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特許7116729大量の補強用無機充填剤の分散が良好なゴム組成物
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  • 特許-大量の補強用無機充填剤の分散が良好なゴム組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】大量の補強用無機充填剤の分散が良好なゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20220803BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20220803BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220803BHJP
   C08L 83/10 20060101ALI20220803BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220803BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20220803BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L15/00
C08K3/013
C08L83/10
C08K3/36
C08K9/02
B60C1/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019534324
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 FR2017053763
(87)【国際公開番号】W WO2018115761
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-18
(31)【優先権主張番号】1663212
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100215670
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 直毅
(72)【発明者】
【氏名】ドロネ セヴラン
(72)【発明者】
【氏名】プティジャン ローラン
(72)【発明者】
【氏名】クーティー マルク
(72)【発明者】
【氏名】パヴァジョー コランタン
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-287018(JP,A)
【文献】特開2006-008749(JP,A)
【文献】特開平07-292159(JP,A)
【文献】特開平10-176080(JP,A)
【文献】特開平09-165471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08C 19/00-19/44
C08G 77/00-77/62
C08G 81/00-85/00
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記成分をベースとするゴム組成物であって
-下記のエラストマーを含むエラストマーマトリックス:
i.100 000g/mol以上の数平均分子量Mnを有する第1のジエンエラストマー;
ii.鎖の末端に、シリカの表面と反応することのできる官能基を担持する第2の官能化ジエンエラストマーであって、20 000g/mol~80 000g/molの数平均分子量Mnを有する、前記官能化ジエンエラストマー;
-55phr~200phrの範囲の量の補強用無機充填剤
前記エラストマーマトリックス中の前記第1のジエンエラストマーの質量分率が50質量%以下である、上記ゴム組成物
【請求項2】
前記補強用無機充填剤量が、前記ゴム組成物の体積に対して20体積%~40体積%の範囲である、請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記エラストマーマトリックス中の前記第2の官能化ジエンエラストマーの質量分率が50質量%以上である、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記第1のジエンエラストマーが、100 000g/mol~600 000g/molの数平均分子量Mnを有する、請求項1~のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記第2の官能化ジエンエラストマーにおいて、シリカの表面と反応することのできる官能基がSiOR官能基(Rは水素原子または炭化水素ベースの基を表す)であるか、またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックである、請求項1~のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項6】
シラノール末端を有する前記ポリシロキサンブロックが下記式に相当する、請求項記載のゴム組成物:
[-(SiR1R2O)x-H]
(式中、
R1およびR2は、同一でも異なってもよく、1~10個の炭素原子を有する、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルカリル基またはビニル基を表し;
