(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】バッテリー収容ユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6556 20140101AFI20220803BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20220803BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20220803BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220803BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20220803BHJP
H01M 10/6567 20140101ALI20220803BHJP
【FI】
H01M10/6556
B60K1/04 Z
H01M50/20
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6567
(21)【出願番号】P 2019190961
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-89377(JP,A)
【文献】特開2012-256468(JP,A)
【文献】特開2021-68521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60-10/667
H01M 50/20-50/298
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体の下部においてバッテリーを収容するためのバッテリー収容ユニットであって、
アルミニウム合金からなる深絞り成形品により構成され、底壁及びこれと一体につながって容器内空間の少なくとも一部を囲む周壁を有する容器本体と、
前記容器本体の上側の位置で前記容器内空間を覆うように前記容器本体に装着される蓋と、
前記底壁から下方に離れた位置に配置される外部底壁と、
前記底壁と前記外部底壁との間に配置され、冷媒の流通を許容しながら当該冷媒と前記底壁とを熱交換させて当該底壁を冷却する冷却体と、
前記車体の左右方向において当該容器本体の外側に位置するサイドシルと前記容器本体との間に介在するサイドシル連結部材と、を備え、
前記サイドシル連結部材は、前記容器本体が当該サイドシル連結部材を介して前記サイドシルに支持されるように当該容器本体及び当該サイドシルにそれぞれ連結される容器連結部及びサイドシル連結部と、前記底壁及び前記冷却体と前記外部底壁との間隔を保つように当該外部底壁を保持する外部底壁保持部と、を有する、バッテリー収容ユニット。
【請求項2】
請求項1記載のバッテリー収容ユニットであって、前記冷却体は前記底壁と熱伝導可能となるように当該底壁の下面に取付けられる、バッテリー収容ユニット。
【請求項3】
請求項1または2記載のバッテリー収容ユニットであって、前記容器本体は5000系アルミニウム合金からなり、前記外部底壁は6000系アルミニウム合金からなる板材により構成されている、バッテリー収容ユニット。
【請求項4】
請求項3記載のバッテリー収容ユニットであって、前記底壁と前記外部底壁との間に介在して当該底壁と当該外部底壁との間隔を保つ外部補強部をさらに備える、バッテリー収容ユニット。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載のバッテリー収容ユニットであって、前記冷却体は、それぞれが前記底壁の下面に沿った特定の冷媒流通方向に延びて当該冷媒流通方向への前記冷媒の流通を許容する複数の冷媒流通部を含み、当該複数の冷媒流通部が前記冷媒流通方向と直交する方向に間隔をおいて配置されている、バッテリー収容ユニット。
【請求項6】
請求項4記載のバッテリー収容ユニットであって、前記冷却体は、それぞれが前記底壁の下面に沿った特定の冷媒流通方向に延びて当該冷媒流通方向への前記冷媒の流通を許容する複数の冷媒流通部を含み、当該複数の冷媒流通部が前記冷媒流通方向と直交する方向に間隔をおいて配置され、前記外部補強部は、それぞれが前記冷媒流通方向と平行な長手方向に延びる複数の外部補強材を含み、当該複数の外部補強材のそれぞれが前記複数の冷媒流通部を前記冷媒流通方向と直交する方向であって前記底壁の下面に沿う方向にまたぎながら当該冷媒流通部の両側の位置で前記底壁の下面に接合されている、バッテリー収容ユニット。
【請求項7】
請求項6記載のバッテリー収容ユニットであって、前記複数の外部補強材のそれぞれは、前記複数の冷媒流通部のそれぞれの両側の位置で前記長手方向に延びて前記底壁の下面と対向しかつ接触可能な第1対向部及び第2対向部と、前記複数の冷媒流通部のそれぞれの下方の位置で前記長手方向に延びて前記外部底壁の上面と対向しかつ接触可能な中間対向部と、前記中間対向部と前記第1対向部とを連結する第1連結部と、前記中間対向部と前記第2対向部とを連結する第2連結部と、を含む、バッテリー収容ユニット。
【請求項8】
請求項6または7記載のバッテリー収容ユニットであって、前記冷媒流通方向及び前記長手方向は、前記車体の前後方向と平行な方向である、バッテリー収容ユニット。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載のバッテリー収容ユニットであって、前記複数の外部補強材のそれぞれは7000系アルミニウム合金からなる押出形材により構成されている、バッテリー収容ユニット。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載のバッテリー収容ユニットであって、前記サイドシル連結部材は、前記サイドシルに加えられた前記車体の左右方向の内向きの衝撃荷重により圧壊して当該衝撃荷重を吸収するように左右方向に並ぶ複数の閉断面を有する、バッテリー収容ユニット。
【請求項11】
請求項10記載のバッテリー収容ユニットであって、前記外部底壁保持部は前記複数の閉断面を有する本体部から下方に突出し、前記サイドシル連結部材は前記本体部に加えられた前記車体の左右方向の内向きの荷重を前記外部底壁保持部に伝達するように前記本体部において前記外部底壁保持部よりも前記車体の左右方向の外側の部位と前記外部底壁保持部の下端とを連結する荷重伝達部をさらに含む、バッテリー収容ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体の下部においてバッテリーを収容するためのバッテリー収容ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体の下部においてバッテリーを収容するための構造として、特許文献1に記載されるものが知られている。この構造は、底板と、周壁と、天板と、を備える。前記底板は前記車体の下部を構成するサイドシル(特許文献1ではロッカー)に連結されて当該サイドシルにより支持される。前記周壁は、左右側壁部と、前壁部と、後壁部と、を含み、前記底板上で電池(バッテリー)の収容空間を囲むように当該底板上に配置される。前記天板は前記収容空間を覆うように前記周壁に締結される。
【0003】
前記構造では、自動車全体の軽量化のため、前記底板、前記周壁及び前記天板のそれぞれがアルミニウム合金等の軽金属により成形される。具体的に、前記底板は、アルミニウム合金等からなる板材であってプレス成形されたものにより構成される。前記周壁を構成する前記左右側壁部、前記前壁部及び前記後壁部のそれぞれは、アルミニウム合金等により中空断面を有するように押出成形された押出形材により構成され、前記底壁に溶接等の手段で固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように自動車の下部においてバッテリーを収容する構造には、前記軽量化の他、バッテリー収容空間内への水の浸入を阻止する防水性が求められる。しかし、前記特許文献1に記載される構造では、前記天板、前記左右側壁部、前記前壁部及び前記後壁部が互いに別の部材として構成されているので、その部材同士の隙間からバッテリー収容空間内に水が浸入しやすく、当該水の浸入を阻止するためには複雑なシール構造をそれぞれの部材同士の間に与えなければならない。また、前記バッテリーは発熱体であるため、前記の防水性を確保しながら当該バッテリーを有効に冷却することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の事情に鑑み、複雑な構造を要することなく高い防水性を確保しながらバッテリーの有効な冷却が可能なバッテリー収容ユニットを提供することを目的とする。
