IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エテルナ ツェンタリス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許7116793マシモレリン含有組成物によるヒトにおける成長ホルモン欠損を評価する方法
<>
  • 特許-マシモレリン含有組成物によるヒトにおける成長ホルモン欠損を評価する方法 図1
  • 特許-マシモレリン含有組成物によるヒトにおける成長ホルモン欠損を評価する方法 図2
  • 特許-マシモレリン含有組成物によるヒトにおける成長ホルモン欠損を評価する方法 図3
  • 特許-マシモレリン含有組成物によるヒトにおける成長ホルモン欠損を評価する方法 図4
  • 特許-マシモレリン含有組成物によるヒトにおける成長ホルモン欠損を評価する方法 図5
  • 特許-マシモレリン含有組成物によるヒトにおける成長ホルモン欠損を評価する方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】マシモレリン含有組成物によるヒトにおける成長ホルモン欠損を評価する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/74 20060101AFI20220803BHJP
   A61P 5/10 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 38/27 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
G01N33/74
A61P5/10
A61K38/27
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020534516
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2018085622
(87)【国際公開番号】W WO2019121762
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-06-23
(31)【優先権主張番号】62/607,866
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/609,059
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503300502
【氏名又は名称】エテルナ ツェンタリス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】AEterna Zentaris GmbH
【住所又は居所原語表記】Weismuellerstrasse 50,D-60314 Frankfurt am Main,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】アンマー ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー ギルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ザクセ リヒャルト
(72)【発明者】
【氏名】ジンダーマン ヘルベルト
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-526989(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0216706(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106310229(CN,A)
【文献】特表2016-520108(JP,A)
【文献】特表2010-540588(JP,A)
【文献】Vrinda Agrawal,The macimorelin-stimulated growth hormone test for adult growth hormone deficiency diagnosis,Expert Rev. Mol. Diagn.,2014年05月16日,Vol.14 No.6,Page.647-654
【文献】Jose M. Garcia,Macimorelin as a Diagnostic Test for Adult GH Deficiency,J Clin Endocrinol Metab,2018年08月,Vol.103 No.8,Page.3083-3093
【文献】Garcia, Jose Manuel,Validation for macimorelin as a diagnostic test for adult growth hormone deficiency (AGHD) : A phase 3 study in comparison with the insulin-torelance test (ITT),Endocrine Reviews,2017年04月,Vol.38 No.3 Supp. Supplement 1,Abstract Number: LB SUN 59
【文献】J. M. Garcia,Macimorelin (AEZS-130)-Stimulated Growth Hormone (GH) Test: Validation of a Novel Oral Stimulation Test for the Diagnosis of Adult GH Deficiency,J Clin Endocrinol Metab,2013年06月,Vol.98 No.6,Page.2422-2429
【文献】Vrinda Agrawal,The macimorelin-stimulated growth hormone test for adult growth hormone deficiency diagnosis,Expert Review of Molecular Diagnostics,2014年05月16日,Vol.14 No.6,Page.647-654
【文献】Alexander S. Lutsenko,Current aspects of diagnosis and treatment of adult GH-deficiency,Problemy endokrinologii,2019年11月23日,Vol.65 No.5,Page.373-388
【文献】Jose M Garcia,Sensitivity and specificity of the macimorelin test for diagnosis of AGHD,Endocrine Connections,2021年01月,Vol.10 No.1,Page.76-83
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/74
A61P 5/10
A61K 38/27
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(b)成長ホルモン分泌を誘導するのに有効な量のマシモレリンを投与後40~95分以内に被験体から採取した1~3個の各血液サンプルの成長ホルモンレベルを測定すること;
(c)血液サンプルの各々において成長ホルモンレベルが単一閾値よりも低い対象を、成長ホルモン欠乏を有すると判定するために、または血液サンプルの少なくとも1個において成長ホルモンレベルが単一閾値よりも低くない対象を、成長ホルモン欠乏を有さないと判定するために、工程(b)で得られた測定された成長ホルモンレベルと単一の閾値とを比較すること;
を含み、
工程(b)において、2~3個の血液サンプルを使用し、
単一の閾値が2.8ng/mlである、
マシモレリンを用いて成長ホルモン欠乏を診断するためのインビトロスクリーニング方法:ただし、医療的診断方法を除く。
【請求項2】
工程(b)において、3個の血液サンプルを使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
血液サンプルが血清サンプルである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
血液サンプルが血漿サンプルである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
被験体が、対象体重kg当たり0.5mgのマシモレリンが投与された被験体である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
被験体が、マシモレリンが経口投与された被験体である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程(b)において、マシモレリンの投与の45±5分後および60±5分後に対象から採取された2個の血液サンプルを使用する、請求項1、3~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
工程(b)において、マシモレリンの投与の60±5分後および90±5分後に対象から採取された2個の血液サンプルを使用する、請求項1、3~6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
工程(b)において、マシモレリンの投与の45±5分後、60±5分後および90±5分後に対象から採取された3個の血液サンプルを使用する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
マシモレリンがサッカリンを含む組成物中にある、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
組成物が、遊離塩基として計算して3.5%w/wのマシモレリン、93.1%w/wの噴霧乾燥ラクトース一水和物、2.0%w/wのA型クロスポビドン、0.1%w/wのコロイド状二酸化ケイ素、1.0%w/wのステアリルフマル酸ナトリウム、および0.3%w/wのサッカリンナトリウム二水和物を含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
対象が成人である、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
対象がヒトの子供である、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
対象が非ヒト哺乳動物である、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2017年12月19日に出願された米国仮特許出願第62/607,866号、および2017年12月21日に出願された米国仮特許出願第62/609,059号の優先権を主張し、それらの内容は全ての目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の背景】
【0002】
成長ホルモン(GH)は、蛋白質、脂質、及び炭水化物の恒常性を調節する主要な身体システム全体の代謝ホルモンであり、身体と心の成長、発達、及び維持に必要である。GHは視床下部腺からの成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)による刺激により、下垂体前葉で産生される。GHは、24時間の間に約6~10回のランダムなバーストの拍動様式で下垂体から分泌される。
【0003】
成長ホルモン欠乏(GHD)は、GH欠乏の源に基づいて、1)下垂体または“古典的” GHD,2)視床下部GHD,3)機能的GHD、および4)特発性GHDという4つのカテゴリーに大別される。GHDは、小児期または成人期に臨床的に顕性化することがある。小児期発症のGHDは、低身長、小陰茎、脂肪の増加、声の高音化、および比較的拮抗されないインスリン作用による低血糖傾向を特徴とする。成人におけるGHDの結果は、若年成人が最大骨密度を達成できず、除脂肪体重に負の影響を及ぼすことから、中年期の心血管リスク因子、および高齢被験者のQOL(quality of life)に及ぼす影響まで様々でありうる。成人成長ホルモン欠乏(AGHD)は、罹患率の増加(メタボリックシンドローム、骨粗鬆症、筋肉消耗性QOL低下)および心血管イベントの発生率の増加(この集団において観察される死亡率の増加の主な原因)をもたらすことが認識されている。遺伝子組換えヒト成長ホルモンは、AGHDの治療のために1996年に承認された。米国では、小児におけるGHDの発症率は4,000人に1人から1万人に1人と推定されている。米国の成人5万人以上がGHDであり、成人としてGHDに移行するGHD小児を含め、毎年6,000件の新規症例が報告されている(Human Growth Foundation www.hgfound.org).