xは、1~1500の範囲の整数である)。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項記載のゴム組成物を含む完成品または半完成品。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項記載のゴム組成物を含むタイヤまたは半製品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特にタイヤ材料の製造に使用することができ、鎖の末端でシリカの表面と反応することのできる官能基、特にSiOR官能基(Rは水素原子または炭化水素ベースの基を表す)、またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックで官能化された低分子量ジエンエラストマーと、高分子量ジエンエラストマーのブレンドを含む、多量の補強用無機充填剤の良好な分散を可能にするゴム組成物に関する。
【0002】
タイヤトレッドへ充填剤によって与えられる最適な補強特性およびヒステリシス特性を得るために、ひいては高い耐摩耗性および低い転がり抵抗を得るためには、一般にこの充填剤がエラストマーマトリックス中に共に可能な限り微細に分割されかつ可能な限り均等に分布される最終形態で存在することが望ましいことが知られている。しかしながら、そのような状態は、一方ではエラストマーとの混合の間にマトリックス中に混入されかつ解凝集し、他方ではこのマトリックス中に均等に分散する非常に良好な能力を有する限りにおいてのみ達成することができる。
燃料節約および環境保護の必要性が優先事項となっているので、それらの耐摩耗性を犠牲にすることなく転がり抵抗が減少したタイヤを製造することが必要であった。
このことは、特に、これらのタイヤのトレッドにおいて、補強する観点から従来のタイヤ級カーボンブラックと競合することのできる無機充填剤、特に高度に分散性のタイプの特定のシリカで少なくとも部分的に補強された新規なゴム組成物の使用によって、これらの組成物にそれらを含むタイヤのより低い転がり抵抗と同義であるより低いヒステリシス、および濡れた地面、雪に覆われた地面、または凍結した地面上の改善されたグリップも与えつつ、可能になった。しかしながら、相互親和性の理由から、これらの無機充填剤粒子はエラストマーマトリックス中で互いに凝集するという厄介な傾向を有する。これらの相互作用は、充填剤の分散、したがって補強特性を、混合操作中に生じさせることのできる全ての結合(無機充填剤/エラストマー結合)が実際に得られた場合に達成することが理論的に可能であるレベルよりも実質的に低いレベルに制限するという有害な結果をもたらす。
【0003】
そのような目的を達成するために、カップリング剤もしくは星型分枝剤もしくは官能化剤によって重合の終わりにジエンポリマーおよびコポリマーの性質を変えることからなる多くの解決法が提案されてきた。これらの解決法の大部分は、本質的に、変性ポリマーとカーボンブラックとの間の良好な相互作用を得るために変性されたポリマーと補強用充填剤としてのカーボンブラックの使用に集中していた。この先行技術の例示的な例として、鎖の末端のリビングジエンポリマーと多官能性有機カップリング剤との反応が改善された特性を有するポリマーを得ることを記載している特許US-B-3 135 716号、およびジエンポリマー用のカップリング剤または星型分枝剤としてテトラアルコキシシランを記載している特許第US-B-3 244 664号を挙げることができる。
補強用無機充填剤を含有する混合物に関しては、シラノール基で官能化されたジエンコポリマーを使用することが提案されている。
鎖の末端のシラノール基で官能化されたジエンポリマーの使用を記載している特許FR 2 951 178 B1号およびEP 778 311 B1号を挙げることができる。特許FR 2 951 178 B1号には、官能性ポリマーがスズベースの化合物を使用して星型分枝ポリマーと組合せていると記載されている。さらに最近になって、特許出願WO 2009/077837 A1号は、鎖の一端のシラノール基で官能化され、鎖のもう一端のアミノ基で官能化されたエラストマーを記載し、あるいは出願WO 2016/001372号は、星型分枝ジエンエラストマーと組合せた、官能化前の多分散指数が1.6以下の、鎖の一端のシラノール基で官能化されたエラストマーを記載している。
しかしながら、大量のシリカにもかかわらずシリカの分散を改善しかつ剛性を減少させることが依然として求められている。
【0004】
本発明は、少なくとも下記成分をベースとするゴム組成物に関する:
-下記のエラストマーを含むエラストマーマトリックス:
i.100 000g/mol以上の数平均分子量Mnを有する第1のジエンエラストマー;
ii.鎖の末端でシリカの表面と反応することのできる官能基を担持する第2の官能化ジエンエラストマーであって、80 000g/mol以下の数平均分子量Mnを有する、上記官能化ジエンエラストマー;
-55phr~200phrの範囲の量の補強用無機充填剤。
さらに、上記補強用無機充填剤量は、上記ゴム組成物の体積に対して、有利には20体積%~40体積%の範囲である。
上記第2の官能化ジエンエラストマーの割合は、上記第1のジエンエラストマーと上記第2の官能化ジエンエラストマーの合計質量に対して、有利には50質量%~95質量%の範囲である。特に、上記エラストマーマトリックス中の上記第1のジエンエラストマーの質量分率は、50質量%以下であり、より詳しくは5質量%~50質量%の範囲である。特に、上記エラストマーマトリックス中の上記第2の官能化ジエンエラストマーの質量分率は、50質量%以上であり、より詳しくは50質量%~95質量%の範囲である。
【0005】
有利には、上記第1のジエンエラストマーは、100 000g/mol~600 000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有する。上記第1のジエンエラストマーは、有利にはポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーのブレンド、特にブタジエン/スチレンコポリマーからなる群から選択される。
