(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】リガンドイオノフォアコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
A61K 47/55 20170101AFI20220803BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/7115 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/35 20060101ALI20220803BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220803BHJP
A61K 51/00 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61K47/55
A61K31/7105 ZNA
A61K31/7115
A61K31/713
A61K31/35
A61K31/519
A61K51/00 200
(21)【出願番号】P 2019526213
(86)(22)【出願日】2017-11-16
(86)【国際出願番号】 US2017061997
(87)【国際公開番号】W WO2018094035
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-11-13
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399026502
【氏名又は名称】パーデュー・リサーチ・ファウンデイション
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ステュワート・ロウ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・エル・カシンスキー
(72)【発明者】
【氏名】ロガナタン・ランガサミー
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0022245(US,A1)
【文献】特開昭61-056198(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0288152(US,A1)
【文献】特表2010-536790(JP,A)
【文献】Chemical Communications,2014年,50,7507-7510
【文献】Molecular Therapy-Nucleic Acids,2014年,3,e194
【文献】Medical Research Reviews,2000年,20(6),417-451
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/54
A61K 31/7088
A61K 31/35
A61K 31/519
A61K 51/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉酸
である結合リガンド(B);
約7~約45原子の鎖を含んで、かつジスルフィド結合を含む、1以上のリンカー(L);
プロトン(H
+イオン)の流出とカリウムイオン(K
+イオン)の流入が共役する1以上のイオノフォア(A)
であって、ニゲリシンまたはサリノマイシンであるイオノフォア(A);および
siRNA、iRNAまたはマイクロRNAを含んでなる治療剤(TA)
を含んでなり
、
結合リガンド(B)が、(L)と共有結合しており;および
イオノフォア(A)および治療剤(TA)がそれぞれ、(L)と共有結合している、
コンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【請求項2】
治療剤(TA)がsiRNAを含んでなる、請求項1記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【請求項3】
治療剤(TA)がiRNAを含んでなる、請求項1記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【請求項4】
治療剤(TA)がマイクロRNAを含んでなる、請求項1記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【請求項5】
以下からなる群
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
および
【化8】
から選択される式で示されるものである、請求項1記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【請求項6】
請求項1記載の少なくとも1つのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩と、少なくとも1つの薬学的に許容し得る担体または添加剤を含有する医薬組成物。
【請求項7】
請求項1記載の少なくとも1つのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩と、さらなる治療剤を含有する医薬組成物。
【請求項8】
治療剤のエンドソーム蓄積および脱出を増加させるための、有効量の請求項1記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩を含む、医薬組成物。
【請求項9】
治療剤または造影剤のエンドソーム蓄積および脱出を増加させるための剤であって、有効量の請求項1記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩、および、治療剤または造影剤、の組み合わせを含み、前記請求項1記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩が、前記治療剤または造影剤の前、後、または同時に、投与される、剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本出願は、米国特許法119(e)に基づき、全体が参照により本明細書に組み込まれる、2016年11月16日に出願された米国特許仮出願第62/422,922号および2017年3月29日に出願された米国仮特許出願第62/478,063号について優先権を主張する。
【0002】
政府の権利
本発明は、グラントP30 CA023168を通じて国立衛生研究所および国立癌研究所により授与された政府の支援によりなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本明細書中に記載される発明は、連結した治療剤または造影剤を含み得る、リガンドイオノフォアコンジュゲート、およびこのコンジュゲートを含有する医薬組成物に関する。また、記載されたコンジュゲートを、エンドサイトーシスまたは他の同様のプロセスによって内在化される治療剤または造影剤のエンドソーム蓄積および脱出を増加させるために使用する方法も記載される。葉酸受容体を過剰発現する細胞内へのコンジュゲートされたマイクロRNAの送達を媒介する、マイクロRNAの葉酸への直接の結合(FolamiR)による、マイクロRNAの腫瘍組織への送達も記載される。
【背景技術】
【0004】
背景
多くの病気は、薬または生物学的薬剤で治療することができる(生物学的薬剤の例としては、ヌクレオチド、例えばsiRNA、miRNAなど;天然には存在しない合成アミノ酸を含むアミノ酸;酵素、ペプチド、アプタマー、抗原などを含むタンパク質;および抗体、例えば糖タンパク質、免疫グロブリンなど)。これらの薬物または生物製剤は、それらの標的とするリガンド(例えば葉酸受容体結合リガンド)を用いてそれらの標的細胞に送達することができるが、例えば葉酸が介在するエンドサイトーシス後に、その薬物がエンドソームから放出されないことでその有効性が阻害されることがある。したがって、細胞質への閉じ込められた積み荷(cargo)の「エンドソーム放出」のための新しい方法の発見は、標的化された薬物または生物製剤の増大した有効性を達成するために有用であろう。エンドソーム放出は、健康な組織に対して毒性の低い既知のイノフォアを用いて、この積み荷を含むエンドソームを破裂させるための浸透圧を作り出すためのリガンドイオノフォアコンジュゲートの使用によって促進することができることが見出された。理論に縛られることなく、H
+イオンの流出とK
+イオンの流入が共役するイオノフォアおよびアンチポーターである、ニゲリシンは、細胞内に送達さると、エンドソームの内部でエンドソームの膨潤および/または崩壊をもたらす浸透圧の不均衡とエンドソーム内容物の細胞質内への放出を引き起こすと考えられている。サリノマイシンのようなカリウムイオンを輸送する他のK
+イノノフォアもエンドソーム放出に利用できると考えられる。
【化1】
【0005】
エンドソームの膨潤を誘導するために、浸透圧的に活性な(osmotically active)イオンがエンドソームに入り込み、それに付随して浸透圧による水の流入を促進することができる。この水の流入がエンドソームを膨張させ、最終的にはその破裂を引き起こす。しかしながら、浸透圧的に活性なイオンの流入が別の浸透圧的に活性なイオンの流出を伴う場合、水流の正味の変化は起こらず、エンドソームは膨張しないであろう。したがって、エンドソーム膨潤が起こるためには、浸透圧的に活性なイオン(例えば、Na+、K+、Li+、Ca++、Mg++)が、本質的に唯一の浸透圧的に不活性なカチオンであるH+と交換にエンドソームに入る必要がある。さらに、自発的に濃度勾配をもってエンドソームに流れ込む唯一の浸透圧的に活性なイオンがK+であるため、エンドソームの膨潤を引き起こすのに有用なイノフォアはH+イオンとK+イオンを交換することができるイノフォアである。
【0006】
Na+/H+交換輸送体(アンチポーター)は天然のエンドソームトランスポーターであり、その機能はエンドソームのpHを変えることである。それは、H+と引き換えにナトリウムイオンをエンドソームから移動させ、エンドソームの収縮を引き起こすことにより、K+イノフォア誘導エンドソーム膨潤に対して作用し得る。したがって、K+イノフォアの作用は、天然に存在するNa+/H+交換輸送体(アンチポーター)によって軽減される可能性があるが、アミロライド、またはHOE 694などのNa+/H+交換輸送体の阻害剤の同時添加によって増強される。
【0007】
葉酸受容体は、卵巣癌、肺癌、乳癌、子宮内膜癌、脳腫瘍、腎臓癌および大腸癌などの多くのヒトの癌の細胞膜上、ならびに慢性関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、変形性関節症、糖尿病、乾癬などの炎症性疾患に関与する活性化マクロファージにおいて過剰発現する。葉酸は、葉酸受容体に対して高い結合親和性(Kd=10-10M)を有し、オフサイト毒性を回避する選択的な方法で、放出可能な積荷を葉酸受容体に送達することができる。これらの受容体に結合したリガンドは、膜がカベオラに侵入し、内在化し、そして表面から分離した後、エンドソームの一部となる。
【0008】
エンドサイトーシスまたは同様のプロセスが可能な受容体に送達された薬物の積み荷は罹患細胞に選択的に送達されるが、細胞質または核へ送達される積み荷の経路は、「エンドソーム」と呼ばれる陥入した原形質膜によって完全にまたは部分的に遮断され得る。ペプチド、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、タンパク質、アプタマー、オリゴ糖類、多糖類などの高分子量の薬剤は、リガンド標的化エンドサイトーシス経路を介して内在化されると、エンドソームから脱出することができない。したがって、閉じ込められた積み荷はエンドソーム内に留まり、最終的にはエンドソーム内に存在する酸および酵素の作用によってより小さな断片に分解されてから不活性な形態で放出される。本発明のコンジュゲートは、標的細胞における、治療剤または造影剤のエンドソーム蓄積および脱出の両方を増大させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
概要
いくつかの実施形態では、本開示は、共有結合した葉酸とマイクロRNAとのコンジュゲートまたはその模倣体、および薬理学的に許容できる担体、希釈剤、または添加剤を含んでなる標的化されたマイクロRNA送達システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のいくつかの実施形態を以下に記載する:
1.細胞表面受容体に標的化されたリガンド(B);
1以上のリンカー(L);
プロトン(H+イオン)の流出とカリウムイオン(K+イオン)の流入が共役する1以上のイオノフォア(A);および/または
siRNA、iRNAまたはマイクロRNAを含んでなる治療剤(TA)
を含んでなり、
(L)は場合により少なくとも1つの放出可能なリンカーを含んでなり;
(B)が(L)と共有結合しており;および
(A)および/または(TA)がそれぞれ(L)と共有結合している、
コンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
1a.細胞表面受容体に標的化されたリガンド(B);
1以上のリンカー(L);
プロトン(H+イオン)の流出とカリウムイオン(K+イオン)の流入が共役する1以上のイオノフォア(A);および
siRNA、iRNAまたはマイクロRNAを含んでなる治療剤;
を含んでなり、
(L)が少なくとも1つの放出可能なリンカーを含んでなり;
(B)が(L)と共有結合しており;および
(A)がそれぞれ(L)と共有結合している、
コンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0011】
2.(L)が少なくとも1つの放出可能なリンカーを含んでなる、上記1または1aのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0012】
3.治療剤(TA)が(L)と共有結合している、上記1または1aのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0013】
4.治療剤(TA)がsiRNAを含んでなる、上記1または1aのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0014】
5.治療剤(TA)がiRNAを含んでなる、上記1または1aのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0015】
6.治療剤(TA)がマイクロRNAを含んでなる、上記1または1aのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0016】
7.(B)が葉酸である、上記項目のいずれかに記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0017】
8.(B)がPSMA結合リガンドである、上記1~6のいずれかに記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0018】
9.(A)がNa+/H+交換輸送体の阻害剤である、上記項目のいずれかに記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0019】
10.イオノフォア(A)がニゲリシンまたはサリノマイシンを含んでなる、上記9に記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0020】
11.(L)が約7~約45原子の鎖を含んでなる、上記項目のいずれかに記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0021】
12.以下からなる群
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
および
【化9】
から選択される式を有する、上記1または1aのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0022】
13.次式
【化10】
【化11】
【化12】
または
【化13】
を有する上記1のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0023】
14.上記1~13のいずれかに記載の少なくとも1つのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩、および少なくとも1つの薬学的に許容し得る担体または添加剤を含有する医薬組成物。
【0024】
15.上記1~13のいずれかに記載の少なくとも1つのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩、およびさらなる治療剤を含有する医薬組成物。
【0025】
16.治療剤または造影剤のエンドソーム蓄積および脱出を増加させる方法であって、治療剤または造影剤と共に有効量の上記1~13のいずれかに記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩を投与する工程を含む方法。
【0026】
17.治療剤または造影剤が癌に対して標的化されている、上記16に記載の方法。
【0027】
18.癌が、卵巣癌、肺癌、乳癌、子宮内膜癌、脳腫瘍、腎臓癌、前立腺癌および大腸癌からなる群から選択される、上記17に記載の方法。
【0028】
19.治療剤が炎症部位に標的化されている、上記16に記載の方法。
【0029】
20.炎症部位が、慢性関節リウマチ、変形性関節症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、移植片対宿主病、多発性硬化症、骨髄炎、乾癬、クローン病、シェーグレン症候群、エリテマトーデス、および潰瘍性大腸炎からなる群から選択される炎症性疾患によって引き起こされる、上記19に記載の方法。
【0030】
21.細胞表面受容体に標的化されたリガンド(B);
1以上のリンカー(L);
プロトン(H+イオン)の流出とカリウムイオン(K+イオン)の流入が共役する1以上のイオノフォア(A);siRNA、iRNA、およびマイクロRNAから選択されるRNA;または造影剤(IA)の1またはそれ以上
を含んでなり、
(L)が少なくとも1つの放出可能なリンカーを含んでなり;
(B)が(L)と共有結合しており;および
(A)、該RNAおよび/または(IA)がそれぞれ(L)と共有結合している、
コンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0031】
22.細胞表面受容体に標的化されたリガンド(B);
1以上のリンカー(L);
プロトン(H+イオン)の流出とカリウムイオン(K+イオン)の流入が共役する1以上のイオノフォア(A);および
Cy5を含んでなる蛍光色素
を含んでなり、
(L)が少なくとも1つの放出可能なリンカーを含んでなり;
(B)が(L)と共有結合しており;および
(A)がそれぞれ(L)と共有結合している、
コンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0032】
23.次式
【化14】
を有する上記21または22に記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0033】
23.次式
【化15】
または
【化16】
を有する上記21に記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、in vivoで葉酸コンジュゲートを用いたmiR-34a Renillaセンサーの標的化されたサイレンシングを示す。データポイントは、各時間の葉酸-NC(ネガティブコントロール:スクランブルmiRNA)に対して正規化した。(Fol-DB-miR-34a:葉酸-DBCO-miR-34a;Fol-SS-Nig miR-34a:葉酸-ss-DBCO-ニゲリシン-miR-34a;Fol-DB-Nig miR-34a:葉酸-DBCO-ニゲリシン-miR-34a)
【0035】
【
図2】
図2は、ネガティブコントロールに対して正規化したルシフェラーゼ発光量(relative light unit)の時間(h)に対するプロットを示す。データは、MDA-MB-231細胞においてFol-Nig-siLucが初期(early)ルシフェラーゼノックダウンを誘導することを示す。Fol-ネガティブコントロール(Fol-NC:葉酸-DBCO-ネガティブコントロール(スクランブルRNA)またはFol-Nig-NC:葉酸-ニゲリシン-DBCO-ネガティブコントロール(スクランブルRNA))に対して正規化したMDA-MB-231センサー細胞からのルシフェラーゼ活性レベル。平均 ± S.D., 反復データ(technical replicates)= 3, n=3,
