(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】分配装置、特に、流下薄膜型蒸発器およびその使用のための分配装置
(51)【国際特許分類】
B01D 1/30 20060101AFI20220803BHJP
B01D 1/22 20060101ALI20220803BHJP
B01D 1/06 20060101ALI20220803BHJP
C07C 263/20 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
B01D1/30 Z
B01D1/22 A
B01D1/06
C07C263/20
(21)【出願番号】P 2019543775
(86)(22)【出願日】2018-02-12
(86)【国際出願番号】 EP2018053397
(87)【国際公開番号】W WO2018149776
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-12
(32)【優先日】2017-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン、ドルム
(72)【発明者】
【氏名】フリートヘルム、シュテッフェンス
(72)【発明者】
【氏名】ディーター、ホフマン
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4154642(US,A)
【文献】特表2006-510696(JP,A)
【文献】特開昭52-41945(JP,A)
【文献】特開2013-141658(JP,A)
【文献】特開昭56-60636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00-1/30,3/00-3/42
C07C 263/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体(10)を、各々が気体(11)および液体(12)を含有するn本の流体流れへ均一に分割するのに好適な装置(10000)であって、nは2以上の自然数であり、前記装置(10000)は、
・板(900)で底が仕切られている直立キャップ(100)と、
・前記キャップ(100)の境界側壁に配置された流体(10)用の流入口(200)であって、前記流入口(200)は、前記流体(10)の接線方向への流入が行われるように構成されている、流入口(200)と、
・前記キャップの内側に直立して配置された
内部部品(300)であって、
-前記
内部部品(300)は、前記キャップの内壁(100)と共に、液体(12)を流下させる環状ギャップ(400)を形成し、
-前記
内部部品(300)の上縁は、前記
内部部品(300)の上縁および前記キャップ(100)の上方境界が気体(11)の流路(510)を形成するように、前記流入口(200)の上方で終端し、かつ前記キャップ(100)の上方境界の下方で終端しており、
-前記
内部部品(300)は、気体(11)を流入させるための少なくとも1つの開口部(310)を頂部に有し、
-前記
内部部品(300)の下縁は、前記
内部部品(300)の下縁および前記板(900)が液体(12)の流路(520)を形成するように、前記板(900)の上方で終端しており、
-前記
内部部品(300)は、前記少なくとも1つの上側開口部(310)と水力学的に接続している少なくとも1つの開口部(320)を底部に有する、
内部部品(300)と、
・液体(12)および気体(11)から構成されるn本の流体流れのためのn個のガイド装置(800)であって、前記ガイド装置(800)は、前記開口部(320)を通じて前記
内部部品(300)へ突出し、かつ液体(12)用の入口開口部(810)と気体(11)用の入口開口部(820)とを有する、ガイド装置と、
を備え、
下降流気体(11)用のスワールブレーカ(600)が、前記
内部部品(300)の内側に配置されていることを特徴とする、装置(10000)。
【請求項2】
液体(12)用の貫通開口部(710)を有する液体(12)用のスワールブレーカ(700)は、前記流入口(200)下方の前記環状ギャップ(400)に配置されている、請求項1に記載の装置(10000)。
【請求項3】
前記n個のガイド装置(800)は、管状吐水口または管の構成物(1000)である、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
液体(12)用の前記入口開口部(810)は、
・接線方向のスリットであり、前記ガイド装置(800)の内側で製造された前記液体(12)の流れが、前記流入口(200)の配置によって前記環状ギャップ(400)で製造された前記液体(12)の流れと同じ方向になるよう配列されたスリットであり、または、
・軸方向のスリットである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
下降流気体(11)用の前記スワールブレーカ(600)は、スワールクロス、
構造化パッキング、編ワイヤメッシュ、穿孔板、および偏向板からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
流下薄膜型蒸発器(100000)であって、
・外側包囲シェル(2000)と、
・上方管板および下方管板に固定されたn本の管(1000)であって、nは2以上の自然数であり、前記管の内側において液膜が流れ落ちることができる、管(1000)と、
・液体と気体とを個別の前記管(1000)へ分配するための上方分配装置と、
・前記管(1000)および前記シェル(2000)の外側によって形成された管外部空間へ伝熱媒体(20)を供給する供給装置(3100)と、
・前記管外部空間から冷却された伝熱媒体(21)を放出するための放出装置(3200)と、
・蒸気(13)用の蒸気排出装置(4100)と、
・前記管の内側で気化していない残留液(14)用の液体排出装置(4200)と、
・残留液(14)および蒸気(13)を分離し収集するための装置(5000)と、
を備え、
液体と蒸気とを個別の前記管(1000)へ分配するための前記上方分配装置は、請求項1~
5のいずれか一項に記載の装置(10000)であり、前記装置(10000)の底(900)は、前記流下薄膜型蒸発器(100000)の上方管板を形成し、かつ、前記n個のガイド装置(800)がその上部末端で前記n本の管(1000)と接続されるかまたは前記n個のガイド装置(800)が前記n本の管(1000)の構成物である、ことを特徴とする流下薄膜型蒸発器(100000)。
【請求項7】
前記残留液(14)の一部を分配装置(10000)へ再循環させるための返送装置(6000)をさらに備え、この返送装置(6000)は、
・前記残留液(14)の循環部分を、前記分配装置(10000)へ流入する前に前記流体(10)と混合させるための混合装置(6100)を備えるか、または、
・前記流入口(200)とは異なる流入口(210)であって、前記キャップ(100)の境界側壁上に配置される流入口(210)へと開口している、請求項6に記載の流下薄膜型蒸発器。
【請求項8】
有機
ニトロ化合物、有機一級アミン、イソシアネート、ポリエーテルポリオール、およびポリカーボネートからなる群から選択される化学製品の製造および/または後処理における、請求項1~
5のいずれか一項に記載の分配装置(10000)の使用、請求項6または7に記載の流下薄膜型蒸発器(100000)の使用。
【請求項9】
前記流下薄膜型蒸発器(100000)は、前記イソシアネートを気化させるためのイソシアネートの前記後処理で使用される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記イソシアネートの前記気化は、イソシアネート製造による残留物含有
