(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
H02P 9/00 20060101AFI20220803BHJP
F03D 7/04 20060101ALI20220803BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220803BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
H02P9/00 F
F03D7/04 A
H02J7/00 303B
H02P9/04 A
(21)【出願番号】P 2019045356
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2019-03-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅博
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】長馬 望
【審判官】小川 恭司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-058061(JP,A)
【文献】特開2002-315395(JP,A)
【文献】特開昭59-067898(JP,A)
【文献】特開2007-159353(JP,A)
【文献】特開2013-223422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/00
F03D 7/04
H02J 7/00
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風または水のエネルギーを回転エネルギーに変えるプロペラ部、
電流を流すことで磁界を発生するとともに前記プロペラ部に結合されて回転する励磁コイル部、および
前記励磁コイル部と近接して配置され、前記励磁コイル部の磁界の変化により発電する発電コイル部、を有する電磁石発電機と、
前記発電コイル部からの交流の発電電力を直流電力に変換する整流部と、
前記整流部の直流電力により充電される蓄電部と、
前記蓄電部を電源として、前記励磁コイル部に励磁電力を供給する励磁部と、
前記励磁コイル部の回転数から前記プロペラ部の回転数を検出する回転検出部と、
前記回転検出部から得られる前記プロペラ部の回転数に基づいて、あらかじめ設定されたプロペラ効率の良い領域で発生できるプロペラトルクと同等のトルクを前記電磁石発電機で発生するように前記励磁部のみを制御することで、前記励磁コイル部への励磁電力を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記励磁電力を制御する前処理として、
各風速における前記プロペラ部の回転数と機械出力との関係に相当する第1のプロペラ特性、および各風速における前記プロペラ部の回転数とトルクとの関係に相当する第2のプロペラ特性をあらかじめ取得し、
前記第1のプロペラ特性において、各風速について機械出力が最大点となるプロペラ部の回転数を、前記プロペラ効率の良い領域における回転数として求め、
前記第2のプロペラ特性において、各風速について前記機械出力が最大点となるプロペラ部の回転数に対応するトルクを求め、
前記機械出力が最大点となるプロペラ部の回転数に対応する前記トルクを発生できる励磁電流を、実測あるいはシミュレーションであらかじめ求めることで、前記プロペラ部の回転数に適した励磁電流を特定しておき、
前記励磁部のみを制御する際には、
前記前処理により特定された、前記機械出力が最大点となるプロペラ部の回転数と、前記回転数に対応するトルクを発生するための励磁電流との対応関係を用いて、前記回転検出部から得られる前記プロペラ部の回転数に対応
した励磁電流を
特定し、特定した前記励磁電流を流すように前記励磁コイル部への励磁電力を制御する
発電装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記回転検出部から得られる前記プロペラ部の回転数が、事前に決められた上限回転数以上になった際に、前記プロペラ部の回転数で前記プロペラ効率の良い領域で発生できる前記プロペラトルクよりも大きいトルクを前記電磁石発電機で発生するように前記励磁部を制御することで、前記励磁コイル部への前記励磁電力を制御する
請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記回転検出部から得られる前記プロペラ部の回転数が、事前に決められた下限回転数以下になった際に、前記励磁コイル部への励磁を実行しない
請求項1または2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記励磁コイル部の温度を検出する温度検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記温度検出部の温度検出結果に従って温度補償を行って求めた前記励磁電力に従って前記励磁部を制御する
請求項1から3のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項5】
