(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】付加製造装置の出力放射源の焦点の較正
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20220803BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20220803BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20220803BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220803BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20220803BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/153
B33Y50/02
B33Y30/00
B29C64/264
(21)【出願番号】P 2019570501
(86)(22)【出願日】2018-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2018066274
(87)【国際公開番号】W WO2018234312
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517160927
【氏名又は名称】アッドアップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ロブラン アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ニケーズ ジャン-ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ノヴィコフ イヴァン
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-210835(JP,A)
【文献】特表2016-532586(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101823181(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0333931(US,A1)
【文献】特表2016-540109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00、30/00、50/00
B22F 10/00、12/00
B28B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造装置の出力放射源のヘッドシステムの較正方法であって、前記システムのコマンドに適用すべき補正を決定するために、
複数の基準マークを含む較正プレートを前記付加製造装置内に配置するステップと、
複数の衝突点で形成された少なくとも1つの較正パターンを前記較正プレート上でマーキングするように前記放射源に命令するステップと、
前記較正パターン及び少なくとも1つの基準マークの少なくとも1つの画像を取得するステップと、
このように取得された前記1又は2以上の画像に依存して少なくとも1つの補正コマンドを決定するステップと、
を実行し、前記補正コマンドを決定するステップは、取得された画像内で、該画像内に出現する前記較正パターンの前記衝突点の直径の分布を決定し、前記補正コマンドは、前記衝突点の前記直径の前記分布に依存する焦点コマンドである、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記放射源に命令する前記ステップにおいて、異なる焦点コマンドによって様々な衝突点に対応する様々な発射が生成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記放射源に命令する前記ステップにおいて、前記直径が前記パターンの中間点の周囲のガウス分布を有するように増分される焦点コマンドによって様々な衝突点に対応する様々な発射が生成される、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記補正コマンドを決定する前記ステップは、前記衝突点の前記直径の前記分布に依存して、最小直径の衝突点又は外挿されたウエスト点を決定する、
請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
マーキング
の中間点に関連する前記補正コマンドは
、前記
最小直径の衝突点の前記焦点コマンド、又は前記外挿されたウエスト点に対応する外挿コマンドである、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記衝突点が形成する前記較正パターンは行列配列であり、
