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特許7116749付加製造装置の出力放射源のヘッドシステムの較正
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】付加製造装置の出力放射源のヘッドシステムの較正
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20220803BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20220803BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20220803BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220803BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20220803BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/153
B29C64/264
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019570361
(86)(22)【出願日】2018-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-13
(86)【国際出願番号】 EP2018066309
(87)【国際公開番号】W WO2018234336
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】1755571
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517160927
【氏名又は名称】アッドアップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ロブラン アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ニケーズ ジャン-ピエール
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-107153(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0192868(US,A1)
【文献】米国特許第06175413(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第106553338(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00、30/00、50/00
B22F 10/00、12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造装置の出力放射源のヘッドシステムの較正のためのキットであって、
複数の基準マークを有する較正プレートと、
前記放射源の放射に反応する少なくとも1つの材料から形成された発射支持体と、
を備え、
前記発射支持体は、前記較正プレートの前記基準マーク上の適所に存在する時に、前記較正プレートの前記基準マークを可視状態のままにし、
前記キットは前記付加製造装置の前記出力放射源を備え、前記出力放射源は前記ヘッドシステムを有し、
前記発射支持体は、前記較正プレートの前記複数の基準マークと重なり合って、前記発射支持体が前記較正プレート上の適所に存在する時に前記基準マークを可視状態のままにするように分布する複数の窓を含み、
前記出力放射源及び前記ヘッドシステムは、前記発射支持体上で、前記較正プレートの各基準マークに対して、対応する基準マークの直近の所定の理論的目標点での発射を行うように制御されるようになっており、
前記発射は、予め定められた発射パターンに沿って分布する複数の発射点の連続として実行される、
ことを特徴とするキット。
【請求項2】
前記基準マークは、前記較正プレート全体にわたって分布し、前記発射支持体は、前記較正プレートに対応するような寸法を有する、
請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記発射支持体にわたって動かすことができる可動光学測定装置を備える、
請求項1又は2のいずれかに記載のキット。
【請求項4】
