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特許71166823-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンを含む認知機能改善用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンを含む認知機能改善用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/353 20060101AFI20220803BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220803BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20220803BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61K31/353
A61P25/28
A23L33/105
A61P43/00 111
A61P43/00 105
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018526256
(86)(22)【出願日】2017-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 KR2017007664
(87)【国際公開番号】W WO2018016826
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-05-08
(31)【優先権主張番号】10-2016-0090765
(32)【優先日】2016-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0089449
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン, ヨン-ドク
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ミン シク
(72)【発明者】
【氏名】チョ, シ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジョン-キ
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-537576(JP,A)
【文献】特表2003-532634(JP,A)
【文献】特開2013-253071(JP,A)
【文献】米国特許第09061023(US,B1)
【文献】Iran Biomed J.,2007年,11(4),237-243
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/353
A61P 25/28
A61P 43/00
A23L 33/105
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表わされる3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン(3-O-galloyl-3,3’,5,5’,7-pentahydroxyflavan)、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、又はその溶媒和物を有効成分として含む、認知機能低下改善用組成物。
【化1】
【請求項2】
前記3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンは、下記の化学式2で表わされるTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン(Trans-3-O-galloyl-3,3’,5,5’,7-pentahydroxyflavan)である、請求項1に記載の組成物。
【化2】
【請求項3】
当該組成物中の3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、又はその溶媒和物の含量は、当該組成物の総質量に対して0.000001質量%~5質量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
当該組成物の投与による3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン(3-O-galloyl-3,3’,5,5’,7-pentahydroxyflavan)、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、又はその溶媒和物の投与量は、0.0001mg/kg/日~15mg/kg/日である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記認知機能低下は、ベータアミロイド(β-amyloid)の凝集(aggregation)、脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor、BDNF)発現低下、及びDNMT1(DNA(cytosine-5)-methyltransferase 1)発現増加からなる群より選ばれた一つ以上に起因する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記認知機能低下は、記憶力減退、認知減退、識別力減退、鬱病、及び健忘症からなる群より選ばれた一つ以上を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記改善は、ベータアミロイドの凝集抑制、凝集したベータアミロイドの分解、BDNF発現増進、及びDNMT1発現減少からなる群より選ばれた一つ以上によってなされる、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
当該組成物は、神経退行性疾病を予防又は治療するための薬学組成物である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記神経退行性疾病は、ベータアミロイド(β-amyloid)の凝集(aggregation)、BDNF発現低下、及びDNMT1発現増加からなる群より選ばれた一つ以上に起因する、薬学組成物である、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