** P<0.01. 矢印は、葉酸コンジュゲートの新用量(50 nM)の培地に置換したことを示す。Fol-siLuc2:葉酸-DBCO-siLuc2;Fol-Nig-siLuc2:葉酸-ニゲリシン-DBCO-siLuc2.
【0036】
【
図3】
図3A~Bは、処理後3時間の葉酸-Cy5(50nM)で処理したRab5B-GFPを安定的に発現するMDA-MB-231細胞の生細胞画像を示す。
【0037】
【
図4】
図4A~Bは、処理後3時間の葉酸-ニゲリシン-Cy5(50nM)で処理したRab5B-GFPを安定的に発現するMDA-MB-231細胞の生細胞画像を示す。
【0038】
【
図5】
図5A~Fは、培養中の細胞におけるFolamiR取り込みの特異性を示す。
図5Aは、FolamiRの提案された作用機序を示す。
図5Bは、放出不能なリガンドを保持しているFolamiR-34aコンジュゲート-FolamiR-34a、放出可能なリガンドを保持しているFolamiR-34aコンジュゲート-FolamiR-SS-34a(ジスルフィド結合を赤で示す)、および放出不能な葉酸リガンドおよびNIR部分(緑色で表示)を保持しているmiR-34aコンジュゲート-NIR-FolamiR-34aの構造を示す。葉酸部分は青で、miRNAは赤で示す。
図5Cは、FR陽性MDA-MB-231乳癌細胞およびFR陰性A549肺癌細胞における葉酸受容体α(FRα)の同定を示す。ヒストグラムは、未染色(A)、FRα(C)およびアイソタイプ対照(B)染色細胞の百分率として、オーバーレイフローサイトメトリーデータを表す。
図5Dは、FR陰性A549肺癌細胞と比較した、FR陽性MDA-MB-231乳癌細胞におけるNIR-F-34a取り込みを示す。ヒストグラムは、未染色(A)の、およびNIR-FolamiR-34a(50nM)染色(B)の細胞の百分率として、重ね合わせたフローサイトメトリーデータを表す。
図5Eは、FR陰性A549肺癌細胞と比較した、FR陽性MDA-MB-231乳癌細胞における葉酸-フルオレセインイソチオシアネート(Fol-FITC)取り込みを示す。スケールバー:50μm。
図5Fは、in vitroでのFolamiRを使用したmiR-34a Renillaセンサーの標的化されたサイレンシングを示す。
【0039】
【
図6】
図6A~Eは、FolamiRに対する細胞応答を示す。
図6Aは、in vitroでのFolamiRを用いたmiR-34a Renillaセンサーの標的化されたサイレンシングを示す。各時間について、データポイントをFolamiR-NC(ネガティブコントロールロール:スクランブルmiRNA)に対して正規化した。
図6Bは、FolamiR処理(50nM)に対するMDA-MB-231癌細胞の増殖および生存を示す。各時間について、データポイントをFolamiR-NCに対して正規化した。エラーバーは平均±s.d.を表す。実験はそれぞれ、n=3、処理毎に少なくとも4回の反復データである。
図6Cは、FolamiR-34aに対するMDA-MB-231の用量応答を示す。Renilla値は処置の96時間後に測定した。データポイントはFolamiR-NCに対して正規化した。エラーバーは平均±s.d.を表す。実験はそれぞれ、n=3、処理毎に少なくとも4回の反復データである。統計解析は、事後ボンフェローニ検定を用いるone-way ANOVAで行った(
**、P<0.01;
****、P<0.0001)。
図6Dは、漸増濃度の葉酸グルコサミンコンジュゲートを用いた、ヒトMDA-MB-231細胞(50nM、4℃)からのNIR-FolamiR-34a結合の置換を示す。ヒストグラムは、未染色の、およびNIR-FolamiR-34a染色の細胞の百分率として、オーバーレイフローサイトメトリーデータを表す。
図6Eは、in vitroでのFolamiR-34a競合アッセイを示す。
【0040】
【
図7】
図7A~Gは、FolamiR-34aがMDA-MB-231腫瘍の増殖を阻害することを実証する。
図7Aは、5nmolのNIR-FolamiR-34a、NIR-FolamiR-SS-34aまたはNIR-FolamiR-NCの静脈内注射後にMDA-MB-231センサー異種移植片を移植した雌性Nu/Nuコンジェニックマウスの代表的なライブイメージングを示す。左側は蛍光分布を示し、右側はmiR-34aRenillaセンサーシグナルを示す。
図7Bは、MDA-MB-231 Renillaセンサー活性に対するNIR-FolamiR-34a送達の効果を示す;データはすべて、0日目のRenillaシグナルに対して正規化し、平均±s.e.mとして示す(n=3)。統計分析は事後ボンフェローニ検定を用いるone-way ANOVAで行った(
**、P<0.01)。
図7Cは、蛍光に関して可視化されたMB-231乳癌および全身器官の肉眼画像を示す(T、腫瘍;Int、腸;S、脾臓;K、腎臓;Lv、肝臓;HLu、心肺;)。
図7Dは、NIR-FolamiRコンジュゲート注射後72時間目のqRT-PCRによって測定された切除されたMDA-MB-231腫瘍からのmiR-34aレベルを示す(n=3、エラーバーは平均±s.d.を表す。統計分析は事後ボンフェローニ検定を用いるone-way ANOVAで行った、
**、P<0.01)。
図7Eは、生きた動物からのNIR落射蛍光定量化を示す。雌のNu/Nuコンジェニックマウスの左肩にA549細胞を移植し、右肩にMDA-MB-231センサー異種移植片を移植し、100倍モル過剰以上の葉酸-グルコサミンの存在下(右)または非存在下(左)で5nmolのNIR-FolamiR-34aを静脈内注射した後にライブイメージングを実施した(1群あたりn=3)。エラーバーは平均±s.d.を表し、統計分析はone-way ANOVAで行った、
**、P<0.01;
***、P<0.001;
****、P<0.0001)。
図7Fは、
図7Eから得た器官および腫瘍の蛍光分布を示す:A549:FR陰性腫瘍;MB231(MDA-MB-231):FR陽性腫瘍;Int、腸;S、脾臓;K、腎臓;Lv、肝臓;HLu、心肺。
図7Gは、FolamiR-34a処置後の腫瘍サイズを示す(n=5、エラーバーは平均±s.e.m.を表す、統計分析はtwo-way ANOVAで行った、
**、P<0.01;
***、P<0.001)。矢印は処置の時点(1nmol、静脈内注射)を表す。腫瘍をノギスで測定し、腫瘍体積を体積(mm
3)=幅×(長さ
2)×2
-1により計算した。
【0041】
【
図8】
図8A~Dは、マウスKras
LSL-G12D/+;p53
flx/flx肺腺癌がFR(葉酸受容体)を発現することを示す。
図8Aは、蛍光画像化リガンドOTL38(On Target Laboratories, LLC、West Lafayette, IN;蛍光近赤外(NIR)色素にコンジュゲートした葉酸受容体α(FRα)ターゲティングリガンド)が肺腫瘍に優先的に保持され、正常な健康組織から排出されることを示している。
KrasLSL-G12D/+;腫瘍誘発の8週間後にp53
Flox/Floxマウスに5nmolのOTL38を注射し、注射の24時間後に屠殺した。対照として非誘導の健康なマウスを使用した。RC、右後葉;RM、内側右葉;RA、右副葉、RCr、右前葉;L、左葉。
図8Bは、OTL38で処置したマウスからの肺の右葉の組織図を示す。左:一致するH&E染色スライドを用いた臓器全体の近赤外イメージング。右:腫瘍組織および健常組織の高倍率画像。H&E画像は、明視野および近赤外画像で示される組織のタイプを示す。スケールバー:50μm;挿入図:20μm。低倍率画像に示された番号付きボックスは、高倍率画像の番号と対応する。
図8Cは、100倍モル過剰以上の葉酸-グルコサミンの存在下または非存在下でのOTL38(5nmole)で処置したマウスからの肺葉の全体図を示す(1群あたりn=3)。
図8Dは、
図8Cの組織の代表的な組織図を示す。
図8B、Dは、低倍率のH&E染色組織を、対応する腫瘍組織の高倍率画像と共に示す。左:高倍率の近赤外画像と対応する臓器全体の近赤外画像。H&E画像は近赤外画像で示される組織のタイプを表する。低倍率H&E画像の四角は、高倍率で示された画像と対応している。10スケールバー:20μm。
【0042】
【
図9】
図9A~Fは、FolamiRによるmiR-34aの標的化された置換が肺腺癌のマウスモデルにおいて有益な効果を有することを実証する。
図9Aは、FolamiR-34a処置後のMRI測定腫瘍量を示す(n=4または5、エラーバーは平均±s.e.m.を示す。統計分析はtwo-way ANOVAおよび事後ボンフェローニ検定で行った、
**、P<0.01)。矢印は処置の時点を表す(1nmol静脈内注射;計10回)。
図9Bは、処置期間中(8日目)および処置期間終了時(29日目)にFolamiRで処置したマウスの代表的なMRI画像および3Dレンダリングを示す。
図9Cは、示された時間における腫瘍/肺全体の比を示し、肺の体積に対して腫瘍が占めるパーセンテージを示している。エラーバーは平均±s.d.を表し、統計分析はone-way ANOVAで行った、
* P<0.05。
図9Dは、各処置群からの動物の左葉の代表的なH&E染色組織を示す。スケールバー=1mm。
図9Eは、全腫瘍量が、肺の全面積に対する各処置動物から得られた3つの切片から平均した全腫瘍面積から計算されることを示す(バーは中央値を示す、FolamiR-NC:n=4、FolamiR-34a:n=5;独立t検定)。
図9Fは、miR-34標的遺伝子、Met、Myc、およびBcl-2をqRT-PCRによって評価し、アクチンに対して正規化し、FolamiR-NC処置腫瘍に対してグラフ化したことを示す(バーは中央値を示す、独立t検定:
* P<0.05)。
【0043】
【
図10】
図10は、miRNA模倣トランスフェクションに対するmiR-34a Renillaセンサーの応答を示す。miR-34a Renillaセンサーを一時的に発現するMDA-MB-231乳癌細胞およびA549肺癌細胞を用いて、miR-34aの送達および活性をモニターした。Lipofectamine RNAimax(Life Technologies)を用いて、MDA-MB-231およびA549細胞に50nMのmiR-34a模倣体をトランスフェクトし、処理の96時間後にRenillaシグナルを測定した。
【0044】
【
図11】
図11A~Bは、MDA-MB-231 miR-34aセンサー細胞の評価を示す。
図11Aは、MDA-MB-231細胞におけるmiR-34aセンサー特異性および内因性miR-34aのサイレンシング活性を示す。エラーバーは平均±s.d.を表し、実験は3回行った。
図11Bは、renilla活性に基づくMB-231クローンの選択を示す。1つのクローンにつき1×10
4細胞を用いてRenilla読み取りを行い、Renilla Glulesferase Kit(Promega)を用いてRenillaレベルを測定した。
【0045】
【
図12】
図12は、FolamiR-34aの用量増加に対する腫瘍増殖の応答を示す。FolamiR-34a処置後の腫瘍サイズ(n=5、エラーバーは平均±s.e.m.を表す、統計分析はtwo-way ANOVAで行った、
*** P<0.001)。矢印は処置の時点(静脈内注射)を表す。腫瘍をノギスで測定し、腫瘍体積を体積(mm
3)=幅×(長さ
2)×2
-1により計算した。
【0046】
【
図13】
図13A~Bは、FolamiRで処置した腫瘍におけるmiR-34aのコピー数を示す。最後の注射の24時間後に、乳癌異種移植腫瘍(
図13A)および肺腺癌KrasLSL-G12D/+;p53flx/flx腫瘍(
図13B)からqRT-PCRにより測定したMiR-34aレベル(n=5、エラーバーは平均±s.d.を表す。統計分析はone-way ANOVAまたはスチューデントt検定で行った)。
【0047】
【
図14】
図14A~Bは血清サイトカインおよび最大耐量試験を示す。
図14Aは、MDA-MB-231腫瘍を有する、FolamiR処置したNu/Nuマウスから得られた血清を関連サイトカインについて評価した:腫瘍壊死因子(TNF)α、およびインターロイキン(IL)-6(n=5)を示す。リポ多糖(LPS)処置マウスからの血清を陽性検出対照として含めた(n=2;統計分析は事後ボンフェローニ検定を用いてone-way ANOVAで行った)。
図14Bは、漸増用量のFolamiR-34aの静脈内投与前後の体重を示す。統計分析は、事後Bonferroni補正を用いてtwo-way ANOVAで行った。
【発明を実施するための形態】
【0048】
詳細な記載
本開示の原理の理解を促進するために、図面に示された実施形態を参照し、特定の用語を用いて説明する。但し、それによって本開示の限定が意図されないことは理解されよう。
【0049】
本開示において、「約」という用語は、記載した値または記載した範囲の限定に関して、例えば、20%以内、10%以内、5%以内、または1%以内の、数値または範囲におけるある程度の変動を許容し得る。
【0050】
本開示において、「実質的に」という用語は、記載した値または記載した範囲の限定に関して、例えば、70%以内、80%以内、90%以内、95%以内、又は99%以内の、数値または範囲におけるある程度の変動を許容し得る。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態は、以下の列挙された条項に記載され、これらの実施形態とこの詳細な説明のセクションに記載されている実施形態の任意の組み合わせが企図される。
【0052】
1.細胞表面受容体に標的化されたリガンド(B);
1以上のリンカー(L);
プロトン(H+イオン)の流出とカリウムイオン(K+イオン)の流入が共役する1以上のイオノフォア(A);および/または
siRNA、iRNAまたはマイクロRNAを含んでなる治療剤(TA)
を含んでなり、
(L)は場合により少なくとも1つの放出可能なリンカーを含んでなり;
(B)が(L)と共有結合しており;および
(A)および/または(TA)がそれぞれ(L)と共有結合している、
コンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0053】
1a.細胞表面受容体に標的化されたリガンド(B);
1以上のリンカー(L);
プロトン(H+イオン)の流出とカリウムイオン(K+イオン)の流入が共役する1以上のイオノフォア(A);および
siRNA、iRNAまたはマイクロRNAを含んでなる治療剤;
を含んでなり、
(L)が少なくとも1つの放出可能なリンカーを含んでなり;
(B)が(L)と共有結合しており;および
(A)がそれぞれ(L)と共有結合している、
コンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0054】
2.(L)少なくとも1つの放出可能なリンカーを含んでなる、上記1または1aのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0055】
3.治療剤(TA)が(L)と共有結合している、上記1または1aのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0056】
