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特許7116791特に自動二輪車のための、プレッシャープレートおよび遠心アセンブリを備えるクラッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】特に自動二輪車のための、プレッシャープレートおよび遠心アセンブリを備えるクラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 43/12 20060101AFI20220803BHJP
   F16D 43/18 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
F16D43/12
F16D43/18
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020528960
(86)(22)【出願日】2017-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2017080490
(87)【国際公開番号】W WO2019101342
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-11-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】398029304
【氏名又は名称】エンデュランス アドラー ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モローネ、アルフィオ
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第00310783(GB,A)
【文献】特開2011-085258(JP,A)
【文献】米国特許第03291274(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 43/02-43/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周りに回転可能なハウジング(101)と、
前記ハウジング(101)の内部にあり、前記回転軸と同軸のシャフトと連結するように構成された固定ハブ(201)と、
前記回転軸に沿って前記固定ハブ(201)に軸方向に取り付けられ、前記固定ハブ(201)と共に回転するように構成された可動ハブ(202)と、
前記固定ハブ(201)と前記可動ハブ(202)との間に挟まれた複数のディスク(204)と、
を備えるクラッチ(100)であって、
前記固定ハブ(201)および前記可動ハブ(202)は、可変の軸方向荷重を前記複数のディスク(204)に伝達するように、互いに遠ざかるまたは近づくように軸方向に摺動するように構成され、それによって、前記ハウジングから前記シャフトへとトルクを選択的に伝達するように構成され、
前記クラッチ(100)は、前記可変の軸方向荷重を制御するためのプレッシャープレートアセンブリ(208)をさらに備え、前記プレッシャープレートアセンブリ(208)は、遠心アセンブリ(210)を含み、
前記遠心アセンブリ(210)は、
前記ハウジング(101)と共に回転するように構成された質量体ホルダ(211)と、
前記質量体ホルダ(211)内に前記回転軸の周りで放射状に配置された複数の質量体要素(212)と、
を備え、
各質量体要素(212)は、枢軸(301)を備え、前記枢軸(301)の周りを枢動することによって、遠心効果の下で変位(1002)をするように構成され、
前記複数の質量体要素(212)は、前記可変の軸方向荷重を増大させるように、遠心効果の下での前記変位(1002)によって生じる軸推力を前記プレッシャープレートアセンブリ(208)内で働かせて、前記可動ハブ(202)を前記固定ハブ(201)に近付けるようにさらに構成され、
各質量体要素(212)は、本体(302)と、前記枢軸(301)を前記本体(302)に接続する柱状要素(303)とを備え、
前記本体(302)は、占有体積を最大にするために階段状形状を有する、クラッチ(100)。
【請求項2】
回転軸の周りに回転可能なハウジング(101)と、
前記ハウジング(101)の内部にあり、前記回転軸と同軸のシャフトと連結するように構成された固定ハブ(201)と、
前記回転軸に沿って前記固定ハブ(201)に軸方向に取り付けられ、前記固定ハブ(201)と共に回転するように構成された可動ハブ(202)と、
前記固定ハブ(201)と前記可動ハブ(202)との間に挟まれた複数のディスク(204)と、
を備えるクラッチ(100)であって、
前記固定ハブ(201)および前記可動ハブ(202)は、可変の軸方向荷重を前記複数のディスク(204)に伝達するように、互いに遠ざかるまたは近づくように軸方向に摺動するように構成され、それによって、前記ハウジングから前記シャフトへとトルクを選択的に伝達するように構成され、
前記クラッチ(100)は、前記可変の軸方向荷重を制御するためのプレッシャープレートアセンブリ(208)をさらに備え、前記プレッシャープレートアセンブリ(208)は、遠心アセンブリ(210)を含み、
前記遠心アセンブリ(210)は、
前記ハウジング(101)と共に回転するように構成された質量体ホルダ(211)と、
前記質量体ホルダ(211)内に前記回転軸の周りで放射状に配置された複数の質量体要素(212)と、
を備え、
各質量体要素(212)は、枢軸(301)を備え、前記枢軸(301)の周りを枢動することによって、遠心効果の下で変位(1002)をするように構成され、
前記複数の質量体要素(212)は、前記可変の軸方向荷重を増大させるように、遠心効果の下での前記変位(1002)によって生じる軸推力を前記プレッシャープレートアセンブリ(208)内で働かせて、前記可動ハブ(202)を前記固定ハブ(201)に近付けるようにさらに構成され、
各質量体要素(212)は、本体(302)と、前記枢軸(301)を前記本体(302)に接続する柱状要素(303)とを備え、
各質量体要素(212)は、前記軸推力を働かせるように構成される、曲率を有するプロファイル接触面(1003)を備えている、
クラッチ(100)。
【請求項3】
回転軸の周りに回転可能なハウジング(101)と、
前記ハウジング(101)の内部にあり、前記回転軸と同軸のシャフトと連結するように構成された固定ハブ(201)と、
前記回転軸に沿って前記固定ハブ(201)に軸方向に取り付けられ、前記固定ハブ(201)と共に回転するように構成された可動ハブ(202)と、
前記固定ハブ(201)と前記可動ハブ(202)との間に挟まれた複数のディスク(204)と、
を備えるクラッチ(100)であって、
前記固定ハブ(201)および前記可動ハブ(202)は、可変の軸方向荷重を前記複数のディスク(204)に伝達するように、互いに遠ざかるまたは近づくように軸方向に摺動するように構成され、それによって、前記ハウジングから前記シャフトへとトルクを選択的に伝達するように構成され、
前記クラッチ(100)は、前記可変の軸方向荷重を制御するためのプレッシャープレートアセンブリ(208)をさらに備え、前記プレッシャープレートアセンブリ(208)は、遠心アセンブリ(210)を含み、
前記遠心アセンブリ(210)は、
前記ハウジング(101)と共に回転するように構成された質量体ホルダ(211)と、
前記質量体ホルダ(211)内に前記回転軸の周りで放射状に配置された複数の質量体要素(212)と、
を備え、
各質量体要素(212)は、枢軸(301)を備え、前記枢軸(301)の周りを枢動することによって、遠心効果の下で変位(1002)をするように構成され、
