治療的価値のある分子はほんの少数しか皮膚を介して移送され得ない。皮膚を介した分子移送の主な障壁は、角質層(皮膚の最も外側の層)である。
【0003】
マイクロニードル又はマイクロピンと呼ばれることもある比較的小さな構造のアレイを含む装置は、皮膚及び他の表面を通じた治療薬及び他の物質の送達に関連して使用するために開示されてきた。デバイスは、通常、治療薬及びその他の薬物が角質層を通過してその下の組織内に至ることができるようにその層を貫通させるべく、皮膚に対して押し付けられる。
【0004】
それを通して治療物質が皮膚に送達され得る流体リザーバ及び導管を有するマイクロニードルデバイスが提案されてきたが、このような系に伴ういくつもの困難さ、例えば流体流れのために確実に使用され得る極細の通路を作製する能力の困難さが残る。
【0005】
マイクロニードルアレイの表面上に乾燥したコーティングを有するマイクロニードルデバイスは、流体リザーバデバイスと比べ、望ましい特徴を有する。このデバイスは、概して、より単純であり、マイクロニードルデバイス内の極細の通路を通る流体流れの確実な制御を提供する必要性なしに、治療物質を皮膚内へ直接導入することができる。
【0006】
コーティングされたマイクロニードルデバイスは、通常、治療物質を、皮内空間内に送達し、少なくともいくつかの事例で、皮内送達で得られる薬物動態プロファイルが、皮下経路及び静脈内経路などの他の送達経路とは異なる場合があることが知られている。
【発明の概要】
【0007】
一実施形態では、本開示は、治療有効量の活性薬剤を含む組成物と、亜鉛、医薬として許容される亜鉛の塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される亜鉛化合物と、マイクロニードルのアレイとを備える医療デバイスである。組成物の少なくとも一部は、マイクロニードルの少なくとも一部の上のコーティングとして存在する。
【0008】
一実施形態では、本開示は、治療活性薬剤を哺乳動物に送達する方法であって、本開示のデバイスを哺乳動物の皮膚表面に適用すること、デバイスを皮膚とある時間接触させて活性薬剤の一部を哺乳動物の皮膚内に移行させること、及び続いて哺乳動物からデバイスを取り外すことを含む、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示は、本開示の様々な実施形態の以下の発明を実施するための形態を、添付の図面と共に検討することにより、更に完全に理解することができる。
図1】未コーティングのマイクロニードルアレイの概略的断面図である。
図2】貼付剤のマイクロニードルデバイスの概略斜視図である。 これらの図は、必ずしも一定の比率の縮尺ではない。これらの図中に用いられる同じ数字は、同じ構成要素を示す。しかしながら、特定の図中のある構成要素を示す数字の使用が、同じ数字を付した別の図中の構成要素を限定しようとするものではないことが理解されるであろう。
図3】血漿PTH濃度/Cmax対時間のグラフである。
図4】血漿rhGH濃度/Cmax対時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の記載において、本明細書の一部を構成する添付の図面を参照し、いくつかの特定の実施形態を例として示す。本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が想定され、かつ実施され得ることを理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味では解釈しないものとする。
【0011】
本明細書で用いる全ての科学用語及び技術用語は、特に明記しない限り、当該技術で通常用いられる意味を有する。本明細書で与えられる定義は、本明細書で頻繁に用いる特定の用語の理解を助けるためのものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0012】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容から別の判断が明らかでない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、用語「又は」は、内容から別の判断が明らかでない限り、「及び/又は」を含む意味で概して用いられる。
【0013】
本明細書に開示される組成物は、少なくとも1種の医薬有効成分(本明細書では「API」又は活性薬剤と称する)、及び亜鉛化合物を含む賦形剤を含む。一実施形態では、亜鉛化合物は、亜鉛、医薬として許容される亜鉛の塩、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0014】
一実施形態では、亜鉛化合物は、亜鉛の無機塩を含む。好適な亜鉛の無機塩としては、例えば塩化亜鉛が挙げられる。一実施形態では、亜鉛化合物は、塩化亜鉛を含む。
【0015】
一実施形態では、亜鉛化合物は、塩化亜鉛から本質的になる。塩化亜鉛から本質的になるということは、本開示の亜鉛化合物が、最小量の亜鉛、又は亜鉛の他の塩を、これらの最小量が、以下で詳細に記載されるCmax及びAUCなどの薬物動態パラメータへの効果などの、組成物の機能特性に検出可能な効果を有していない程度まで、含有してもよいことを意味する。塩化亜鉛以外の化合物が最小量のみ存在する場合に、例えば総ての亜鉛化合物の99重量%以上が塩化亜鉛である場合に、亜鉛化合物は塩化亜鉛から本質的になることが理解されるべきである。一実施形態では、亜鉛化合物は、塩化亜鉛からなる。
【0016】
一実施形態では、亜鉛化合物の90重量%以上が、塩化亜鉛として存在する。一実施形態では、亜鉛化合物の95重量%以上が、塩化亜鉛として存在する。一実施形態では、亜鉛化合物の98重量%以上が、塩化亜鉛として存在する。一実施形態では、亜鉛化合物の99重量%以上が、塩化亜鉛として存在する。
【0017】
一実施形態では、亜鉛化合物は、亜鉛の有機塩を含む。好適な亜鉛の有機塩には、例えば酢酸亜鉛が挙げられる。一実施形態では、亜鉛化合物は、酢酸亜鉛を含む。
【0018】
一実施形態では、亜鉛化合物は、酢酸亜鉛から本質的になる。酢酸亜鉛から本質的になるということは、本開示の亜鉛化合物が、最小量の亜鉛、又は亜鉛の他の塩を、これらの最小量が、以下で詳細に記載されるCmax及びAUCなどの薬物動態パラメータへの効果などの、組成物の機能特性に検出可能な効果を有していない程度まで、含有してもよいことを意味する。酢酸亜鉛以外の化合物が最小量のみ存在する場合に、例えば総ての亜鉛化合物の99重量%以上が酢酸亜鉛である場合に、亜鉛化合物は酢酸亜鉛から本質的になることが理解されるべきである。一実施形態では、亜鉛化合物は、酢酸亜鉛からなる。
【0019】
一実施形態では、亜鉛化合物の90重量%以上が、酢酸亜鉛として存在する。一実施形態では、亜鉛化合物の95重量%以上が、酢酸亜鉛として存在する。一実施形態では、亜鉛化合物の98重量%以上が、酢酸亜鉛として存在する。一実施形態では、亜鉛化合物の99重量%以上が、酢酸亜鉛として存在する。
【0020】
一実施形態では、亜鉛化合物は、亜鉛の二価塩を含む。好適な亜鉛の二価塩には、塩化亜鉛及び酢酸亜鉛が挙げられる。
【0021】
一実施形態では、亜鉛化合物は、亜鉛の二価塩から本質的になる。亜鉛の二価塩から本質的になるということは、本開示の亜鉛化合物が、最小量の亜鉛、又は亜鉛の非二価塩を、これらの最小量が、以下で詳細に記載されるCmax及びAUCなどの薬物動態パラメータへの効果などの、組成物の機能特性に検出可能な効果を有していない程度まで、含有してもよいことを意味する。亜鉛の二価塩以外の化合物が最小量のみ存在する場合に、例えば総ての亜鉛化合物の99重量%以上が亜鉛の二価塩である場合に、亜鉛化合物は亜鉛の二価塩から本質的になることが理解されるべきである。一実施形態では、亜鉛化合物は、亜鉛の二価塩からなる。
【0022】
一実施形態では、亜鉛化合物の90重量%以上が、亜鉛の二価塩として存在する。一実施形態では、亜鉛化合物の95重量%以上が、亜鉛の二価塩として存在する。一実施形態では、亜鉛化合物の98重量%以上が、亜鉛の二価塩として存在する。一実施形態では、亜鉛化合物の99重量%以上が、亜鉛の二価塩として存在する。