【0007】
提供されるのは、自動車の車体の下部においてバッテリーを収容するためのバッテリー収容ユニットであって、アルミニウム合金からなる深絞り成形品により構成され、底壁及びこれと一体につながって容器内空間の少なくとも一部を囲む周壁を有し、前記底壁の上に前記バッテリーを収容する容器本体と、前記容器本体の上側の位置で前記容器内空間を覆うように前記容器本体に装着される蓋と、前記底壁から下方に離れた位置に配置される外部底壁と、前記底壁と前記外部底壁との間に配置され、冷媒の流通を許容しながら当該冷媒と前記底壁とを熱交換させて当該底壁を冷却する冷却体と、前記車体の左右方向において前記容器本体の外側に位置するサイドシルと前記容器本体との間に介在するサイドシル連結部材と、を備える。前記サイドシル連結部材は、前記容器本体が当該サイドシル連結部材を介して前記サイドシルに支持されるように当該容器本体及び当該サイドシルにそれぞれ連結される容器連結部及びサイドシル連結部と、前記底壁と前記外部底壁との間隔を保つように当該外部底壁を保持する外部底壁保持部と、を有する。
【0008】
このバッテリー収容ユニットでは、アルミニウム合金からなる深絞り成形品により容器本体が構成されることにより当該容器本体の底壁と周壁とが一体につながっているので、前記底壁と前記周壁とが互いに別の部材で構成される容器と異なり、複雑なシール構造を要することなく高い防水性を確保することができる。
【0009】
さらに、前記冷却体が冷媒の流通を許容しながら当該冷媒と前記底壁との間で熱交換を行わせることにより、当該底壁及びその上に収容されるバッテリーを有効に冷却することができる。しかも、前記冷却体は前記容器本体の外部に配置されているので、容器本体の内部に冷却機構が設けられる態様と異なり、当該容器本体に冷媒流通用の穴等を設ける必要がない。このことは、当該容器本体の高い防水性を確保しながら前記底壁を通じて前記バッテリーを有効に冷却することを可能にする。そして、このように冷却体が容器本体の外部に配置されながらも、前記容器本体を自動車のサイドシルに連結するためのサイドシル連結部材を有効に利用して前記底壁の下面と前記外部底壁との上下方向の間隔を保つことにより、路面から前記外部底壁に加わる外力が前記底壁及び前記冷却体に作用するのを有効に抑止して当該底壁及び当該冷却体を有効に保護することができる。すなわち、前記外部底壁及び前記サイドシル連結部材は、(1)前記容器本体の高い防水性と、(2)これに収容されるバッテリーの有効な冷却と、(3)当該冷却のための冷却体及びこれが配置される容器本体の底壁の有効な保護と、(4)前記サイドシルによるバッテリー容器の支持と、を簡単な構造で同時に実現することを可能にする。
【0010】
前記冷却体は、前記底壁の下面から離間した位置に設けられて当該底壁からの輻射熱を奪うものでもよいが、好ましくは、当該底壁と熱伝導可能となるように当該底壁の下面に取付けられることが、好ましい。このことは、当該冷却体と前記底壁との間の直接的な熱伝導によって当該底壁及びその上のバッテリーをより有効に冷却することを可能にする。
【0011】
深絞り成形品により構成される前記容器本体には成形性に優れた5000系アルミニウム合金を採用する一方、当該容器本体に比べて複雑な形状が求められない外部底壁には5000系アルミニウム合金よりも成形性は低いが強度の高い6000系アルミニウム合金からなる板材を採用することが可能である。このことは、前記容器本体にその成形のために5000系アルミニウム合金を採用しながら、当該容器本体の底壁の上に配置されるバッテリーを有効に保護することを可能にする。
【0012】
前記バッテリー収容ユニットは、前記底壁と前記外部底壁との間に介在して当該底壁と当該外部底壁との間隔を保つ外部補強部をさらに備えることが、好ましい。当該外部補強材の具備は、前記底壁の下面及び前記冷却体と前記外部底壁との間隔をより確実に保って当該底壁及び当該冷却体をより確実に保護することを可能にする。
【0013】
前記冷却体は、それぞれが前記底壁の下面に沿った特定の冷媒流通方向に延びて当該冷媒流通方向への前記冷媒の流通を許容する複数の冷媒流通部を含み、当該複数の冷媒流通部が前記冷媒流通方向と直交する方向に間隔をおいて配置されているものが、好適である。このような複数の冷媒流通部を含む前記冷却体は、前記底壁及びその上に収容されるバッテリーを広い範囲にわたって高い均一性で冷却することが可能である。
【0014】
この場合、前記外部補強部は、それぞれが前記冷媒流通方向と平行な長手方向に延びる複数の外部補強材を含み、当該複数の外部補強材のそれぞれが前記複数の冷媒流通部を前記冷媒流通方向と直交する方向であって前記底壁の下面に沿う方向にまたぎながら当該冷媒流通部の両側の位置で前記底壁の下面に接合されているものが、好適である。当該複数の外部補強材は、互いに隣り合う冷媒流通部同士の間の空間を利用して前記底壁の下面に接合されながら前記複数の冷媒流通部のそれぞれを直接的にかつ有効に保護することが可能である。
【0015】
具体的に、前記複数の外部補強材のそれぞれは、前記複数の冷媒流通部のそれぞれの両側の位置で前記長手方向に延びて前記底壁の下面と対向しかつ接触可能な第1対向部及び第2対向部と、前記複数の冷媒流通部のそれぞれの下方の位置で前記長手方向に延びて前記外部底壁の上面と対向しかつ接触可能な中間対向部と、前記中間対向部と前記第1対向部とを上下方向に連結する第1連結部と、前記中間対向部と前記第2対向部とを上下方向に連結する第2連結部と、を含むものが、好適である。このような外部補強材は、上下方向の圧縮荷重に対して高い剛性を有することにより、前記複数の冷媒流通部のそれぞれをより確実に保護することが可能である。
【0016】
前記冷媒流通方向及び前記複数の外部補強材の前記長手方向は、前記車体の前後方向と平行な方向であることが、好ましい。このことは、車両の走行中に車体の前後方向の成分を含む荷重が前記外部補強材に作用したときの当該外部補強材の変形を抑制することを可能にする。
【0017】
前記のような断面形状を有する外部補強材は7000系アルミニウム合金からなる押出形材により構成されることが可能である。7000系アルミニウム合金は、高い強度を有する反面、比較的応力腐食割れが生じやすい特性を有するが、当該外部補強材は前記外部底壁の内側(上側)に配置されていて外部の水分と直接接触することが防がれるので、前記外部補強材が7000系アルミニウム合金からなるものであるにもかかわらずその応力腐食割れを有効に抑止することができる。
【0018】
前記サイドシル連結部材は、前記サイドシルに対して前記車体の左右方向の内向きに作用する衝撃荷重により圧壊して当該衝撃荷重を吸収するように左右方向に並ぶ複数の閉断面を有するのが、好ましい。当該サイドシル連結部材は、前記容器本体を前記サイドシルに連結する連結部材及び前記外部底壁を保持する保持部材としての機能に加えて当該サイドシルに加えられる衝撃荷重を吸収する補強部材としての機能を保有することができる。
【0019】
前記外部底壁保持部が前記複数の閉断面を含む前記サイドシル連結部材の本体部から下方に突出し、前記サイドシル連結部材は前記本体部に加えられた前記車体の左右方向の内向きの荷重を前記外部底壁保持部に伝達するように前記本体部において前記外部底壁保持部よりも前記車体の左右方向の外側の部位と前記外部底壁保持部の下端とを連結する荷重伝達部をさらに含むことが好ましい。当該荷重伝達部は、側方から前記サイドシル連結部材に加わる荷重を前記容器本体と前記外部底壁とに分散させて当該容器本体内のバッテリーをより有効に保護することを可能にする。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、複雑な構造を要することなく高い防水性を確保しながらバッテリーを有効に冷却することが可能なバッテリー収容ユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係るバッテリー収容ユニットの一部断面斜視図である。
【
図2】前記実施の形態に係るバッテリー収容ユニットの容器本体及び内部補強材を示す平面図である。
【
図3】前記実施の形態に係る容器本体の底隅部及びその周辺部分を斜め下方から見た斜視図である。
【
図4】前記実施の形態に係るバッテリー収容ユニットの要部を示す断面図であって当該要部の車体の左右方向に沿った断面を示す正面図である。