前記神経退行性疾病はアルツハイマー病である、薬学組成物である、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
当該組成物は食品組成物である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン(3-O-galloyl-3,3’,5,5’,7-pentahydroxyflavan)を含む認知機能改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生活水準の向上や医療産業の発達に伴い、癌をはじめとする難治性疾患の治療が可能になりヒトが長寿命化したが、それに伴う人口の老齢化は晩成退行性神経疾患の増加をもたらし、これは、むしろ生活の質を相対的に低下させている。神経細胞機能障害や損傷は凝集しやすいタンパク質によって誘発するとされており、多数の神経系疾患はかかる容態を特徴とする。このような神経系疾患は、アルツハイマー病といった疾患を含む。
【0003】
アルツハイマー病とは、頭脳の神経細胞が損傷しながら認知能力減退、記憶力減退、不可逆的記憶損失、方向感覚喪失、識別力減退、鬱病、健忘症及び言語能力損傷障害などの症状を示す進行性神経退行性疾病である。アルツハイマー病は、脳血管疾患、癌に続く3番目に高い老化に関連した死亡原因であり、発生時、平均有病期間が10年以上になるので、保護者の精神的、経済的負担とともに社会的負担が増加している。現在まで知られているアルツハイマー病の最も代表的な原因としては、ベータアミロイド(β-amyloid、Aβ、アミロイドベータともいう)の異常な凝集(aggregation)が挙げられる。すなわち、脳内に正常に存在していたベータアミロイドが異常に凝集してアミロイドプラーク(Aβ plaque)を形成し、これにより神経細胞及び神経細胞連接が損傷して発病する。
【0004】
老人人口の増加につれ、老化、退行性神経疾患及び脳疾患に係る治療及び防止に係る必要性が増加しつつあり、それに伴い、かかる老化や疾患の予防、治療、緩和、及び改善などに関する研究が続けられてきている。しかし、既存の物質は効果が不明であったり副作用を誘発したりするなどの問題があり、このような問題を解決する天然物由来の治療剤の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第9061023号明細書
【文献】米国公開特許第2002-0151506号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】LIM, H. J. et al., “Green Tea Catechin Leads to Global Improvement among Alzheimer’s Disease-related Phenotypes in NSE/hAPP-C105 Tg Mice”, Journal of Nutritional Biochemistry, 2013, vol.24, no.7, pages 1302-1313
【文献】CHOI, Y. T. et al., “The Green Tea Polyphenol (-)-epigallocatechin Gallate Attenuates beta-amyloid-induced Neurotoxicity in Cultured Hippocampal Neurons”, Life Sciences, 2001, vol.70, pages 603-614
【文献】MPOFU, S. et al., “Interactive Efficacies of Elephantorrhiza Elephantina and Pentanisia Prunelloides Extracts and Isolated Compounds against Gastrointestinal Bacteria”, South African Journal of Botany, 2014, vol.94, pages 224-230
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、一側面において、天然物由来の認知機能低下改善用物質に関するものであって、後発酵茶分画物を含む認知機能低下改善用組成物を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、他の側面において、後発酵茶分画物から分離した3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン(3-O-galloyl-3,3’,5,5’,7-pentahydroxyflavan)を有効成分として含む認知機能低下改善用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、一側面において、3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン(3-O-galloyl-3,3’,5,5’,7-pentahydroxyflavan)、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、そのプロドラッグ、その水和物、その溶媒和物、又はそれを含む後発酵茶ケトン分画物を有効成分として含む認知機能低下改善用組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、一側面において、3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン(3-O-galloyl-3,3’,5,5’,7-pentahydroxyflavan)、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、そのプロドラッグ、その水和物、その溶媒和物、又はそれを含む後発酵茶ケトン分画物の有効量を、これを必要とする個体に投与することを含む認知機能低下改善及