(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】毛細管電気泳動システム、関連する装置、および関連する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/447 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
G01N27/447 315K
G01N27/447 315D
(21)【出願番号】P 2019546231
(86)(22)【出願日】2018-02-23
(86)【国際出願番号】 US2018019399
(87)【国際公開番号】W WO2018156880
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-09
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502221282
【氏名又は名称】ライフ テクノロジーズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】リム, ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】リウ, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】リー, ペン
(72)【発明者】
【氏名】カオ, ビン
(72)【発明者】
【氏名】ヒラノ, カーク
(72)【発明者】
【氏名】ドゥクホブニー, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ディクソン, ジョン
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/134943(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/134945(WO,A1)
【文献】特開2013-156271(JP,A)
【文献】特開2006-023319(JP,A)
【文献】特表2013-536439(JP,A)
【文献】国際公開第2015/134925(WO,A1)
【文献】特開2011-102722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0115607(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛細管電気泳動を実行するための生物学的分析装置であって、
カソードコネクタとアノードコネクタとの間に電圧差を生成するように構成された電圧部と、
サンプルからの光放出を検出するように構成された光学検出器システムと、
温度調節部と、
1つ以上の毛細管および分離媒体容器を含む取り外し可能なカートリッジの少なくとも一部を受容するように構成されたカートリッジ保持部分と、
前記取り外し可能なカートリッジが前記カートリッジ保持部分に受容されたときに、前記取り外し可能なカートリッジのコンポーネントを作動させるように構成された1つ以上のアクチュエータと、を備え
、
前記カートリッジ保持部分が、前記取り外し可能なカートリッジの分離媒体容器に保管された分離媒体を冷蔵するように構成された冷蔵部を含む、生物学的分析装置。
【請求項2】
前記1つ以上のアクチュエータが、前記取り外し可能なカートリッジの1つ以上の流体制御装置を作動させるように構成されている、請求項1に記載の生物学的分析装置。
【請求項3】
前記1つ以上のアクチュエータの作動を制御するようにプログラムされたコントローラをさらに備える、請求項1に記載の生物学的分析装置。
【請求項4】
前記1つ以上の流体制御装置が、弁およびポンプの一方または両方を含む、請求項
2に記載の生物学的分析装置。
【請求項5】
前記カートリッジ保持部分が、前記カートリッジを前記生物学的分析装置のコンポーネントと所定の位置合わせで位置決めするために、前記カートリッジの特徴と係合するように構成されたカートリッジ位置合わせ構造を含む、請求項1に記載の生物学的分析装置。
【請求項6】
前記カートリッジ位置合わせ構造が、前記カートリッジを前記光学検出器
システムに対して位置合わせするように構成されている、請求項5に記載の生物学的分析装置。
【請求項7】
前記カートリッジ位置合わせ構造が、前記カートリッジを前記生物学的分析装置内の第1の位置から第2の位置に移動させるように構成されている、請求項5に記載の生物学的分析装置。
【請求項8】
前記温度調節部が、加熱要素および空気移動要素を含む、請求項1に記載の生物学的分析装置。
【請求項9】
前記温度調節部が、前記
取り外し可能なカートリッジの複数のポートに対応するように構成された複数のポートを含む、請求項8に記載の生物学的分析装置。
【請求項10】
生物学的分析装置用の交換可能なカートリッジであって、
流体送達マニホールドと、
各々が第1の端部および第2の端部を有する1つ以上の毛細管であって、前記第1の端部が前記流体送達マニホールドと流体的に結合されている、1つ以上の毛細管と、
前記流体送達マニホールドと流体的に結合された緩衝液リザーバと、
前記流体送達マニホールドと流体的に結合された電気泳動分離媒体容器と、
電気泳動分離媒体を前記
電気泳動分離媒体容器から前記流体送達マニホールドを介して前記1つ以上の毛細管に移送するように構成された流体移送装置と、を備え
、
前記電気泳動分離媒体容器は、前記生物学的分析装置の第2の温度調節部により前記電気泳動分離媒体の温度を周囲よりも低い温度設定値に維持するように構成されており、前記周囲よりも低い設定値温度が、前記電気泳動分離媒体の寿命を延ばす、交換可能なカートリッジ。
【請求項11】
1つ以上の流体制御装置をさらに備える、請求項
10に記載のカートリッジ。
【請求項12】
前記1つ以上の流体制御装置が、作動のために前記生物学的分析装置のアクチュエータに作動可能に結合されるように構成されている、請求項
11に記載のカートリッジ。
【請求項13】
前記1つ以上の流体制御装置が1つ以上の弁を含む、請求項
11に記載のカートリッジ。
【請求項14】
前記1つ以上の流体制御装置が、流体移送装置を含む、請求項
11に記載のカートリッジ。
【請求項15】
前記1つ以上の流体移送装置がシリンジポンプを含む、請求項
14に記載のカートリッジ。
【請求項16】
前記1つ以上の流体制御装置が受動装置である、請求項
11に記載のカートリッジ。
【請求項17】
前記毛細管の温度を周囲よりも高い温度設定値に維持することができる前記生物学的分析装置の第1の温度調節部の対応するポートと結合するように構成された1つ以上のポートをさらに備える、請求項
10に記載のカートリッジ。
【請求項18】
カートリッジ識別情報を前記生物学的分析装置に伝達するように構成された識別要素をさらに備える、請求項
10に記載のカートリッジ。
【請求項19】
前記識別要素が、カートリッジ使用情報を前記生物学的分析装置に伝達するようにさらに構成されている、請求項
18に記載のカートリッジ。
【請求項20】
前記識別要素が、無線周波数識別(RFID)タグ、バーコード、およびシリアル番号から選択される、請求項