【0023】
一実施形態では、亜鉛化合物の、APIに対するモル比は、0.1よりも大きく、0.2よりも大きく、又は0.25よりも大きい。一実施形態では、亜鉛化合物の、APIに対するモル比は、2.0よりも小さく、1.5よりも小さく、又は1.0よりも小さい。一実施形態では、亜鉛化合物の、APIに対するモル比は、0.1~2.0である。一実施形態では、亜鉛化合物の、APIに対するモル比は、0.2~1.5である。一実施形態では、亜鉛化合物の、APIに対するモル比は、0.25~1.0である。一実施形態では、亜鉛化合物の、APIに対するモル比は、約0.5である。一実施形態では、亜鉛化合物の、APIに対するモル比は、約0.75である。一実施形態では、亜鉛化合物の、APIに対するモル比は、約1.0である。
【0024】
実施形態では、亜鉛化合物の量は、組成物の総重量の0.5%よりも多く、1%よりも多く、又は2%よりも多い。実施形態では、亜鉛化合物の量は、組成物の総重量の10%よりも少なく、8%よりも少なく、又は6%よりも少ない。一実施形態では、亜鉛化合物の量は、組成物の総重量の0.5~10%である。一実施形態では、亜鉛化合物の量は、組成物の総重量の1~8%である。一実施形態では、亜鉛化合物の量は、組成物の総重量の2~6%である。一実施形態では、亜鉛化合物の量は、組成物の総重量の約3%である。一実施形態では、亜鉛化合物の量は、組成物の総重量の約4%である。一実施形態では、亜鉛化合物の量は、組成物の総重量の約5%である。
【0025】
少なくとも1種のAPIは、任意の薬理学的に活性な構成成分を概して含む。少なくとも1種のAPIとしては、ワクチン、ホルモン、タンパク質、ペプチド、リポタンパク質、糖タンパク質、多糖、リポ多糖、オリゴ糖、糖脂質、ポリヌクレオチド配列、DNAワクチン、及びセフトリアキソンなどの抗生物質が挙げられる。一実施形態では、APIは、ホルモン、タンパク質、ペプチド、リポタンパク質、糖タンパク質、多糖、リポ多糖、オリゴ糖、糖脂質、ポリヌクレオチド配列、及び抗生物質からなる群から選択される。一実施形態では、APIは、タンパク質又はペプチドである。
【0026】
少なくとも1種のAPIは、受動的経皮送達により送達する以外では難しいことがある又は不可能なことがある小分子でもあることができる。そのような分子の例としては、イオン分子、例えばビスホスホネート、例えばアレンドロン酸ナトリウム又はパムドロン酸ナトリウムが挙げられ、かつ受動的経皮送達を妨げる物理化学特性を有する分子、例えばナルトレキソン及びリドカインが挙げられる。
【0027】
少なくとも1種のAPIとしては、皮膚科治療のための薬剤、ワクチン送達剤、又はワクチンアジュバントを有する免疫応答の促進剤も挙げられる。好適なワクチンの例としては、DNAワクチン、樹枝状細胞ワクチンなどの細胞性ワクチン、組み換えタンパクワクチン、治療用がんワクチン、炭疽病ワクチン、インフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、おたふく風邪ワクチン、水痘ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、C型肝炎ワクチン、百日咳ワクチン、風疹ワクチン、ジフテリアワクチン、脳炎ワクチン、日本脳炎ワクチン、呼吸器合胞体ウイルスワクチン、黄熱病ワクチン、ポリオワクチン、ヘルペスワクチン、ヒトパピローマウイルスワクチン、ロタウイルスワクチン、肺炎球菌ワクチン、髄膜炎ワクチン、百日咳ワクチン、破傷風ワクチン、腸チフスワクチン、コレラワクチン、結核ワクチン、重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome、SARS)ワクチン、HSV-1ワクチン、HSV-2ワクチン、HIVワクチン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。したがって、用語「ワクチン」は、タンパク質、ペプチド、リポタンパク質、糖タンパク質、多糖、リポ多糖類、オリゴ糖、糖脂質、ポリヌクレオチド配列、弱毒化又は死滅ウイルス、ウイルス粒子、ウイルス様粒子、弱毒化又は死滅細菌、細菌細胞壁、トキソイド、及びネコアレルゲン、塵アレルゲン、又は花粉アレルゲンなどの減感剤の形態の抗原を含む。好適なワクチン及びワクチンアジュバントの更なる例は、米国特許出願公開第2004/0049150号、同第2004/0265354号、及び同第2006/0195067号に記載されており、それらの開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
ワクチンであるAPIを含む実施形態では、水性調合物は、1種以上のアジュバントも任意選択で含むことができる。アジュバントは、別の薬剤(この場合、ワクチンAPI)の効果を修正する薬剤である。アジュバントは、多くの場合、受容者のワクチンに対する免疫応答を高めるために利用される。アジュバントの特定の由来(identity)は、APIワクチンの由来に少なくとも部分的に依存する。アジュバントとしては、リン酸アルミニウム、リン酸アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム、スクアレン、β-グルカン、CpG含有オリゴヌクレオチド、QS-21、グルコサミニルムラミルジペプチド(glucosaminylmuramyl dipeptide、GMDP)、ムラメチド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(dimethyldioctadecylammonium bromide、DDA)、Quil A、スレオニル-ムラミルジペプチド(threonyl-muramyl dipeptide、threonyl-MDP)、MTP-PE、MTP-PEリポソーム、4-アミノ-イミダゾ[4,5-c]キノリンベースの免疫応答修正化合物、4-アミノ[1,3]チアゾロ[4,5-c]キノリンベースの免疫応答修正化合物、TLR6作動薬、TLR7作動薬、TLR8作動薬、TLR9作動薬、イミキモド、レシキモド、2-プロピル[1,3]チアゾロ[4,5-c]キノリン-4-アミン、IL-2、IL-4、IL-10、IL-12、IL-15、IL-18、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0029】
実施形態では、少なくとも1種のAPIは、約5mgよりも少ない量を投与したときに、いくつかの実施形態では約0.25mgよりも少ない量を投与したときに、薬理学的に有効である構成成分を含有する組成物又は混合物であり得る。
【0030】
実施形態では、APIとしては、例えば、ヒト成長ホルモン(human growth hormone、hGH)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tissue plasminogen activator、TPA)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene related peptide、CGRP)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(leutinizing hormone releasing hormone、LHRH)、LHRH類似体(例えばゴセレリン、ロイプロリド、ブセレリン、トリプトレリン)、ゴナドレリン及びナプファレリン、メノトロピン(卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone、FSH)及び黄体形成ホルモン(leutinizing hormone、LH))、ヒト閉経期ゴナドトロピン(human menopausal goanadotropins、hMG)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin、hCG)、バソプレシン、デスモプレシン、インスリン、副腎皮質刺激ホルモン(adrenocortiocotropic hormone、ACTH)、ACTH類似体、例えばACTH(1-24)、カルシトニン、パラチロイドホルモン(parathyroid