4.治療剤(TA)がsiRNAを含んでなる、上記1または1aのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0057】
5.治療剤(TA)がiRNAを含んでなる、上記1または1aのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0058】
6.治療剤(TA)がマイクロRNAを含んでなる、上記1または1aのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0059】
7.(B)が葉酸である、上記1または1aのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0060】
8.(B)がPSMA結合リガンドである、上記1または1aのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0061】
9.(A)がNa+/H+交換輸送体の阻害剤である、上記1または1aのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0062】
10.イオノフォア(A)がニゲリシンまたはサリノマイシンを含んでなる、上記1または1aのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0063】
11.(L)が約7~約45原子の鎖を含んでなる、上記1または1aのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0064】
12.以下からなる群:
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
から選択される式を有する、上記1または1aのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0065】
13.次式
【化25】
【化26】
【化27】
または
【化28】
を有する上記1のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0066】
14.上記1~13のいずれかに記載の少なくとも1つのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩、および少なくとも1つの薬学的に許容し得る担体または添加剤を含有する医薬組成物。
【0067】
15.上記1~13のいずれかに記載の少なくとも1つのコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩、およびさらなる治療剤を含有する医薬組成物。
【0068】
16.治療剤または造影剤のエンドソーム蓄積および脱出を増加させる方法であって、治療剤または造影剤と共に有効量の上記1~13のいずれかに記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩を投与する工程を含む方法。
【0069】
17.治療剤または造影剤が癌に対して標的化されている上記16に記載の方法。
【0070】
18.癌が、卵巣癌、肺癌、乳癌、子宮内膜癌、脳腫瘍、腎臓癌、前立腺癌および大腸癌からなる群から選択される、上記17に記載の方法。
【0071】
19.治療剤が炎症部位に標的化されている、上記16に記載の方法。
【0072】
20.炎症部位が、慢性関節リウマチ、変形性関節症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、移植片対宿主病、多発性硬化症、骨髄炎、乾癬、クローン病、シェーグレン症候群、エリテマトーデス、および潰瘍性大腸炎からなる群から選択される炎症性疾患によって引き起こされる、上記19に記載の方法。
【0073】
21.細胞表面受容体に標的化されたリガンド(B);
1以上のリンカー(L);
プロトン(H+イオン)の流出とカリウムイオン(K+イオン)の流入が共役する1以上のイオノフォア(A);siRNA、iRNA、およびマイクロRNAから選択されるRNA;または造影剤(IA)の1またはそれ以上;
を含んでなり、
(L)が少なくとも1つの放出可能なリンカーを含んでなり;
(B)が(L)と共有結合しており;および
(A)、該RNAおよび/または(IA)がそれぞれ(L)と共有結合している、
コンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0074】
22.細胞表面受容体に標的化されたリガンド(B);
1以上のリンカー(L);
プロトン(H+イオン)の流出とカリウムイオン(K+イオン)の流入が共役する1以上のイオノフォア(A);および
Cy5を含んでなる蛍光色素
を含んでなり、
(L)が少なくとも1つの放出可能なリンカーを含んでなり;
(B)が(L)と共有結合しており;および
(A)がそれぞれ(L)と共有結合している、
コンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0075】
23.次式
【化29】
を有する上記21または22に記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0076】
23.次式
【化30】
または
【化31】
を有する上記21に記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容し得る塩。
【0077】
本明細書中で使用される用語「ヌクレオチド」は、その通常の慣習的な意味であり、リボヌクレオチドを含み得る。リボヌクレオチドの略語(例えば、A、G、C、U)は、それらの通常のそして慣用の意味である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるコンジュゲートは、RNA配列(すなわち、マイクロRNAまたは「miRNA」)を包含し得る。いくつかの実施形態では、リボヌクレオチドは、配列中の文字「r」の直前にあるそれらの通常の一文字略語によって表される(例えば、rA、rG、rC)。いくつかの実施形態では、RNA配列は修飾リボヌクレオチドを含み得る。そのような実施形態では、リボヌクレオチドは、修飾を示すために文字によって配列の直前に置かれた一文字の略語によって表される。一般的な修飾としては、メチル(m)、エチル(e)、アミノ(a)、デアミノ(o)などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、メチル化されたシチジンは、本明細書中に記載される配列においてmCによって表され得る。当分野において公知の他の改変もまた本開示によって企図されることが理解されよう。
【0078】
本明細書中で使用される用語「コンジュゲート」は、リガンド-イオノフォア(リガンド-イオノフォアは、リガンドとイオノフォアの間のリンカーがあるまたはないことを意味する)コンジュゲート、または治療剤もしくは造影剤と結合したリガンド-イオノフォア(リガンド-イオノフォアは、リガンドとイオノフォアの間のリンカーがあるまたはないことを意味する)コンジュゲート、あるいはそのコンジュゲートの薬学的に許容し得る塩または溶媒和物を意味する;このコンジュゲートは、プロトン化された形態等の、イオン化された形態で溶液または懸濁液中に存在し得る。
【0079】
本明細書で使用される用語「イノフォア」はまた、イノフォアのクラスター(例えば樹状構造)も意味する。同様に、リガンド-イオノフォアコンジュゲートとコンジュゲートした治療剤または造影剤は、その薬剤のクラスター(例えば樹状構造)であり得る。
【0080】
本明細書で使用される用語「放出可能な」は、特定の部分が放出可能なリンカーによってリンカー(L)に共有結合していることを意味する。
【0081】
本明細書中で使用される、薬物、治療剤、化学療法剤などの用語には、標的化された形態で、コンジュゲートに組み込むことができる、または個別に投与することができる、それらの類似体が含まれる。
【0082】
本明細書中で使用される用語「エンドサイトーシス」には、当分野で認識されている意味を有し、PSMA内在化のプロセスなどのいくつかの類似のプロセスが含まれる。
【0083】
治療剤または造影剤は、合成化学によって調製された薬剤、天然物から単離された薬剤、生物学的に合成された薬剤、またはその治療剤もしくは造影剤を含んでなるリポソーム等の高分子構造物またはデンドリマーであってもよい。
【0084】
いくつかの実施形態において、治療剤は、ポリペプチド、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、siRNA、iRNA、マイクロRNA、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、タンパク質、糖タンパク質、抗体、抗原、合成アミノ酸、アプタマー、オリゴ糖、または多糖などの生物製剤である。いくつかの実施形態では、治療剤はsiRNA、iRNA、またはマイクロRNAを含んでなる。
【0085】
薬剤が造影剤(IA)である場合、薬剤は、蛍光剤、X線造影剤(例えばイオビトリドールなど)、PET造影剤、近赤外色素(NIR色素)または放射性核種(例えば、ガリウム、インジウム、銅、テクニチウム、あるいはレニウムの同位体)などを含んでなることができる。蛍光剤としては、フルオレセイン、5-アミノ-フルオレセイン、6-アミノ-フルオレセイン、フルオレセインイソシアネート(FITC)、NHS-フルオレセイン、オレゴングリーン蛍光剤(Oregon Green 488、Oregon Green 514などが挙げられるがこれらに限定されない)、AlexaFluor蛍光剤(AlexaFluor 488、AlexaFluor 647などが挙げられるがこれらに限定されない)、フルオレセイン、および関連する類縁体、BODIPY蛍光剤(BODIPY F1、BODIPYが挙げられるがこれらに限定されない)、ローダミン蛍光剤(5-カルボキシテトラメチルローダミン(5-TAMRA)、ローダミンB、ローダミン6G、TRITC、テキサスレッド、ローダミン123、スルホローダミン101、テトラメチルローダミンが挙げられるがこれらに限定されない)、DyLight蛍光剤(DyLight 647、DyLight 680、DyLight 800などが挙げられるがこれらに限定されない)、CW 800、フィコエリスリンなどが挙げられる。本教示に従って使用され得る代表的な近赤外色素としては、LS288、IR800、SP054、S0121、KODAK、IRD28、S2076、S0456、およびそれらの誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0086】
特定の同位体標識されたコンジュゲート、例えば放射性同位元素を組み込んだものとしては、薬物および/または基質の組織分布研究に有用であり得る。放射性同位体トリチウム(すなわち3H)、および炭素-14(すなわち14C)は、それらの組み込みの容易さおよび容易な検出手段を考慮すると、この目的に特に有用である。
【0087】
11C、18Fおよび13Nなどの陽電子放出同位体での置換は、基質受容体の占有を調べるための陽電子放出断層撮影法(PET)試験に有用であり得る。同位体標識されたコンジュゲートは、一般に、当業者に知られている慣用技術、または、以前に使用された非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を用いて実施例に記載された方法と同様の方法により調製することができる。
【0088】
「ペイロード」を放出するための放出可能なリンカーの調製と使用は十分に裏付けられている。リガンドとイオノフォアのコンジュゲーションは、例えば、WO 2003/097647、WO 2004/069159、WO 2006/012527、WO 2007/022493、WO 2007/022494、WO 2009/002993、WO 2010/033733およびWO 2010/045584に記載されているような、放出可能なリンカーを用いる薬物の一重または二重コンジュゲーションに使用されるものと同様の手順を利用することができる。上記の特許出願のそれぞれの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。これらの同じ参考文献はまた、治療剤または造影剤をリガンド-イオノフォアコンジュゲートに結合させるため、または、個別にリガンド-治療剤またはリガンド-造影剤化合物を調製するために使用できる方法も記載している。
【0089】
例えば、フリーのヒドロキシルおよびカルボン酸官能基を含むイオノフォアであり水素イオン/カリウムイオンアンチポーターであるニゲリシンは、実施例に示されるように、ヒドロキシルまたはカルボン酸基に結合した放出可能なリンカーを介してリガンドに化学的に結合する。1つの例では、葉酸-ニゲリシンエステルコンジュゲートにおいて、葉酸リガンドは、ニゲリシンのカルボン酸官能基とジスルフィド含有リンカーを介してコンジュゲートしている。葉酸-S,S-ニゲリシン-S,S-ローダミン二重コンジュゲートについて、同様のコンジュゲーション法が用いられる。別の例としては、葉酸リガンドは、ヒドロキシル基へのジスルフィド結合を介して、葉酸-ニゲリシンコンジュゲートを形成する。
【0090】
miRNA二本鎖は、2本のRNAオリゴヌクレオチド(miR-34a-5pガイド鎖およびmiR-34a-3pパッセンジャー鎖と呼ばれる)を用いて構築することができる。いくつかの実施形態では、miR-34a-3pパッセンジャー鎖は、5’末端にアジドリンカー、1、2、4、6、8、10、12、14、16および18位に2’-O-メチルRNA塩基(mと標識)で修飾された20nt RNAオリゴ二重鎖を含んでなり、miR-34a-5pガイド鎖は、5’末端にリン酸基、3’の20および21位に2’-O-メチルRNA塩基を有する22ntのRNAオリゴを含んでなる。
【0091】
腫瘍抑制性miRNA、即ちmiR-34aの、レンチウイルス媒介およびリポソーム媒介の送達が、様々な非小細胞肺癌(NSCLC)マウスモデルにおいて腫瘍量を減少させることが理解されよう。ビークル媒介およびウイルス媒介のmiRNA送達に加え、オリゴヌクレオチドをそのまま全身注射することも試験されており、問題となり得ることもまた理解されるであろう。理論に縛られるわけではないが、静脈内送達に伴う薬物動態学および安定性に関する制限は、局所送達または腎臓や肝臓でのみしばしば見られる高いオリゴヌクレオチド濃度の達成を必要とするかもしれない。いくつかの実施形態では、局所配達は選択肢となり得る。いくつかの実施形態では、本開示のコンジュゲートを用いて、微小転移巣のような、局所送達でアクセス可能な部位を超えた送達を達成することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、非標的送達の課題の克服は、腫瘍細胞上に特異的に過剰発現している細胞表面受容体のコンジュゲートを適用することによって達成することができる。いくつかの実施形態では、本開示のコンジュゲートは、局所送達でアクセス可能な部位を超えたmiRNA模倣体送達を行うために適用され得る。いくつかの実施形態では、細胞表面受容体に結合するリガンドを機能的に活性なmiRNAにコンジュゲートさせることができ、得られた分子を用いてmiRNAを腫瘍細胞に特異的に標的化することができる。いくつかの実施形態では、標的受容体は葉酸受容体(FR)であり得る。葉酸受容体は正常細胞と比較して癌細胞上で過剰発現することが知られており、受容体の発現レベルは癌細胞への治療的量のmiRNAの送達を可能にするのに十分でなければならない。葉酸受容体(FR)は、乳癌、肺癌、卵巣癌、腎臓癌、および結腸癌を含む多くの上皮癌、ならびに急性骨髄性白血病などの様々な血液悪性腫瘍において過剰発現することが知られている。対照的に、正常組織上のFRの存在は量が限られており、標的化された薬物適用においては無視できるものであり、または血液由来の葉酸にはアクセスできないと思われる。
