(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】回転電機用のステータ相互接続装置
(51)【国際特許分類】
H02K 3/50 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
H02K3/50 A
(21)【出願番号】P 2019572619
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2018063504
(87)【国際公開番号】W WO2019001852
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-03-12
(31)【優先権主張番号】102017211168.2
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】カーチャ ウィラッカー
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン ヴィットマン
(72)【発明者】
【氏名】ロランド リンドヴルム
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ウィーデル
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-246594(JP,A)
【文献】特開2006-101614(JP,A)
【文献】特開2014-204528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機(10)のステータ巻線用の相互接続装置(38)であって、
複数の接続導体(52、54、56)を備え、前記接続導体(52、54、56)は、リング状ディスクとして構成され、同軸に積み重ねられ、相互に電気的に絶縁され、
前記接続導体(52乃至56)が、それぞれ、前記相互接続装置(38)をステータ(16)に固定するために、周方向に分布された複数の固定開口(522乃至562)を備え、
前記接続導体(52乃至56)は、前記固定開口(522乃至562)がセットになって軸方向で相互に位置決めされ、実質的に重なり合って固定孔(60)を構成するように積み重ねられ、
前記接続導体(52乃至56)が軸方向で相互に離間され、プラスチック(58)で封入され、その結果、前記相互接続装置(38)が金属‐プラスチック複合部品を構成し、
異なる開口幅を有する少なくとも2つのタイプの固定開口(522乃至562)が備えられ、前記固定開口(522乃至562)は、より大きな固定開口(522a乃至562a)と、より小さな固定開口(522b乃至562b)と、を構成し、
2つの隣接する接続導体(52乃至56)において、固定孔(60)には、より大きな固定開口(522a乃至562a)と、より小さな固定開口(522b乃至562b)と、が構成され、
前記より大きな固定開口(522a)のエッジ部から、前記より小さな固定開口(522b)のエッジ部まで延在するリング状スペース(62)は、前記プラスチック(58)で充填されていることを特徴とする、相互接続装置(38)。
【請求項2】
請求項1に記載の相互接続装置であって、異なる開口幅を有する前記2つのタイプの固定開口(522a乃至562a、522b乃至562b)が接続導体(52;54;56)に備えられていることを特徴とする、相互接続装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の相互接続装置であって、複数の前記接続導体(52乃至56)を、同軸で相互に離間させて工具に受容させるために、前記接続導体(52乃至56)にセンタリング開口(524乃至564)を備えることを特徴とする、相互接続装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の相互接続装置であって、
前記接続導体(52乃至56)は、前記センタリング開口(524乃至564)がセットになって軸方向で相互に位置決めされ、実質的に重なり合ってセンタリング孔(64)を構成するように積み重ねられ、
前記接続導体(52乃至56)には、それぞれ、異なる開口幅を有する少なくとも2つのタイプのセンタリング開口(524乃至564)が備えられ、前記センタリング開口(524乃至564)は、より大きなセンタリング開口(524a乃至564a)と、より小さなセンタリング開口(524b乃至564b)と、を構成し、
前記接続導体(52乃至56)は、より大きなセンタリング開口およびより小さなセンタリング開口(524a乃至564a;524b乃至564b)が、1セットのセンタリング開口(524乃至564)内で軸方向に隣接して配置されるように積み重ねられ、