【0004】
2011年の内分泌学会の臨床ガイドライン[Molitch 2011]をはじめとする公表文献[Woodhouse 1999; Biller 2000; Attanasio 2002; Hoffman 2004; Bollerslev 2006]によれば、GHDに対するGH療法は、小児の成長発達、体組成、運動能力、内皮機能、炎症性バイオマーカー、骨密度、QOL指標に利益をもたらす。したがって、GHDの診断は重要である。
【0005】
公表されたガイドラインでは、AGHDの評価は臨床所見、既往歴に基づいて行い、生化学的確認のために適切なGH刺激試験(GHST)を用いることが推奨されている[Yuen 2011; Yuen 2013]。GHはパルス状に分泌されるため、GHレベルのランダムな測定(すなわち、ng/mLで表されるGHの血中濃度)は、GH欠乏対象とGH充足対象とを確実には区別しない。従って、AGHDの診断は、疾患を有することが疑われる被験者におけるピークGHレベルを決定するために、健常者において一定レベル以上の内因性GH放出を誘発することが知られている薬剤を用いたGHSTに依存することが多い。このような誘発剤には、インスリン負荷試験(ITT)で使用されるインスリン、アルギニン+GH放出ホルモン(GHRH)、アルギニン単独、クロニジン、レボドパ、およびグルカゴン刺激試験(GST)におけるグルカゴンが含まれる。
【0006】
ITTは、GHDの評価のゴールドスタンダードと考えられてきた。インスリンの静脈内投与は、低血糖を誘発するために使用され、それは次にGH放出につながる。しかしながら、この検査は、低血糖に関連する潜在的なリスクのために、対象の集中的な医学的モニタリングが必要であることを理由として、労働集約的である。副作用は、危険であると報告されることが多い。また、高齢者及び発作性障害や虚血性心疾患を有する被験者にはITTは禁忌である[Yuen 2011; Yuen 2013]。GHRH+アルギニンは、米国で唯一承認されたGHRHの形態であるGerefが市場から撤退した2008年までは、米国におけるITTの代替品であった。
【0007】
GSTは、使用量が増加した代替品である[Molitch 2011; Yuen 2011; Yuen 2013]。GSTでよくみられる副作用には、吐気、嘔吐、頭痛などがある。さらに、試験の長さ(3~4時間)および筋肉内注射の必要性に制限がある。安全で信頼性のある代替試験に対する、現実に満たされていない医学的必要性が依然として存在する。
【0008】
成長ホルモン分泌促進薬(GHS)活性を有する経口的に入手可能なペプチド模倣グレリン受容体アゴニストであるマシモレリンに基づいてGHDを診断するための試験が、LarsenによってWO 2007/093820 A1に開示されている。
【0009】
グレリンは、GH放出を強力に刺激する[Kojima 1999]。グレリンのGH放出効果は、主に下垂体及び視床下部レベルに存在する特異的受容体が介在すると考えられている[Nogueiras 2006]。ヒト視床下部及び下垂体由来のGHS受容体を含む膜標品において、マシモレリンはその天然リガンドであるグレリンと同等のヒトGHS受容体への結合能を示すことが示された[Broglio 2002]。マシモレリンは消化管から容易に吸収され、グレリンと同じ作用を発揮すると推測される。
【0010】
健康被験者に経口投与した直後にマシモレリンがGHパルスの放出を発揮する能力に基づき、マシモレリンは成人のGH欠乏の経口診断薬として開発されている。
【0011】
化合物としてのマシモレリンおよびGHDの治療におけるその使用は、MartinezらによってWO 01/96300 A1に開示されている。
【0012】
Macimorelin GHSTは、Garciaらにより発表されてい(J Clin Endocrinol Metab. 2422-9, 2013、J Clin Endocrinol Metab. 2018, 3083-3093、及び2017年の第99回内分泌学会年会で提示されたポスター「成人成長ホルモン欠乏症(AGHD)の診断検査としてのMacimorelinの検証 : インスリン負荷試験(ITT)との対比による第3相試験」)。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、以下を提供する。
(1) (a)GH分泌を誘導するのに有効な量のマシモレリンを投与後25~95分以内に被験体から採取した1~3個の血液サンプルを提供すること;
(b)工程(a)で提供された各血液サンプルのGHレベルを測定すること;
(c)工程(b)で得られた測定されたGHレベルと単一の閾値とを比較すること;
(d)工程(a)で提供された血液サンプルの各々においてGHレベルが前記単一閾値よりも低い対象を、GHDを有すると判定すること、または工程(a)で提供された血液サンプルの少なくとも1個においてGHレベルが前記単一閾値よりも低くない対象を、GHDを有さないと判定すること;
を含む、マシモレリンを用いてGHDを診断するためのインビトロスクリーニング方法。
(2) 工程(a)において、2~3個の血液サンプルが提供される、(1)に記載の方法。
(3) 工程(a)において、3個の血液サンプルが提供される、(1)に記載の方法。
(4) 単一の閾値が2.8ng/mlである、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 工程(a)において、血液サンプルが血清サンプルである、(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6) 工程(a)において、血液サンプルが血漿サンプルである、(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(7) 工程(a)において、対象体重kg当たり約0.5mgのマシモレリンが投与される、(1)~(6)のいずれかに記載の方法。
(8) 工程(a)において、マシモレリンの投与が経口投与である、(1)~(7)のいずれかに記載の方法。