前記光学測定装置が取り付けられるように意図された二重レール支持体を備える、
請求項3に記載のキット。
【請求項5】
前記較正プレート上の基準マークの数は65×65以下である、
請求項1から4の1項に記載のキット。
【請求項6】
付加製造装置の出力放射源のヘッドシステムの較正のためのキットであって、
複数の基準マークを有する較正プレートと、
前記放射源の放射に反応する少なくとも1つの材料から形成された発射支持体と、
を備え、
前記支持体は、前記較正プレートの前記基準マーク上の適所に存在する時に、前記較正プレートの前記基準マークを可視状態のままにし、
前記キットは前記付加製造装置の前記出力放射源を備え、前記出力放射源は前記ヘッドシステムを有し、
前記発射支持体は、前記較正プレートの前記複数の基準マークと重なり合って、前記発射支持体が前記較正プレート上の適所に存在する時に前記基準マークを可視状態のままにするように分布する複数の窓を含み、
前記出力放射源及び前記ヘッドシステムは、前記発射支持体上で、前記較正プレートの各基準マークに対して、対応する基準マークの直近の所定の理論的目標点での発射を行うように制御されるようになっており、
前記発射は、予め定められた発射パターンに沿って分布する複数の発射点の連続として実行され、
前記複数の発射点のうちのいくつかは、異なる焦点制御により生成される、
ことを特徴とするキット。
【請求項7】
前記基準マークは、前記較正プレート全体にわたって分布し、前記発射支持体は、前記較正プレートに対応するような寸法を有する、
請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記発射支持体にわたって動かすことができる可動光学測定装置を備える、
請求項6又は7のいずれかに記載のキット。
【請求項9】
前記光学測定装置が取り付けられるように意図された二重レール支持体を備える、
請求項8に記載のキット。
【請求項10】
前記較正プレート上の基準マークの数は65×65以下である、
請求項6から8の1項に記載のキット。
【請求項11】
付加製造装置の出力放射源のヘッドシステムの較正方法であって、前記システムの制御に適用すべき補正テーブルを決定するために、
複数の基準マークを示す較正プレートを前記付加製造装置内に配置するステップと、
前記放射源の放射に反応する少なくとも1つの材料から形成された、前記較正プレートの前記基準マーク上の適所に存在する時に前記較正プレートの前記基準マークを可視状態のままにする発射支持体を配置するステップと、
前記支持体を少なくとも1つの較正パターンでマーキングするために前記放射源を制御するステップと、
前記較正パターン及び少なくとも1つの基準マークの少なくとも1つの画像を取り込むステップと、
このように取得された前記1又は複数の画像に基づいて補正テーブルを決定するステップと、
を実行し、前記較正プレート及び前記発射支持体は、請求項1から10の1項に記載のキットのプレート及び発射支持体であり、
前記放射源は、所定の理論的目標点に理論的に中心を置く複数の較正パターンのマークアウトを前記発射支持体上に形成するために前記ヘッドシステムを使用して制御され、前記理論的目標点は、前記発射支持体にわたって、前記較正プレートの前記基準マークを可視状態のままにする前記窓の直近に分布し、
前記取り込みステップ中に、一方では前記基準マークが、他方では前記理論的目標が前記直近に存在する領域の少なくとも1つの画像を取り込むために、前記較正プレートの基準マーク毎に前記発射支持体にわたって光学測定装置が動かされ、
このように取得された前記1又は複数の画像が、較正パターンを識別して該パターンに関する少なくとも1つの情報を決定するために基準マーク毎に処理され、前記基準マークのための決定された前記較正パターン情報に基づいて、前記ヘッドシステム制御に適用すべき補正が決定される、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記取得された1又は複数の画像は、基準マーク毎に、該基準マークの正規直交基準フレーム内の発射パターンの中心位置を導出し、該中心位置と前記理論的目標との間のオフセットを決定するために処理される、
請求項11に記載の較正方法。
【請求項13】
前記較正プレートは、前記補正テーブル内の点の数に等しい数の基準マークを含む、
請求項11又は12に記載の較正方法。
【請求項14】
前記補正テーブルを決定するために、前記較正プレートの基準フレームを前記ヘッドに関連する基準フレームに変換する処理が使用される、
請求項11から13の1項に記載の方法。
【請求項15】
