(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】特に計時器用共振機構のための組み付け及び整列デバイス
(51)【国際特許分類】
G04B 17/00 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
G04B17/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020160441
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2020-09-25
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ウィンクレ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-リュック・エルフェ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・クルヴォワジエ
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3144741(EP,A1)
【文献】米国特許第4023348(US,A)
【文献】実開昭53-26978(JP,U)
【文献】特開2019-109230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 15/00-18/08
G04B 29/02
G04B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の平面内に配置された、計時器用ムーブメントのプレートである第1のブリッジ又はバー(2、20、32、40、42)上における組み付け及び整列のためのデバイス(1、10、70)であって、
当該デバイスは、第2の平面内に配置された第2のブリッジ又はバー(3、30、33、43、50)を備え、
前記第2のブリッジ又はバー(3、30、33、43、50)は、計時器用共振機構の可動コンポーネントであるコンポーネント(61)を担持するように意図されており、
当該デバイスは、前記第2のブリッジ又はバー(3、30、33、43、50)を前記第1のブリッジ又はバー(2、20、32、40、42)上に整列させる整列手段を備え、
前記整列手段には、前記第2のブリッジ又はバー(3、30、33、43、50)の少なくとも2つの支持面(5、6、7、36、46、48、49、50)があり、
前記支持面は、前記第2の平面に直交するように2つの異なる方向に配置され、
前記整列手段は、さらに、前記第1のブリッジ又はバー(2、20、32、40、42)に機械的に接続される少なくとも2つの可動な調整ピース(21、22、23、51、52、53、67、68、69)を備え、
前記調整ピース(21、22、23、51、52、52、53、67、68、69)はそれぞれ、前記第2のブリッジ又はバー(3、30、33、43、50)を前記第1のブリッジ又はバー上の所定の位置に配置するように前記支持面の1つ(5、6、7、36、46、48、49、50)と接触するように構成しており、
前記調整ピース(21、22、23、51、52、53、67、68、69)は、前記第2のブリッジ又はバー(3、30、33、43、50)が前記第1のブリッジ又はバー(2、20、32、40、42)上にて複数の位置に配置されることを可能にし、
当該デバイスには、3つの支持面(5、6、7、36、46、48、49、50)と3つの調整ピース(21、22、23、51、52、53、67、68、69)があり、
前記3つの支持面は、前記第2の平面に直交する3つの異なる方向に向いて
おり、
各調整ピース(21、22、23、51、52、53、67、68、69)は、丸まっており、ピボットを形成し、調整ピースがアクチュエートされたときに、このピボットのまわりに、前記支持面(5、6、7、36、46、48、49、50)の1つが回転することができる
ことを特徴とするデバイス。
【請求項2】
2つの支持面(5、6、48、50)は、実質的に垂直である
ことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
第3の支持面(7、49)は、他の2つの支持面(5、6、48、50)のそれぞれに対して45°の角度を形成する
ことを特徴とする請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
各支持面(5、6、7、36、46)は、前記第2のブリッジ又はバー(3、30、33、43、50)から前記第1のブリッジ又はバー(2、32、40、42)への通路(11、12、13、34、44)の境界を定め、
前記調整ピース(21、22、23、67、68、69)はそれぞれ、前記通路(11、12、13、34、44)の1つ内に配置される