前記放射源の命令は焦点コマンドであり、当該焦点コマンドは、列毎及び行毎に増加する焦点コマンド値
を有する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記放射源は、予め設定された理論的目標点に理論的に中心を置く複数の較正パターンのマーキングを前記較正プレート上に生成するために前記ヘッドシステムを使用して命令される、
請求項1から6の1項に記載の方法。
【請求項8】
前記取得するステップにおいて、一方では前記基準マークが発見され、他方では前記理論的目標
点が直近で発見される領域の少なくとも1つの画像を前記較正プレート
の基準マーク毎に取得するために、前記較正プレート上を光学測定装置が移動する、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1又は2以上の取得された画像は、前記基準マークの正規直交座標系における最小直径の前記衝突点又は外挿されたウエスト点
の位置を導出して、
最小直径の前記衝突点又は前記外挿されたウエスト点の前記位置と前記理論的目標
点との間のオフセットを決定するために基準マーク毎に処理され、前記オフセットに依存して補完的補正が決定される、
請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
補正を決定するために、前記較正プレートの座標系から前記ヘッドに付随する座標系に移るための処理が実行される、
請求項1から9の1項に記載の方法。
【請求項11】
前記処理は、前記較正プレート上の2つの所与の基準マークに対応するパターンを識別し、該識別から、前記較正プレートの前記座標系と前記ヘッドに付随する座標系との間の並進オフセット及び角回転を決定する、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記衝突点は実質的に円形である、
請求項1~11の1項に記載の方法。
【請求項13】
前記較正パターンは、少なくとも2つの行を有する行列配列である、
請求項1~12の1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的付加製造に関する。
【0002】
具体的には、本発明は、付加製造装置の出力放射源(power radiation source)の焦点の較正に関する。
【背景技術】
【0003】
選択的付加製造は、粉末材料(金属粉末、セラミック粉末)の連続層における選択領域を圧密化することによって3次元物体を形成するものである。圧密化領域は、3次元物体の連続断面に対応する。圧密化は、光源(例えば、高出力レーザー)又は粒子ビーム(例えば、電子ビーム-EBM又は「電子ビーム溶解」と呼ばれる技術)の生成源などの集束放射源(focused radiation source)を使用して行われる部分的な又は完全な選択的溶融によって層毎に行われる。
【0004】
以下では、主に(SLM又は「選択的レーザー溶融」技術において使用されるような)光源を参照する。
【0005】
しかしながら、圧密化は、他のいずれかのタイプの放射に適用することもできる。
【0006】
図1に示すように、従来、光源型付加製造装置(optical-source additive manufacturing apparatuses)は、一方では粉末材料の層に対する衝突点の位置の精度を、他方ではこの層に集束すべきビームの精度を高めるために、3つの検流計を使用する3軸ヘッドシステムSを使用する。
【0007】
2つの検流計1、2は、2つのミラー3、4を回転的に導くとともに、ヘッドから出力されたビームの経路を制御して粉体層(作業面P)上のビームの衝突点の位置を制御(X及びY方向のコマンド)できるようにするために使用される。
【0008】
さらに、検流計、並進モジュール及びレンズを含むDFM(「動的フォーカスモジュール」)が、上記レンズの並進によって、粉体層に対するビーム焦点距離の完全な調整(Z方向のコマンド)を可能にする。
図1には、上流に位置するDFMモジュール5が焦点の調整を可能にする、設定焦点を導入する対物レンズモジュール6も示している。
【0009】
具体的には、粉体層上にレーザービームが正しく集束されればされるほど、融点に伝わるエネルギーも大きくなって良好に制御されるようになると理解されるであろう。
【0010】
それにもかかわらず、このような3軸ヘッドシステムSは、粉体層(平面P)における2つの主なタイプの変形をもたらす。
【0011】
第1に、光ビームの傾斜に応じて、粉体層が存在する作業面Pにおける焦点が変化する。具体的には、
図2に示すように、ビームの傾斜は光路長の(図ではΔZによって概略的に示す)変化をもたらし、これらの変化自体が、ミラーによって誘導される遊びに起因する、さらには付加製造装置内に設けられることがある様々な窓を通過することに起因する効果を加える。