前記処理は、前記較正プレート上の2つの所与の基準マークに対応するパターンを識別するステップと、該識別から、前記較正プレートの前記基準フレームと前記ヘッドに関連する基準フレームとの間の並進及び角回転に関するオフセットを決定するステップとを含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記発射支持体が上下反転されてチェック試験が行われる、
請求項11から15の1項に記載の方法。
【請求項17】
前記方法の前記ステップは、予想位置公差を示す発射パターンが取得されるまで反復的に繰り返される、
請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的付加製造に関する。
【0002】
具体的には、本発明は、付加製造装置の出力放射源(power radiation source)のヘッドシステムの制御の較正に関する。
【背景技術】
【0003】
選択的付加製造は、粉末材料(金属粉末、セラミック粉末)の連続層における選択領域を圧密化することによって3次元物体を形成するものである。圧密化領域は、3次元物体の連続断面に対応する。圧密化は、光源(例えば、高出力レーザー)又は粒子ビーム源(例えば、当業の用語によるEBM又は「電子ビーム溶解」として知られている技術における電子ビーム)などの集束放射源(focused source of radiation)を使用して行われる全体的又は部分的な選択的溶融によって層毎に実行される。
【0004】
以下では、主に(当業の用語によるSLM又は「選択的レーザー溶融」において使用されるような)光源を参照する。
【0005】
しかしながら、圧密化は、他のいずれかのタイプの放射を用いて適用することもできる。
【0006】
図1に示すように、従来、光源を使用するタイプの付加製造装置は、一方では粉末材料の層に対する衝突点の位置に関する精度を、他方ではこの層に対するビームの集束に関する精度を高めるために、3つの検流計を含む3軸ヘッドシステムSを使用する。
【0007】
2つの検流計1、2は、2つのミラー3、4の回転を導くとともに、ヘッドから離れたビームの経路をチェックして(X及びY方向に制御される)粉体層(作業面P)上の衝突点の位置をチェックできるようにするために使用される。
【0008】
さらに、検流計、並進モジュール及びレンズを含むDFM(当業の用語による「動的フォーカスモジュール」)が、上記レンズの並進運動を適合させることによって、粉体層上におけるビーム焦点の完全な調整(Z方向での制御)を可能にする。図1には、DFMモジュール5が上流での焦点修正を可能にする、固定焦点を導入する対物レンズモジュール6も示す。
【0009】
実際には、粉体層上にレーザービームが良好に集束されればされるほど、融点に伝わるエネルギーの量及びその制御も大きくなると理解されるであろう。
【0010】
それにもかかわらず、このような3軸ヘッドシステムSは、粉体層(平面P)における2つの主なタイプの変形を示唆する。
【0011】
第1に、光ビームの傾斜に従って、粉体層が存在する作業面P上の焦点が変化する。実際に図2に示すように、ビームの傾斜は光路長の(図ではΔZによって概略的に示す)変化の結果であり、ミラーによって誘導される遊びによって、或いは付加製造装置内に存在し得る様々な窓を通過することによって引き起こされる現象にこれらの変化自体を加える必要がある。
【0012】
従って、この幾何学的オフセットを処理しなければ、作業面P全体にわたる焦点が一定にならない。
【0013】
さらに、従来、作業面P上に、図のX及びY方向における非線形的変形(当業で一般的に使用される用語によれば「枕形」と呼ばれる変形-図3の形状PS)が見られる。この変形は、光路の形状によって引き起こされ、特にミラー及び光学系の位置と、これらのプレートPからの距離とによって引き起こされる。
【0014】
従来は、X及びY方向の歪みに対処するためにヘッドの制御を補正することが既知の慣行である。
【0015】
これを行うために、既に決定されている専用の補正テーブルを使用する。
【0016】
これらのテーブルから制御差(control differentials)を取得し、これを通じて3軸ヘッドの制御入力を補正する。従って、粉体層に対して補正されたX及びY方向の位置を使用して、光ビームによる発射(firings)及び作業面Pの掃引を行う。
【0017】