ことを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記通路(11、12、13、34、44)のうちの少なくとも1つは、長円状の形であり、
前記支持面(5、6、7、36、46)は、前記長円状の形の一方の側部によって形成される
ことを特徴とする請求項
4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記調整ピース(21、22、23、67、68、69)は、ねじ(27)であり、各ねじ(27)は、前記通路(11、12、13、34、44)のうちの1つ内にて前記第2の平面に直交するように配置され、
各ねじには、頭部(28)とシャフト(29)があり、
前記ねじのうちの少なくとも1つが、偏心しており、
前記頭部(28)は、前記支持面(5、6、7、36、46)と接触するように意図されている
ことを特徴とする請求項
4又は
5に記載のデバイス。
【請求項7】
各通路(11、12、13)の幅は、前記ねじ(27)の前記頭部(28)の幅と実質的に等しい
ことを特徴とする請求項
6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記調整ピース(21、22、23、51、52、53、67、68、69)は回転可能である
ことを特徴とする請求項1~
7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記調整ピースは、前記第2の平面内に配置されるねじ(51、52、53)であり、
各ねじには、頭部とシャフトがあり、
前記シャフトは、前記支持面(48、49、50)と接触するように意図されている
ことを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記調整ピース(51、52、53)は、所定の方向における前記支持面(5、6、7)の並進運動に対抗する
ことを特徴とする請求項1~4
のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
当該デバイスは、前記調整
ピース(35、45、51、52、53)に対抗するように前記支持面(36、46、48、49、50)を保持するための弾性プレストレス手段(37、47)を備える
ことを特徴とする請求項1~
10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1のブリッジ又はバー(2)には、前記第2のブリッジ又はバー(3)の位置を示す目盛りがある
ことを特徴とする請求項1~
11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第1のブリッジ又はバー(2)上にて前記第2のブリッジ又はバー(3)をロックするロック手段(57)を備える
ことを特徴とする請求項1~
12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
計時器用ムーブメントのプレートである第1のブリッジ(40)を備える、計時器用ムーブメントのための共振機構(80)であって、
請求項1~
13のいずれか一項に記載のデバイス(1、10、70)を備える
ことを特徴とする共振機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に計時器用共振機構のための、組み付け及び整列デバイスに関する。本発明は、さらに、このようなデバイスを備える計時器用ムーブメントの共振機構に関する。
【背景技術】
【0002】
計時器用ムーブメントは、一般的には、バレル、エスケープ機構及び機械的共振機構を備える。当該共振機構は、バランスと呼ばれる振動する慣性錘に関連づけられたばねを備える。近年、モノリシックな連結構造やフレキシブルなベアリングが、ばねとして用いられている。
【0003】
仮想ピボットがあるフレキシブルなベアリングによって、計時器用共振器を大きく改善することができる。最も単純なものは、交差細長材型のピボットであり、これは、概して垂直に交差するまっすぐな細長材を備える2つの支持デバイスによって形成される。これらの2つの細長材は、2つの異なる平面内にて三次元的であることができ、あるいは同じ平面内にて二次元的であることができる。後者の場合、これらの細長材があたかもそれらの交差点で溶接されているようになる。
【0004】
特に、以下の2通りの方法(独立に又は両方とも一緒に)によって、共振器のための三次元的な交差細長材型のピボットを最適化して、レートが重力場における向きに依存せずに等時性があるようにすることを試みることができる。
- 細長材の取り付け点に対する細長材の交差の位置を選択して、レートが姿勢に依存しないようにする。
- 等時性がありレートが振幅に依存しないように細長材の間の角度を選択する。
【0005】