(9) 工程(a)において、マシモレリンの投与の60±5分後に対象から採取される1個の血液サンプルが提供される、(1)、(4)~(8)のいずれかに記載の方法。
(10) 工程(a)において、マシモレリンの投与の45±5分後および60±5分後に対象から採取される2個の血液サンプルが提供される、(1)、(2)、(4)~(8)のいずれかに記載の方法。
(11) 工程(a)において、マシモレリンの投与の60±5分後および90±5分後に対象から採取される2個の血液サンプルが提供される、(1)、(2)、(4)~(8)のいずれかに記載の方法。
(12) 工程(a)において、マシモレリンの投与の45±5分後、60±5分後および90±5分後に対象から採取される3個の血液サンプルが提供される、(1)、(3)~(8)のいずれかに記載の方法。
(13) 工程(a)において、マシモレリンがサッカリンを含む組成物中で投与される、(1)~(12)のいずれかに記載の方法。
(14) 組成物が、遊離塩基として計算して3.5%w/wのマシモレリン、93.1%w/wの噴霧乾燥ラクトース一水和物、2.0%w/wのA型クロスポビドン、0.1%w/wのコロイド状二酸化ケイ素、1.0%w/wのステアリルフマル酸ナトリウム、および0.3%w/wのサッカリンナトリウム二水和物を含む、(1)~(13)のいずれかに記載の方法。
(15) 対象が成人である、(1)~(14)のいずれかに記載の方法。
(16) 対象がヒトの子供である、(1)~(14)のいずれかに記載の方法。
(17) 対象が非ヒト哺乳動物である、(1)~(14)のいずれかに記載の方法。
(18) GHDのインビトロ診断において使用するための物質マシモレリンであって、
(a)GH分泌を誘導するのに有効な量のマシモレリンの投与後25~95分以内に被験体から1~3個の血液サンプルが提供され、
(b)工程(a)で提供された各血液サンプルのGHレベルが測定され;
(c)工程(b)で得られた測定されたGHレベルが、単一の閾値と比較され;
(d)工程(a)で提供された血液サンプルの各々においてGHレベルが前記単一の閾値よりも低い被験者はGHDを有すると決定され、または工程(a)で提供された血液サンプルの少なくとも1個においてGHレベルが前記単一の閾値よりも低くない被験者は、GHDを有さないと決定される。
物質マシモレリン。
(19) 工程(a)において、2~3個の血液サンプルが提供される、(18)に記載の使用のための物質マシモレリン。
(20) 工程(a)において、3個の血液サンプルが提供される、(18)に記載の使用のための物質マシモレリン。
(21) 単一の閾値が2.8ng/mlである、(18)~(20)のいずれかに記載の使用のための物質マシモレリン。
(22) 工程(a)において、血液サンプルが血清サンプルである、(18)~(21)のいずれかに記載の使用のための物質マシモレリン。
(23) 工程(a)において、血液サンプルが血漿サンプルである、(18)~(21)のいずれかに記載の使用のための物質マシモレリン。
(24) 工程(a)において、対象体重kg当たり約0.5mgのマシモレリンが投与される、(18)~(23)のいずれかに記載の使用のための物質マシモレリン。
(25) 工程(a)において、マシモレリンの投与が経口投与である、(18)~(24)のいずれかに記載の使用のための物質マシモレリン。
(26) 工程(a)において、マシモレリンの投与の60±5分後に対象から採取される1個の血液サンプルが提供される、(18)、(21)~(25)のいずれかに記載の使用のための物質マシモレリン。
(27) 工程(a)において、マシモレリンの投与の45±5分後および60±5分後に対象から採取される2個の血液サンプルが提供される、(18)、(19)、(21)~(25)のいずれかに記載の使用のための物質マシモレリン。
(28) 工程(a)において、マシモレリンの投与の60±5分後および90±5分後に対象から採取される2個の血液サンプルが提供される、(18)、(19)、(21)~(25)のいずれかに記載の使用のための物質マシモレリン。
(29) 工程(a)において、マシモレリンの投与の45±5分後、60±5分後および90±5分後に対象から採取される、3個の血液サンプルが提供される、(18)、(20)~(25)のいずれかに記載の使用のための物質マシモレリン。
(30) 工程(a)において、マシモレリンがサッカリンを含む組成物中で投与される、(18)~(29)のいずれかに記載の使用のための物質マシモレリン。
(31) 組成物が、遊離塩基として計算して3.5%w/wのマシモレリン、93.1%w/wの噴霧乾燥ラクトース一水和物、2.0%w/wのA型クロスポビドン、0.1%w/wのコロイド状二酸化ケイ素、1.0%w/wのステアリルフマル酸ナトリウム、および0.3%w/wのサッカリンナトリウム二水和物を含む、(18)~(30)のいずれかに記載の使用のための物質マシモレリン。
(32) 対象が成人である、(18)~(31)のいずれかに記載の使用のための物質マシモレリン。
(33) 対象がヒトの子供である、(18)~(31)のいずれかに記載の使用のための物質マシモレリン。
(34) 対象が非ヒト哺乳動物である、(18)~(31)のいずれかに記載の使用のための物質マシモレリン。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】30分血液採取のヒストグラムカウント(時間窓25~34分)
図2】45分血液採取のヒストグラムカウント(時間窓40~49分)
図3】60分血液採取のヒストグラムカウント(時間窓50~69分)
図4】90分血液採取のヒストグラムカウント(84~164分)
図5】AGHD尤度カテゴリーによるマシモレリンGHST(MAC)及びITTにおけるピークGH濃度(N=139)
図6】コア試験および再現性サブ試験のピークGH値の散布図(n=33)
【発明の好ましい実施形態】
【0015】
特に、本発明はマシモレリン含有組成物、およびマシモレリン含有組成物の経口投与後に被験者から25~95分の範囲内、好ましくは40~95分の範囲内で1、2または3個の投与後サンプルを採取し、1~3個の投与後サンプル中のGHレベルを単一の閾値(カットオフ点としても知られる)と比較することによってGHDを診断する方法に関する。本組成物は、マシモレリン、ラクトース一水和物、クロスポビドン、二酸化ケイ素、ステアリルフマル酸ナトリウム、およびサッカリンを含む。