有利には、上記第2の官能化ジエンエラストマーは、20 000g/mol~80 000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有する。上記第2の官能化ジエンエラストマーは、有利には、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーのブレンド、特にブタジエン/スチレンコポリマーからなる群から選択される。
上記第2の官能化ジエンエラストマーにおいて、シリカの表面と反応することのできる官能基は、有利にはSiOR官能基(Rは水素原子または炭化水素ベースの基を表す)、またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックである。
【0006】
シラノール末端を有する上記ポリシロキサンブロックは、有利には下記式に相当する:
[-(SiR1R2O)x-H]
(式中、
R1およびR2は、同一でも異なってもよく、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルカリル基またはビニル基を表し、特にR1およびR2は、同一でも異なってもよく、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル基を表し;
xは、1~1500の範囲の整数である)。
上記ゴム組成物において、上記補強用無機充填剤含有量は、有利には55phr~170phrの範囲である。さらに、上記補強用無機充填剤量は、上記ゴム組成物の体積に対して、より有利には20体積%~30体積%の範囲である。
上記補強用無機充填剤は、有利にはシリカまたはシリカで被覆されたカーボンブラック、好ましくはシリカである。
上記補強用無機充填剤は、有利には上記補強用充填剤の全体を構成する。
上記シリカは、有利には、30m2/gと400m2/gの間、有利には40m2/gと300m2/gの間、有利には60m2/gと250mm2/gの間のBET比表面積を有するシリカである。
【0007】
本発明に従う上記組成物は下記を可能にする:
-大きなモル質量の官能性ジエンエラストマーのみを含む組成物よりもシリカをより細かく分散させること、およびシリカを使用したブレンドを補強することの通常の妥協を克服すること、
-上記組成物中に大量のシリカを混入すること、
-大きなモル質量の官能性ジエンエラストマーのみを含む組成物と比較して等しい充填剤含有量で材料の剛性を減少させること、
-大きなモル質量の官能性ジエンエラストマーのみを含む組成物と比較して破断点伸びを改善すること。
本発明は、また、本発明に従うゴム組成物を含む完成品または半完成品に関する。
本発明は、また、本発明に従うゴム組成物を含むタイヤトレッドに関する。
本発明は、また、本発明に従うゴム組成物を含むタイヤまたは半製品に関する。
【0008】
I-発明の詳細な説明
本明細書において、他に明示的に示されていない限り、示されている全ての百分率(%)は質量%である。
さらに、「aとbの間」という表現によって示される任意の範囲の値は、aよりも大きくbよりも小さい範囲の値を表し(すなわち、限界値aとbは除外する)、一方「aからbまで」という表現によって示される任意の範囲の値は、aからbまでの範囲の値を意味する(すなわち、厳密な限界値aおよびbを含む)。
「をベースとする」組成物という表現は、使用される様々な構成成分の混合物および/または反応生成物を含む組成物を意味すると理解すべきであり、これらのベース構成成分の一部は、組成物の製造の様々な段階の間、特にその架橋または加硫の間、互いに、少なくとも部分的には、反応することができるかまたは反応することを意図する。
明細書中で言及されかつゴム組成物またはポリマーの調製に関与する化合物は化石由来またはバイオ由来であり得る。後者の場合、それらは、部分的にまたは全体的に、バイオマスに由来するか、またはバイオマスに由来する再生可能な出発材料から得ることができる。特に、ポリマー、可塑剤、充填剤などが関係する。
【0009】
I-1.ジエンエラストマー:
「ジエンエラストマー」という用語は、知られている通り、ジエンモノマー(2つの共役または非共役の炭素-炭素二重結合を担持するモノマー)から少なくとも部分的に生じる(すなわちホモポリマーまたはコポリマー)エラストマー(1つ以上が理解される)を意味すると理解するべきである。より詳しくは、「ジエンエラストマー」という用語は、4~12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合によって得られる任意のホモポリマー、または1種以上の共役ジエンを互いにまたは8~20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物との共重合によって得られる任意のコポリマーを意味するものとする。コポリマーの場合、後者は20質量%~99質量%のジエン単位と1質量%~80質量%のビニル芳香族単位を含有する。
本発明に従う方法において使用することができる共役ジエンとして、下記のものが特に適切である:1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジ(C1~C5アルキル)-1,3-ブタジエン、例えば、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよび2,4-ヘキサジエンなど。
【0010】
ビニル芳香族化合物として、下記のものが特に適切である:スチレン、オルトメチルスチレン、メタメチルスチレン、パラメチルスチレン、市販の「ビニルトルエン」混合物、パラ(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼンおよびビニルナフタレンなど。
上記ジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(BR)、天然ゴム、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンコポリマー、特にブタジエンとビニル芳香族モノマーとのコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる高度不飽和ジエンエラストマーの群から選択される。そのようなコポリマーは、より詳しくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)およびイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)である。これらのポリマーの中で、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)が特に好ましい。
上記ジエンエラストマーは、使用される重合条件に依存する任意のミクロ構造を有し得る。上記エラストマーは、ブロックエラストマー、統計エラストマー、シーケンシャルエラストマー、ミクロシーケンシャルエラストマーなどであってもよく、分散液中または溶液中で調製され得る。
【0011】
本発明に従う組成物において、少なくとも2つのエラストマーが使用される。
上記第1のエラストマーは、100 000g/mol以上、有利には100 000g/mol~600 000g/molの範囲、より有利には140 000g/mol~500 000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有する。
多分散指数は、有利には4未満である。
上記第1のジエンエラストマーは、有利には、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーのブレンド、特にブタジエン/スチレンコポリマーからなる群から選択される。
第2のエラストマーは、80 000g/mol以下、有利には20 000g/mol~80 000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有する。
多分散指数は、有利には2未満である。
上記第1のエラストマーは、それらのマクロ構造またはそれらのミクロ構造によって互いに異なるエラストマーの混合物からなり得ることが理解される。
【0012】
上記第2のジエンエラストマーは、有利には、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーのブレンド、特にブタジエン/スチレンコポリマーからなる群から選択される。
この第2のジエンエラストマーは官能化され、鎖の末端に、シリカの表面と反応することのできる官能基、特にSiOR官能基(Rは水素原子または炭化水素ベースの基を表す)、またはシラノール末端を有するポリシロキサンブロックを担持している。
上記第2のジエンエラストマーは、直鎖ポリマー、星型分枝鎖ポリマー、または更には分枝鎖ポリマーであり得る。
本発明の好ましい1つの実施態様によれば、上記第2のジエンエラストマーは主に直鎖形態であり、すなわちそれが星型分枝鎖または分枝鎖を含む場合、これらはこのエラストマーにおいて少ない質量分率を表す。
特に好ましい1つの実施態様によれば、上記第2のジエンエラストマーは、式SiOH(この場合、Rは水素原子である)の「シラノール」官能基と呼ばれる少なくとも1つ官能基を有する。
そのような定義に対応するジエンエラストマーはよく知られており、例えばそれらは明細書EP-0 778 311 B1号、WO-2011/042507 A1号、WO-2006/050486 A1号、WO-2009/077837 A1号またはEP-0 877 047 B1号に記載されている。上記シラノール官能基SiOHは、特にジメチルシラノール基-Me2SiOHの形態で、ジエンエラストマー鎖の末端に位置する。
本発明の特定の1つの実施態様によれば、例えば特許EP-0 778 311 B1号に記載されているように、上記シラノール官能基をポリシロキサンに結合させることができる。
【0013】
シラノール末端を有する上記ポリシロキサンブロックは、有利には下記の一般式(I)に相当する:
(I) [-(SiR1R2O)x-H]
(式中、
R1およびR2は、同一でも異なってもよく、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルカリル基またはビニル基を表し、
xは、1~1500の範囲の整数である)。
有利には、R1およびR2は、同一でも異なってもよく、1~10個の炭素原子を有するアルキル基を表す。好ましくは、R1およびR2は、それぞれメチル基を表す。
本発明の別の実施態様によれば、上記第2のジエンエラストマーは、式SiOR(式中、Rは、炭化水素ベースの基である)の少なくとも1つの官能基を担持する。
そのような定義に対応するジエンエラストマーは、よく知られており、例えば、それらは明細書JP-63-215701号、JP-62-227908号、US-5 409 969号またはWO-2006/050486号に記載されている。
【0014】
1つの実施態様において、シリカの表面と反応することのできる官能基を担持する官能化ジエンエラストマーは一官能性である。換言すれば、上記ジエンエラストマーは鎖の一端でのみ官能化されている。鎖のもう一方の端は官能基がなく、官能基を担持していない。
別の実施態様において、シリカの表面と反応することのできる少なくとも1つの官能基を担持する上記第2のジエンエラストマーは、上記SiOR官能基または上記ポリシロキサンブロックとは異なる少なくとも1つの他の官能基も担持する。この他の官能基は、一般に、重合開始剤によって与えられる。好ましい1つの実施態様によれば、上記第2のジエンエラストマーによって担持されるこの他の官能基はアミン官能基である。