18に記載のカートリッジ。
【請求項21】
前記緩衝液リザーバ内に延びるアノードをさらに備える、請求項
10に記載のカートリッジ。
【請求項22】
前記アノードが導電性コネクタ部分を含む、請求項
21に記載のカートリッジ。
【請求項23】
検出部をさらに備え、前記1つ以上の毛細管が前記検出部を通って延びる、請求項
10に記載のカートリッジ。
【請求項24】
前記検出部が、前記カートリッジのハウジングに対して移動可能なガラスブロックを含み、前記1つ以上の毛細管が前記ガラスブロックに固定されている、請求項
23に記載のカートリッジ。
【請求項25】
請求項1~9のいずれかに記載の生物学的分析装置を使用して毛細管電気泳動を実行する方法であって、
1つ以上の毛細管を含む取り外し可能なカートリッジを、前記生物学的分析装置に挿入することと、
前記生物学的分析装置のアクチュエータを使用して、前記取り外し可能なカートリッジの流体移送装置を作動させることであって、前記流体移送装置を作動させることが、分離媒体を分離媒体保管容器から前記1つ以上の毛細管に移送させる、作動させることと、
前記生物学的分析装置のアクチュエータを使用して前記取り外し可能なカートリッジの緩衝液弁を作動させることであって、前記緩衝液弁を作動させることが、前記毛細管の端部を導電性緩衝液に暴露させる、作動させることと、を含む、方法。
【請求項26】
前記流体移送装置を作動させる前に、分離媒体弁アクチュエータを作動させて前記1つ以上の毛細管と分離媒体保管容器との間の分離媒体弁を閉じることをさらに含む、請求項
25に記載の方法。
【請求項27】
前記生物学的分析装置のアノードとカソードとの間に電圧差を印可することをさらに含み、前記アノードが前記1つ以上の毛細管の第1の端部と電気的に結合され、前記カソードが前記1つ以上の毛細管の第2の端部と電気的に結合されている、請求項
25に記載の方法。
【請求項28】
前記生物学的分析装置の光学検出器
システムで前記1つ以上の毛細管内の検体を検出することをさらに含む、請求項
25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マルチ毛細管電気泳動装置および関連する装置、システム、ならびに方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛細管電気泳動装置は、一般に、例えば、1つ以上の毛細管(例えば、配列に配置される)、毛細管に媒体を提供するための分離媒体供給源(例えば、ポリマー)、サンプル注入機構、光学検出コンポーネント、電極、ならびに毛細管の一方の端部上のアノード緩衝液源、および毛細管の他方の端部上のカソード緩衝液源を含む、特定の主要コンポーネントを有する。毛細管電気泳動装置はまた、一般に、様々なコンポーネントの温度を調節するために様々な加熱コンポーネントおよびゾーンも含む。温度を調節することで、結果の品質を改善することができる。
【0003】
これらのコンポーネントの多くの温度を調節しながら毛細管電気泳動装置の主要なコンポーネントを提供するために、一部の毛細管電気泳動装置は、複数の構造を使用してコンポーネントを収容しており、複数の構造は、作動毛細管電気泳動装置を提供するように相互に結合されている。複数の構造を使用することには欠点がある。例えば、相互接続された構造のそれぞれは、それ自身の温度調節機構を必要とし、したがって、関連付けられた個々の温度制御機構を使用することができる独立した温度制御ゾーンを作成する場合がある。複数構造の設計はまた、コンポーネントの総数を増加させ、温度制御スキームを複雑にし、コンポーネントの故障のリスクを増大させる。
【0004】
さらに、複数の相互接続された構造を有する電気泳動装置の使用は、比較的複雑になる場合がある。例えば、分離媒体(以下「ポリマー」と呼ぶ)源を毛細管の配列に取り付けることは複雑である場合があり、配列をポリマー源から取り外したり、それに取り付けるたびに気泡または他のアーチファクトを導入するリスクがある。さらに、製造業者ではなくユーザが、一般に緩衝液源を配列に取り付けなければならず、毛細管配列の寿命を通じて複数回それを行わなければならない。
【0005】
したがって、必要な加熱/温度制御ゾーンの数を減らし、ユーザの構造操作を減らし、コンポーネントの故障の可能性を減らし、気泡および他のアーチファクトの装置への導入を減らし、かつ装置の全体的な使用を容易にするために、相互接続される構造の数を減らした毛細管電気泳動装置を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、毛細管電気泳動を実行するための生物学的分析装置は、カソードコネクタとアノードコネクタとの間に電圧差を生成するように構成された電圧部、サンプルからの光放出を検出するように構成された光学検出器システム、温度調節部、ならびに1つ以上の毛細管および分離媒体容器を含む取り外し可能なカートリッジの少なくとも一部を受容するように構成されたカートリッジ保持部分を含む。生物学的分析装置は、取り外し可能なカートリッジがカートリッジ保持部分に受容されたときに取り外し可能なカートリッジのコンポーネントを作動させるように構成された1つ以上のアクチュエータをさらに含む。
【0007】
別の態様では、生物学的分析装置用の交換可能なカートリッジは、流体送達マニホールドと、それぞれが第1の端部および第2の端部を有する1つ以上の毛細管であって、第1の端部が流体送達マニホールドと流体的に結合されている、1つ以上の毛細管と、を含む。緩衝液リザーバは、流体送達マニホールドと流体的に結合され、電気泳動分離媒体容器は、流体送達マニホールドと流体的に結合されている。流体移送装置は、分離媒体を分離媒体保管容器から流体送達マニホールドを介して1つ以上の毛細管に移送するように構成されている。
【0008】
別の態様では、生物学的分析装置を使用して毛細管電気泳動を実行する方法は、1つ以上の毛細管を含む取り外し可能なカートリッジを生物学的分析装置に挿入することと、生物学的分析装置のアクチュエータを使用して取り外し可能なカートリッジの流体移送装置を作動させることであって、流体移送装置を作動させることが、分離媒体を分離媒体保管容器から1つ以上の毛細管に移送させる、作動させることと、生物学的分析装置のアクチュエータを使用して取り外し可能なカートリッジの緩衝液弁を作動させることであって、緩衝液弁を作動させることが、毛細管の端部を導電性緩衝液に暴露させる、作動させることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の例示的な実施形態による生物学的分析装置の概略図である。
【
図2】本開示の例示的な実施形態による生物学的分析装置用のユーザ交換可能なカートリッジの斜視図である。
【
図3】
図2の例示的な実施形態によるユーザ交換可能なカートリッジの内部図である。
【
図4】
図2の例示的な実施形態によるユーザ交換可能なカートリッジの流体送達アセンブリの斜視図である。
【
図5】
図4の例示的な実施形態による流体送達アセンブリの一部の平面図である。
【
図6】
図4の例示的な実施形態による流体送達アセンブリの2つのコンポーネント部分の斜視図である。