【
図5】
図4のV-V線に沿った断面を示す側面図である。
【
図6】前記実施の形態に係るバッテリー収容ユニットの冷却体の断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1~
図6は、本発明の実施の形態に係るバッテリー収容ユニットを示す。このバッテリー収容ユニットは、自動車の車体の下部に
図2に示されるバッテリー4を収容するものであって、
図1に示される容器本体10、蓋20、複数の内部補強材50、複数のクロスメンバー60、外部底壁32、冷却体80、複数の外部補強材90、及び一対のサイドシル連結部材70を備える。
【0024】
前記バッテリー収容ユニットは、前記車体の下部を構成する左右のサイドシル2同士の間に配置される。前記左右のサイドシル2は、例えばドアピラーの下方の位置で前後方向に延びるように配置される。
【0025】
前記容器本体10は、上向きに開口する形状を有し、前記蓋20とともに、前記バッテリー4を収容するためのバッテリー容器を構成する。前記バッテリー4は、この実施の形態では複数のバッテリーモジュール6により構成される。それぞれのバッテリーモジュール6は複数のバッテリーセルの集合体である。前記バッテリー容器は、前記複数のバッテリーモジュール6が水平方向に配列された状態でこれらを収容する。
【0026】
前記容器本体10は、アルミニウム合金からなる深絞り成形品により構成される。具体的に、この実施の形態に係る前記容器本体10は、底壁12と周壁14とを一体に有するように、アルミニウム合金の中では成形性に優れた5000系アルミニウム合金によって深絞り成形されたものである。前記容器本体10は、より好ましくは、5000系アルミニウム合金の中でも特に成形性に優れた5000系O調質材からなる深絞り成形品により構成される。前記容器本体10は、あるいは、6000系アルミニウム合金、例えば6000系T4調質材、により構成されてもよい。前記のように底壁12と周壁14とが一体に連続する深絞り成形品からなる容器本体10は、従来のように底壁と周壁とが別部材で構成されるものと異なり、複雑なシール構造を要することなく高い防水性を有すること、すなわち、当該容器本体10内への水の浸入を防ぐこと、が可能である。
【0027】
前記底壁12は平板状をなし、略矩形の平面形状を有する。前記容器本体10は、前記底壁12が略水平となる姿勢で前記車体に組み込まれる。具体的には、前記一対のサイドシル連結部材70を介して前記右及び左サイドシル2に取付けられる。
【0028】
前記周壁14は、前記底壁12の周縁から上向きに立ち上がるように当該底壁12と一体につながる。当該周壁14は、前記底壁12の上方の空間であって平面視で略矩形状の容器内空間の下半部を囲む形状を有する。具体的に、当該周壁14は、右側壁14a、左側壁14b、前側壁14f及び後側壁14rを一体に有する。前記右側壁14a及び前記左側壁14bは、前記車体の左右方向について前記容器内空間の右側及び左側にそれぞれ位置して前記車体の前後方向に延びる。前記前側壁14f及び前記後側壁14rは、前記車体の前後方向について前記容器内空間の前側及び後側にそれぞれ位置して前記車体の左右方向に延びる。
【0029】
前記周壁14は、複数の隅部を有する。当該複数の隅部は、この実施の形態では、右前隅部14fa、左前隅部14fb、右後隅部14ra及び左後隅部14rbであり、それぞれが前記容器本体10の深さ寸法だけ、すなわち前記周壁14の高さ寸法だけ、上下方向に延びる。前記右前隅部14faは前記前側壁14fと前記右側壁14aとの境界部分であり、当該右前隅部14faにおいて前記前側壁14fの右端部と前記右側壁14aの前端部とが一体につながる。前記左前隅部14fbは前記前側壁14fと前記左側壁14bとの境界部分であり、当該左前隅部14fbにおいて前記前側壁14fの左端部と前記左側壁14bの前端部とが一体につながる。前記右後隅部14raは前記後側壁14rと前記右側壁14aとの境界部分であり、当該右後隅部14raにおいて前記後側壁14rの右端部と前記右側壁14aの後端部とが一体につながる。前記左後隅部14rbは前記後側壁14rと前記左側壁14bとの境界部分であり、当該左後隅部14rbにおいて前記後側壁14rの左端部と前記左側壁14bの後端部とが一体につながる。
【0030】
また、前記容器本体10は、前記底壁12の周縁と前記周壁14の下縁との境界部分である底壁周縁境界部13を有する。当該底壁周縁境界部13は、前記底壁12の右縁と前記右側壁14aとの境界部分と、前記底壁12の左縁と前記左側壁14bとの境界部分と、前記底壁12の前縁と前記前側壁14fとの境界部分と、前記底壁12の後縁と前記後側壁14rとの境界部分と、を含む。前記バッテリー4は前記底壁12の上面上に載置されるようにして前記バッテリー容器に収容される。
【0031】
前記容器本体10では、当該容器本体10の深絞り成形の際に皺や破断が生じることを回避するために、前記複数の隅部14fa,14fb,14ra,14rb及び前記底壁周縁境界部13にR形状が与えられる。すなわち、当該複数の隅部14fa,14fb,14ra,14rb及び前記底壁周縁境界部13の内側面が外向きに凸の曲面となるように容器本体10が成形されている。前記曲面の曲率半径は、前記深絞り成形の条件に応じて設定される。特に、前記複数の隅部14fa,14fb,14ra,14rbのそれぞれの下端と前記底壁周縁境界部13の四隅との接続部分、換言すれば、前記隅部14fa,14fb,14ra,14rbの下端部、である容器底隅部15(
図3)にはさらに大きな曲率半径が与えられる。
図3は前記容器底隅部のうち前記右後隅部14raの下端部に相当する容器底隅部15を示している。
【0032】
前記蓋20は、前記容器本体10の上側で前記容器内空間を覆うように当該容器本体10に装着される。この実施の形態に係る前記蓋20は、天壁22と周壁24とを一体に有する。前記天壁22は、前記容器本体10の前記底壁12の平面形状に対応した平面形状(この実施の形態では略矩形状)を有する。前記周壁24は、前記容器本体10の前記周壁14の平面形状に対応した平面形状(この実施の形態では略矩形状)を有し、前記天壁22の周縁から下方に突出するように当該周縁と一体につながる。
【0033】
前記蓋20の周壁24の下縁部及び前記容器本体10の前記周壁14の上縁部からはそれぞれ外向きにフランジ部26,16が突出し、これらのフランジ部26,16が上下方向に互いに突き合わされた状態で互いに着脱可能に結合される。図例では両フランジ部26,16同士が図示しないシール材を介して複数のボルト28により締結される。前記容器内空間は、前記蓋20の前記天壁22と前記容器本体10の前記底壁12との間の空間であって、前記蓋20および前記容器本体10の周壁24,14によって囲まれた空間である。
【0034】
前記蓋20の材質は特に限定されない。当該蓋20は、例えば、5000系アルミニウム合金、好ましくは5000系アルミニウム合金のO調質材、からなる板材をプレス成形することにより製造されることが可能である。
【0035】
前記複数の内部補強材50は、前記底壁12の上側で前記周壁14の内側に当該周壁14に沿うように配置され、これにより前記バッテリー容器を内側から補強する。当該複数の内部補強材50のそれぞれは、一方向に直線状に延びる形状を有し、前記容器本体10に固定される。好ましくは、前記周壁14の内側面及び前記底壁12の上面に溶接等の手段で接合される。
【0036】
この実施の形態に係る前記複数の内部補強材50は、右内部補強材50A、左内部補強材50B、前内部補強材50F及び後内部補強材50Rを含む。前記右内部補強材50Aは前記右側壁14aに沿うように当該右側壁14aの内側すなわち左側に配置される。前記左内部補強材50Bは前記左側壁14bに沿うように当該左側壁14bの内側すなわち右側に配置される。前記前内部補強材50Fは前記前側壁14fに沿うように当該前側壁14fの内側すなわち後側に配置される。前記後内部補強材50Rは前記後側壁14rに沿うように当該後側壁14rの内側すなわち前側に配置される。以下の説明において、「複数の内部補強材50」は前記右内部補強材50A、前記左内部補強材50B、前記前内部補強材50F及び前記後内部補強材50Rの総称として用いられる。
【0037】