前記複数の質量体要素(212)は、前記可変の軸方向荷重を増大させるように、遠心効果の下での前記変位(1002)によって生じる軸推力を前記プレッシャープレートアセンブリ(208)内で働かせて、前記可動ハブ(202)を前記固定ハブ(201)に近付けるようにさらに構成され、
各質量体要素(212)は、本体(302)と、前記枢軸(301)を前記本体(302)に接続する柱状要素(303)とを備え、
前記プレッシャープレートアセンブリ(208)は、前記可変の軸方向荷重を前記遠心アセンブリ(210)から前記可動ハブ(202)へと伝達するように構成されたプレッシャープレート(209)を含み、前記遠心アセンブリ(210)は、複数の軸ピン(801)をさらに備え、
複数の軸ピン(801)は、前記プレッシャープレート(209)および前記質量体ホルダ(211)を共に回転することを可能にし、さらに、前記軸推力による、前記プレッシャープレート(209)に対する前記質量体ホルダ(211)の軸方向移動を可能にするように、前記回転軸に対してオフセットしており、前記プレッシャープレート(209)に取り付けられ、前記質量体ホルダ(211)を貫通している、
クラッチ(100)。
【請求項4】
前記プレッシャープレート(209)の移動に対抗するように構成される、少なくとも1つのリターンスプリング(206)をさらに備える、請求項記載のクラッチ(100)。
【請求項5】
前記柱状要素(303)は、レバーを提供して、遠心効果の下で前記変位(1002)を増大させるように構成された、実質的に直立して延在する要素である、請求項1~4のいずれか1項に記載のクラッチ(100)。
【請求項6】
前記質量体要素(212)は、前記本体(302)内に重心(1001)を有し、前記柱状要素(303)は、前記回転軸に対して、前記重心(1001)よりも径方向で外側にある枢軸(301)を画定する、請求項1~5のいずれか1項に記載のクラッチ(100)。
【請求項7】
前記質量体ホルダ(211)は、複数の突起構造物(1202)を備え、各突起構造物(1202)は、枢軸座部(1201)を備え、各突起構造物(1202)は、各柱状要素(303)を収容するように構成される、請求項1~のいずれか1項に記載のクラッチ(100)。
【請求項8】
前記ハウジング(101)に接続されるクラッチカバー(102)をさらに備え、前記クラッチカバー(102)は、前記複数の突起構造物(1202)をそれぞれ収容するための複数の凹部(1301)を備え、それによって、前記ハウジング(101)および前記質量体ホルダ(211)を共に回転させる、請求項記載のクラッチ(100)。
【請求項9】
前記遠心アセンブリ(210)は、前記クラッチカバー(102)と前記質量体ホルダ(211)との間に挟まれた、少なくとも1つの移動終止ばね(214)をさらに備え、前記少なくとも1つの移動終止ばね(214)は、可変の軸方向荷重の閾値に達すると、前記軸推力に部分的に対抗するように構成される、請求項記載のクラッチ(100)。
【請求項10】
前記突起構造物(1202)は、前記凹部(1301)内へとそれぞれ摺動し、それによって、前記少なくとも1つの移動終止ばね(214)の圧縮を可能にするようにさらに構成される、請求項記載のクラッチ(100)。
【請求項11】
前記遠心アセンブリ(210)は、前記少なくとも1つの移動終止ばね(214)のプリロードを制御するための設定手段(215)をさらに備える、請求項または10記載のクラッチ(100)。
【請求項12】
前記固定ハブ(201)は、螺旋形状で傾斜する第1摺動要素(901、901a、901b)を備え、前記可動ハブ(202)は、螺旋形状で傾斜する第2摺動要素(902、902a、902b)を備え、前記第1摺動要素(901、901a、901b)および前記第2摺動要素(902、902a、902b)は、駆動トルクまたは引きずりトルクを受けると、前記可変の軸方向荷重をそれぞれ増大または減少させるように、互いに嵌め合うように、および相互に摺動するように構成されている、請求項1~11のいずれか1項に記載のクラッチ(100)。
【請求項13】
前記第1摺動要素(901、901a、901b)は、前記駆動トルクのための第1の螺旋形(901a)と、前記引きずりトルクのための第2の螺旋形(901b)とを有し、
前記第2摺動要素(902、902a、902b)は、前記第1の螺旋形(901a)に対応する螺旋形(902a)と、前記第2の螺旋形(901b)に対応する螺旋形(902b)とを有する、請求項12記載のクラッチ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチに関し、特に、本発明は、プレッシャープレート、およびエンジンの回転速度に応じた自動係合を可能にする遠心アセンブリを備えるクラッチに関する。本発明は、特に、自動二輪車のクラッチに適用され得る。
【0002】
概して、本発明は、エンジンから少なくとも車輪へのトルクの伝達の係合および係合解除を可能にする、車両用のクラッチの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
近年では、高性能の自動二輪車用の自動クラッチが利用可能になっている。高性能の自動二輪車用の自動クラッチは、手動クラッチに対して、多くの利点を有する。
【0004】
特許文献1は、プレッシャープレートの自動遠心係合を用いたクラッチに関する。プレッシャープレートは、遠心性作動部材、すなわち、プレッシャープレートと上部摩擦板との間に配置される複数の球体を有する、径方向に位置決めされるランプを含む。球体は、クラッチの回転の遠心効果により外側に移動し、プレッシャープレートに作用してクラッチの係合を引き起こす。
【0005】
特許文献2は、閾速度を超えて回転されると拡張する拡張式摩擦ディスクを組み込む、自動遠心係合を用いたクラッチに関連する。拡張式摩擦ディスクアセンブリは、マルチプルディスククラッチパック内の摩擦ディスクと置き換わるように設計され、遠心効果の影響下で、底板のランプに対して径方向外側に摺動する遠心楔を含む。
【0006】
特許文献3は、エンジンの回転数(rpm)に基づいて拡張式ディスクの厚さを変更するために、クラッチバスケット内の摩擦ディスク間に設置される拡張式クラッチディスクに関する。高回転数(rpm)では、遠心性作動部材は、拡張式ディスクの周辺に向かって押し進み、これらの部材の移動が、第1板および第2板を押し離す。
【0007】
Adler S.p.A名義の特許文献4は、手動操作装置と同時に設けられる自動係合装置を備えるクラッチに関する。クラッチは、遠心アセンブリを含み、回転可能に結合される質量体は、遠心効果の影響下における変位を受け、圧力リングと連携して、ディスクパックの軸方向圧縮を生じさせることによって、クラッチの係合状態が達成される。
【0008】
先行技術の解決策は、自動二輪車のクラッチの自動遠心係合および係合解除を可能にする。
【0009】
それにもかかわらず、自動クラッチのさらなる円滑な作動が、適切な乗車体験のために達成されるべきである。その点において、先行技術の解決策には、幅広い範囲の回転速度における円滑な係合の必要性が残り、自動二輪車用の自動遠心クラッチ内のトルクの伝達は、さらに最適化され得る。
【0010】
たとえば、自動係合中のクラッチの挙動は、自動係合解除中の同じクラッチの挙動とは異なったままであり得るため、ユーザの運転/乗車体験を妨げ得る。係合/係合解除のための、このクラッチの挙動の差異は、摩擦ディスクが摩耗すると、悪化し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願公開第2008/099300号明細書