【0093】
いくつかの実施形態では、結合するリガンドは、高い結合親和性でFRと結合し、FRに対して選択的であり、受容体への結合を妨げない造影剤または治療剤とのコンジュゲーションを容易にする誘導体化が可能な官能基を含むFRリガンド、ビタミンB9(葉酸)であり得る。いくつかの実施形態では、miRNAまたはsiRNAなどの低分子RNAの送達に関して、FR/葉酸-コンジュゲート療法が本明細書に記載される。
【0094】
小さい放射性医薬品から大きいDNA含有製剤まで、様々なペイロードによる葉酸-標的化送達の成功例が、前臨床および臨床の両方のレベルで示されてきた。しかしながら、循環中の低分子RNAは保護する必要があるという仮説のために、低分子RNAの葉酸介在の送達は遅れをとっている。このレベルの保護を達成するために低分子RNA送達の分野で研究されている様々な戦略において、担体ビークル(デンドリマー、コポリマー、リポソーム)上に葉酸が組み込まれた。これらの複合体は非常に大きいサイズを有することがあり、大部分の固形腫瘍にみられる高密度の細胞外マトリックスによって標的組織への侵入が妨げられることが多い。本明細書では、FolamiRと名付けたmiRNA模倣体を葉酸リガンドに直接結合させたコンジュゲートについての証拠を示す。理論に拘束されることなく、本明細書に記載のFolamiRは、より大きなmiRNA封入ビークルよりも容易に固形腫瘍を灌流することができる。考えられる1つの問題は、天然型の低分子RNAが血中で比較的不安定であるということである。いくつかの実施形態では、本開示のコンジュゲートは、2’-O-メチルRNA塩基で最小限の修飾がされたmiRNA模倣体のパッセンジャー鎖を含み、これは、RNAを安定化し、アルゴノートローディング(loading)を損なうことなくヌクレアーゼ耐性を増大することが可能である。
【0095】
ローダミンに結合した葉酸は、静脈内投与後5分以内に固形腫瘍で飽和状態となるとみられる。葉酸コンジュゲート分子が腫瘍に侵入する速度は、本明細書に記載のFolamiRが循環中でごく短期間存続すればよいことを示している。
【0096】
いくつかの実施形態において、本開示は、機能的で事実上保護されていないmiRNAを腫瘍組織に特異的かつ迅速に送達するための方法を提供する。本明細書では、miRNA-34a(miR-34a)が腫瘍を選択的に標的とし得、腫瘍形成性細胞に入り、標的遺伝子を下方制御し得、そしてインビボで腫瘍の増殖を抑制し得ることが実証される。いくつかの実施形態では、miR-34aを葉酸に直接コンジュゲート(FolamiR-34a)することによって媒介される迅速な腫瘍取り込みが有益であり得る。
【0097】
本明細書中に記載される発明にはさらに、本明細書中に記載されるリガンド-イオノフォアコンジュゲートおよびさらに少なくとも1つの薬学的に許容し得る担体または添加剤を含有する医薬組成物が含まれる。リガンド-イオノフォアコンジュゲートは好ましくは、非経口的に(例えば、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内または髄腔内)患者(すなわち、それを必要とする対象)に投与される。あるいは、リガンド-イオノフォアコンジュゲートは、他の医学的に有用な方法(例えば、吸入、経鼻投与、口腔吸収、経皮、直腸または膣座薬、経口など、および有効な用量と適当な剤型(徐放製剤を含む)など)によって患者(例えば、ヒトまたは動物)に投与することができる。
【0098】
非経口剤形の例としては、等張生理食塩水、グルコース溶液または他の周知の薬理学的に許容できる液体担体(例えば、液体のアルコール、グリコール、エステル、およびアミド)中のリガンド-イオノフォアコンジュゲートの水溶液、またはリポソームの懸濁液が挙げられる。本発明の非経口剤形は、リガンド-イノフォアコンジュゲートの用量を含む再構成可能な凍結乾燥物の形態でもよい。一実施形態では、例えば、本明細書の一部を構成する米国特許第4,713,249号;第5,266,333号;および第5,417,982号に記載されている生分解性炭水化物マトリックスなどの当技術分野で公知の数多くの徐放製剤を投与する、あるいは、低速ポンプ(例えば、浸透圧ポンプ)を使用することができる。
【0099】
関係する医療専門家によって決定されるように、リガンド-イオノフォアコンジュゲートの投与は、エンドサイトーシスによって内在化される治療剤または造影剤の投与の前、後または同時に行うことができる。
【実施例】
【0100】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態をさらに説明する。但し、以下の例示的な実施例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書で使用される略語として以下が挙げられる:DCC、ジシクロヘキシルカルボジイミド;Py、2-ピリジル;RT、室温。
【0101】
製造実施例
材料
ペプチド合成のためのアミノ酸はAapptec, USAから購入した。N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)およびベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)はSigma-Aldrichから入手した。固相ペプチド合成(SPPS)は、標準的なペプチド合成装置(Chemglass、Vineland、NJ)を用いて行った。特に記載しない限り、他の化学物質は全てSigma-Aldrichから購入した。葉酸コンジュゲートはいずれも分取逆相(RP)-HPLC(Agilent)によって精製し、LC/MS分析は、UVダイオードアレイ検出器と組み合わせたAgilent質量分析計を使用した。
【0102】
葉酸-EDAコンジュゲートの合成
【化32】
ペプチド合成容器に、エチレンジアミン、ポリマー結合(200~400メッシュ)樹脂(1.000g、0.17mmol、1当量)を入れ、ジクロロメタン(3mL)、続いてジメチルホルムアミド(3mL)で1時間膨潤させた。次いで、この容器に、DMF中のFmoc-Glu-OtBu溶液(0.1808g、0.425mmol、2.5当量)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA-i-Pr
2Net、0.2202g、1.7mmol、10当量)および(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP、0.2212g、0.43mmol、2.5当量)を加えた。アルゴンを4時間通気し、カップリング溶液を排出し、樹脂をDMF(3×10mL)およびイソプロパノール(i-PrOH)(3×10mL)で洗浄した。カイザーテストを実施して反応の完了を確認した。各アミノ酸カップリングの前に、DMF中の20%ピペリジン(3×10mL)を用いてFmoc脱保護を行った。上記の順序を繰り返して、Tfa.プテロイン酸との反応を完了させた。最後に、樹脂をDMF中の50%水酸化アンモニウム(3×10mL)で5分間洗浄してプテロイン酸上のトリフルオロ-アセチル保護基を切断し、i-PrOH(3×10mL)、続いてDMF(3×10mL)で洗浄した。樹脂をアルゴン下で30分間乾燥した。95%CF
3COOH、2.5%H
2Oおよび2.5%トリイソプロピルシランからなる開裂混合物を用いて、葉酸-EDAペプチドを樹脂から切断した。開裂混合物10mlを入れて、アルゴンを1.5時間通気した。開裂混合物をきれいなフラスコに排出した。さらなる開裂混合物で樹脂を3回洗浄した。合わせた混合物を減圧下で少量(約5mL)まで濃縮し、冷エチルエーテルを添加することによって沈殿させた。沈殿物を遠心分離により集め、エチルエーテルで洗浄し(3回)、高真空下で乾燥した。粗製の反応混合物をRP-HPLC(移動相A=10mM酢酸アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:13ml/分にて35分間で0%Bから30%B)により精製し、葉酸-EDAを65%の収率で得た。LC-MS(A=10mM炭酸水素アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:12分で0%Bから30%B)R
T=3.26分(M+H
+=484.0)。
【0103】
葉酸-DBCOコンジュゲートの合成
【化33】
DMSO中の葉酸-EDA(0.0100g、0.0206mmol、1当量)およびNHS-DBCO(0.0091g、0.0227mmol、1.1当量)の撹拌溶液に、DIPEA(0.0039g、0.0309mmol、1.5当量)を滴加した。反応混合物を室温で撹拌し続けた。反応の進行をLCMSによってモニターした。葉酸-EDAが完全に変換されたら、粗製の反応混合物をRP-HPLC(移動相A=10mM酢酸アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:13ml/分にて35分間で0%Bから50%B)により精製し、葉酸-DBCOを85%の収率で得た。LC-MS(A=10mM炭酸水素アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:12分で0%Bから50%B)R
T=4.62分(M+H
+=771.0)。
【0104】
葉酸-SS-DBCOコンジュゲートの合成
【化34】
DMSO中の葉酸-EDA(0.0100g、0.0206mmol、1当量)およびNHS-SS-DBCO(0.0128g、0.0227mmol、1.1当量)の撹拌溶液に、DIPEA(0.0039g、0.0309mmol、1.5当量)を滴加した。反応混合物を室温で撹拌し続けた。反応の進行をLCMSでモニターした。葉酸-EDAを完全に変換した後、粗製の反応混合物をRP-HPLCにより精製し(移動相A=10mM酢酸アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:13ml/分にて35分で0%Bから50%B)、82%の収率で葉酸-SS-DBCOを得た。LC-MS(A=10mM重炭酸アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:12分で0%Bから50%B)R
T=5.4分(M+H
+=934.0)
【0105】
葉酸-Cysコンジュゲートの合成
【化35】
ペプチド合成容器にH-Cys(Trt)-2-Cl-Trt-樹脂(100-200メッシュ、0.200 g、0.088 mmol、1当量)を入れ、ジクロロメタン(3mL)、続いてジメチルホルムアミド(3mL)で1時間膨潤させた。次いで、この容器に、DMF中のFmoc-Orn(Boc)-OH溶液(0.080g、0.176mmol、2.0当量)、i-Pr
2NEt(0.0684g、0.528mmol、6.0当量)、およびPyBOP(0.1832g、0.35mmol、4.0当量))を加えた。アルゴンを4時間バブリングし、カップリング溶液を排出し、樹脂をDMF(3×10mL)およびi-PrOH(3×10mL)で洗浄した。カイザーテストを実施して反応の完了を確認した。各アミノ酸カップリングの前に、DMF中の20%ピペリジン(3×10mL)を用いてFmoc脱保護を行った。上記の順序を繰り返して、Fmoc-Glu-OtBu(0.0749g、0.176mmol、2.0当量)との反応およびTfa.プテロイン酸(0.0359g、0.088mmol、1.0当量)カップリング工程を完了させた。最後に、樹脂をDMF中の2%ヒドラジン(3×10mL)で5分間洗浄してプテロイン酸上のトリフルオロ-アセチル保護基を切断し、i-PrOH(3×10mL)、続いてDMF(3×10mL)で洗浄した。樹脂をアルゴン下で30分間乾燥した。92.5%CF
3COOH、2.5%H
2O、2.5%のエタンジチオールおよび2.5%トリイソプロピルシランからなる開裂混合物を用いて、葉酸-Cysペプチドを樹脂から切断した。開裂混合物10mlを入れて、アルゴンを1.5時間通気した。開裂混合物をきれいなフラスコに排出した。さらなる開裂混合物で樹脂を3回洗浄した。合わせた混合物を減圧下で少量(約5mL)まで濃縮し、エチルエーテル中で沈殿させた。沈殿物を遠心分離により集め、エチルエーテルで洗浄し(3回)、高真空下で乾燥した。粗製の反応混合物をRP-HPLC(移動相A=10mM酢酸アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:13ml/分にて35分間で0%Bから30%B)により精製し、葉酸-Cysを収率72%で得た。LC-MS(A=10mM炭酸水素アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:12分で0%Bから30%B)R
T=3.73分(M+H
+=659.0)。
【0106】
ニゲリシンのピリジルジスルフィドアミド誘導体の調製
【化36】
ニゲリシン遊離酸(0.035mmol)、Py-SS-(CH
2)
2NH
2(0.052mmol)、HATU(0.052mmol)、およびDIPEA(0.069mmol)を無水CH
2Cl
2(2.0mL)に溶解し、室温にて一晩アルゴン下で撹拌した。反応の進行をLC-MSでモニターした。ニゲリシン遊離酸を完全に変換した後、粗製の反応混合物をR-HPLC(移動相A=10mM酢酸アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:13ml/分にて35分間で0%Bから100%B)により精製し、ニゲリシン-SS-アミド誘導体を収率55%で得た。LC-MS(A=10mM炭酸水素アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:12分で0%Bから100%B) R
T=7.53分(M+Na
+=910.5)
【0107】
ニゲリシンの葉酸-ピリジルジスルフィドアミド誘導体の調製
【化37】
DMSO中の葉酸-Cys(0.004g、0.007mmol、1.5当量)およびニゲリシンのピリジルジスルフィドアミド誘導体(0.004g、0.005mmol、1.0当量))の撹拌溶液に、DIPEAを滴加した。室温にて反応混合物の攪拌を続けた。反応の進行をLC-MSでモニターした。葉酸-Cysを完全に変換した後、粗製の反応混合物をRP-HPLC(移動相A=10mM酢酸アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:13ml/分にて35分間で0%Bから40%B)により精製し、ニゲリシンの葉酸-ピリジルジスルフィドアミド誘導体を収率65%で得た。LC-MS(A=10mM炭酸水素アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:12分で0%Bから100%B) R