しかし、フレキシブルなベアリングは、共振機構の他の要素が特定の構成であることを必要とする。例えば、通常用いられるパレットは、角トラベルがフレキシブルなベアリングには大きすぎるので適していない。したがって、パレットを適応させるために、このようなフレキシブルなベアリングに適合する材料及び形状が用いられる。しかし、これらの構成は、機構を動作させるために、フレキシブルなベアリングの位置が正確であり、これを精密に制御可能であることを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況で、本発明の目的は、上述の課題を回避するような、特に計時器用共振機構のための、組み付け及び整列デバイスを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明は、第1の平面内に配置された、第1のブリッジ又はバー、特に、計時器用ムーブメントのプレート、上における組み付け及び整列のためのデバイスに関する。当該デバイスは、第2の平面内に配置された第2のブリッジを備え、前記第2のブリッジは、コンポーネント、特に、計時器用共振機構の可動コンポーネント、を担持するように意図されている。
【0008】
当該デバイスは、前記第2のブリッジの少なくとも2つの支持面がある整列手段を備え、前記支持面は、前記第2の平面に直交するように2つの異なる方向に配置される。前記整列手段は、さらに、前記第1のブリッジに機械的に接続される少なくとも2つの可動な調整ピースを備える。前記調整ピースはそれぞれ、前記第2のブリッジを前記第1のブリッジ上の所定の位置に配置するように前記支持面の1つと接触するように構成している。前記調整ピースは、前記第2のブリッジが前記第1のブリッジ上にて複数の位置に配置されることを可能にする。
【0009】
このデバイスによって、特にたわみ細長材を備える計時器用共振機構のために、計時器用コンポーネントどうしを正確に整列(アライン)させるように2つのブリッジを非常に精密に組み付けることができる。実際に、支持面と調整ピースは、まわりを第2のブリッジが部分的に回転することができる回転中心を形成することを可能にする。したがって、これらの回転中心は、第2のブリッジに対して、第2のブリッジを最良な構成にするような自由度を与え、これによって、特に、第1及び第2のブリッジ上に配置されるコンポーネントが、例えば、たわみ細長材共振器のパレットフォークとバランスの間で、適切に整列する。当該デバイスによって、特に、第2のブリッジが第1のブリッジと接触するように第1のブリッジに対して第2のブリッジをポジショニングすることが可能になる。有利な実施形態の1つにおいて、当該デバイスには、3つの支持面と3つの調整ピースがあり、これらの3つの支持面は、3つの異なる方向にて第2の平面に対して直交する。
【0010】
有利な実施形態の1つにおいて、2つの支持面は、実質的に垂直である。
【0011】
有利な実施形態の1つにおいて、第3の支持面は、他の2つの支持面のそれぞれに対して45°の角度を形成する。
【0012】
有利な実施形態の1つにおいて、各調整ピースは、丸まっており、ピボットを形成し、調整ピースがアクチュエートされたときに、このピボットのまわりに、前記支持面の1つが回転することができる。
【0013】
有利な実施形態の1つにおいて、各支持面は、前記第1のブリッジへの通路の境界を定め、前記調整ピースはそれぞれ、前記通路の1つ内に配置される。
【0014】
有利な実施形態の1つにおいて、前記調整ピースは回転可能である。
【0015】
有利な実施形態の1つにおいて、前記調整ピースは、それぞれが前記第2の平面に直交するように通路内に配置されるスタッド又はねじであり、各ねじには、頭部とシャフトがあり、前記ねじのうちの少なくとも1つ、好ましくはすべては、偏心しており、前記頭部は、前記支持面に接触するように意図されている。
【0016】
有利な実施形態の1つにおいて、前記調整ピースは、前記第2の平面内に配置されるねじであり、各ねじには、頭部とシャフトがあり、前記シャフトは、前記支持面と接触するように意図されている。
【0017】
有利な実施形態の1つにおいて、前記調整ピースは、並進運動をすることができる。
【0018】
有利な実施形態の1つにおいて、前記通路のうちの少なくとも1つ、好ましくはすべては、長円状の形であり、前記支持面は、前記長円状の形の一方の側部によって形成される。
【0019】
有利な実施形態の1つにおいて、各通路の幅は、前記ねじの前記頭部の幅と実質的に等しい。
【0020】
有利な実施形態の1つにおいて、このデバイスは、前記調整手段に対抗するように前記支持面を保持するための弾性プレストレス手段を備える。
【0021】
有利な実施形態の1つにおいて、前記第1のブリッジには、前記第2のブリッジの位置を示す目盛りがある。
【0022】
有利な実施形態の1つにおいて、このデバイスは、前記第1のブリッジ上にて前記第2のブリッジをロックするロック手段を備える。
【0023】
本発明は、さらに、第1のブリッジ、特に、計時器用ムーブメントのプレート、を備える、特に計時器用ムーブメントのための、共振機構に関する。当該ムーブメントは、本発明に係る組み付け及び整列デバイスを備える。