【0016】
本発明の一つの態様において、対象におけるGHDを決定するための新規な方法が提供される。この方法は、(a)GH分泌を誘導するのに有効な量のマシモレリンを被験体に経口投与する工程;および(b)(i)工程(a)の60±5分後に被験体から採取した1個の血液サンプル、または(ii)工程(a)の45±5分後および工程(a)の60±5分後に被験体から採取した2個の血液サンプル、または(iii)工程(a)の60±5分後および工程(a)の90±5分後に被験体から採取した2個の血液サンプル、または(iv)工程(a)の45±5分後、工程(a)の60±5分後および工程(a)の90±5分後に被験体から採取した3個の血液サンプルにおけるGHレベルを測定する工程を含む。典型的には、この方法は、被験体から任意のさらなる血液サンプルが採取される任意のさらなる工程を含まない。すなわち、本発明によれば、投与後サンプルの所与の数、すなわち、1個、2個、または3個を超えるサンプルも、または投与前または投与と同時の血液サンプルを、比較のために採取、測定、または使用することはない。
【0017】
本方法はさらに、(c)1個、2個、または3個の血液サンプル中のGHレベルを単一の閾値と比較し、(d)1個、2個、または3個の血液サンプル中のすべてのGHレベルが前記単一の閾値よりも低い場合には、対象がGHDを有すると判定し(GHDの診断)、1個、2個、または3個の血液サンプル中の少なくとも1個のGHレベルが前記単一の閾値よりも低くない場合に、対象がGHDを有さないと判定する(GHDの診断)する工程を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、1個、2個、または3個の血液サンプルは血清サンプルである。他の実施形態では、1個、2個、または3個の血液サンプルは血漿サンプルである。典型的には、2個または3個の血液サンプルが採取される場合、それらは同じタイプであり、例えば、それらは2個の血清サンプルまたは2個の血漿サンプルである。
いくつかの実施形態においては、約0.5mg/kg対象体重のマシモレリンが、工程(a)において経口投与される。
【0019】
いくつかの実施形態においては、1個の血液サンプルは、工程(a)の60±5分後に対象から採取される。いくつかの実施形態では2個の血液サンプルが工程(a)の45±5分後および工程(a)の60±5分後に対象から採取されるか、または2個の血液サンプルは工程(a)の60±5分後および工程(a)の90±5分後に対象から採取される。いくつかの実施形態では、3個の血液サンプルが工程(a)の45±5分後、工程(a)の60±5分後、および工程(a)の90±5分後に対象から採取される。
【0020】
いくつかの実施形態では、工程(b)で1個の血液サンプル中で測定されたGHレベルが単一の所定の閾値と比較され、例えば、所定の閾値は2.8ng/mlである。
【0021】
被験者は、1個の血液サンプル中の被験者のGHレベルが単一の所定の閾値よりも低い場合、GHDを有すると判定され、1個の血液サンプル中の被験者のGHレベルが単一の所定の閾値よりも低くない場合、GHDを有さないと判定される。
【0022】
いくつかの実施形態では、工程(b)で2個の血液サンプル中で測定されたGHレベルが単一の所定の閾値と比較され、例えば、所定の閾値は2.8ng/mlである。被験者は、2個の血液サンプル中の被験者のGHレベルが両方とも単一の所定の閾値よりも低い場合、GHDを有すると判定され、2個の血液サンプル中の被験者のGHレベルの少なくとも1個が単一の所定の閾値よりも低くない場合、GHDを有さないと判定される。
【0023】
例えば、工程(b)で2個の血液サンプル中で測定されたGHレベルが1.6および1.7ng/mLであり、これらのGHレベルが2.8ng/mLの単一の閾値と比較される場合、工程(b)で2個の血液サンプル中で測定された両方のGHレベルが2.8ng/mLより低いため、対象はGHDを有すると判定される。
【0024】
別の例では、工程(b)で2個の血液サンプル中で測定されたGHレベルが2.6および3.5ng/mLであり、これらのGHレベルが2.8ng/mLの単一の閾値と比較される場合、2個の血液サンプル中の対象のGHレベルのうちの少なくとも1個(3.5ng/mLのもの)が2.8ng/mL以上であるため、対象はGHDを有さないと判定される。
【0025】
いくつかの実施形態では、工程(b)において3個の血液サンプル中で測定されたGHレベルが単一の所定の閾値と比較され、例えば、所定の閾値は2.8ng/mlである。被験者は、3個の血液サンプル中の被験者のGHレベルが全て単一の所定の閾値よりも低い場合、GHDを有すると判定され、3個の血液サンプル中の被験者のGHレベルの少なくとも1個が単一の所定の閾値よりも低くない場合、GHDを有さないと判定される。
【0026】
例えば、工程(b)において3個の血液サンプルにおいて測定されたGHレベルが1.1、1.3および1.5ng/mLであり、これらのGHレベルが2.8ng/mLの単一の閾値と比較される場合、工程(b)において3個の血液サンプルにおいて測定された全てのGHレベルが2.8ng/mLより低いため、対象はGHDを有すると決定される。
【0027】
別の例では、工程(b)で3個の血液サンプル中で測定されたGHレベルが2.4、2.5および3.6ng/mLであり、これらのGHレベルが2.8ng/mLの単一の閾値と比較される場合、3個の血液サンプル中の対象のGHレベルの少なくとも1個(3.6ng/mLのGHレベル)が2.8ng/mL以上であるため、対象はGHDを有さないと判定される。
【0028】