【0012】
従って、この幾何学的オフセットを補正する処理が存在しなければ、作業面P全体において焦点が一定にならない。
【0013】
さらに、従来、作業面Pでは、衝突点のパターンのX及びY方向における非線形的変形(いわゆる「枕形」変形-
図3の形状PS)が観察される。この変形は、光路の形状、特にミラー及び光学系の位置と、これらのプレートPに対する距離とに起因する。
【0014】
従来は、X及びY方向を考慮するためにヘッドのコマンドを補正することが知られている。
【0015】
この目的のために、既に決定されている専用補正テーブルを使用する。
【0016】
これらのテーブルはコマンド差(command differentials)を提供し、これを用いて3軸ヘッドのコマンド入力を補正する。従って、粉体層に対して補正されたX及びY方向の位置を使用して、光ビームによる発射及び作業面Pの掃引を行う。
【0017】
これらの補正テーブルを決定するには、基準マークを有する較正プレートを使用することが知られている。光発射シーケンスは、プレート上の予め設定された目標位置において行われる。カメラベースの測定システムが、基準マークに対するこれらのマーキングの位置を記録する。
【0018】
このようにして較正プレート上に形成されたマーキングの位置と、理論的に標的化された発射位置との間の差分を使用して、光ビームヘッドシステムのX及びY方向のコマンドに適用すべき補正を計算する。
【0019】
この点、例えば欧州特許第1048441号、又は米国特許出願第2015/0100149号及び米国特許出願第2014/0333931号に一例が記載されている。
【0020】
特に欧州特許第1048441号では、一方では基準マークを有するプレートが、他方ではマーキングを受け取るためのシートが較正に使用される。
【0021】
この目的のために、プレートは、光ビームに反応するシートを受け取る一方の領域と、このシートに覆われていない、基準マークを有する他方の領域という2つの領域に分割される。
【0022】
中国特許出願第101,823,181号では、光学的発射の形態の識別を通じてレーザービームの焦点を決定することが提案されている。
【0023】
しかしながら、提案される処理動作では、粉体層上のビームの集束を確実に最適化することができない。
【0024】
さらに、X及びY方向に行われる補正も最適ではない。
【0025】
当然ながら、容易に理解されるように、他の放射源(例えば、EBM源)でも同様の較正問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【文献】欧州特許第1048441号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0100149号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0333931号明細書
【文献】中国特許出願公開第101,823,181号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明の1つの目的は、発射の補正を最適化できる自動較正ソリューションを提案することである。
【0028】
具体的には、本発明の1つの目的は、放射源の焦点の較正(Z方向の較正)を可能にするソリューションを提案することである。
【0029】
本発明の別の目的は、先行技術よりも良好なX及びY方向の較正を可能にする較正ソリューションを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
従って、1つの態様によれば、本発明は、付加製造装置の出力放射源のヘッドシステムの較正方法であって、上記システムのコマンドに適用すべき補正を決定するために、
複数の基準マークを含む較正プレートを付加製造装置内に配置するステップと、
複数の衝突点で形成された少なくとも1つの較正パターンを較正プレート上でマーキングするように放射源に命令するステップと、
上記較正パターン及び少なくとも1つの基準マークの少なくとも1つの画像を取得するステップと、
このように取得された1又は2以上の画像に依存して少なくとも1つの補正コマンドを決定するステップと、を実行する方法を提供する。
【0031】
補正コマンドを決定するステップは、取得された画像内で、この画像内に出現する較正パターンの衝突点の直径の分布を決定し、上記補正コマンドは、衝突点の直径の上記分布に依存する焦点コマンドである。
【0032】
このような方法は、単独で又はあらゆる技術的に可能なこれらの組み合わせで実行できる以下の様々な特徴によって完成することが有利である。
・放射源に命令するステップにおいて、異なる焦点コマンドによって様々な衝突点に対応する様々な発射が生成される。
・放射源に命令するステップにおいて、直径がパターンの中間点の周囲のガウス分布を有するように増分される焦点コマンドによって様々な衝突点に対応する様々な発射が生成される。