hormone、PTH)、パラチロイドホルモン拮抗剤、パラチロイドホルモン関連タンパク質(parathyroid horomone-related protein、PTHrP)、パラチロイドホルモン関連タンパク質類似体が挙げられ、これは、限定なしに、オキシトシン、デアミノ[Val4,D-Arg8]アルギニンバソプレシン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor、TNF)、エリスロポエチン(erythropoietin、EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(granulocyte macrophage colony stimulating factor、GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony stimulating factor、G-CSF)、インターロイキン、IL-2(IL-2)、インターロイキン-10(interleukin-10、IL-10)、グルカゴン及び成長ホルモン放出因子(growth hormone releasing factor、GRF)のうちの1種以上であり得る。薬剤は、様々な形態、例えば遊離塩基、酸、電荷又は非電荷の分子、分子錯体の構成成分、又は非刺激性の薬理学的に許容される塩であることができる。更に、体のpH、酵素などにおいて生理学的に加水分解された、薬剤の単純な誘導体(例えばエーテル、エステル、アミドなど)を利用することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、APIはヒト成長ホルモン(hGH)である。
【0032】
いくつかの実施形態では、APIは組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)である。
【0033】
いくつかの実施形態では、APIはカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)である。
【0034】
いくつかの実施形態では、APIは黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)である。
【0035】
いくつかの実施形態では、APIはゴセレリンである。
【0036】
いくつかの実施形態では、APIはロイプロリドである。
【0037】
いくつかの実施形態では、APIはブセレリンである。
【0038】
いくつかの実施形態では、APIはトリプトレリンである。
【0039】
いくつかの実施形態では、APIはゴナドレリンである。
【0040】
いくつかの実施形態では、APIはナプファレリンである。
【0041】
いくつかの実施形態では、APIは卵胞刺激ホルモン(FSH)である。
【0042】
いくつかの実施形態では、APIは黄体形成ホルモン(LH)である。
【0043】
いくつかの実施形態では、APIはヒト閉経期ゴナドトロピン(hMG)である。
【0044】
いくつかの実施形態では、APIはヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)である。
【0045】
いくつかの実施形態では、APIはバソプレシンである。
【0046】
いくつかの実施形態では、APIはデスモプレシンである。
【0047】
いくつかの実施形態では、APIはインスリンである。
【0048】
いくつかの実施形態では、APIは副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)である。
【0049】
いくつかの実施形態では、APIはACTH類似体、例えばACTH(1-24)である。
【0050】
いくつかの実施形態では、APIはカルシトニンである。
【0051】
いくつかの実施形態では、APIは副甲状腺ホルモン(PTH)である。
【0052】
いくつかの実施形態では、APIは副甲状腺ホルモン拮抗薬である。
【0053】
いくつかの実施形態では、APIは副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)である。
【0054】
いくつかの実施形態では、APIはオキシトシンである。
【0055】
いくつかの実施形態では、APIはデアミノ[Val4,D-Arg8]アルギニンバソプレシンである。
【0056】
いくつかの実施形態では、APIはインターフェロンαである。
【0057】
いくつかの実施形態では、APIはインターフェロンβである。
【0058】
いくつかの実施形態では、APIはインターフェロンγである。
【0059】
いくつかの実施形態では、APIは腫瘍壊死因子(TNF)である。
【0060】
いくつかの実施形態では、APIはエリスロポエチン(EPO)である。
【0061】
いくつかの実施形態では、APIは顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)である。
【0062】
いくつかの実施形態では、APIは顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)である。
【0063】
いくつかの実施形態では、APIはインターロイキンである。
【0064】
いくつかの実施形態では、APIはグルカゴンである。
【0065】
いくつかの実施形態では、APIは成長ホルモン放出因子(GRF)である。
【0066】
いくつかの実施形態では、APIとしては、例えばヒト成長ホルモン(hGH)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRH類似体(例えばゴセレリン、ロイプロリド、ブセレリン、トリプトレリン)、ゴナドレリン及びナプファレリン、メノトロピン(卵胞刺激ホルモン(FSH)及び黄体形成ホルモン(LH))、ヒト閉経期ゴナドトロピン(hMG)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、バソプレシン、デスモプレシン、インスリン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、ACTH類似体、例えばACTH(1-24)、カルシトニン、パラチロイドホルモン(PTH)、パラチロイドホルモン拮抗剤、パラチロイドホルモン関連タンパク質(PTHrP)、オキシトシン、デアミノ[Val4,D-Arg8]アルギニンバソプレシン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、腫瘍壊死因子(TNF)、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン、IL-2(IL-2)、インターロイキン-10(IL-10)、グルカゴン及び成長ホルモン放出因子(GRF)が挙げられる。薬剤は、様々な形態、例えば遊離塩基、酸、電荷又は非電荷の分子、分子錯体の構成成分、又は非刺激性の薬理学的に許容される塩であることができる。更に、体のpH、酵素などにおいて生理学的に加水分解された、薬剤の単純な誘導体(例えばエーテル、エステル、アミドなど)を利用することができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、活性薬は副甲状腺ホルモン関連タンパク質類似体ではない。
【0068】
組成物は、更なる構成成分、例えば第2の(又は二次的な)API、第2の(又は二次的な)賦形剤、本明細書で示されていない構成成分、又はそれらの何らかの組み合わせも含むことができる。
【0069】
更なる賦形剤は、例えばAPIの有効特性を維持するために、調合物又はそれらの組み合わせのコーティング性能を促進するために、機能することができる。利用される特定の賦形剤は、組成物中に含まれる特定のAPI(単数又は複数)に少なくとも部分的に依存し得る。
【0070】
例示的な賦形剤としては、例えば、緩衝剤、炭水化物、ポリマー、アミノ酸、ポリアミノ酸、界面活性剤、タンパク質、非水性溶媒、無機塩類、酸、塩基、抗酸化剤、及びサッカリンが挙げられる。
【0071】