【文献】米国特許第8,459,430号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/369305号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2400177号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、先行技術の課題を解決することである。
【0013】
本発明の特定の目的は、円滑な機能およびすばらしい運転/乗車体験を可能にするラッチを提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、エンジン回転速度の低速から高速、および高速から低速への移行中のトルクの伝達を最適化する、自動遠心係合および係合解除を用いたクラッチを提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、自動モードおよび手動モードの両方において、最適に機能的であるクラッチを提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、動作において信頼性のあるクラッチを提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、完全に機能する遠心アセンブリを一体化しながらも、コンパクトサイズであるクラッチを提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、合理的に組み立てられ得るクラッチを提供することである。
【0019】
これらおよび他の目的は、本開示の不可欠な部分を形成する、添付の請求項に定義するクラッチにより得られる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の基礎をなす解決策は、回転軸の周りを回転可能なハウジングと、ハウジングの内部にあり、回転軸と同軸のシャフトと連結するように構成された固定ハブと、回転軸に沿って固定ハブに軸方向に取り付けられ、固定ハブと共に回転するように構成された可動ハブと、固定ハブと可動ハブとの間に挟まれた複数のディスクと、を備えるクラッチであって、固定ハブおよび可動ハブは、可変の軸方向荷重を複数のディスクに伝達するように、互いに遠ざかるまたは近づくように軸方向に摺動するように構成され、それによって、ハウジングからシャフトへとトルクを選択的に伝達するように構成されたクラッチである。
【0021】
クラッチは、可変の軸方向荷重を制御するためのプレッシャープレートアセンブリをさらに備え、プレッシャープレートアセンブリは、遠心アセンブリを含み、遠心アセンブリは、ハウジングと共に回転するように構成された質量体ホルダと、質量体ホルダ内に回転軸の周りで放射状に配置された複数の質量体要素と、を備え、質量体要素のそれぞれは、枢軸を備え、特にクラッチがエンジン内で回転されると、枢軸の周りを枢動することによって、遠心効果による変位をするように構成される。
【0022】
質量体要素は、遠心効果による変位において、可変の軸方向荷重を増大させるために、特にトルクの伝達のためにクラッチを係合するために、軸推力をプレッシャープレートアセンブリ内で働かせて、可動ハブを固定ハブに近付けるように移動させるようにさらに構成される。
【0023】
遠心アセンブリを有するクラッチでは、質量体要素のそれぞれは、本体と、枢軸を本体に接続する柱状要素とを備える。
【0024】
本体および柱状要素を有する質量体要素の構成により、遠心アセンブリの挙動、軸方向荷重を生み出す軸推力、および関連するばね要素の剛性を最適化することが可能である。
【0025】
さらに、有利には、質量体要素の構成要素の質量の値は、より効果的に決定されることが可能であり、本発明のクラッチの機能が向上する。
【0026】
特定の質量体要素の幾何学的形状は、クラッチの係合のために可動ハブに伝達される軸推力を提供するために最適化される。その点において、遠心アセンブリの質量体要素が、クラッチの係合を、特に自動的に、可能にする。この方法によって、最大伝達トルクが最適化されるだけでなく、過渡状態時(すなわち、始動、停止、アップシフト、ダウンシフト、部分的スロットルなど)の伝達トルクの自動制御が向上する。有利には、クラッチの自動遠心係合および係合解除は、(スロットルを開放することによって)上昇または(スロットルを閉じる)低下する、様々なエンジン回転速度からの移行中にも最適化される。
【0027】
本発明のクラッチの円滑な作動は、自動二輪車、特に高性能の自動二輪車における使用に特に有利であり、素晴らしい乗車体験を可能にする。
【0028】
好ましくは、柱状要素は、遠心効果による変位において、レバーアームを増大させるように構成された、実質的に直立して延在する要素である。
【0029】
好ましくは、柱状要素は、回転軸に対して、本体の重心よりも径方向で外側にあり、質量体要素の、遠心効果による変位に寄与する枢軸を画定する。
【0030】
好ましくは、本体は、重量および遠心アセンブリに作用する遠心力を増加させるために、占有体積を最大にするための階段状形状を有する。
【0031】
好ましくは、質量体要素は、可動ハブに軸推力を働かせ、遠心効果が止むと休止位置に戻るように、可変の曲率半径を有する、圧力アセンブリに作用するプロファイル接触面を備える。
【0032】
好ましい実施形態では、本発明のクラッチは、質量体ホルダを可動ハブから離間させ、ディスクに作用する軸方向荷重を除去するように構成される、手動係合解除のためのプッシャを備える。有利には、そのようなプッシャは、手動モードを可能にし、これは二重の(自動/手動)作動が可能なままであり、それによって、乗り手の好みおよび道路状況に最もよく適応する。
【0033】
本発明のクラッチの構成は、コンパクトなままであり、単にクラッチレバーを操作することによって、手動クラッチを備える従来の車両と同程度に容易に手動から自動モードへの切り替えを可能にするため、特に有利である。
【0034】
好ましくは、質量体ホルダは、対応する突起構造物に収容される複数の枢軸座部を備え、それによって、各柱状要素が突起構造物に挿入される。好ましくは、クラッチは、クラッチカバーをさらに備え、クラッチカバーは、複数の突起構造物をそれぞれ収容するための複数の凹部、特に貫通孔を備え、それによって、ハウジングおよび質量体ホルダを共に回転させる。有利には、完全に作動する遠心アセンブリを一体化する本発明のクラッチのコンパクトな構成が達成される。
【0035】
好ましくは、遠心アセンブリは、クラッチカバーと質量体ホルダとの間に挟まれた、少なくとも1つの移動終止ばねをさらに備え、移動終止ばねは、可変の軸方向荷重の閾値に達すると、軸推力に部分的に対抗するように構成される。この方法によって、係合および係合解除中のクラッチの作動は、低速~中速のエンジン回転速度において向上し、遠心アセンブリの自動動作がより信頼性のあるものとなる。
【0036】
好ましくは、突起構造物は、凹部内へとそれぞれ摺動することが可能であり、それによって、非常にコンパクトなクラッチの全体構成を維持しながらも、少なくとも1つの移動終止ばねの圧縮を可能にする。
【0037】
好ましくは、遠心アセンブリは、移動終止ばねのプリロードを制御する設定手段を備え、それによって、クラッチを特定の要求、および提供される特定の乗り物およびエンジンの特性に合わせて調整することが可能になる。
【0038】