前記複数の内部補強材50のそれぞれは、前記容器本体10及び前記蓋20によって囲まれるバッテリー収容空間Sbに収容されるバッテリー4と前記周壁14との間に介在するように配置される。換言すれば、前記容器内空間のうち前記複数の内部補強材50により囲まれる空間が前記バッテリー収容空間Sbを構成する。当該バッテリー収容空間Sbは、前記バッテリー4を構成する前記複数のバッテリーモジュール6が縦横に(車体の前後方向及び左右方向に)配列された状態で当該複数のバッテリーモジュール6を収容することが可能な大きさ及び形状(この実施の形態では平面視略矩形状)を有する。
【0038】
前記複数の内部補強材50のそれぞれは、7000系アルミニウム合金により形成される。好ましくは、前記複数の内部補強材50A,50B,50F,50Rのそれぞれは7000系アルミニウム合金からなる押出形材により構成される。このことは、前記内部補強材50A,50B,50F,50Rのそれぞれが特定の長手方向に直線状に延び、かつ、当該長手方向に一様な断面形状を有することを可能にする。このような形状は、前記複数の内部補強材50のそれぞれが前記周壁14に沿うようにその内側に効率よく配置され、かつ、当該周壁14の内側面及び前記底壁12の上面に接合されることを容易にする。また、前記内部補強材50A,50B,50F,50Rの内側に広いバッテリー収容空間Sbを囲みながらこれに収容されるバッテリー4を有効に保護することが可能である。前記内部補強材50を構成する7000系アルミニウム合金としては、特に強度の高い(例えば0.2%耐力が300MPa以上の)ピーク時効材(T5調質材)が好ましい。
【0039】
前記のように、7000系アルミニウム合金は5000系または6000系アルミニウム合金に比べて応力腐食割れが生じやすい特性を有するが、前記複数の内部補強材50は前記のように防水性に優れた容器本体10の内部に配置されているので、当該複数の内部補強材50が7000系アルミニウム合金からなるものであっても、その応力腐食割れを有効に抑止することが可能である。
【0040】
前記複数の内部補強材50のそれぞれは、
図4に示すように内部空間を囲む中空断面を有し、具体的には、前記内部空間を囲む外壁52と、横リブ54と、を有する。前記外壁52は、この実施の形態では縦長の略矩形状をなし、前記内部空間の右側、左側、上側及び下側のそれぞれに位置する右壁52a、左壁52b、上壁52c及び下壁52dを含む。前記横リブ54は、前記内部補強材50の横断面における上下方向中間の高さ位置で前記内部空間を水平方向に横切るように配置され、前記右壁52a及び前記左壁52bの上下方向中間部位にそれぞれつながる両端部を有する。このような中空断面を有する前記内部補強材50は、車両の軽量化に寄与しながら、上下方向に厚みを有して前記内部空間を水平方向に横切る前記横リブ54を含むことにより、水平方向の荷重に対して十分耐え得る強度を有することができる。
【0041】
前記複数の内部補強材50のそれぞれは、前記バッテリー収容空間Sbの高さ寸法と略同等の高さ寸法を有する。具体的には、前記下壁52dの下面が前記底壁12の上面に接合され、前記右壁52a及び前記左壁52bのうち容器外側に位置する壁の下半部の外側面が前記容器本体10の周壁14の内側面に接合され、この状態で前記内部補強材50A,50B,50F,50Rの上半部が前記周壁14の上端よりも上側に突出する。当該上半部は、前記周壁14の上端部に装着される前記蓋20の周壁24によって包囲される。
【0042】
上述のように、この実施の形態に係るバッテリー収容ユニットでは、深絞り成形品からなる前記容器本体10の底壁周縁境界部13にはR形状が与えられ、当該底壁周縁境界部13の内側面は外向きに凸の曲面とされる。この内側面の形状にかかわらず広いバッテリー収容面積を確保するために前記複数の内部補強材50の下部に特別な形状が与えられる。
【0043】
具体的に、前記複数の内部補強材50のそれぞれにおいて、
図4に示すように、前記外壁52の4つの角部のうち前記底壁周縁境界部13の内側面に対応する下外側角部の外側面53には当該内側面と嵌合することが可能となるようなR形状が与えられている。
図4は、例として、前記容器本体10の周壁14のうち右側壁14aに沿って配置される右内部補強材50Aにおいて右壁52aと下壁52dとの境界部分である右下角部の外側面53を示している。この外側面は、外向きに凸の曲面であって前記底壁周縁境界部13のうち前記右側壁14aと底壁12との境界の内側面と合致する曲面とされている。
【0044】
すなわち、前記複数の内部補強材50のそれぞれは、前記底壁12の上面と接合可能な補強材底面(下壁52dの下面)と、周壁14の内側面と接合可能な補強材外側面(例えば前記右内部補強材50Aでは右壁52aの外側面)と、前記補強材底面と前記補強材外側面との境界部分を構成して前記底壁周縁境界部の内側面と嵌合することが可能な境界部外側面(例えば前記右内部補強材50Aでは前記右下角部の外側面53)と、を有する。このような形状は、前記底壁周縁境界部13の曲面形状にかかわらず前記内部補強材50が底壁12と周壁14との双方に接合されることを可能にし、これにより、当該内部補強材50の内側に広いバッテリー収容空間Sbが確保されることを可能にする。
【0045】
既述のように、前記容器本体10の深絞り成形時の皺及び破断の回避のため、前記4つの隅部14fa,14fb,14ra,14rbと前記底壁周縁境界部13との境界部分、換言すれば、前記隅部14fa,14fb,14ra,14rbの下端部(以下「容器底隅部」と称する。)、である容器底隅部15(
図3)には当該4つの隅部14fa,14fb,14ra,14rbの内側面の曲率半径及び前記底壁周縁境界部13の内側面の曲率半径よりもさらに大きな曲率半径が与えられている。このような4つの容器底隅部の形状に対応するため、
図1及び
図2に示すように、前記4つの隅部のそれぞれに前記4つの内部補強材50A,50B,50F,50Rとは別の4つの隅部補強材58がそれぞれ配置されている。当該4つの隅部補強材58は、前記隅部14fa,14fb,14ra,14rbの内側面の形状、前記底壁周縁境界部13の内側面の形状、及び前記容器底隅部の内側面形状にそれぞれ対応した形状をもつ外側面を有する。
【0046】
なお、前記複数の内部補強材50は本発明の必須の構成要素ではない。すなわち、当該複数の内部補強材50は省略されてもよい。例えば、前記周壁14のすぐ内側に前記内部補強材50を介さずにバッテリー4が配置されてもよい。
【0047】
前記複数のクロスメンバー60は、前記バッテリー収容空間Sb内で縦横に配列される前記複数のバッテリーモジュール6のうち互いに隣り合うバッテリーモジュール6の間に効率的に配置されながら前記複数の内部補強材50と協働して前記バッテリー容器を内側から有効に補強する。また、当該複数のクロスメンバー60は、前記バッテリー収容空間Sbを前記複数のバッテリーモジュール6にそれぞれ対応した複数のモジュール収容空間に区画する仕切り部材としても機能し得る。
【0048】
前記複数のクロスメンバー60のそれぞれは一方向に直線状に延びる形状であって、前記複数の内部補強材50のそれぞれと近似する断面形状を有する。すなわち、前記複数のクロスメンバー60のそれぞれは、前記複数の内部補強材50の高さ寸法と略同等の高さ寸法を有するとともに、内部空間を囲む中空断面を有する。
【0049】
具体的に、前記複数のクロスメンバー60のそれぞれは、例えば
図5に示されるように、前記内部空間を囲む外壁62と、前記内部空間を水平方向に横切る横リブ64と、を有する。前記外壁62は、前記外壁52と同様に縦長の略矩形状をなし、前記内部空間の右側、左側、上側及び下側のそれぞれに位置する右壁62a、左壁62b、上壁62c及び下壁62dを含む。前記横リブ64は、前記クロスメンバー60の横断面における上下方向中間の高さ位置で前記内部空間を水平方向に横切るように配置され、前記右壁62a及び前記左壁62bの上下方向中間部位にそれぞれつながる両端部を有する。このような中空断面を有する前記クロスメンバー60は、車両の軽量化に寄与しながら、上下方向に厚みを有して前記内部空間を水平方向に横切る前記横リブ64を含むことにより、水平方向の荷重に対して十分耐え得る強度を有することができる。
【0050】
このように一方向に延びかつ一様断面を有する前記複数のクロスメンバー60は、前記複数の内部補強材50と同様、高い強度を有する7000系アルミニウム合金からなる押出形材により構成されることが可能である。しかも、当該複数のクロスメンバー60は前記複数の内部補強材50と同様に前記容器本体10の内部に配置されるので、7000系アルミニウム合金からなるものであってもその応力腐食割れを有効に抑止することが可能である。当該複数のクロスメンバー60のそれぞれにも、特に強度の高い7000系のピーク時効材を用いることが可能である。