T=4.2分(M+H
+=1441.0)
【0108】
ニゲリシンの葉酸-DBCO-ピリジルジスルフィドアミド誘導体の調製(放出不能なコンジュゲート)
【化38】
DMSO中のニゲリシンの葉酸-ピリジルジスルフィドアミド誘導体(0.010 g、0.0069 mmol、1当量)およびNHS-DBCO(0.003 g、0.0076 mmol、1.5当量)の攪拌溶液に、DIPEA(0.0013 g、0.010 mmol、1.5当量)を滴加した。室温にて反応混合物の攪拌を続けた。反応の進行をLC-MSでモニターした。葉酸-SS-ニゲリシンを完全に変換した後、粗製の反応混合物をRP-HPLC(移動相A=10mM酢酸アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:13ml/分にて35分間で0%Bから50%B)により精製し、葉酸-DBCO-ニゲリシンを65%の収率で得た。LC-MS(A=10mM炭酸水素アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:12分で0%Bから100%B) R
T=5.38分(M+H
+=1728.4)
【0109】
ニゲリシンの葉酸-SS-DBCO-ピリジルジスルフィドアミド誘導体の調製(放出可能なコンジュゲート)
【化39】
DMSO中のニゲリシンの葉酸-ピリジルジスルフィドアミド誘導体(0.010 g、0.0069 mmol、1当量)およびNHS-SS-DBCO(0.005 g、0.010 mmol、1.5当量)の攪拌溶液に、DIPEA(0.0013 g、0.010 mmol、1.5当量)を滴加した。室温にて反応混合物の攪拌を続けた。反応の進行をLC-MSでモニターした。葉酸-SS-nigを完全に変換した後、粗製の反応混合物をRP-HPLC(移動相A=10mM酢酸アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:13ml/分にて35分間で0%Bから50%B)により精製し、葉酸-SS-DBCO-ニゲリシンを65%の収率で得た。LC-MS(A=10mM炭酸水素アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:12分で0%Bから100%B) R
T=6.52分(M/2+H
+=945.4)
【0110】
葉酸-ニゲリシン-miR-34aコンジュゲートの調製
葉酸-ニゲリシン DBCO miR-34aコンジュゲート:
【化40】
葉酸-ニゲリシン-SS-DBCO miR-34aコンジュゲート:
【化41】
miR-34a-5pガイド鎖およびmiR-34a-3pパッセンジャー鎖(いずれもIntegrated DNA Technologiesによって調製)と称する2つのRNAオリゴヌクレオチドを使用してmiRNA二本鎖を構築した。miR-34a-3pパッセンジャー鎖は、5’末端にアジドリンカーおよび3’末端に2’-O-メチルRNA塩基で修飾された20nt RNAオリゴ二重鎖(mCmArAmCrCmArGmCrUmArAmGrAmCrAmCrUmGrCC)を含んでなり、miR-34a-5pガイド鎖は、3’上に2’-O-メチルRNA塩基で最小限の修飾を有する22ntのRNAオリゴを含んでなる(rUmGmUrUrGrGrUrCrGrArUrUrCrUrGrUrGrArCrGrGrU / 5Phos)。同じ修飾を用いて合成したスクランブルmiRNA(ネガティブコントロール)を用いて対照の二本鎖を形成した。葉酸-DBCO-ニゲリシンまたは葉酸-SS-DBCO-ニゲリシンコンジュゲートとアジド修飾アンチセンスmiR-34a(またはスクランブル)との間でビ-オルトゴナル(bi-orthogonal)なクリック反応を行った。クリック反応は、水中で室温にて8時間、モル比1:10(アジドオリゴ:葉酸コンジュゲート)で行った後、4℃にて4時間冷却した。コンジュゲートしていない葉酸は、Oligo Clean and Concentrator(Zymo Research)を製造業者の説明書に従って使用して反応物から除去した。コンジュゲーションは、15%TAEネイティブPAGEおよびMALDIスペクトル分析を用いて確認した。コンジュゲート後、miR-34a-5pガイド鎖を葉酸コンジュゲートにアニーリングした。簡潔に言えば、アニーリング緩衝液:50mMのNaCl(Sigma)、および1mMのEDTA(Sigma)を添加した10mMトリス緩衝液pH7(Sigma)中で、葉酸-miR-34a-3pとmiR-34a-5pとを等モル比(1:1、最終濃度各5μM)で混合し、95℃で5分間インキュベートし、1時間かけて室温まで冷却した後、-80℃で保存した。
【0111】
葉酸-ニゲリシン-DBCO-siRNAコンジュゲートの調製
葉酸-ニゲリシン DBCO-siLuc2コンジュゲート:
【化42】
葉酸-ニゲリシン-SS-DBCO-siLuc2コンジュゲート:
【化43】
siLuc2センス鎖(GGACGAGGACGAGCACUUCUU)およびsiLuc2アンチセンス鎖(GAAGUGCUCGUCCUCGUCCUU)として表される2つのRNAオリゴヌクレオチド(Integrated DNA Technologies)を使用して、siRNA二本鎖を構築した。葉酸-ニゲリシン-DBCOまたは葉酸-ニゲリシン-ss-DBCOとアジド修飾アンチセンスsiRNA(またはスクランブル)との間でビ-オルトゴナル(bi-orthogonal)クリック反応を行った。クリック反応は、水中で室温にて1:10のモル比(アジドオリゴ:葉酸-ニゲリシン-DBCO)で8時間行なった後、4℃で4時間冷却した。コンジュゲートしなかった葉酸を、Oligo Clean and Concentrator(Zymo Research)を製造業者の説明書に従って使用し、反応物から除去した。15%TAEネイティブPAGEおよびMALDIスペクトル分析を用いてコンジュゲーションを確認した。コンジュゲート後、siLuc2センス鎖を葉酸-ニゲリシン-DBCO-siRNAアンチセンスコンジュゲートにアニーリングさせた。簡潔に言えば、葉酸-siLuc2アンチセンスとsiLuc2センスをアニーリング緩衝液:50mM NaCl(Sigma)を添加した10mM Tris緩衝液pH7(Sigma)および1mMのEDTA(Sigma)中で、等モル比(1:1、最終濃度各5μM)で混合し、95℃で5分間インキュベートした後、室温までゆっくり冷却した後、-80℃で保存した。
【0112】
葉酸-Cy5色素コンジュゲートの調製
【化44】
DMSO中の葉酸-EDA(0.0008g、0.0016mmol、1当量)およびNHS-Cy5(0.001g、0.001mmol、1.1当量)の撹拌溶液に、DIPEA(0.0004g、0.0032mmol、2当量)を滴加した。室温にて反応混合物の攪拌を続けた。反応の進行をLC-MSでモニターした。葉酸-EDAを完全に変換した後、粗製の反応混合物をRP-HPLC(移動相A=10mM酢酸アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:13ml/分にて35分間で0%Bから50%B)により精製し、葉酸-Cy5色素コンジュゲートを85%の収率で得た。LC-MS(A=10mM炭酸水素アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:12分で0%Bから50%B)R
T=2.40分(M+H
+=949.2)
【0113】
ニゲリシンの葉酸-Cy 5-ピリジルジスルフィドアミド誘導体色素コンジュゲートの調製
【化45】
DMSO中のニゲリシンの葉酸-ピリジルジスルフィドアミド誘導体(0.0023g、0.0016mmol、1当量)およびNHS-Cy5(0.001g、0.0016mmol、1当量)の撹拌溶液に、DIPEA(0.0004g、0.0032mmol、2等量)を滴加した。室温にて反応混合物の攪拌を続けた。反応の進行をLC-MSでモニターした。葉酸-ss-nigを完全に変換した後、粗製の反応混合物をRP-HPLC(移動相A=10mM酢酸アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:13ml/分にて35分間で0%Bから50%B)により精製し、葉酸-ニゲリシン-Cy5を65%の収率で得た。LC-MS(A=10mM炭酸水素アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:12分で0%Bから100%B) R
T=7.05分(M+H
+=1906.0)
【0114】
葉酸-NIR色素コンジュゲートの合成:
DMSO中の葉酸-Cys(0.010g、0.015mmol、1当量)およびマレイミド-NIR色素(0.019g、mmol、1.1当量))の撹拌溶液に、DIPEA(0.0029g、0.0228mmol、1.5当量)を滴加した。反応混合物を室温で撹拌し続けた。反応の進行をLC-MSによってモニターした。葉酸-Cysを完全に変換した後、粗製の反応混合物をRP-HPLC(移動相A=10mM酢酸アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:13ml/分にて35分間で0%Bから30%B)により精製し、葉酸-NIRを85%の収率で得た。LC-MS(A=10mM炭酸水素アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:12分で0%Bから30%B) RT=3.30分(M+H+=1179.0).
【0115】
葉酸-DBCO-NIR色素コンジュゲートの合成:
DMSO中の葉酸-NIR色素(0.0050g、0.0027mmol、1当量)およびNHS-DBCO(0.0016g、0.0041mmol、1.5当量)の撹拌溶液に、DIPEA(0.0054g、0.0041mmol、1.5当量)を滴加した。室温で反応混合物の攪拌を続けた。反応の進行をLC-MSでモニターした。葉酸-NIR色素を完全に変換した後、粗製の反応混合物をRP-HPLC(移動相A=10mM酢酸アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:13ml/分にて35分間で0%Bから50%B)により精製し、葉酸-DBCO-NIRを86%の収率で得た。LC-MS(A=10mM炭酸水素アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:12分で0%Bから50%B) RT=4.75分(M/2+H+=1043.0).
【0116】
葉酸-SS-DBCO-NIRコンジュゲートの合成:
DMSO中の葉酸-NIR色素(0.0050g、0.0027mmol、1当量)およびNHS-SS-DBCO(0.0023g、0.0041mmol、1.5当量)の撹拌溶液に、DIPEA(0.0054g、0.0041mmol、1.5当量)を滴加した。室温で反応混合物の攪拌を続けた。反応の進行をLC-MSでモニターした。葉酸-NIR色素を完全に変換した後、粗製の反応混合物をR-HPLC(移動相A=10mM酢酸アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:13ml/分にて35分間で0%Bから50%B)により精製し、葉酸-SS-DBCO-NIRを84%の収率で得た。LC-MS(A=10mM炭酸水素アンモニウム、pH=7;有機相B=アセトニトリル;方法:12分で0%Bから50%B) RT=4.991分(M/2+H+=1125.0).
【0117】
葉酸-miRNAs(FolamiRs)の調製
miR-34a-5pガイド鎖およびmiR-34a-3pパッセンジャー鎖(いずれもIntegrated DNA Technologiesによって調製)として示される2つのRNAオリゴヌクレオチドを使用してmiRNA二本鎖を構築した。miR-34a-3pパッセンジャー鎖は、5’末端にアジドリンカーおよび3’末端に2’-O-メチルRNA塩基で修飾された20nt RNAオリゴ二重鎖(mCmArAmCrCmArGmCrUmArAmGrAmCrAmCrUmGrCC)を含んでなり、miR-34a-5pガイド鎖は、3’上に2’-O-メチルRNA塩基で最小限の修飾を有する22ntのRNAオリゴを含んでなる(rUmGmUrUrGrGrUrCrGrArUrUrCrUrGrUrGrArCrGrGrU/5Phos)。同じ修飾を用いて合成したスクランブルmiRNA(ネガティブコントロール)を用いて対照の二本鎖を形成した。葉酸-DBCO-ニゲリシンまたは葉酸-SS-DBCO-ニゲリシンコンジュゲートとアジド修飾アンチセンスmiR-34a(またはスクランブル)との間でビ-オルトゴナル(bi-orthogonal)なクリック反応を行った。クリック反応は、水中で室温にて8時間、モル比1:10(アジドオリゴ:葉酸DBCOまたは葉酸-SS-DBCO)で行った後、4℃にて4時間冷却した。コンジュゲートしていない葉酸は、Oligo Clean and Concentrator(Zymo Research)を製造業者の説明書に従って使用して反応物から除去した。コンジュゲーションは、15%TAEネイティブPAGEおよびMALDIスペクトル分析を用いて確認した。葉酸-NIR化合物のコンジュゲーションについては、さらにLicor Odyssey CLX(Licor)を用いて確認した。コンジュゲート後、miR-34a-5pガイド鎖を葉酸とNIR-葉酸コンジュゲートにアニーリングした。簡潔には、アニーリング緩衝液:50mMのNaCl(Sigma)、および1mMのEDTA(Sigma)を添加した10mMトリス緩衝液pH7(Sigma)中で、葉酸-miR-34a-3pとmiR-34a-5pとを等モル比(1:1、最終濃度各5μM)で混合し、95℃で5分間インキュベートし、1時間かけて室温まで冷却した後、-80℃で保存した。
【0118】
血清中の安定性アッセイ
二本鎖RNAオリゴヌクレオチドおよびFolamiRコンジュゲートを、37℃の水中の50%ウシ胎児血清(Sigma)中で、表示した時間インキュベートした。RNA試料を回収し、15%TAEポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を用いて分析した。
【表1】
【表2】
【0119】
方法実施例
細胞系
細胞内のFolamiR-34aコンジュゲート活性をモニターするために、miR-34a Renillaセンサー(MB-231センサー)を発現するMDA-MB-231細胞を作製した。最初に、miRNAセンサーの特異性を、MDA-MB-231乳癌細胞中で、miR-34a模倣体またはネガティブコントロール(スクランブルRNA)とともにmiR-34aセンサーまたは変異センサーを一過性に発現させることによってモニターした。その目的のために、1×10