好ましくは、プレッシャープレートアセンブリは、可変の軸方向荷重を遠心アセンブリから可動ハブへと伝達するように構成されたプレッシャープレートを含み、遠心アセンブリは、回転軸に対してずれており、プレッシャープレートに取り付けられ、質量体ホルダを貫通する複数の軸ピンをさらに備える。これらの軸ピンは、プレッシャープレートおよび質量体ホルダを共に回転することを可能にし、さらに、軸推力による、プレッシャープレートに対する質量体ホルダの軸方向移動を可能にする。有利には、これらの軸ピンが遠心アセンブリのいくつかの構成要素を連結させることにより、クラッチの組立てはより合理的となる。同時に、軸ピンがクラッチの係合および係合解除中の、プレッシャープレートの軸方向移動のガイドに寄与することにより、クラッチの動作が向上する。
【0039】
好ましくは、プレッシャープレートアセンブリは、プレッシャープレートの移動に対抗し、それによって、クラッチの係合および係合解除時の機能を向上させ、シームレスかつ滑らかな動作に寄与するように構成される、少なくとも1つのリターンスプリングをさらに含む。
【0040】
好ましくは、固定ハブおよび可動ハブは、ハブの軸方向移動中に互いに嵌め合う、少なくとも1つの螺旋形状に従って傾斜する、それぞれの摺動要素を備える。ハブがトルクを受けると、これらの摺動要素は、可変の軸方向荷重を増加または減少させ、それによって、加速中にクラッチのさらなる係合に寄与し、さらに、必要に応じて部分的な係合解除を可能にする。好ましくは、2つの別個の螺旋形状が、「モータリング」または「全開スロットル」状態のための作動を最適化するように、駆動トルクおよび引きずりトルクのために設けられる。
【発明の効果】
【0041】
さらなる特徴および利点が、以下に続く、本発明の限定されない例を表す好ましい実施形態の詳細な説明により明白となる。特に、従属請求項が、本発明のさらなる有利な態様を定義する。
【0042】
本発明を、限定されない例として提供される添付の図面を参照して開示する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明のクラッチのアセンブリである。
図2図1のクラッチの分解組立図を示す。
図3】アイドル状態の、図1のクラッチの断面図である。
図4】初期係合状態の、図1のクラッチの断面図である。
図5】完全係合状態の、図1のクラッチの断面図である。
図6】アイドル回転速度のための手動操作の、図1のクラッチの断面図である。
図7】中高度の回転速度のための手動操作の、図1のクラッチの断面図である。
図8】本発明のクラッチのプレッシャープレートアセンブリの分解組立図である。
図9】本発明のクラッチのハブアセンブリの分解組立図である。
図10】本発明のクラッチの質量体要素の側面図である。
図11図10の質量体要素の斜視図である。
図12】本発明のクラッチの質量体ホルダである。
図13】本発明のクラッチのカバー要素である。
図14】本発明のクラッチのハウジングである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
異なる図面中において、類似の要素を類似の参照符号で示す。
【0045】
図1は、組み立てられた状態の、クラッチ100のアセンブリを示す。クラッチ100は、ハウジング101およびクラッチカバー102を備え、クラッチカバー102はハウジング101に接続され、閉じられたシェル構造を画定する。
【0046】
クラッチ100は、駆動軸と従動軸との間の回転運動およびトルクの伝達を選択的に指示するために使用され、好ましい実施形態では、クラッチ100は自動二輪車のクラッチである。好ましくは、ハウジング101は、エンジンからのトルクを受けるように、トーショナルダンパーを含む主要駆動歯車(図示されず)に接続される。
【0047】
図2は、クラッチ100の分解組立図を示す。
【0048】
ハウジング101は、回転軸の周りを回転可能であり、回転軸に沿って、クラッチの他のすべての内部部品が配置される。特に、これらの内部部品は、回転軸上に中心を有する円周に沿って径方向位置に対称に配置される。
【0049】
クラッチ100は、ハウジング101の内部に固定ハブ201を備え、固定ハブ201は、ハウジング101の回転軸と同軸であるシャフト(図示されず)に連結されるように構成される。その意味で、ハブ201は、そのようなシャフトとの回転において「固定」であり、シャフトに対するその軸方向位置もまた「固定」である。
【0050】
固定ハブ201の回転は、以下において詳細に説明するように、クラッチ100によりトルクを選択的に伝達するように、ハウジング101の回転に係合され、または回転から係合解除され得る。
【0051】
好ましくは、適切なベアリング、たとえばローラベアリング(図示されず)が、ハウジング101に挿入され、ハウジング101と固定ハブ201との間に挟まれる。好ましくは、スペーサ203が、ハウジング101と固定ハブ201との間の適切な嵌合を確保するために、固定ハブ201とベアリングとの間に挟まれる。
【0052】
クラッチ100は、回転軸に沿って固定ハブ201に取り付けられる可動ハブ202をさらに含む。可動ハブ202は、固定ハブ201と共に回転するが、同時に、軸方向には摺動することで固定ハブから遠ざかる、または近づくような形状とされる。その意味で、ハブ202は、固定ハブ201に対してその軸位置において「可動」であるが、トルクを伝達するように構成されるように、上記のシャフトと共に回転される。
【0053】
クラッチ100は、固定ハブ201と可動ハブ202との間に挟まれる複数のディスク204をさらに備える。既知の方法で、複数のディスク204は、摩擦材料がコーティングされた複数のリング状のディスクを含む。複数のディスク204は、互い違いになっている「駆動」ディスクおよび「従動」ディスクからなり、駆動ディスクは、特にその外歯によってハウジング101に連結され、駆動ディスクは、特にその内歯によって可動ハブ202の外側円筒面に連結され、可動ハブ202の外側円筒面は、ドローイング面(drawing surface)となる。
【0054】
ディスク204が、摩擦によりトルクが伝達されるように互いに押圧されると、従動ディスクは、駆動ディスクからのトルクを受け、それを可動ハブ202に、そして固定ハブ201に伝達し得る。
【0055】
この意味で、可動ハブ202は、固定ハブ201に対して軸方向に摺動し、遠ざかる、または近づいて軸方向荷重をディスク204に伝達するように構成される。
【0056】
換言すると、軸方向荷重がディスク204を圧縮すると、トルクが伝達され得るが、一方で、そのような軸方向荷重がない場合は、複数のディスク204は、相対的に回転自在であり、クラッチ100によりトルクは伝達されない。
【0057】
この軸方向荷重は可変であり、ハウジング101から固定ハブ201へ、そして好ましくは自動二輪車の変速システムの主軸である、出力軸へのトルクの伝導のために、クラッチの係合および係合解除を起こすために制御され得る。
【0058】
クラッチ100は、さらに説明するように、軸推力を受けるために、可動ハブ202に連結される底部側プレッシャープレート205をさらに備える。
【0059】
クラッチ100は、また、さらに説明するように、固定ハブ201と底部側プレッシャープレート205との間に挟まれ、プレッシャープレートの移動に抗するように構成される、リターンスプリング206、特に皿ばねまたはスロット付きディスクスプリングを備える。代替的に、1つまたは複数のコイルばねがリターンスプリングとして使用され得る。
【0060】
クラッチ100は、底部側プレッシャープレート205(可動ハブに連結される)とプレッシャープレートアセンブリ208との間に挟まれるベアリング207を備える。好ましくは、ベアリング207は、スラストベアリングである。
