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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】エレベーターの制御装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/06 20060101AFI20220803BHJP
   B66B 1/18 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
B66B1/06 K
B66B1/18 H
B66B1/18 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019091917
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020186095
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山下 幸一
(72)【発明者】
【氏名】前原 知明
(72)【発明者】
【氏名】星野 孝道
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 貴大
(72)【発明者】
【氏名】宮前 真貴
(72)【発明者】
【氏名】大沼 直人
(72)【発明者】
【氏名】保立 尚史
(72)【発明者】
【氏名】安部 貴
(72)【発明者】
【氏名】大槻 淳
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 桂哉
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-067426(JP,A)
【文献】特開2013-252953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一電源から給電される複数台のエレベーターの運行を群管理するエレベーターの制御装置であって、
前記複数台のエレベーターの内少なくとも2台は定格速度が異なる2つの運行状態間を遷移可能であり、一方号機が定格速度の速い運行状態のときは、他方号機を搭乗者なしで戸閉待機させ、かつその運行を抑制するとともに、
混雑時と閑散時を判別し、混雑時には前記一方号機が目的階に接近したことをもって前記他方号機の運行抑制を解除することを特徴とするエレベーターの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーターの制御装置であって、
混雑時と閑散時を判別し、閑散時には前記一方号機が目的階に到着または到着から一定時間経過したことをもって前記他方号機の運行抑制を解除することを特徴とするエレベーターの制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベーターの制御装置であって、
前記一方号機が目的階に接近したことを、減速運転を開始したことをもって検知することを特徴とするエレベーターの制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のエレベーターの制御装置であって、
前記一方号機が目的階に接近したことを、電源使用容量が一定値以下に低下したことをもって検知することを特徴とするエレベーターの制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載のエレベーターの制御装置であって、
前記他方号機の運行抑制は、割り当て禁止、出発禁止のいずれか一方または双方をもって行うことを特徴とするエレベーターの制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載のエレベーターの制御装置であって、
混雑時と閑散時を判別し、閑散時には複数台のエレベーターの一方号機と他方号機による前記定格速度の速い運行状態を交互に行うことを特徴とするエレベーターの制御装置。
【請求項7】
同一電源から給電される複数台のエレベーターの運行を群管理するエレベーターの制御方法であって、
前記複数台のエレベーターの内少なくとも2台は定格速度が異なる2つの運行状態間を遷移可能であり、一方号機が定格速度の速い運行状態のときは、他方号機を搭乗者なしで戸閉待機させ、かつその運行を抑制するとともに、