【0051】
この実施の形態において、前記複数のバッテリーモジュール6は、
図1及び
図2に示されるように左右2列で前後に2列よりも多い複数列(
図1に示される例では6列)にわたり配列される。この配列に対応して前記複数のクロスメンバー60は、単数本の縦クロスメンバー60Aと、これによりも多い複数の(
図1に示される例では5本の)横クロスメンバー60Bとを含む。以下の説明において、「複数のクロスメンバー60」は前記縦クロスメンバー60A及び前記複数の横クロスメンバー60Bの総称である。
【0052】
前記縦クロスメンバー60Aは、互いに車体の左右方向に隣り合うバッテリーモジュール6同士の間で車体の前後方向に延びるように配置される。当該縦クロスメンバー60Aは、その前後両端部が前記前及び後内部補強材50F,50Rの左右方向中間部位の内側面にそれぞれ接触する(好ましくは溶接等により接合される)ことが可能となる長さを有する。
【0053】
前記複数の横クロスメンバー60Bのそれぞれは、前記縦クロスメンバー60Aと右及び左内部補強材50A,50Bとの間において互いに車体の前後方向に隣り合うバッテリーモジュール6同士の間で車体の左右方向に延びるように配置される。それぞれの横クロスメンバー60Bは、その左右両端部が前記縦クロスメンバー60Aの右側面または左側面と前記右内部補強材50Aまたは前記左内部補強材50Bとにそれぞれ接触する(好ましくは溶接等により接合される)ことが可能となる長さを有する。
【0054】
前記複数のクロスメンバー60も本発明の必須の構成要素ではない。すなわち、当該複数のクロスメンバー60は省略されてもよい。例えば、前記複数のバッテリーモジュール6が前記クロスメンバー60を介さずに互いに直接隣り合うように配列されてもよい。あるいは、単一のモジュールからなるバッテリーがバッテリー収容空間に収容されてもよい。
【0055】
前記外部底壁32は、前記容器本体10の外部において前記底壁12の下面から下方に離れた位置で当該底壁12の下面を覆うように配置される。
【0056】
前記外部底壁32は、例えば前記底壁12の下面と平行な平板により構成される。このように複雑な形状が要求されない外部底壁32は、5000系アルミニウム合金のO調質材よりも成形性が低くて高い強度を有するアルミニウム合金、例えば5000系アルミニウム合金のH調質材、さらには、5000系アルミニウム合金よりも成形性は低いが強度の高い6000系アルミニウム合金からなる板材により構成されることが可能である。これらのことは、前記容器本体10にその成形のために5000系アルミニウム合金を採用しながら、当該容器本体10の底壁12の上に配置されるバッテリーを有効に保護することを可能にする。
【0057】
前記冷却体80は、発熱体であるバッテリー4を冷却するためのもので、前記容器本体10の底壁12の下面と前記外部底壁32の上面との間に配置される。当該冷却体80は、冷媒(例えば冷却水)の流通を許容しながら当該冷媒と前記底壁12とを熱交換させて当該底壁12を冷却する。
【0058】
この実施の形態に係る冷却体80は、前記底壁12の下面と接触するように当該下面に取付けられ、当該底壁12から当該冷却体80への熱伝導によって当該底壁12を冷却する。具体的に、前記冷却体80は、
図6に示すように、複数の冷媒流通部82と、冷媒分配部84と、冷媒回収部86と、を有し、その全体が前記底壁12の下面に例えば接着、溶接といった手段で接合される。
【0059】
前記複数の冷媒流通部82のそれぞれは、前記底壁12の下面に沿った特定の冷媒流通方向に延びて当該冷媒流通方向への前記冷媒の流通を許容する。具体的に、当該冷媒流通部82は前記冷媒流通方向を長手方向とする長尺な直方体状をなし、その内部に前記長手方向と直交する幅方向に並ぶ複数本の冷媒流通路82aが形成されている。当該冷媒流通部82の一方の端は前記冷媒流通路82a内に冷媒を受け入れる冷媒入口端であり、他方の端は前記冷媒流通路を流れた冷媒を排出する冷媒排出端である。当該複数の冷媒流通部82は、前記底壁12の略全域にわたり、前記長手方向と直交する(すなわち前記幅方向と平行な)配列方向に間隔をおいて互いに平行となるように配列されている。
【0060】
前記冷媒分配部84は、前記複数の冷媒流通部82のそれぞれの冷媒入口端に冷媒を分配する冷媒分配路84aを形成する。具体的に、当該冷媒分配部84は、前記配列方向と平行に延び、前記複数の冷媒流通部82の入口端同士を相互に接続するように配置される。当該冷媒分配部84は前記配列方向に延びる前記冷媒分配路84aを囲む中空状をなす。当該冷媒分配部84は、前記複数の冷媒流通部82とそれぞれ接合される複数の接合箇所を有し、当該複数の接合箇所のそれぞれに、前記複数の冷媒流通路82aと前記冷媒分配路84aとをそれぞれ連通するための貫通穴である複数の冷媒分配口84bが形成されている。
【0061】
前記冷媒回収部86は、前記複数の冷媒流通部82のそれぞれの冷媒出口端から冷媒を回収する冷媒回収路86aを形成する。具体的に、当該冷媒回収部86は、前記配列方向と平行に延び、前記複数の冷媒流通部82の出口端同士を相互に接続するように配置される。当該冷媒回収部86は前記配列方向に延びる前記冷媒回収路86aを囲む中空状をなす。当該冷媒回収部86は、前記複数の冷媒流通部82とそれぞれ接合される複数の接合箇所を有し、当該複数の接合箇所のそれぞれに、前記複数の冷媒流通路82aと前記冷媒回収路86aとをそれぞれ連通するための貫通穴である複数の冷媒回収口86bが形成されている。
【0062】
前記冷媒分配部84の入口には図略の冷媒供給源、例えば給水ポンプ、が接続される。当該冷媒供給源から前記冷媒分配部84に供給された冷媒は前記複数の冷媒流通部82に分配され、それぞれの冷媒流通部82の冷媒流通路82aを流れる間に前記底壁12と熱交換した後に前記冷媒回収部86の冷媒回収路86aに合流し、図略のタンクに回収される。
【0063】
前記のような複数の冷媒流通部82の分散配置は、前記底壁12及びその上に収容されるバッテリー4を広い範囲にわたって高い均一性で冷却することを可能にする。この実施の形態に係る前記冷却体80は、前記複数の冷媒流通部82の長手方向が車体の前後方向と合致し、配列方向が車体の左右方向と合致するように、前記底壁12に接合される。
【0064】
従って、この実施の形態に係る前記外部底壁32は、前記容器本体10の外部において前記底壁12の下面及び前記冷却体80の双方から下方に離れた位置で当該底壁12の下面及び当該冷却体80の双方を覆うように配置される。
【0065】
前記複数の外部補強材90は、前記底壁12と前記外部底壁32との間に介在するように配置される外部補強部を構成する。当該複数の外部補強材90は、前記底壁12の下面及び前記冷却体80と前記外部底壁32との間隔をより確実に保って当該底壁12及び当該冷却体80をより確実に保護することを可能にする。
【0066】
前記複数の外部補強材90は、それぞれが前記冷媒流通方向と平行な長手方向に延び、当該複数の外部補強材90のそれぞれが前記複数の冷媒流通部82を前記配列方向、すなわち前記冷媒流通方向と直交する方向であって前記底壁12の下面に沿う方向、にまたぎながら当該冷媒流通部82の両側の位置で前記底壁12の下面に接合される。この外部補強材90の形状は、当該外部補強材90が互いに隣り合う冷媒流通部同士の間の空間を利用して前記底壁12の下面に接合されながら前記複数の冷媒流通部82のそれぞれを直接的にかつ有効に保護することを、可能にする。
【0067】
具体的に、前記複数の外部補強材90のそれぞれは、第1対向部である右側対向部91と、第2対向部である左側対向部92と、中間対向部94と、第1連結部である右側連結部95と、第2連結部である左側連結部96と、を一体に有する。前記右側及び左側対向部91,92は、前記複数の冷媒流通部82のそれぞれの前記配列方向の両側の位置、この実施の形態では右側及び左側の位置、でそれぞれ前記長手方向に延びて前記底壁12の下面と対向しかつ接触する(好ましくは溶接等の手段で接合される)ことが可能な上面を有する。前記中間対向部94は、前記複数の冷媒流通部82のそれぞれの下方の位置で前記長手方向に延びて前記外部底壁32の上面と対向しかつ接触する(好ましくは溶接等の手段で接合される)ことが可能な下面を有する。前記右側連結部95は、前記中間対向部94の端部(この実施の形態では右側端部)と前記右側対向部91の内側端部(この実施の形態では左側端部)とを上下方向に連結する。前記左側連結部96は、前記中間対向部94の端部(この実施の形態では左側端部)と前記左側対向部92の内側端部(この実施の形態では右側端部)とを上下方向に連結する。また、前記右側及び左側対向部91,92のそれぞれには、当該右側及び左側対向部91,92の上側を前記冷媒分配部84及び前記冷媒回収部86が横切ることを許容するための凹み98が形成されている。