いくつかの実施形態では、工程(a)において、マシモレリンはサッカリンを含む組成物中で投与される。例えば、組成物は、3.5%のマシモレリン(遊離塩基として計算)、93.1%の噴霧乾燥ラクトース一水和物、2.0%のA型クロスポビドン、0.1%のコロイド状二酸化ケイ素、1.0%のステアリルフマル酸ナトリウム、および0.3%のサッカリンナトリウム二水和物を含み得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、GHレベルが試験される対象は、成人ヒトまたは小児である。他の場合において、GHレベルが試験される対象は、非ヒト哺乳動物である。
【0030】
定義
本明細書で使用する場合、「被験体」とは、ヒトまたは脊椎動物、特にブタ、イヌ、ネコ、ウマ/ロバ、雄ウシ/牝ウシ、ヤギ/ヒツジ、げっ歯類、ウサギ、キツネなどの哺乳動物類の動物、ならびにチンパンジー、サルなどの非ヒト霊長類である。「被験体」は、任意の性別(雄または雌)または年齢(幼若または成熟)であり得る。
【0031】
本明細書中で使用する場合、用語「有効量」は、所望の効果を生じるのに十分な量である、所定の物質の量のことをいう。例えば、レシピエントにおけるGH分泌を誘導するためのマシモレリンの有効量は、レシピエントへの投与時にGHの分泌の検出可能な増加を達成することができる化合物量である。任意の所定量のマシモレリンは、それがGH分泌を刺激するための有効な量であるかどうかに関して、ルーチンの試験によって決定することができる。典型的には、マシモレリンの有効量は、下限としてはレシピエントの体重1kg当たり約0.01、約0.02、約0.05、約0.10、約0.20mgから、上限としては、約1、約2、約5、約10、約20、約25、約50mg/kg体重の範囲内であり、または下限値のいずれか1個および上限値のいずれか1個によって規定される範囲内、例えば、約0.20~約2mg/kg体重、または約0.5mg/kg体重である。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「マシモレリン」とは、成長ホルモン分泌促進因子(GHS)活性を有するグレリン受容体アゴニストとして作用するペプチド模倣化合物をいう。その化学構造およびGHDの処置における使用は、米国特許第6,861,409号、国際公開WO01/96300号、および国際公開WO2007/093820号に開示されている。
【0033】
本明細書で使用される場合、「血液サンプル」という用語は、全血サンプル、ならびに血清または血漿サンプルなどの全血の画分を包含する。2個以上の「血液サンプル」が同じ方法スキームにおいて試験のために使用される場合はいつでも、これらの「血液サンプル」は同じ形態であり、例えば、第1のサンプルが血清である場合、第2のサンプルおよび任意の後続のサンプルも血清である。
本明細書で使用される場合、「約」とは、基準値のマイナス及びプラス10%を包含する範囲を意味する。例えば、「約10」とは、9~11の範囲を意味する。
【0034】
本出願において引用される全ての特許、特許出願、およびGenBank受入番号を含む他の刊行物は、全ての目的のために全体が参照により援用される。
【0035】
発明の詳細な説明
一般に、サンプルはGH分泌を誘導する誘発剤の投与後にGHレベルを決定するために、GHSTを受けている対象から採取される。採取されるサンプルの数および試験期間は、試験中の対象の負担を記載するための、ならびに試験を実施する医療専門家(HCP)の努力を記載するための重要なパラメータである。サンプルの数が少ないほど、および/または試験期間が短いほど、被験者およびHCPにとってこのような試験を行うことの容認は高くなる。これは、被験者が子供である場合に特に当てはまる。
【0036】
以下の表1は、内分泌学会および米国臨床内分泌学会(AACE)によって推奨されている通りに、注射を介して投与されたGHST中に採取された血液サンプルの総数を要約したものである。
【0037】
【表1】
【0038】
注射によって投与した全てのGHSTが、少なくとも1個の投与前サンプル、すなわち0分および/または前を含む、少なくとも120分の時間窓の間に少なくとも5個のサンプルを採取することが明らかに見られる。従って、投与前レベルを含む完全なGHレベルプロファイルは臨床標準であると結論できる。
【0039】
この規格は数年間存在する。1998年、Daviesは、0分、30分、60分、90分、および120分の時点で血液サンプルを採取するITTを記載した。2002年、Gomezは、ベースライン、90分、120分、150分、180分、210分および240分で血液サンプルを採取するGSTを記載した。2002年に6つのGHSTを比較した試験において、Billerは-30~150分以内に6個の血液サンプルを採取した(Biller,B.M.K.ら、J.Clin.Endocrinol.Metab.(2002),87(5),p2067-2079)。
【0040】
より少ない数の血液サンプルを使用する提案(例えば、Jabbarら、Sc.およびJ.Clin.Lab.Invest,2009,359-64、またはAimarettiら、Pituitary,2001,129-34)にもかかわらず、臨床内分泌学者の2つの主要な関連は、最近の2016年のように、完全なGHプロファイルの採取を推奨した(表1を参照のこと)。これは、被験者に対するGHSTの負担によるものと考えられる。多数の血液サンプルは、血液サンプリング中のエラーまたはGH決定が血液サンプルの使用を無効にする場合には、GHSTの繰り返しを妨げるであろう。
【0041】
国際公開第2007/093820A1およびGarciaら(J Clin Endocrinol Metab.2013,2422-9,in J Clin Endocrinol Metab.2018,3083-3093及びPoster presented on 99th Annual Meeting of Endocrine Society in 2017)に開示されたマシモレリンに基づいたの試験は、これまで唯一の経口投与GHSTである。
【0042】
WO2007/093820A1の請求項1は、以下を対象とする:
1. ヒトまたは動物対象における成長ホルモン欠乏を評価する方法であって、対象にEP1572[すなわち、マシモレリン]またはEP1573を経口投与すること、対象から少なくとも1個の投与後サンプルを得ること、サンプル(単数又は複数)中の成長ホルモンのレベルを決定すること、およびサンプル(単数又は複数)中の成長ホルモンのレベルが対象における成長ホルモン欠乏を示すかどうかを評価することを含む方法。
【0043】
さらに、経口投与のための、マシモレリン、ラクトース一水和物、クロスポビドン、二酸化ケイ素、およびステアリルフマル酸ナトリウムを含有する組成物が開示されている。
必要なサンプル数は、「少なくとも1個の投与後サンプル」(請求項1)または「2又は3又は4又は5個のサンプル」(p.7、25行目)であると言及されている。
【0044】
しかしながら、そのようなかなり一般的な記述とは別に、WO2007/093820 A1は、特定の数のサンプルまたはそれに対応する時点に関しては言及していない。さらに、完全なGHレベルプロファイルの臨床標準と比較して、より少数のサンプルで十分であるはずである理由についても与えられていない。
【0045】
「少なくとも1個の投与後サンプル」の特定の数については言及していないが、WO2007/093820A1は、
- 投与前から300分サンプルまでの範囲の1個の投与前サンプルおよび11個の投与後サンプルを有するマシモレリンに基づくGHSTを開示する実施例1(16頁の8行目)、
- 投与前から150分サンプルまでの範囲の1個の投与前サンプルおよび6個の投与後サンプルを有するマシモレリンに基づくGHSTを開示する実施例2(18頁の5~6行目)、および
- 投与前から120分サンプルまでの範囲の1個の投与前サンプルおよび5個の投与後サンプルを有するマシモレリンに基づくGHSTを開示する実施例3(18頁の25~28行目)、実施例3は「標準プロトコル」としてマークされている;
に提示されるように、完全GHレベルプロファイルのサンプリングを開示している。
【0046】
結果として、当業者は、完全なGHレベルプロフィールのみが、Larsenによって開示され、先行技術から公知の臨床標準と整合している、と結論付けるであろう。投与前サンプルを省略できるかどうか、または5個未満のサンプル数が適切であるかどうか、または「少なくとも1個の投与後サンプル」を採取するためにどの時点を選択すべきかについての教示もガイダンスも存在しない。
【0047】
2013年に、Garciaら(J Clin Endocrinol Metab. 2013,2422-9)は、投薬の15~30分前、投薬の直前、および投薬の30、45、60、75、90、120および150分後にGHレベルを測定するマシモレリンに基づいたGHSTを開示した。投与された試験の組成は開示されていない。
Garcia 2013により開示されたマシモレリンGHSTの性能を表2にまとめる。
【0048】
【表2】
【0049】
今回は驚くべきことに、対象へのマシモレリン含有組成物の経口投与後、投与後40~95分の範囲内に1個、2個または3個の投与後サンプルを該対象から採取し、上記の1個、2個または3個のサンプル中のGHのレベルを測定し、単一のカットオフ値未満 (例えば、2.8ng/ml未満)である場合に、下垂体関連GHDがヒトまたは動物対象において診断されることが見出された。マシモレリン含有組成物は、マシモレリン、ラクトース、クロスポビドン、二酸化ケイ素、ステアリルフマレート、およびサッカリンを含む。
【0050】
典型的には、マシモレリン含有組成物を使用してGHDを診断するための試験(さらに「マシモレリン試験」と呼ばれる)は、医療現場、例えば、医療行為または診療所または病院において、医療専門家(HCP)によって行われる。HCPは、被験者がGHDの危険因子を示すことから、GHD診断を確定するためにGHSTを必要とするという最初の評価の後に、マシモレリン試験を処方する。被験者におけるマシモレリン含有組成物の使用を妨げる禁忌は知られていない。
【0051】
HCPは、被験者がマシモレリン試験の前に6~8時間絶食していることを保証する。典型的には、HCPが、単回使用容器中に提供されるマシモレリン含有組成物を含むマシモレリン試験キットを使用し、キットに含まれる説明書に従って、0.5mg/mLのマシモレリン溶液を調製する。次いで、HCPは対象の体重に基づいて溶液の個別の量を決定し、対象に個別の量を飲ませる。
【0052】
マシモレリン溶液の投与後、被験者は40~95分間待機し、1個、2個または3個のサンプルがその時間窓内に被験者から採取される。マシモレリン溶液の投与前に採取したサンプルはない(投与前サンプルはない)。マシモレリン試験は安全性が高く、概して忍容性が非常に良好であるため、臨床試験中に確立されたマシモレリンの安全性プロファイルに基づいて、重度の副作用はないことが予想される。常時の医学的監督は不要である。軽度から中等度の副作用としては、味覚異常(4.5%)、浮動性めまい、頭痛、疲労(各3.9%)、悪心及び空腹感(各3.2%)、下痢、上気道感染(各1.9%)、熱感、多汗症、鼻咽頭炎及び副鼻腔徐脈(各1.3%)が生じることがある。
【0053】
血中GHレベルは、適切なGHアッセイを用いて、例えば自動化学発光免疫アッセイを用いて測定される。
【0054】
マシモレリンによって誘導された測定されたGHレベルは、単一の閾値、例えば2.8ng/mLの閾値と比較することによってGHDを診断するために評価される。閾値を下回る測定されたGHレベルは、GHDを有することを示し、閾値を下回らないGHレベルは、GHDを有さないことを示す。
【0055】
本発明の一つの態様においては、1個の投与後サンプルが。投与後40~50分以内、すなわち、投与後45分の前後5分の時間窓内、すなわち言い換えれば、投与後45±5分以内に対象から採取される。
【0056】
本発明の一つの態様においてはは、1個の投与後サンプルが、投与後55~65分以内、すなわち、投与後60分の前後5分の時間窓内、すなわち言い換えれば、投与後60±5分以内に対象から採取される。
【0057】
本発明の一つの態様においては、1個の投与後サンプルが、投与後85~95分以内、すなわち、投与後90分の前後5分の時間窓内、すなわち言い換えれば、投与後90±5分以内に対象から採取される。
【0058】