混雑時と閑散時を判別し、混雑時には前記一方号機が目的階に接近したことをもって前記他方号機の運行抑制を解除することを特徴とするエレベーターの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベーターの制御方法及び装置に係り、特に群管理されるエレベーターの制御装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の技術の発展や建物の高層化に伴い、施設内に設置されるエレベーターの定格速度が高速化されている。係る施設内の複数のエレベーターは、運行効率の観点から群管理されているが、高速エレベーターを複数台保有する場合にも同様に群管理される。
【0003】
建物内に複数台のエレベーターを併設する場合の問題点に対処する方式として特許文献1や特許文献2が知られている。これらの特許文献では、高速エレベーターの上下動による風切り音や振動が大きくなることに対処している。
【0004】
このため、同一昇降路内に複数台のエレベーターを設置する場合には、騒音や振動への対策として一方のかごの出発を抑制する方法が有り、ビル全体の電源使用容量抑制においても同様な対策が一般的となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-97149号公報
【文献】特開2016-13877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数台の高速エレベーターを群管理する場合に、超高層ビルや複合施設等では、設置されるエレベーターの台数が多くなるため、費用や消費エネルギーを考慮して、全てのエレベーターを高速化するわけではない。そのため、建物内に併設されたエレベーターが必ずしも同じ定格速度であるとは限らない。
【0007】
定格速度が異なる複数台のエレベーターにおいて、費用や消費エネルギーを考慮して他の設備との兼ね合いから、最高速度を出せないケースの際、エレベーターの乗りかご内に乗客が居る状態でエレベーターの出発を抑制することから、閉じ釦が有効とならず、故障しているとのクレームとなること、かつエレベーターのサービスも低下することから好ましくない。
【0008】
本発明は、複数の階床をサービスする複数のエレベーターの運行を効率良く制御するエレベーターシステムに関するもので、特にこの複数のエレベーターを効率化する上では、全体の効率を考えた制御を行うので、必ずしも近くにいるエレベーターがサービスされるとは限らないことから、ビル全体の電源使用容量抑制と共にエレベーターの運転効率向上に好適である。
【0009】
以上のことから本発明の目的は、交通需要に応じたエレベーターの割り当てを実現し、運行効率向上と電源使用容量抑制が図れるエレベーターの制御装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のことから本発明においては、
同一電源から給電される複数台のエレベーターの運行を群管理するエレベーターの制御装置であって、
前記複数台のエレベーターの内少なくとも2台は定格速度が異なる2つの運行状態間を遷移可能であり、一方号機が定格速度の速い運行状態のときは、他方号機を搭乗者なしで戸閉待機させ、かつその運行を抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
従来、電源使用容量抑制するためには、エレベーターの乗りかご内に乗客が居る状態で出発抑制するが、本発明は少ない機器構成・簡単な手段により、エレベーターの乗りかご内に乗客が居ない状態で電源使用容量抑制とエレベーターのサービス性の向上を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係るエレベーターの制御装置の全体構成例を示す図。
図2図1に示した複数台のエレベーターに駆動動力を与える電源構成例を示す図。
図3】交通需要による本発明の特徴モードを説明する図。
図4】各階の乗り場呼び継続時間により、通常運転1と通常運転2を切換える簡易的な方法を示す図。
図5】通常運転1について各制御システム間の協調関係と状態の遷移を示す図。
図6】通常運転1についてエレベーターの制御装置の全体処理フローを示す図。
図7】通常運転1について具体的な運転状態を示す図。
図8】通常運転2について各制御システム間の協調関係と状態の遷移を示す図。