び治療方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、他の側面において、3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン(3-O-galloyl-3,3’,5,5’,7-pentahydroxyflavan)、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、そのプロドラッグ、その水和物、その溶媒和物、又はそれを含む後発酵茶ケトン分画物を認知機能低下改善及び治療用組成物の製造に用いる用途を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、他の側面において、認知機能低下改善及び治療のための3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン(3-O-galloyl-3,3’,5,5’,7-pentahydroxyflavan)、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、そのプロドラッグ、その水和物、その溶媒和物、又はそれを含む後発酵茶ケトン分画物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、一側面において、後発酵茶ケトン分画物を含む組成物及び特定の化合物を含む組成物を提供し、認知機能改善関連分野及び神経退行性疾病管理分野において広く活用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】後発酵茶抽出物を高速液体クロマトグラフィーにて分析した結果であって、アセトン分画を経た場合と経ていない場合とを示している。
図2】カフェインが除去されたクロロホルム:メタノール10:1(v/v)分画物を大容量高速向流クロマトグラフィー(high-performance countercurrent chromatography、HPCCC)を利用して10個の下位分画を分けたことを示したものである。
図3】HPCCCを利用して分画した前記10個の下位分画のうちの分画1~5に対して示したものである。
図4】HPCCCを利用して分画した前記10個の下位分画のうちの分画6~10に対して示したものである。
図5】ベータアミロイド凝集に対するTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンの抑制効果を示したものである。
図6】Trans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンの核磁気共鳴(NMR)グラフを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本明細書について詳しく説明する。
【0016】
本明細書において、「後発酵茶」は、茶の葉に存在する酵素ではない別途の微生物又は物質によって発酵させたものを含む。
【0017】
本明細書において、「ケトン分画物」は、ケトン溶媒を用いて特定の物質や抽出物を分画したもの又は分画して残ったもの、そして、これらを特定の溶媒で再び抽出したものを含む。前記ケトンの種類は問わないがアセトンが好ましく、分画方法及び抽出方法は当業界の通常の技術者に周知の如何なる方法を用いてもよい。
【0018】
本明細書において、「異性体」は、特に光学異性体(optical isomers)(例えば、本質的に純粋なエナンチオマー(essentially pure enantiomers)、本質的に純粋なジアステレオマー(essentially pure diastereomers)、又はこれらの混合物)だけでなく、配座異性体(conformation isomers)(すなわち、1つ以上の化学結合のその角度のみ異なる異性体)、位置異性体(position isomers)(特に、互変異性体(tautomers))、又は幾何異性体(geometric isomers)(例えば、シス-トランス異性体)を含む。
【0019】
本明細書において、「本質的に純粋な(essentially pure)」とは、例えば、エナンチオマー又はジアステレオマーと関連して用いた場合、エナンチオマー又はジアステレオマーを例として挙げることのできる具体的な化合物が約90%以上、好ましくは、約95%以上、より好ましくは、に約97%以上、又は約98%以上、さらに好ましくは、約99%以上、最も好ましくは、約99.5%以上(w/w)存在することを意味する。
【0020】
本明細書において、「薬学的に許容可能」とは、通常の医薬的服用量(medicinal dosage)で利用する際に相当な毒性を避けることにより、動物、より具体的には、ヒトに使用することができるという政府又はこれに準ずる規制機構の承認を受けることができ、又は承認を受け、又は薬局方に列挙され、又はその他一般的な薬局方に記載されたものと認知されることを意味する。
【0021】
本明細書において、「薬学的に許容可能な塩」とは、薬学的に許容可能であり、親化合物(parent compound)の好ましい薬理活性を有する本発明の一側面に係る塩を意味する。前記塩は、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などといった無機酸により形成されるか;又は、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンテンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2,2,2]-oct-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸といった有機酸により形成される酸付加塩(acid addition salt);又は(2)親化合物に存在する酸性プロトンが置換される際に形成される塩を含んでよい。
【0022】
本明細書において、「プロドラッグ(prodrug)」とは、ある薬物を化学的に変化させて、物理的、化学的性質を調節した薬物を意味し、それ自体は生理活性を示さないが、投与後に体内において化学的、生理学的、あるいは酵素の作用によって元来の薬物に変わって薬効を発揮することができる。