【
図7】
図2の例示的な実施形態によるユーザ交換可能なカートリッジの検出器セルの側面図である。
【
図9】本開示の例示的な実施形態による毛細管電気泳動装置内に挿入されているユーザ交換可能なカートリッジの斜視図である。
【
図10】
図9の毛細管電気泳動装置の内部図である。
【
図11】
図9の例示的な実施形態による毛細管電気泳動装置の内部図であり、ユーザ交換可能なカートリッジが毛細管電気泳動装置に部分的に装填されている。
【
図12】
図9の毛細管電気泳動装置の別の部分的な内部図である。
【
図13】
図2の実施形態によるユーザ交換可能なカートリッジの流体送達アセンブリの斜視図である。
【
図14A】
図2のカートリッジの流体送達アセンブリの動作状態を示す概略図である。
【
図14B】
図2のカートリッジの流体送達アセンブリの動作状態を示す概略図である。
【
図14C】
図2のカートリッジの流体送達アセンブリの動作状態を示す概略図である。
【
図15】
図9の毛細管電気泳動装置の別の内部図である。
【
図16】
図2の例示的な実施形態によるユーザ交換可能なカートリッジの検出器セルの拡大図である。
【
図17】
図9の例示的な実施形態による毛細管電気泳動装置の別の内部図である。
【
図18】
図2のユーザ交換可能なカートリッジのカソードブロックの拡大図である。
【
図19】本開示の例示的な実施形態による毛細管電気泳動装置の加熱装置と結合されたユーザ交換可能なカートリッジの内部側面図である。
【
図20】本開示の例示的な実施形態による保護装置が設置されたユーザ交換可能なカートリッジの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載される様々な例示的な実施形態は、核酸配列決定のための簡素化されたワークフローを提供する。本明細書で使用された節の見出しは、構成目的のためのものであって、記載された主題をいかなる方法でも限定するものと解釈されるべきでない。
【0011】
本開示の様々な態様について詳細に言及し、それらの例は、添付の図面において例示される。可能な限り、同じ参照番号が、同じまたは同様の部分を参照するように、図全体に渡って使用される。
【0012】
様々な例示的な実施形態のこの詳細な説明では、説明の目的のために、開示される実施形態の完全な理解を提供するための多くの具体的な詳細が記載されている。しかしながら、これらの様々な実施形態を、これらの具体的な詳細と共に、またはそれなしに、実行し得ることを当業者であれば理解するであろう。他の例では、構造および装置をブロック図の形態で示している。さらに、方法が提示および実行される具体的な順序は例示的なものであり、順序は変更されても依然として本明細書で開示される様々な実施形態の趣旨および範囲内にとどまり得ることが企図されていることを、当業者であれば容易に理解することができる。
【0013】
別途定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術および科学用語は、本明細書に記載される様々な実施形態が属する分野の当業者に通常理解されるものと同様の意味を有する。組み込まれる参照文献における用語の定義が、本教示に提供される定義と異なる場合、本教示に提供される定義が優先されるものとする。
【0014】
単数形の使用は、別途具体的に記載されない限り、複数形を含む。さらに、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」、「含有している(containing)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含んでいる(including)」の使用は、限定することを意図するものではない。前述の一般的な記載および下記の詳細な記載は、単に例示的かつ説明的なものであって、本開示および特許請求の範囲を制限するものではないことを理解すべきである。
【0015】
本説明は、様々な例示的な実施形態と併せて記載されるが、本教示がそのような実施形態に限定されることを意図するものではない。逆に、本教示は、当業者には理解されるように、様々な代替例、変形例、および等価例を包含する。
【0016】
さらに、様々な実施形態を記載する際、本明細書が、方法および/またはプロセスを特定の順序のステップとして提示している場合がある。しかしながら、本方法またはプロセスが本明細書に記載された特定の順序のステップに依存しない限り、本方法またはプロセスは、記載された特定の順序のステップに限定されるべきではない。当業者であれば理解するであろうように、他の順序のステップが可能であり得る。したがって、本明細書に記載された特定の順序のステップを、特許請求の範囲に対する限定として解釈するべきではない。加えて、本方法および/またはプロセスを対象とする特許請求の範囲は、書かれた順序でのそれらのステップの実行に限定されるべきではなく、順序は変更されても依然として様々な実施形態の趣旨および範囲内にとどまり得ることを当業者であれば容易に理解することができる。
【0017】
一般に、生物学的配列決定のために生物学的実験室に機器を提供する場合、少なくとも以下の理由から、比較的明快で複雑でないワークフローが有益であり得る。第一に、実験室は実験を経済的に実施することに関心があることが多く、これには、機器と相互作用するあまり訓練を受けていない個人を利用することが含まれる。第二に、機器とのユーザ対話時間を短縮すると、所与の期間に実行できる実験の数を増やすことができる。
【0018】
本開示は、従来の装置と比較して比較的簡素なワークフローを有するように構成された生物学的分析装置に関する。例えば、本開示は、分析装置とインターフェース接続し、装置のユーザが容易に交換できるユーザ交換可能なカートリッジ内に生物学的分析装置の様々なコンポーネントを含めることを企図する。カートリッジには様々なサブシステムが含まれており、ユーザが交換可能なカートリッジの一部として含まれる特定のサブシステムは、使いやすさを促進し、ユーザが実行する必要がある操作の数を減らし、ユーザエラーが生物学的分析装置の性能に悪影響を与える可能性を減らすように選択され得る。
【0019】
例えば、ユーザ交換可能なカートリッジは、複数の流体保管部分(例えば、リザーバ、容器など)を統合する流体工学部、ならびに1つ以上の弁および1つ以上の流体移送装置などの流体制御装置を含み得るマニホールド部を含み得る。ユーザ交換可能なカートリッジの一部として流体保管部分を含めることは、ユーザエラーが空気または他の汚染物質を生物学的分析装置の流体工学部に導入する可能性を減らす(例えば、なくす)ことにより、生物学的分析装置の使いやすさおよび信頼性を高めることができる。
【0020】
様々な例示的な実施形態において、ユーザ交換可能なカートリッジはまた、分析装置の特徴とインターフェース接続する様々な特徴を含む。例えば、ユーザ交換可能なカートリッジの流体工学部は、弁および/または流体移送装置などの流体工学部の特徴を操作するように構成された分析装置の作動部とインターフェース接続する特徴を含むことができる。
【0021】