これらの補正テーブルを決定するには、基準マークを有する較正プレートを使用することが既知の慣行である。光発射シーケンスは、プレート上の所定の目標位置において行われる。カメラを含む測定システムが、基準の基準フレーム(reference frames of reference)に対するこれらのマーキングの位置を記録する。
【0018】
このようにして較正プレート上に形成されたマーキングの位置と、理論的に標的化される発射位置との間の差分を使用して、光ビームヘッドシステムのX及びY方向の制御に適用する必要がある補正を計算する。
【0019】
この方法の一例は、例えば欧州特許第1048441号、又は米国特許出願第2015/0100149号、発射によって形成される穴とその輪郭とのコントラストを高めるための空洞をプレートが含む米国特許出願第2010/176539号、米国特許出願第2003/192868号、米国特許第5,832,415号、及び米国特許出願第2014/0333931号に記載されている。
【0020】
特に欧州特許第1048441号では、較正が、一方では基準マークを有するプレートを使用し、他方ではマーキングを受け取るためのシートを使用する。
【0021】
従って、プレートは、光ビームに反応するシートを受け取る一方の領域と、このシートに覆われていない、基準マークを有する他方の領域という2つの領域に分割される。
【0022】
米国特許第6,175,413号では、レーザービームの有無を検出する、光ビームに反応する検出面を含むプレートを使用してロボットシステムの較正が行われる。
【0023】
しかしながら、このようにして行われるX及びY方向の補正は最適ではない。
【0024】
さらに、提案されている処理では、粉体層上のビームの集束を最適化することができない。
【0025】
容易に理解されるように、他の放射源(例えば、EBM源)でも同様の較正問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【文献】欧州特許第1048441号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0100149号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/176539号明細書
【文献】米国特許出願公開第2003/192868号明細書
【文献】米国特許第5,832,415号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0333931号明細書
【文献】米国特許第6,175,413号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明の1つの目的は、発射に適用される補正を最適化できる自動較正ソリューションを提案することである。
【0028】
具体的には、本発明の1つの目的は、先行技術よりも良好なX及びY方向の較正を可能にする較正ソリューションを提案することである。
【0029】
本発明の別の目的は、放射源の集束の較正(Z方向の較正)を可能にするソリューションを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
第1の態様によれば、本発明は、この目的のために、付加製造装置の出力放射源のヘッドシステムの較正のためのキットであって、
複数の基準マークを有する較正プレートと、
放射源の放射に反応する少なくとも1つの材料から形成された発射支持体と、
を備え、この支持体は、較正プレートの基準マーク上の適所に存在する時に、較正プレートの基準マークを可視状態のままにし、
発射支持体が、較正プレートの様々な基準マークと重なり合って、発射支持体が較正プレート上の適所に存在する時に基準マークを可視状態のままにするような形で分布する複数の窓を含む、キットを提案する。
【0031】
上述したキットは、単独で又はこれらの全ての技術的に可能な組み合わせに従って採用される以下の様々な特徴が追加されることが有利である。
・基準マークが、較正プレート全体にわたって分布し、発射支持体が、上記較正プレートに対応するような寸法を有する。
・キットが、発射支持体にわたって動かすことができる可動光学測定装置を備える。
・キットが、光学測定装置が取り付けられるように意図された二重レール支持体を備える。
・較正プレート上の基準マークの数が65×65以下である。
【0032】
第2の態様によれば、本発明は、付加製造装置の出力放射源のヘッドシステムの較正方法であって、上記システムの制御に適用すべき補正テーブルを決定するために、
複数の基準マークを示す較正プレートを付加製造装置内に配置するステップと、