前記励磁コイル部へ励磁電圧が印加された際の励磁電流をモニタするための励磁電流モニタ部をさらに備え、
前記制御部は、前記励磁電流モニタ部の検出結果より求めた実際の励磁電力に従って前記励磁部を制御する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項6】
前記励磁部は、前記励磁電力を制御する方式としてPWM制御によるパルス幅変調電圧制御回路を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項7】
前記励磁部は、前記励磁電力を制御する方式としてDC電圧制御回路を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風または水のエネルギーを用いて発電を行う発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
励磁電流の制御を回転数によって行う発電装置に関する従来技術がある(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1は、風力発電のプロペラの回転を検出し、あらかじめ決められた回転閾値以下であれば、励磁をOFFして励磁による回転負荷を低減し、回転停止状態にならないようにしている。特許文献2は、自動車用充電装置において、高回転時ほど、励磁電流を減少させることで、高回転時の定電圧発電制御を行っている。
【0003】
上記のように、従来の電磁石発電機では、電磁石発電機に回転力を供給する回転体によっては、その回転体の動力源により、あらかじめ定められた設定回転数以上で回転できるエネルギーを持っていない場合がある。例えば、小型の風力発電用のプロペラを電磁石発電機に接続した場合、風速が強ければ電磁石発電機の回転数は、発電可能な設定回転数以上まで達することができる。
【0004】
しかしながら、低風速時には、電磁石発電機は、回転数が設定回転数まで達することができず、発電電力が励磁電力を上回ることができず、せっかく発電を行っても、結果として取出し電力がプラスにはならなかった。
【0005】
そこで、このような問題に対して、励磁コイルの回転数に応じて励磁電流の制御を行う制御技術がある。この制御技術では、励磁コイルの回転数を検知し、その回転数に対して適切な励磁電流を流すことで、その回転数で、発電機として適切な取り出し出力を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4134582号公報
【文献】特開昭61-112536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、プロペラは、プロペラを通過する風速と、プロペラ先端部の速度に相当するプロペラの周速との比によって、風速を回転エネルギーに変換する効率が変わってくる。なお、風速とプロペラの周速との比のことを、以下では、周速比と称する。
【0008】
同じ風速であっても、回転数(=周速比)によってプロペラの発生できるトルクおよび出力は変わる。換言すると、各風速で、風速に対して最適なプロペラ回転数が存在する。
【0009】
ここで、発電電力は、電圧の2乗になるため、回転数が高いほど、発電量が2乗で大きくなる。従って、特に、低回転時においては、発電量が少なく、効率も悪いことがわかる。
【0010】
また、風力発電機全体としては、プロペラの機械出力に対して、発電機の効率を乗算した出力が得られることになる。したがって、風速に対して最適なプロペラ回転数であって、かつ、極力高回転で回転することで、効率の良い発電が可能になる。
【0011】
通常、小型の風力発電機は、強風時に電磁ブレーキ制御を行っている。このため、ある任意の回転数で発電機の発生するトルクは、プロペラの発生するトルクより大きくすることが一般的である。
【0012】
その場合、上述した制御技術を採用して、発電機の最適な取り出し出力を得るための励磁制御を行うと、回転数は、プロペラの発生するトルクと発電機の発生するトルクとが等しくなる軌跡をたどることとなる。
【0013】
この結果、発電機の発生トルクが大きいため、回転数は、プロペラの周速比で決まる最適な回転数よりも低い回転数となり、風速を効率よく回転エネルギーに変換することができない。さらには、回転数が低いため、発電機の効率も悪い状態であり、そのときの発電機の出力は、低い出力の値となっていた。