様々な例示的な実施形態において、生物学的分析装置は、ユーザ交換可能なカートリッジの様々な部分の温度を調節して生物学的分析装置の分析性能を高め、生物学的分析装置のワークフローを簡素化するように構成された特徴を含む。例えば、分析装置は、ユーザ交換可能なカートリッジの一部を周囲温度よりも高い温度に維持するように構成された温度調節部を含んでもよい。例えば、分析装置は、サンプルの分析を促進するために、ユーザ交換可能なカートリッジの毛細管部分を高温に温めるように構成されてもよい。生物学的分析装置は、ユーザ交換可能なカートリッジの一部を周囲よりも低い温度に維持するように構成された冷却装置を含んでもよい。例えば、分析装置は、ポリマー保管容器を周囲温度よりも低く冷却して、ユーザ交換可能なカートリッジのポリマー保管容器に保管されたポリマー分離材料の使用可能寿命を最大化(例えば、増加)するように構成されてもよい。
【0022】
いくつかの例示的な実施形態では、生物学的分析装置は、ワークフローの一部を自動化する様々な特徴を含む。例えば、分析装置内にユーザ交換可能なカートリッジを設置するために、ユーザは、分析装置のカートリッジ保持部分にカートリッジを挿入してもよく、カートリッジ保持部分は、使用のためにカートリッジを分析装置に完全に設置するように自動で移動してもよい。
【0023】
ユーザ交換可能なカートリッジおよび分析装置はまた、カートリッジの使用可能寿命に関する情報をユーザまたは他の人員に提供する(例えば、有効期限を提供する)ように構成された特徴を含んでもよい。例えば、一実施形態では、ユーザ交換可能なカートリッジは、無線周波数識別タグ、バーコード、または分析装置によって読み取り可能な他の情報などの識別装置を含み、これらは、次いで、ユーザインターフェースを通じてカートリッジに関する情報を提供し得る。カートリッジに関するそのような情報としては、例えば、カートリッジが使用された回数、カートリッジがまだ使用され得る回数、カートリッジの設置以来の時間、カートリッジの有効期限などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
そのような特徴は、生物学的分析装置に関連付けられたユーザワークフローを簡素化し、生物学的分析装置の性能に悪影響を与えるユーザエラーの可能性を減らし、生物学的分析装置で分析を実行する個々のユーザに必要な訓練および経験を減らすことができる。他の生物学的分析装置の機能に関する追加の説明は、国際公開第WO2015/134945A1号および同第WO2015/134943A1号に含まれており、そのそれぞれの内容全体は参照により本明細書に組み込まれている。
【0025】
図1は、本開示の例示的な実施形態による生物学的分析装置100の概略図を示している。生物学的分析装置100は、毛細管電気泳動を実行するように構成され、生物学的分析装置100のユーザ(例えば、オペレータまたは他の人員)によって容易に交換可能に構成されたカートリッジ102を含む。カートリッジ102は、生物学的分析装置の様々な要素を、多機能で統合された、容易に交換可能なユニット内に組み合わせる。例えば、カートリッジ102は、1つ以上の毛細管104(
図1には1つのみを示す)、1つ以上の毛細管104のカソード端に結合された1つ以上のカソード106、および流体工学部110を含む。カートリッジ102はまた、生物学的分析装置100の光学検出システム(図示せず)とインターフェース接続するように構成された様々なコンポーネントを含む検出部112を含む。
【0026】
流体工学部110は、分離媒体(例えば、ポリマーゲル)および緩衝液を含む1つ以上の保管装置(例えば、リザーバ、容器)を含む。
図1の例示的な実施形態では、流体工学部110は、緩衝液リザーバ114および分離媒体容器118を含む。流体工学部110は、緩衝液リザーバ114および分離媒体容器118を1つ以上の毛細管104のアノード端と流体的に結合するように構成されたマニホールド120をさらに含む。マニホールド120は、例えば、
図4~
図6に関連して以下により詳細に議論されるように、1つ以上の弁および1つ以上の流体移送装置を含むことができる。
【0027】
生物学的分析装置100は、流体工学部110とインターフェース接続するように構成された作動部122を含む。例えば、作動部122は、
図12および
図13に関連して詳細に説明されるように、流体工学部110の1つ以上の弁および/または流体移送装置などの1つ以上の流体制御装置を作動させるように構成され得る。
【0028】
生物学的分析装置100は、緩衝液リザーバ114に含まれる緩衝液と電気的に結合されたカソード106とアノード116との間に電位を生成するように構成された電圧部124を含む。使用中、
図14A~
図14Cに関連して議論されるように、1つ以上の毛細管にポリマー分離媒体が充填され、1つ以上の毛細管104とアノード116との間に緩衝液を介して導電性流体接続が確立される。同じく緩衝液に浸されているカソード106とアノード116との間に電圧差が印加される。当業者にはよく知られているように、電圧差により、帯電した検体は、分離媒体が充填された1つ以上の毛細管104を通って移動し、検体は、分離し、生物学的分析装置100の光学検出器装置を使用して検出部112で検出される。
【0029】
生物学的分析装置100は、1つ以上の毛細管104の温度を調節する温度調節部126をさらに含む。温度調節部126は、カートリッジ102と嵌合するように構成されており、1つ以上の毛細管104の温度を所望の値に維持するために加熱要素128、温度センサ(例えば、サーミスタ)130、およびカートリッジ102を通る温かい空気の流れ132を生成する空気移動装置(図示せず)を含む。
【0030】
ユーザ交換可能なカートリッジ102に関連付けられたコンポーネントは、カートリッジハウジングに収容されてもよく、カートリッジハウジングは、生物学的分析装置100の特徴とインターフェース接続するように構成された1つ以上の特徴を含んでもよい。例えば、カートリッジ102の様々な特徴は、生物学的分析装置100の特徴とインターフェース接続して、カートリッジ102およびそれに関連付けられたコンポーネントの正しい位置決めおよび位置合わせを確保し、生物学的分析装置100が流体工学部110のコンポーネントを作動させることを可能にすることができる。さらなるインターフェース接続特徴により、カートリッジ102が、温度調節部126および電圧部124とインターフェース接続することが可能になる。
【0031】
カートリッジ102と生物学的分析装置100との間のインターフェース、およびカートリッジ102と生物学的分析装置100との間の機能コンポーネントの具体的な分割は、生物学的分析装置の使用および信頼性ある動作を促進するように構成および選択され得る。例えば、本開示は、生物学的分析装置100およびカートリッジ102の構成が、以下でさらに議論されるように、ユーザエラーによる故障モードを除去しないとしても軽減するように選択されることを企図する。
【0032】
ここで
図2を参照すると、ユーザ交換可能なカートリッジ202の例示的な実施形態の斜視図が示されている。カートリッジ202は、流体工学部210、検出部212、および1つ以上の毛細管204(