【0024】
添付の図面を参照しながら実施形態として与えられるいくつかの実施形態の説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明確になるであろう。なお、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る組み付け及び整列デバイスの概略斜視図である。
【
図3】当該デバイスの構成、及びまわりを第2のブリッジが回転することができる回転中心の構成を概略的に示している。
【
図4】通路と偏心ねじの領域における当該デバイスの概略断面図である。
【
図5】通路と偏心ねじの領域における第1の実施形態の第1の代替形態に係るデバイスを上から見た概略図である。
【
図6】通路と偏心ねじの領域における第1の実施形態の第2の代替形態に係るデバイスを上から見た概略図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係るデバイスを上から見た概略図である。
【
図8】本発明に係る組み付け及び整列デバイスを備える共振機構を上から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
計時器用ムーブメント、特に、たわみ細長材を備える共振機構において、コンポーネントは、高い精度で固定され整列していなければならない。当該コンポーネントは、例えば、たわみ細長材ピボットと、たわみ細長材ピボットに組み付けられたバランスと、バランスによって往復運動を行うパレットフォークと、及びパレットフォークの運動によって回転レートが制御されるエスケープ車とを備える。
【0027】
図1は、第1の平面内に配置される第1のブリッジ2にコンポーネントを組み付けて整列させるためのデバイス1の第1の実施形態を示している。第1のブリッジ2は、例えば、計時器用ムーブメントのコンポーネントが配置されるように意図された計時器用ムーブメントのプレートである。第1のブリッジ2には、平坦な上面8があり、この上面8上に、計時器用ムーブメントのコンポーネントを配置する。
【0028】
デバイス1は、コンポーネントが固定されるように意図された第2のブリッジ3を備える。第2のブリッジ3は、第1のブリッジ2上に配置されて、これによって、好ましくは第1の平面に平行である、第2の平面内にて組み付けられるように意図されている。第2のブリッジ3には、組み付け後に第1のブリッジ2の上面8上にて載置されるための少なくとも部分的に平坦な下面9がある。第2のブリッジ3は、軸方向部分14と、及び軸方向部分14の端部から軸方向部分14の両側にて立ち上がる2つのわずかに曲がった側方のアーム15、16とを備える船の錨の形となっている。軸方向部分14には、例えば第1のブリッジ2まで到達するように穴17を通り抜ける通常のねじを用いて、第2のブリッジ3を第1のブリッジ2に恒久的に固定するための固定用穴17がある。整列ステップの後に、固定操作を行う。第2のブリッジ3には、さらに、第2のブリッジ3上にコンポーネントを固定するための少なくとも1つの組み付け穴18がある。
【0029】
デバイス1は、さらに、第1のブリッジ2上にて第2のブリッジ3を整列させる整列(アライメント)手段を備える。この整列手段には、第2のブリッジ3上に少なくとも3つの支持面5、6、7がある。支持面5、6、7は、好ましいことに、第2のブリッジ3の一部を形成する。第2のブリッジ3及び支持面5、6、7は、一体化されており、好ましくは同じ材料によって作られる。支持面5、6、7は、好ましいことに、平坦であり、それぞれが異なる方向を向いている。
【0030】
支持面5、6、7はそれぞれ、第1のブリッジへの別個の通路11、12、13の境界を定める。
図1において、通路11、12、13は、第2のブリッジ3を通り抜ける貫通穴である。このように、通路11、12、13は、第1のブリッジ2の上面8にアクセスすることを可能にする。当該貫通穴は、2つの側部と、2つの側部を互いに接続する2つの丸まった端部がある長円状の形となっている。2つの側部は平坦であることが好ましい。支持面5、6、7は、前記長円状の貫通穴の前記側部のうちの1つによって定められる。好ましくは、支持面5、6、7は、軸方向部分14の方を向く側部によって形成される。
【0031】
2つの通路11、12はそれぞれ、第2のブリッジ3のアーム15、16の一方の自由端に設けられる。第3の通路13は、2つのアームと第2のブリッジ3の中央部との連結部に設けられる。
【0032】