より詳しくは、1つの実施態様によれば、上記アミン官能基は、上記SiOR官能基または上記ポリシロキサンブロックを担持しない鎖の末端に存在し得る。そのような配置は、例えば、アミン官能基を担持する開始剤の使用により、特にピロリジンのリチウムアミドまたはヘキサメチレンイミンのリチウムアミドのようなリチウムアミド、またはジメチルアミノプロピルリチウムおよび3-ピロリジノプロピルリチウムのようなアミン官能基を担持する有機リチウム化合物である開始剤の使用により生成することができる。そのような開始剤は、例えばEP-0 590 490 B1号およびEP-0 626 278 B1号に記載されている。SiOR官能基およびアミン官能基を異なる鎖の末端に担持するそのようなエラストマーは、例えば、特許EP-0 778 311 B1号、WO 2009/077837 A1号およびUS-5 508 333号に記載されている。
【0015】
上記第2のエラストマーは、末端官能基の化学的性質において、それらのミクロ構造において、あるいはそれらのマクロ構造において互いに区別されるエラストマーの混合物からなり得ることが理解される。
上記第2の官能化ジエンエラストマーの割合は、上記第1のジエンエラストマーと上記第2の官能化ジエンエラストマーの合計質量に対して、有利には50質量%~95質量%の範囲である。
特に、上記エラストマーマトリックス中の上記第1のジエンエラストマーの質量分率は、50質量%以下であり、より詳しくは、5質量%~50質量%、有利には30質量%以下、特に10質量%~30質量%の範囲である。
特に、上記エラストマーマトリックス中の上記第2の官能化ジエンエラストマーの質量分率は、50質量%以上であり、より詳しくは、50質量%~95質量%、有利には70質量%以上、特に70質量%~90質量%の範囲である。
有利には、上記エラストマーマトリックスは、50質量%を超える、好ましくは70質量%を超える上記第2の官能化ジエンエラストマーを含み、100%までの残りは上記第1のジエンエラストマーからなる。
【0016】
I-2.補強用充填剤
「無機充填剤」という用語は、ここでは、知られているように、カーボンブラックと対比して、「白色充填剤」、「透明充填剤」または「非黒色充填剤」とも呼ばれ、この無機充填剤は、それ自体で、タイヤ用トレッドの製造を意図したゴム組成物を中間カップリング剤以外の手段によることなく補強することができ、換言すれば、その補強役割において、トレッド用の従来のタイヤ級のカーボンブラックを置き換えることのできる、その色合およびその由来(天然または合成)の如何にかかわらない任意の無機あるいは鉱質充填剤を意味するものと理解すべきである。そのような充填剤は、一般に、その表面に官能基、特にヒドロキシル(-OH)の存在に特徴を有し、補強用充填剤として使用するために、上記ジエンエラストマーと上記充填剤との間で安定な化学結合を与えることを意図したカップリング剤あるいはカップリング系の使用が必要である。
従って、そのような無機充填剤は、それが含まれるゴム組成物の補強を可能にするためにカップリング剤と共に使用することができる。それは、また、カップリング剤に加えてもよい、被覆剤(上記充填剤と上記エラストマーマトリックスとの間に結合を与えない)と共に使用することもできる。
【0017】
上記無機充填剤が与えられる物理的状態は、粉末、微細真珠様物、顆粒、ビーズまたは他の適切な高密度化形のいずれの形状であっても重要ではない。勿論、無機充填剤は、種々の無機充填剤、特に下記に記載されるような高分散性シリカ質充填剤および/またはアルミナ質充填剤の混合物も意味すると理解される。シリカ質タイプ、特にシリカ(SiO2)、またはアルミナ質タイプ、特にアルミナ(Al2O3)の無機充填剤が無機充填剤として特に適切である。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意のシリカ、特に、共に450m2/g未満、好ましくは30~400m2/gのBET表面積とCTAB比表面積を有する任意の沈降シリカまたはヒュームドシリカであり得る。高分散性沈降シリカ(「HDS」)としては、例えば、EvonikからのUltrasil 7000とUltrasil 7005のシリカ類、RhodiaからのZeosil 1200MP、1165MP、1135MPおよび1115MPのシリカ類、PPGからのHi-Sil EZ150Gシリカ類、HuberからのZeopol 8715、8745および8755のシリカ類、または出願WO 03/16837号に記載されているような高比表面積を有するシリカ類が挙げられる。
本発明の組成物が低い転がり抵抗を有するタイヤトレッドを意図する場合、使用する無機充填剤は、特にそれがシリカである場合、好ましくは30m2/gと400m2/gの間、有利には40m2/gと300m2/gの間、有利には60m2/gと250m2/gの間のBET表面積を有する。
当業者は、この項に記載の補強用無機充填剤の等価充填剤として、別の種類の補強用充填剤、特に有機充填剤を使用することが可能であるが、この補強用充填剤はシリカのような無機層で被覆されているか、あるいはその表面に官能部位、特にヒドロキシル部位を含み、上記充填剤と上記エラストマーとの間の結合を形成するためにカップリング剤の使用を必要とすることを理解するであろう。一例として、特許明細書WO 96/37547号、WO 99/28380号を挙げることができる。
【0018】
上記補強用無機充填剤含有量は、55phr~200phr、有利には55phr~170phrの範囲である。さらに、上記補強用無機充填剤量は、上記ゴム組成物の体積に対して、有利には20体積%~40体積%、より有利には20体積%~30体積%の範囲である。
従って、本発明の上記組成物は、高含有量の補強用無機充填剤、特にシリカを有する組成物として説明することができる。
有利には、上記補強用無機充填剤は上記補強用充填剤の全体を構成する。
本発明の1つの変形によれば、カーボンブラックもまた存在し得る場合、それは20phr未満、より有利には10phr未満、例えば0.5phrと20phrの間、特に1phrと10phrの間の含有量で使用し得る。