【0014】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、従来の発電装置と比較して、風または水のエネルギーを効率よく電力に変換することのできる発電装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る発電装置は、風または水のエネルギーを回転エネルギーに変えるプロペラ部、電流を流すことで磁界を発生するとともにプロペラ部に結合されて回転する励磁コイル部、および励磁コイル部と近接して配置され、励磁コイル部の磁界の変化により発電する発電コイル部、を有する電磁石発電機と、発電コイル部からの交流の発電電力を直流電力に変換する整流部と、整流部の直流電力により充電される蓄電部と、蓄電部を電源として、励磁コイル部に励磁電力を供給する励磁部と、励磁コイル部の回転数からプロペラ部の回転数を検出する回転検出部と、回転検出部から得られるプロペラ部の回転数に基づいて、あらかじめ設定されたプロペラ効率の良い領域で発生できるプロペラトルクと同等のトルクを電磁石発電機で発生するように励磁部のみを制御することで、励磁コイル部への励磁電力を制御する制御部とを備え、制御部は、励磁電力を制御する前処理として、各風速におけるプロペラ部の回転数と機械出力との関係に相当する第1のプロペラ特性、および各風速におけるプロペラ部の回転数とトルクとの関係に相当する第2のプロペラ特性をあらかじめ取得し、第1のプロペラ特性において、各風速について機械出力が最大点となるプロペラ部の回転数を、プロペラ効率の良い領域における回転数として求め、第2のプロペラ特性において、各風速について機械出力が最大点となるプロペラ部の回転数に対応するトルクを求め、機械出力が最大点となるプロペラ部の回転数に対応するトルクを発生できる励磁電流を、実測あるいはシミュレーションであらかじめ求めることで、プロペラ部の回転数に適した励磁電流を特定しておき、励磁部のみを制御する際には、前処理により特定された、機械出力が最大点となるプロペラ部の回転数と、回転数に対応するトルクを発生するための励磁電流との対応関係を用いて、回転検出部から得られるプロペラ部の回転数に対応した励磁電流を特定し、特定した励磁電流を流すように励磁コイル部への励磁電力を制御するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来の発電装置と比較して、風または水のエネルギーを効率よく電力に変換することのできる発電装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態1による発電装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態1において、各風速に対して、プロペラ回転数と機械出力との関係、および各風速での動作点例を示した特性図である。
【
図3】本発明の実施の形態1において、各風速に対して、プロペラ回転数とトルクとの関係、および各風速での動作点例を示した特性図である。
【
図4】本発明の実施の形態1において、発電機の回転数に対する出力特性および効率特性の一例を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施の形態2において、プロペラ回転数に対して過回転防止を考慮して特定された、最適な励磁電流をプロットした図である。
【
図6】本発明の実施の形態2において、各風速に対して、プロペラ回転数と機械出力との関係、および過回転防止励磁制御を実行した場合の各風速での動作点例を示した特性図である。
【
図7】本発明の実施の形態2において、各風速に対して、プロペラ回転数とトルクとの関係、および過回転防止励磁制御を実行した場合の各風速での動作点例を示した特性図である。
【
図8】本発明の実施の形態4による発電装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】本発明の実施の形態5による発電装置の構成を示すブロック図である。
【
図10】本発明の実施の形態6に係る発電装置に適用されるPWM電圧制御回路の構成図である。
【
図11】本発明の実施の形態7に係る発電装置に適用されるDC電圧可変制御回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の発電装置の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
【0019】
実施の形態1.
まず始めに、本実施の形態1に係る発電装置の構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1による発電装置の構成を示すブロック図である。発電部1は、発電コイル部1aと励磁コイル部1bとを有する。発電コイル部1aと励磁コイル部1bとは、近接して配置されている。発電コイル部1aと励磁コイル部1bとは、例えば、同軸上に入れ子状態に設けられる。
【0020】
励磁コイル部1bは、風力発電のプロペラからなる回転部2に結合されており、回転部2とともに回転する。回転部2は、プロペラ部に相当する。また、励磁コイル部1bは、励磁部5から励磁電力が供給されることで、磁界を発生する。
【0021】
一方、発電コイル部1aは、固定されている。発電コイル部1aは、励磁コイル部1bが発生する磁界の、回転による磁束変化により、交流電圧を発生する。ここで、発電コイル部1aおよび励磁コイル部1bを有する発電部1と、プロペラ部に相当する回転部2とで、電磁石発電機が構成される。
【0022】
整流部3は、発電コイル部1aが発生した交流電圧を整流して直流電圧に変換して、蓄電部4を充電する。すなわち、整流部3は、発電コイル部1aからの交流の発電電力を直流電力に変換する。励磁部5は、蓄電部4を電源として、励磁コイル部1bに励磁電力を供給することで、励磁コイル部1bを励磁させる。