【0061】
プレッシャープレートアセンブリ208は、トルクを選択的に伝達するために、可動ハブ202に作用し、そして次にディスク204に作用する可変の軸方向荷重を制御するように構成される。
【0062】
プレッシャープレートアセンブリ208は、プレッシャープレート209、遠心アセンブリ210、および、好ましくは小型化のために、このシステムにおいては機能的要素となるクラッチカバー102を備える。
【0063】
遠心アセンブリ210は、ハウジング101と共に回転するように構成される質量体ホルダ211を備え、質量体ホルダ211は、特に、クラッチカバー102に拘束される。
【0064】
代替の実施形態(図示されず)では、単にクラッチアセンブリを閉鎖する機能を有する異なるクラッチカバーが設けられてもよく、その場合、ハウジング101を遠心アセンブリ210と共に拘束するためにプレッシャープレートアセンブリ内で専用の部品を使用する。
【0065】
遠心アセンブリ210は、質量体ホルダ211内に回転軸の周りに放射状に配置される複数の質量体要素212をさらに備える。
【0066】
さらに説明するように、各質量体要素212は、好ましくは、質量体要素212を質量体ホルダ211に、回転可能に拘束する枢軸ピン213によって補われる枢軸を備える。
【0067】
質量体要素212は、枢軸の周りを枢動することによる、遠心アセンブリ210中の、遠心効果により変位するように構成される。遠心効果によるそのような変位では、質量体要素212は、ベアリング207および底部側プレッシャープレート205によって可動ハブ202に作用するように、プレッシャープレートアセンブリ208内で軸推力を働かせ、それによって可動ハブ202を固定ハブ201に近づけるように構成される。換言すると、質量体要素212は、遠心効果のために枢動することによって、ディスク204に作用する軸方向荷重を増大させ、それによって、クラッチ100に係合する。
【0068】
遠心アセンブリ210は、クラッチカバー102と質量体ホルダ211との間に挟まれる、少なくとも1つの移動終止ばね(end-movement spring)214、特に一対の対面型皿ばねまたはスロット付きディスクスプリングをさらに備える。
【0069】
遠心アセンブリ210は、また、少なくとも1つの移動終止ばね214のプリロードを制御するための設定手段215を備える。特に、設定手段215は、クラッチカバー102と質量体ホルダ211との間の空隙を制御することによって、少なくとも1つの移動終止ばね214のプリロードを制御するように構成される。
【0070】
プレッシャープレートアセンブリ208は、示すように、ねじ216によってハウジング101に連結されるクラッチカバー102により閉鎖される。
【0071】
図3は、アイドル状態のクラッチ100の断面図を示す。「アイドル」状態とは、エンジンの種類に応じて、エンジンの低回転速度、たとえば自動二輪車の場合は1000~1400rpmの範囲に対応する。
【0072】
その点において、アイドル状態のクラッチ100の構成は、休止状態(エンジンを停止した状態)に想定される構成に類似である。特に、クラッチ100は、「組立前」のとき、つまり、クラッチ100の構成要素が組み立てられているが、クラッチ100は、まだ車両に取り付けられていないときに、係合解除されている。
【0073】
質量体要素212のそれぞれは、枢軸301を備え、枢軸301の周りで枢動することによって遠心効果の影響下で変位するように構成される。好ましくは、回転ピンが、質量体要素212の回転のために枢軸301に関連付けられる。代替的に、枢軸301自体の湾曲形状が、質量体要素212に対して回転支点を提供するのに十分となり得る。
【0074】
質量体要素212のそれぞれは、本体302、および枢軸301を本体302に接続する柱状要素303をさらに備える。
【0075】
アイドル状態では、質量体要素212は、遠心アセンブリ内で径方向内側にある。特に、遠心力が生じていないため、その径方向内側表面は、質量体ホルダ211の表面に当接する。質量体要素212は、この状態において、休止位置にあると定義される。休止位置では、好ましくは、柱状要素303は、略垂直である。
【0076】
前述のように、アイドル状態では、クラッチは係合解除され、可動ハブ202とディスク204との間に約1.50~1.75mmの間隙310が存在する。
【0077】
図4は、初期係合状態のクラッチ100の断面図を示す。「初期係合」状態は、エンジンの種類に応じて、エンジンの中低度回転速度、たとえば自動二輪車の場合は1800~2000rpmの範囲に対応する。
【0078】
その点において、初期係合状態のクラッチの構成は、低速前進速度における始動段階の車両の状態に対応する。
【0079】
「初期係合」状態では、質量体要素212は、クラッチ100の回転による、遠心アセンブリ210に作用する遠心力によって径方向外側に押し出される。
【0080】
その点において、質量体要素212が「休止」状態を脱し、径方向に回転される「中間」状態となる。
【0081】
質量体要素212の底部接触表面は、プレッシャープレート209に軸推力を働かせることによって、可動ハブ202が固定ハブ201の近位に移動させられる。
【0082】
同時に、リターンスプリング206は、質量体要素212の初期変位のために圧縮される。代わりに、リターンスプリング206は、この初期移動により最初に変形されるように、移動終止ばね214よりも低い剛性を有するため、移動終止ばね214は、実質的に影響を受けないままである。
【0083】
「初期係合」状態では、クラッチ100が係合を開始し、可動ハブ202とディスク204との間の間隙410は実質的にゼロに減少する。
【0084】
クラッチ100は、クラッチの手動の係合解除を指示するために構成されるプッシャ401をさらに備え、プッシャ401は、明瞭にするためにこれまでは省略され、以下の図面を参照して説明する。
【0085】
図5は、完全係合状態のクラッチ100の断面図を示す。「完全係合」状態は、エンジンの種類に応じて、エンジンの中高度~高度、たとえば、自動二輪車の場合、3000rpmより大きい範囲の回転速度に対応する。
【0086】
その点において、完全係合状態のクラッチの構成は、全速前進速度における、走行車両の状態に対応する。
【0087】
完全係合状態では、質量体要素212は、クラッチ100の回転による、遠心アセンブリに作用する遠心力によって、径方向外側にさらに押し出される。
【0088】
その点において、質量体要素212は、径方向に回転される「完全」状態となり、遠心作用の影響下において最大の径方向変位に達する。特に、質量体要素212は、質量体ホルダ211の表面に当接し、変位終端位置に達する。質量体ホルダ211の当接面によって、質量体要素212のさらなる回転が防止されるため、質量体要素212のさらなる径方向の変位は不可能である。
【0089】
質量体要素212の底部接触表面は、より大きな軸推力をプレッシャープレート209に働かせ、それによって、可動ハブ202を固定ハブ201の近位に移動させる。完全係合状態では、クラッチ100は、最大トルクを伝達するように構成される。
【0090】
生じる特定の軸方向荷重は、原則的に質量体要素212の幾何学的形状に依存する。最大の軸方向荷重が、質量体要素212が一回転することによって達成することは有利となる。
【0091】
ディスク204はある特定の閾値を超えて圧縮することができないため、移動終止ばね214が遠心アセンブリ中に設けられる。移動終止ばね214は、クラッチカバー102と質量体ホルダ211との間に挟まれ、「完全係合」状態では圧縮されて、同時にクラッチ100の確実な動作を維持しながらも、質量体要素212の一回転を可能にする。