【0023】
本明細書において、「水和物(hydrate)」とは、水が結合している化合物を意味し、水と化合物との間に化学的な結合力のない内包化合物を含む広範囲な概念である。
【0024】
本明細書において、「溶媒和物」とは、溶質の分子やイオンと溶媒の分子やイオンとの間に生じた高次の化合物を意味する。
【0025】
本発明は、一側面において、下記の化学式1で表わされる3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン(3-O-galloyl-3,3’,5,5’,7-pentahydroxyflavan)、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、そのプロドラッグ、その水和物、その溶媒和物、又はそれを含む後発酵茶ケトン分画物を有効成分として含む認知機能低下改善用組成物を提供する。
【0026】
【化1】
【0027】
一具現例によれば、前記後発酵茶ケトン分画物は、後発酵茶の水不溶性抽出物に対するケトン分画物であってよい。
【0028】
他の具現例によれば、前記3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンは、下記の化学式2で表わされるTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン(Trans-3-O-galloyl-3,3’,5,5’,7-pentahydroxyflavan)であってよい。
【0029】
【化2】
【0030】
他の具現例によれば、前記ケトン分画物は、ケトン分画物のアルコール抽出物であってよい。
【0031】
他の具現例によれば、前記ケトンは、アセトン、カーボン(carvon)、プレゴン(pulegone)、イソロンギホレン(isolongifolanone)、2-ヘプタノン、2-ペンタノン、3-ヘキサノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-オクタノン、3-オクタノン、2-ノナノン、3-ノナノン、2-ウンデカノン、2-トリデカノン、メチルイソプロピルケトン、エチルイソアミルケトン、ブチリデンアセトン、メチルヘプテノン、ジメチルオクテノン、ゲラニルアセトン、ファルネシルアセトン、2,3-ペンタジオン、2,3-ヘキサジオン、3,4-ヘキサジオン、2,3-ヘプタジオン、アミルシクロペンタノン、アミルシクロペンテノン、2-シクロペンチルシクロペンタノン、ヘキシルシクロペンタノン、2-n-ヘプチルシクロペンタノン、cis-ジャスモン、ジヒドロジャスモン、メチルコリロン、2-tert-ブチルシクロヘキサノン、p-tert-ブチルシクロヘキサノン、2-sec-ブチルシクロヘキサノン、セロリケトン、クリプトン、p-tert-ペンチルシクロヘキサノン、メチルシクロシトロン、ネロン、4-シクロヘキシル-4-メチル-2-ペンタノン、オキシドケトン、エモキシフロン、メチルナフチルケトン、α-メチルアニサルアセトン、アニシルアセトン、p-メトキシフェニルアセトン、ベンジリデンアセトン、p-メトキシアセトフェノン、p-メチルアセトフェノン、プロピオフェノン、アセトフェノン、α-ダイナスコン(Dynascone)、イリトーン(lritone)、イオノン(ionone)、プソイドイオノン(Pseudoionone)、メチルイオノン、メチルイリトーン、2,4-ジ-tert-ブチルシクロヘキサノン、アリルイオノン、2-アセチル-3,3-ジ-メチルノルボルナン、ベルベノン、フェンコン(fenchon)、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデセノンなどを含んでいてよく、当業界で一般に用いられ得る溶媒としてのケトン類及びこれらの混合物をいずれも含んでいてよく、好ましくは、アセトンであってよい。
【0032】
また他の具現例によれば、前記アルコールは、当業界において一般に用いられていてよいアルコールの単独又は混合物であってよく、好ましくは、エタノールであってよい。
【0033】
本発明は、他の側面において、3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン(3-O-galloyl-3,3’,5,5’,7-pentahydroxyflavan)、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、そのプロドラッグ、その水和物、又はその溶媒和物を有効成分として含む認知機能低下改善用組成物を提供する。
【0034】
一具現例によれば、前記3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンは、前記化学式2で表されるTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン(Trans-3-O-galloyl-3,3’,5,5’,7-pentahydroxyflavan)であってよい。
【0035】
他の具現例によれば、前記組成物中の3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン又はTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、そのプロドラッグ、その水和物、又はその溶媒和物は、前記組成物の総質量を基準に0.000001質量%以上、0.000005質量%以上、0.00001質量%以上、0.00005質量%以上、0.0001質量%以上、0.0005質量%以上、0.001質量%以上、0.005質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上、1.8質量%以上、2質量%以上、2.2質量%以上、2.5質量%以上、2.8質量%以上、3質量%以上、3.2質量%以上、3.5質量%以上、3.8質量%以上、4質量%以上、4.2質量%以上、4.5質量%以上、又は4.8質量%以上であるか、5質量%以下、4.8質量%以下、4.5質量%以下、4.2質量%以下、3.8質量%以下、3.5質量%以下、3.2質量%以下、3質量%以下、2.8質量%以下、2.5質量%以下、2.2質量%以下、2質量%以下、1.8質量%以下、1.5質量%以下、1.2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、0.1質量%以下、0.05質量%以下、0.01質量%以下、0.005質量%以下、0.001質量%以下、0.0005質量%以下、0.0001質量%以下、0.00005質量%以下、0.00001質量%以下、又は0.000005質量%以下であってよい。好ましくは、0.000001~5質量%以下であってよい。