【0023】
回転検出部6は、励磁コイル部1bの回転数を検出する。制御部10は、回転検出部6からの回転数に従って励磁部5からの励磁電力の制御を行う。制御部10は、例えばプロセッサとメモリ、またはディジタル回路からなるコンピュータで構成される。
【0024】
励磁電力の制御を行う制御部10は、回転検出部6から入力される回転数に従って、プロペラ回転数に応じた適切な励磁電力を決定して、励磁部5を制御する。
【0025】
次に、
図1の構成を備えた本実施の形態1に係る発電装置において実行される励磁制御について、従来技術で説明した、励磁コイルの回転数によって励磁電流の制御を行う制御技術との比較に基づいて、詳細に説明する。なお、以下では、従来技術で説明した、励磁コイルの回転数によって励磁電流の制御を行うこの制御技術のことを、従来の励磁制御と称する。
【0026】
図2は、本発明の実施の形態1において、各風速に対して、プロペラ回転数と機械出力との関係、および各風速での動作点例を示した特性図である。また、
図3は、本発明の実施の形態1において、各風速に対して、プロペラ回転数とトルクとの関係、および各風速での動作点例を示した特性図である。
【0027】
図2および
図3の特性例は、同一のプロペラでのものである。また、
図2および
図3では、従来の励磁制御を採用した場合の動作点の軌跡が、■印でプロットされており、本実施の形態1に係る励磁制御を採用した場合の動作点の軌跡が、●印でプロットされている。
【0028】
これら
図2、
図3から、同じ風速であっても、回転数(=周速比)によってプロペラの発生できるトルクおよび出力が変わることがわかる。換言すると、各風速で、グラフの山の部分に相当する「風速に対して最適なプロペラ回転数」があることがわかる。
【0029】
これに対し、下式(1)は、発電の原理を表すものである。
発電電圧E=BLV (1)
E:発電電圧[V]
B:磁束密度[Wb/m2]
L:線長[m]
V:速度[m/s]
【0030】
なお、上式(1)において、B×Vは、磁束の変化量に相当し、Lは、コイルの巻数に相当する。上式(1)より、発電機は、回転数による磁力変化およびコイルの巻数に応じた電圧を発電するシステムになっている。ここで、発電電力は、電圧の2乗になるため、回転数が高いほど、発電量が2乗で大きくなる。
【0031】
図4は、本発明の実施の形態1において、発電機の回転数に対する出力特性および効率特性の一例を示す説明図である。
図4からわかるように、発電機は、特に、低回転時には発電量が少なく、効率も悪いことがわかる。
【0032】
また、風力発電機全体としては、
図2で示したプロペラの機械出力に対して、
図4で示した発電機の効率を乗算した出力が得られることになる。したがって、風速に対して最適なプロペラ回転数であって、かつ、極力高回転で回転することで、効率の良い発電が可能になる。
【0033】
通常、小型の風力発電機は、強風時に電磁ブレーキ制御を行っている。このため、ある任意の回転数で発電機の発生するトルクは、プロペラの発生するトルクより大きくすることが一般的である。
【0034】
その場合、発電機の最適な取り出し出力を得る従来の励磁制御を行うと、
図3において■印で示すように、回転数は、プロペラの発生するトルクと発電機の発生するトルクとが等しくなる軌跡をたどる。
【0035】
この結果、発電機の発生トルクが大きいため、回転数は、プロペラの周速比で決まる最適な回転数よりも低い回転数となり、風速を効率よく回転エネルギーに変換することができない。さらには、回転数が低いため、発電機の効率も悪い状態であり、そのときの発電機の出力は、
図2において■印で示すような軌跡をたどり、低い出力の値となっていた。
【0036】
そこで、本実施の形態1に係る励磁制御は、従来の励磁制御と比較して、効率よく風力を電力に変換することのできるようにするために、以下のような工夫が成されている。
【0037】
プロペラに接続する発電機の各回転数に対応する励磁電流対トルク特性があらがじめ取得されている場合を考える。この場合、本実施の形態1に係る発電装置では、風速に対して、プロペラの周速比での回転数出力が最大となる最適な回転数、すなわち、先の
図2において機械出力が最大値となる回転数で発生するプロペラトルクと、同等のトルクを発電機が発生するように、励磁電流が制御される。なお、「機械出力が最大値となる回転数」とは、あらかじめ設定されるプロペラ効率の良い領域の一例であり、必ずしも「最大値」を採用する必要はない。
【0038】
このような制御により、発電機の各回転時における必要トルクが、各風速に対しプロペラの機械出力を最大に発生するトルクと釣り合う。この結果、プロペラが接続された発電機を、常に各風速に対して、最適回転数に安定させることができる。
【0039】
すなわち、
図2および
図3において●印の軌跡として示すように、プロペラの任意の風速に対して最大の出力を発生できる。この結果、発電機としても、効率の良い高回転側になるように制御することができ、最適な発電が可能になる。
【0040】