上記補強用無機充填剤を上記ジエンエラストマーにカップリングするために、知られているように、上記無機充填剤(その粒子の表面)と上記ジエンエラストマー間の充分な化学的および/または物理的結合を与えることを意図した少なくとも二官能性カップリング剤(または結合剤)、特に二官能性オルガノシランまたはポリオルガノシロキサンを使用し得る。特に、少なくとも1つのチオール(-SH)官能基(メルカプトシランと呼ぶ)および/または少なくとも1つのブロックチオール官能基を担持する、「対称」または「非対称」シランと呼ばれる多硫化シランが使用される。勿論、特に出願WO 2006/125534号に記載されているように、上記のカップリング剤の混合物も使用し得る。
【0019】
しかしながら、上記第2の官能化ジエンエラストマーの存在のために、カップリング剤の使用は任意選択的なものにすぎない。
上記カップリング剤含有量は、有利には20phr未満であり、一般にできるだけ少量で使用することが望ましいことが理解される。典型的には、上記カップリング剤含有量は、上記シリカ量に対して0.5質量%~15質量%である。その含有量は、好ましくは0.5phrと15phrの間、より好ましくは3phrと12phrの間である。この含有量は、上記組成物中に使用するシリカ含有量に依存して当業者によって容易に調整される。
被覆剤として、知られているように、上記ゴムマトリックス中の上記無機充填剤の分散を改良しかつ上記組成物の粘度を下げることにより、生状態でその加工の容易さを改善することのできる加工助剤が一般に考慮されるであろう。これらの加工助剤は、例えば、アルキルアルコキシシラン(特にアルキルトリエトキシシラン)のような加水分解性シラン、ポリオール、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン(例えば、トリアルカノールアミン)、ヒドロキシル化POS、加水分解性POS、例えば、α,ω-ジヒドロキシポリオルガノシロキサン(特にα,ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサン)、または脂肪酸、例えば、ステアリン酸である。被覆剤として、グアニジン誘導体、特にジフェニルグアニジンも考慮されるであろう。
【0020】
I-3.各種添加剤
本発明に従うこれらのゴム組成物は、タイヤ、特にトレッドの製造を意図したエラストマー組成物に通常使用される標準の添加剤の全部または一部、例えば可塑剤または増量剤油(後者が芳香族タイプか非芳香族タイプにかかわらず)、可塑化用樹脂、顔料、抗オゾンワックスのような保護剤、化学オゾン劣化防止剤、抗疲労剤、補強樹脂、例えばWO 02/10269号に記載されているようなメチレン受容体(例えばフェノールノボラック樹脂)またはメチレン供与体(例えば、HMTまたはH3M)、イオウまたはイオウ供与体のいずれか、および/または過酸化物および/またはビスマレイミド、加硫促進剤をベースとする架橋系を含むこともできる。
【0021】
I-4.上記ゴム組成物の調製
本発明の上記ゴム組成物は、適切なミキサー内で、当業者に周知の2つの連続する調製段階を使用して製造される:130℃と200℃の間、好ましくは145℃と185℃の間の最高温度までの高温において熱機械的加工または混練する第1段階(「非生産」段階としばしば言われる)、その後の、典型的には120℃未満、例えば20℃と100℃の間の低めの温度に下げて機械的に加工する第2段階(「生産」段階としばしば言われる)、その仕上げ段階において上記架橋系または加硫系を混入する。
本発明の1つの実施態様によれば、本発明の組成物の全ての基本成分は、加硫系を除いて、上記第1「非生産」段階、すなわち、少なくともこれらの種々の基本構成成分を上記ミキサーに導入する間に、混練により密接に混入され、130℃と200℃の間、好ましくは145℃と185℃の間の最高温度に達するまで複数の工程で熱機械的に混練される。
一例として、上記第1(非生産)段階は、少なくとも3回の熱機械的工程において実施し、その間に、加硫系を除いて、全ての必須構成成分、任意選択の補助被覆剤または加工助剤および他の各種添加剤を通常の密閉ミキサーのような適切なミキサー内に導入する。この非生産段階における混練の全持続時間は、1分と15分の間が好ましい。
上記第1非生産段階においてこのようにして得られた混合物を冷却した後に、上記架橋系を低温で、一般に、オープンミルのような外部ミキサーに混入する;次いで全体を数分間、例えば2分と15分の間混合する(生産段階)。
【0022】
上記架橋系は、好ましくは加硫系、すなわちイオウ(またはイオウ供与剤)および一次加硫促進剤をベースとする系である。引き続き記載するように、上記第1非生産段階中および/または上記生産段階中に混入されるこのベース加硫系に、酸化亜鉛、ステアリン酸もしくは同等の化合物、またはグアニジン誘導体のような知られている種々の二次加硫促進剤または加硫活性剤を添加する。
上記イオウは、0.5phrと12phrの間、特に1phrと10phrの間の好ましい含有量で使用される。上記一次加硫促進剤は、0.5phrと10phrの間、より好ましくは0.5phrと5.0phrの間の好ましい含有量で使用される。
(一次または二次)促進剤として、イオウの存在下でのジエンエラストマーを加硫するための促進剤、特にチアゾール型促進剤およびそれらの誘導体、ならびにチウラム型およびジチオカルバミン酸亜鉛型の促進剤として作用することのできる任意の化合物を使用することが可能である。これらの促進剤は、例えば、2-メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(「MBTS」と略記)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(「TBZTD」)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(「CBS」)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(「DCBS」)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(「TBBS」)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアジルスルフェンイミド(「TBSI」)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(「ZBEC」)およびこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。