整列手段は、少なくとも3つの可動調整ピース21、22、23を備え、この可動調整ピース21、22、23のそれぞれが、前記通路11、12、13のうちの1つ内に配置される。調整ピース21、22、23は、第1のブリッジに機械的に接続されるが、動くことができる。調整ピース21、22、23は、前記支持面5、6、7のうちの1つと接触するように構成している。各調整ピース21、22、23は、所定の方向における支持面5、6、7の並進運動に対抗する。このようにして、第1のブリッジ2に対する第2のブリッジ3の位置を精密に調整することができる。調整ピース21、22、23は、第2の平面内における所定の位置にて第1のブリッジ2上にて第2のブリッジ3を横方向に保持して、これによって、特に、第2のブリッジ3が担持するコンポーネントを第1のブリッジ2が担持する一又は複数のコンポーネントと整列させることができる。通路11、12、13の横方向の大きさは、調整ピースの直径に対応するようにされる。
【0033】
好ましくは、調整ピース21、22、23は、ピボットを形成するように丸まった形となっており、調整ピースがアクチュエートされたときに、このピボットに対して支持面5、6、7がわずかに回転することができる。
【0034】
第1のブリッジ2には、さらに、第1のブリッジ2に対する第2のブリッジ3の位置を示す目盛りが設けられる。当該目盛りは、通路11、12、13の近くに、ここでは自由アーム15、16に形成された貫通穴のまわりに、設けられる。当該目盛りは、特に、第2のブリッジ3上の各調整ピース21、22、23の位置を示し、これによって、第1のブリッジ2上の第2のブリッジ3の位置を推定することが可能になる。
【0035】
なお、
図3において、最初の2つの通路11、12における支持面5、6は、実質的に垂直である。第3の通路13の支持面7は、他の2つの支持面5、6のそれぞれと45°の角度を形成するように向いている。
【0036】
支持面5、6、7と調整ピース21、22、23は、第2のブリッジ3における3つの異なる位置に位置しており、可動な各調整ピースは、1つ又は他の数の調整ピース21、22、23がアクチュエートされるときに、対応する支持面5、6、7に力を与えることができる。このようにして、第2のブリッジ3は、各調整ピース21、22、23が動くことによって、第1のブリッジ2上を動くことができる。
【0037】
図3に示しているように、3つの通路11、12、13は二等辺三角形の頂点に配置される。通路11、12、13は、同じ直線上に2つの通路11、12があるように構成している。第3の通路13は、前記直線の外側に配置されて、前記直線上への直交射影が他の2つの通路11、12の間を通り抜けるようにされる。これらの通路は、好ましいことに、前記直線上への直交射影が他の2つの通路11、12から等距離になるように構成している。
【0038】
整列手段は、まわりを第2のブリッジ3が部分的に回転することができる3つの回転中心24、25、26を形成する。調整ピース21、22、23をアクチュエートすることによって、第1のブリッジの向きを第2のブリッジに対して定めることができる。1つの調整ピース21、22、23がアクチュエートされると、第2のブリッジは、対応する回転中心のまわりを回転し、さらに、他の通路が他の調整手段21、22、23のまわりを動くようにする。第1の調整手段21をアクチュエートすると、第2のブリッジ3が第1の回転中心24を中心に回転する。第2の調整手段22をアクチュエートすると、第2の回転中心25のまわりに回転する。第3の調整手段23をアクチュエートすると、第3の回転中心26のまわりに回転する。
【0039】
また、第3の調整手段23と第3の回転中心26の間の距離が、第1の調整手段21と第1の回転中心24の間及び第2の調整手段22と第2の回転中心25の間の各距離よりも大きいように、通路の間の距離を選択する。
【0040】
図示している実施形態において、調整ピース21、22、23はねじである。当該ねじは、第2のブリッジ3の通路11、12、13を通り抜ける第1のブリッジにおける穴内に配置され、第2のブリッジ3に機械的に接続されたままで、前記穴内を回転することができるようになっている。ねじは回転することができるが、第1のブリッジ2の穴内にとどまる。
【0041】
図4に示しているように、ねじ27には、頭部28とシャフト29があり、頭部28が支持面5、6、7に接触する。ねじは偏心しており、頭部28がその角位置に応じて支持面5、6、7を動かすことができる。シャフト29は頭部28に対してセンタリングされておらず、頭部28の中心に対してオフセットされている。したがって、ねじ27が穴31内に配置されると、ねじ27を回転させることによって支持面を動かすことができる。好ましくは、ねじ27にはねじ山がなく、ねじ27は第1のブリッジ2に圧入される。
【0042】
図5の第1の代替形態においては、第2のブリッジ33にある通路34は、偏心ねじ35よりも幅広い任意の形である。ねじ35と支持面36の間の接触を維持するために、当該デバイスは弾性プレストレス手段37を備える。このプレストレス手段37は、一端38によって第1のブリッジ32に、そして、第2の端39によって第2のブリッジ33に組み付けられるばねである。ばね37は、好ましくは、支持面36をねじ35に対して保持するように、支持面36に対して実質的に垂直な方向に延伸される。また、ばね37は、ねじ35が支持面36とばね37の間に配置されるように構成している。