図9】通常運転2についてエレベーターの制御装置の全体処理フローを示す図。
図10】通常運転2について具体的な運転状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例
【0014】
図1は、本発明の実施例に係るエレベーターの制御装置の全体構成例を示している。図1の構成によればエレベーターの制御装置は、複数台のエレベーター乗りかご3(3A、3B・・・3N)を個別に制御する複数台のエレベーター制御システム2(2A、2B・・・2N)と、各エレベーターを全体の運行効率が最適となるように運行を制御する群管理制御システム1を備えて構成されている。
【0015】
また施設内各階のエレベーターホールには、エレベーターを呼ぶための呼びボタンや、呼びの登録を示す応答灯などの各階設備6(6A、6B・・・6N)が設けられている。各階設備6の情報は群管理制御システム1に集約され、エレベーター制御システム2を介して個別のエレベーター乗りかご3の運行が管理され、適宜各所に必要な表示などが行われている。なお、各階設備6の構成としては種々のものがあるが、本発明においてはその方式を限定するものではない。
【0016】
エレベーター制御システム2(2A、2B・・・2N)は、群管理制御システム1内の運行管理制御系11による制御の下で、自動運転や手動運転等といったエレベーターの運転方式に合った運転を行う運転制御系21(21A、21B・・・21N)と、主に乗りかご3(3A、3B・・・3N)を昇降するためのモーター制御を行う速度制御系22(22A、22B・・・22N)により各エレベーターの運行を個別に制御する。また、エレベーター毎に、かご内荷重やドアの開閉等の各事象の情報を運行管理制御系11に送信する。なお、図1では群管理制御システム1をエレベーター制御システム2と別に例示しているが、エレベーター制御システム2の中で運行管理制御系11の処理を行ってもよい。
【0017】
群管理制御システム1は、運行管理制御系11と学習系12と知能系13を含んで構成されている。群管理制御システム1内では、時々刻々と変化するエレベーター情報と行先階情報等の運行データを学習系12へ送信し、運行データに基づいて学習系12は交通状況を学習し、その時点でどのような運転プログラムが適しているかを判断する。知能系13では学習結果を用いて新しい特徴モードの生成とエレベーター運行シミュレーションを行い、各交通需要に応じた最適な運転プログラムの自動生成を行っている。運行管理制御系11では運転プログラムを用いて、行先階床別にどのエレベーターを配車するかを決める割り当て制御を行い、さらにエレベーター制御システムへ行先階別に割り当て指令等を行っている。
【0018】
図2は、図1に示した複数台のエレベーターに駆動動力を与える電源構成例を示している。図2の電源構成は例えば給電電力が相違する2系統により構成される。ここでは、変圧器Tr1から電源安定化装置4A、4Bを介してエレベーター制御システム2A、2Bとその制御するエレベーターに給電する第1系統と、変圧器Tr2から電源安定化装置4C、4Dを介してエレベーター制御システム2C、2Dとその制御するエレベーターに給電する第2系統を例示しているが、系統数は任意であり、かつ各系統内のエレベーター数も任意であるが、ここでは2系統、各系統2台構成を示している。
【0019】
上記給電系統の構成において、第1系統は高速エレベーター用電源であり、第2系統は中低速エレベーター用電源である。また群管理制御システム1において、群管理する群の単位は任意であってよいが、本発明においては高速エレベーターである第1系統と第2系統を合わせた群管理制御を行うものである。
【0020】
本発明における群管理の制御対象であるエレベーター乗りかご3A、3B(以下特に必要がない限り単にエレベーター3A、3Bということにする)は、例えば20m/秒による高速運転を実行可能であるが、以下に示すように例えば10m/秒による低減運転を実行することがある。これにより、省電力化と運行効率の両面を満足するエレベーターの制御装置を実現する。なお高速運転とは、定格速度が異なる2つの運行状態間を遷移可能であるときに、定格速度の速い運行状態をいう。
【0021】
上記前提として、以下エレベーター制御システム2A、2Bと、群管理制御システム1の協調制御による本発明の群管理の考え方について詳細に説明する。