蒸留底流から前記イソシアネートを少なくとも部分的に取り除くため、かつ/または、ポリマーイソシアネート画分から気化しているモノマーイソシアネート画分を分離するために使用される、請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体(10)を、各々が気体(11)および液体(12)を含有する2つ以上の流体流れへと均一に分割するための分配装置(10000)と、流下薄膜型蒸発器(100000)とに関し、本発明の分配装置は、2つ以上の流体流れを蒸発器の加熱管へと分配し、本発明の分配装置(10000)、特に本発明の流下薄膜型蒸発器(100000)を使用して、化学製品の製造および/または後処理を行う。本発明の分配装置は、特に、流体(10)を分配装置内で気相(11)と液相(12)とに分離することによって形成される気相(11)用のスワールブレーカ(600)を特徴とする。
【背景技術】
【0002】
液体および気体、特に蒸気、画分を含有する流体用の分配装置、または気体または気相が自然蒸発により分配装置内で形成される場合の流体用の分配装置は、原則として当該技術分野において既知である。このような分配装置の重要な応用分野とは、流下薄膜型蒸発器における使用である。流下薄膜型蒸発器は工業的に広く使用されており、特に蒸留または蒸発による濃縮といった気体-液体液分離プロセスでは、流下薄膜型蒸発器で製造される材料の分離に必要な気相が用いられている。材料の純粋な分離とは別に、蒸発器はまた反応を行うのにも役立つ。したがって、例えば、中国特許出願公開第103980159A号は、アミノアルキルエステルの熱分解における薄膜型蒸発器の使用を開示している。
【0003】
流下薄膜型蒸発器では、加熱された蒸発管上を下方に流れる液膜から、比較的揮発性の成分が蒸発する。管壁の完全かつ永久的な濡れを確実にするためには、管上の液体の均一な分配が流下薄膜型蒸発器の正確な動作に不可欠である(Scholl, Rinner, 2006, Verdampfung und Kondensation in Fluidverfahrenstechnik, Goedecke (Ed.), Wileyを参照されたい)。流下薄膜型蒸発器の上方管板の上部のキャップに設置され、かつ特定の場合のために設計されている液体分配器により、均一な分配が保証される。沸騰または過冷却された液体の場合、分配器は、管内へ入るまでに液体の大部分を鎮静化し、蒸発器管間および蒸発器管上へ均一に分配すべきである。過熱された液体の場合、管板上の上方キャップ内でフラッシュ蒸発がさらに発生することで、液相だけでなく、過熱の度合いおよび蒸発器内の圧力に応じて高速となる気相もまた存在する。この場合、液体分配器は、気相が液体分配の有効性を損なわないように構成されなければならない。これは例えば、蒸発器管に入る途中で蒸気と液体とを分離することによって達成することができる。
【0004】
特に、蒸発管当たりの液量が少ない場合には、蒸発器底部から流出した残留液の一部を蒸発器頂部へ還流させるように、蒸発器を循環モードで運転させることができる。しかしながら、感熱性製品の場合、または液体中の反応(例えば、重合反応)が堆積物の形成につながる場合、もしくは粒子を最初から含有する液体を蒸発させる場合では、蒸発器中での滞留時間を維持し、したがって蒸発器管中で堆積物が形成される確率を低く保つことで、結果として管内に比較的少量の液体が生じるようにするには、一般的に循環を伴わない単一流路が望ましい。少量の液体の場合、蒸発比が高いほど、同量の液体を各管へ供給することが重要となる。管へ液体が均一に供給されていない場合、少量の液体しか供給されない管内では、過剰な濃度および個別の管を閉塞するまでのドライランといった問題が生じる一方、過剰な液体を供給される管内では、所望の最終濃度が達成されない。その上、上述したシステムにおいて液体を過剰に鎮静化する場合、液体分配器および管板の領域に堆積物が形成されることがあるため、最終的には同様の問題が生じる。
【0005】
非常に均一な分配を確保することとは別に、液体が管へ入った直後に内壁上に安定な膜を形成することもまた必要である。液体は、チューブを通って落下したり、または流れにおいて管を流れ落ちたりしてはならず、代わりに、利用可能な加熱表面全体を濡らす均一な膜が最初から形成されるべきである。
【0006】
沸騰または過冷却した液体の場合、液体分配器として様々な変形が使用される。最も一般的な変形例は穿孔ボックスまたは穿孔タンク分配器であり、液体は蒸発器管(例えば、米国特許第6,066,232号、独国実用新案第29520263U号から)間の複数の分配ステージ(例えば、1~3枚の穿孔板または鋸歯状堰でオーバーフローしているタンク)にわたって管板上へ分配される。更なる変形例では、液体は蒸発器管間の平滑な管板上のオーバーフロー管を通って分配器から流れ(米国特許第3,849,232号を参照されたい)、結果として、穴の閉塞および管板上での堆積を回避することができる。しかしながら、管板上における液位が実現されなければ、管上の良好な分配を仮定することはできない。さらに慣用的な変形例は、ノズルによる分配(例えば、中国実用新案第204159052U号、同第203342399U号を参照されたい)、さらに小さな管上の中央管からの分配(米国特許第4,094,734号)、および被覆金属板上での分配(独国特許第1126358B号、中国実用新案第203425542U号)を提供する。これらの変異体では、流れの鎮静によって部分的に均一な分配が補助されている。
【0007】
流入する過熱液体または流入する気体(もしくは蒸気)/液体混合物の自然蒸発の場合、最も単純なケースでは、衝突板として構成され、かつ相を分離させるフラッシュチャンバまたは蒸気/液体セパレータは、液体が好適な分配変種を介してさらに分配される前に記載されているが、堆積物(ファウリング(fouling)として知られる)を形成する傾向があるこれらのシステムの全てが適していない。独国特許第1126358B号は、蒸気/液体分離が上方衝突板で行われる2つの変形例について記載している。液体は、カバー板上を流れてタンク分配器に入り、この分配器は、管板上の滴下位置によって液体を分配し、かつ流れを鎮静化するためにタンク内で液位を生成する。蒸気は、タンク分配器において、外側を通過して、管板上を内側へ流れることで外側から管内に運ばれるか、または管板上の中部を流れて中央の管を介して運ばれるかのいずれかである。
【0008】
更なる別の変形例では、蒸気は蒸発管の中に突出する管の中へフラッシュチャンバから直接流れる。蒸気に混入していない液体は、蒸発管の間に滴下位置が配置された穿孔板上に集まる(スイス特許出願公開第385169A号)。
【0009】
独国特許出願公開第2103889A1号は、フラッシュ蒸発がフラッシュ空間(鋸歯状堰付きタンク)で起こる解決法について記載している。蒸気は、上方から中央管を通って蒸気収集空間へと流入し、続いて蒸発器管の中央に管板上で直接突出する管へと流入する。この液体は、蒸気収集空間の蓋上を鋸歯状堰を越えて流れ、外側から管板上に流れるが、管板上には液位が設けられていないため、良好な液体分配を得ることができない。
【0010】
独国実用新案第1992031U号は、供給ポットおよびその下に配置された2つの穿孔タンク分配器を有する分配器システムについて記載しており、これには高い液位および流れの鎮静が望まれる。蒸気が自然蒸発によって形成される場合、これは供給ポット内で上方に逃散し、下方タンク分配器とキャップ壁との間の外側ギャップを介して管板上に移動する。
【0011】
ドイツ民主共和国特許出願第279613A号では、気液混合物は、2相が分離可能な分離タンクへと運ばれる。分離タンクには、液体が管板上を流れることによる液体のオーバーフロー管があり、管端部は、液体表面下の管板の真上に位置している。蒸気は再び分離タンクの外側に沿って運ばれ、管の内側へと流れる。この変形例では、液浸によって、通過する気相による液滴の混入は回避される。