【0092】
実際には、移動終止ばね214は、クラッチの動作を妨げることなく、回転される質量体要素212によりもたらされる軸推力を部分的に妨害するように構成される。
【0093】
好ましくは、設定手段215は、クラッチ100の動作状態の微調整を提供するように、移動終止ばね214のプリロードを制御することを可能にする。
【0094】
好ましい実施形態では、質量体ホルダ211は、クラッチカバー102に対して摺動することによって、質量体要素212に余分の空隙をもたらすために、約0.75~1.00mmの(負の)間隙510を達成するように構成される。
【0095】
好ましくは、2つの対面式皿ばねまたはスロット付きディスクスプリングが、質量体要素212の最大変位のための適切な空間を提供するように、移動終止ばね214として利用される。
【0096】
図6は、アイドル回転速度用の手動操作のクラッチ100の断面図を示す。ここでも、「アイドル」回転速度は、エンジンの種類に応じて、たとえば、自動二輪車の場合、1000~1400rpmの範囲内である。
【0097】
説明したように、クラッチ100は、クラッチの手動指示(manual commanding)を可能にするプッシャ401を備える。特に、プッシャ401は、質量体ホルダ211を上昇させてプレッシャープレート209から離間させるために、典型的にはクラッチレバーの手動操作によって作動され得る。特に、質量体ホルダは、約2.0mmの(負の)間隙611を移動させられる。
【0098】
前述のように、好ましい実施形態では、質量体ホルダ211は、クラッチカバー102に対して摺動することによって、前述の約2.0mmの(負の)間隙611を達成するように構成される。
【0099】
質量体ホルダの動作なしでプッシャ401を作動させることによって、リターンスプリング206もまた、プレッシャープレート209および可動ハブを上昇させ、可動ハブ202とディスク204との間に(負の)間隙612が提供されることによって、クラッチが係合解除される。特に、前述の約3.5mmの(負の)間隙612が、可動ハブ202とディスク204との間に形成される。
【0100】
同時に、アイドル状態では、質量体要素212は、遠心アセンブリにて径方向内側にある。特に、その径方向内側表面は、遠心力が生じないため、質量体ホルダ211の内側表面に当接する。この状態では、質量体要素212は、「休止」状態である。
【0101】
クラッチは、いずれの場合でも、プッシャ401の動作により係合解除のままである。
【0102】
好ましい実施形態では、プッシャ401は、クラッチ100の外部にあり、代替のエンジンでは、従動軸を通過する内部プッシャ(またはプラー)の取り付けが利用され得る。
【0103】
図7は、中高度~高回転速度のための手動操作のクラッチ100の断面図を示す。前述のように、エンジンの種類に応じて、エンジンの中高度~高回転速度、たとえば、自動二輪車の場合3000rpm以上の範囲は、上記の「完全係合」の回転速度に対応する。
【0104】
それにもかかわらず、プッシャ401の手動操作により、クラッチ100が係合解除状態となる。その点において、中高度~高回転速度のための手動操作の、クラッチの構成は、たとえば、車両が走行している間の、ギアチェンジ中の状態に対応する。
【0105】
大きな遠心力により、質量体要素212は、径方向に回転される「完全」状態となり、遠心作用の影響下において最大の径方向変位に達する。特に、質量体要素212は、質量体ホルダ211の表面に当接し、それによって、質量体要素212のさらなる径方向の変位は不可能である。ここでも、質量体要素212の底部接触表面は、軸推力をプレッシャープレート209に働かせ、それによって、可動ハブ202を固定ハブ201の近位に移動させる。好ましくは、可動ハブ202は、質量体要素212の回転により下方向に2.5mm約移動させられる。
【0106】
移動終止ばね214は、プッシャ401のみの効果によって圧縮されるため、これ以上係合に影響しない。質量体要素212は、一回転を達成するために、リターンスプリング206の抗力のみを克服しなければならない。
【0107】
プッシャ401が、質量体ホルダを、好ましくは上記のように約2.0mmの(負の)間隙611を移動させると、可動ハブ202とディスク204との間に適切な(負の)間隙710が維持される。
【0108】
実際には、たとえば、可動ハブ202が、完全に回転した質量体要素212により、約2.5mmの(正の)間隙を移動され、約3.5mmの(負の)間隙(1.5mmの初期空隙および約2.0mmの間隙611)が可動ハブ202とディスク204との間に、アイドル状態について形成される場合、プッシャ401が動作されるときに、クラッチの係合を防止する、約1.0mmの(負の)間隙710が依然として維持される。
【0109】
概して、質量体要素212の遠心効果の影響下の径方向変位によりもたらされる軸方向移動は、プッシャ401によりもたらされる軸方向移動にアセンブリの初期空隙を加えたものよりも小さくなるべきである。
【0110】
少なくとも1つの移動終止ばね214のプリロードが、前述のように、設定手段215により制御され、それによって、遠心アセンブリ210とプッシャ401との間に適切な空隙が設定され得る。
【0111】
したがって、クラッチ100は、自動モード、および手動モードを提供し、手動モードは、単にクラッチレバーを操作することにより、完全な機能性を有して実行され得る。
【0112】
図8は、遠心アセンブリ210を含む、クラッチ100のプレッシャープレートアセンブリ208の分解組立図を示す。前述のように、プレッシャープレートアセンブリ208は、トルクを選択的に伝達するために、可動ハブ202に作用し、次に、ディスク204に作用する可変の軸方向荷重を制御するように構成される。
【0113】
特に、プレッシャープレート209は、可変の軸方向荷重を、ベアリング207により、遠心アセンブリ210から可動ハブ202(図示されず)に伝達するように構成される。
【0114】
遠心アセンブリ210は、クラッチの回転軸に対してずれており、プレッシャープレート209に、たとえばそのネジ穴にねじ込まれることで取り付けられる複数の軸ピン801をさらに備える。
【0115】
軸ピン801の側面は平滑であり、軸ピン801は、質量体ホルダ211のスロット802を通過し、プレッシャープレート209と質量体ホルダ211との連動した回転を可能にするように構成される。
【0116】
同時に、軸ピン801は、遠心力により変位されると、挟まれた質量体要素212によりもたらされる軸推力の効果の影響下で、プレッシャープレート209に対する質量体ホルダ211の軸方向移動のガイドを可能にする。
【0117】
軸ピン801は、このようにして、質量体要素212の変位移動をガイドし、可動ハブ202に作用する、釣り合いのとれた、左右対称の軸方向荷重を提供するように構成される。軸ピン801は、クラッチ100の確実な動作を提供し、また、プレッシャープレート209に対する回転による表面の摩耗を回避するために、プレッシャープレート209と質量体要素212との連動した回転をさらに可能にする。
【0118】
さらに、軸ピン801は、また、遠心アセンブリ210を連結する、クラッチ100のアセンブリに対する利点をもたらす。いずれの場合も、これらの軸ピン801がなくても、クラッチ100の構造的一体性が、達成されることが可能であり、これらの軸ピン801は任意の要素のままである。
【0119】