図3に示される)の端部が固定される導電性スリーブ236を含むカソードブロック234を含む。ユーザ交換可能なカートリッジ202の様々なコンポーネントは、以下でさらに詳細に議論されるように、カートリッジ202を生物学的分析装置100内で位置合わせするために生物学的分析装置100(
図1)の特徴とインターフェース接続するように構成された位置合わせスロット240および位置合わせ穴242などの位置合わせ特徴を含むハウジング238に収容される。
【0033】
ユーザ交換可能なカートリッジ202は、使用中(例えば、電気泳動プロセス中)に1つ以上の毛細管204の温度調節を容易にするために、生物学的分析装置の特徴とインターフェース接続するように構成された特徴を含んでもよい。例えば、
図3の例示的な実施形態に示されるように、ユーザ交換可能なカートリッジ202は、生物学的分析装置100(
図1)の温度調節部126(
図1)などの、生物学的分析装置の温度調節部上の対応するポートと結合するように構成された加熱ポート237を含む。
【0034】
ここで
図3を参照すると、ユーザ交換可能なカートリッジ202の側面図が示されており、その内部部分を見ることができるようにハウジング238(
図2)の片側が省略されている。
図3には、流体工学部210からカソードブロック234へ、そして導電性スリーブ236内へと延びる1つ以上の毛細管204が見える。1つ以上の毛細管204は、透明範囲、UV透過性、および毛細管を介した光学的検出を強化する他の特性などの好適な光学的特性を有する材料から作製され得る。1つ以上の毛細管204に好適な材料の1つの非限定的な例は、溶融シリカである。
【0035】
1つ以上の毛細管204は、検出部212を通って延びている。いくつかの実施形態では、1つ以上の毛細管204の長さの少なくとも一部は、ポリマー(例えば、ポリイミドまたは別のポリマー)などの保護材料で外部からコーティングされている。保護材料コーティングは、スクラッチ、破損などの損傷から1つ以上の毛細管204を保護することができる。保護材料コーティングは1つ以上の毛細管204の材料と比較して異なる光学品質を有することがあるため、保護材料コーティングが使用される場合、1つ以上の毛細管204は、生物学的分析装置100(
図1)の使用中に1つ以上の毛細管204の光学検出(例えば、検体毛細管内の検体の撮像)を容易にするために、少なくとも1つ以上の毛細管204が検出部212を通過するところに非コーティング部分を含むことができる。
【0036】
さらに
図3を参照すると、いくつかの例示的な実施形態では、ユーザ交換可能なカートリッジ202は、ユーザ交換可能なカートリッジ202に関する情報を提供するコンポーネントを含む。例えば、ユーザ交換可能なカートリッジ202は、無線周波数識別(RFID)タグ239を含むことができる。RFIDタグを使用すると、生物学的分析装置100は、ユーザに(例えば、生物学的分析装置100のユーザインターフェースを介して)ユーザ交換可能なカートリッジ202に関する情報を提供することができる。例えば、そのような情報としては、ユーザ交換可能なカートリッジ202がいつ生物学的分析装置内に設置されたかに関する情報、ユーザ交換可能なカートリッジ202が使用された回数、ユーザ交換可能なカートリッジ202の有効期限、および他の情報が挙げられるが、これらに限定されない。識別情報は
図3のRFIDタグ239によって提供されるが、他の例示的な実施形態では、識別情報は、バーコードによって、カートリッジのシリアル番号によって、QRコード(登録商標)によって、または情報を伝達するためにスキャン、読み取り、もしくは他の方法で送信されるのに適切な任意の他の識別機構によって提供されてもよい。
【0037】
ここで
図4を参照すると、ユーザが交換可能なカートリッジ202の流体工学部210は、明確にするために分離して示されている(すなわち、カートリッジ202に接続されていない)。示される例示的な実施形態では、流体工学部210は、1つ以上の毛細管204と流体連通する流体送達マニホールド244を含む。流体送達マニホールド244はまた、1つ以上の容器またはリザーバと選択的に流体連通している。例えば、
図4の実施形態では、流体送達マニホールド244は、ポリマー分離媒体を含むように構成された分離媒体容器(例えば、ポーチ)246、および緩衝液(例えば、緩衝溶液)を含むように構成された緩衝液リザーバ248と流体連通している。分離媒体容器246および緩衝液リザーバは、生物学的分析装置およびカートリッジを使用する複数の別個の使用または実行のために十分なポリマー分離媒体および緩衝液を含むことができる。例えば、ユーザ交換可能なカートリッジ202は、50回超の使用、100回超の使用などに十分なポリマー分離媒体を含んでもよい。例示的な実施形態では、ユーザ交換可能なカートリッジ202は、125回の使用に十分なポリマーを分離媒体容器内に含む。
【0038】
流体工学部210は、流体制御装置を含み得る。例えば、流体工学部210は、分離媒体容器246と緩衝液リザーバ248を流体通路を介して1つ以上の毛細管204に選択的に接続する流体送達マニホールド244内の流体通路(
図5に関連して例示されている)を開閉するように構成された弁250、252をさらに含む。流体工学部210は、分離媒体容器246から流体送達マニホールド244を介して1つ以上の毛細管204への分離媒体の移送を促進するように構成された流体移送装置254をさらに含む。流体移送装置254は、容積式ポンプなどのポンプであってもよい。
図4の例示的な実施形態では、流体移送装置254はシリンジポンプである。
図4の実施形態では、カートリッジ内の流体制御装置は受動装置である。別の言い方をすれば、カートリッジ内の流体制御装置は、流体を操作してある部分から別の部分に流すのに必要な推進力を引き起こすために、生物学的分析装置の作動部122(
図1)などの外部源からの力を必要とする場合がある。しかし、この配置は単なる例であり、他の実施形態によるカートリッジは、カートリッジの流体制御装置を作動させるための作動装置の少なくとも一部を含んでもよい。
【0039】
アノード216は、緩衝液リザーバ248内に延びて、緩衝液リザーバ248と1つ以上の毛細管204が以下の
図14A~
図14Cに関連して議論されるように流体連通するとき、電圧部124(
図1)と1つ以上の毛細管204との間に導電経路を作り出す。緩衝液リザーバは、緩衝液リザーバ248内の過剰な圧力を解放するように構成された逃がし弁217を含む。例えば、使用中、緩衝液を流れる電流が熱を発生させ、緩衝液を部分的に蒸発させる場合がある。逃がし弁217は、過剰な圧力を解放し、それにより、緩衝液リザーバ248または装置の他の部分の故障を防ぐ。
【0040】
ここで
図5を参照すると、流体送達マニホールド244(
図4)の概略平面図が示されている。この例示的な実施形態では、流体送達マニホールド244は、毛細管ポート558を流体移送装置254および弁250、252と接続する流体チャネル556を含む。第2の流体チャネル560は、弁250と分離媒体容器246との間の流体連通を提供し、第3の流体チャネル562は、弁252と緩衝液リザーバ248との間の流体連通を提供する。
【0041】