放射源の放射に反応する少なくとも1つの材料から形成された、較正プレートの基準マーク上の適所に存在する時に較正プレートの基準マークを可視状態のままにする発射支持体を配置するステップと、
上記支持体を少なくとも1つの較正パターンでマーキングするために放射源を制御するステップと、
上記較正パターン及び少なくとも1つの基準マークの少なくとも1つの画像を取り込むステップと、
このように取得された1又は複数の画像に基づいて補正テーブルを決定するステップと、
を実行し、プレート及び発射支持体は、本発明の第1の態様によるキットのものであり、
放射源が、所定の理論的目標点に理論的に中心を置く複数の較正パターンのマークアウト(marking-out)を発射支持体上に形成するためにヘッドシステムを使用して制御され、理論的目標点が、上記発射支持体にわたって、較正プレートの基準マークを可視状態のままにする様々な窓の直近に分布し、
取得ステップ中に、一方では基準マークが、他方では理論的目標位置が直近に存在する領域の少なくとも1つの画像を取り込むために、較正プレートの基準マーク毎に発射支持体にわたって光学測定装置が動かされ、
このように取得された1又は複数の画像が、較正パターンを識別してこのパターンに関する少なくとも1つの情報を決定するために基準マーク毎に処理され、様々な基準マークのための決定された較正パターン情報に基づいて、ヘッドシステム制御に適用すべき補正が決定される、方法も提案する。
【0033】
このような方法は、単独で又はこれらの全ての技術的に可能な組み合わせに従って採用される以下の様々な特徴が追加されることが有利である。
・取得された1又は複数の画像が、基準マーク毎に、この基準マークの正規直交基準フレーム内の発射パターンの中心位置を導出し、中心位置と理論的目標位置との間のオフセットを決定するために処理される。
・較正プレートが、補正テーブル内の点の数に等しい数の基準マークを含む。
・補正を決定するために、較正プレートの基準フレームをヘッドに関連する基準フレームに変換する処理が使用される。
・上記処理が、較正プレート上の2つの所与の基準マークに対応するパターンを識別するステップと、この識別から、較正プレートの基準フレームとヘッドに関連する基準フレームとの間の並進及び角回転に関するオフセットを決定するステップとを含む。
・発射支持体が反転してチェック試験が行われる。
・方法のステップが、予想位置公差を示す発射パターンが取得されるまで反復的に繰り返される。
【0034】
添付図面に関連して読むべき以下の純粋に例示的かつ非限定的な説明から、本発明のさらなる特徴及び利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】選択的製造装置のレーザー発光源の3軸ヘッドの光学的シーケンスの概略図である。
図2】補正を行わない時のこのような装置上の主な変形を示す図である。
図3】補正を行わない時のこのような装置上の主な変形を示す図である。
図4a】本発明による較正キット(較正アセンブリ)の例を概略的に示す図である。
図4b】この較正キットの光学キットの要素を詳細に示す図である。
図5】較正プレートと発射支持体との重ね合わせを示す概略図である。
図6図4aのキットの測定装置を取り付けるための2軸レールを有する支持体を概略的に示す図である。
図7図4aのキットのカメラの測定領域内の画像を示す図である。
図8a】較正パターンの領域内の発射支持体に対する衝突点を示す図である。
図8b】衝突点のガウス分布及び外挿される「ウエスト」点の決定を示す図である。
図9】本発明の方法の1つの考えられる実装における様々なステップを示す図である。
図10】様々な発射パターンの衝突を示す発射支持体を示す図である。
図11】プレートの基準フレームからヘッドの基準フレームへの変換に使用される処理を示す図である。
図12】プレートの基準フレームからヘッドの基準フレームへの変換に使用される処理を示す図である。
図13】プレートの基準フレームからヘッドの基準フレームへの変換に使用される処理を示す図である。
図14】プレートの基準フレームからヘッドの基準フレームへの変換に使用される処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
較正キット
図4及び図5の較正キットは、基準較正プレート7と発射支持体8とを含むキットである。
【0037】
この較正キットは、光センサを含むチェック装置9も含む。
【0038】
基準プレート7は、目に見える複数の基準マーク10を有するプレートである。
【0039】