【0036】
他の具現例によれば、前記組成物中の後発酵茶ケトン分画物の含量は、前記組成物の総質量に対して0.01質量%以上、0.1質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であるか、100質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下、又は0.05質量%以下であってよい。好ましくは、0.01質量%~100質量%であってよい。
【0037】
他の具現例によれば、前記分画物は、3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン又はTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、そのプロドラッグ、その水和物、又はその溶媒和物が、分画物の総質量を基準に0.0001質量%以上、0.0005質量%以上、0.001質量%以上、0.005質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上、2質量%以上、2.5質量%以上、3質量%以上、3.5質量%以上、4質量%以上、又は4.5質量%以上であるか、5質量%以下、4.5質量%以下、4質量%以下、3.5質量%以下、3質量%以下、2.5質量%以下、2質量%以下、1.5質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.05質量%以下、0.01質量%以下、0.005質量%以下、0.001質量%以下、又は0.0005質量%以下であってよい。好ましくは、0.0001質量%~5質量%含まれていてよい。
【0038】
他の具現例によれば、前記組成物の投与による3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン又はTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン、その異性体、その薬学的に許容可能な塩、そのプロドラッグ、その水和物、又はその溶媒和物の投与量は、0.0001g/kg/日以上、0.001g/kg/日以上、0.01g/kg/日以上、0.1g/kg/日以上、1g/kg/日以上、2g/kg/日以上、3g/kg/日以上、4g/kg/日以上、5g/kg/日以上、6g/kg/日以上、7g/kg/日以上、8g/kg/日以上、9g/kg/日以上、10g/kg/日以上、11g/kg/日以上、12g/kg/日以上、13g/kg/日以上、又は14g/kg/日以上であるか、15g/kg/日以下、14g/kg/日以下、13g/kg/日以下、12g/kg/日以下、11g/kg/日以下、10g/kg/日以下、9g/kg/日以下、8g/kg/日以下、7g/kg/日以下、6g/kg/日以下、5g/kg/日以下、4g/kg/日以下、3g/kg/日以下、2g/kg/日以下、1g/kg/日以下、0.1g/kg/日以下、0.01g/kg/日以下、0.001g/kg/日以下、又は0.0005g/kg/日以下であってよい。好ましくは、0.0001g/kg/日~15mg/kg/日であってよい。
【0039】
他の具現例によれば、前記認知機能低下は、ベータアミロイド(β-amyloid)の凝集(aggregation)、ベータアミロイドプラーク(plaque)の形成、脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor、BDNF)の発現低下及びDNMT1(DNA(cytosine-5)-methyltransferase1)発現増加からなる群より選ばれたいずれか一つ以上に起因したものであってよい。
【0040】
また他の具現例によれば、前記認知機能低下は、記憶力減退、認知減退、識別力減退、鬱病、及び健忘症からなる群より選ばれる一つ以上を含んでいてよい。
【0041】
また他の具現例によれば、前記改善は、ベータアミロイドの凝集抑制、凝集したベータアミロイドの分解、BDNF発現増進、及びDNMT1発現減少からなる群より選ばれた一つ以上によりなされるものであってよい。
【0042】
本発明の一実施例に係る、前記Trans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンを用いてベータアミロイド凝集評価(beta-Amyloid aggregation assay)を実施した結果、比較対象物質であるエピカテキン3-O-ガレート(Epicatechin 3-O-gallate、ECG、1μg/ml)は化合物を処理していない対照群(positive control)に比べて17%の凝集抑制効果を示し、Trans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンは対照群に比べて64%の凝集抑制効果を示した。特に、Trans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンのベータアミロイドは、結果グラフ(図5参照)上、優れた凝集抑制剤として知られているフェノールレッド(phenol red、55%の凝集抑制効果)とモリン(morin、78%の凝集抑制効果)との間に位置するほど優れた凝集抑制効果を示した。さらに、Trans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン処理群において、反応時間60分後に凝集(aggregation)が減少する様相を示すことから、Trans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンは凝集したベータアミロイドの分解(disassemble)にも効果があることが分かる。したがって、本発明のTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンを用いてベータアミロイドに関係した認知機能低下を改善させることができることを確認した。また、ベータアミロイド凝集に起因する疾病(アルツハイマー病などの神経退行性疾病を含む)の予防及び治療にTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンを有効に用いることができることを確認した。