リング状スペース(66)は、前記より大きなセンタリング開口(524a乃至564a)のエッジ部から、前記より小さなセンタリング開口(524b乃至564b)のほぼエッジ部まで最大で延在するが、この直接のエッジ部は含まず、前記リング状スペース(66)は前記プラスチック(58)で充填されていることを特徴とする、相互接続装置。
【請求項5】
請求項4に記載の相互接続装置であって、前記接続導体(52乃至56)の1つのみが、前記相互接続装置(38)の所定の周方向位置でより小さな直径を有するセンタリング開口(524b乃至564b)を構成するように、異なる直径を有するセンタリング開口(524乃至564)が分布されていることを特徴とする、相互接続装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の相互接続装置であって、前記接続導体(52乃至56)は、ステータ巻線のコイル端部(36a、b)用のコイル接続領域(52a乃至56a)と、電気機械(10)の電流供給用の電力接続領域(52c乃至56c)と、を備え、前記コイル接続領域(52a乃至56a)は、径方向内向き、または外向きに突出する延長部として構成され、ステータ(16)の前記コイル端部(36a、b)と相互接続するために、前記延長部が共通の径方向平面に配置されていることを特徴とする、相互接続装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の相互接続装置であって、接続導体(52乃至56)に、リセス(52b乃至56b)が備えられ、さらなる接続導体(52乃至56)のコイル接続領域(52a乃至56a)は、前記リセス(52b乃至56b)に係合することを特徴とする、相互接続装置。
【請求項8】
電気機械のステータ(16)であって、請求項1~7の何れか一項に記載の相互接続装置(38)を備える、ステータ(16)。
【請求項9】
請求項8に記載のステータであって、前記ステータ(16)は、複数のステータコイル(36)を有するステータ巻線を備え、前記相互接続装置(38)は、前記ステータコイル(36)の巻線体(40)の接続素子(40e、f)に固定されていることを特徴とする、ステータ。
【請求項10】
ロータ(14)と、請求項8または9に記載のステータ(16)と、を備える電気機械(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の回転電機用のステータ相互接続装置、請求項8に記載のステータ、および請求項10に記載の電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械のステータ用の一般的な相互接続装置は、例えば本出願人の従前のドイツ特許出願第102016200115.9号に記載されている。この明細書において相互接続装置は、巻線体を用いてステータ積層スタックに円形に配置された、コイル端部を備えるステータコイルを、相互接続する役割を果たす。この場合、相互接続装置は、相互に同軸に配置され、絶縁層を用いて相互に電気的に絶縁された複数の接続導体を備える。接続導体は、リング状ディスクとして構成され、軸方向にずらしてステータに配置されている。ステータに配置するために、各接続導体は、リセスとして構成された固定部を備える。これらの固定部は、互いに軸方向に重なり合って配置されている。これによって、接続導体を、ステータの巻線体に設けられ突出するピンとして構成されたそれぞれの接続要素に、共に固定することができる。比較的密に積み重ねられた接続導体のこの種の装置では、特に上述のリセスのエッジ部領域において、電圧降伏、およびとそれに伴う不所望な短絡を確実に回避するために、特別な方策が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】ドイツ特許出願第102016200115.9号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、冒頭に述べた種類の省スペースで、安価で、耐電圧性のある相互接続装置、ステータ、およびそうした相互接続装置を備える電気機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴を有する相互接続装置、請求項8に記載のステータ、および請求項10に記載の電気機械によって解決される。
【0006】
本発明の有利な実施形態および発展形態は、従属請求項および以下の図面に関する記載にしたがって明らかとすることができる。
【0007】