【0022】
図3を用いて、交通需要による本発明の特徴モードを説明する。群管理制御システム1は、図3に例示する交通需要に応じて、特徴モードを定めている。図3の左側は各階の上り、下り方向の階床別乗降人数を示している。また図3の右側は、上り、下り方向の乗降人数に応じてビル内の代表的な交通情報を示す特徴モード(M1~M6)を定めたものである。
【0023】
群管理制御システム1内の学習系12では、かご位置や乗降人数等のエレベーター情報や行先階情報に基づいて交通状況を学習し、その時点でどのような運転プログラムが適しているかを判断しているため、ビル内の人の流れを示す階床別乗降人数(図3左)をオンラインの入力情報から、ビル内の代表的な交通情報を示す特徴モード(M1~M6)のいずれかに属するかを識別する。
【0024】
特徴モードM1~M6とは、図3内に例示したように、横軸が下り乗降人数、縦軸が上り乗降人数の座標上において、この例では、6つの区分けした交通需要の状況を示すものである。通常オフィスビルの場合、上り下りともに乗降人数が小さい領域M1は閑散、上りの状況が大きい領域M3はアップピーク、下りの乗降人数が大きい領域M6はダウンピークと呼ばれる。標準的には、図のような領域に区分けされるが、ビルの性質によって特徴があり、収集した交通情報から新しい特徴が抽出されることがある。新しい特徴を抽出した場合には、このビル固有の特徴モードMnとして生成・登録し、また、その他の特徴モードM1~M6の変化の傾向を学習している。
【0025】
本発明においては、例えば閑散の時間帯(領域M1)において、通常運転2(片方の号機が最高速度で走行時は、片側は停止し交互に運行する群管理運転)とし、前記のアップピーク、ダウンピークの少なくとも一方が検出される時間帯(領域M3からM6)において、通常運転1(速度自動切換えによる群管理運転)とする。ごく単純に言えば通常運転2は閑散時運転であり、1台による高速運転で電力消費を最小化する。また通常運転1は混雑時運転であり、2台による中低速運転により運行量を確保する。
【0026】
本発明では、群管理制御システム1内で閑散と混雑を判別するが、この手法はカメラなどを用いてもよく、または図3の特徴モードを利用しても行えるが、この手法に限定されない。
【0027】
図4には、閑散と混雑の判別手法の一例として、各階の乗り場呼び継続時間により、通常運転1と通常運転2を切換える簡易的な方法を例示している。この手法では、各階の乗り場呼び継続時間を監視し、乗り場呼び継続時間が短い場合には閑散と判断して図9に示す閑散時の運転である通常運転2とし、乗り場呼び継続時間が長い場合には混雑と判断して図6に示す混雑時の運転である通常運転1とする。
【0028】
より詳細に述べると、図4の処理ステップS41では乗り場呼びの有無を確認して、呼びがなければ閑散とする。乗り場呼びが有るとき、処理ステップS42では乗り場呼びの継続を算出し、処理ステップS43ですべての乗り場に対する繰り返し演算を実行する。処理ステップS44では、乗り場呼び継続時間が例えば20秒を超えるか、否かでもって混雑と閑散を区別している。
【0029】
次に混雑時の運転である通常運転1について、図5図6図7を用いて説明する。本発明はエレベーター制御システム2A、2Bと、群管理制御システム1の協調制御による群管理であることから、まず図5は通常運転1について各制御システム間の協調関係と状態の遷移を示した図である。図6は、通常運転1についてエレベーターの制御装置の全体としての処理フローを示している。また、図7は、通常運転1について具体的な運転状態を示す図である。
【0030】
なお、供給電力の制限内での混雑時の運用としては、複数台同時・中低速運転を基本運転とし、一時的に一方の号機が使用されない状態を検出した場合のみ高速運転に切り替える方式とする。但し、高速運転では、一方号機が高速運転を行いつつ他方号機の運転を抑制し、他方号機が可能な範囲で早いタイミングで運転することを許可する方式としたものである。これにより、運転効率を向上させつつ、消費電力を抑えることが可能となる。
【0031】