【0043】
また、本願発明のTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンは、神経細胞においてBDNF発現を増進させ、DNMT1の発現を低下させた。すなわち、BDNF発現減少又はDNMT1発現増進に関係した認知機能低下、アルツハイマー病などの神経退行性疾患の予防及び治療に本願発明を有効に活用することができることを究明したのである。
【0044】
本発明のまた他の側面において、前記組成物は、神経退行性疾病を予防又は治療するための薬学組成物であってよい。
【0045】
一具現例によれば、前記神経退行性疾病は、ベータアミロイド(β-amyloid)の凝集(aggregation)、ベータアミロイドのプラーク(plaque)の形成、BDNF発現低下、及びDNMT1発現増加からなる群より選ばれたいずれか一つ以上に起因したものであってよい。
【0046】
他の具現例によれば、前記神経退行性疾病は、アルツハイマー病を含んでいてよく、前記認知機能低下を含む症状を伴うものであってよい。
【0047】
本発明の一側面に係る前記薬学組成物は、経口、非経口、直腸、局所、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下などに投与されていてよい。経口投与のための剤形は錠剤、丸剤、軟質及び硬質カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、液剤、乳濁剤又はペレット剤であってよいが、これらに制限されるものではない。非経口投与のための剤形は、溶液剤、懸濁剤、乳液剤、ゲル、点滴剤、坐剤、パッチ又は噴霧剤であってよいが、これらに制限されるものではない。前記剤形は、当該分野における通常の方法によって容易に製造されていてよく、界面活性剤、賦形剤、水和剤、乳化促進剤、懸濁剤、浸透圧調節のための塩又は緩衝剤、着色剤、香辛料、安定化剤、防腐剤、保存剤又はその他常用する補助剤を更に含んでいてよい。
【0048】
本発明の一側面に係る前記薬学組成物の適用量又は投与量は、投与を受ける対象の年齢、性別、体重、病理状態及びその深刻度、投与経路又は処方者の判断によって変わり得る。このような因子に基づく適用量の決定は、当業者の水準内にあり、有効成分の1日投与用量は、例えば、0.001μg/kg/日~5000mg/kg/日、より具体的には、0.0001mg/kg/日~15mg/kg/日であってよいが、これに制限されるものではない。
【0049】
また他の具現例によれば、前記組成物は、食品組成物であってよい。
【0050】
前記食品組成物の剤形は、特に限定されないが、例えば、錠剤、顆粒剤、丸剤、粉末剤、ドリンク剤のような液剤、キャラメル、ゲル、バー、ティーバッグなどに剤形化されていてよい。各剤形の食品組成物は、有効成分の他、当該分野において通常に用いられる成分を剤形又は使用目的に応じて当業者が難なく適宜選定して配合していてよく、他の原料と同時に適用する場合に相乗効果を奏し得る。
【0051】
前記組成物は、単純摂取、飲用、注射投与、スプレー投与又はスクイズ投与などの多様な方法にて投与されていてよい。
【0052】
本発明の一側面に係る食品組成物において、前記有効成分の投与量の決定は当業者の水準内にあり、その1日投与用量は、例えば、0.0001mg/kg/日~15mg/kg/日であってよいが、これに制限されず、投与したい対象の年齢、健康状態、合併症などの種々の要因によって変わり得る。
【0053】
本発明の一側面に係る食品組成物は、例えば、チューインガム、キャラメル製品、キャンディー類、氷菓類、菓子類などの各種の食品類、清涼飲料、ミネラルウォーター、アルコール飲料などの飲料製品、ビタミンやミネラルなどを含む健康機能性食品類であってよい。
【0054】
前記以外に、本発明の一側面に係る食品組成物は、種々の栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含んでいてよい。その他、本発明の一側面に係る食品組成物は、天然果実ジュース及び果実ジュース飲料、並びに野菜飲料の製造のための果肉を含んでいてよい。これらの成分は、独立して、又は組み合わせて用いていてよい。これらの添加剤の比率は、さして重要ではないが、本発明の一側面に係る組成物100質量部当たり0~約50質量部の範囲で含まれるのが一般的である。
【0055】
以下、実施例、実験例、及び剤形例を挙げて本明細書の構成及び効果をより具体的に説明する。なお、これらの例は本明細書に対する理解を助けるための目的から例示したものに過ぎす、本明細書の範疇及び範囲が下記例により制限されるものではない
【0056】
<実施例1>後発酵茶試料の製造
緑茶(Camellia sinensis var. Yabukita)の葉で作った緑茶に水を添加して水分含量を40質量%に調整した。これにバチルス・サブチリス(Bacillus subtillis)5×10cfu/gを接種し、50℃で3日間醗酵させてから80℃で4日間醗酵させた。発酵された茶を70℃~80℃の熱風で水分含量4質量%~6質量%まで乾燥させた後、10℃で100日間熟成した。
【0057】
前記熟成された茶試料を15秒間粉砕し、メッシュサイズ1mmのステンレス篩いにかけた。次いで、粉砕された50mgを1.5mlエッペンドルフチューブ(Eppendorf tube)に入れ、1mlの脱イオン水を添加して、60℃恒温水槽で30分間一定速度で撹拌した後、25℃、13,000rpmで15分間遠心分離した。乾燥させた醗酵緑茶抽出物から水に溶けない部分のみを分離した。
【0058】
<実施例2>分画物の収得及び化合物の分離
前記後発酵茶試料150gをアセトンで分画してカテキン誘導体及びカフェインをできるだけ除去し、フラボノイドが濃縮された可溶物を収得した。前記アセトン可溶物40gに対し、一次的にシリカゲルカラムクロマトグラフィーを利用して、クロロホルム:メタノールの混合物を溶媒として、10:1、5:1、1:1(v/v)の順に溶出して各分画を得た。