4の細胞を96ウェルのプレートに播種し、Lipofectamine 2000(Life Technologies)を用いて、25ngのプラスミドおよび6nMのmiRNA模倣体で同時トランスフェクトした。Renilla Gloルシフェラーゼキット(Promega)を用いて、トランスフェクションの48時間後にRenilla活性を測定した。結果は、miR-34aがMB-231細胞において内因的に活性であること、および外因的なmiR-34aの送達がRenillaセンサーのさらなるサイレンシングを促進することを示唆する。これらの結果は、miR-34aセンサーがmiR-34aに特異的であり、MB-231細胞中の内因的レベルのmiR-34aがmiR-34aセンサーを完全に沈黙させるのに十分ではなく外因性のmiR-34aでのノックダウンを増大させる余地があることを示唆している。安定なクローンを作製し、Renilla活性について試験した。15種の安定なクローンのうち、高いRenillaレベルとmiR-34a活性をモニターするその能力から、クローン5をさらなる実験のために選択した。(
図1)
【0120】
In vitro Renilla ルシフェラーゼ活性
MDA-MB-231トリプルネガティブ乳癌細胞(HTB-26、MycoAlert Mycoplasma検出Kit-Lonzaによるマイコプラズマ混入試験によりマイコプラズマ不含を確認済)を、10%胎児ウシ血清(Sigma)、100U/ml-1のペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン(Hyclone、GE Healthcare Life Sciences)を添加したRPMI 1640培地(葉酸不含、Life Technologies)で培養し、5%CO2中37℃に維持した。ルシフェラーゼレポーター実験用に、ベクター(psiCHECK、Promega)中のRenillaルシフェラーゼの3’非翻訳領域に、miR-34aに対するアンチセンス配列を挿入することにより、miR-34aセンサープラスミドを作製した。miR-34a特異的サイレンシングは、MDA-MB-231細胞においてmiR-34aセンサーまたは変異miR-34aセンサーを一過性でトランスフェクトすることによって確認した。miR-34aセンサー発現細胞を、Lipofectamine RNAimax(Life Technologies)を使用してmiR-34a模倣体でトランスフェクトし、外因的なmiRNAによって媒介されるサイレンシングを確認した。安定なクローンを作製するために、MDA-MB-231細胞を6ウェルのプレートに1×106細胞/ウェルの密度で播種し、Lipofectamine 2000(Life Technologies)を用いて2μgのmiR-34aセンサープラスミドをトランスフェクトした。選択マーカーとしてハイグロマイシンB(500μg/mL;Hyclone、GE Healthcare Life Sciences)を用いて安定なクローンを選択した。単一のクローンをRenilla発現について評価し、最も高いRenilla発現を有するクローンを選択した。MB-231センサー細胞を、葉酸および血清不含RPMI培地中、葉酸-DBCO-miR-34a、葉酸-ニゲリシン-DBCO-miR-34a、葉酸-ニゲリシン-SS-DBCO-miR-34aおよびFolamiR-NC(陰性対照)を含む(最終濃度50nM)96ウェルのプレートに播種した。対照として、非処理および非コンジュゲート二本鎖miRNAを含めた。Renilla Glo ルシフェラーゼキット(Promega)を製造業者の指示に従って使用し、インキュベーション後12~48時間の間のRenillaルシフェラーゼ値を得た。各時点について、Renillaレベルを FolamiR-NCに対して正規化した。実験は、各条件につき3連で3回行った。
【0121】
miR-34a-Renilla ルシフェラーゼ遺伝子ノックダウン活性
葉酸-ニゲリシン-DBCO-miR-34aまたは葉酸-ニゲリシン-SS-DBCO-miR-34aで(トランスフェクション試薬非存在下で)処理したMB-231センサー細胞は、処理後48時間で最大80%のRenilla活性の低下を示す(
図1)。しかしながら、ニゲリシンを欠く葉酸-DBCO-miR-34aは、48時間までに30%の遺伝子ノックダウン活性しか示さず、このことは、ニゲリシンがエンドソームからのmiR-34aの放出を助けることを裏付ける。データに基づけば、意外にも、放出可能および放出不能の両方の葉酸-ニゲリシン-miR-34aが細胞に効率的に入り、活性を保持しており、このことはコンジュゲートされた葉酸がmiR-34a-5pのアルゴノート(Argonaute)へのローディングを妨げないことを示唆する。
【0122】
siRNA遺伝子ノックダウンアッセイ
siRNA標的化アッセイとして、MDA-MB-231細胞を1×106細胞/ウェルの密度で6ウェルのプレートに播種し、Lipofectamine 2000(Life Technologies)を用い、2μgのpmiRGloプラスミド(Promega)でトランスフェクトした。24時間後、葉酸および血清不含RPMI培地中、Fol-DBCO-siLuc2、Fol-ニゲリシン-DBCO-siLuc2、Fol-DBCO-NC(ネガティブコントロール)、Fol-ニゲリシン-DBCO-NCを含む(最終濃度50nM)96穴プレートに細胞を再播種した。対照として、非処理および非コンジュゲート二本鎖miRNAを含めた。各時点について、Renillaおよびホタルルシフェラーゼの値を、デュアルルシフェラーゼレポーターキット(Promega)を製造元の指示に従って使用して得た。Firefly/Renillaの比率は、各時点について、Fol-DBCO-NCまたはFol-ナイリシン-DBCO-NCに対して正規化した。実験は、各条件につき3連で3回行った。二元配置分散分析(ANOVA)およびボンフェローニ事後検定を用いて統計的有意性を検定した。
【0123】
siRNA遺伝子ノックダウンアッセイの結果と考察
MDA-MB-231細胞を、葉酸とコンジュゲートしたルシフェラーゼ(siLuc2)(Fol-DBCO-siLuc)またはニゲリシンの分子を有する修飾された葉酸リガンドとコンジュゲートしたルシフェラーゼ(siLuc2)(Fol-ニゲリシン-DBCO-siLuc)についてsiRNAとともにインキュベートすることにより、ルシフェラーゼ標的化アッセイを行った。これら細胞ベースの実験は、Fol-ニゲリシン-DBCO-siLucで処理した細胞において、処理後18時間で急速なルシフェラーゼ活性の低下を示し、24時間後で40%に達することを示した(
図2)。しかし、Fol-DBCO-siLucでは、32時間でもルシフェラーゼ活性の低下はみられない。興味深いことに、このルシフェラーゼ活性の低下は、Fol-NC(ネガティブコントロール)処理した細胞またはFol-siLuc処理した細胞では観察されず、ニゲリシンの存在に特異的であることを示唆している。
Fol-siLuc2とそのニゲリシン対応物との間でのルシフェラーゼ低下における違いは、エンドソームから細胞質への葉酸-siLuc2コンジュゲートの脱出におけるニゲリシンの促進を実証している。
【0124】
エンドソーム脱出アッセイ:生細胞共焦点実験
生細胞イメージング
生細胞イメージングのため、細胞をガラス底の2穴チャンバースライド(Lab-TekTM Chambered Coverglass、Thermo Fisher Scientific、デンマーク)上にプレーティングした。簡潔に言えば、チャンバースライドをポリ-D-リジン(0.1mg/mL;Sigma-Aldrich)で5分間前処理し、PBSで洗浄し、5分間風乾させた。Rab5B-GFPを安定に発現するMDA-MB-231細胞を実験の1日前に3×104細胞/ウェルでプレーティングし、10%ウシ胎児血清(Sigma)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(Hyclone, GE Healthcare Life Sciences)を添加した葉酸不含RPMI 1640培地(Life Technologies)中、5%CO2、37℃で維持した。実験当日、培地を10mMの4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES、Sigma-Aldrich)を添加した培地と交換し、スライドを、共鳴スキャナーと、東海ヒットライブイメージングチャンバー(INU-TIZ-F1;東海ヒット社、日本)を取り付けたピエゾZドライブ(ニコンインスツルメンツ社)とを備えたNikon A1Rsi共焦点顕微鏡(温度は37℃に設定)にセットした。画像取得は単一焦点面で行ない、NIS-elements software 4.5(Nikon Instruments Inc.、日本)を使用し、葉酸-Cy5コンジュゲート(50nM)を添加後に開始した。ImageJ 2.0.0(NIH)を用いて画像をさらに分析した。
【0125】
生細胞イメージング
最初のエンドソーム脱出実験は、50nMの葉酸-cy5色素コンジュゲートまたは葉酸-ニゲリシン-Cy5色素コンジュゲートを用いて、Rab5B-GFPを安定的に発現するMDA-MB-231細胞において行った。1時間ごとに24時間まで観察を行った。3時間での細胞の代表的な画像を
図3および4に示す。葉酸-cy5コンジュゲートの結果の有意な違いが、内在化から3時間以内にみられ、このとき葉酸-ニゲリシン-cy5色素コンジュゲートで処理した細胞において顕著に大きいエンドソームが観察された。3時間後、葉酸-ニゲリシン-cy5で処理したエンドソームは、葉酸-cy5色素コンジュゲートよりも大きくなり、凝集しプルームを形成し始めた。3時間後、膨潤したエンドソームはより大きな構造に凝集したが、葉酸-cy5色素3のみで処理されたものは実験の過程を通して比較的変化しなかった。
図3は、葉酸-Cy5で処理したMDA-MB-231細胞が、処理後3時間で主に細胞膜およびエンドソームから点状にCy5蛍光シグナルを生じたことを示す。しかしながら、葉酸-ニゲリシン-Cy5処理細胞では、大きなエンドソームの形成と細胞質中のCy5の蛍光シグナルのぼやけた分散がみられた(
図4)。
【0126】
実験計画:
アプリオリパワー解析を用いて、統計学的有意性0.05、α<0.5、および検出力80%に必要なサンプルサイズを推定した。パワー計算に基づいて、各処置群に含めるべき推奨動物数を6匹とした。次に、小規模のパイロット試験から予想されるエフェクトサイズを決定した。3匹の動物をFolamiR-34aで処置した後に観察されたRenillaレポーター活性が強力で有意な減少であったため(
図7A、B)、残り3匹の動物は処置しなかった。この場合、0.5の検出力によって、α<0.5で3匹の動物を使用して有意性が正確に予測される。他の試験はすべて、最初に計算した6匹の動物を使用した。
【0127】
フローサイトメトリー
上記のとおり培養したFR陽性ヒトMDA-MB-231細胞およびFR陰性ヒトA549細胞をトリプシン処理により剥がし、氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS;pH7.4)中で2回洗浄し、無血清培地中1×107細胞/密度で再懸濁した。細胞生存率をトリパンブルー排除法により測定し、細胞の生存率が>80%である場合のみ細胞を使用した。次に、標準プロトコルに従ってフローサイトメトリー分析を行った。簡潔に言えば、1×106細胞をPE抗FOLR1抗体(カタログ番号908303、Biolegend)または対照としてマッチアイソタイプ抗体(カタログ番号400213、Biolegend)と共にインキュベートし、LSR Fortessaフローサイトメーター(BD Biosciences, San Jose, CA, USA)を用いてフローサイトメトリー分析により解析した。データは、FlowJoソフトウェアv10(Tree Star、Inc、OR、USA)を用いて解析した。FRの機能性は、第一に、MDA-MB-231およびA549細胞をFolamiR-34a-NIR(50nM)と共にインキュベートした後、上記のようにフローサイトメトリー分析によって確認し、第二に、最終濃度50nMに葉酸-フルオレセインイソチオシアネート(FITC)とインキュベートした細胞の顕微鏡分析によって確認した。1.25倍の対物レンズとOlympus DP80カメラを取り付けたOlympus IX73顕微鏡およびCellSens 1.11を使用して細胞を種々の時点で評価した。
【0128】
インビトロFolamiRデリバリー
MDA-MB-231トリプルネガティブ乳がん細胞(HTB-26)およびA549非小細胞肺がん細胞(CCL-185)(いずれも、MycoAlert Mycoplasma検出Kit-Lonzaによるマイコプラズマ混入試験によりマイコプラズマ不含を確認済)を、5%CO
2、37℃にて、10%ウシ胎児血清(Sigma)、100UmL
-1ペニシリンおよび100μgmL
-1ストレプトマイシン(Hyclone、GE Healthcare Life Sciences)を添加したRPMI 1640培地(葉酸不含(Life Technologies))中で培養し、維持した。
MDA-MB-231およびA549細胞を500ngのmiR-34a Renillaセンサーでトランスフェクトし、FolamiRと共にインキュベートした。処置の96時間後にRenillaシグナルを測定した。各時点について、データ点をFolamiR-NC(ネガティブコントロールロール:スクランブルmiRNA)に対して正規化した。エラーバーは平均±s.d.を表す。各実験は、各処理につき、少なくとも4回の技術的反復、n=3とし、統計分析は事後ボンフェローニ検定を用いたone-way ANOVAにて行った(
**、P<0.01)。
ルシフェラーゼレポーター実験用に、ベクター(psiCHECK, Promega)中のRenillaルシフェラーゼの3’非翻訳領域にmiR-34aに対するアンチセンス配列を挿入することによってmiR-34aセンサープラスミドを作製した。miR-34a特異的サイレンシングは、miR-34aセンサーまたは変異miR-34aセンサーを一過性でトランスフェクトすることによってMDA-MB-231細胞において確認した。Lipofectamine RNAimax(Life Technologies)を使用してmiR-34aセンサー発現細胞をmiR-34a模倣体でトランスフェクトし、外因的なmiRNAによって媒介されるサイレンシングを確認した。安定なクローンを作製するため、MDA-MB-231細胞を1×10
6細胞/ウェルの密度で6ウェルのプレートに播種し、Lipofectamine 2000(Life Technologies)を使用して2μgのmiR-34aセンサープラスミドでトランスフェクトした。選択マーカーとしてハイグロマイシンB(500μg/mL;Hyclone、GE Healthcare Life Sciences)を用いて安定なクローンを選択した。単一のクローンをRenilla発現について評価し、Renilla発現が最も高いクローンを選択した。
MB-231センサー細胞を、葉酸および無血清RPMI培地中、FolamiR-34a、Fol-SS-34aおよびFolamiR-NC(ネガティブコントロール)を最終濃度50nMで含む96ウェルのプレートに播種した。対照として非処理および非コンジュゲート二本鎖miRNAを含めた。Renilla Glossiferaseキット(Promega)を製造業者の指示に従って使用し、インキュベーションから24時間、48時間、72時間、96時間および120時間後のRenillaルシフェラーゼ値を得た。Renillaレベルを、各時点について、FolamiR-NCに対して正規化した。実験は、各条件につき3連で3回行った。