混雑時における通常運転1について各制御システム間の協調関係と状態の遷移を示した図5によれば、エレベーター制御システム2A、2Bと、群管理制御システム1の間には、点線で示すネットワーク伝送路が形成されており双方向通信を行っている。ただし図示では、エレベーター制御システムの一方を基準とした一方方向のみを記述している。またエレベーター制御システム2A、2Bの間には、実線で示すハード回路による信号伝送路が形成されている。また図5において記号Sは、図6の処理フローの各処理ステップを示している。したがって、この図5図6と対比すると、処理フローの各処理がどこで実行され、その結果どういう状態になっているかを理解可能である。
【0032】
図7は、具体的な運行応対を示している。したがって、運行状態の推移と、処理フローの各処理の処理内容および結果の関係が事例として理解することができる。
【0033】
図6の処理フローに従い、図5の遷移状態と図7の事例を相互に関連付けて説明する。なお、図6を理解するにあたり、エレベーター制御システム2A、2Bは、一連の処理フローの互いに相違するフロー位置に位置付けられ状態遷移していることになる。
【0034】
図6の最初の処理である処理ステップS61では、エレベーター制御システム2AにおいてA号機3Aが戸閉待機15秒経過(ただしかご内搭乗者なし)したかどうかを判定し、15秒経過していない場合は、S69にて中低速運転状態となり全ての号機が中低速で同時走行可能とする。15秒経過した場合は、群管理制御システム1に報告する。報告は群管理制御システム1経由でエレベーター制御システム2Bにも行われる。
【0035】
処理ステップS62では、B号機3Bは高速運転状態に認定される。ただし、この時点では具体的な呼びが発生していないので、高速運転可能状態として、待機状態を継続している。なお、A号機3AとB号機3Bについて、双方とも「戸閉待機15秒経過、ただしかご内搭乗者なし」となる可能性があるが、この場合には適宜いずれかに高速運転状態の認定を決定すればよい。
【0036】
処理ステップS63では、群管理制御システム1が乗り場呼びの発生を検知し、エレベーター制御システム2BにB号機3Bへの割り当てを指示する。上記したところまでの相互間の連係は、点線で示すネットワーク伝送路を用いて行われている。
【0037】
処理ステップS64では、割り当てを指示されたエレベーター制御システム2Bは、B号機3Bの戸開検出により他方のエレベーター制御システム2Aに対して、実線で示すハード回路による信号伝送路を介してA号機3Aを出発抑制状態とする指示を与え、A号機3Aから高速走行許可としてのアンサーバックを受信する。そのうえで、B号機3B自身は処理ステップS65において目的階に高速走行すべく例えば20m/秒による高速運転を実行する。この場合にA号機3Aは、割り当てを禁止されたうえで、さらに出発を抑制、禁止された状態に置かれたものである。
【0038】
B号機3Bが目的階に近づいて減速運転し始めたことを、処理ステップS66では例えばエレベーター制御システム2Bにおいて、電源使用容量の大きさが所定値以下に低下したことをもって検知する。この検知は、実線で示すハード回路による信号伝送路を介してA号機3Aを通常運行状態とする指示として与えられ、これにより処理ステップS67において、A号機3Aは通常運転状態に遷移される。
【0039】
最後の処理ステップS68では、B号機3Bが目的階に到着し、B号機3B自身が通常運転状態に遷移する。
【0040】
以上の図6の処理フローによれば、要するに一方号機に割り当てがされたときに、他方号機を出発抑制状態に規制し、また一方号機が目的階に近づいて電源使用量の問題を生じないと予想される状態において他方号機の出発抑制状態を解除し、通常運転状態としたものである。これにより、混雑状態に置いて、一方号機が高速運転することで電力消費が大きくなっている状態において、他方号機が運転することが抑止され、電源容量の問題が解決できる。また目的階に近づいた状態で他方号機の抑制が解除されるので、次の交通需要に他方号機が対応可能となるタイミングを早めることができる。本発明では、高速運転の長所を生かしつつ、混雑への対応を早めることができる。
【0041】
また上記処理によれば高速運転しない側のA号機3Aは、出発抑制状態を解除されるまで、搭乗者がいないままに戸閉待機状態を維持しており、高速運行中の同一通風路内における衝撃は問題とならない。
【0042】
図7は、混雑状態において、図6のフローが適用可能となるいくつかの場面とその後の状態、を想定したものである。
【0043】