【0068】
以上のような形状を有する前記外部補強材90は、上下方向の圧縮荷重に対して高い剛性を有することにより、前記複数の冷媒流通部82のそれぞれをより確実に保護することが可能である。さらに、当該外部補強材90の中間対向部94と前記冷媒流通部82との間にスペーサが介在してもよい。このスペーサは、前記冷媒流通部82から前記中間対向部94への冷熱の直接的な移動を抑止するために断熱材で構成されていることが、好ましい。
【0069】
さらに、前記のような断面形状を有する外部補強材90は、アルミニウム合金の中でも強度の高い7000系アルミニウム合金からなる押出形材により構成されることが可能である。このことは、前記複数の外部補強材90のそれぞれに高い強度及び剛性を与えることを可能にする。7000系アルミニウム合金は、反面、比較的応力腐食割れが生じやすい特性を有するが、前記複数の外部補強材90はいずれも前記外部底壁32の内側(上側)に配置されていて外部の水分と直接接触することが防がれるので、前記外部補強材90が7000系アルミニウム合金により構成されていてもその応力腐食割れを有効に抑止することが可能である。
【0070】
この実施の形態において、前記冷媒流通方向及び前記長手方向、つまり前記複数の冷媒流通部82及び前記複数の外部補強材90が延びる方向は、前記車体の前後方向と平行な方向である。
【0071】
前記外部補強部は、前記複数の外部補強材90に代えて単一の外部補強材により構成されることも可能である。当該単一の外部補強材は、例えば、前記底壁12の下面のうち前記冷却体80が配置されずに露出している部分と前記外部底壁32の上面とに交互に接触するような波状の板材により構成されることが可能である。
【0072】
前記一対のサイドシル連結部材70は、前記容器本体10と車体の左右方向について当該容器本体10の両外側にそれぞれ位置する前記左右のサイドシル2との間にそれぞれ介在するように配置され、前記容器本体10が当該一対のサイドシル連結部材70を介して前記左右のサイドシル2に支持されるように当該容器本体10を当該サイドシル2に連結する。
【0073】
この実施の形態に係る前記サイドシル連結部材70は、前記サイドシル2に対して前記車体の左右方向の内向きに作用する衝撃荷重により圧壊して当該荷重を吸収するように前記左右方向に並ぶ複数の(図例では4つの)閉断面76を有する。当該複数の閉断面76のそれぞれは、この実施の形態では矩形状の内部空間を囲む形状を有する。このような構造を有する前記サイドシル連結部材70は、前記バッテリー容器が前記サイドシル2に支持されることを可能にする支持部材としての機能に加え、前記衝撃荷重を吸収して前記バッテリー容器及びこれに収容されるバッテリー4を有効に保護する補強部材として機能することが可能である。
【0074】
具体的に、前記サイドシル連結部材70は、上外壁71と、下外壁72と、内側外壁73と、外側外壁74と、少なくとも一つの、好ましくは複数の(図例では3つの)、縦リブ75と、を含む。
【0075】
前記上下外壁71,72は、上下方向に間隔をおいて互いに平行となる姿勢で配置され、それぞれは水平方向、この実施の形態では車体の左右方向、に延びる水平壁であって横壁である。当該上下外壁71,72のそれぞれは、車体の左右方向の両端部、すなわち、前記容器本体10に近い側の端部である内側端部と、その反対側の端部であって前記サイドシル2に近い側の端部である外側端部と、を有する。前記内側端部は、右側のサイドシル連結部材70では左側端部、左側のサイドシル連結部材70では右側端部であり、前記外側端部は、右側のサイドシル連結部材70では右側端部、左側のサイドシル連結部材70では左側端部である。
【0076】
前記内側外壁73は前記上下外壁71,72の内側端部同士を上下方向に連結するように当該内側端部と一体につながり、前記外側外壁74は前記上下外壁71,72の外側端部同士を上下方向に連結するように当該外側端部と一体につながる。前記複数の縦リブ75は、前記内側外壁73と前記外側外壁74との間で左右方向に略等間隔に並ぶ複数の位置にそれぞれ配され、当該位置における前記上外壁71の部位と前記下外壁72の部位とを上下方向に連結するように当該上下外壁71,72と一体につながる。
【0077】
従って、この実施の形態に係る前記サイドシル連結部材70においては、前記上下外壁71,72からなる一対の横材と、前記内側外壁73、前記外側外壁74及び前記複数の縦リブ75の中から選ばれる2つの縦材と、によって前記複数の閉断面76のそれぞれが構成される。例えば、車体の左右方向について最も内側の閉断面76は、前記内側外壁73と、これに隣り合う縦リブ75と、当該内側外壁73と当該縦リブ75との間の前記上外壁71の部位と、当該内側外壁73と当該縦リブ75との間の前記下外壁72の部位と、により構成される。
【0078】
図示される前記サイドシル連結部材70では、前記上下外壁71,72のうち前記複数の閉断面76のそれぞれを構成する部位の肉厚が車体の左右方向の外側から内側に向かうに従って順に小さくなっている。すなわち、当該上下外壁71,72は、前記縦材とつながる複数の位置をそれぞれ境界として、車体左右方向の外側から内側に向かうに従って段階的に小さくなる肉厚を有する。前記サイドシル連結部材70において衝撃荷重を受けることにより変形が生じる領域は、衝突面に近い側(車体左右方向の外側)で最も狭く、車体左右方向の外側から内側に向かうに従って広くなるので、前記のような肉厚配分は、前記車体の左右方向の内向きに作用する衝撃荷重によって前記サイドシル連結部材70が均等に圧壊するのを助ける。すなわち、前記複数の閉断面のうち最も外側の閉断面よりもその内側の閉断面の方が変形範囲が広くなるため、当該閉断面に実際に加わる荷重は外側から内側に向かうに従って低くなるので、当該外側から当該内側に向かうに従って前記上下外壁71,72の肉厚を小さくすることが、前記変形の進行に伴う前記荷重の極端な増加を防ぎ、これにより、サイドシル連結部材70を比較的一定に近い荷重で圧壊変形させることを可能にする。
【0079】
前記サイドシル連結部材70の具体的な材質は限定されないが、軽量のアルミニウム合金であることが好ましい。特に、圧縮性に優れかつ7000系の中では比較的耐応力腐食割れ性に優れた7000系の過時効材(T7調質材)や、さらに耐応力腐食割れ性に優れた6000系の押出形材が好適である。
【0080】
車体の左右方向について、前記サイドシル連結部材70の内側端部は前記容器本体10に連結される容器連結部を構成し、外側端部は前記サイドシル2に連結されるサイドシル連結部を構成する。具体的に、前記サイドシル連結部材70の内側端部は、前記容器本体10の前記フランジ部16に例えば前記ボルト28を利用して締結され、外側端部は同様にして前記サイドシル2の適当な部位に締結される。
【0081】
この実施の形態において、前記容器本体10に対する前記右及び左サイドシル連結部材70の高さ方向すなわち車体の上下方向についての相対位置は、
図4に示されるように、下記の条件(a)及び(b)を満たすように設定されている。
(a)前記右及び左サイドシル連結部材70において上下方向に厚みを有しかつ車体の左右方向に延びる横材である上外壁71及び下外壁72のいずれか一方(この実施の形態では上外壁71)の上下方向の肉厚領域の少なくとも一部が、前記右及び左内部補強材50A,50Bにおいて上下方向に厚みを有しかつ車体の左右方向に延びる横材である前記横リブ54及び下壁52dのいずれか一方(この実施の形態では横リブ54)の上下方向の肉厚領域の少なくとも一部と重なる程度まで、当該右及び左内部補強材50A,50Bの横リブ54の高さ位置と当該上外壁71の高さ位置とが合致する。
(b)前記複数のクロスメンバー60において上下方向に厚みを有しかつ水平方向に延びる水平壁である上壁62c、下壁62d及び横リブ64の上下方向の肉厚領域の少なくとも一部が前記複数の内部補強材50のうち当該クロスメンバー60の端部が接触する内部補強材50の水平壁である上壁52c、下壁52d及び横リブ54の上下方向の肉厚領域の少なくとも一部と重なる程度まで、それぞれの水平壁の高さ位置が互いに合致する。