また、このような制御を行うことで、常にプロペラ効率の最高の回転数を得ることができる。従って、本実施の形態1に係る発電装置は、低回転でも、最低限の必要トルクで発電していることになり、風速に応じて無駄なく最適回転数を維持することができる。
【0041】
このような励磁制御を実現するための前処理として、具体的には、以下のような手順で、あらかじめ必要となるデータを取得しておくこととなる。まず、
図2および
図3に示したような、各風速時の回転数と機械出力との関係、および各風速時の回転数とトルクとの関係に相当するプロペラ特性を取得しておく。
【0042】
次に、
図2に示したように、各風速時の機械出力最大点のポイントを●印としてプロットする。さらに、
図2の●印に対応する回転数の値を、
図3の各風速時のデータ上に●印としてプロットする。このようなプロットの結果から、
図2でプロットした各風速毎の機械出力最大点の回転数でのトルクが求められる。
【0043】
次に、発電機が
図3に●印で示す回転数でプロペラに必要なトルクを発生できる励磁電流を、実測あるいはシミュレーションで求める。その結果、プロペラ回転数に最適な励磁電流を特定することができる。
【0044】
制御部10は、回転検出部6から得られた回転数をもとに特定した、プロペラ回転数に最適な励磁電流を流すように、励磁部5に指令を出す。制御部10は、このような励磁制御を実行することで、その時点における風速において、最大のプロペラ機械出力を出す回転数に収束させることができる。さらに、制御部10は、発電機出力も効率の良い高回転側とすることができるため、風力発電機として最大の出力を得ることができる。
【0045】
従来の発電装置では、発電機の最大出力を得る制御技術を採用しているために、
図2および
図3に■印として示した軌跡をたどる回転数に安定する。例えば、風速11m/sのときには、
図3から、トルク0.95Nm付近に収束し、450rpmで安定することになり、そのときに発生できる出力は、
図2より、50Wとなる。
【0046】
これに対して、本実施の形態1に係る発電装置では、プロペラの最大出力を得る励磁制御を行っており、
図2および
図3に●印として示した軌跡をたどる回転数に安定する。例えば、風速11m/sのときに、
図3に示すように、トルク2.1Nm付近の1300rpmに安定することになり、そのときに発生できる出力は、280Wとなる。
【0047】
このことから、本実施の形態1に係る発電装置は、従来の発電装置と比較して、より広い回転数領域にわたって効率よく風力を電力に変換できていることがわかる。
【0048】
実施の形態2.
先の実施の形態1のように、プロペラ特性に対して最適になる励磁制御を実施すた場合には、風速が大きくなるにつれて回転数がどんどん高くなっていく。この結果、特にプロペラの回転耐力を超える回転数になることで、プロペラが破壊してしまうおそれがあった。そこで、本実施の形態2では、このようなプロペラ破壊を防止するための手法について説明する。
【0049】
本実施の形態2に係る制御部10は、事前に決められたプロペラ回転数である上限回転数以上の回転数になった際には、プロペラ出力が最も良い時のプロペラトルクよりも大きいトルクを発電部1で発生するように、励磁部5を制御する。
【0050】
具体的には、制御部10は、励磁コイル部1bへの励磁電流を大き目にするように、励磁部5を制御する。この結果、本実施の形態2に係る発電装置は、プロペラが過回転になることを防止でき、強風時でもプロペラの最大回転数以下で発電することができる。
【0051】
例えば、上限回転数が1100rpmである場合を例に、説明する。
図5は、本発明の実施の形態2において、プロペラ回転数に対して過回転防止を考慮して特定された、最適な励磁電流をプロットした図である。
図5では、過回転を防止するための励磁制御の例として、過回転防止励磁制御1および過回転防止励磁制御2が示されている。
【0052】
制御部10は、過回転防止励磁制御1を実行する場合には、プロペラ回転数が上限回転数である1100rpm以上となった際に、励磁電流を急激に最大励磁電流まで大きくするように制御する。この結果、プロペラ回転数が1100rpm以上に上がることを抑制しつつ、発電を継続させることが可能となる。
【0053】
また、制御部10は、急に励磁電流を大きくすることでトルクの急変が発生するため、回転系への衝撃ストレス等が発生する可能性がある場合には、過回転防止励磁制御1の代わりに過回転防止励磁制御2を実行することができる。
【0054】
制御部10は、過回転防止励磁制御2を実行する場合には、1100rpmよりも大きいある回転数まで励磁電流を比例的、または、曲線的に回転数に応じて徐々に大きくする励磁制御を実行する。
図5では、制御部10は、1100rpmから1300rpmの間で、励磁電流を比例的、または、曲線的に回転数に応じて徐々に大きくする励磁制御を実行している場合を例示している。
【0055】
この結果、トルクの急激な変動を抑制でき、回転系への衝撃ストレスを抑制し、過回転抑制をしながら発電を継続できるとともに、急激なトルク上昇による回転数の急激な低下も防止でき、発電機としても容易に高回転を維持できる。
【0056】