【0023】
このようにして得られた最終組成物は、次いで、特に実験室での特性評価のために、例えばシートまたは厚板の形態でカレンダー加工されるか、あるいは例えば、乗用車、大型車両などのタイヤトレッドとして使用することができるゴム形状要素の形態で押出される。
本発明は、また、本発明に従うゴム組成物を含む完成品または半完成品に関する。
本発明は、また、本発明に従うゴム組成物を含むタイヤトレッドに関する。
本発明は、また、本発明に従うゴム組成物を含むタイヤまたは半製品に関する。
【0024】
III.本発明の典型的な実施態様
使用した測定と試験
動的特性:
動的特性G'、G''およびtan(δ)は、規格ASTM D 5992-96に従い粘性分析装置(Metravib VA4000)で測定する。規格ASTM D 1349-99に従う標準温度条件(23℃)の下で、10Hzの周波数において、単純交互正弦波剪断応力に供される、加硫済み組成物のサンプル(厚さ4mmおよび断面積400mm2の円筒形試験標本)の応答を記録する。
歪み振幅掃引を0.1%から100%までのピーク間歪み(外向きサイクル)、次いで100%から0.1%までのピーク間歪み(戻りサイクル)で実施する。使用する結果は、動的剪断貯蔵弾性率(G')、損失弾性率(G'')および損失係数tan(δ)である。
【0025】
高歪み:
高歪み引張試験は、材料の弾性応力および破断時の特性を決定することを可能にする。特に明記しない限り、それらは1988年9月のフランス規格NF T 46-002に従って実施される。応力および伸びを決定するための引張測定は、標準の湿度測定条件(50±5%の相対湿度)下に23℃±2℃の温度で実施される。応力および伸びの測定から、10%伸び(「MA10」)、100%伸び(「MA100」)および300%伸び(「MA300」)の「公称」セカント係数(または見掛け応力、MPaで)が計算される。
【0026】
ポリマーの特性評価
a.エラストマーのモル質量
それはトリプル検出サイズ排除クロマトグラフィ(SEC3D)により決定される。
i)測定原理:
サイズ排除クロマトグラフィまたはSECは、多孔質ゲルを充填したカラムを通して溶液中の高分子をサイズに応じて分離することを可能にする。高分子はその流体力学的容積に応じて分離し、最大容積物は最初に溶出する。
3つの検出器(3D)、屈折計、粘度計および90°光散乱検出器と組合せて、SECはポリマーの絶対モル質量の分布を把握することを可能にする。種々の数平均(Mn)および質量平均(Mw)の絶対モル質量ならびに多分散指数(PI = Mw/Mn)も計算することができる。
ii)ポリマーの調製:
分析前にポリマーサンプルの特段の処理はない。上記サンプルを(テトラヒドロフラン+1体積%のジイソプロピルアミン+1%体積のトリエチルアミン)中に約1g/lの濃度に単純に溶解する。その後、その溶液を注入前に0.45μmの有孔度を有するフィルターで濾過する。
iii)3D-SEC分析:
使用する装置は「Waters Alliance」クロマトグラフである。溶出溶媒は(テトラヒドロフラン+1体積%のジイソプロピルアミン+1体積%のトリエチルアミン)であり、流量は0.5ml/分であり、システムの温度は35℃である。商品名2本の「Mixed A LS」および2本の「Mixed B LS」を有する4本のPolymer Laboratoriesカラムセットを直列で使用する。
ポリマーサンプルの溶液の注入量は100μlである。使用する検出系は「ViscotekからのTDA 302」であり、それは示差屈折計、示差粘度計および90°光散乱検出器からなっている。これら3つの検出器の場合、波長は670nmである。平均モル質量の計算のために、ポリマー溶液の屈折率増分dn/dC値を35℃および670nmで積分し、上記値は「テトラヒドロフラン+1体積%のジイソプロピルアミン+1体積%のトリエチルアミン」で前に定義されている。データ活用ソフトウェアは、「ViscotekからのOmnisecシステム」である。
【0027】
b.NMRによるエラストマーのミクロ構造
コポリマー中の異なるモノマー単位の含有量およびそれらのミクロ構造は、NMR分析によって決定する。スペクトルは、5mm BBI Z-grad「広帯域」プローブを備えたBRUKER 500MHz分光計で取得する。定量的な1H NMR実験は、単純な30°のパルスシーケンスおよび各取得間で5秒の繰り返し時間を使用する。サンプルをCDCl3に溶解させる。
種々の官能性エラストマーは、出願EP-0 778 311号に記載されている方法に従って合成する。
【0028】
本発明に従うポリマーI1:本発明に従う鎖の末端にあるシラノール官能性SBR、Mn = 35 000g/mol
表1
【0029】
本発明に従うポリマーI2:非官能化SBR、Mn = 241 600g/mol
表2
【0030】
ポリマーX1(比較例):本発明に従う鎖の末端にあるシラノール官能性SBR、Mn = 150 000g/mol
表3
【0031】
実施例1
下記の表1に報告されている組成物を比較する。組成物C1、C2およびC3は本発明に従うものである。組成物T1、T2およびT3は、本発明に従うものでない比較組成物である。それぞれ133phrおよび178phrのシリカ(すなわち35体積%および40体積%)を含む組成物T2およびT3は製造することができなかったことに注意すべきである:混合物は凝集性を持たず、それは密閉ミキサーの出口で使用できない粉末である。
配合物は、エラストマー100質量部当たりの質量百分率(phr)で表される。