好ましい実施形態では、遠心アセンブリ210は、3つの120°からなる構成で回転軸の周りを左右対称に配置される、3つの質量体要素212を備える。代替の実施形態では、異なる数の質量体要素が利用され得る。たとえば、2つの対面かつ適切な形状の質量体要素で十分である。別の実施形態は、6つの60°からなる構成で配置される、6つの質量体要素を使用し得る。概して、質量体要素の数が多ければ、遠心アセンブリがより複雑となり、大きな空間を占める部品が多くなるという犠牲により、軸方向荷重における釣り合いが優れる。
【0120】
前述のように、クラッチカバー102は、複数のねじ216を用いて、ハウジング101(図示されず)に組付けられる。好ましい実施形態では、質量体ホルダ211は、クラッチ100のハウジング101と共に回転するために、クラッチカバー102に拘束される。代替の実施形態では、質量体ホルダは、クラッチカバー以外の別個の部品により、ハウジングに連結され、回転に引き込まれ得る。
【0121】
図9は、クラッチ100のハブアセンブリの分解組立図を示す。ハブアセンブリは、固定ハブ201、可動ハブ202および複数のディスク204を含む。
【0122】
固定ハブ201は、好ましくは外側表面上の、少なくとも1つの螺旋形に従い傾斜する複数の第1摺動要素901を備える。可動ハブ202は、好ましくは内側表面中の、それぞれの複数の第2摺動要素902を備える。
【0123】
第1摺動要素901および第2摺動要素902は、固定ハブ201に対する可動ハブ202の回転移動および軸方向移動を拘束するように、互いに嵌り合うように構成される。
【0124】
傾斜摺動要素901および902は、ハブアセンブリがモータリングトルクまたは引きずりトルクを受けると、ディスク204に作用する可変の軸方向荷重を増大または減少させるように、相互に摺動するようにさらに構成される。
【0125】
摺動要素901および902によりもたらされる軸方向荷重の強度に対する効果は、上記の遠心アセンブリによりもたらされる軸推力に対する追加の効果となる。換言すると、クラッチ100は、ディスク204に作用する軸方向荷重への2つの自動寄与(automatic contribution)、遠心アセンブリにより与えられる軸推力により表される第1の寄与、およびハブ201および202に作用するトルクの効果の影響下で、摺動要素901および902によりもたらされる軸方向荷重により表される第2の寄与を提供する。
【0126】
より詳細には、摺動要素901および902の構成により、固定ハブ201および可動ハブ202は、駆動トルク、すなわち、車両のエンジンによりもたらされるトルクを受けると、押し合わされるように構成され、また、引きずりトルク、すなわち、(典型的には、車両のブレーキングの段階の)車両のエンジンにより提供されるトルクに対抗するトルクを受けると、引かれるようにも構成される。
【0127】
有利には、この、駆動トルクの影響下のさらなる軸方向荷重は、摺動要素901および902の螺旋形の溝による継手上のハブ201および202の摺動によりディスク204に作用する軸方向荷重の増大をもたらす。
【0128】
反対に、引きずりトルクが、(典型的にはスロットル開放段階およびまたはブレーキング段階の)駆動トルクよりも十分に大きい場合、摺動要素901および902は、軸方向荷重の減少をもたらし、それによって、完全に自動で、遠心アセンブリの力を相殺するように構成される。
【0129】
摺動要素901および902により、クラッチ100は、したがって、駆動トルクの影響下の自動補助機能、および「スリッパークラッチ」のような、バックトルクリミッタの自動機能を提供する。
【0130】
有利には、摺動要素901および902は、クラッチ100の円滑な動作を可能にし、クラッチの係合および係合解除の両方の間、遠心アセンブリの自動機能を補助および促進し、それによって、運転/乗車をより快適にする。
【0131】
少なくとも1つの傾斜摺動要素901および902の螺旋傾斜は、クラッチ100のさらなる較正パラメータである。摺動要素がより傾斜されると、ディスク204に印加される軸方向荷重はより大きくなる。
【0132】
好ましい実施形態では、摺動要素901は、長摺動要素901aと、短摺動要素901bとを備え、摺動要素902は、長摺動要素902aと短摺動要素902bとを備える。
【0133】
長摺動要素901aおよび902aは、(「スロットル全開」状態の)駆動トルクを受けると、軸方向荷重を増加させるために、固定ハブ201と可動ハブ202とを押し合わせるように構成される、第1の螺旋形に従って傾斜する摺動面を備える。
【0134】
短摺動要素901bおよび902bは、(「モータリング」状態の)引きずりトルクを受けると、軸方向荷重を減少させるために、固定ハブ201と可動ハブ202とを引くように構成される、第2の螺旋形に従って傾斜する摺動面を備える。
【0135】
好ましい実施形態では、駆動トルクは、長摺動要素901aおよび902aに亘り分配され、長摺動要素901aおよび902aは、短摺動要素901bおよび902bよりも大きな表面を有し、引きずりトルクは、短摺動要素901bおよび902bに亘り分配される。
【0136】
実際には、短摺動要素901bおよび902bの、より制限される抵抗部が、引きずりトルクの影響下で生じる応力に耐えることが既に可能である一方で、長摺動要素901aおよび902aのより大きな抵抗部は、駆動トルクの影響下で生じる応力に耐える必要があるように、引きずり(バックトルク)時のトルク値は、駆動トルク時のトルク値よりも制限される。
【0137】
別個の、より小さいサイズの、後方摺動する、短要素901bおよび902bを提供することにより、クラッチアセンブリの確実性を維持しながらも、クラッチ100のコンパクト性が達成される。
【0138】
自動二輪車の場合、好ましくは、摺動要素901および902の螺旋形のピッチは、オイルバスクラッチの場合は500mm~2000mm、より好ましくは900mm~1800mmに含まれる。典型的なサイズの自動二輪車のクラッチ場合、これは、17°~9°の範囲の摺動要素の傾斜度に対応する。
【0139】
概して、螺旋ピッチの値は、クラッチに望ましい動作特性、およびクラッチが取り付けられる車両の種類に基づいて決定され得る。
【0140】
代替の実施形態では、長摺動要素901aおよび902aの第1の螺旋形は、短摺動要素901bおよび902bの第2の螺旋形の傾斜度と異なる傾斜度、特により大きな傾斜度を有してもよい。それによって、摺動要素901および902の効果の影響下のクラッチの挙動は、駆動トルクまたは引きずりトルクの状態にさらに最適化され得る。
【0141】
好ましくは、固定ハブ201および可動ハブ202は、固定ハブ201にねじ込まれ、可動ハブ202内のそれぞれのスロット904を通過する複数の軸ピン903によって接続される。特に、上記のように摺動要素上でハブの螺旋形移動を可能にするために、スロット904は、楕円形の断面図を有する。
【0142】
上記のように、ハブアセンブリは、(ここでも任意である)複数のねじ905により可動ハブ202に連結される底部側プレッシャープレート205を備える。底部側プレッシャープレート205は、プレッシャープレート209(図示されず)によりもたらされる軸推力を受けるように構成され、その点において、底部側プレッシャープレート205は、可動ハブ202の「受動」要素のままである。
【0143】
代替の実施形態では、底部側プレッシャープレート205は変更され得る、または可動ハブ202がプレッシャープレートアセンブリからの軸推力受けるように適合されるままである限りは、可動ハブ202と一体に形成され得る。
【0144】
図10は、質量体要素212の側面図を示す。上記のように、質量体要素212は、枢軸301、本体302、および枢軸301を本体302と接続する柱状要素303を備える。