実施形態では、開示している組成物は、賦形剤として、少なくとも1種の緩衝剤を任意選択で含むことができる。緩衝剤は、開示している組成物を調製するために使用され得る水性調合物のpHを安定化するために概して機能する。利用される特定の緩衝剤は、水性調合物に含まれる特定のAPI(単数又は複数)に少なくとも部分的に依存し得る。水性調合物のpHは、例えば、APIの溶解度を所望のレベルに維持するために重要である場合がある。一般的に、任意の通常利用される緩衝剤を、開示している水性調合物及び組成物中で使用することができる。
【0072】
例示的な緩衝剤としては、例えば、ヒスチジン、リン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、グリシン緩衝剤、酢酸アンモニウム緩衝剤、コハク酸塩緩衝剤、ピロリン酸塩緩衝剤、トリス酢酸(TA)緩衝剤、及びトリス緩衝剤が挙げられる。緩衝生理食塩溶液は、緩衝剤としても利用することができる。例示的な緩衝生理食塩溶液としては、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline、PBS)、トリス緩衝生理食塩水(Tris buffered saline、TBS)、生理食塩水酢酸ナトリウム緩衝液(saline-sodium acetate buffer、SSA)、生理食塩水クエン酸ナトリウム緩衝液(saline-sodium citrate buffer、SSC)が挙げられる。実施形態では、PBSを緩衝剤として利用することができる。
【0073】
実施形態では、組成物は、少なくとも1種の炭水化物、例えば糖を任意選択で含むことができる。好適な糖としては、例えば、ラフィノース、スタキオース、スクロース、及びトレハロースなどの非還元糖、並びに単糖類及び二糖類などの還元糖が挙げられる。例示的な単糖類としては、アピオース、アラビノース、ジギトキソース、フコース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グロース、ハマメロース、イドース、リキソース、マンノース、リボース、タガトース、及びキシロースが挙げられる。例示的な二糖類としては、例えば、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラクツロース、マルトース、メリビオース、プリメベロース、ルチノース、シラビオース、ソホロース、ツラノース、及びビシアノースが挙げられる。実施形態では、ショ糖、トレハロース、フルクトース、マルトース、又はそれらの組み合わせを利用することができる。例示された糖類の全ての光学異性体(D、L、及びラセミ混合物)も、本明細書に含まれる。
【0074】
実施形態では、組成物は、少なくとも1種の炭水化物、例えば多糖を任意選択で含むことができる。多糖類としては、例えばデンプン、例えば、ヒドロキシエチルデンプン、α化コーンスターチ、ペンタスターチ、デキストリン、デキストラン又は硫酸デキストラン、γ-シクロデキストリン、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、グルコシル-α-シクロデキストリン、マルトシル-α-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシ-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-α-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、及びスルホブチルエーテル-γ-シクロデキストリンが挙げられる。実施形態では、ヒドロキシエチルデンプン、デキストリン、デキストラン、γ-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、又はそれらの組み合わせを利用することができる。実施形態では、35,000~76,000の平均分子量を有するデキストランを利用することができる。
【0075】
実施形態では、組成物は、少なくとも1種の炭水化物、例えばセルロースを任意選択で含むことができる。適切なセルロースとしては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose、HEC)、メチルセルロース(methyl cellulose、MC)、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methyl cellulose、HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(hydroxyethylmethyl cellulose、HEMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropyl cellulose、HPC)、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0076】
実施形態では、組成物は、少なくとも1種のポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone、PVP)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、及びポリエチレングリコールイソステアリン酸ソルビタンを任意選択で含むことができる。実施形態では、10,000の平均分子量を有するポリビニルピロリドン(PVP)を利用することができる。実施形態では、5,000~1,500,000の平均分子量を有するポリビニルピロリドン(PVP)を利用することができる。実施形態では、300~8,000の平均分子量を有するポリエチレングリコールを利用することができる。
【0077】
実施形態では、組成物は、少なくとも1種のアミノ酸を任意選択で含むことができる。適切なアミノ酸としては、例えば、リジン、ヒスチジン、システイン、グルタミン酸塩、リジン酢酸塩、サルコシン、プロリン、トレオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、血清トリプトファン、チロシン、バリン、アラニン、アルギニン、及びグリシンが挙げられる。多くの場合、アミノ酸の塩の形態を、組成物中のアミノ酸の水溶解度を増加するために使用することができる。好ましい実施形態では、組成物は、ヒスチジンを含む。
【0078】
実施形態では、組成物は、少なくとも1種のポリアミノ酸を任意選択で含むことができる。好適なポリアミノ酸としては、例えば、ポリヒスチジン、ポリアスパラギン酸、及びポリリジンが挙げられる。実施形態では、組成物は、少なくとも1種のタンパク質を含むことができる。適切なタンパク質としては、例えば、ヒト血清アルブミン、及び生物工学的に処理されたヒトアルブミンが挙げられる。
【0079】
実施形態では、組成物は、両性、カチオン性、アニオン性、又は非イオン性であり得る少なくとも1種の界面活性剤を任意選択で含むことができる。好適な界面活性剤としては、例えば、レシチン、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、及びポリソルベート80など)、グリセロール、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、硫酸ドデシルナトリウム、塩化セチルピリジニウム(cetylpyridinium chloride、CPC)、ドデシルトリメチル塩化アンモニウム(dodecyltrimethyl ammonium chloride、DoTAC)、デオキシコール酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリン酸ソルビタン、及びアルコキシル化アルコール(ラウレス-4など)が挙げられる。
【0080】
実施形態では、組成物は、少なくとも1種の非亜鉛含有無機塩を任意選択で含むことができる。適切な無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、及び塩化カリウムが挙げられる。
【0081】