別の態様においては、2個の投与後サンプルが、投与後40~65分以内に被験体から採取される。好ましくは、2個の投与後サンプルのうちの第1のサンプルが、投与後40~50分以内に対象から採取され、第2のサンプルが、投与後55~65分以内に、すなわち、第1のサンプルは投与後45分の前後5分の時間窓内、すなわち、投与後45±5分以内に採取され、第2のサンプルは投与後60分の前後5分の時間窓内、すなわち投与後60±5分以内に採取される。
【0059】
別の態様においては、2個の投与後サンプルが、投与後50~95分以内に被験体から採取される。好ましくは、2個の投与後サンプルのうちの第1のサンプルが、投与後550~65分以内に対象から採取され、第2のサンプルが、投与後85~95分以内に、すなわち、第1のサンプルは投与後60分の前後5分の時間窓内、すなわち、投与後60±5分以内に採取され、第2のサンプルは投与後90分の前後5分の時間窓内、すなわち投与後90±5分以内に採取される。
【0060】
別の態様においては、3個の投与後サンプルが、投与後40~95分以内に被験体から採取される。好ましくは、3個の投与後サンプルのうちの第1のサンプルが、投与後40~50分以内に対象から採取され、第2のサンプルが、投与後55~65分以内に、第3のサンプルが、投与後85~95分以内に、すなわち、第1のサンプルは投与後40分の前後5分の時間窓内、すなわち、投与後40±5分以内に採取され、第2のサンプルは投与後60分の前後5分の時間窓内、すなわち投与後55~65分以内、すなわち、投与後60±5分以内に採取され、第3のサンプルは投与後90分の前後5分の時間窓内、すなわち投与後85~95分以内、すなわち、投与後90±5分以内に採取される。
【0061】
本発明のさらに別の態様において、GHDであると診断される前記ヒトまたは動物被験体は、小児または成人のいずれでもよい。動物対象の例としては、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ネコ、またはイヌが挙げられる。
【0062】
本発明のさらに別の態様において、被験体から採取されるべき前記1個の投与後サンプルは、血液サンプル、血清サンプル、または血漿サンプルである。前記2個の投与後サンプルは必要に応じて、2個の血液サンプル、例えば、2個の血清サンプルまたは2個の血漿サンプルである。前記3個の投与後サンプルは、必要に応じて、3個の血液サンプル、例えば3個の血清サンプルまたは3個の血漿サンプルである。
【実施例
【0063】
実施例1:GHDを診断するためのマシモレリン含有組成物
マシモレリン含有組成物は、表3に列挙した以下の成分を含む。
【0064】
【表3】
【0065】
1単位用量は、水中の経口溶液の調製のための1.000gのマシモレリンを含有する組成物からなる。典型的には、調製された溶液は、溶液1ml当たり0.5mgのマシモレリンを含有する。
【0066】
再構成された溶液の体重調整されたアリコートが、対象に投与され、対象の体重1キログラム当たり0.5mgの用量をもたらす。
【0067】
前記単位用量は、100%の含有量を有する遊離塩基として計算されたマシモレリンについて定義される。前記単位用量内のマシモレリン遊離塩基またはその遊離塩基相当の質量は、含有量に従って調節される。
【0068】
マシモレリンは、適切な薬学的な塩として前記単位用量中に含めることができる。適切な薬学的な塩の例は、酢酸塩およびトリフルオロ酢酸塩である。
【0069】
前記単位用量は、GHD試験の容易な利用可能性のために、適切な容器に充填してもよい。適切な容器の例は、小袋(サッシェ)またはポーチ、またはプラスチックのガラスで作られた適切なサイズの容器である。
【0070】
単位用量および対象の体重1kg当たり0.5mgの推奨用量に基づいて、複数の量のマシモレリン含有組成物を1容器当たりに提供することができる。
【0071】
120kgまでの対象については、マシモレリン含有組成物を有する容器は、63.6mgのマシモレリン、1691.8mgの噴霧乾燥ラクトース一水和物、36.6mgのA型クロスポビドン、1.8mgのコロイド状二酸化ケイ素、18.2mgのステアリルフマル酸ナトリウム、および5.5mgのサッカリンナトリウム二水和物を含み得る。120mLの水中で再構成する場合、1mLで0.5mgのマシモレリンを提供する。
【0072】
必要であれば、容器は、前記単位用量に加えて少量のマシモレリン含有組成物で充填されてもよい(「過剰充填」)。このような過剰充填は、例えば吸収効果のために容器内に少量の組成物が残っているにもかかわらず、マシモレリン溶液の濃度が0.5mg/mLであることを確実にする。過剰充填の量は容器のタイプに依存し、経験的に決定されなければならない。
【0073】
120kgまでの被験者を対象としたポリエチレン積層アルミ箔で作られた小袋(サッシェ)の場合、過剰充填量は3.6mgである。
【0074】
実施例2:悪い味をマスクするためのマシモレリン含有組成物におけるサッカリンの使用
多施設無作為化二元クロスオーバー試験において、AGHDが確認された100例の被験者にGHSTとしてGHRH+L-Argおよびマシモレリンを投与し、AGHDに対するマシモレリンの診断的効力を判定した。
【0075】
この研究は、2つのパートで行われた。第1のパートでは、実施例1に記載したサッカリンを含まないマシモレリン含有組成物を使用し、52人中12人(21%)の被験者により軽度から中等度の悪い味が報告された。
【0076】
試験停止中、サッカリンは適切な味マスキング剤であることが見出されたが、苦味は依然として完全にはマスキングされなかった。試験の第2のパートでは、実施例1に記載のマシモレリン含有組成物(サッカリンを含むもの)を使用し、48人の被験者のうち1人(2%)のみが軽度の悪い味を報告した。
【0077】
実施例3:AGHDの診断のためのマシモレリンの診断能をITTと比較する
多施設非盲検無作為化2方向クロスオーバー臨床試験においては、157例の被験者に少なくとも1回のマシモレリン(実施例1に記載のマシモレリン含有組成物を使用)またはITTを投与し、安全性データセットに含めた。このうち、有効なマシモレリン試験及び有効なITTが得られた139例を有効性データセットとし、AGHDの可能性が高い(グループA、N=38)、中間(グループB、N=37)、低い(グループC、N=39)、及び健常な適合対照(グループD、N=25)に層別化した。