図7の想定1は、2台のエレベーター号機3A、3Bが1階で戸閉待機中に1階で乗り場呼びが発生した場面である。想定1の左側において、(a)は、かご呼びに応じてエレベーター制御システム2Bに割り当てを指示された処理ステップS63の状態であり、(b)はB号機3Bの戸開検出により他方のA号機3Aを出発抑制状態とする処理ステップS64の状態である。(c)は目的階に向けて走行中の処理ステップS65の状態である。
【0044】
想定1の右側において、(d)はB号機3Bが減速を開始した処理ステップS66の状態、(e)はA号機3Aが通常運行状態とされ、出発禁止が解除された処理ステップS67の状態である。
【0045】
図7の想定2は、2台のエレベーター号機3A、3Bが1階と100階で戸閉待機中に1階と100階で順次乗り場呼びが発生した場面である。想定2の左側において、(a)(b)(c)は、図7の想定1と同じ処理ステップS63、S64、S65の状態である。ここまでで、1階で生じた乗り場呼びに対する一連の操作が完了し、この間A号機3Aは処理ステップS64の処理により出発抑制状態とされているので、仮にこの間に次の乗り場呼びが100階で発生したとしても、これに応動しない。
【0046】
想定2の右側において、(d)(e)は想定1の右側(d)(e)と同じであるので、説明を省略する。
【0047】
図7の想定3は、2台のエレベーター号機3A、3Bの両号機ともに1階で利用者がいて、かご呼びが発生した場面である。想定3の左側において、(a)(b)はともに利用者がいて戸開しているため、戸閉待機15秒は成立せず、処理ステップS69の状態となり、想定3の右側の通り、中低速運転で同時走行を行う。
図7の想定4は、2台のエレベーター号機3A、3Bが1階と100階で両号機ともに利用者がいて、かご呼びが発生した場面である。想定4の左側において、(a)(b)はともに利用者がいて戸開しているため、戸閉待機15秒は成立せず、処理ステップS69の状態となり、想定4の右側の通り、中低速運転で同時走行を行う。
【0048】
次に、閑散時における運用について説明する。閑散時の運転である通常運転2について、図8図9図10を用いて説明する。
【0049】
本発明はエレベーター制御システム2A、2Bと、群管理制御システム1の協調制御による群管理であることから、まず図8は閑散時の運転である通常運転2について各制御システム間の協調関係と状態の遷移を示した図である。図9は、通常運転2についてエレベーターの制御装置の全体としての処理フローを示している。また、図10は、通常運転1について具体的な運転状態を示す図である。
【0050】
図8図9図10の表示上の決まり事などは、図5図6図7と同じであるので、図9のフローを中心として説明する。なおこの場合には、点線で示すネットワーク伝送路を用いた双方向伝送とされる。
【0051】
なお、以下に述べる閑散時の運用は、一方の号機が必ず高速運転を行うようにしたものである。この場合に出発禁止の解除のタイミングは目標階への接近ではなく、到着後の戸閉待機15秒経過したことである。
【0052】
図9において、図9の最初の処理である処理ステップS91では、エレベーター制御システム2AにおいてA号機3Aが戸閉待機15秒経過(ただしかご内搭乗者なし)を検知し、群管理制御システム1に報告する。報告は群管理制御システム1経由でエレベーター制御システム2Bにも与えられる。ここで、A号機3Aが戸閉待機15秒経過(ただしかご内搭乗者なし)を検知することの意義は、この事象確認をもって、当該時刻に続く時間帯において呼びが発生する可能性が低いことを判断したものである。
【0053】
処理ステップS92では、B号機3Bは高速運転状態に認定される。ただし、この時点では具体的な呼びが発生していないので、高速運転可能状態として、待機状態を継続している。なお、A号機3AとB号機3Bについて、双方とも「戸閉待機15秒経過、ただしかご内搭乗者なし」となる可能性があるが、この場合には適宜いずれかに高速運転状態の認定を決定すればよい。
【0054】
処理ステップS93では、群管理制御システム1が乗り場呼びの発生を検知し、エレベーター制御システム2BにB号機3Bへの割り当てを指示する。上記したところまでの相互間の連係は、点線で示すネットワーク伝送路を用いて行われている。なお、ここで群管理制御システム1がB号機3Bへの割り当てを指示したことは、逆に言えば戸閉待機15秒経過(ただしかご内搭乗者なし)を検知したA号機3Aへの割り当てを禁止したものということができる。