MDA-MB-231乳癌細胞は、原形質膜上に検出可能なレベルのFRを発現することが報告されており、この細胞株はFolamiR活性を評価するための妥当なモデルである。FRの発現を確認するため、MDA-MB-231細胞とA549細胞(FRネガティブコントロール)を比較するフローサイトメトリー分析を行った。MDA-MB-231細胞は、検出可能なレベルのFRαを発現することが確認された(
図5c)。
これらの結果は、フローサイトメトリーを用いてNIR-FolamiR-34aの細胞内取り込みを分析すること(
図5d)および蛍光顕微鏡を用いて葉酸フルオレセインイソチオシアネート(Fol-FITC)コンジュゲート取り込みを分析することによって裏付けられた(
図5E)。いずれの葉酸コンジュゲートも、FR陽性細胞株MDA-MB-231に取り込まれたが、FR陰性A549細胞株には取り込まれなかった。この観察結果は、miR-34a Renillaセンサーを一過性で発現するMDA-MB-231およびA549細胞株をFolamiRで処理した後、機能的に確認された。このセンサーは、1つのmiR-34a相補的結合部位が後に続くRenilla遺伝子であり、miR-34aによるRenillaの転写後調節のモニタリングを可能にする。両細胞株においてこのセンサーは、トランスフェクトされたmiR-34a模倣体に応答した(
図10);但し、このセンサーはFolamiR-34a曝露後のMDA-MB231細胞においてのみ下方制御され(
図5F)、FolamiR 標的化はFR発現細胞に依存することを示唆する。これらの結果をまとめると、MDA-MB-231はFR陽性細胞株であることを示唆しており、FR相互作用を介したFolamiRコンジュゲートの特異的取り込みについての予備的証拠となる。
FolamiR-34a活性をモニターするため、MDA-MB-231細胞を作製し、miR-34a Renilla ルシフェラーゼセンサー(MB-231センサー)またはmiR-34aに応答しないこのセンサーの変異体を安定的に発現させた。複数のクローンを作製し、最高レベルのRenillaを有するクローン(
図11)を用いてFolamiR-34a活性を評価した。FolamiR-34aまたはFolamiR-SS-34aをMB-231センサー細胞に添加した場合(トランスフェクション試薬の非存在下で)、曝露の72時間後にRenilla活性の低下がみられた(
図6a)。Renilla活性は、おそらく細胞内でのFolamiR-34aの複製誘導性の希釈またはFolamiR-34aの減少により、曝露後120時間で回復した。
MB-231センサー細胞の増殖は、1回のFolamiR-34a処理後に減少し(
図6B)、これはRenilla活性の減少と相関していた。意外にも、放出可能および放出不能のFolamiRはいずれも細胞に効率的に侵入し、データに基づく活性を保持しており、コンジュゲート化した葉酸がmiR-34a-5pのアルゴノートへのローディングを妨げないことを示唆している。
【0129】
FR依存性応答
Lipofectamine 2000(Life Technologies)を使用し、FR陽性ヒトMDA-MB-231細胞およびFR陰性ヒトA549細胞を、500ngのmiR-34aセンサープラスミドでトランスフェクトした。24時間後、細胞(4000個/ウェル)を、葉酸および血清不含RPMI培地中、FolamiR-34aおよび FolamiR-NC(ネガティブコントロール)を最終濃度50nMまたは100nMで含有する96ウェルのプレートに播種した。Lipofectamine RNAimax(Life Technologies)でトランスフェクトした細胞を、miR-34a模倣体に対するmiR-34a Renillaセンサー応答をモニターするための対照として使用した。対照として非処理および非コンジュゲート二本鎖miRNAを含めた。Renilla Glossiferaseキット(Promega)を製造業者の指示に従って使用し、インキュベーションの96時間後にRenillaルシフェラーゼ値を得た。FolamiR-34a処理細胞のRenillaレベルを、各時点についてFolamiR-NCに対して正規化し、非コンジュゲート二本鎖miRNA処理細胞を未処理に対して正規化した。実験は、各条件につき3連で3回行った。Renilla活性の用量依存的減少が、FolamiR-34aで処理した細胞においてのみ観察された(
図6c)。
【0130】
in vitro FR結合競合アッセイ
in vitro FR結合競合アッセイは、Van Der Heijden, J. W. et al.(“Folate receptor β as a potential delivery route for novel folate antagonists to macrophages in the synovial tissue of rheumatoid arthritis patients,” Arthritis Rheum. 60, 12-21 (2009)) および Gent, Y. Y. et al.(“Evaluation of the novel folate receptor ligand [18F]fluoro-PEG-folate formacrophage targeting in a rat model of arthritis,” Arthritis Res. Ther. 15, R37 (2013))に記載のとおり行った。簡潔に言えば、FR陽性ヒトMDA-MB-231細胞およびFR陰性ヒトA549細胞を前述のように培養し、トリプシン処理によって剥がし、氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS;pH7.4)で2回洗浄し、血清不含培地中1×10
7細胞/mLの密度に再懸濁した)。次に、この細胞懸濁液100μLを、(1~100倍モル過剰の葉酸グルコサミンコンジュゲートの存在下または非存在下で)FolamiR-34a-NIRと共に終濃度50nMまでインキュベートした。細胞を4℃で20分間インキュベートし、氷冷PBSで2回洗浄し、LSR Fortessaフローサイトメーター(BD Biosciences、San Jose、CA、USA)を用いるフローサイトメトリー分析によりFolamiR-34a-NIR結合の置換について分析した。FlowJoソフトウェアv10(Tree Star、Inc、Ashland、Ore)を用いてデータを解析した。
機能的競合は、1~100倍モル過剰の葉酸グルコサミンコンジュゲートの存在下で、FolamiR-34aまたはFolamiR-NCと共に終濃度50nMでインキュベートしたMDA-MB-231センサー細胞を用いて検証した。対照として非処理および非コンジュゲート二本鎖miRNAを含めた。Renillaルシフェラーゼ値は、Renilla Glossiferaseキット(Promega)を製造業者の指示に従って使用し、インキュベーションの96時間後に得た。FolamiR-34a処理細胞のRenillaレベルを、各時点についてFolamiR-NCに対して正規化し、非コンジュゲート二本鎖miRNA処理細胞を未処理に対して正規化した。実験は、各条件につき3連で3回行った。葉酸グルコサミンコンジュゲート(葉酸-グルコサミン)の量が増えると、細胞特異的なNIR-FolamiR-34aシグナルは用量依存的に減少し、葉酸-グルコサミンがNIR-FolamiR-34aと競合することが示された(
図6D)。さらに重要なことに、葉酸-グルコサミン処理は、用量依存的に、miR-34a Renillaセンサーに対するNIR-FolamiR-34aのサイレンシング効果を無効にした(
図6E)。これらの結果は、FolamiRがFRを過剰発現している細胞に機能的miRNAを送達することができ、その送達がFR発現に依存することを裏付けている。
図6D、Eは、漸増濃度の葉酸グルコサミンコンジュゲートの存在下での、FolamiR-34a(50nM、96時間)に対するmiR-34a Renillaセンサー応答を示す。各実験条件について、データポイントをFolamiR-NC(ネガティブコントロールロール:スクランブルmiRNA)に対して正規化した。実験は、各処理につき少なくとも4回反復しておこない(n=3)、統計分析は事後ボンフェローニ検定を用いてone-way ANOVAで行った(
* P<0.05)。
【0131】
細胞増殖アッセイ
スルホローダミンB(SRB、Sigma)アッセイを、96ウェルプレートにおける細胞増殖の代理として使用した。簡潔に言えば、FolamiR処理後、細胞を完全培地中10%トリクロロ酢酸で固定し、1%酢酸中0.4%(wt/vol)のSRBで1時間染色した。未結合の色素を1%酢酸で4回洗浄することにより除去した。最後に、タンパク質が結合した色素を10mmの非緩衝トリス塩基で抽出し、GloMax Multi+分光光度計(Promega)を用いて510nmの吸光度を測定した。吸光度(細胞量に代わるもの)を、各時点について、FolamiR-NCの存在下で培養した細胞の吸光度に対して正規化した。
【0132】
側腹部腫瘍の確立
単回投与試験のために、200μLのMatrigel(Corning)に懸濁した5×106のMDA-MB-231センサー細胞の皮下注射により、雌性Nu/Nu(NU-Foxn1nu;Charles River)コンジェニックマウス(6週齢、n=5)に皮下腫瘍を誘導した。長期的な研究のために、親のMDA-MB-231細胞を使用した。観察により、げっ歯類は、天然に存在する形態の葉酸である、5-メチル-テトラヒドロ葉酸の高い血漿および組織レベル(ヒトよりも約10倍高い)を示すため、マウスは、腫瘍移植の2週間前と一連の実験期間中、葉酸欠乏食餌(Envigo、TD 95247)で飼育した。葉酸欠乏食餌は、葉酸レベルをヒトで見られる生理的レベルにまで下げることを示した。腫瘍の成長を測定するため、ノギスを用いて個々の腫瘍を測定し、腫瘍体積を次の式によって計算した:腫瘍体積(mm3)=幅×(長さ2)×2-1。処置の時点までに腫瘍が150cm3の体積に達していない場合は動物を除外した。単回投与実験のために、発光および蛍光シグナルの取得後(0日目)、動物に5nmolのFolamiRを静脈内(i.v.)注射した。複数回投与実験では、動物の平均腫瘍サイズの差を最小にすることによって動物を実験群に無作為化した。
腫瘍体積が約200mm3に達したら、指定されたモル濃度のFolamiRを動物に3日ごとに静脈内注射で投与した。すべての実験プロトコルは、Purdue Animal Care and Use Committeeによって承認されており、動物の使用に関するNIHガイドラインに準拠していた。
【0133】
生物発光および赤外線イメージング
IVIS Lumina II(Caliper)またはSpectral AMI(Spectral Instruments)を用いてin vivoで腫瘍の生物発光をモニターするため、RediJect Coelenterazine h生物発光基質(PerkinElmer)を製造元のプロトコルに従って投与した。基質の注入後の複数の時点(20分を開始時とした)で発光値を取得し、最大平均放射輝度値のみを報告した。745nm励起でIVIS Lumina II(Caliper)およびICG発光フィルターを使用して赤外線イメージングを実施した。腫瘍のルミネセンスおよび蛍光の非侵襲的な長期的モニタリングは、以下の時点で動物全体の画像化によって実施した:0時間、24時間時間、48時間および72時間(実験群あたりn=3動物)。全体的な臓器画像は、Licor Odyssey CLX(Licor)の800 nmチャンネルを用いて取得した。
【0134】
血清サイトカイン
マウス特異的サイトカインMulti-Analyte ELISAアレイキット(Qiagen)を製造元の指示に従って用い、複数回投与実験で得た血清試料(最後の注射の24時間後)を用いてIL-6および腫瘍壊死因子(TNFα)濃度を試験した。簡潔に記載すると、血清サンプルを氷上で解凍し、分析前に4℃で10分間1000×gで遠心分離することにより沈殿物を取り除いた。全てのサンプルまたは標準品をアッセイ緩衝液と共に96ウェルプレートに添加した。プレートを穏やかに振盪し、室温で2時間インキュベートした。
上清を除去し、ウェルを洗浄した。検出抗体を添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートをすすぎ、アビジン-HRP溶液と共に室温で30分間インキュベートした。ウェルを洗浄し、GloMaxプレートリーダー(Promega)を用いてデータを取得するため現像液を加えた。450nmおよび570nmで吸光度を測定した。570nmの値を450nmの値から差し引いた。サイトカイン標準曲線を用いて、血清試料中のサイトカイン濃度(pg/ml)を計算した。検出限界は以下の通りであった:IL-6 58.8 pg/mL、およびTNFα 30.5 pg/mL。LPS処置したNu/Nuマウス(NU-Foxn1nu;Charles River)を陽性対照として使用した。マウスに500ng/kgのリポ多糖(LPS、L6529、Sigma)を腹腔内注射し、注射の2時間後に血清を採取した。
【0135】
最大耐量(MTD)試験
Balb/cマウス(8週齢)に33.3nmol、10nmolまたは1nmolのFolamiR-34aを1回静脈内注射した。動物を投与後2週間観察した。マウスの体重の変化および臨床的所見(急速な体重減少、下痢、ボサボサの毛、丸まった姿勢、倦怠、苦しい呼吸、神経学的徴候など)について観察した。マウスには自由に食餌および水を与えた。実験の最後に剖検を行った。さらなる分析のために、全血、血清、および臓器組織を採集した。
【0136】
乳癌の異種移植モデルにおけるin vivoでのFolamiRの活性
各NIR-Folタグ付きmiRNA(NIR-FolamiR)の1回用量(5nmol)を、触診可能なMB-231センサー細胞異種移植片を有する動物に尾静脈注射により投与した。蛍光分布およびルシフェラーゼ活性を、腫瘍細胞標的化の特異性についてモニターするため、ならびに取り込みと細胞内標的の抑制の代理としてそれぞれ測定した。
注射の24時間後、NIR-FolamiRは主に腫瘍組織に保持され、重要なことに、肝臓(
図7C、Lv)を含む生物の他の部分からは除去された(
図7A、左-NIR)。しかしながら、放出不能なNIR-FolamiR-34aのみがin vivoでRenillaノックダウンを誘導した(
図7A、右ルシフェラーゼ、
図7Bで定量)。重要なことに、1回の注射のみの後、RenillaレベルはNIR-FolamiR-34a処理後に約50%減少し、これは培養細胞中で観察されたセンサー活性の減少よりもさらに大きかった(
図6A、C、E)。NIR-FolamiR-34aで処置した腫瘍には、全RNA 1ナノグラムあたり約3.5×10
6コピーのmiR-34aが存在した(
図7D)。