・補正焦点コマンドを決定するステップは、衝突点の直径の分布に依存して、最小直径の衝突点又は外挿されたウエスト点を決定する。
・マーキングの中間点に関連する補正コマンドは、このように決定された上記衝突点の焦点コマンド、又は上記外挿されたウエスト点に対応する外挿コマンドである。
・衝突点が形成する較正パターンは行列配列であり、焦点コマンド値は列毎及び行毎に増加する。
・放射源は、予め設定された理論的目標点に理論的に中心を置く複数の較正パターンのマーキングを較正プレート上に生成するためにヘッドシステムを使用して命令される。
・取得するステップにおいて、一方では上記基準マークが発見され、他方では理論的目標位置が直近で発見される領域の少なくとも1つの画像を較正プレート基準マーク毎に取得するために、較正プレート上を光学測定装置が移動する。
・1又は2以上の取得された画像は、上記基準マークの正規直交座標系における最小直径の衝突点又は外挿されたウエスト点の位置を導出して、上記点の位置と理論的目標位置との間のオフセットを決定するために基準マーク毎に処理され、オフセットに依存して補完的補正が決定される。
・補正を決定するために、較正プレートの座標系からヘッドに付随する座標系に移るための処理が実行される。
・上記処理は、較正プレート上の2つの所与の基準マークに対応するパターンを識別し、この識別から、較正プレートの座標系とヘッドに付随する座標系との間の並進オフセット及び角回転を決定する。
【0033】
さらに、別の態様によれば、本発明は、付加製造装置の出力放射源のヘッドシステムを較正するアセンブリであって、
複数の基準マークを含む較正プレートと、
放射源の放射線に反応する少なくとも1つの材料で形成された発射媒体と、
を備え、この媒体は、較正プレートの基準マーク上の適所に存在する時に、較正プレートの基準マークを可視状態のままにし、
発射媒体が、較正プレートの様々な基準マークと重なり合って、発射媒体が較正プレート上の適所に存在する時に上記マークを可視状態のままにするような形で発射媒体上に分布する複数の窓を含む、アセンブリを提供する。
【0034】
添付図面に関連して読まなければならない以下の純粋に例示的かつ非限定的な説明から、本発明の他の特徴及び利点がさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】選択的製造装置のレーザー発光源の3軸ヘッドの光学チェーン(optical chain)の概略図である。
【
図2】このような装置の補正が行われない時の主な変形を示す図である。
【
図3】このような装置の補正が行われない時の主な変形を示す図である。
【
図4a】本発明による較正アセンブリ(キット)の例を概略的に示す図である。
【
図4b】この較正アセンブリの光学アセンブリの要素を詳細に示す図である。
【
図5】較正プレートと発射媒体との重ね合わせを示す概略図である。
【
図6】
図4aのアセンブリの測定装置を取り付けるための2軸レールホルダを概略的に示す図である。
【
図7】
図4aのアセンブリのカメラの測定視野内の画像を示す図である。
【
図8a】較正パターンを有する発射媒体レベルに対する衝突点を示す図である。
【
図8b】衝突点のガウス分布及び外挿されるウエスト点の決定を示す図である。
【
図9】本発明の方法の1つの考えられる実装の様々なステップを示す図である。
【
図10】様々な発射パターンの衝突を示す発射支持体を示す図である。
【
図11】プレートの座標系からヘッドの座標系に移るために行われる処理を示す図である。
【
図12】プレートの座標系からヘッドの座標系に移るために行われる処理を示す図である。
【
図13】プレートの座標系からヘッドの座標系に移るために行われる処理を示す図である。
【
図14】プレートの座標系からヘッドの座標系に移るために行われる処理を示す図である。
【
図15】本発明による較正アセンブリのカメラの測定視野内の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
較正アセンブリ
図4a、
図4b及び
図5の較正アセンブリは、7で参照する較正プレートと発射媒体8とを含むキットである。
【0037】
この較正アセンブリは、光センサベースの検査装置9も含む。
【0038】
基準プレート7は、目に見える複数の基準マーク10を有するプラテンである。基準プレート7の両面には、基準プレート7を反転させてその両面を使用できるように基準マーク10が存在することが好ましい。
【0039】
これらの基準マーク10は、プレートの全体にわたって既知の制御された位置に分布する。一例として、これらの基準マーク10は、較正中に全部又は一部が出力放射源によって走査されるように意図された65×65の行列配列の点の付近に位置することができる。当然ながら、他の分布も可能である。
【0040】