これらの基準マーク10は、プレート全体にわたって既知のチェックされた位置に分布する。一例として、これらの基準マーク10は、較正中に出力放射源によって完全に又は部分的に掃引されるように意図された65×65の行列点の付近に位置することができる。当然ながら、他の分布も可能である。
【0040】
各基準点では、プレート上に正規直交基準フレーム(orthonormal frame of reference)を定め、交点が基準点に対応する2つの直交軸によってマーク10の可視マーキングが定められる。
【0041】
一方で、発射支持体8は、放射線ビームに反応する材料のテープで構成される。
【0042】
この支持体8は、X及びY方向の寸法がプレート7と同じであり、較正発射(calibration firings)中にプレート7上に配置される。
【0043】
この支持体8は、プレート7上の基準マーク10と同様に分布する複数の窓11を有する。発射支持体8がプレート7上の適所に存在する時には窓11の中心が基準マーク10に合っており、従って基準マーク10が目に見える。
【0044】
装置9は、CMOS又はCCDタイプのカメラ9aと、光学対物レンズ9bと、専用照明システム9cとを含む。
【0045】
専用照明システム9cは、例えばリング状の発光ダイオードから成る。カメラ9a及び対物レンズ9bは、発射支持体8上における近ミクロンスケールの許容差での測定を可能にする解像度の画像を可能にする。
【0046】
この装置9は、例えば選択的印刷装置に組み込まれる。
【0047】
別の例として、この装置9は、較正段階中にのみ選択的印刷装置に嵌め込むこともできる。
【0048】
選択的印刷製造装置は、装置9及びカメラ9aを受け入れる図6に示すような2軸レールの支持体12を含む。このシステム12は、装置9及びカメラ9aを較正プレート7及び支持体8の上方でX及びY方向に手動で又は自動で誘導できるようにする。
【0049】
収集された様々な画像は、後述する測定結果を導出するためにプロセッサ13によって処理される。このプロセッサ13は、例えば選択的印刷装置のプロセッサである。このプロセッサ13は、選択的印刷装置のプロセッサとは異なる、選択的印刷装置のプロセッサとやりとりするプロセッサとすることもできる。
【0050】
誤差測定
較正中、カメラ9aは、様々な基準マーク10の各々について、上記マーク10(図7)に対応する正規直交マークアウトを示す画像を取り込む。
【0051】
各基準マーク10のマークアウトは、発射支持体8の窓11によって実際に目に見える状態で残されており、例えば、窓11は矩形開口部とすることができるが、当然ながら他の形状も可能である。
【0052】
このような基準マーキング10は、較正プレート7上に、カメラ9bが基準として使用する正規直交測定基準フレームを定める。
【0053】
放射源及びそのヘッドシステムSは、画像取り込みの前に、支持体8上の対応する基準マーク10の近傍の所与の理論的目標位置において基準マーク10毎に発射を実行するように制御されている。
【0054】
この発射は、所定の発射パターン(図7の例では7×7の点を測定する行列パターン15)に沿って分布する複数の発射点の連続として実行される。
【0055】
図7では、(見えない)理論的目標位置が十字14に対応する。
【0056】
支持体8に衝突するパターンの発射の最後には、各基準マーキング10の周囲の画像が取り込まれる。
【0057】
取り込まれたマーキング10の周囲領域の画像は、上記マーキング10の正規直交基準フレームにおける発射パターン15の中心(中間点)の位置(位置定測結果Xm及びYm)と、従って理論的目標位置14に対するこの位置のオフセットとを導出するために、これらのマーキング10毎にプロセッサ13によって処理される。
【0058】
さらに、図8aに示すように、パターン15の様々な点における発射は、上記パターンの衝突点において異なる直径を生成するように制御される。
【0059】
例えば、これらの発射のうちのいくつかは、異なるZ方向制御によって、すなわち異なる焦点制御によって生成される。通常、これらの様々な発射のZ方向制御は、パターンの中間点の周囲のガウス分布を理論的に取得するために点毎に増分される。
【0060】
図8aの例では、ガウス分布が、Y方向の対称軸を有する分布である。
【0061】
別の例として、この分布は、X及びYの両方向におけるガウス(2次元ガウス分布に従う分布)とすることもできる。
【0062】
以下の表に増分の分布例を示す。発射パターンは行列の形を取り、Z方向制御値は、列毎(この例では左から右に)及び行毎に(下から上に)増加する。