【0043】
図6のデバイスの第2の代替形態は、任意の形状の通路44を示しており、この通路44には、この通路44を通り抜ける弾性壁47がある。弾性壁47は、支持面46の反対側にて偏心ねじ45を囲むように構成している。このようにして、弾性壁47は、ねじ45に圧力を与えて、このねじ45を支持面46上にしっかりと留める。弾性壁47によって、ねじ45の角位置にかかわらず、ねじ45が支持面46と常に接触することを確実にすることが可能になる。
【0044】
図7は、計時器用ムーブメントのプレートのような第1のブリッジ20上の組み付け及び整列のためのデバイス10の第2の実施形態を示している。デバイス10は、T字の上側のバーが凹状に曲がった第2のT字形ブリッジ30を備える。デバイス10の支持面48、49、50は、第2のブリッジ30の外壁によって形成される。2つの支持面48、50は、T字の曲がったバーの端部に配置された曲がった外壁であり、一方で、第3の支持面49は、T字のまっすぐなバーの側壁である。
【0045】
調整手段は、第2の平面内に配置されるねじ51、52、53である。ねじ51、52、53は、必ずしも偏心しているとは限らず、そのシャフトの機能は、ねじ51、52、53がアクチュエートされたときに、第2のブリッジ30の位置を変えるように支持面48、49、50と接触することである。
【0046】
支持面48、49、50をねじ51、52、53に対抗するように保持するために、調整手段は、第2のブリッジ30の各バーの他方の側に、各ねじ51、52、53の反対側に配置されるプレストレス手段54、55、56を備える。プレストレス手段54、55、56は、各バーに対抗するように載置される曲がった細長材によって形成されるばねである。ばねは、第1のブリッジ20に固定される。ばねは、第2のブリッジ30の各バーに圧力を与えて、各支持面48、49、50をねじ51、52、53に対抗して押すように構成している。ねじを一方向にアクチュエートすると、支持面48、49、50が押されて、ばねが圧縮される。反対方向では、ばねによって支持面48、49、50がねじに対抗して押し戻される。
【0047】
2つのねじ51、53は、好ましくは、互いに垂直方向に向き、第3のねじ52は、他方のねじ51、53の方向と45°の角度を形成する方向に向く。この調整手段を介して、当該デバイスの第1の実施形態と同じ回転中心が得られる。
【0048】
デバイス10は、第1のブリッジ上にて第2のブリッジ30をロックするロック手段57を備える。ロック手段57は、例えば、2つのブリッジ20、30の平面に対して垂直に配置される標準的なねじである。これらのねじは、第2のブリッジ30を通り抜け、第1のブリッジ20に固定される。
【0049】
本発明は、さらに、本発明に係るデバイス70を備える計時器用共振機構80に関する。
図8の共振機構80は、第1のブリッジ40のようなプレート、第2のブリッジ50、たわみピボット60、バランス61、パレットフォーク62及びエスケープ車63を備える。第2のブリッジ50及び調整手段は、本発明に係るデバイスの第3の実施形態に係るものである。第2のブリッジ50は、第2の実施形態のものと同様にT字形であるが、調整手段は、第1の実施形態のものである。第2のブリッジ50には、偏心ねじ67、68、69が配置される3つの長円状の通路64、65、66がある。通路64、65、66は、T字の各バーの端部に配置され、各通路64、65、66は、そのバーの軸に沿って配置される。フレキシブルなピボット60は、T字の曲がったバーの各端部をバランス61の中央部78に接続する2つのたわみ細長材を備える。たわみ細長材は、バランス61が振動運動を行うことを可能にする。バランス61は、各端部に釣り合い錘72を備える軸方向のアーム71を備える。また、アーム72には、バランス61の中央部78から延在するラグ73がある。振動すると、バランスのラグ73は、パレットフォーク62を一方向に、そして、他の方向に、周期的に動かす。パレットフォーク62は、メインばねによって駆動されるエスケープ車63の溝に周期的に入ることによって、エスケープ車63の回転を制御する。
【0050】
当然、本発明は、図面を参照しながら説明した実施形態に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく代替形態を考えることができる。
【符号の説明】
【0051】
1、10、70 組み付け及び整列のためのデバイス
2、20、32、40、42 第1のブリッジ
3、30、33、43、50 第2のブリッジ
5、6、7、36、46、48、49、50 支持面
11、12、13、34、44 通路
21、22、23、51、52、52、53、67、68、69 調整ピース
27、35、45、51、52、53 調整手段(ねじ)
28 頭部
29 シャフト
37、47 弾性プレストレス手段
57 ロック手段
61 コンポーネント
80 共振機構