【0012】
独国特許出願公開第2604389号(米国特許第4,154,642号としても公開)では、蒸気と液体とを分離可能な外側環状ギャップ(4)に接線方向入口(図中3)が設けられている。蒸気は上方に上昇した、次いで錐体状に下方へ広がる内筒(6)を通って再び下方に流れて、そこから加熱管(2)へ直接流入する。加熱管(2)は、錐体状のトランジションピースと連結された円筒(米国版図面における6b)によって囲まれている。円筒(6)も錐体状のトランジションピースも、いかなる種類の内部をも有していない。液体は、外側環状ギャップ(4)内の下方、および装置の境界壁内側と、管板(11)を越えて突出する加熱管(2)により円筒(6b)内における高液位が実現される管板(11)上を流れる円筒(6b)とによって形成されたギャップ(7)を通って流れる(「Lb」、米国版の
図1Aで容易に見ることができる)。次いで、加熱管(2)への液体流入は、液体の均一な分配を確保するために、管(2)の開口部(8)を介して管板(11)の直上で行われる。独国特許出願公開第2604389号の分配器における液体分配に関しては問題ないものの、高い液位および液面下への流入のせいで、分配器は過度な鎮静のために堆積物を形成する傾向のあるシステムにはもはや適していない。気相用のスワールブレーカは、出願開示されていない。
【0013】
米国特許第4,199,537号は、シェルアンドチューブ装置(例えば、熱交換器)における管内側での液体の均一な分配を確保するという問題に関係している。この目的のために、内部釣鐘状カバー(5)と装置の境界壁(1)の内側とのギャップに開口部(6)を有するリングを介して、分配される液体を入口ポート(図面中7または7’)から導入する液体分配器について説明する。このギャップから、液体は管板(3)上を流れ、そこから供給または分配シェル(4)の穴を通って管(2)内へと流れる。好ましい直径が2~4mmである孔を介した流入の結果、比較的高い液位(27)が本発明においても生じる(
図4を参照されたい)。独国特許出願公開第2604389号に記載された分配器と同様に、この分配器もまた管板上に堆積物を形成する傾向があり、ファウリングの影響を受けやすいシステムの場合、小孔の閉塞を受ける。気相用のスワールブレーカは、いずれも本文書で開示されない。
【0014】
米国特許第4,199,537号または上で詳述した独国特許出願公開第2604389号(米国特許第4,154,642号としても公開)のいずれにおいても、加熱管(両文書における「2」)または分配器シェル(米国特許第4,199,537号における「4」)は、気相のスワールブレーカとはみなされない。気相の乱流、渦流、または回転速度は、個々の管(2)上に液体が分配された後でのみ低下する。
【0015】
独国特許出願公開公報第1769607号(英国特許第1209119号としても公開)は、流下膜を有する蒸発器内の管上に液体が均一に分配されることを保証する、管オーバーフローに関する。オーバーフローは管状延長部を有し、この管状延長部は、壁内の1つ以上の上向伸張スリット(14)および内向ローブ(16)を有するため、液体は管の内側で接線方向に誘導されて入る。独国特許出願公開公報第1769607号に記載されるオーバーフローは、本発明において後に詳述する「ガイド装置(800)」)(例えば、管状吐水口と対応する。管板上の液位の高差は、著しく不正確な分配を管上に生じることなく、管入口にスリットを有する管状吐水口で均一化することができる。同時に、蒸発器管内部の濡れ性を確保する。
【0016】
工業的には、液体の均一な分配について文献に記された解決策は、堆積物を形成する傾向のあるシステムでは実質的な欠点があることが分かっている。堆積物(ファウリングとも呼ばれる)の形成は、例えば、液体中の固体粒子が気化されること、過飽和液体の場合における過剰に長い滞留時間および結晶化(例えば、溶解塩)に起因した蒸発器中での重合およびクラッキング、ならびに時として藻類の形成(「生物付着」)といった、種々の原因に起因することがある。管板上および穿孔タンク内の高い液位では、過剰な流動鎮静化のために大量の堆積物が生じる。液体分配用の穿孔板の穴および管入口の穴が塞がれやすくなる。減圧による自然蒸発が発生すると、分配器と内側キャップ壁との間を通って蒸気が管内へと流入し、一般には下方へ滴下する液体が混入する。通過する蒸気による液滴のこの混入を避けるために、液体が、液体表面の真下にある主分配器から管(「下降管」として知られてる)を通じて管板上へ運ばれる場合、これらの管もまた、管板真上の管出口で封鎖される傾向がある(上記のドイツ民主共和国特許出願第279613A号を参照されたい)。濡れは同様に、管の中心への直接流入または平滑な管板の場合、最適であるとは考えられない。堆積物を避ける目的で管板上に液位が実現されていない場合も、良好な液体分配器を想定することは同様にできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、液体および気体(特に、蒸気)画分を含有する流体のための分配装置設計、または気相がフラッシュ蒸発によって分配装置内に形成場合のための分配装置設計には、更なる改良が必要である。特に、過剰な液位および流動鎮静化による堆積物の形成と、蒸気および液相における過度に高い速度によるか、ならびに/または液位の不足による不正確な分配との両方を回避することが望ましい。さらに、液滴の混入が生じず、かつ液体の流入が損なわれないように、蒸気と液体とを分離するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この必要性を考慮すると、本発明は、流体(10)を、各々が気体(11)および液体(12)を含有するn本の流体流れへ均一に分割するのに好適な分配装置(10000)を提供し、nは2以上の自然数、好ましくは2~1000、特に好ましくは2~200、極めて特に好ましくは4~100の自然数であって、装置(10000)は、
・板(900)で底が仕切られている回転対称、特に好ましくは丸形、特に円形の断面積を好ましくは有する、直立キャップ(100)と、
・キャップ(100)の境界側壁(lateral delimiting wall)に配置された流体(10)用の流入口(200)であって、流体(10)の接線方向への流入(tangential inflow)が行われるように構成された流入口(200)と、
・回転対称、特に好ましくは丸形、特に円形の断面積を好ましくは有する、キャップの内側に直立して配置された内部(internal)(300)であって、
-内部(300)は、キャップの内壁(100)と共に、液体(12)を流下させる環状ギャップ(400)を形成し、
-内部(300)の上縁(upper edge)は、内部(300)の上縁およびキャップ(100)の上方境界が気体(11)の流路(510)を形成するように、流入口(200)の上方で終端し(end)、かつキャップ(100)の上方境界の下方で終端しており、
-内部(300)は、気体(11)を流入させるための少なくとも1つの開口部(310)を頂部に有し、
-内部の下縁(lower egge)は、内部(300)の下縁および板(900)が液体(12)の流路(520)を形成するように、板(900)の上方で終端しており、
-内部(300)は、少なくとも1つの上側開口部(310)と水力学的に接続している少なくとも1つの開口部(320)を底部に有する、
内部(300)と、
・液体(12)および気体(11)から構成されるn本の流体流れのためのn個のガイド装置(800)であって、ガイド装置(800)は、開口部(320)を通じて内部(300)へ突出し、かつ液体(12)用の入口開口部(好ましくは、いずれの場合においても2~10個、特に好ましくは4~8個の入口開口部(810))および気体(11)用の入口開口部(820)を有する、ガイド装置(800)と、