各基準点では、プレート上に正規直交座標系(orthonormal coordinate system)を定め、交点が基準点に対応する2つの直交軸によってマーク10の可視マーキングが定められる。
【0041】
発射媒体8は任意である。第1の実施形態では、発射媒体8が存在しない。基準プレート7は、0.1mm~10mmの、好ましくは1mmの厚みを有することができるガラスプラテンであることが好ましい。
【0042】
第2の実施形態では、発射媒体8が存在して、放射線ビームに反応する材料で形成されたフィルムで構成される。
【0043】
この支持体8は、X及びY方向の寸法がプレート7と同じであり、較正発射(calibration shots)中にプレート7上に配置される。
【0044】
この媒体8は、プレート7上の基準マーク10と同様に分布する複数の窓11を含む。発射媒体8がプレート7上の適所に存在する時には窓11の中心が基準マーク10に合っており、従って目に見える。
【0045】
装置9は、CMOS又はCCDカメラ9aと、光学対物レンズ9bと、固有の照明システム9cとを含む。
【0046】
固有の照明システム9cは、例えばリング状の発光ダイオードから成る。カメラ9a及び対物レンズ9bは、1ミクロンに近い許容差での測定を可能にする解像度の画像を可能にする。
【0047】
この装置9は、例えば選択的印刷装置に組み込まれる。
【0048】
別の例として、この装置9は、較正段階中にのみ選択的印刷装置内に配置することもできる。
【0049】
選択的印刷による製造のための装置には、装置9及びカメラ9aを受け取る
図6に示すような2軸レールホルダ12が設けられる。このシステム12は、媒体8が存在する場合には、較正プレート7及び媒体8の上方における装置9及びカメラ9aのX及びY方向への手動又は自動誘導を可能にする。
【0050】
撮影された様々な画像は、後述する測定結果を導出するためにコンピュータ13によって処理される。このコンピュータ13は、例えば選択的印刷装置のコンピュータである。このコンピュータ13は、選択的印刷装置のコンピュータとは異なる、選択的印刷装置のコンピュータとやりとりするコンピュータとすることもできる。
【0051】
欠陥の測定
較正中、カメラ9aは、様々な基準マーク10の各々について、上記マーク10(
図7)に対応する正規直交マーキングが見られる画像を取得する。
【0052】
図15に示すように、基準プレート7のマーク10に対応するマーキングは、位置の精度を高めるために様々なサイズ及び様々な形状の複数の要素を含むとともに、基準プレート7の番号に触れることができる。
【0053】
第2の実施形態では、発射媒体8の窓11によって各基準マーク10のマーキングが目に見える状態で残されており、例えば窓11は矩形開口部とすることができるが、当然ながら他の形状も可能である。
【0054】
このような基準マーキング10は、較正プレート7上に、カメラ9bの基準としての役割を果たす正規直交測定基準フレームを定める。
【0055】
放射源及びそのヘッドシステムSは、画像の取得前に、対応する基準マーク10の近傍の所与の理論的目標位置において基準マーク10毎に発射を行うように命令される。
【0056】
第1の実施形態では、この発射が直接基準プレート7に向けられる。第2の実施形態では、この発射が媒体8に向けられる。
【0057】
基準プレート7上では、発射位置の特定、従って較正精度を改善するために、所与の理論的目標位置の付近に目標位置マーキングを生成することができる。
図15に示すように、目標位置マーキングは、所与の理論的目標位置に中心を置くことができる。目標位置マーキングは、発射の所与の理論的目標位置を較正する正方形から成ることができ、この正方形は、場合によっては水平線及び垂直線で形成された十字によって取り囲まれる。
【0058】
この発射は、所定の発射パターン(
図7の例では7×7の点の行列配置パターン15)で分布する複数の発射点の連続として実行される。
【0059】
図7では、理論的目標位置(図示せず)が十字14に対応する。
【0060】
パターン発射の最後には、各基準マーキング10の周囲の画像が取得される。
【0061】
取得されたマーキング10の周囲領域の画像は、上記マーキング10の正規直交座標系における発射パターン15の中心(中間点)の位置(Xm及びYmの位置定測結果)と、従って理論的目標位置14に対するこの位置のオフセットとを導出するために、これらのマーキング10毎にコンピュータ13によって処理される。
【0062】
さらに、
図8aに示すように、パターン15の様々な点における発射は、上記パターンの衝突点において様々な直径を生成するように命令される。
【0063】
例えば、これらの複数の発射は、様々なZ方向コマンドによって、すなわち異なる焦点コマンドによって生成される。通常、これらの様々な発射のZ方向コマンドは、パターンの中間点の周囲のガウス分布を理論的に取得するために点毎に増分される。
【0064】