図6は、本発明の実施の形態2において、各風速に対して、プロペラ回転数と機械出力との関係、および過回転防止励磁制御を実行した場合の各風速での動作点例を示した特性図である。また、
図7は、本発明の実施の形態2において、各風速に対して、プロペラ回転数とトルクとの関係、および過回転防止励磁制御を実行した場合の各風速での動作点例を示した特性図である。
【0057】
図6および
図7では、回転数が1100rpm未満の領域において実行される励磁制御が●印としてプロットされており、回転数が1100rpm以上の領域において実行される過回転防止励磁制御1が★印としてプロットされており、回転数が1100rpm以上の領域において実行される過回転防止励磁制御2が▲印としてプロットされている。
【0058】
図6および
図7に示すように、回転数が1100rpm未満では、先の実施の形態1で示した励磁制御が行われる。その一方で、回転数が1100rpm以上になった場合には、過回転防止励磁制御1または過回転防止励磁制御2が行われる。
【0059】
このような過回転防止励磁制御を採用することによって、プロペラの機械的な回転数の限界まで、低風速から高風速にわたり、プロペラの機械的な回転数以下を維持しながら発電を継続することができる。
【0060】
また、過回転時には、通常、電磁ブレーキ等で回転数を下げる方策をとっている。この場合、低風速で過回転領域に達するため、実用域の風速でもブレーキを使用する条件が頻繁に発生し、発電量を稼ぎにくい状況が発生するおそれがあった。
【0061】
これに対して、本実施の形態2では、上限回転数以上で過回転防止励磁制御を実施することで、過回転を防止するとともに、高風速時の発電が可能になる。この結果、過回転時に電磁ブレーキを実施するタイミングを減らし、トータルとして発電量を多く稼ぐことができる。
【0062】
実施の形態3.
従来の励磁制御では、発電機に最適な励磁制御を実施している。すなわち、従来の励磁制御では、実際のプロペラの出力が不足して発電できないときにも、発電機に最適な励磁制御を実施していた。この結果、プロペラ発生トルクより大きなトルクが発電機で発生するため、回転数が低下し、最悪、回転が止まってしまう場合があった。
【0063】
プロペラは、いったん停止すると、無回転時に発生できるトルクは、回転時に得られるトルクより小さく、また、回転再開時には、通常の回転より大きな回転起動トルクが必要になる。このため、回転を再開するためには、大きな風速が必要になっていた。そこで、本実施の形態3では、このような問題を解決するための手法について説明する。
【0064】
本実施の形態3に係る発電装置では、先の
図6に示したように、ある事前に決められたプロペラ回転数である下限回転数(
図6では、下限回転数=400rpm)以下になった際に、制御部10は、励磁コイル部1bへの励磁を実行しないような励磁制御を実行する。この結果、400prm以下で励磁を実行することで発生するコギングトルクの発生をなくすことができ、無駄な回転低下を抑える制御が実現できる。
【0065】
なお、下限回転数は、発電機によって個々に決定される発電可能最低回転数以上に設定される。その結果、回転を止めることなく、次に風速が上がった際に、すぐに風速に追従した回転を発生することが可能になり、発電量を多く稼ぐことが可能になる。
【0066】
実施の形態4.
電流が作る磁場は、電流値とコイルの巻数の乗算で決まる。このため、励磁電力の制御を行う場合、一般的には励磁電流を変えて行う。また、励磁コイルは、銅などの導体でできており、コイルの直流抵抗値は、導体の温度特性により温度によって変わってくる性質を持っている。温度特性を有する抵抗値は、下式(2)のように表される。
Rt=R20(1+α20(t-20))[Ω] (2)
Rt :温度t℃での抵抗値[Ω]
R20:温度20℃での銅線の抵抗値[Ω]
α20:銅線抵抗の温度係数[1/℃]
【0067】
実施の形態1~実施の形態3のように、回転数に応じて励磁制御を行う場合、上式(2)のように励磁コイルの温度によってコイル抵抗が変わり、目標の励磁電流を流すことができない場合がある。
【0068】
そこで、本実施の形態3では、この問題を解決する手法として、励磁コイルの温度を計測する温度検出部を追加し、温度による抵抗値の変化分を考慮した励磁を行う場合について説明する。
【0069】
図8は、本発明の実施の形態4による発電装置の構成を示すブロック図である。
図8に示すブロック図は、先の実施の形態1における
図1のブロック図に対して、さらに、温度検出部7が付加されている。
【0070】
温度検出部7は、励磁コイル部1bの温度を検出する。制御部10は、温度検出部7によって検出された励磁コイル部1bの温度を考慮して、励磁制御を実行する。この結果、制御部10は、温度検出部7による温度検出結果に基づいて、励磁コイル部1bの温度変化を考慮した温度補償を行い、回転数に応じた目標の励磁電流を流すように励磁制御を実行することができる。
【0071】
具体的には、制御部10は、下式(3)のようにして、目標の励磁電流を設定することができる。
Im=V/Rt (3)
Im:目標電流[A]
V :励磁電圧[V]
Rt:温度t℃での抵抗値[Ω]
【0072】
実施の形態5.