実施形態では、組成物は、サッカリン、例えばサッカリンナトリウム二水和物を任意選択で含むことができる。実施形態では、組成物は、脂質、例えばジパルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoylphosphatidylcholine、DPPC)を任意選択で含むことができる。
【0082】
実施形態では、組成物は、少なくとも1種の弱酸、弱塩基、強酸、強塩基、又はそれらの何らかの組み合わせを任意選択で含むことができる。酸及び塩基は、APIを可溶化させる又は安定化させるという目的に役立つことができる。これらの酸及び塩基は、対イオンと称することができる。これらの酸及び塩基は、有機又は無機とすることができる。例示的な弱酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ペンタン酸、クエン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グルクロン酸、乳酸、リンゴ酸、ピルビン酸、酒石酸、タルトロン酸、フマル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、マロン酸、酪酸、クロトン酸、ジグリコール酸、及びグルタル酸が挙げられる。例示的な強酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、スルホン酸、硫酸、マレイン酸、リン酸、ベンゼンスルホン酸、及びメタンスルホン酸が挙げられる。例示的な弱塩基としては、例えば、アンモニア、モルホリン、ヒスチジン、リジン、アルギニン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、メチルグルカミン、及びグルコサミンが挙げられる。例示的な強塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、及び水酸化マグネシウムが挙げられる。
【0083】
実施形態では、組成物は、少なくとも1つの抗酸化剤を含むことができる。好適な抗酸化剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸、EDTA、アスコルビン酸、メチオニン、アスコルビン酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0084】
開示される組成物内の各種構成成分の量は、組成物中の構成成分の由来(identity)、マイクロニードルアレイ上に所望されるAPIの量、組成物中に存在する亜鉛化合物の量、コーティングされるマイクロニードルアレイの種類、本明細書に記載されない他の考慮事項、又はそれらの何らかの組み合わせに依存して変化し得る。
【0085】
組成物は、組成物中のAPIの量に基づいても特徴付けることができる。実施形態では、開示される組成物は、0.01~80重量%の少なくとも1種のAPI、又は0.1~70重量%の少なくとも1種のAPIを有することができる。任意選択の炭水化物が利用される実施形態では、組成物は、組成物中の炭水化物の量に基づいても特徴付けることができる。実施形態では、開示される組成物は、0~80重量%の少なくとも1種の炭水化物、又は5~70重量%の少なくとも1種の炭水化物を有することができる。任意選択のポリマーが利用される組成物では、組成物は、組成物中のポリマーの量に基づいても特徴付けることができる。実施形態では、開示される組成物は、0~50重量%の少なくとも1種のポリマー、又は1~20重量%の少なくとも1種のポリマーを有することができる。任意選択の界面活性剤が利用される組成物では、組成物は、組成物中の界面活性剤の量に基づいても特徴付けることができる。実施形態では、開示される組成物は、0~10重量%の少なくとも1種の界面活性剤、又は0~5重量%の少なくとも1種の界面活性剤を有することができる。
【0086】
本明細書で開示の組成物は、通常、液状調合物をマイクロニードルアレイ上にコーティングし、次いで液状調合物を乾燥させてマイクロニードルアレイ上に乾燥した組成物を残すことにより調製される。液状調合物は、コーティング調合物とも称することができる。本明細書で開示のコーティング調合物は、調合物の様々な特性によっても更に説明することができる。コーティング調合物を更に説明するために利用することができる例示的な特性としては、例えば、コーティング調合物の粘度、コーティング調合物の表面張力、コーティング調合物のマイクロニードル材料を構成する材料上での接触角、又はそれらの何らかの組み合わせが挙げられる。
【0087】
本明細書で開示のコーティング調合物は、溶媒として水を含むことが多く、水性調合物とも称されることがある。一般的に、コーティング調合物中の溶媒組成物は、それが医薬有効成分及び賦形剤を溶解できる又は分散できるように選択される。本明細書で開示の水性調合物は、水に加えて、共溶媒も含むことができる。実施形態では、水性調合物は、エタノール、イソプロパノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、グリセリン、1-メチル-2-ピロリジノン、又はN,N-ジメチルホルムアミドなどの更なる溶媒(共溶媒とも称される)を任意選択で含むことができる。
【0088】
実施形態では、コーティング調合物は、その粘度により更に特徴付けることができる。一般的に、粘度は、剪断応力又は引張り応力のいずれかによって変形される流体の、抵抗の測定値である。実施形態では、開示されるコーティング調合物は、水性調合物の剪断粘度とも称することができる、剪断応力による変形に対する抵抗によって特徴付けることができる。粘度試験のために、レオメータを含む様々な測定器を使用することができる。実施形態では、コーティング調合物の粘度は、レオメータ、例えばTA Instruments(New Castle,DE)製のレオメータを使用して測定することができる。
【0089】
実施形態では、本明細書で開示のコーティング調合物は、25℃の温度で100s-1の剪断速度で測定した場合に500~30,000センチポアズ(cps)の粘度(又は剪断粘度)を有することができる。実施形態では、本明細書で開示のコーティング調合物は、25℃の温度で100s-1の剪断速度で測定した場合に500~10,000cpsの粘度(又は剪断粘度)を有することができる。実施形態では、本明細書で開示される組成物は、25℃の温度で100s-1の剪断速度で測定した場合に500~8,000cpsの粘度(又は剪断粘度)を有することができる。
【0090】
実施形態では、コーティング調合物は、その表面張力により更に特徴付けることができる。様々な方法を、表面張力を測定するために利用することができる。例示的なタイプの表面張力測定は、ペンダントドロップ方法に基づく。表面張力を測定するペンダントドロップ方法では、液滴が管の端部から表面張力によって垂下される。表面張力による力は、液体と管との間の境界の長さに比例する。ここで、液滴の関連するパラメータを測定するための光学系を包含する様々な計器、及び測定されたパラメータに基づいて表面張力を計算するためのソフトウェアパッケージを使用することができる。例示的な計器としては、Kruss(Hamburg,Germany)から入手可能なDrop Shape Analysis System(Model DSA 100S)が挙げられる。
【0091】
実施形態では、本明細書で開示のコーティング調合物は、60ダイン/cm以下の表面張力(周囲温度条件又は室温条件で測定)を有することができる。実施形態では、本明細書で開示のコーティング調合物は、55ダイン/cm以下の表面張力を有することができる。実施形態では、本明細書で開示のコーティング調合物は、40ダイン/cm~55ダイン/cmの表面張力を有することができる。
【0092】