図8aの例では、ガウス分布が、Y方向の対称軸を有する分布である。
【0065】
別の例として、この分布は、X及びYの両方向におけるガウス(2次元ガウス分布)とすることもできる。
【0066】
以下の表に増分の分布例を示す。発射パターンは行列配列であり、Z方向のコマンド値は、列毎(この例では左から右に)及び行毎に(下から上に)増加する。
【表1】
【0067】
中心増分点0はパターンの中間点に対応し、ΔはZ方向の単一のコマンド増分値に対応する。従って、(ほんの一例として示す)7×7の発射行列配列の場合には、49個のZ方向コマンド値を試験することができる。
【0068】
パターンが生成されると、コンピュータ13によって実行される処理は、衝突点の直径の分布を分析し、この分布に応じて「ウエスト」に対応するパターンの領域の点を決定する。
【0069】
この「ウエスト」点は、最小直径の衝突点、又は衝突点の直径の分布曲線に基づいて外挿された外挿点に対応する。
【0070】
図8aに示す例には、様々な衝突点I1~I4と、これらの点に最良に適合するガウスである曲線Gとを示している。
【0071】
外挿点は、上記ガウスGの最小値に対応する点Eである。
【0072】
その後、このように選択された衝突点のZ方向コマンド(又はこのように決定された外挿点に対応する外挿コマンド)をマーキングの理論的目標位置のコマンドとして(補正ΔZmの形で)適用する。
【0073】
相補的に、この理論的目標点と最小直径の衝突点又はウエストに対応するとみなされる衝突点との間の光路長の変化を考慮するための任意の補正を適用することもできる。
【0074】
この補正は、例えばこの相補的焦点補正を理論的目標点と最小直径の衝突点又は「ウエスト」に対応するとみなされる点との間の距離の測定結果の関数として示すチャートを参照することによって決定される。
【0075】
このような処理は、衝突点が行列配列の形態の較正パターンを共に形成する場合にとりわけ容易になると理解されるであろう。当然ながら、他の較正パターン構成も可能である。
【0076】
その後、後続の較正発射中にパターン15が中心を目標位置14に置くためにヘッドコマンドシステムSにおいて適用するのに必要とされる補正値ΔX及びΔYをビット単位で導出するために、測定結果Xm及びYmを処理する。
【0077】
同様に、焦点を補正するためにDFMに適用すべき補正ΔZをXm、Ym及びΔZmの関数として決定し、上記モジュールにビット単位でロードする。
【0078】
大きさの規模として、3軸ヘッドの検流計は、一般に24ビット(すなわち、224ビットにわたる各軸の指針)にわたって命令されるのに対し、補正格子上のX、Y方向のピッチは、4225個の値(262個の144ビットのピッチ)にわたって分布する。一方、Zコマンドも24ビットにわたって命令され、補正テーブルはX及びYと同じ寸法を有する。
【0079】
さらに、提案するタイプの行列配列パターンは、発射点の位置及び粉体層上の放射ビームの焦点の両方に関してとりわけ有利であり、精密較正を可能にする。それにもかかわらず、他のパターンも可能である(交互分布、円形パターン、楕円パターンなどの行列配列パターン)。
【0080】
較正ステップ
第1のステップ(
図9のステップ21)において、3軸に沿った事前補正テーブルをコンピュータ13にロードする。
【0081】
これらのテーブルは、理論モデルを使用して予め取得される。これにより、光学チェーンに関連する欠陥を大幅に除去することができる。従って、カメラの視野に適合する非常に限られた領域内で、材料を除去するのに十分な焦点で較正発射を行うことができる。
【0082】
第2のステップ(ステップ22)において、選択的印刷によって物体を製造する装置内にプレート7を設置する。較正プレート7は、上記装置のプラットフォーム保持システム上に容易に直接配置できるような寸法を有する。
【0083】
第2の実施形態では、較正プレート7上に発射媒体8を配置する。
【0084】
第3のステップ(ステップ23)において、様々な理論的目標点14において一連のパターンを発射するようにビーム源及びヘッドに命令する。第1の実施形態では、一連の発射が基準プレート7に向けられる。第2の実施形態では、一連の発射が媒体8に向けられる。
【0085】
理論的目標点は、較正プレート上の全部又は一部の基準マークと同様の点に対応するように選択される。
【0086】
補正テーブルに使用される点の行列配列に対応する理論点の行列配列を使用すると、補正の影響を限定することができる。
【0087】
それにもかかわらず、使用される基準点の数が、決定しようとされている補正テーブルの点の数より少ないこともある。この場合は、不足している点を、目標点に関する結果から外挿することができる。
【0088】
第2の実施形態では、媒体8に対する衝突が目に見えてカメラ9b(
図10)によって測定できるように、パターンの発射が、窓11ではなく媒体8の材料に発射するようにプレートからY方向に7.5mmの地点を標的にする。