を備え、
下降流気体(11)用のスワールブレーカ(600)が、内部(300)の内側に配置されている。
【0019】
本発明は、流下薄膜型蒸発器(100000)をさらに提供し、ここでは、本発明の分配装置(10000)を用いて、気体(11)および液体(12)を含有するn本の流体流れへと蒸発される流体(10)を均一に分割する。
【0020】
本発明はさらに、有機窒素化合物、有機一級アミン、イソシアネート、ポリエーテルポリオール、およびポリカーボネートからなる群から選択される化学製品の製造または後処理における、本発明の流下薄膜型蒸発器(100000)の使用を提供する。
【0021】
本発明の目的のために、「直立して(配置される)((arranged) upright)」とは、対応する装置または対応する装置部分が、実質的に垂直に配向されていることを意味する。当然、完全に垂直な配向が好ましい。しかしながら、製造公差のために、完全な垂直配向からのずれ、特に最大±3.0°まで、好ましくは最大±2.0°まで、特に好ましくは最大±1.0°までの範囲のずれが実際に生じ得る。このようなわずかな逸脱は、当然ながら本発明の範囲外ではない。
【0022】
本発明の目的のためには、断面積が、その面積に対し垂直に配向され、かつその面積の重心を通る軸の周辺の角度αによって、回転時に断面積それ自身と一致させることができる場合、断面積は「回転対称」である。ここで、αは、360°とは異なる1つ以上の角度である(したがって、もっぱら360°回転したときに断面積それ自体と一致させることができる断面積は、回転対称ではない)。言うまでもなく、これは当該装置または当該装置部分のいなかる断面積にも適用される。この意味で、本発明の分配装置(10000)、内部(300)、およびもちろん流下薄膜型蒸発器(100000)を回転対称で構成する最も簡単な(かつ本発明の全ての実施形態において最も好ましい)方法は、これらの装置または装置部品を全て中空円筒として構成することである。もちろん、理想的な円筒形状からの製造に関連するわずかな偏差は、本発明の範囲外にはならない。本発明の目的のために、各装置または装置部分に設置された装置(例えば、キャップ(100)上の流入口(200))は、当然ながら、各装置または装置部分の内部が決定的である(すなわち、考慮されるのは、それぞれの中空体の内部断面である)ので、回転対称構成からの逸脱としは数えられない。
【0023】
本発明の分配装置(10000)では、「それぞれが気体(11)および液体(12)を含有するn本の流体流れ」における「流体(10)」の分割が行われる。ここで、流体(10)は、本発明の分配装置(10000)に入る際、減圧(除圧)の結果として部分的に気化する(フラッシュ蒸発;自然蒸発とも呼ばれる)液体(例えば、その成分の少なくとも1つに関して過熱されている液体)であってもよい。この場合、「気体(11)」とは、流体(10)が部分的に気化した際に形成される蒸気であって、液体(12)とは、分配装置(10000)において気化していない残りの(「残留」)液体である。(本発明の目的のため、用語「蒸気」とは、液体の気化によって形成される気相であるが、一方で用語「気体」は、液体から形成される「蒸気」だけでなく、更なる気体成分をも包含することができる。)しかしながら、流体(10)は、気体成分が分配装置(10000)内の液体成分から分離された気体/液体混合物(液体の一部が分配装置(10000)へと流入する前からすら蒸気として存在しているか、または希釈効果のために添加された窒素といった不活性ガス、もしくはガス状副生成物もしくは生成物混合物中に溶解された副生成物といった外来ガスが存在しているからかのいずれかの理由による)として最初から存在してもよい。当然、自然蒸発がこの場合にはさらに生じることもあり、結果として、最初から存在する蒸気または外来性の気体に加え、分配装置(10000)において部分蒸発により蒸気が形成される。同様に、更なる流入口を介して更なる流体流れ(例えば、更なる気体流れ)を供給することが可能である。この場合、分配装置(10000)において気相(11)と液相(12)とへの分離が発生する。気体(11)および液体(12)は、互いに別個で(すなわち、内部の内側(300)または環状ギャップ(400))分配装置(10000)を通過し、したがって、n個のガイド装置(800)への進入時に「気体(11)および液体(12)を含有するn本の流体流れ」を形成する。「n個のガイド装置(800)」は、本発明の文脈において、流体をn本の流体流れへと分割する役割を果たし、かつ本発明の分配装置が、流下薄膜型蒸発器の管(または管の上端)と接続された流下薄膜型蒸発器において使用される。特に、n個のガイド装置(800)は板(900)に固定される(好ましくは、溶接される)。
【0024】
流入口(200)(本質的には、中空の円筒)は、「流体(10)の接線方向への流入が行われる」ように構成される。これは、特に平面視した場合、
図2a、b、および
図3(参照:直線L
200、図面は縮尺が正しくない)の上部に示すように、流入口(200)の長手方向軸に沿って内側境界壁に引かれた直線がキャップ(100)の内面と正接する。
【0025】
驚くべきことに、例えば、独国特許出願公開第2604389号(米国特許第4,154,642号としても公開)に記載された分配器は、単に管を管板から遠くまで突出させないだけでなく、独国特許出願公開第1769607号に記載されたようなオーバーフローを実現する流入貫通孔の代わりに、管板上の液位を低下させることで液体の過度な鎮静化を回避することによって堆積物を形成する傾向があるシステムには、好適となり得ないことが判明した。これは、接線方向流入および自然蒸発のために記述された分配器内において、気相および液相で高速および高乱流が生じるためである。気相は内部円筒中の管に向かって下方に移動するだけでなく、同時に、強い回転運動を受ける。同時に、液体は接線方向入口のため外側ギャップにおいて回転運動も行う。気相中の乱流は、管入口での高い流れおよび加熱管周辺の液体表面の破壊をもたらす。蒸気および液体中の高い速度および乱流は、驚くべきことに、気相中の乱流が液体流入を妨害するために蒸気の割合が増加するにつれて大きくなる、蒸発器管上の液体に極めて不正確な分配をもたらす。これらの問題は、スワールブレーカ(600)の本発明に係る使用によって、低減されるかまたは除去される。本発明の目的のために、「スワールブレーカ」は、流れ中の乱流を低減または排除し、流れの回転エネルギーを低減し、かつ流れを均一にすることができる装置である。最も単純な場合では、これは、スワールクロス上に溶接されることで流体の回転運動を防止する、2枚以上の金属板であってもよい(Plant Design and Operations, Chapter 4, Piping, page 162, I. Sutton (Author), 2017, Elsevier中における、Vortex breakers prior to installing、
図4.7を参照されたい)。穿孔板および偏向板、(構造化)包装、および編メッシュといった多くの更なる変形例が考えられ、これらは配置に依存して、流体中の乱流または回転運動を排除することができる。下降流気体用の本発明に係るスワールブレーカ(600)は、内部(300)の内側、すなわち、図面(
図1および
図5を参照されたい)で容易に分かるように、下降流液体(12)が下降流気体(11)から分離されている領域、すなわち、
液体用の流路(520)有意に上方へ配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の種々の可能な実施形態の要約は、まず以下の通りである。