本発明の第1態様によれば、回転電気のステータ巻線用の相互接続装置が提案される。この相互接続装置は複数の接続導体を備える。接続導体は、リング状ディスクとして構成され、同軸に積み重ねられ、相互に電気的に絶縁されている。接続導体が、それぞれ、相互接続装置をステータに固定するために、周方向に分布された固定開口を備える。接続導体は、固定開口がセットになって軸方向で相互に位置決めされ、実質的に重なり合って共通の固定孔を構成するように積み重ねられている。相互接続装置は、接続導体が軸方向で相互に離間され、プラスチックで封入され、その結果、相互接続装置が金属‐プラスチック複合部品、特にプラスチック射出成形部品を構成することを特徴とする。この場合、異なる開口幅を有する少なくとも2つのタイプの固定開口が備えられる。これらの固定開口は、より小さな固定開口と、より大きな固定開口と、を構成する。2つの隣接する接続導体において、固定孔には、より小さな固定開口と、より大きな固定開口と、が構成されている。より大きな固定開口のエッジ部から、より小さな固定開口のエッジ部まで延在するリング状スペースは、プラスチックで充填されている。
【0008】
接続導体をリング状ディスクとして、特にバンド状または板状の銅半製品から構成することにより、軸方向で短い構造の相互接続装置が可能になる。したがって、相互接続装置の接続導体は、軸方向にずらして配置されるように、ステータに設けられている。そのために接続導体は、それぞれが固定開口のセットを備え、ステータに設けられた各固定素子に差し込まれ、そこに恒久的に固定可能である。上述の固定開口は、有利には、円形のカットアウト、例えば異なる直径を有する打ち抜き部として構成されている。
【0009】
軸方向で隣接する接続導体に異なるサイズの固定開口を構成することには、周方向位置に存在するこれらの接続導体のエッジ部領域が、軸方向の距離、すなわちこれらの接続導体の軸方向の中間スペースよりも、さらに離れているという利点がある。その結果、異なる電位上にある接続導体の空間距離および沿面距離が増加され、絶縁耐力が高まる。
【0010】
原則として、複数の接続導体を積み重ねる場合、上述の利点を達成するために、1つのタイプの固定開口のみを備える接続導体を、交互に構成可能である。しかしながら、これには、電流を導く接続導体が異なる有効断面を備え、それによって異なる電気抵抗を有し、それが、電気機械の巻線システムにおける不均一または非対称な電流分布につながるという欠点があるであろう。
【0011】
この点で、異なるサイズ、つまり、特に異なる直径を有する2つのタイプの固定開口を各接続導体に設け、それらを接続導体に実質的に対称に分布させることが有利である。この目的のために、好適には、異なる固定開口を周方向で交互に構成することができる。その結果、大きな固定開口と、それと比較してより小さな固定開口部とが、周方向で隣接する。
【0012】
さらに、接続導体をプラスチックでオーバーモールドする、または封入する。その際、より大きな固定開口を、それぞれ、そのエッジ部領域から見てより小さな固定開口のほぼエッジ部まで、プラスチックで充填する。つまり、プラスチックがより大きな固定開口に部分的に流れだす。絶縁プラスチックを導入することによって、固定開口の領域における絶縁耐力が、またさらに高まる。射出成形可能な熱可塑性材料または熱硬化性材料を、相互接続デバイスへ注入する、またはオーバーモールドするために使用することが有利である。これに対して代替的に、例えば用途および構造スペース、または周囲の要件に応じて、エラストマーを使用することもできる。
【0013】
したがって、相互接続装置は、ステータに配置するためのプレハブ構造ユニットである。特に、これは、工具落下ZSB(Zusammenbau/アセンブリ)部品として、他と比較して著しく低減されたプロセスステップおよび組み立てステップで、製造することができる。
【0014】
相互接続装置をステータの正面に配置するために、ステータ側の接続導体は、固定開口の領域に、ステータ側の固定領域または固定素子に当接するための接触面を構成する。したがって、接続領域に存在する固定開口の特定の構成に左右されることなく、常に、同一の断面を備える接触面を利用可能である。好適には、さらに、すべての接触面は、共通の径方向平面に構成されている。代替的に、接触面を異なる平面に構成することもできる。しかしながら、これは、結果的には、製造上の観点で不利である。
【0015】
より大きな固定開口を部分的に充填することには、ステータから離れる方向の相互接続装置の正面側上でも利点がある。ステータに配置する場合、各周方向位置、および存在する固定開口のそれぞれのタイプに依存しない、したがって同一の接触面が、例えば固定ヘッドであるステータ側の固定素子用に同様にそこに構成される。これによって、この接触面を同一平面に配置することができる。これは自動製造のために有利である。
【0016】
積み重ねられた接続導体において、周方向位置に異なるサイズの固定開口がある場合、これらの接続導体の軸方向の延在に亘って、プラスチックを上述のように導入することによって、同一のままの内幅、特に一定の内径を有する軸方向孔を作り出すことができる。したがって、ステータ側の固定素子は、相互接続装置を、その軸方向の延在の全体に亘って支持することができる。その結果、固定を改善することができる。