実施形態では、コーティング調合物は、マイクロニードルを構成する材料(「マイクロニードル材料」とも称される)とその接触角によって更に特徴付けることができる。マイクロニードル材料に関するコーティング調合物の接触角は、マイクロニードル材料で作製された水平な基材上で測定されることに留意されたい。マイクロニードル材料は、ケイ素、又はステンレス鋼、チタン、若しくはニッケルチタン合金などの金属とする(又はこれを含む)ことができる。マイクロニードル材料は、医療グレードのポリマー材料とする(又はこれを含む)こともできる。一般的に、開示されるコーティング調合物のマイクロニードル材料との接触角は、コーティング調合物のマイクロニードル材料に対する親和性の指標である。接触角が低いほど、コーティング調合物のマイクロニードル材料に対する誘引力がより強く、結果としてマイクロニードル表面の高い濡れがもたらされる。水性調合物のマイクロニードル材料上の接触角は、様々な方法を使用して測定することができる。実施形態では、水性調合物のマイクロニードル材料上の接触角は、例えば静滴法を使用して測定することができる。一般的に、接触角を測定するためには、ゴニオメータ(又はゴニオメータを使用する計器)を利用することができ、そのような計器の例は、Kruss(Hamburg,Germany)から入手可能なDrop Shape Analysis System(Model DSA 100S)である。実施形態では、接触角は、コーティング調合物の基材上への移送の5秒以内に測定することができる。
【0093】
実施形態では、本明細書に開示のコーティング調合物は、50°以上の、マイクロニードル材料との接触角(周囲温度条件又は室温条件で測定)を有することができる。実施形態では、本明細書に開示のコーティング調合物は、55°以上の接触角を有することができる。実施形態では、本明細書に開示のコーティング調合物は、65°以上の接触角を有することができる。実施形態では、本明細書に開示のコーティング調合物は、90°以下の接触角を有することができる。実施形態では、本明細書に開示のコーティング調合物は、80°以下の接触角を有することができる。
【0094】
実施形態では、マイクロニードル材料は、医療グレードのポリマー材料とすることができる。医療グレードのポリマー材料の例示的なタイプとしては、例えば、ポリカーボネート、及び液晶ポリマー(本明細書では「LCP」と称される)が挙げられる。
【0095】
本明細書で更に開示するのは、治療活性薬剤を哺乳動物に送達する方法である。方法は、デバイスを哺乳動物の皮膚に適用する工程を含んでよく、ここで、デバイスは、本明細書で開示のマイクロニードルのアレイ及び組成物を備え、該組成物は、マイクロニードルの少なくとも一部の上のコーティングとして存在する。デバイスを、皮膚とある時間接触させて、活性薬剤の一部を哺乳動物の皮膚内に移行させる。続いて、哺乳動物からデバイスを取り外す。
【0096】
好適な哺乳動物のいくつかの例には、ヒト、霊長類、ブタ、ネコ、イヌ、及びげっ歯類が挙げられる。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0097】
いくつかの実施形態では、哺乳動物において達成される活性薬剤のピーク血清濃度又はCmaxは、亜鉛化合物を含まない組成物を有する同様のデバイスを哺乳動物にある時間適用した場合に得られるCmaxよりも大きい。つまり、亜鉛化合物を調合物に含めると、Cmaxの増加が引き起こされる。いくつかの実施形態では、Cmaxは、亜鉛化合物を含まない同様の組成物を有する同等のデバイスよりも、約1.2倍大きく、約1.5倍大きく、又は約2倍大きい。
【0098】
いくつかの実施形態では、哺乳動物において達成される曲線下面積又はAUCは、亜鉛化合物を含まない組成物を有する同様のデバイスを哺乳動物にある時間適用した場合に得られるAUCよりも大きい。つまり、亜鉛化合物を調合物に含めると、AUCの増加が引き起こされる。いくつかの実施形態では、AUCは、亜鉛化合物を含まない同様の組成物を有する同等のデバイスよりも、約1.2倍大きく、約1.5倍大きく、又は約2倍大きい。
【0099】
いくつかの実施形態では、哺乳動物において達成される活性薬剤の生物学的利用能は、亜鉛化合物を含まない組成物を有する同様のデバイスを哺乳動物にある時間適用する場合に得られる生物学的利用能よりも大きい。つまり、亜鉛化合物を調合物に含めると、生物学的利用能の増加が引き起こされる。いくつかの実施形態では、生物学的利用能は、亜鉛化合物を含まない同様の組成物を有する同等のデバイスよりも、約1.2倍大きく、約1.5倍大きく、又は約2倍大きい。
【0100】
いくつかの実施形態では、哺乳動物において達成される活性薬剤のピーク血清濃度を実現するための時間又はTmaxは、亜鉛化合物を含まない組成物を有する同様のデバイスを哺乳動物にある時間適用する場合に得られるTmaxよりも大きい。つまり、亜鉛化合物を調合物に含めると、Tmaxの増加が引き起こされる。いくつかの実施形態では、Tmaxは、亜鉛化合物を含まない同様の組成物を有する同等のデバイスよりも、約1.2倍大きく、約1.5倍大きく、又は約2倍大きい。
【0101】
デバイスを皮膚と接触させる時間は、所望の治療結果を実現させるために使用される活性薬剤及び組成物の種類に応じて選ぶことができる。いくつかの実施形態では、デバイスは、約1秒より長く、約10秒より長く、約30秒より長く、約1分より長く、又は約5分より長く、皮膚と接触させる。いくつかの実施形態では、デバイスは、約60分より短く、約30分より短く、約10分より短く、約5分より短く、約2分より短く、又は約1分より短く、皮膚と接触させる。いくつかの実施形態では、デバイスは、約10秒~10分、約30秒~約5分、又は約30秒~約2分、皮膚と接触させる。
【0102】
一般に、「アレイ」は、治療薬の経皮的送達を促進するために、又は皮膚を介した流体の採取若しくは皮膚への流体の採取を促進するために、角質層を貫通することができる、1つ以上の(いくつかの実施形態では複数の)構造体を含む、本明細書に記載の医療デバイスを指す。用語「微細構造」又は「マイクロニードル」は、治療薬の経皮的送達を促進するために、又は皮膚を介した流体の採取若しくは皮膚への流体の採取を促進するために、角質層を貫通することができる、アレイと関連付けられた構造体を指す。例として、微細構造としては、針又は針状の構造、並びに角質層を貫通することができる他の構造体が挙げられる。したがって、用語「マイクロニードルアレイ」は、治療薬の経皮的送達を促進するために、又は皮膚を介した流体の採取若しくは皮膚への流体の採取を促進するために、角質層を貫通することができる、複数の構造体を指すことができる。
【0103】
開示された実施形態に有用なマイクロニードルアレイは、それへの参照によりその開示が本明細書に組み込まれる、以下の特許及び特許出願に説明されたものなどの、多様な構成のうちのいずれかを含む。マイクロニードルアレイに対する一実施形態は、切頭された先細の形状及び制御されたアスペクト比を有するマイクロニードルを記載する、米国特許出願公開第2005/0261631号(これへの参照によりその開示が本明細書に組み込まれる)に開示される構造を含む。マイクロニードルアレイに対する更なる実施形態は、外側表面上に形成された少なくとも1つの通路を有する先細のマイクロニードルを記載する米国特許第6,881,203号(これへの参照によりその開示が本明細書に組み込まれる)に開示される構造を含む。マイクロニードルアレイに対する別の実施形態は、両方とも中空のマイクロニードルを記載する、米国特許仮出願第61/168,268号(これへの参照によりその開示が本明細書に組み込まれる)及び米国特許仮出願第61/115,840号(これへの参照によりその開示が本明細書に組み込まれる)に開示された構造を含む。
【0104】
一般的に、マイクロニードルアレイは、複数のマイクロニードルを含むことができる。図1は、マイクロニードル基材220上に位置付けられた4つのマイクロニードル210(図1ではそのうち2つが参照されている)を含む、マイクロニードルアレイ200の一部分を示す。それぞれのマイクロニードル210は、マイクロニードル210の先端からマイクロニードル基材220までの長さである、高さhを有する。単一のマイクロニードルの高さ又はマイクロニードルアレイ上の全てのマイクロニードルの平均高さのいずれかを、マイクロニードルの高さhと呼ぶことができる。いくつかの実施形態では、複数のマイクロニードルのそれぞれ(又は複数のマイクロニードルの全ての平均)は、約1~1200マイクロメートル(μm)の高さを有すことができる。実施形態では、複数のマイクロニードルのそれぞれは、約1~1000μmの高さを有することができる。実施形態では、複数のマイクロニードルのそれぞれは、約200~750μmの高さを有することができる。