【0059】
ここで、クロロホルム:メタノール10:1(v/v)分画12gを高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography、HPLC、Waters Alliance 2695 system、Waters、USA)で分析した結果、前記のようにアセトンで分画していない場合、依然としてカフェインが主化合物として存在しており、前記のようにアセトンを用いて分画した後はカフェインが除去されたことを確認した(図1)。
【0060】
カフェインが除去されたクロロホルム:メタノール10:1(v/v)分画物8.9gを大容量高速向流クロマトグラフィー(high-performance countercurrent chromatography、HPCCC、Dynamic Extractions Ltd、UK)を利用して分画した。この際に用いた溶媒はn-hexane-TBME(Methyl tert-butyl ether)-BuOH-MeCN-Water(0.25:3:1:1:5、v/v)であり、流速は25ml/minであった。前記条件を用いて総10個の下位分画を分け(図2)、これらをHPLCで分析して、各分画に含有された化合物の大半がフラボノイド(flavonoid)系であることを確認した(図3図4)。
【0061】
前記分画物からTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン(Trans-3-O-galloyl-3,3’,5,5’,7-pentahydroxyflavan、C221810、分子量442.0900)を分離し、分離された化合物の構造は下記のとおりである。
【0062】
【化3】
【0063】
H核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)の場合、溶媒(solvent)としてmethanol-d3を用い、機器はBruker Advance DPX-500(BRUKER社、USA)を使用し、Trans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンのNMRデータは下記のとおりであり、具体的なグラフは図6のとおりである。
【0064】
H NMR d(500Hz) 7.01(s、2H)、6.89(s、1H)、6.76(s、2H)、6.04(s、1H)、5.96(s、1H)、5.36(m、1H)、5.13(m、1H)、2.83(m、1H)、2.73(m、1H)
【0065】
<実験例1>ベータアミロイド凝集効果の確認
前記Trans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンのベータアミロイド凝集阻害効果を蛍光分析法(ThioflavinT assay)にて確認した。
【0066】
具体的に、ベータアミロイド(Aβ1-42、American Peptide Co、USA)5μMの濃度で用い、使用前に-80℃で保管した。DMSOにモリン(Morin、100μM)、フェノールレッド(Phenol Red、100μM)、エピカテキン3-O-ガレート(Epicatechin 3-O-gallate、ECG、1μg/ml)、Trans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン(1μg/ml)それぞれを希釈して前記濃度に調節した。Aβ1-42凝集抑制程度を特定するために、0.01Mリン酸ナトリウム緩衝溶液92.5μlに前記濃度で用意したそれぞれの化合物を5μlずつ加え、5μMのAβ1-42を2.5μl加えてから、37℃で26時間反応させた後、5μMチオフラビンT(ThioflavinT)2,000μlを加え、蛍光分光光度計(RF-5300PC、SHIMADZU CORPORATION、Japan)で測定した。
【0067】
その結果を図5に併せて示した。すなわち、ECGとTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンは、それぞれ陽性対照群(positive control、化合物を処理することなくベータアミルロイドだけを凝集させたもの)に比べて17%、64%の凝集抑制効果を示した。特に、Trans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンの抑制効果(64%)は、陽性抑制剤(positive inhibitor)として用いられたフェノールレッド(55%)とモリン(78%)との間に位置するほど優れた凝集抑制効果を示した。Trans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン処理群において、反応時間60分後に凝集が減少する様相から、Trans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンは凝集したベータアミロイドの分解(disassemble)にも効果があることが確認された。
【0068】
<実験例2>細胞内のBDNF(脳由来神経栄養因子、brain-derived neurotrophic factor)及びDNMT1(DNA(cytosine-5)-methyltransferase 1)の発現量の確認
SH-SY5Y(神経芽細胞腫、韓国細胞株銀行)細胞株を6ウェルプレート(well plate、FALCON)にウェル当たり2×10ずつシーディングし(seeding)、24時間、37℃、5%COインキュベータに培養後、GCG 10μM、EGCG 10μM、既存の緑茶抽出物(green tea extract、GTE)10μg/ml、Trans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン10μg/ml、陽性対照群として5-Aza-2’deoxycytidine(5-Aza、Sigma-aldrich)1μMで処理して24時間更に培養した。次いで、培地を全て除去し、RNA抽出キット(RNeasy mini kit、Quiagen社)を利用してRNAを抽出した。抽出したmRNAを紫外線検出器(TECAN社)を利用して定量後、1μgのmRNAをキット(SuperScript VILO cDNA Synthesis Kit、Thermofisher scientific社)を利用して相補的なDNAに合成した。約1μgの相補的なDNAを取り、Taqman probe(Life technology社)とQuantitect Probe PCR Kit(Quiagen社)を利用してリアルタイム定量連鎖重合反応を実施した。これにより、BDNF及びDNMT1の発現量を確認した。このとき、補正基準mRNAとしては、ハウスキーピング遺伝子(housekeeping gene)であるGAPDHを用いた。