【0017】
本発明の有利な実施形態によれば、異なる開口幅を有する2つのタイプの固定開口が接続導体に備えられる。固定開口は、好適には、共通のピッチ円上に配置されている。ステータにおける対応する固定素子も同様に、これと同一のピッチ円上に形成されている。異なるタイプの固定開口は、周方向に交互に構成することができる。さらなる利点として、相互接続装置における固定開口は、異なる直径を有する2つのピッチ円上に分布させることができる。
【0018】
本発明の有利な発展形態によれば、複数の接続導体を、同軸で相互に離間させて工具内に受容するために、特にプラスチックで封入するために射出成形工具内に受容するために、接続導体にセンタリング開口を備えることができる。
【0019】
さらに有利には、接続導体は、センタリング開口がセットになって軸方向で相互に位置決めされ、実質的に重なり合ってセンタリング孔を構成するように積み重ねられる。接続導体には、それぞれ、異なる開口幅を有する少なくとも2つのタイプのセンタリング開口が備えられている。これらは、より小さなセンタリング開口と、より大きなセンタリング開口と、を構成する。接続導体は、より小さなセンタリング開口と、より大きなセンタリング開口とが、1セットのセンタリング開口内で軸方向に隣接して配置されるように積み重ねられている。リング状スペースは、より大きなセンタリング開口のエッジ部から、より小さなセンタリング開口のほぼエッジ部まで最大で延在するが、この直接のエッジ部は含まない。このリング状スペースはプラスチックで充填されている。
【0020】
これは、接続導体のうちの1つに、プラスチックで充填されたリング状スペースと、より小さなセンタリング開口のエッジ部との間の内部に、リング状ギャップまたはリング状スペースが残ることを意味する。ここで、構造の射出成形または注入の際に、工具のセンタリングピンを受容可能である。センタリングピンは、より小さなセンタリング開口のエッジ部の少なくともわずかに外側にある表面領域内に、支持面、特に肩領域によって支持することができる。有利には、2本のセンタリングピンが、接続導体の両方の各正面側から、そうしたより小さなセンタリング開口にかみ合う、または係合する。同時にセンタリングピンは、横方向に距離を有して、比較してより大きなセンタリング開口を通り、接触せずに他の接続導体に到達することができる。
【0021】
特に有利には、接続導体の1つのみが、相互接続装置の所定の周方向位置でより小さな直径を有するセンタリング開口を構成するように、異なる直径を有するセンタリング開口を接続導体に分布させることができる。
【0022】
このようにして、接続導体を、円形に配置されたセンタリングピンによって、異なるレベルで構成された支持面で、工具内で同心円状に、同時に軸方向で離間させて配置することができる。その結果、絶縁材、すなわちプラスチックが、備えられた軸方向および横方向の中間スペースに入り込むことができる。
【0023】
さらに、上述の固定開口は、より小さな固定開口の内径にほぼ対応する外径を有する複数のセンタリングピンがその中に係合することによって、工具内の相互接続装置の配置および位置決めのためにも使用することもできる。
【0024】
有利には、接続導体は、ステータ巻線のコイル端部用のコイル接続領域と、電気機械の電流供給用の電力接続領域と、を備える。そのために、コイル接続領域は、径方向内向き、または外向きに突出する延長部として構成することができる。特に有利には、ステータのコイル端部と相互接続するために、この延長部が、共通の径方向平面に、および/または共通の円周領域またはピッチ円上に配置されている。代替的に、コイル接続領域を異なる平面に配置することも、もちろん可能である。
【0025】
相互接続装置の軸方向寸法をさらに低減させるために、軸方向にずらした接続導体の円周に、離間させたリセスを備えることができる。さらなる接続導体のコイル接続領域を、それぞれ、これらのリセスを通って軸方向に導くことが可能であり、またはそこに係合させることができる。
【0026】
有利にも、コイル端部を、好適には共通の軸方向位置または径方向位置に配置することによって、ステータの製造の自動化が可能である。その場合、2つのコイルの円周で隣接する2つのコイル端部は、それぞれ、1つの同じ接続導体に割り当てられている。
【0027】
電気機械を外部エネルギ源に接続するために、電力接続領域をステータに備えることができる。この電力接続領域は、コイル接続領域と同様に、有利には、接続導体と一体に構成されている。電力接続領域には、それぞれに、例えばプレスナット等の接続素子を受容可能な径方向内向き、または外向きに突出する延長部が備えられている。代替的に、接続導体および電力接続領域は、それぞれ、2つの部分で構成することができる。この場合、有利には、材料強度がより強い、または材料厚さがより厚い接続導体の基体に対して電力接続領域を構成することができる。