例示的な実施形態では、流体送達マニホールド244は、製造を促進するために、流体工学部210の他の部分と一体的に構築されている。さらに、いくつかの例示的な実施形態では、流体送達マニホールド244は、製造を促進するために別個のコンポーネントを含み、別個の部分は、流体送達マニホールド244および流体工学部210の他の部分を作成するように接合されている。
【0042】
例えば、ここで
図6を参照すると、例示的な実施形態では、流体送達マニホールド244(
図4)は、第1の部分664および第2の部分668を含む。第1の部分664は、弁250、252用の継手650、652、流体移送装置254用の継手654、緩衝液リザーバ648、および分離媒体容器246(
図4)用の継手646などの様々な特徴を含む。この実施形態では、流体チャネル556、560、および562(
図5)は、流体送達マニホールド244の第1の部分664の平面状表面666に開いたチャネルとして形成されている。他の実施形態では、流体チャネル556、560、および562は、閉じたチャネルとして形成されてもよく、または開いたチャネル部分および閉じたチャネル部分を含んでもよい。
【0043】
第2の部分668は、流体送達マニホールド244の第1の部分664の平面状表面666と嵌合するように構成された相補的な平面状表面670を有してもよい。第1の部分664および第2の部分668は、耐高圧マニホールドを形成するように互いに嵌合され、溶媒結合されてもよい。いくつかの実施形態では、高精度の平面状表面および第1の部分664と第2の部分668との間の強固な嵌合接続を確保するために、第1の部分664は成形によって製造されてもよく、第2の部分668は機械加工によって製造されてもよい。他の実施形態では、流体送達マニホールド244は、成形、機械加工、積層造形などの方法によって単一のコンポーネントまたは複数のコンポーネントとして形成されてもよい。流体送達マニホールド244は、ポリマーなどの材料、金属、または他の材料を含んでも(例えば、それらから作製されても)よい。例示的な実施形態では、流体送達マニホールド244はポリ(メチルメタクリレート)を含む。
【0044】
ここで
図7および
図8を参照すると、カートリッジ202の検出部712が示されている。例示的な実施形態では、検出部712は、検出部712と生物学的分析装置100(
図1)の光学検出器装置(例えば、
図10に示される光学検出器装置988)との位置合わせを容易にするために、カートリッジ202に対して移動可能である。そのような移動可能性を達成するために、検出部712は、カートリッジ202と生物学的分析装置100との間の潜在的な位置合わせ不良を補償するように、検出部712をカートリッジ202に柔軟に結合する様々なコンポーネントと共に構成されてもよい。
【0045】
例えば、
図7~
図8の例示的な実施形態に示されるように、検出部712は、1つ以上の毛細管204が固定される透明ブロック768を含む。透明ブロック768は、例えば、ガラスで作製されてもよく、保持具774によって取り付けプレート772に結合されるブロックマウント770に取り付けられる。取り付けプレート772は、カートリッジ202のハウジング238(
図2)に固定される。圧縮バネ776は、ブロックマウント770と取り付けプレート772との間に位置し、それにより、ブロックマウント770と取り付けプレート772との間の相対移動を可能にする。他の実施形態では、ブロック768は、ポリマー材料などの他の可撓性材料でハウジング238に取り付けられてもよく、または別の方法でハウジング238に対して移動するように構成されてもよい。あるいは、いくつかの実施形態では、ブロック768は、ハウジング238にしっかりと固定されてもよく、検出部712と生物学的分析装置100(
図1)の光学検出システムとの間の潜在的な位置合わせ不良は、生物学的分析装置の光学検出システムの移動によって補償されてもよい。
【0046】
ここで
図9を参照すると、ユーザ978によって生物学的分析装置900に挿入されているユーザ交換可能なカートリッジ202が示されている。生物学的分析装置は、カートリッジ202が挿入される区画へのアクセスを可能にするアクセスドア980を含む。生物学的分析装置900は、電気泳動で使用するための生物学的分析装置900内のユーザ交換可能なカートリッジ202の設置の1つ以上の側面を自動化するように構成されてもよい。生物学的分析装置900は、ディスプレイ981などの、ユーザ978による操作を容易にするための追加の特徴を含んでもよく、これは、例示的な実施形態では、例えばタッチスクリーンまたは他のユーザインターフェースを含む。追加または代替として、生物学的分析装置900は、例えば、生物学的分析装置900のユーザインターフェースの一部を形成するデスクトップもしくはラップトップコンピュータ、タブレットデバイス、または他のコンピューティングデバイスと接続するように構成されてもよい。
【0047】
ここで
図10を参照すると、生物学的分析装置900の部分的な内部図が示されている。例示的な実施形態では、生物学的分析装置900は、ユーザ交換可能なカートリッジ202(
図2)の特徴とインターフェース接続するように構成された様々な特徴を含む。例えば、生物学的分析装置900は、ユーザ交換可能なカートリッジ202がユーザ978によって生物学的分析装置900に挿入されるときに、生物学的分析装置900内でユーザ交換可能なカートリッジ202を位置決めおよび/または操作するように構成された特徴を含んでもよい。生物学的分析装置900は、カートリッジ202を生物学的分析装置900に対して保持および/または位置合わせするように構成されたカートリッジ保持部分を含んでもよい。例えば、
図10の例示的な実施形態では、生物学的分析装置900は、カートリッジハウジング238のスロット240(
図2)とインターフェース接続するように構成された突起984を有するカートリッジ位置合わせ構造982を含む。カートリッジ位置合わせ構造982は、使用のためにカートリッジ202を適所に自動的に移動させるように構成された移動可能なキャリッジアセンブリ983の一部を形成する。
【0048】
生物学的分析装置900は、カートリッジ202が生物学的分析装置900内に挿入されるときに分離媒体容器246(
図2)を取り囲んで分離媒体を比較的低い温度範囲に維持するように構成された冷蔵部986を含み、それにより、ユーザ978が分離媒体容器246を各使用の間に冷蔵するために取り外すことを要求するのではなく、ポリマーの使用可能寿命を延ばし、かつ運転と運転の間にカートリッジ202を生物学的分析装置900内に残すことを可能にする。例示的な実施形態では、冷蔵部986は、分離媒体が室温に保持された場合の使用可能寿命と比較して分離媒体の使用可能寿命を延ばすように、分離媒体を周囲温度よりも低く維持する。例えば、冷蔵部986は、ポリマー分離媒体を摂氏8度~摂氏12度の範囲内の温度に維持するように構成されてもよい。例示的な実施形態では、ユーザ交換可能なカートリッジは、生物学的分析装置900内に保管されたときに月単位で測定される使用可能寿命を有する。例えば、ポリマーの使用可能寿命は1か月超、2か月超、またはそれ以上であってもよい。例えば、