【0027】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第1の実施形態では、内部(300)の断面は下方向に広がっており、これは、円形断面積を有する本体としての内部(300)の特に好ましい実施形態では、内部(300)が円錐-円筒形状であることを意味し、これについてはより詳細に以下で説明する。
【0028】
本発明の他の全ての実施形態と同様に組み合わせることができる本発明の第2の実施形態では、液体(12)用の貫通開口部(710)を有する液体(12)のためのスワールブレーカ(700)が、流入口(200)下方の環状ギャップ(400)に配置される。
【0029】
第2の実施形態の特定の変形例である本発明の第3の実施形態では、液体(12)用のスワールブレーカ(700)は、金属板であり、この金属板では、液体(12)用の貫通開口部(710)が、少なくとも2つの穴および/または少なくとも1つのスリットで形成されており、これらの2つの穴は特に、板の全域にわたって均一に分布しており、この1つのスリットは特に、板の全域にわたって延びている。
【0030】
本発明の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第4の実施形態では、流入気体(11)用の開口部(310)は、内部(300)の内部断面全体にわたって延在する。
【0031】
本発明の他の全ての実施形態と同様に組み合わせることができる本発明の第5の実施形態では、開口部(320)を通じてn個のガイド装置(800)が内部(300)へと延在する開口部(320)が、内部(300)の内部断面全体にわたって延在する。第4および第5の実施形態は、内部(300)が中空円筒状に構成されていることで最も有利に実現することができる。
【0032】
本発明の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第6の実施形態では、n個のガイド装置(800)は、管状吐水口または管の構成物(1000)である。
【0033】
第6の実施形態の特定の変形例である本発明の第7の実施形態では、液体(12)用の入口開口部(810)は、
・接線方向のスリット(tangential slit)であり、特に、ガイド装置(800)の内側で製造された液体(12)の流れが、流入口(200)の配置によって環状ギャップ(400)で製造された液体(12)の流れと同じ方向になるよう配列されたスリットであり、または
・軸方向のスリット(axial slit)である。
【0034】
本発明の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第8の実施形態では、下降流気体(11)用のスワールブレーカ(600)は、スワールクロス、包装、編ワイヤメッシュ、穿孔板、および偏向板からなる群から選択される。
【0035】
本発明の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第9の実施形態において、n個のガイド装置(800)は、内部(300)中へ10~100mm、好ましくは20~50mmの範囲の高さHまで突出する。
【0036】
本発明の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第10の実施形態では、本発明の分配装置(10000)は、流下薄膜型蒸発器(100000)の頂部における分配装置である。本発明の流下薄膜型蒸発器(100000)は、
・外側包囲シェル(2000)と、
・上方管板および下方管板に固定されたn本の管(1000)であって、nは2以上の自然数、好ましくは2~1000、特に好ましくは2~200、極めて特に好ましくは4~100の自然数であり、管の内側において液膜が流れ落ちることができる、管(1000)と、
・液体(12)と気体(11)とを個別の管(1000)へ分配するための上方分配装置としての本発明の装置(10000)であって、ここで、装置(10000)の底(900)は、流下薄膜型蒸発器(100000)の上方管板を形成し、かつ、装置(10000)のn個のガイド装置(800)が上部末端でn本の管(1000)と接続されるかまたは装置(10000)のn個のガイド装置(800)がn本の管(1000)の構成物である、本発明の装置(10000)と、
・管(1000)およびシェル(2000)の外側によって形成された管外部空間へ伝熱媒体(20)を供給する供給装置(3100)と、
・管外部空間から冷却された伝熱媒体(21)を放出するための放出装置(3200)と、
・蒸気(13)用の蒸気排出装置(4100)と、
・管の内側で気化していない残留液(14)用の液体排出装置(4200)と、
・残留液(14)および蒸気(13)を分離し収集するための装置(5000)と、
を備える。
【0037】
第10の実施形態の特定の変形例である本発明の第11の実施形態では、流下薄膜型蒸発器(100000)は、残留液(14)の一部を分配装置(10000)へ再循環させるための返送装置(6000)を有し、この返送装置(6000)は、
・残留液(14)の循環部分を、分配装置(10000)へ流入する前に流体(10)と混合させるための混合装置(6100)を備えるか、または
・流入口(200)とは異なる流入口(210)であって、キャップ(100)の境界側壁上に配置される流入口(210)へと開口している。
【0038】
本発明の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第12の実施形態では、本発明の分配装置(10000)の使用または本発明の流下薄膜型蒸発器(100000)の使用は、有機窒素化合物、有機一級アミン、イソシアネート、ポリエーテルポリオール、およびポリカーボネートからなる群から選択される化学製品の製造および/または後処理に関する。
【0039】
第12の実施形態の特定の変形例である本発明の第13の実施形態では、流下薄膜型蒸発器(100000)は、後半で気化させるためのイソシアネートの後処理で使用される。
【0040】
第13の実施形態の特定の変形例である本発明の第14の実施形態では、イソシアネートの気化は、イソシアネート製造による残留物含有上流底流からイソシアネートを少なくとも部分的に取り除くため、および/またはポリマーイソシアネート画分から気化しているモノマーイソシアネート画分を分離するために使用される。
【0041】
第13および第14の実施形態の特定の変形例である本発明の第15の実施形態では、イソシアネートは、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン系のジイソシアネートおよびポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ならびにジシクロヘキシルメタンジイソシアネートからなる群から選択される。
【0042】
上で簡単に示した実施形態および本発明の更なる可能な変形例を、特に添付の図面を用いて、より詳細に以下で説明する。図面において、本発明は、分配装置(10000)に入ると部分的に気化し、蒸気を形成し、かつ気化していない液体を残すような液体流体(10)の例について説明する。そのため以下の説明では、符号11を蒸気に、そして符号12を気化していない(「残留」)液体に用いる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、上述したように、流体(12)が気体/液体混合物(11、12)として最初から存在する場合、または気相(11)が別々に供給される場合も包含する。したがって、蒸気(11)(流体(12)の部分的な気化によって形成される)という表現を以下で用いる場合、特に示されない限り、いずれの気体(11)(例えば、添加された外来性の気体、例としては、希釈効果のために添加された窒素といった不活性ガス、もしくはガス状副生成物もしくは生成物混合物中に溶解された副生成物といった外来ガス)についても常に同様である。