【0028】
本発明のさらなる態様によれば、電気機械のステータが提案される。このステータには、上記で説明した特徴のうちの少なくとも1つの特徴を有する相互接続装置が備えられている。
【0029】
特に、ステータは、複数のステータコイルを有するステータ巻線を備えることができる。相互接続装置は、ステータコイルの巻線体の接続素子に固定されている。
【0030】
巻線体は、特に射出成形可能なプラスチックから製造可能である。その結果、対応する接続素子が、このプラスチックに容易に構成される。接続導体の前述のリセスと相互作用する接続素子として、例えば、ロッドまたはピン等の、巻線体から軸方向に突出する保持延長部を使用することができる。相互接続装置を、プレハブ構造ユニットとして、保持延長部上に配置することができる。保持延長部は、例えば、ピンを続いて熱変形させることによって、接続導体をその位置で恒久的かつ確実に保持する。代替的に、クリップ、ロック素子、または類似の技術を用いて固定することも同様に可能である。
【0031】
さらに、巻線体は巻線領域を備えることができる。巻線領域は、巻線キャリアと、巻線領域を軸方向に画定して巻線キャリアと接続する2つの脚部と、によって構成されている。この場合、接続素子を脚部に構成することができる。接続導体を、巻線領域に対して軸方向または径方向で脚部に配置することができる。接続素子は、相互接続装置をステータに確実に固定するために、両方の脚部に設けることもできる。
【0032】
本発明のまたさらなる態様によれば、少なくとも1つの既述の特徴を有するステータを含むロータを備える、電気機械が提案される。
【0033】
以下に本発明は、図面に表された実施形態を参照して例示的に詳説される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】ステータおよび相互接続装置を備える電気機械の概略図である。
【
図2】a乃至cは、相互接続装置の個々の接続導体の図である。
【
図4】
図3の相互接続装置の拡大した部分図である。
【
図5】
図3の相互接続装置の部分的な軸方向断面図である。
【
図6】ステータの巻線体に固定された、
図3の相互接続装置の部分的な軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、電気機械10、より正確には内部ロータ型の永久励起式電気同期機械を概略的に示す。電気同期機械は、回転軸線Aを有するロータシャフト12の周りで回転可能なロータ14と、それを径方向外側で取り囲むステータ16と、を備える。ロータ14はポット型のロータキャリア18を備える。ロータキャリア18の円筒形の外周面上に、ロータ積層スタック20が配置されている。ロータ積層スタック20は、円周上で相互に離間させた複数の永久磁石22を担持する。
【0036】
ステータ16はリング状のステータキャリア24を備える。ステータキャリア24の中央リセスには、同様にプレート積層から構成された、リング状のステータ積層スタック26が配置されている。したがって、回転軸線Aは、ステータ16の中心軸線Aも形成する。ステータキャリア24は、例えば、電気機械10の外側ハウジング又は中間ハウジングとすることができる。
【0037】
ステータ積層スタック26は、リング状のステータヨーク30と、ステータヨーク30から径方向内側に突出するティース32と、を備える。ステータヨーク30はステータキャリア24に当接する。ティース32は、複数のステータコイル36を備え、ステータ巻線を構成する。これらのステータコイル36は、2つの耐熱性プラスチック製の絶縁体または巻線体40、42の助けで、銅線をティース32の周りに巻き付けられ、そこで滑り落ちないように固定されている。巻線体40、42は、それぞれ、積層スタック26の正面に当接する基部領域または巻線キャリア40a;42aと、そこからほぼ直角に、ステータ16において軸方向に突出する2つの脚部40b,c;42b,cと、を備える。脚部40b,c;42b,cは、径方向に巻線領域43を限定する。
【0038】
コイル36は、個々のストランドに電気的に割り当てられている。そのために、コイル端部36a、bは、
図1にブロックとして概略的にのみ示される相互接続装置38を用いて、所定の方法で相互接続されている。相互接続装置38の正確な構造は、以下のさらなる記載で詳説される。
【0039】
以下の
図2乃至7から分かるように、相互接続装置38は複数の接続導体52、54、56を備える。接続導体52、54、56は、絶縁手段、特にプラスチックマトリックス58によって相互に絶縁され、コイル端部36a、bと接触するために、周方向に離間させたコイル接続領域521;541、561を備える。相互接続装置38は、説明する実施形態において接続導体52乃至56で巻線体40に固定されている。これは、さらなる図を参照して、さらに詳説することで認識可能である。