【0089】
第4のステップ(
図9のステップ24)において、補正を可能にする光学測定を行うために、選択的印刷装置に測定装置9を導入する。
【0090】
オペレータは、全ての様々な発射点の画像を連続して取得するために、2軸ホルダ12によって手動で又は電動手段を使用して上記装置9を動かす。第1の実施形態では、発射点が基準プレート7上に位置する。第2の実施形態では、発射点が媒体8上に位置する。なお、較正プレート7は、基準マークに測定順が課されていなくても走査を実行できるように、様々な基準マーク10の付近に付番を有することができる。
【0091】
このように取得された画像は、コンピュータ13がリアルタイムで処理する(ステップ25)ことも、或いは後で処理できるように記憶することもできる。
【0092】
測定及び処理は以下のように行われる。
【0093】
所与の基準マーク上の画像を分析することにより、発射パターンの中心(中間)点の座標Xm及びYmを決定することができる。
【0094】
この分析によって補正値ΔZmを決定することもできる。
【0095】
較正プレート7に対するヘッドの機械的配置は1ミクロン以内で確実にすることができず、従ってコンピュータ13は、座標系を変更する処理動作を実行することによって測定結果をヘッドの座標系に変換することができる。
【0096】
図11に、2つの基準フレーム間に存在し得る並進オフセット及び回転オフセットを誇張した形で示す。
【0097】
並進オフセットを評価するには、パターンの一方の中心(中間点)を基準点(
図12の点A)として使用する。
【0098】
この点は、放射源のヘッド(ヘッドをX及びY方向に制御する検流計のビット単位の(座標(0,0))の下に位置するように選択されることが好ましい。
【0099】
コンピュータは、基準マーク10に対応する画像の処理によって、プレートの座標系内の対応する点の位置Xm0及びYm0を決定し、この位置から、測定結果をヘッドの座標系に変換するために測定結果に適用すべき並進補正を導出することができる。
【0100】
コンピュータ13は、回転オフセットを評価するには、点Aに対応するパターンと、点Aと同じ行内のX方向に理論的に位置する第2の発射点(
図12の点B)に対応するパターンとを使用する。
【0101】
これらの2つの位置ではミラーのYコマンドがゼロであるため、これらの2点を接続するベクトルはヘッド座標系の水平線である。
【0102】
コンピュータは、プレート7の座標系内の点Bの位置によって、プレートの座標系とヘッドシステムS(
図13)の座標系との間の角度θ0を決定することができる。
【0103】
コンピュータ13は、これらのパラメータを使用して、全ての記録画像について求められている座標系の変更を実行する。
【0104】
従って、コンピュータ13は、座標Xm及びYmの各測定点について、ヘッドシステムの座標系内の対応する座標Xmt及びYmtを決定する。
【0105】
その後、これらの測定結果は、2つのミラーの(X及びY方向の)移動コマンドのためのビット単位の補正値を取得するために処理される。
【0106】
このX及びY方向の補正自体により、プレート7に対する衝突点の移動、従って焦点の変化(
図14のZdに対応する変化)が生じる。コンピュータ13は、光学系の法則に基づいてこの変化Zdを推定し、対応する検流計の値(ΔZd)をビット単位で決定する。
【0107】
この補正を、パターン15毎に(すなわち、較正点毎に)、正しいZ方向の較正値を導出するために関心パターンについてコンピュータ13が決定したZ方向の補正されたコマンド値に追加する。
【0108】
コンピュータ13は、補正が設定されると、新たな補正テーブルをメモリに記憶する。
【0109】
その後、装置は、検査発射の準備が整う(ステップ26)。
【0110】
第1の実施形態では、このように補正テーブルが取得されると、較正プレート7を反転させ、オペレータが新たな一連の検査発射を開始する。較正プレート7に対する衝突の位置(発射パターン)を記録し、コンピュータ13が新たな補正を決定する。
【0111】
第2の実施形態では、このように補正テーブルが取得されると、発射媒体8を反転させ、オペレータが新たな一連の検査発射を開始する。発射媒体8に対する衝突の位置(発射パターン)を記録し、コンピュータ13が新たな補正を決定する。
【0112】
適切な場合には、試験比率を計算することもできる。
【0113】
検査試験によって予想精度に対して不十分な焦点精度及び配置精度が戻された場合、新たな補正テーブルを計算した後で、新たな検査発射を行うことができる。
【0114】
従って、このプロセスは、較正が予想配置公差を順守するのに十分であると考えられるまで繰り返される。
【符号の説明】
【0115】
1 検流計
2 検流計
3 ミラー
4 ミラー
5 DFMモジュール
6 対物レンズモジュール
P 作業面
S 3軸ヘッドシステム