【0082】
前記条件(a)の充足は、サイドシル2からサイドシル連結部材70に加えられた水平方向の荷重が前記内部補強材50の横リブ54に良好に伝達されることを可能にして当該荷重に対して有効に対抗することを可能にする。また、前記条件(b)の充足は、前記クロスメンバー60の横リブ64と当該クロスメンバー60に接触する内部補強材50の横リブ54との間での良好な荷重の伝達を可能にし、これにより当該クロスメンバー60を補強材として有効に機能させることができる。
【0083】
以上の効果を得るためには必ずしも前記条件(a)及び(b)が同時に充足されていなくてもよい。当該条件(a)及び(b)のうちのいずれか一方のみが充足されている場合でもその充足された条件に対応する効果が得られる。
【0084】
さらに、この実施の形態に係る前記一対のサイドシル連結部材70は、
図4に示すように、前記複数の閉断面76を構成する本体部(つまり前記上下外壁71,72、前記内側外壁73、外側外壁74、及び前記複数の縦リブ75を有する部分)に加え、外部底壁保持部77、荷重伝達壁78及び斜め補強壁79を有する。
【0085】
前記外部底壁保持部77は、前記本体部の下面(この実施の形態では前記下外壁72の内側端部の下面)から下方に突出し、前記外部底壁32と連結されることにより当該外部底壁32を保持する。具体的に、車両の左右方向について、右サイドシル連結部材70の外部底壁保持部77は前記外部底壁32の右側端部を保持し、左サイドシル連結部材70の外部底壁保持部77は前記外部底壁32の左側端部を保持する。すなわち、前記一対のサイドシル連結部材70によって前記外部底壁32の左右両端部が保持される。これにより、当該外部底壁32は前記底壁12の下面から下方に離れた位置で当該底壁12と平行な姿勢に保たれる。
【0086】
この実施の形態に係る外部底壁保持部77は、基壁77a及び端壁77bを有する。前記基壁77aは、前記本体部の内側端部からさらに下方に突出するように鉛直方向に延びる。
図4に示される例では、前記基壁77aは前記内側外壁73からさらに下方に延長された部分である。前記端壁77bは、前記基壁77aの下端と一体につながり、当該下端から車両の左右方向の内向き(
図4では左向き)に突出する。この端壁77bの上に前記外部底壁32の左右方向の端部が載せられ、当該端壁77bに締結具その他の手段で固定されることにより、外部底壁保持部77に保持される。
【0087】
このような前記外部底壁保持部77による前記外部底壁32の保持は、前記一対のサイドシル連結部材70が前記容器本体10の底壁12の下面と前記外部底壁32との上下方向の間隔を保持する側壁としても機能することを可能にする。
【0088】
前記荷重伝達壁78は、前記本体部に加えられた前記車体の左右方向の内向きの荷重を前記外部底壁保持部77に伝達するように前記本体部において前記外部底壁保持部77よりも車体左右方向の外側の部位と前記外部底壁保持部77の下端とを連結する。具体的に、この実施の形態に係る前記荷重伝達壁78は
図4に示すような斜壁部78a及び連結部78bを一体に有する。前記斜壁部78aは、前記下外壁72の下面において前記内側端部から外側に離れた位置から前記外部底壁保持部77に近づく斜め下向きに延びる。前記連結部78bは、前記斜壁部78aと前記外部底壁保持部77の適当な部位(
図4に示される例では前記基壁77aの下端部)とを車体の左右方向に連結する。この荷重伝達壁78は、側方から前記サイドシル連結部材70に加わる荷重を前記容器本体10と前記外部底壁32とに分散させて当該容器本体10内のバッテリーをより有効に保護することを可能にする。
【0089】
前記斜め補強壁79は、前記複数の閉断面76から選ばれる適当な閉断面(
図4に示す例では内側から2番目の閉断面76)を対角方向に横切って前記荷重伝達壁78と前記上外壁71とを接続する。
【0090】
この実施の形態に係るバッテリー収容ユニットでは、容器本体10がアルミニウム合金からなる深絞り成形品により構成されることにより、高い防水性を確保することができる。そして、前記容器本体10の底壁12の下面と前記外部底壁32との間に配置された冷却体80により、前記容器本体10の高い防水性を保ちながら前記底壁12及びその上に収容されるバッテリー4を有効に冷却することができる。すなわち、このバッテリー収容ユニットでは、前記容器本体10の外部に冷却体80が配置されているので、容器本体内部に冷却機構が設けられる態様と異なり、当該容器本体10に冷媒流通用の穴等を設ける必要がなく、当該穴等の加工によるシール性の低下を回避することが可能である。
【0091】
さらに、このように冷却体80が容器本体10の外部に配置されながらも、当該冷却体80及び当該底壁12の下面を覆うように外部底壁32が当該底壁12のさらに下方に配置され、かつ、前記容器本体10を自動車のサイドシル2に連結するためのサイドシル連結部材70を有効に利用して前記冷却体80及び前記底壁12の下面と前記外部底壁との上下方向の間隔を保つことにより、前記底壁12の下方に外部保護空間Seを確保して路面から前記外部底壁32に加わる外力が前記底壁12及び前記冷却体80に作用するのを有効に抑止することができる。このことは、当該底壁12及び当該冷却体80を有効に保護することを可能にする。すなわち、この実施の形態に係る外部底壁32及び前記サイドシル連結部材70は、(1)前記容器本体10の高い防水性と、(2)これに収容されるバッテリー4の有効な冷却と、(3)当該冷却のための冷却体80及びこれが配置される容器本体10の底壁12の有効な保護と、(4)サイドシル2によるバッテリー容器の支持と、を簡単な構造で同時に合理的に実現することを可能にする。
【0092】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を包含する。
【0093】
(A)バッテリー容器について
前記実施の形態では、容器本体10がバッテリー収容空間Sbの下半部を画定し、蓋20が当該バッテリー収容空間Sbの上半部を画定しているが、その比率は前記容器本体10の周壁14が当該バッテリー収容空間Sbの少なくとも一部を囲むという条件を満たす範囲で適宜設定されることが可能である。例えば、容器本体の周壁がバッテリー収容空間の全体を囲み、当該バッテリー収容空間を上から覆うように平板状の蓋が前記周壁に装着される態様も本発明に包含される。
【0094】
前記容器本体10及び前記蓋20の双方がアルミニウム合金製の深絞り成形品で構成される場合、その成形性の確保のために両者を構成する板材の成形深さを小さく抑えることが望ましいが、前記実施の形態のように前記容器本体10の周壁14の内側に内部補強材50が配置される場合には、当該内部補強材50の高さ寸法の確保という観点から前記容器本体10及び前記蓋20の成形深さの比率が3:7から5:5であることが好ましい。
【0095】
(B)外部底壁について
本発明に係る外部底壁の上面と容器本体の底壁の下面との上下方向の間隔は、その間に冷却体を配置することが可能であるという条件を満たす範囲内で適宜設定されることが可能である。例えば、当該間隔は前記冷却体の上下方向の寸法よりもわずかに大きな寸法であってもよい。
【0096】
前記外部底壁の具体的な材質や形状も自由に設定されることが可能である。例えば、前記外部底壁は、6000系アルミニウム合金以外のアルミニウム合金、例えば5000系アルミニウム合金のH調質材、により構成されてもよい。また、当該外部底壁は、外部への放熱の促進のために表面積を増やすべく、波板状に形成されたものや、放熱フィンが付加されたものであってもよい。
【0097】
(C)冷却体について
本発明に係る冷却体の具体的な構成は問わず、冷媒の流通を許容しながら当該冷媒と容器本体の底壁との間の熱交換によって当該底壁を冷却するものが広く包含される。
【0098】
本発明に係る冷却体により形成される冷媒流路の形状は自由に設定されることが可能である。当該冷媒流路は、前記底壁の下面と平行な面に沿って蛇行する形状、例えば、車両の左右方向及び前後方向のうちのいずれか一方の方向に往復しながら他方の方向に進行するような形状、であってもよい。あるいは、バッテリー容器に収容されるバッテリーの発熱に偏りがある場合にはその発熱が著しい部位に重点的に冷媒を流すように冷媒流路の形状が設定されてもよい。ただし、前記実施の形態に係る冷却体80のように冷媒流通方向と直交する配列方向に配列される複数の冷媒流通部82を含むものは、軽量な構造で容器本体の底壁を広い範囲にわたって冷却することが可能である。