図10の例示的な実施形態では、カートリッジ202が生物学的分析装置900内に保管され、冷蔵部986を介して比較的低い温度に保持される場合、分離媒体は、4か月の使用可能寿命を有する。少なくとも4か月の分離媒体およびカートリッジの使用可能寿命は、本開示の範囲内とみなされる。
【0049】
生物学的分析装置900内でのカートリッジ202および関連付けられた分離媒体容器246の保管を可能にすることは、使いやすさおよび汚染の防止に関連する利点を提供する。例えば、従来の装置では、ユーザは装置を使用するたびにポリマー分離媒体を含む容器を装置に接続しなければならず、分析の終了時には、例えば分析装置とは別の冷蔵庫に保管するために、ポリマー分離容器を切り離さなければならない。本明細書で開示されるように、ポリマー分離媒体を生物学的分析装置内のカートリッジ内に長期間保管できるようにすることで、生物学的分析装置を使用するワークフローが簡素化され、空気または他の汚染物質が装置の流体部に入る可能性のある経路が排除され、それによりユーザの作業負荷が軽減され、装置の信頼性が改善される。
【0050】
図10はまた、カートリッジ202の検出部712(
図7)とインターフェース接続して電気泳動手順中に毛細管204内の検体からの光学情報を検出および収集することを促進するように構成された光学検出器装置988の一部を示す。光学検出器装置988は、
図15に関連してさらに詳細に議論される。
図10はまた、カートリッジ202とインターフェース接続して、電気泳動手順中に1つ以上の毛細管204(
図3)を加熱するように構成された温度調節部990を示す。温度調節部990は、
図19に関連して以下でさらに議論される。
【0051】
図11を参照すると、カートリッジ位置合わせ構造982に結合されたカートリッジ202が示されている。上述のように、生物学的分析装置900は、生物学的分析装置900内で使用するためにカートリッジ202を設置する手順の少なくとも一部を自動化するように構成されてもよい。例えば、
図11に示される例示的な実施形態では、カートリッジ202が挿入され、カートリッジ位置合わせ構造982がカートリッジ202の位置合わせスロット240に摺動すると、生物学的分析装置900は、カートリッジ202を使用のために適所に自動的に移動させるように構成されている。
図11では、生物学的分析装置900は、キャリッジアセンブリ983のねじ部分(図示せず)を通る親ねじ992を回転させるモータ(図示せず)を作動させてキャリッジアセンブリ983およびカートリッジ202を生物学的分析装置900で使用するために適所に移動させることなどにより、
図11に示される矢印の方向にカートリッジ202を移動させるように構成されている。
図11の例示的な実施形態では、ユーザは、カートリッジ202を第1の方向に(例えば、カートリッジ202の長さに沿って)挿入し、生物学的分析装置900は、カートリッジを第1の方向に垂直な第2の方向に自動的に移動させて(例えば、
図11に示される矢印の方向にカートリッジ202を移動させて)、カートリッジ202を生物学的分析装置900の様々なインターフェースと結合し、以下で説明するように生物学的分析装置を使用する準備をするように構成されている。当業者は、カートリッジを他の任意の方向または方向の組み合わせに移動させてカートリッジを生物学的分析装置と結合することが本開示の範囲内であることを理解するであろう。
【0052】
例えば、
図12および
図13は、ユーザ交換可能なカートリッジの流体工学部1310(
図13)(例えば、
図2および
図4に示されるカートリッジ202の流体工学部210)とインターフェース接続するように構成された作動部1222(
図12)の詳細な斜視図を示す。作動部1222は、弁250および252ならびに流体移送装置254(例えば、シリンジポンプ)などの流体工学部1310のコンポーネントに作用する複数の作動部材1294を含む。この例示的な実施形態では、作動部材1294は、弁250、252、および流体移送装置254のシャフト1397上をそれぞれ摺動するフォーク状部材1296を含む。作動部材1294の動き(
図12および
図13の見方では概ね上方および下方への)は、シャフト1397上のフランジ253とフォーク状部材1296との間の相互作用により弁250、252に伝達される。弁250、252の動きは、流体チャネル556、560、および562(
図5)間の通路を開閉し、それにより、
図14A~
図14Cに関連して議論されるように、1つ以上の毛細管を分離媒体容器246および緩衝液リザーバ248と流体的に結合または結合解除することができる。
【0053】
図12および
図13の例示的な実施形態では、作動部1222は、アノードコネクタ1295を含む。アノードコネクタ1295は、カートリッジ202が生物学的分析装置900内に設置されたとき、アノード1316(
図13)に接触し、アノード1316と生物学的分析装置の電圧部124(
図1)との間に導電経路を作り出すように構成されている。
【0054】
加えて、作動部1222は、カートリッジ202の流体工学部1310の相補的な位置合わせ特徴とインターフェース接続するように構成された位置合わせ特徴を含む。例えば、
図12および
図13の実施形態では、位置合わせピン1257は、カートリッジ202(
図2)が生物学的分析装置900(
図9)内に設置されたとき、流体工学部1310内の位置合わせ穴1340に入り、作動部1222と流体工学部1310との間の位置合わせを容易にするように構成されている。当業者は、作動部1222と流体工学部1310の適切な位置合わせを達成するために、様々な他の位置合わせ機構を使用できることを理解するであろう。
【0055】
図14A~
図14Cは、作動部1222(
図12)の作動部材1296の移動および位置に基づいて、生物学的分析装置100(
図1)を使用して電気泳動を準備および実行する際に使用するための弁250、252の様々な状態を示す。
図14Aでは、弁252は閉じており、緩衝液リザーバ248と流体チャネル556との間の流れが遮断される一方、弁250は開いており、分離媒体容器246と流体チャネル556との間の流れが流体チャネル560を通ることが可能になる。流体移送装置254に関連付けられた作動部材1294は、ポリマーを流体移送装置254内に引き込むように圧力を生成する位置へと流体移送装置254を作動させる(例えば、シリンジポンプシャフトを上方に移動させる)。
【0056】
図14Bでは、分離媒体容器246に関連付けられた弁250は閉じており、流体移送装置254に関連付けられた作動部材1294は、ポリマー分離媒体を流体移送装置254から毛細管ポート558を介して1つ以上の毛細管204(
図3)に押し込むように、流体移送装置254内の圧力を増加させる位置へと(例えば、下方に)移動する。
【0057】
図14Cでは、弁252は開いており、緩衝液が流体チャネル556に流れ込むことを可能にし、1つ以上の毛細管204と緩衝液リザーバ248(
図4)のアノード1316(
図13)との間に導電経路が作成される。アノード1316と1つ以上の毛細管204内のポリマー分離材料との間に確立された導電経路により、電気泳動分析は、