【0055】
処理ステップS94では、割り当てを指示されたエレベーター制御システム2Bは、B号機3Bの戸開検出により他方のエレベーター制御システム2Aに対して、実線で示すハード回路による信号伝送路を介してA号機3Aを出発抑制状態とする指示を与え、A号機3Aから高速走行許可としてのアンサーバックを受信する。そのうえで、B号機3B自身は処理ステップS95において目的階に高速走行すべく例えば20m/秒による高速運転を実行する。この場合にA号機3Aは、割り当てを禁止されたうえで、さらに出発を抑制、禁止された状態に置かれたものである。
【0056】
処理ステップS91から処理ステップS95までの処理は、図6の処理ステップS61から処理ステップS65までの処理と同じである。閑散時の図6の次の処理ステップS66では目的階への接近減速を検知、通報するが、混雑時の図9の次の処理ステップS96では目的階に到着し、処理ステップS97で戸閉待機15秒経過してから、出発禁止状態を解除して、通常運行状態として遷移する。
【0057】
次の処理ステップS97から処理ステップS102までの処理は、基本的には処理ステップS91から処理ステップS95までの処理と同じである。ただ、高速運転が許可される側が、B号機3BからA号機3Aに代わっている。要するにこのフローによれは一方号機の高速運転により目的階に到着し戸閉待機15秒経過したことをもって、他方号機の高速運転が可能となる流れになっている。
【0058】
図10は、閑散状態において、図9のフローが適用可能となるいくつかの場面とその後の状態を想定したものである。ただしここでは、到着後の戸閉待機15秒経過を条件として出発禁止を解除するところまでを説明し、繰り返しの場面は省略している。
【0059】
図10の想定1は、2台のエレベーター号機3A、3Bが1階で戸閉待機中に1階で乗り場呼びが発生した場面である。想定1の左側において、(a)は、かご呼びに応じてエレベーター制御システム2Bに割り当てを指示された処理ステップS93の状態であり、(b)はB号機3Bの戸開検出により他方のA号機3Aを出発抑制状態とする処理ステップS94の状態である。(c)は目的階に向けて走行中の処理ステップS95の状態である。
【0060】
想定1の右側において、(d)(e)はB号機3Bが目的階に到着後、戸閉待機15秒経過することで、A号機3Aが通常運行状態とされ、出発禁止が解除された処理ステップS97の状態である。
【0061】
図10の想定2は、2台のエレベーター号機3A、3Bが1階と100階で戸閉待機中に1階と100階で順次かご呼びが発生した場面である。想定2の左側において、(a)(b)(c)は、図7上段と同じ処理ステップS93、S94、S95の状態である。ここまでで、1階で生じた乗り場呼びに対する一連の操作が完了し、この間A号機3Aは処理ステップS94の処理により出発抑制状態とされているので、仮にこの間に次の乗り場呼びが100階で発生したとしても、これに応動しない。
【0062】
次に想定2の中央側において、(d)は引き続きB号機3Bが下降側への運行を継続することを示している。この理由は、B号機3Bが100階に到着して扉を開いた時点で、図9の処理ステップS91の判断によれば、この条件を満たすのでA号機3Aであることから、処理ステップS92ではB号機3Bを高速運転状態に認定するからである。なお、この事例では上昇側は例えば20m/秒による高速運転を実行するが、下降側は例えば10m/秒による中低速運転を実行する例を示している。
【0063】
次に想定2の右側において、(e)(f)は想定1の右側(d)(e)と同じであるので、説明を省略する。
【0064】
以上に述べた本発明では、複数台のエレベーターを制御する群管理システムにおいて、混雑時と閑散時の判断を行い、閑散時には高速運転を優先的に行いつつ、消費電力を抑えるために一方の号機の出発を禁止する制御を行い、混雑時には、号機の利用状況に応じて高速運転を行ったり、中低速運転で複数号機を走行させ運転効率を向上させる制御を行う。
【符号の説明】
【0065】
1:群管理制御システム
11:運行管理制御系
12:学習系
13:知能系
2A、2B、2N:エレベーター制御システム
21:運転制御系
22:速度制御系
3A、3B、3N:エレベーター乗りかご
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10