【0105】
マイクロニードルアレイ中の単一のマイクロニードル又は複数のマイクロニードルは、そのアスペクト比によって特徴付けることもできる。マイクロニードルのアスペクト比は、マイクロニードルの高さhの、マイクロニードルの幅(マイクロニードルの基部における)wに対する比である(図1に示すように)。アスペクト比は、h:wとして表すことができる。実施形態では、複数のマイクロニードルのそれぞれ(又は複数のマイクロニードルの全ての平均)は、2:1~5:1の範囲のアスペクト比を有することができる。実施形態では、複数のマイクロニードルのそれぞれは、少なくとも2:1のアスペクト比を有することができる。実施形態では、複数のマイクロニードルのそれぞれは、少なくとも3:1のアスペクト比を有することができる。
【0106】
実施形態では、マイクロニードルアレイ中の1つのマイクロニードル又は複数のマイクロニードルは、形状によって特徴付けることができる。実施形態では、複数のマイクロニードルのそれぞれは、正四角錘形状又は皮下注射針の形状を有することができる。
【0107】
実施形態では、マイクロニードルアレイ中の単一のマイクロニードル又は複数のマイクロニードルは、その内部構造によっても特徴付けることができる。実施形態では、複数のマイクロニードルのそれぞれは、マイクロニードル(中空マイクロニードル)の全長に延びる空洞(例えば円筒形空洞)、マイクロニードル(一部が中空のマイクロニードル)の一部を通って延びる空洞(例えば円筒形空洞)を有することができ、又はマイクロニードル(中実のマイクロニードル)中に内部空洞がない。内部空洞は、マイクロニードルに、調合物をコーティングするための更なる表面積を付与することができ、マイクロニードル上へコーティングされることになるAPIの濃度がより高くなることを可能にする場合がある。
【0108】
実施形態では、マイクロニードルアレイは、貼付剤の形態で皮膚表面に適用されてよい。そのような実施形態が、図2において、より詳細に示される。図2は、マイクロニードルアレイ22、感圧接着剤24、及び裏材26の組み合わせの形態の貼付剤20を備えるデバイスを図示する。そのような貼付剤20、又は複数のマイクロニードルアレイ若しくは複数の貼付剤20を備えるデバイスは、送達デバイスと称することができる。マイクロニードルアレイ22の一部は、マイクロニードル10がマイクロニードル基材14から突出して図示される。マイクロニードル10は、任意の所望のパターンで配置されても、又はマイクロニードル基材14にわたってランダムに分布されてもよい。示されるように、マイクロニードル10は、均一に間隔を空けた列で配置されている。一実施形態では、マイクロニードルアレイは、約0.1cmよりも大きく約20cmよりも小さい、末端に面した表面積を有することができ、一実施形態では、約0.5cmよりも大きく約5cmよりも小さい、末端に面した表面積を有することができる。一実施形態では(図示せず)、貼付剤20の基材14の一部には、パターンが存在しない。一実施形態では、パターンの存在しない表面は、患者の皮膚表面に面するデバイス表面の総面積の約1%よりも大きく約75%よりも小さい面積を有する。一実施形態では、パターンの存在しない表面は、約0.10平方インチ(0.65cm)よりも大きく約1平方インチ(6.5cm)よりも小さい面積を有する。別の実施形態(図2に示す)では、マイクロニードルは、実質的にアレイ22の表面積全体にわたって配置される。
【0109】
一旦、水性調合物からの溶媒の少なくとも一部が蒸発すると(単一の接触工程又は複数の接触工程のいずれからであっても)、マイクロニードルアレイ上の水性調合物は、コーティング組成物と称することができる。コーティング組成物は、水性調合物からの少なくとも1種のAPIを含むことができる。あるいは、コーティング組成物は、水性調合物からの少なくとも1種の賦形剤の一部、水性調合物からの溶媒(水及び任意選択の共溶媒)の一部、又はそれらの何らかの組み合わせを含むことができる。コーティングされたマイクロニードルアレイ上のコーティング組成物の含有量は、水性調合物、マイクロニードルアレイをコーティングする方法、接触させる工程の数、他の任意選択の工程、接触させる工程間の遅延の長さ及び量、リザーバから引き出す速度、本明細書で検討されない他の要因、又はそれらの何らかの組み合わせに、少なくとも部分的に依存することができる。
【0110】
マイクロニードルアレイは、基材に貼付されたマイクロニードルを備える。一実施形態では、組成物の少なくとも一部が、マイクロニードル上に存在する。すなわち、組成物の少なくとも一部は、マイクロニードルアレイの基材上に存在しない。一実施形態では、組成物の少なくとも50重量%が、マイクロニードル上に存在する。一実施形態では、組成物の少なくとも75重量%が、マイクロニードル上に存在する。一実施形態では、組成物の少なくとも90重量%が、マイクロニードル上に存在する。
【実施例
【0111】
実施例1-PTH/Zn
7.45%のrhPTH(1-34)(Bachem,Bubendorf,Switzerlandから入手可能)、塩化亜鉛(0.19%)、ヒドロキシエチルセルロース100cP溶液(2.07%)、スクロース(39.88%)及び注射用水(50.41%)からなるコーティング調合物を調製した。液状結晶ポリマーから作製した中実のマイクロニードルアレイを、米国特許第9,339,956号に記載の通りに調製した。アレイは、直径が12.7mmであり、高さが500ミクロンで先端から先端が550ミクロン空いている、316本の正四角錘のニードルを有していた。アレイを、コーティング調合物中に浸して、先端がコーティングされたアレイを調製し、これは米国特許第8,741,377号に記載の通りとした。コーティングされたアレイを、HPLCによってrhPTH(1-34)の含有量について分析したところ、93mcg(n=6)の平均含有量を有していた。sMTS貼付剤を、アレイを接着剤に直径27mm重ねて付けることにより調製した。
【0112】
動物試験を、皮膚の色素沈着が最小限である若く未処置のメス成獣の混血種の農業用ブタ(ヨークシャーX)で実施した。動物は、投与において、およそ22~30キログラムと検量した。全ての動物を、貼付剤を適用する前に麻酔した。試験部位(もも)を、毛を刈り、剃り、3M Buf Puf及び石鹸水でこすって洗うことにより用意した。最後に、試験部位を、70%のイソプロピルアルコール溶液に浸したガーゼパッドで清浄にし、少なくとも2分間乾燥させてから貼付剤を適用した。1つのsMTS貼付剤を、時間0において試験部位へ適用した。貼付剤を皮膚上に15分間保持してから取り外した。貼付剤を取り外した後に皮膚表面を拭い、皮膚表面上に残っている残渣のrhPTHをHPLCにより求めた。適用後の添付剤上の残渣のrhPTHも、HPLCにより求めた。初期含有量と、皮膚及び貼付剤上に残っている残渣との差を用いて、送達した正味の送達用量66mcgと求めた。
【0113】
時間0分(適用前)、2分、5分、10分、15分、20分、30分、60分、120分及び180分において、耳静脈から採血した(1時点当たり1.5mL)。血漿サンプル容積をおよそ0.7mLとした。分析前に、血漿を-70℃で保存した。血漿サンプルを、ELISAアッセイキットを用いてアッセイした。rhPTH(1-34)スタンダードをそれぞれの個々のプレート上で走らせて、プレートについての標準曲線を求めた。Cmaxにより正規化した血漿の平均レベル(n=4)を、図3に実線で示す。
【0114】
比較例1-PTH
7.22%のrhPTH(1-34)(Bachem,Bubendorf,Switzerlandから入手可能)、ヒドロキシエチルセルロース100cP溶液(2.00%)、スクロース(40.71%)及び注射用水(50.06%)からなるコーティング調合物を調製した。sMTS貼付剤を、実施例1に記載の通りに調製した。コーティングされたアレイを、rhPTH(1-34)の含有量についてHPLCにより分析したところ、平均含有量66mcg(n=6)を有していた。正味の送達用量は56mcgであった。動物試験及び分析を、実施例1に記載の通りに実施した。Cmaxにより正規化した血漿の平均レベル(n=3)を、図3に点線で示す。
【0115】
実施例2-rhGH/Zn