図1に関連して議論したように電圧差の印加により継続することができる。作動部材1294の動きは、生物学的分析装置900のコントローラまたは他のプロセッサに実装されるソフトウェアアルゴリズムによって制御されるか、またはユーザからの最小入力で電気泳動手順を実行するように別の方法で自動化されてもよい。
【0058】
ここで
図15を参照すると、生物学的分析装置900の光学検出器装置988が示されている。光学検出器装置988は、例えば、検体毛細管内の検体を照射するように構成された1つ以上の光源(例えば、レーザ)、および検体からの光(例えば、蛍光)放出を検出するように構成された1つ以上の検出器を含んでもよい。ユーザ交換可能なカートリッジ202が生物学的分析装置900内に設置されると、光学検出器装置988は、
図16に示されるカートリッジハウジング238の凹部1600内に嵌合し、検出部212の少なくとも一部は、光検出器装置988の凹部1502内に受容される。例えば、
図15および
図16の実施形態では、ブロック768およびブロックマウント770は、光学検出器装置988の凹部1502内に受容される。
図7および
図8に関連して上で議論したように、ブロック768は、カートリッジハウジング238に柔軟に取り付けられ、それにより光学検出器装置988に対するカートリッジ202の位置合わせ不良を補償する。
図15および
図16の例示的な実施形態では、光学検出器装置988および検出部212は、
図11に関連して議論したように、カートリッジ202およびキャリッジアセンブリ983の移動によって一緒にされる。
【0059】
ここで
図17を参照すると、生物学的分析装置900(
図9)のカソードコネクタ部分1704は、電圧部(
図1に示される電圧部124など)と1つ以上の毛細管204(
図3)のカソード端との間に導電経路を形成するように構成されている。例えば、
図17では、カソードコネクタ部分1704は、カソードブロック234を通して導電性スリーブ236に接触するように構成されたカソードコネクタピン1705の配列を含む。カソードブロック234は、カートリッジ202(
図2)のハウジング236と移動可能に結合されるように構成されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、カソードブロック234は、
図7および
図8に関連して議論した検出部712と同様の方法でハウジング236に対して移動可能に構成されている。例えば、カソードブロック234は、バネまたは他の可撓性部材によってハウジング236に結合されてもよい。位置合わせピン1706は、カソードコネクタピン1705に近接して配置されており、カソードブロック234の位置合わせ穴1708内に受容されて導電性スリーブ236をカソードコネクタピン1705と位置合わせする。カソードコネクタピン1705は、生物学的分析装置900の電圧部124(
図1)に動作可能に接続されている。カソードコネクタピン1705が導電性スリーブ236と接触しており、
図14Cに関連して議論したように緩衝液弁252が開いている場合、生物学的分析装置900の電圧部124は、アノード(例えば、
図1のアノード116)とカソード106(
図1)との間に電圧差を生成して、
図1に関連して議論したように1つ以上の毛細管104を介して検体を移動させる。
【0060】
ここで
図19を参照すると、カートリッジ202および生物学的分析装置100(
図1)の温度調節部1910の例示的な実施形態の内部側面図が示されている。温度調節部1910は、加熱要素1912(例えば、電気抵抗ヒーター、化学加熱装置、または別の加熱装置)および空気移動装置1914(例えば、送風機、ファンなど)を含む。温度調節部1910は、カートリッジ202と結合し、カートリッジ202を通る温かい空気の流れ1916を生成して、生物学的分析装置900の使用中に1つ以上の毛細管204(
図3)を所望の温度に温める。例えば、
図19の実施形態では、温度調節部1910は、ユーザ交換可能なカートリッジ202のハウジング238のポート237(
図2)と位置合わせされるポート1917を含む。生物学的分析装置900の使用中、温度測定装置1918(例えば、サーミスタ、熱電対を含む回路など)は、気流の温度を監視し、例えば、空気流量を調整すること、加熱要素1912を通る電流を調整すること、加熱要素1912のオン/オフを切り替えることにより、または他の方法により、必要に応じて温度を調整する。非限定的な例として、温度調節部1910は、1つ以上の毛細管204を、例えば摂氏60度の公称温度に維持するように構成されてもよい。温度調節部1910は、1つ以上の毛細管204を公称温度の範囲内、例えば、摂氏±0.5度、摂氏±1度の範囲、またはより狭いもしくはより広い温度範囲内に維持するように構成されてもよい。
【0061】
ユーザ交換可能なカートリッジ202は、生物学的分析装置900(
図9)上の、またはそれから外されたカートリッジ202の長期保管を可能にするように構成されてもよい。例えば、カートリッジにカバーおよび/またはプロテクターを取り付けて、カートリッジ202が生物学的分析装置900から外されて保管されている間または輸送中に、カートリッジ202の様々な部分の汚染または乾燥を防ぐことができる。例えば、
図20に示されるように、カートリッジ202には、微粒子汚染物が1つ以上の毛細管204および/またはガラスブロック768上に集まるのを防ぐために、検出部712(
図7)上にダストカバー2020が取り付けられてもよい。ダストカバー2020は、例えば、ポリマー材料、繊維材料、または任意の他の好適な材料から作製されてもよく、カートリッジハウジング238の凹部1600(
図16)内への圧入、締まり嵌め、スナップ嵌めなどのために構成されてもよい。
【0062】
引き続き
図20を参照すると、例示的な実施形態では、ユーザ交換可能なカートリッジ202には、導電性スリーブ236を損傷または汚染から保護するように構成されたカソードプロテクター2022も取り付けられている。例えば、カソードプロテクター2022は、ユーザ交換可能なカートリッジ202のハウジング238に対してシールを形成するように構成されてもよい。さらに、輸送および/または保管中に導電性スリーブ236の潤いを保つために、カソードプロテクター内にポリマーまたはゲル材料を配置してもよい。
【0063】
本開示は、全体的なワークフローおよび使用を容易にする毛細管電気泳動を実行するように構成された生物学的分析装置を提供する。例えば、本装置は、以前の装置と比較して、使用のための訓練を少なくし、ユーザ側の集中的な操作活動を少なくし得る。本開示の様々な例示的な実施形態は、他の装置と比較して、サンプル分析の準備を行いサンプル分析を実行するためにユーザが完了しなければならないアクションの数を減らす。
【0064】
前述の例示的な実施形態は、明確さおよび理解の目的のためにある程度詳細に記載されているが、当業者であれば、本明細書の開示および特許請求の範囲から逸脱することなく、構造、形式、方法、および詳細において様々な変更がなされ得ることが、本開示を読むことにより明らかになるであろう。例えば、上述の全ての技術、装置、システム、および方法は、様々な組み合わせで使用され得る。