先の実施の形態4では、温度による抵抗値の変化に応じた励磁をすることで、目標の励磁電流を流す場合について説明した。これに対して、本実施の形態5では、実際の励磁電流を測定してフィードバックし、回転数に応じた励磁電流に合わせ込む制御を行う場合について説明する。
【0073】
図9は、本発明の実施の形態5による発電装置の構成を示すブロック図である。
図9に示すブロック図は、先の実施の形態1における
図1のブロック図に対して、さらに、励磁電流モニタ部8が付加されている。
【0074】
励磁電流モニタ部8は、励磁部5と励磁コイル部1bとの間に接続されている。そして、励磁電流モニタ部8は、励磁部5により励磁コイル部1bに励磁電圧が印加された際の励磁電流値をフィードバック値としてモニタする。この結果、制御部10は、励磁電流モニタ部8の検出結果より求めた実際の励磁電力に従って、励磁部5を制御することができる。
【0075】
このような電流フィードバックを行うことで、さらにきめ細かな励磁制御を行うことができる。通常、PI制御によって目標電流Imに合わせる方法もあるが、簡易的に下式(4)で求めた励磁電圧を印加することで、目標電流Imに合わせることが可能である。
Va=Vr+Rr×(Im―Ir) (4)
Va:補正後の励磁電圧[V]
Vr:前回の励磁電圧[V]
Rr:前回の励磁コイル抵抗[Ω]
(上式(2)の値、または、Rr=Vr/Irとしての算出値)
Ir:Vr励磁電圧を印加した際の励磁電流モニタ部8で測定した励磁電流[A]
Im:目標励磁電流[A]
【0076】
実施の形態6.
本実施の形態6では、励磁電圧を可変制御する具体的な方法として、パルス幅変調(PWM)電圧制御を適用する場合について説明する。一般的なPWMの方法は、目標励磁電圧Vmを印加するために、電源電圧Vのときに、下式(5)のPWM制御を行う。
Duty=Vm/V (5)
Duty:PWM制御のON Duty
Vm :目標励磁電圧[V]
V :励磁用の電源電圧[V]
【0077】
図10は、本発明の実施の形態6に係る発電装置に適用されるPWM電圧制御回路の構成図である。PWM電圧制御回路は、パルス幅変調電圧制御回路に相当する。本実施の形態6に係る励磁部5は、蓄電部4の電圧を所望の電圧に変換して励磁コイル部1bに供給するPWM電圧制御回路として構成される。励磁電力を制御する方式としてPWM制御を採用する場合には、励磁コイル部1bの電流を還流するためのフライホイルダイオード11と、スイッチング素子12とを用いる
図10のような回路構成が考えられる。
【0078】
実施の形態7.
本実施の形態7では、励磁電圧を可変制御する具体的な方法として、DC電圧可変制御を適用する場合について説明する。
図11は、本発明の実施の形態7に係る発電装置に適用されるDC電圧可変制御回路の構成図である。本実施の形態7に係る励磁部5は、蓄電部4の電圧を所望の電圧に変換して励磁コイル部1bに供給するDC電圧可変制御回路として構成される。
【0079】
制御部10は、
図11に示されたDC電圧制御回路を制御し、蓄電部4を電源とするDC電圧を調整して励磁電力を制御する。この結果、コギングトルクの変動を少なくすことができ、回転し易い制御性を得ることができる。
【0080】
なお、以上の説明では、風のエネルギーを回転エネルギーに変える場合を中心に説明したが、本発明は、風のエネルギーに限定されるものではない。本発明は、風のエネルギーの代わりに水のエネルギーを回転エネルギーに変える場合にも、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 発電部、1a 発電コイル部、1b 励磁コイル部、2 回転部(プロペラ部)、3 整流部、4 蓄電部、5 励磁部、6 回転検出部、7 温度検出部、8 励磁電流モニタ部、10 制御部、11 フライホイルダイオード、12 スイッチング素子。