1.3%のrhGH(ProSpec-Tany TechnoGene Ltd.,Ness Ziona、Israelから入手可能)、塩化亜鉛(0.014%)、ヒドロキシエチルセルロース100cP溶液(2.4%)、スクロース(39.85%)及び注射用水(56.4%)からなるコーティング調合物を調製した。液状結晶ポリマーから作製した中実のマイクロニードルアレイを、米国特許第9,339,956号に記載の通りに調製した。アレイは、直径が12.7mmであり、高さが500ミクロンで先端から先端が550ミクロン空いている、316本の正四角錘のニードルを有していた。アレイを、コーティング調合物中に浸して、先端がコーティングされたアレイを調製し、これは米国特許第8,741,377号に記載の通りとした。コーティングされたアレイを、rhGHの含有量についてHPLCにより分析したところ、平均含有量1.8mcg(n=6)を有していた。6つの貼付剤を1回用量として各ブタに適用し、総用量10.5mcgとした。sMTS貼付剤を、アレイを接着剤に直径27mmで重ねて付けることにより調製した。
【0116】
動物試験を、皮膚の色素沈着が最小限である若く未処置のメス成獣の混血種の農業用ブタ(ヨークシャーX)で実施した。動物は、投与において、およそ22~30キログラムと検量した。全ての動物を、貼付剤を適用する前に麻酔した。試験部位(もも)を、毛を刈り、剃り、3M Buf Puf及び石鹸水でこすって洗うことにより用意した。最後に、試験部位を、70%のイソプロピルアルコール溶液に浸したガーゼパッドで清浄にし、少なくとも2分間乾燥させてから貼付剤を適用した。1つのsMTS貼付剤を、時間0において6つの試験部位のそれぞれへ適用した。貼付剤を皮膚上に30分間保持してから取り外した。貼付剤を取り外した後に、皮膚表面を拭い、皮膚表面上に残っている残渣のrhPTHをHPLCにより求めた。適用後の添付剤上の残渣のrhPTHも、HPLCにより求めた。初期含有量と、皮膚及び貼付剤上に残っている残渣との差を用いて、正味の送達用量10.0mcgを求めた。
【0117】
時間0分(適用前)、10分、20分、30分、40分、50分、60分、90分、120分、180分、300分及び420分において、耳静脈から採血した(1時点当たり1.5mL)。血漿サンプル容積をおよそ0.7mLとした。分析前に、血漿を-70℃で保存した。血漿サンプルを、ELISAアッセイキットを用いてアッセイした。rhGH(1-34)スタンダードをそれぞれの個々のプレート上で走らせて、そのプレートについての標準曲線を求めた。Cmaxにより正規化した血漿の平均レベル(n=4)を、図B4に実線で示す。
【0118】
比較例1-rhGH
1.3%のrhGH(ProSpec-Tany TechnoGene Ltd.,Ness Ziona,Israelから入手可能)、ヒドロキシエチルセルロース100cP溶液(2.3%)、スクロース(40.0%)及び注射用水(56.5%)からなるコーティング調合物を調製した。sMTS貼付剤を、実施例2に記載の通りに調製した。コーティングされたアレイを、rhGHの含有量についてHPLCにより分析したところ、平均含有量1.8mcg(n=6)を有していた。6つの貼付剤を1回用量として各ブタに適用し、総用量は11.0mcgとした。正味の送達用量は10.7mcgとした。動物試験及び分析を、実施例1に記載の通りに実施した。Cmaxにより正規化した血漿の平均レベル(n=4)を、図4に点線で示す。
【0119】
コーティングされたマイクロニードルアレイのための亜鉛組成物の様々な実施形態を開示する。当業者であれば、本開示が、開示されている実施形態以外の実施形態で実践できることを理解するであろう。開示された実施形態は、説明を目的として提示されるものであって、限定を目的として提示されるものではなく、本開示は以下の「特許請求の範囲」によってのみ限定されるものである。
本開示の実施態様の一部を以下の[項目1]-[項目16]に記載する。
[項目1]
治療有効量の活性薬剤を含む組成物と、
亜鉛、医薬として許容される亜鉛の塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される亜鉛化合物と、
マイクロニードルのアレイとを備え、
前記組成物の少なくとも一部が前記マイクロニードルの少なくとも一部の上のコーティングとして存在する、医療デバイス。
[項目2]
前記亜鉛化合物が、亜鉛の無機塩を含む、項目1に記載の医療デバイス。
[項目3]
前記亜鉛化合物が、亜鉛の二価塩を含む、項目1又は2に記載の医療デバイス。
[項目4]
前記亜鉛化合物が、塩化亜鉛又は酢酸亜鉛を含む、項目1~3のいずれか一項に記載の医療デバイス。
[項目5]
亜鉛化合物の、活性薬に対するモル比が、0.1~2.0である、項目1~4のいずれか一項に記載の医療デバイス。
[項目6]
亜鉛化合物の、活性薬に対するモル比が、0.2~1.5である、項目1~5のいずれか一項に記載の医療デバイス。
[項目7]
亜鉛化合物の、活性薬に対するモル比が、0.25~1.0である、項目1~6のいずれか一項に記載の医療デバイス。
[項目8]
前記活性薬剤が、タンパク質又はペプチドである、項目1~7のいずれか一項に記載の医療デバイス。
[項目9]
前記活性薬剤が、ヒト成長ホルモン(hGH)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRH類似体(例えばゴセレリン、ロイプロリド、ブセレリン、トリプトレリン)、ゴナドレリン及びナプファレリン、メノトロピン(卵胞刺激ホルモン(FSH)及び黄体形成ホルモン(LH))、ヒト閉経期ゴナドトロピン(hMG)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、バソプレシン、デスモプレシン、インスリン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、ACTH類似体、例えばACTH(1-24)、カルシトニン、パラチロイドホルモン(PTH)、パラチロイドホルモン拮抗剤、パラチロイドホルモン関連タンパク質(PTHrP)、オキシトシン、デアミノ[Val4,D-Arg8]アルギニンバソプレシン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、腫瘍壊死因子(TNF)、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン、IL-2(IL-2)、インターロイキン-10(IL-10)、グルカゴン及び成長ホルモン放出因子(GRF)からなる群から選択される、項目1~7のいずれか一項に記載の医療デバイス。
[項目10]
前記組成物の50重量%よりも多くが、前記マイクロニードル上のコーティングとして存在する、項目1~9のいずれか一項に記載の医療デバイス。
[項目11]
前記組成物の75重量%よりも多くが、前記マイクロニードル上のコーティングとして存在する、項目1~10のいずれか一項に記載の医療デバイス。
[項目12]
前記組成物の90重量%よりも多くが、前記マイクロニードル上のコーティングとして存在する、項目1~11のいずれか一項に記載の医療デバイス。
[項目13]
治療活性薬剤を哺乳動物に送達する方法であって、項目1~12のいずれか一項に記載のデバイスを前記哺乳動物の皮膚表面に適用すること、前記デバイスを前記皮膚とある時間接触させて前記活性薬剤の一部を前記哺乳動物の前記皮膚内に移行させること、及び続いて前記哺乳動物から前記デバイスを取り外すことを含む、方法。
[項目14]
前記哺乳動物において達成されるCmaxが、亜鉛化合物を含まない組成物を有する同様のデバイスを前記哺乳動物に前記ある時間適用した場合に達成されるCmaxよりも大きい、項目13に記載の治療活性薬剤を哺乳動物に送達する方法。
[項目15]
前記哺乳動物において達成されるAUCが、亜鉛化合物を含まない組成物を有する同様のデバイスを前記哺乳動物に前記ある時間適用した場合に達成されるCmaxよりも大きい、項目13又は14に記載の治療活性薬剤を哺乳動物に送達する方法。
[項目16]
前記活性薬剤が、PTHrP類似体ではない、項目1~15のいずれか一項に記載の医療デバイス又は方法。
図1
図2
図3
図4