【0099】
本発明に係る冷却体により流通が許容される冷媒は、冷却水などの液体に限定されず、気体であってもよい。例えば、当該冷却体は、当該冷却体と底壁の下面との間に走行風が流れることを許容する上下方向の風流通溝を画定するものであってもよい。この場合、容器本体の底壁と外部底壁との間の空間(前記外部保護空間Se)は前後に開放される。逆に、前記実施の形態に係る冷却体80のように走行風を利用しない態様では、前記外部保護空間Seへの走行風の進入を阻止するようにその前後の開口が塞がれてもよい。
【0100】
本発明に係る冷却体は、必ずしも容器本体の底壁の下面と直接接触するように当該下面に取付けられなくてもよい。例えば、当該容器本体の底壁の下面に当該冷却体が熱伝導性の高い接着剤で接着されること、あるいは、当該底壁の下面と当該冷却体との間に熱伝導シートが介在すること、によっても、当該底壁と当該冷却体との間の直接的な熱伝導を実現することが可能である。
【0101】
また、前記冷却体は必ずしも前記底壁の下面に取付けられなくてもよい。当該冷却体は、前記底壁から離れた位置、例えば外部底壁の上面に接触する位置、に配置されて前記底壁からの輻射熱を奪うものであってもよい。あるいは、前記底壁と前記冷却体との間に介在する熱伝導媒体を通じて前記底壁の熱を熱伝導により奪うものであってもよい。当該熱伝導媒体は、前記外部底壁及びサイドシル連結部材を利用したものであってもよいし、これらとは別に前記冷却体と前記底壁との間に介設された専用のものであってもよい。ただし、前記実施の形態に示されるような底壁12と冷却体80との直接的な熱伝導は、簡単な構造で効果的な底壁12及びバッテリー4の冷却を行うことを可能にする。
【0102】
(D)外部補強部について
本発明に係る外部補強部は、
図1等に示されるような複数の外部補強材90に限定されない。当該外部補強部は、容器本体の底壁と外部底壁との間隔を保つように当該底壁と当該外部底壁との間に介在するという条件を満たす範囲で様々な態様をとることが可能である。
【0103】
前記外部補強部は、例えば、
図1に示される前記複数の外部補強材90に代えて外部保護空間Seの略全域に広がる大きさの単一の外部補強材により構成されることも可能である。当該単一の外部補強材は、例えば、
図1に示される前記底壁12の下面と前記外部底壁32の上面のうち冷却体が配設されずに露出している面とに交互に接触するような波状断面をもつ板材により構成されることが可能である。当該板材は、例えば5000系アルミニウム合金からなる板材のプレス成形品により構成されることが可能である。
【0104】
ただし、前記外部補強部は、前記実施の形態に係る複数の外部補強材90のようにそれぞれの長手方向と直交する方向に間隔をおいて配置される複数の外部補強材を含むことにより、車両の軽量化に寄与しながら広い範囲にわたって前記底壁を有効に保護することが可能である。
【0105】
この効果は、例えば前記長手方向が車体の左右方向と合致するような配置であっても得ることが可能であるが、前記実施の形態のようにそれぞれの外部補強材90の長手方向が車体の前後方向と合致するような配置は、車両の走行中に前記外部補強材90に対して車両の前後方向の成分を含む荷重が作用したときの当該外部補強材90の変形を抑制することを可能にする。例えば、前記外部補強材90の長手方向が車体の左右方向と合致している場合、当該外部補強材90に対して車両の前後方向の荷重は前記長手方向と直交する方向に作用することになるので、前記外部補強材90の底壁対向部である中間対向部94が前記車両の左右方向に沿って前記荷重の向きに水平変位するように右側及び左側連結部95,96が傾くような変形が生じやすい。これに対し、前記外部補強材90の長手方向が車両の前後方向と合致する場合、車両の前後方向の荷重は前記外部補強材90に対してその長手方向、つまり剛性の高い方向、に作用するので、当該荷重に起因する外部補強材90の変形は有効に抑えられる。
【0106】
前記複数の外部補強材のそれぞれの断面形状も限定されない。当該外部補強材は、少なくとも、前記長手方向に延びて前記底壁の下面と対向しかつ接触可能な底壁対向部と、前記長手方向に延びて外部底壁の上面と対向しかつ接触可能な外部底壁対向部と、前記長手方向に延びて前記底壁対向部と前記外部底壁対向部とを上下方向に連結する連結部と、を一体に有することにより、軽量な構造で底壁の有効な補強を行うことが可能である。例えば、本発明に係る外部補強材は、前記右側対向部91及び前記左側対向部92が外部底壁対向部に相当し、逆に前記中間対向部94が底壁対向部に相当するような断面形状を有するものでもよい。また、前記外部底壁対向部及び前記底壁対向部のそれぞれが単数の部位からなるもの、例えば、H型鋼と同等の断面形状を有する押出形材により構成されたものであってその上下一対のフランジ部が前記外部底壁対向部及び前記底壁対向部を構成するように配置されるものであってもよい。あるいは、内部空間を囲む中空断面を有するものであってもよい。
【0107】
ただし、前記実施の形態に係る冷却体80、すなわち、複数の冷媒流通部82を含んで底壁12の下面に接触するような冷却体80、に対しては、前記実施の形態に係る複数の外部補強材90のように、それぞれが、前記複数の冷媒流通部82のそれぞれの両側の位置で前記長手方向に延びて前記底壁12の下面と対向しかつ接触可能な第1対向部及び第2対向部(前記実施の形態では右側及び左側対向部91,92)と、前記複数の冷媒流通部のそれぞれの下方の位置で前記長手方向に延びて前記外部底壁の上面と対向しかつ接触可能な中間対向部(前記実施の形態では中間対向部94)と、前記中間対向部と前記第1対向部及び前記第2対向部とをそれぞれ連結する第1及び第2連結部(前記実施の形態では右側及び左側連結部95,96)と、を含むことにより、前記複数の冷媒流通部82の有効な保護が可能である。
【0108】
前記外部補強材は、必ずしも底壁及び外部底壁の双方に接合されていなくてもよい。当該外部補強材は、例えば、前記底壁及び前記外部底壁のいずれか一方の壁にのみ接合され、他方の壁には対向して接触するのみ、あるいは隙間をおいて対向しているがその隙間が微小であって当該他方の壁に対して実質上接触することが可能となるように配置されたものであれば、前記底壁に近づく向きの前記外部底壁の変位を抑制する補強部材として機能することが可能である。
【0109】
前記外部補強材の材質は7000系アルミニウム合金に限定されない。当該外部補強材は例えば7000系アルミニウム合金以外のアルミニウム合金からなるものであってもよい。
【0110】
(E)サイドシル連結部材について
本発明に係るサイドシル連結部材の具体的な構造は限定されない。当該サイドシル連結部材は、例えば、単なる板状のブラケットであってもよい。ただし、当該サイドシル連結部材は、前記サイドシル連結部材70のように車体の左右方向に並ぶ複数の閉断面を有することにより、サイドシルに加えられる衝撃荷重を当該サイドシル連結部材自体の圧壊によって吸収する補強部材として機能することが可能である。
【0111】
本発明ではサイドシル連結部材における外部底壁保持部の具体的な形状及び構造も限定されない。当該外部底壁保持部は、容器本体の底壁と外部底壁との上下方向の間隔を保つように当該外部底壁を保持するものを広く包含する。例えば、
図4に示される外部底壁32が水平方向の底壁本体に加えて当該底壁本体の左右両端部から上方に延びる被保持部を含み、当該被保持部が容器本体の周壁14とサイドシル連結部材70の内側端部との間に挟み込まれる状態で当該サイドシル連結部材70の内側端部に固定されてもよい。この場合、前記サイドシル連結部材70の前記内側端部が容器連結部及び外部底壁保持部の双方として機能することになる。
【0112】
本発明において、荷重伝達部(
図4では荷重伝達壁78)は必須ではない。また、当該荷重伝達部の具体的な形状及び構造も限定されない。当該荷重伝達部は、例えば、
図4に示される下外壁72の下面と前記外部底壁保持部77とに挟まれるコーナー部分を埋めるように配置されるリブであってもよい。
【符号の説明】
【0113】
2 サイドシル
4 バッテリー
10 容器本体
12 底壁
14 周壁
20 蓋
32 外部底壁
70 サイドシル連結部材
76 閉断面
77 外部底壁保持部
78 荷重伝達壁
80 冷却体
82 冷媒流通部
90 外部補強材
91 右側対向部(第1対向部)
92 左側対向部(第2対向部)
94 中間対向部
95 右側連結部(第1連結部)
96 左側連結部(第2連結部)