【表1】
【0063】
増分0の中心点はパターンの中間点に対応し、ΔはZ方向の制御の個々の増分値に対応する。従って、(ほんの一例として示す)7×7行列の発射の場合には、49個のZ方向制御値を試験することができる。
【0064】
パターンが生成されると、プロセッサ13によって実行される処理は、衝突点の直径の分布を分析し、この分布に基づいて「ウエスト」に対応するパターンの領域内の点を決定する。
【0065】
この「ウエスト」点は、最小直径の衝突点、又は衝突点の直径の分布曲線から外挿された外挿点に対応する。
【0066】
図8aに示す例には、様々な異なる衝突点I1~I4と、これらの点を通じたガウス的最良適合である曲線Gとを示している。
【0067】
外挿点は、上記ガウスGの最小値に対応する点Eである。
【0068】
その後、このように選択された衝突点のZ方向制御(又はこのように決定された外挿点に対応する外挿制御)をマーキングの理論的目標位置の制御として(補正ΔZmの形で)適用する。
【0069】
これを補完するために、この理論的目標点と「ウエスト」に対応するとみなされる点との間の光路長の変化を考慮するための考えられる補正を実行することもできる。
【0070】
この補正は、例えばこのさらなる集束補正を理論的目標点と最小直径の衝突点、又は「ウエスト」に対応するとみなされる点との間の距離の測定結果の関数として示すチャートを参照することによって決定される。
【0071】
このような処理は、衝突点が行列形態の較正パターンを共に設計する場合にとりわけ容易になると理解されるであろう。当然ながら、他の多くの較正パターンの構成も可能である。
【0072】
その後、次の較正発射においてパターン15が中心を目標位置14に置くためにヘッド制御システムSのレベルで必要とされる補正値ΔX及びΔYをビット単位で導出するために、測定結果Xm及びYmを処理する。
【0073】
同様に、焦点を補正するためにDFMモジュールに適用すべき補正ΔZをXm、Ym及びΔZmの関数として決定し、上記モジュールにビット単位でフィードバックする。
【0074】
大きさの規模の考え方として、3軸ヘッドの検流計は、一般に(224ビットにわたる各軸の指針である)24ビットにわたって制御されるのに対し、補正格子上のX、Y方向のステップ増分は、4225個の値(262個の144ビットのステップ)にわたって分布する。同様に、制御Zも24ビットにわたって制御され、補正テーブルはX及びYと同じ寸法を有する。
【0075】
また、提案するタイプの行列形態パターンは、発射点の位置及び粉体層上の放射ビームの集束の両方に関してとりわけ有利であり、精密較正を可能にする。それにもかかわらず、他のパターンも可能である(行列形態パターンは、千鳥配列、円形パターン、楕円パターンなどで分布する)。
【0076】
較正ステップ
第1のステップ(図9のステップ21)において、3軸での事前補正テーブルをプロセッサ13にロードする。
【0077】
これらのテーブルは、理論モデルを使用して予め取得される。これにより、光学的シーケンスに関連する欠陥をかなりの程度まで排除することができる。このように、カメラの視野に適合する非常に限られた領域内で、エッチングにとって十分な焦点で較正発射を実行することができる。
【0078】
第2のステップ(ステップ22)において、選択的印刷によって物体を製造する装置内にプレート7を設置し、その上に発射支持体8を配置する。較正プレート7は、上記装置のプラットフォーム支持システム上に容易に直接設置できるような寸法を有する。
【0079】
第3のステップ(ステップ23)において、支持体8上の様々な理論的目標点14において一連のパターンの発射を実行するようにビーム源及びヘッドを制御する。
【0080】
理論的目標点は、較正プレート上の全部又は一部の基準マークと同様の点に対応するように選択される。
【0081】
補正テーブルに使用される点の行列に対応する理論点の行列を使用すると、補正の影響を限定することができる。
【0082】
それにもかかわらず、使用される基準点の数が、決定すべき補正テーブル内の点の数より少ないこともある。このような場合、不足している点を、目標点に関する結果から外挿することができる。
【0083】
パターンの発射は、支持体8に対する衝突が目に見えてカメラ9b(図10)によって測定できるように、窓11上ではなく支持体8の材料上に発射が行われるようにプレート上のY方向7.5mmの地点を標的にする。
【0084】
第4のステップ(図9のステップ24)において、補正を可能にする光学測定を行うために、選択的印刷装置に測定装置9を導入する。