【0043】
種々の実施形態は、その反対が文脈から当業者にとって自明でない場合を除き、あらゆる方法で互いに組み合わせることができる。添付の図面は本発明を説明するのに役立つ。これらの図面は縮尺が正しいとは言えない。
【0044】
図1は、本発明の分配装置(10000)の好ましい実施形態を示す。分配装置は、流体(10)(「接線方向入口」として既知)の接線方向流入を可能にする少なくとも1つの入口(200)を有する。接線方向の入口は、キャップ(100)の内壁および内部(300)の外壁によって形成される環状ギャップ(400)内に生じる。
図1に示す実施形態では、内部(300)は、円錐形のトランジションピース(「円錐円筒形状」)で互いに接合した、断面積の大きい上方中空円筒および下方中空円筒からなる。本実施形態では、内部(300)の断面を拡幅することが好ましい。本実施形態では、
図1および
図5から容易に分かるように、内部(300)の上方円筒部(上方中空円筒内)に、下降流気体用のスワールブレーカ(600)が配置されている。そして、各場合における少なくとも1つの上方開口部(310)および少なくとも1つの下方開口部(320)は、それぞれ、上方の円筒または下方の円筒の内部断面全体に対応する。これは、これらの開口部の好ましい構成である。しかしながら、内部(300)には一定の断面を有する単純な中空円筒を用いることもまた考えられる。
【0045】
この内部(300)は、液滴の混入を避けるために流入口(200)を越えて突出する。流入する流体は、分配装置(10000)へ流入する前に流体(10)が存在する圧力よりも低い分配装置(10000)内圧力まで減圧されるので、流入口(200)の領域で自然蒸発が起こる。(流体(10)が気体/液体混合物として最初から存在する場合には、以下に説明するように、気体と液体との分離が単純に生じる。)液体は外壁(キャップの内壁(100))に対して押しつけられる(接線方向流入)ので、密度差のため環状ギャップ(400)内において蒸気(11)と液体(12)との所望の分離が生じる。蒸気(11)は、上方へと自由に流れ、内部(300)の流路(510)を通って、開口部(820)からn個のガイド装置(800)へ流入する底部(900)まで移動する。これらのガイド装置(800)は、例えば、管状吐水口または他の(固定された)管構成物(すなわち、管の上端)であってもよい。管状吐水口は、吐水口、分配器外筒、または供給外筒とも呼ばれる。
【0046】
内部(300)の断面が下方向に広がる円錐円筒形状の好ましい構成により、液体(12)が流路(ギャップ)520を通過し、かつ内部(300)がn個のガイド装置(800)を包囲する分配装置の下方領域よりも、環状ギャップ(400)は自然蒸発領域において広くなる(すなわち、より大きな断面積が利用可能となる)。このようにして、蒸気(11)は、n個のガイド装置(800)上にそれ自身を分配することができる。
【0047】
内部(300)は、底(900)から少し離れて終端し、流路(ギャップ)を形成する(520)。液体(12)は、外側環状ギャップ(400)内を下方に流れ(
図1ではブロック矢印で示す)、底(900)と内部(300)の下端との間のギャップ(520)を通って底(900)の内側方向に流れ、そして開口部(810)を通ってn個のガイド装置(800)内へ流入する。液体(12)は、接線方向入口(200)によって、および高い蒸気速度での自然蒸発によって回転させられ、環状ギャップ(400)内の循環経路を辿り(
図1では連続した細い矢印によって示される)、底(900)に達する。
【0048】
従来技術の分配装置(スワールブレーカー(600)なし)に関する我々自身の実験的研究は、底部(900)上へと環状ギャップ(400)内を円運動を伴って流れる液体(12)中の速度および乱流が、流体(10)の蒸発の増加とともに一層強くなることを示した(過熱度に依存する)。この循環流は底(900)まで続く。強い流れが底(900)の堆積物形成を妨げる。さらに、我々自身の実験は、内部(300)の下降流気相(11)に強い乱流を示した。この乱流は、n個のガイド装置(800)上の液体(12)の均一な分配を再び乱す。この強い流れにより、ガイド装置(800)への均一な液体の流入が阻害され、ガイド装置(800)当たりの液体の量が大きく変動する可能性がある。特に、乱流が最も大きい領域の外部ガイド装置(800)が最も少ない液体量を受け、流れが鎮静化した内部ガイド装置(800)が最も多い液体量を受けることが分かった(実施例を参照されたい)。
【0049】
本発明によれば、この問題を解決するためには、気相(11)に好適であるスワールブレーカ(600)を内側の内部(300)へ設置する。スワールクロスはここで、
図1に示すように、スワールブレーカ(600)として機能することができる。これは、好ましくは少なくとも3枚のブレード(例えば、正確には3枚のブレード)、特に好ましくは少なくとも4枚のブレード(例えば、スワールクロスが平面図で見られる
図2a、bに示すような、正確には4枚のブレード)、極めて特に好ましくは少なくとも8枚のブレード(例えば、正確には8枚のブレード)を有する。ブレード数の上限は、原理的には、蒸気(11)の充分な流れが依然として確保されなければならず、かつ所与の場合について当業者が容易に決定できるという事実によってのみ制限される。このようなスワールクロスは、気相における循環流および乱流を排除する。さらに、金属包装、編ワイヤメッシュ、穿孔板、または特に、オフセット、偏向板もまた、スワールブレーカ(600)としての可能性がある。我々自身の実験では、気相(11)の乱流はこの方法で除去することができ、液体分配は著しく改善された(実施例を参照されたい)。
【0050】
乱流、気体混入、ならびに最終的には下方ギャップ(520)および液体流入用の開口部(820)の領域における不正確な分配をもたらす可能性がある下方環状ギャップ(400)内の一箇所のみで、入口ポートから流入する液体が液体表面に衝突すること防止するために、環状ギャップ(400)内の液体の事前分配および事前調整を確実にすることが好ましい。このため、環状ギャップ(400)には、流入口(200)の下方に液体(12)用のスワールブレーカー(700)を設けることが好ましい。液体用のこのスワールブレーカー(700)は、最も単純な場合では、液体(12)が流出可能な開口部(710)を有する連続した金属シートである。システムのファウリング傾向に応じて、これらの開口部は、多数の穴(
図2a)または(好ましくは連続的な)狭いスリット(
図2b)によって実現することができる。孔の直径および数、またはスリットの幅に依存して、(低い)液位が、スワールブレーカ(700)上へさらに生成される可能性があり、これは同様に、運動量を完全に除去することなく、流れを幾分鎮静化し、かつ全周囲にそれを分配することに寄与する。ファウリング傾向が強い場合には、管板上への堆積は避けられるが、液体(12)は、そのスリットを流れることによってほぼ全周囲に分配することができるように、流れをほとんど鎮静化することのできないような狭いスリット(
図2b)を有する変形例が、好ましく用いられる。ファウリング傾向が低い場合には、複数の孔(
図2a)を有する変形例を選択することができ、スワールブレーカ(700)に液位が形成されるように、孔の数および直径を当業者が容易に計算することができる。この変形例では、流れは、液位に応じてより強く鎮静化し、渦流または循環流は、実質的に完全に破壊される。
【0051】
底(900)上の液位は、液体(12)の過度に低い速度による堆積を避けるために、好ましくは小さく保たれる。これは、n個のガイド装置(800)が内部(300)に、10~100mm、好ましくは20~50mmの範囲の高さH(