【0069】
BDNF及びDNMT1の発現量をそれぞれ表1及び表2に表した。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
<剤形例1>軟質カプセル
本発明の実施例2に係る後発酵茶アセトン分画物150mg、ラクトース440mg、とうもろこし澱粉430mg及びステアリン酸マグネシウム2mgを混合して軟質カプセル充填液を製造した。そして、該充填液とは別にゼラチン66質量部、グリセリン24質量部及びソルビトール液10質量部の割合で軟質カプセルシートを製造し、前記充填液を充填して、軟質カプセルを製造した。
【0073】
また、本発明の実施例に係るTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン3mg、ラクトース440mg、とうもろこし澱粉450mg及びステアリン酸マグネシウム2mgを混合して軟質カプセル充填液を製造する。そして、前記のように軟質カプセルシートを製造し、前記充填液を充填して、軟質カプセルを製造した。
【0074】
<剤形例2>錠剤
本発明の実施例2に係る後発酵茶アセトン分画物150mg、ビタミンE 15mg、ビタミンC 15mg、ガラクトオリゴ糖250mg、乳糖60mg及び麦芽糖140mgを混合し、流動層乾燥機を利用して造粒した後、糖エステル(sugar ester)8mgを添加した。この組成物を通常の方法にて打錠して錠剤を製造した。
【0075】
また、実施例のTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン3mg、ビタミンE 15mg、ビタミンC 15mg、ガラクトオリゴ糖259mg、乳糖60mg及び麦芽糖140mgを混合し、流動層乾燥機を利用して造粒した後、糖エステル(sugar ester)8mgを添加した。この組成物を通常の方法にて打錠して錠剤を製造した。
【0076】
<剤形例3>ドリンク剤
本発明の実施例2に係る後発酵茶アセトン分画物80mg、ビタミンE 9mg、ビタミンC 9mg、ブドウ糖10g、クエン酸0.6g、及び液状オリゴ糖25gを混合し、これに精製水400mlを加えて、ビンに充填した。ビンに充填した後、30℃で4~5秒間殺菌してドリンク剤を製造した。
【0077】
また、実施例のTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン0.1mg、ビタミンE 9mg、ビタミンC 9mg、ブドウ糖10g、クエン酸0.6g、及び液状オリゴ糖25gを混合し、これに精製水400mlを加えて、各ビンに200mlずつ充填した。ビンに充填した後、30℃で4~5秒間殺菌してドリンク剤を製造した。
【0078】
<剤形例4>顆粒剤
本発明の実施例2に係る後発酵茶アセトン分画物150mg、ビタミンE 9mg、ビタミンC 9mg、無水結晶ブドウ糖250mg及び澱粉550mgを混合し、流動層顆粒機を使用して料粒に造粒した後、包みに充填して顆粒剤を製造した。
【0079】
また、実施例のTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボン3mg、ビタミンE 9mg、ビタミンC 9mg、無水結晶ブドウ糖250mg及び澱粉550mgを混合し、流動層顆粒機を使用して顆粒に造粒した後、包みに充填して顆粒剤を製造した。
【0080】
<剤形例5>注射剤
下記の表3に表わされた組成に従い、通常の方法にて注射剤を製造した。
【0081】
【表3】
【0082】
また、前記後発酵茶アセトン分画物の代わりに、実施例のTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンを3mg用いて注射剤を製造した。
【0083】
<剤形例6>健康食品
下記の表4に表わした組成に従い、通常の方法にて健康食品を製造した。
【0084】
【表4】
【0085】
また、前記後発酵茶アセトン分画物の代わり、実施例のTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンを3mg用いて健康食品を製造した。
【0086】
前記ビタミン及び無機質混合物の組成比は、比較的に健康食品に適合した成分を例にして混合組成したが、その配合比を任意に変形実施しても構わなく、通常の健康食品の製造方法にて前記の成分を混合した後、通常の方法にて健康食品の組成物の製造に用いてよい。
【0087】
<剤形例7>健康飲料
【0088】
【表5】
【0089】
前記表5のように総体積900mlとなるように残量の精製水を添加して、通常の健康飲料の製造方法に従い、前記成分を混合してから、約1時間、85℃で撹拌加熱した後、作られた溶液をろ過し、滅菌された2リットルの容器に入れて、密封滅菌した後、冷蔵保管して、健康飲料を製造した。
【0090】
また、前記後発酵茶アセトン分画物の代わりに、実施例のTrans-3-O-ガロイル-3,3’,5,5’,7-ペンタヒドロキシフラボンを0.1mg用いて健康飲料を製造した。
【0091】
以上、本明細書の特定の部分について詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとってこうした具体的な記述は、単に好ましい具現例であるに過ぎず、これにより本明細書の範囲が制限されるものでない点は明白である。したがって、本明細書の実質的な範囲は、特許請求の範囲とそれらの等価物によって定義されると言える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6