【0032】
表4
(1)Solvay製の沈降シリカ160MP(Zeosil 1165MP)、タイプ「HDS」160m2/gで測定したBET比表面積を有する;
(2)DPG = ジフェニルグアニジン(Flexsys社からの「Perkacit」DPG);
(3)オクチルトリエトキシシラン(Degussa社からの「Octeo」シラン);
(4)N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(Flexsys社からの「Santocure CBS」)。
【0033】
組成物の各々は、第1工程において熱機械的作業によって、次に第2の仕上げ工程において機械的作業によって製造する。
組成物C1/T1の混合手順を詳細に説明する:
70%充填され110℃の初期温度を有する402cm3の容量を有する「Banbury」タイプの実験用密閉ミキサーへエラストマーマトリックスの3/5、シリカの1/2およびDPGの1/2を導入する。
エラストマーマトリックスはエラストマーX1またはエラストマーI1とI2のブレンドからなる。
熱機械的作業は「Banbury」タイプのブレードによって実施する。
1分後、エラストマーマトリックスの4/5、シリカの1/4およびDPGの1/4を導入する。ブレードの速度は2分で140℃に達するように上げる。
2分で、エラストマーマトリックスの最後の1/5、シリカの最後の1/4、およびDPGの最後の1/4を、なお熱機械的作業しつつ導入する。ブレードの速度は3分で150℃に達するように減速する。
3分で、乳棒を5秒間上げ、ブレードの速度を落としてプラトーを150℃に維持する。
4分で、被覆剤またはカップリング剤を導入し、ブレードの速度を5分で160℃に達するように上げる。
熱機械的作業を再び1分間実施し、ブレードの速度を調整して最高落下温度を約165℃に維持する。
組成物C2/T2については、エラストマーマトリックス、シリカおよびDPGを4回の添加で導入する。
組成物C3/T3については、エラストマーマトリックス、シリカおよびDPGを5回の添加で導入する。
このようにして得られた混合物(凝集性混合物が得られないT2またはT3組成物を除く)を回収し、次いで外部ミキサー(ホモフィニッシャー)内で冷却し、イオウを30℃で添加し、混ぜ合せた混合物を3~4分間再度混合する(第2の機械的作業工程)。
このようにして得られた組成物は、次に、それらの物理的性質または機械的性質を測定するためにゴム板(2~3mmの範囲の厚さを有する)あるいは薄いゴムシートの形態で、または、例えばタイヤ用の、特にトレッド用の半製品として、所望の寸法に切断および/または組み立てた後に直接使用され得る形状要素の形態でカレンダー加工される。
架橋は150℃で40分間実施する。
【0034】
歪みにおける混合物の性質
表5
【0035】
混合物C1は、混合物T1と比較して、剛性の減少(G'10%の戻り)が約10%であるが、損失(tan(δ)10%の戻り)はわずか7%しか増加しない。
組成物C2およびC3についても同様の結果が得られる。
【0036】
高歪み:
表6
* 3個の試験標本について計算した平均破断歪み。
【0037】
高歪み引張試験は、材料の弾性応力および破断時の特性を決定することを可能にする。これらの値は剛性を表す:係数の値が大きいほど、剛性が高くなる。
混合物C1は、混合物T1と比較して23℃で剛性が低く、約200%を超える破断点伸びを有する。
【0038】
実施例2:シリカの分散
実施例1に記載された組成を有する本発明に従う組成物の原料混合物C1を、1質量%の濃度で24時間撹拌することにより、エラストマーマトリックスの正しい溶媒、例えばトルエンまたはテトラヒドロフランに溶解させる。次に、この溶液を、一方の側をフォルムバールで他方の側を炭素で被覆した電子顕微鏡グリッド上に堆積させる。観察は、画像解析のために58kxで10枚の画像を撮った様々な倍率のBF TEMモードのCM200 TEMで実施する。
代表的な画像を図1に再現している。
【0039】
実施例3:官能性エラストマー含有量の効果
下記の表2に報告されている組成物を比較する。組成物C4、C5およびC6は本発明に従うものである。本発明に従う第1のエラストマーと第2のエラストマーとの間の質量比は変えた。組成物T4は、本発明に従うものでない比較組成物である。
配合物は、エラストマー100質量部当たりの質量パーセント(phr)で表される。
【0040】
表7
(1)Solvay製の沈降シリカ160MP(Zeosil 1165MP)、タイプ「HDS」160m2/gで測定したBET比表面積を有する;
(2)DPG = ジフェニルグアニジン(Flexsys社からの「Perkacit」DPG);
(3)オクチルトリエトキシシラン(Degussa社からの「Octeo」シラン);
(4)6-PPD:N-(1,3-ジメチルブチル)-N-フェニルパラフェニレンジアミン
(5)N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(Flexsys社からの「Santocure CBS」)。
【0041】
組成物の各々は、第1の工程において、熱機械的作業によって、次に第2の仕上げ工程において、機械的作業によって製造する。上記の組成物C1/T1と同じ混合手順が使用される。
【0042】
歪みにおける混合物の性質:
表8
【0043】
混合物C6は、混合物T4と比較して、剛性(G'10%戻り)の減少は約30%であるが、損失(Tan(δ)10%戻り)は増加しない。
組成物C4およびC5についても同様の結果が得られる。
【0044】
高歪み:
表9
【0045】
高歪み引張試験は、材料の弾性応力および破断時の特性を決定することを可能にする。これらの値は剛性を表す:係数の値が大きいほど、剛性が高くなる。
混合物C4、C5およびC6は、混合物T3と比較して、23℃で剛性(MA10およびMA100)が低く、破断点伸びはわずかに低い。
図1