図4参照)まで延在するように、装置(10000)を構成することによって達成される。
【0052】
図3は、好ましい実施形態におけるガイド装置(800)の平面図を示す。ここで、ガイド装置(800)は、上方(開口)側が蒸気(11)の入口開口部(820)を形成する直立中空円筒(管状吐水口または(固定された)管構成物)に相当する。原理的には、液体(12)は、中空円筒(ここで、入口開口部820は入口開口部810と同一である)の上端部をオーバーフローさせるだけでよい。しかしながら、
図3に示すように、液体(12)を流入させるため内部(300)へ突出しているn個のガイド装置(800)の先端に配置されている、専用の入口開口部(810)が設けられていることが好ましい。ガイド装置(800)は、好ましくは2~10、特に好ましくは4~8の(専用)入口開口部(810)をそれぞれ備える。
図3に示す実施形態では、入口開口部(810)は、接線方向スリットとして構成される。ここで、接線方向スリットとは、液体(12)の接線方向流れを許容するスリットである。これは、
図3(直線L
810を参照)に示すように、スリットの内側境界壁の長手方向軸に沿って引かれた直線がガイド装置(800)の内面に接する場合(中空円筒)、特に当てはまる。しかしながら、スリットの長手方向軸に沿って中心に引かれた直線が中空円筒の中点Mを通る場合にも、軸方向スリットを同様に用いることができる。
【0053】
接線方向スリットが好ましい。ここで、特に、液体(12)のガイド装置(特に、循環流)の内側の接線方向スリットが、環状ギャップ(400)における流入口(200)の接線方向配置によって生成される液体(12)の流れ(特に、クロス流れ)と同じ方向(同一の方向である)に配向して生成される流れが好ましい。したがって、両方の流れは、
図3に示すように、上から見て時計回りまたは反時計回りのいずれかで流れる。
図3において、接線方向入口は時計回りの流れを生じ、これはまた、中空円筒(800)内に接線方向スリットを正しく設置することによってガイド装置(800)内へ伝播される。接線方向スリットのこの配置により、入口開口部(810)から中空円筒(800)への液体(12)の自由な流入が促進され、所望のように中空円筒(800)の内壁に液体(12)が向かうことで、安定した液膜が形成される。スリットの向きが逆の場合には、中空円筒内への流入時に流れが乱れ、安定した液膜の形成が阻害される可能性が否定できない。
【0054】
入口開口部(810)の外側形状は、原則として制限されない。長方形以外に、
図4に示すような三角形もまた考えられる。この目的のためには、例えば、中空円筒(800)の上端を簡単に切り込むことができ、そして三角形の側面積を有する入口開口部(810)を折り返すことによって形成することができる(折り畳みスリットとして既知である)。
【0055】
入口開口部(810)の外側形状にかかわらず、三角形の側面積を有する折り畳みスリットについては、
図4に例として示すように、上部が開口していることがあらゆる場合において好ましい(
図4における「O」を参照されたい)。
【0056】
最初に述べたように、本発明の分配装置(10000)は、特に、流下薄膜型蒸発器に使用するのに好適である。本発明はしたがって、
・外側包囲シェル(2000)と、
・上方管板および下方管板に固定されたn本の管(1000)であって、nは2以上の自然数、好ましくは2~1000、特に好ましくは2~200、極めて特に好ましくは4~100の自然数であり、管の内側において液膜が流れ落ちることができる、管(1000)と、
・液体と気体とを個別の管(1000)へ分配するための上方分配装置と、
・管(1000)およびシェル(2000)の外側によって形成された管外部空間へ伝熱媒体(20)を供給する供給装置(3100)と、
・管外部空間から冷却された伝熱媒体(21)を放出するための放出装置(3200)と、
・上方分配装置からの気体および管内部で発生する蒸気からなる蒸気(13)用の蒸気排出装置(4100)と、
・管の内側で気化していない残留液(14)用の液体排出装置(4200)と、
・残留液(14)および蒸気(13)を分離し収集するための、好ましくは下方の、装置(5000)と、
を備え、
ここで、液体と蒸気とを個別の管(1000)へ分配するための上方分配装置が、本発明の装置(10000)であって、装置(10000)の底(900)が、流下薄膜型蒸発器(100000)の上方管板を形成し、かつ、n個のガイド装置(800)がその上部末端でn本の管(1000)と接続されるかまたはn個のガイド装置(800)がn本の管(1000)の構成物である、ことを特徴とする流下薄膜型蒸発器(100000)(
図5参照)をさらに提供する。
【0057】
本発明の分配装置(10000)は、本発明の流下薄膜型蒸発器(100000)の構成要素であるため、後者も当然ながら前者と同様に直立しており、かつ同様に回転対称であることが好ましく、特に好ましくは丸形、特に円形の断面積を有することが好ましい。「蒸気(13)」は、上方分配装置(10000)からガイド装置(800)を介して管(1000)内へと流入する気相(11)、および管内で発生する蒸気から構成される。気相(10)は、流体(11)の部分的な蒸発によって形成される蒸気の最も単純な場合からなる。しかしながら、本発明の分配装置(10000)に関連して前述したように、これはまた、外来性気体を含有するか、またはさらには外来性気体からなることもできる。後者2つの場合には、厳密に言えば、流れ(13)は蒸気だけからなるわけではない。しかしながら、流れ13の主な構成要素は管内で生成される蒸気であるため、用語「蒸気」とは、流れ13については、用語を単純化するために使用される。
【0058】
本発明の流下薄膜型蒸発器(100000)は、上方分配装置(10000)を除いて、従来の流下薄膜型蒸発器に相当し、これらのように構成することができる。残留液(14)および蒸気(13)を分離して収集する装置(5000)は、
図5に示すように、下方管板上に直接固定することができる。しかしながら、管(1000)は、装置(5000)内へ入るジョイント管部分に開口することも可能であり、次いで、例えば、n本の管からなる管セグメントの隣に配置される(管セグメントの下の代わり)。
【0059】
また、本発明の流下薄膜型蒸発器(100000)は、返送装置(ポンプ循環導管)(6000)により循環運転することもできる(
図6a、bを参照;明確にするために、
図5からの多くの詳細は省略されており、同様に、ポンプ等の周辺機器も引き込まれていない)。底で取り出された残留液(14)の一部は、次いで、別個の流入口(210)(
図6a)を介して、または混合装置(6100)で供給流れ(10)と残留液(14)を混合した後のいずれかで、流下薄膜型蒸発器の頂部に戻される。分離流入口(210)も同様に、接線方向の流入が可能となるように設置されることが好ましく、特に、流入口200と同様に方向付けられる。循環モードでの動作では、流体(10)の温度は、循環残留液(14)の温度よりも低いことが好ましい。比較的低温の流体(10)は、比較的高温の残留液(14)と接触して加熱されるため、自然蒸発が生じる。
【0060】
本発明の流下薄膜型蒸発器は、別の装置の構成要素として、例えば蒸留塔の蒸発器として使用することもできる。
【0061】
本発明の流下薄膜型蒸発器(100000)の動作モード(特に、圧力および温度の条件)は、蒸発する材料の種類に依存する。ここで、当業者は、蒸発されるべき特定の材料に関して先行技術で報告された経験を利用し、必要ならば、簡単な定期試験によってこれを最適化する。流下薄膜型蒸発器(100000)が大気圧以下の圧力で運転されるとき、当業者によって特定の用途のために容易に設計することができ、かつ好ましくは蒸気排出装置(4100)と接続される好適な真空システムが使用される。