対照的に、NIR-FolamiR-SS-34aで処置したマウスから採取した腫瘍中のmiR-34aのコピー数は、ネガティブコントロールロールの動物と同様であり、放出可能な葉酸コンジュゲートが循環血において分解するまたは早くに減少し得ることを示唆する。この可能性を検討するため、FolamiRコンジュゲートを50%血清に暴露した。FolamiR-SS-34aは血清の存在下で非常に不安定であり、一方FolamiR-34aは6時間以上無傷のままであった。
FolamiR-34aは、非コンジュゲート型miR-34aよりも安定しているようであり、葉酸が血清ヌクレアーゼからmiRNAを保護することを示唆している。FolamiRがin vivoでFRに特異的に結合するかどうかを決定するため、100倍モル過剰の葉酸-グルコサミンの存在下または非存在下で、5nmolのNIR-FolamiR-34aを、右側の肩にFR陽性ヒトMDA-MB-231センサー細胞を移植し、左側の肩にFR陰性ヒトA549細胞を移植したヌードマウスに静脈内注射した。結果は、FR陽性MDA-MB-231腫瘍がFolamiRコンジュゲートを蓄積する一方、FR陰性A549腫瘍では蓄積せず(
図7E、F)、このFR依存性蓄積は過剰の葉酸-グルコサミンによって阻止することができる(
図7E、F)ことを示す。
次に、FolamiR-34aの有効性を評価するため複数回投与試験を実施した。MB-231異種移植動物を、用量を減らしたFolamiR-NCまたはFolamiR-34a(0.1nmol、0.5nmolおよび1nmol)で3日毎に合計7回投与して処置した。20日間の投与期間中に対照の葉酸-コンジュゲートを投与した動物の腫瘍は約3.5倍に成長したが、FolamiR-34aで処置した動物の腫瘍サイズの成長は緩やか(約1.5倍)であった(
図7Gおよび
図12)。0.1ナノモル程度の低い用量でも、腫瘍成長の抑制は有意であった。切除した腫瘍組織中のmiR-34aのコピー数は、対照を投与したマウスから切除した腫瘍よりも約1.5倍高かった(
図13A)。重要なことに、FolamiR-34aで処置した動物では、臓器全体の毒性の兆候も血清サイトカインIL-6またはTNF-αの上昇も認められなかった(
図14A)。これらの結果は、正常免疫能(immunocompetent)マウスにおいて実施された最大耐量(MTD)試験によって裏付けられ、FolamiR-34aを投与したマウスは、試験した最大用量33.3nmolまで毒性の病理学的徴候も有意の体重変化も認められず(
図14B)、MTD>33.3nmolを示した。
【0137】
Kras;p53マウスにおける腫瘍形成の誘導
KrasLSL-G12D/+における腫瘍形成の誘導;Trp53flx/fl(FVB.129バックグラウンド)二重突然変異体マウス(6~10週齢)を用いて、DuPage, et al. (DuPage M, Dooley AL, Jacks T. Conditional mouse lung cancer models using adenoviral or lentiviral delivery of Cre recombinase. Nat. Protoc. 2009; 4: 064-1072)の方法に基づいて行った。簡潔に言えば、肺特異的導入遺伝子活性化を、Creリコンビナーゼをコードするアデノウイルス粒子(106PFU)の気管内送達により行った。実験前の8週間、腫瘍を予備形成させた。
【0138】
磁気共鳴画像法(MRI)を用いた腫瘍進行モニタリング
誘導および非誘導動物のMRIスキャン(正常組織のスキャン)は、パーデューMRI施設にて、7.0 Tesla Bruker Biospec 70/30 USRスキャナー(Billerica, MA)および40mmマウスボリュームコイルを用いて得た。動物をO2中2.5%v/vのイソフルランを用いて5分間麻酔した後、温めた動物用ベッドに移し、麻酔を2%に設定した。呼吸数は圧力センサーでモニターした。以下のパラメータを用いて、低解像度マルチプレーンスカウトスキャンを行った:TR=4s、TE=1.5ms、FOV=30×30mm2、スライス厚=1mm、データマトリックス=256×256、7スライス/面(軸方向、冠状および矢状)、マウスあたりのスキャンのおおよその時間=1分。スカウトスキャンを用いてマウスの背骨を整列させ、以下のパラメータを用いて肺の高解像度画像を収集した:TR=4s、TE=1.5ms、FOV=30×30mm2、スライス厚=0.5mm、データマトリックス=256×256、30スライス/面(軸方向および冠状)、マウス当たりのおおよそのスキャン時間=5分。
腫瘍量の定量は、Krupnick et al (“Quantitative monitoring of mouse lung tumors by magnetic resonance imaging, ” Nat. Protoc., 2012, 7, 128-142)に記載されている手動セグメンテーションプロトコルに従って行った。MRIによる腫瘍量のこの分析は、腫瘍組織(明るい)と正常な肺組織(暗い)との間のMR画像強度の大きな差を利用するもので、平均肺画像強度を腫瘍量の代理として用いるものである。簡潔に言えば、肺のMR画像をImageJ 2.0.0を用いて手動でセグメント化し、同じ動物内の肝臓のそれに対して正規化された平均の肺画像の強度を計算する。動物内の腫瘍の進行を決定するために、平均肺画像強度を±s.d.の初日に対して正規化する。さらに、ITK-Snap and Paraview 5.2ソフトウェア(Kitware、NY、USA)を用いた三次元再構成法を用いて、動物あたりの腫瘍と全体の肺の体積を計算した。示された時間での腫瘍/肺全体の比を求め、腫瘍によって占められている肺の体積の割合(%)を示した。
【0139】
Kras;p53マウスにおける葉酸取り込み試験
葉酸取り込み試験のために、5nmolのOTL38(On Target Laboratories, LLC, West Lafayette, INにより提供、現在臨床試験中の(臨床試験ID:NCT02769533)蛍光近赤外(NIR)色素に結合した葉酸からなる蛍光イメージングコンジュゲート)を、健常マウスおよび腫瘍保有マウスに尾静脈からシステマティックに送達した(n=3;導入遺伝子活性化の8週間後)。注射から24時間後に、動物を殺して生理食塩水で灌流した。Licor Odyssey CLX(Licor)の800 nmチャンネルを使用して臓器全体の画像を取得した。肺を10%緩衝ホルマリン中で固定し、標準的な手順に従ってパラフィン包埋した。切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、1.25倍の対物レンズとOlympus DP80カメラを取り付けたOlympus IX73顕微鏡およびCellSens 1.11を用いて評価した。腫瘍量をImageJ 2.0.0を用いて計算し、各動物について3つの独立した切片から得られた肺全体の面積に対する腫瘍面積で表した。染色していない切片をマウントし、Licor Odyssey CLX(Licor)の800 nmチャンネルで、20倍対物レンズ、ICGバンドパスフィルター(Ex:780-800;Ex:810-860;Semrock、 Brightline)、キセノン/水銀光源(Nikon、日本)、Photometrics QuantEM EMCCDカメラ、およびNIS-Elements(Nikon、日本)を取り付けたNikon TiS顕微鏡を用いて評価した。
このモデルはFR発現についてまだ検証されていないため、まず、このモデルの肺腺癌を葉酸受容体発現、ならびに腫瘍に特異的な葉酸コンジュゲートの取り込みおよび保持について評価した。近赤外蛍光(NIR)色素とコンジュゲートさせた葉酸受容体-α(FRα)を標的とするリガンドである、蛍光イメージングリガンドOTL38を、肺腫瘍を有するマウスまたは健常なマウスに静脈内投与した。
臓器全体のレベル(
図8A)および組織学的レベル(
図8B)で観察されるように、葉酸コンジュゲートは、肺腫瘍において優先的に保持され、正常な健康な組織からは排出された。より高倍率の画像は、近赤外のシグナルが、健康な組織と悪性の組織との間の細胞密度差によるものではないことを示している;OTL-38の受容体介在のエンドサイトーシスに起因して前に観察されたように、明確な点状シグナル伝達がOTL38投与後に腫瘍で観察される(
図8Bの挿入図を参照)。肺腺癌におけるOTL38保持がFRとのその相互作用によって媒介されるかを確かめるため、in vivo遮断アッセイを実施した。肺腫瘍を有するマウスにおいて、100倍モル過剰の葉酸-グルコサミンの存在下または非存在下で、OTL38(5 nmol)を静脈内注射した。肺腫瘍におけるOTL38の優先的保持は、過剰の葉酸-グルコサミンによって減少し(
図8C、D)、これは腫瘍におけるOTL-38の蓄積がFRに依存することを示唆している。これらのデータによって、KrasLSL-G12D/+;Trp53flx/flx腫瘍がOTL-38を特異的に取り込み保持することが確認され、これはFolamiR-34aが同様に腫瘍組織中に蓄積することを示唆している。
【0140】
Kras;p53マウスにおけるFolamiR処置
FolamiR-34aによる複数回投与実験のため、腫瘍を有する動物(8週齢)を、それらのMRI測定腫瘍量の差を最小にすることによって実験群に無作為化した。動物に1nmolのFolamiRを3日ごとに静脈内注入(合計10回の注入)して処置し、上記のように7.0 Tesla Bruker Biospec 70/30 USR スキャナー(Billerica, MA)を用いて腫瘍の進行を1週間毎に4週間にわたってモニターした。最後の注射から24時間後に、動物を屠殺して生理食塩水で灌流した。肺を摘出し、10%緩衝ホルマリン中に固定し、標準的な手順に従ってパラフィン包埋した。切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、前述のように評価した。マウスは、腫瘍の誘導から6週目から始めて一連の実験期間中は葉酸欠乏食餌(Envigo、TD 95247)で飼育した。すべての実験プロトコルは、Purdue Animal Care and Use Committeeによって承認されており、動物の使用に関するNIHガイドラインに準拠していた。
【0141】
FRのin vivoブロッキング
雌性Nu/Nu(NU-Foxn1nu;Charles River)コンジェニックマウス(6週齢、n=3)に、200μLのMatrigel(Corning)に懸濁した、5×106FR陽性ヒトMDA-MB-231センサー細胞(右側)およびFR陰性ヒトA549細胞(左側)を注射し、皮下腫瘍を誘導した。腫瘍を形成させ、同様の大きさのA549およびMDA-MB-231腫瘍を有するマウスを実験に含めた。Kras;p53マウスモデルについては、導入遺伝子活性化から8週間腫瘍を形成させた(n=3)。腫瘍形成はMRIを用いてモニターした。5nmol(≧100倍モル過剰)の葉酸グルコサミンコンジュゲートの存在下または非存在下、異種移植モデルについては5nmolのFolamiR-34a-NIRを、Kras;p53マウスモデルについては5nmolのOTL38を、尾静脈を介し同時投与することにより競合試験を行った(n=3)。葉酸グルコサミンコンジュゲートは、葉酸と比較して低pHでの溶解度が高いため、腎臓での析出を防ぐために使用した。in vivoでの動物全体の画像化およびex vivoでの組織分布実験を上記のように実施した。
【0142】
RNAの単離および定量的PCR(qPCR)を用いたmiRNA発現解析
Nu/Nuマウス(NU-Foxn1nu;Charles River)由来のMDA-MB-231由来腫瘍およびKrasLSL-G12D/+;Trp53flx/flxマウス由来の肺腫瘍をRNA Later(Life Technologies)に回収し、-80℃で保存した。腫瘍組織(50mg)を、700μLのQIAzol溶解試薬(Qiagen)と1.4mmのセラミックビーズが入った2mLのコレクションチューブに入れた。サンプルをビーズミル(Fisher Scientific)を用いて4m s-1にて3分間粉砕した。RNeasy Mini Kit(Qiagen)を製造業者の指示に従って用い全RNAを抽出した。次に、1μgのトータルRNAを用い、miScript II RT Kit(Qiagen)とmiScript HiFlex Bufferを用いてcDNAを作製した。miR-34a標準の生成のため、miR-34a模倣体(Life Technologies)をcDNA合成に使用した。qRT-PCRは、miRNAプライマーアッセイ(Qiagen)を用いて実施した。以下のサイクリング工程の下で、miScript SYBR Green PCR Kit(Qiagen)を使用するQuantStudio 6 Flex リアルタイムPCRマシン(Life Technologies)を用いて反応を行った:95℃で15分;95℃で15秒間、55℃で30秒間、70℃で30秒間を40サイクル;1.6℃/秒で95℃から60℃の融解曲線。各生物学的複製について技術的反復(少なくとも3回)を実施した。1×108コピーから1×103コピーをカバーする標準曲線を用いてmiR-34aコピー数を決定した。
【0143】
統計
二群間解析のため、両側スチューデントのt検定を用いて群間差を調べた。Prism統計パッケージ(バージョン7、GraphPad Software)を用いた多群間比較のために、事後ボンフェローニ検定によるtwo-wayまたはone-way分散分析(ANOVA)を用いた。図の説明で示したように、エラーバーは、平均±s.d.または平均±s.e.m.のいずれかで表す。統計的に有意なP値は、図および/または凡例において、
***、P<0.005;
**、P<0.01;
*、P<0.05として示す。
KrasLSL-G12D/+;Trp53flx/flx腫瘍がFolamiR-34aに応答性であるかどうかを調べるために、腫瘍を有する動物に3日ごとに1ナノモルのFolamiR-34aを合計10回投与した。実験期間中、腫瘍の成長をMRIによりモニターし、MRIデータから作成して得られた体積の測定値は、対照の葉酸-コンジュゲートを投与した動物と比較してFolamiR-34aが腫瘍の成長を減少させることを示している(
図9A、B、C)。腫瘍のサイズは、FolamiR-34aを投与した動物では統計的に変化がなかったが、FolamiR-NCで処置したマウスの腫瘍サイズは投与初日と比較して1.5倍に増大した。試験の終了時に組織学的レベルで同様の応答が観察された(
図9D、E)。腫瘍量の定量は統計的有意性を示しており、FolamiR-34aで処置マウスから採取した肺において、FolamiR-NCで処置マウスと比較して、腫瘍体積の1.8倍の減少を示した。
MD-MBA-231異種移植片において観察されたmiR-34aコピー数の増加と同様に、切除された肺腫瘍組織におけるmiR-34aのコピー数は、対照を投与されたマウスから抽出された腫瘍における値より約3倍高かった(
図13B)。miR-34aが、miR-34a標的の内在性標的遺伝子の転写レベルを抑制するよう作用していることを検証するために、BCL-2、METおよびMYCを定量した。BCL-2とMYCはいずれも、FolamiR-34aを投与したマウスから採取した腫瘍では統計的に下方制御されており、内在性標的遺伝子に対するmiR-34a活性が確認された(
図9G)。
【配列表】