【0085】
オペレータは、支持体8上の一群の様々な発射点の画像を連続して取り込むために、2軸支持体12を使用して、手動で又は電動手段を使用して上記装置9を動かす。なお、較正プレート7は、基準マークに測定順が課されていなくても掃引を実行できるように、様々な基準マーク10の付近に付番システムを有することができる。
【0086】
このように取り込まれた画像は、プロセッサ13がリアルタイムで処理する(ステップ25)ことも、或いは後で処理できるように記憶することもできる。
【0087】
測定及び処理は以下のように行われる。
【0088】
所与の基準マーク上の画像を分析することにより、発射パターンの中心(中間)点の座標Xm及びYmを決定することができる。
【0089】
この分析によって補正値ΔZmを決定することもできる。
【0090】
ヘッドは、較正プレート7に対して1ミクロン以内まで機械的に配置することができず、従ってプロセッサ13は、測定結果をヘッドの基準フレームに変換する基準変更処理動作を実行する。
【0091】
図11に、2つの基準フレーム間に存在し得る並進オフセット及び回転オフセットを誇張した形で示す。
【0092】
並進オフセットを評価するには、パターンの一方の中心(中間点)を基準点(図12の点A)として使用する。
【0093】
この点は、放射源ヘッド(ヘッドをX及びY方向に制御する検流計のビット単位の(座標(0,0))の下に位置するものとして選択されることが好ましい。
【0094】
プロセッサは、基準マーク10に対応する画像処理によって、プレートの基準フレーム内の対応する点の位置Xm0及びYm0を決定し、この位置から、測定結果をヘッドの基準フレームに変換するために測定結果に適用すべき並進補正を導出することができる。
【0095】
プロセッサ13は、回転オフセットを評価するには、点Aに対応するパターンと、点Aと同じ線上のX方向に理論的に位置する第2の発射点(図12の点B)に対応するパターンとを使用する。
【0096】
これらの2つの位置ではミラー制御Yがゼロであるため、これらの2点を接続するベクトルはヘッドの基準フレームの水平線である。
【0097】
プロセッサは、プレート7の基準フレーム内の点Bの位置によって、プレートの基準フレームとヘッドシステムS(図13)の基準フレームとの間の角度θ0を決定することができる。
【0098】
プロセッサ13は、これらのパラメータを使用して、全ての記録画像について所望の基準フレーム変換を実行する。
【0099】
従って、プロセッサ13は、座標Xm及びYmを有する各測定点について、ヘッドシステムの基準フレーム内の対応する座標Xmt及びYmtを決定する。
【0100】
その後、これらの測定結果は、2つのミラーの(X及びY方向の)移動制御のためのビット単位の補正値を取得するために処理される。
【0101】
このX及びY方向の補正自体により、プレート7に対する衝突点の変位、従って焦点の変化(図14のZdに対応する変化)が生じる。プロセッサ13は、光学系の法則を使用してこの変化Zdを推定し、対応する検流計の値(ΔZd)をビット単位で決定する。
【0102】
この補正を、支持体8上のパターン15毎に(すなわち、較正点毎に)、正しいZ方向の較正値を導出するために関連するパターンについてプロセッサ13が決定した補正ΔZmにビット単位で追加する。
【0103】
プロセッサ13は、補正が設定されると、新たな補正テーブルをメモリに記憶する。
【0104】
その後、装置は、チェック発射の準備が整う(ステップ26)。
【0105】
このように補正テーブルが取得されると、発射支持体8を反転させ、オペレータが新たな一連のチェック発射を開始する。
【0106】
発射支持体8に対する衝突の位置(発射パターン)を記録し、プロセッサ13がさらなる補正を決定する。
【0107】
適切な場合には、試験レポートを発行することもできる。
【0108】
チェック試験によって、位置及び集束精度が予想精度に対して不十分であると判明した場合、新たな補正テーブルを計算した後で、新たなチェック発射を行うことができる。
【0109】
従って、このプロセスは、較正が予想配置公差を満たすのに十分であると考えられるまで反復的に繰り返される。
【符号の説明】
【0110】
1 検流計
2 検流計
3 ミラー
4 ミラー
5 DFMモジュール
6 対物レンズモジュール
P 作業面
S 3軸ヘッドシステム
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12
図13
図14