【0078】
血液サンプルの採取
血液サンプルを、マシモレリンの投与の前および30、45、60、および90分後、ならびに有効性データセット被験体へのインスリンの投与の前および15、30、45、60、90、および120分後に採取し、そしてGHレベルを、すべてのサンプルについて測定した。
研究プロトコールは、前記の各々の時点について5分間の時間窓を許容し、これは、例えば、GH誘発剤投与後25~35分以内に採取された血液サンプルが30分時点において有効に採取されたことを意味する。
マシモレリン投与後の時点ごとの採血の分布を、以下の表4および図1~4に示す。
【0079】
【表4】
【0080】
マシモレリンGHSTとITTとの一致
マシモレリンについて2.8ng/mL、ITTについて5.1ng/mLのGHカットオフレベルを用いて、マシモレリンとITT GHSTの間のパーセント一致率は、表5に示す通りであることを見出した。マシモレリンのGHレベルが2.8ng/mL、ITTのGHレベルが5.1ng/mLを下回る場合を陽性テストであるといい、AGHDが示唆される。
【0081】
【表5】
【0082】
マシモレリン投与の0、30、45、60および90分後に採取した採血を評価する場合、これらのマシモレリンサンプルにおいて測定された最も高い(ピーク)GHレベルを使用し、すべてのITTサンプルにわたって測定された最も高いGHレベルと比較する。マシモレリン試験の陰性の結果の95.38%が、ITT検査の陰性結果と一致することが判明した。同様に、マシモレリン試験の陽性の結果の74.32%が、ITT試験の陽性の結果と一致し、その結果、マシモレリンとITT GHSTとの間で84.17%という全体としての一致が得られた(「0&30&45&60&90分(ピークレベル)」の欄を参照)。
【0083】
45分のマシモレリンGHレベルのみを使って、全てのITTサンプルで測定された最も高いGHレベルと比較した場合、陰性の一致率は86.15%であり、陽性の一致率は78.38%であり、全体の一致率はマシモレリンとITT GHSTの間で82.01%である(「45分」の欄を参照)。
【0084】
45分および60分の最高(ピーク)マシモレリンGHレベルを使って、全てのITTサンプルで測定された最も高いGHレベルと比較した場合、陰性の一致率は95.38%であり、陽性の一致率は75.68%であり、全体の一致率はマシモレリンとITT GHSTの間で84.89%である(「45分および60分(ピークレベル)」の欄を参照)。
【0085】
45、60、90分の最高(ピーク)マシモレリンGHレベルを、全てのITTサンプルで測定された最も高いGHレベルと比較した場合、陰性の一致率は95.38%であり、陽性の一致率は74.32%であり、全体の一致率はマシモレリンとITT GHSTの間で84.17%である(「45&60&90分(ピークレベル)」の欄を参照)。
【0086】
陰性の%一致率の値(すなわち、ITT GHD診断における陰性に一致するマシモレリンGHD診断における陰性)は、陽性の%一致率と比較して、より重要であると考えられる。なぜなら、偽陽性のGHST結果に基づいた、このような治療を必要としない対象の慢性的なGH治療は、回避すべきであるからである。それにもかかわらず、高い陽性の%一致率も求められている。しかしながら、医療従事者が、GHSTだけでなく、対象者の身体検査、病歴、臨床症状、随伴する危険因子および臨床検査パラメータによって導かれる全体的な臨床像に基づいて診断を下すため、陽性の一致率の基準はそれほど厳密ではないかもしれない。
【0087】
マシモレリンGHSTおよびITTにおけるピークGH応答
表5のボックスプロットは、マシモレリンGHSTおよびITTにおいて達成されたピークGH濃度を、AGHD尤度グループによって要約する。ITTと比較して、マシモレリンGHSTにおけるより高いピークGHレベルが、試験の全てのグループで一貫して見られることは明らかである。さらに、データはピークGHレベルがAGHDを有する可能性と逆相関すること、すなわち、中間体尤度に割り当てられた被験者(グループB)は、低尤度に割り当てられた被験者(グループC)よりもGHレベルが低かったことを示す。
【0088】
マシモレリンGHSTの再現性
マシモレリンGHSTの再現性を評価するために、有効な第1のマシモレリン試験(コア試験)を受けた33人の被験者に、第2のマシモレリン試験(再現性試験延長)を行った。第2のマシモレリン試験の結果は、94%で第1の試験の結果と一致し、すなわち、33人の被験者のうち31人において、カットオフ値未満またはそれを超える試験結果の結果が再現可能であった(図6)。
【0089】
マシモレリン投与後の一般的な有害反応
試験中に発現した有害事象(TEAE)は、マシモレリンGHST後の安全性解析対象集団の計154例中のうちの39例(25.3%)、ITT投与後の計157例のうちの151例(96.2%)において記録され、有害事象の総発現件数はそれぞれ77件、761件(AEs)であった(表6)。
【0090】
【表6】
【0091】
1:いずれかのTEAEが発現した被験者数、各被験者は各カテゴリー内で1回のみカウントされる、
2:有害事象発現例数/全例数、3:全有害事象発現例数、
*A: 少なくとも1例のマシモレリンGHSTを有する全被験者
**B:反復性マシモレリンGHST
【0092】
発生頻度が低い順に含まれていたITT後の重度のTEAE:傾眠、多汗症各5例(3.2%)、無力症4例(2.5%)、空腹感3例(1.9%)、神経過敏2例(1.3%)、振戦1例(0.6%)。マシモレリンGHST後のTEAEは軽度から中等度であった:味覚異常(4.5%)、浮動性めまい、頭痛、疲労(各3.9%)、悪心、空腹感(各3.2%)、下痢、上気道感染(各1.9%)、熱感、多汗症、鼻咽頭炎、副鼻腔徐脈(各1.3%)。
【0093】
参考文献一覧
【0094】
図1
図2
図3
図4
図5
図6