【0145】
枢軸301は、質量体ホルダ211に対する回転連結を画定する(図示されず)。好ましくは、複数の回転ピンが、枢軸301とその座部との間に設けられ得る。そうでなければ、枢軸301の湾曲形状が、質量体要素212の回転支点を提供するのに十分となり得る。
【0146】
柱状要素303は、レバーのアームを、質量体要素212の遠心効果の影響下における変位において増大させるように構成される、略長尺かつ直立要素である。
【0147】
特に、遠心力は、横向きで、(例示的位置に配置される)質量体要素212の重心1001に作用する。柱状要素303は、重心1001(「荷重点」)および枢軸301(「支点」)からのより長い距離(「レバーのアーム」)を提供し、それによってレバーのアームが増大する。レバーのアームを増大させることによって、矢印1002で例示される遠心効果の影響下における変位移動が促進され、そして、より効果的に、質量体要素212の底のプロファイル接触面1003により付与される軸推力へと変換される。
【0148】
重心1001は、本体302内に位置し、本体302は、質量体要素212における重量の大半を保持する。好ましくは、柱状要素303は、(図10の右手側で)クラッチの回転軸に対する重心1001よりも、半径「r」に沿って径方向に外部にある枢軸301を画定する。径方向により外部にある枢軸301を有することによって、外販形により大きな質量体が位置することによって遠心加速度が増大するため、質量体要素212に作用する遠心力は、増大してもよい。その点において、質量体要素212の遠心効果の影響下における変位は、さらに最適化される。
【0149】
さらに、径方向により外部にある枢軸301を有することによって、クラッチ100のハウジングの内部部品のためのより大きな空間が、中心に向かって利用可能になり、それによって、システムのコンパクト性が増加する。
【0150】
代替の実施形態(図示されず)では、枢軸が重心と整列される、または重心よりも内側となり得る。
【0151】
概して、プロファイル接触面1003は、軸推力を働かせるように構成される、可変の曲率半径を有する。たとえば、プロファイル接触面1003は、カム状形状を有する。特に、枢軸301と、プロファイル接触面1003の最も外側の点との間の距離は、方向1002に沿った質量体要素の変位中に増大するはずである。
【0152】
さらに、プロファイル接触面1003は、たとえば車両を停止させるために、クラッチを係合解除するために、クラッチの回転速度が閾値よりも低くなると、質量体要素212を「休止」状態に戻すように構成される。
【0153】
特に、質量体要素212のプロファイル接触面1003は、好ましくはより低い剛性を有するプレッシャープレート209により伝達されるリターンスプリング206の動作と併せて、好ましくはより高い剛性を有する移動終止ばね214の効果により、「休止」状態に戻るように構成される。
【0154】
図11は、質量体要素212の斜視図を示す。好ましい実施形態では、本体302は、占有体積を最大にし、それによって本体302に位置する質量体を最大にし、そこに作用する遠心力を増大させる階段形状を有する。この方法により、よりコンパクトな遠心アセンブリが提供され得る。
【0155】
質量体要素のさらなる実施形態(図示されず)では、摩擦効果を増加させ、クラッチの特定の回転速度に満たない初期の変位を防止するために、ゴム要素が設けられ得る。
【0156】
図12は、質量体ホルダ211を示す。質量体ホルダ211は、ハウジング101(図示されず)と共に回転し、質量体要素212(図示されず)を運搬して回転軸の周りで回転させるように構成される。
【0157】
質量体ホルダ211は、質量体要素212の枢軸301のための、複数の枢軸座部1201を備える。したがって、質量体要素212は、上記の、遠心効果の影響下における変位のために、そのような枢軸座部1201内で回転するように構成される。
【0158】
枢軸座部1201は、好ましくは、それぞれが、それぞれの柱状要素303の挿入のために構成される複数の対応する突起構造物1202中に設けられる。
【0159】
質量体ホルダ211内に突起構造物1202を設けることによって、クラッチ100のよりコンパクトな構成が達成され、実際には、柱状要素303がその中に収容され、質量体ホルダ211の中心に、同時に、クラッチ100の追加の要素のための空間を残す。そのような要素は、たとえば、設定手段215および移動終止ばね214である。
【0160】
図13は、クラッチカバー102を示す。クラッチカバー102は、複数の凹部、特に貫通孔1301を備える。
【0161】
貫通孔1301は、質量体ホルダ211の複数の突起構造物1202をそれぞれ収容するように構成される。したがって、貫通孔1301と突起構造物1202との接続は、質量体ホルダ211のクラッチカバー102との連動回転を可能にし、クラッチカバー102は次に、ボルト止め接続部1302によってハウジング101と接続される。したがって、クラッチ100を回転させることによって、上記のように、遠心アセンブリ210内に遠心力が生じる。
【0162】
貫通孔1301は、図3~7を参照して説明したように、クラッチの動作中に、突起構造物1202の摺動移動を可能にするようにさらに構成される。実際には、質量体ホルダ211とクラッチカバー102との間の距離が変化し、突起構造物1202が凹部1301内に摺動することによって、移動終止ばね214の圧縮が可能になることがわかる。
【0163】
クラッチカバーの代替の実施形態では、凹部は、クラッチの外側で閉鎖されることが可能であり、クラッチカバーは、その結果、より厚い。
【0164】
好ましくは、クラッチカバー102は、滑らかにするために設けられるさらなる開口1303を含む。
【0165】
図14は、好ましくは任意のダンパを通して主要なギヤと接続するための複数の孔1401を備えるハウジング101を示す。
【0166】
ハウジング101は、上記のように、クラッチカバー102のハウジング101との連動回転を確実にするためにボルト止め接続部1302と嵌め合うように構成される複数のスロット1402をさらに備える。
【0167】
本発明を、限定されない例を表す自動二輪車のクラッチ100を参照して説明している。
【0168】
当業者は、本開示を考慮して、特定の要求に応じる、本発明のクラッチのさらなる修正例を想定し得る。
【0169】
たとえば、本発明のクラッチは、特定の適用およびクラッチが取り付けられる自動車両(自動二輪車、自動車、トラックなど)に応じた様々な要求に適合させることが可能である。
【0170】
質量体要素の数および配置、ならびに/または様々なばね要素の数および剛性は、クラッチを特定の適用に適合させるために、変更され得る。特に、クラッチの構成が可能にする場合は、皿ばね以外の異なるばね要素が利用され得る。
【0171】
さらに、摺動要素901および902の構成は、特定の設計の要件を満たすために修正されてもよい。
【0172】
有利には、クラッチの挙動は、設けられるばね要素を変更することによって、また、単に、クラッチの「微調整」のために設定手段215を動作させることによっても、制御されることが可能であり、クラッチの性能は、そのようにして最適化され得る。
【0173】
本発明のクラッチのさらなる利点は、遠心アセンブリによる自動動作と共に、および同時に利用可能であるその手動操作の可能性を含む。それでも、手動操作は除外され得る。
【0174】
なお、本発明は、また、乾式または湿式のクラッチにも適用され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14