【0040】
相互接続装置38は、接続導体52乃至56の電力接続領域52c、54c、56cを介して、電気エネルギ源39cを備える電力エレクトロニクス39aおよび制御エレクトロニクス39bと接続されている(
図1)。電気エネルギ源39cは、巻線に電流を可変の位相と振幅で印加して、電気機械10を作動させることができる。
【0041】
この場合、接続導体52乃至56は、リング状ディスクとして、銅半製品から、特に銅板または銅の積層から、スタンピングプロセスによって製造される。接続導体52乃至56は、軸方向で相互に離間させて配置され、マトリックス58を形成するプラスチックで封入されている。これによって、相互接続デバイスは、金属‐プラスチック複合部品、特にプラスチック射出成形部品として構成されている。したがって、接続導体52乃至56はプラスチックマトリックス58に埋め込まれている。リング状の基体の個別の領域、ならびにコイル接続領域521、541;561および電力接続領域52c、54c、56cのみが自由にアクセス可能である。相互接続装置38は、軸方向にずらして配置された接続導体52乃至56と共に、中心軸線Aに対して同軸でステータに配置されている。
【0042】
コイル接続領域521乃至561は、まず、リング状ディスク型の接続導体52乃至56の径方向内側の円周領域に径方向延長部として構成され、次いで、共通の横方向平面に曲げられている。そこで、これらのコイル接続領域521乃至561が、相互接続のために平行し、かつこの例では、径方向内向きのコイル端部36a、bに対して軸方向に隣接して配置される(
図7)。
【0043】
図示の実施形態では、コイル端部36a、bの相互接続は、3つの接続導体52乃至56のそれぞれとデルタ接続を実現するように示されている。さらに、
図7の破線の囲みで認識可能であるように、円周上で隣接する2つのコイル36の2つの隣接するコイル端部36a、bは、それぞれ、接続導体52、54、56のうちの1つの直接に相互に隣接するコイル接続領域521乃至541とも接続されている。接続導体52、54、56には、コイル接続領域間の周方向に延在する領域に、リセス52b、54b、56bがそれぞれ備えられている。2つのさらなる接続導体52乃至56のコイル接続領域521乃至561は、これらのリセス52b、54b、56bを通って軸方向に導かれている、またはそこに係合することができる。例示的に、これらリセスが
図2のa乃至cに示されている。
【0044】
コイル端部36a、bと接続導体52乃至56との接触は、特にはんだ付けまたは溶接によって材料接続的に行われる。
【0045】
相互接続装置38をステータ16に固定するために、各接続導体52乃至56は、周方向に分布された複数の固定開口522、542、562を備える。接続導体52乃至56は、固定開口522乃至562がセットになって軸方向で相互に位置決めされ、それぞれが実質的に重なり合って共通の固定孔60を構成するように積み重ねられている。そのために、接続導体52乃至56には、それぞれ、異なる開口幅を有する2つのタイプの固定開口522乃至562が備えられている。これらは、より大きな固定開口522a乃至562aと、より小さな固定開口522b乃至562b(
図2のa乃至c)と、を構成する。
【0046】
図5で認識可能であるように、2つの隣接する接続導体52、54において、固定孔60には、より大きな固定開口522aと、より小さな固定開口542bと、が構成されている。
図5では、さらに、より大きな固定開口522aのエッジ部からより小さな固定開口542bのエッジ部まで延在するリング状スペース62も、同様にプラスチック58によって充填されていることが分かる。したがって、この構成によって、軸方向に隣接する2つの固定開口のエッジ部の相互距離が増加され、同時にプラスチック58の存在によってそれが誘電体で充填される。その結果、異なる電位上にある2つの接続導体の間の空間距離および沿面距離が、かつそれと共に絶縁耐力が、増加される。
【0047】
固定開口522乃至562の周方向の分布に対応して、軸方向に突出するピン40e、fの形態の接続素子が、巻線体40、42の脚部40b、cに構成されている。これらの接続素子は、軸方向に積み重ねられた接続導体52乃至56を、固定孔60を用いて受容し、例えば後続のホットコーキングまたは別の接続技術によって、必要に応じてさらなる接続素子を伴い、受容位置で固定する。
図6に示されるように、ピン40e、fはマッシュルーム状の固定ヘッド401e、fを構成することができる。固定ヘッドは、プラスチックマトリックス58及び固定孔60と径方向で重なり合って係合する。
【0048】
したがって、
図2乃至