【0062】
原理的には、本発明の分配装置(10000)、特に本発明に係る流下薄膜型蒸発器(100000)は、あらゆるシステム、特に液体画分および気体画分が生じる(例えば、自然蒸発の結果)堆積物を形成する傾向がある特にシステムにおいて使用することができる。当然ながら、堆積物を形成する特別な傾向のないシステムでの使用も同様に可能である。粘度の高いシステムも同じに有用に使うことができる。これは特に、化学製品の製造および/または後処理のためのプロセスに適用される。本発明を使用することができる製造および/または後処理における化学製品は、特に、有機窒素化合物、有機一級アミン、イソシアネート、ポリエーテルポリオール、およびポリカーボネートである。本発明の流下薄膜型蒸発器の用途分野は、単独でまたは蒸留塔といった他の装置と随意に組み合わせてのいずれかである、例えば、蒸留(例えば、有機窒素化合物もしくはイソシアネートの)、乾燥(例えば、有機一級アミンもしくはポリエーテルポリオール)、または脱揮発(例えば、溶媒含有ポリカーボネートメルト)であってもよい。
【0063】
イソシアネートおよびその前駆体、すなわち対応する有機一級アミンおよび有機窒素化合物の製造および/または後処理における使用が、特に好ましい。好適なイソシアネートの例は、トリレンジイソシアネート(TDI;特に、メタTDI)、ジフェニルメタン系のジイソシアネートおよびポリイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI、特にメタXDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI、または例えば、Covestro Deutschland AG製「Desmodur 15」)、ならびにジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)である。したがって、例えば、粗イソシアネートの後処理は通常、精製されるイソシアネートを蒸発させる必要がある工程を含む。不純物を分離するための単純な蒸留とは別に、イソシアネート製造から残留物含有上流底流から後者を少なくとも部分的に除去するためのイソシアネートの蒸発、および/または蒸発されるモノマーイソシアネート画分をポリマーイソシアネート画分から分離するためのイソシアネートの蒸発は、本発明の有用な適用分野として特に言及する価値がある。
【0064】
粗イソシアネートの蒸留後処理の正確な配置に関係なく、単離された純粋なイソシアネートに加えて、少なくとも1つの蒸留底流もまた得られる(一般的には、蒸留水の流れとして)。この蒸留塔底流は、いわゆる蒸留残渣および生成されるイソシアネートの割合を含有する。蒸留残渣は、蒸留のために選択された圧力および温度の条件下で蒸発しないか、または分解なしには全く蒸発し得ない化合物を含有する。蒸留残渣中に存在する蒸発が困難または不可能な化合物は、ホスゲン化プロセスをそのまま通過した使用される第一級アミン由来の不純物でない限り、構造が必ずしも正確に知られていない比較的高分子量のホスゲン化生成物である。したがって、ここでの化合物は、未重合のアミン基をイソシアネート基で置換することによって、使用されるアミンの重合生成物から(正式に)誘導され得る化合物であってもよい。蒸留残渣を含有する蒸留塔底流は通常、後処理されるが、この後処理はまた通常、製造されるべきでありかつ蒸留塔底流中に存在するイソシアネートを部分的に蒸発させる工程をも含み、イソシアネート中で枯渇して製造され、通常はさらに乾燥される液体流を残す。本発明の流下薄膜型蒸発器では、前述した蒸発工程を極めて良好に行うことができる。この気化は、120~180℃の範囲の温度、および20~60mbar(abs.)の範囲の残留液(14)および蒸気(13)を分離して収集する装置(5000)内の圧力、特に130~175℃の範囲の温度、25~45mbar(abs.)の範囲の圧力で行うことが好ましい。本発明の流下薄膜型蒸発器の上記した使用は、TDI含有蒸留塔底流からTDIを分離するのに特に好適である。
【0065】
本発明の使用分野としてのポリマーイソシアネート画分から蒸発したモノマーイソシアネート画分の分離の例として、対応する三量体(例えば、Covestro Deutschland AG製の「Desmodur Z」)からモノマーIPDIを分離させてもよいことを挙げることができる。
【実施例】
【0066】
試験システムとして水/空気混合物を用いて、工業規模の液体分配器について実験を行った。使用した試験装置は、流下薄膜型蒸発器の条件をシミュレートしたもので、直径約900mm、管45本であった。自発蒸発が液体分配に及ぼす影響を調べるため、ある場合では6m3/時の純水(自然蒸発のない状態)を導入し、他の場合には6m3/時と、空気560または1000m3/時とを接線方向入口(自然蒸発の状態)を経由して導入した。全ての場合において、管当たりの液体体積流量を測定し、標準偏差を以下の式に従って決定した。
【0067】
【0068】
ここでの記号の意味は次の通りである:x
iは管当たりの測定された液体体積流量であり、
【数2】
はn本の管全てにわたる測定された液体体積流量の算術平均であり、nは管の数である。
【0069】
分配器は、全ての実験において、管板上において50mmの液位で、かつ接線方向流入スリット(スリット幅5mmの長方形スリット)を有する管状吐水口を使用して作動させた。
【0070】
実施例1(スワールブレーカー(600)なしでの自然蒸発の有無による液体分配;比較):
スワールブレーカ(600)は使用しなかった。外側環状ギャップ(400)には、液体用の連続したスリットを有するスワールブレーカー(700)を用いた(
図2bに示す通り)。管当たりの測定された体積流量を、昇順で
図7に示す。気相の割合が増加すると(自然蒸発の増加に対応)、分配は最適分配からさらに逸脱することが明らかになった。1000m
3/時での相対標準偏差は34%であり、これは工業規模の分配器としては非常に高い。0m
3/時の空気中では、標準偏差は12%であって、工業用液体分配器の標準偏差の範囲内である。
【0071】
実験は、たとえ気体および液体がキャップへ入った直後にきれいに分離され、かつ液体がスワールブレーカ(700)によって予備分配されたとしても、気相が管上の液体の分配を大きく破壊するということを示す。
【0072】
実施例2(気相(11)にスワールブレーカー(600)を用いた自然蒸発による液体分配;本発明に係る):
実施例1の560m
3/時および1000m
3/時の空気を用いた実験を、スワールブレーカー(600)の設置後に繰り返した。液体分配の有意な改善がここでは見られる。
図8を参照されたい(比較を容易にするため、実施例1の結果もまた示される)。1000m
3/時では、このようにして相対標準偏差を以前の34%から16%まで減少させることができる。ここで得られた分配は、実施例1の0m
3/時の空気を用いた分配と近い。このように、スワールブレーカ(600)を用いることによって、液体分配に対する空気の負の影響を実質的に排除することができるということが示されている。この実施例では、4枚のブレードを有する単純なスワールブレーカ(600)を使用した。これはさらに最適化することができる(例えば、空気の流れ(一般的には、気体の流れ)をより大きく鎮静化するためには、8枚のブレード)。
【0073】
したがって、本発明にかかる実施例2では、液体が管板(900)上で完全に鎮静化すことなく、実施例1と比較して有意に液体分配を改善することができた。その代わり、液体中の有意な循環流は、それらを形成する傾向のあるシステムにおける堆積物形成を回避し、可視化され続ける。
【図面の簡単な説明】
【0074】