図7の概要から、接続導体52乃至56の固定開口522乃至562が軸方向に重なり合って配置され、したがって接続導体52乃至56が共に、巻線体40のそれぞれの接続素子40e、fに固定されていることを認識可能である。
図6において、接続導体52乃至56は、巻線領域43に対して軸方向に配置されている。
【0049】
プラスチックマトリックス58を構成するために、個々の接続導体52乃至56は、規定された方法で、図示されていない射出成形工具のセンタリングピンに受容される。そのために、センタリング開口524乃至564が接続導体52乃至56に設けられ、接続導体52乃至54を、同軸で相互に離間させて工具内に保持する。
【0050】
この場合接続導体52乃至56は、センタリング開口524乃至564がセットになって軸方向で相互に位置決めされ、実質的に重なり合ってセンタリング孔64を構成するように積み重ねられる。各接続導体52乃至56には、異なる開口幅を有する2つのタイプのセンタリング開口524乃至564が備えられている。これらは、より大きなセンタリング開口524a乃至564aと、より小さなセンタリング開口524b乃至564bと、を構成する。接続導体52乃至56は、より大きなセンタリング開口524a乃至564aと、より小さなセンタリング開口524b乃至564bとが、1セットのセンタリング開口524乃至564内で軸方向に隣接して配置されるように積み重ねられている。この場合、リング状スペース66が構成される。リング状スペース66は、より大きなセンタリング開口524a乃至564aのエッジ部から、より小さなセンタリング開口524b乃至564bのほぼエッジ部まで最大で延在するが、この直接のエッジ部は含まない。このリング状スペース66は、同様にプラスチック58で充填されている。
【0051】
図6において特に良好に認識可能であるように、接続導体52乃至56の1つのみが相互接続装置38の所定の周方向位置で、より小さな直径を有するセンタリング開口524b乃至564bを構成するように、異なる直径を有するセンタリング開口524乃至564が分布されている。さらに、センタリング開口524乃至564は、より小さなセンタリング開口524b乃至564bがそれぞれ、2つのより大きなセンタリング開口524a乃至564aに続くように、接続導体52乃至56のうちの各1つの接続導体に、周方向に分布されている。
【0052】
図2のa乃至cを参照すると分かるように、規則的に分布された半円形のリセス526、546、566が、接続導体52乃至56の外周領域に構成されている。リセス526、546、566のスペースは、そこに存在する固定開口522乃至562を除いて、周方向で閉じている。接続導体52乃至56は、2つのリセス526、546;526、566;546、566、およびスペースのみが、所定の周方向位置で軸方向に一致し、射出成形工具内でその位置に、接続導体52乃至56のうちの1つを保持することができるように積み重ねられている。
図3、
図4の封入された相互接続装置において良好に認識可能であるように、プラスチックが導入された後、個々の接続導体52乃至56は、この位置で露出されている。接続導体52乃至56の、プラスチックで覆われていない領域、特にセンタリング開口524乃至564の領域、およびリセス526乃至566の領域において、損失熱を周囲に直接に放出することができるため、接続導体の冷却を改善することができる。
【0053】
図1を参照して説明した電力接続領域52c、54c、56cは、同様に、リング状の基体からの径方向延長部として構成され、コイル接続領域521、541、561と比較してより大きな電気的な有効断面を有する。
図2、3および5において、これらの延長部は、接続導体52、54、56の径方向外側に構成されている。
【符号の説明】
【0054】
10 電気機械
12 ロータシャフト
14 ロータ
16 ステータ
18 ロータキャリア
20 ロータ積層スタック
22 磁石
24 ステータキャリア
26 ステータ積層スタック
30 ステータヨーク
32 ティース
36 ステータコイル
36a、b コイル端部
38 相互接続装置
39a 電力エレクトロニクス
39b 制御エレクトロニクス
39c エネルギ源
40、42 巻線体
40a、42a 巻線キャリア
40b、c 脚部
40e、f 接続素子
401e、f 固定ヘッド
42b、c 脚部
43 巻線領域
52、54、56 接続導体
521乃至561 コイル接続領域
52b乃至56b リセス
52c乃至56c 電力接続領域
522乃至562 固定開口
522a乃至562a より大きな固定開口
522b乃至562b より小さな固定開口
524乃至564 センタリング開口
524a乃至564a より大きなセンタリング開口
524b乃至564b より小さなセンタリング開口
526、566 リセス
58 プラスチックマトリックス
60 固定孔
62 リング状スペース
64 センタリング孔
66 リング状スペース
A 回転軸線