IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘリオソニック ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特許-レーザ印刷方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】レーザ印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/475 20060101AFI20220803BHJP
   C09D 11/10 20140101ALI20220803BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20220803BHJP
   B41M 5/46 20060101ALI20220803BHJP
   B41M 5/395 20060101ALI20220803BHJP
   B41M 5/392 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
B41J2/475 Z
C09D11/10
C09D11/037
B41M5/46 510
B41M5/395 300
B41M5/392 300
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020548774
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019055884
(87)【国際公開番号】W WO2019175056
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】102018001938.2
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520275032
【氏名又は名称】ヘリオソニック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レーマン ウド
【審査官】井出 元晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-199170(JP,A)
【文献】特開平01-275093(JP,A)
【文献】特開昭63-077781(JP,A)
【文献】特開平07-032774(JP,A)
【文献】特開平06-024151(JP,A)
【文献】特開平07-172074(JP,A)
【文献】特開2015-091647(JP,A)
【文献】特開2001-253178(JP,A)
【文献】特開2001-158182(JP,A)
【文献】特開平08-197862(JP,A)
【文献】特開平07-290837(JP,A)
【文献】特開平07-195834(JP,A)
【文献】特開平02-000591(JP,A)
【文献】特開昭63-290789(JP,A)
【文献】特表2010-505640(JP,A)
【文献】特表2008-520452(JP,A)
【文献】国際公開第2008/092650(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/475
C09D 11/10
C09D 11/037
B41M 5/46
B41M 5/395
B41M 5/392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷される基板が、インク層を有するインクキャリアに対向して、かつ、ギャップによって隔てられて、配置され、前記インク層が、レーザ光によって局所的に照射される印刷方法であって、前記インク層が、反射性粒子と、250,000g/molより大きい重量平均分子量(Mw)を有する可溶性ポリマーとを含み、前記可溶性ポリマーの重量平均分子量(Mw)が、DIN55672-2:2016-3に従って決定される、印刷方法。
【請求項2】
前記可溶性ポリマーが、250,000g/mol~2,500,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記可溶性ポリマーが、250,000g/mol~1,500,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する、請求項1または2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記可溶性ポリマーの割合が、全インク混合物の0.05~2重量%を占める、請求項1~3のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記可溶性ポリマーの割合が、全インク混合物の0.05~1重量%を占める、請求項1~4のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項6】
前記可溶性ポリマーの割合が、全インク混合物の0.1~0.8重量%を占める、請求項1~5のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項7】
使用される可溶性ポリマーが、セルロースエステル、硝酸セルロース、セルロースエーテル、ポリウレタンまたはビニルポリマーを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項8】
前記反射性粒子が、金属または金属被覆キャリア材料からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項9】
使用する反射性粒子が、0.1~10μmの平均粒径を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法およびインクの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インクの液滴がインクコーティングされたキャリアから印刷される基板上に投入される、基板を印刷するための方法は、例えば、特許文献1から公知である。インクを転写するために、基板が印刷される位置で、キャリアを介してキャリア上のインクにエネルギーが導入される。これにより、インクの一部が気化し、インクがキャリアから分離する。気化したインクの圧力の結果として、このように分離されたインクの液滴が基板上に投入される。
【0003】
方向付けられた方法でエネルギーを導入することによって、印刷されるパターンに従って基板上にインクを転写することが可能である。インクを転写するのに必要なエネルギーは、例えばレーザによって導入される。塗布されたインクを担持するキャリアは、例えば、印刷領域の前に塗布装置によってインクが塗布される循環リボンである。レーザは、循環リボンの内部に配置され、したがって、レーザは、インクから離れて面する側でキャリアに作用する。インクキャリアへのインクの塗布は、例えば、インクリザーバに浸漬されるロールによって達成される。
【0004】
この種の印刷機は、例えば特許文献2からも公知である。この文献の教示によれば、インクは、塗布装置を使用して、リザーバ容器から循環リボンに塗布され、循環リボン内にはレーザが位置しており、このレーザによってインクが所定の位置で気化され、それに応じて印刷される基板上に投入される。この場合のリボンは、レーザに対して透明な材料で作られる。インクを意図的に気化させるために、循環リボンを吸収層でコーティングすることが可能であり、この吸収層では、レーザ光が吸収されて熱に変換され、したがって、インクは、レーザへの露光位置で気化される。
【0005】
さらに、公開された明細書の特許文献3により、小さいレーザ吸収粒子を使用することによって、レーザ誘起印刷方法の効率を高めることが可能であることが知られている。このことは、記載された方法の生産性の有意な増加を可能にする点で重要である。
【0006】
吸収粒子を使用する場合の1つの欠点は、これらの粒子が可視波長スペクトルでも吸収することが非常に多く、その結果、印刷されるインク(液体インク)のいくぶん強い変色をもたらすことである。
【0007】
別の欠点は、粒子のレーザ誘導放出が、印刷結果の品質を低下させる多数の破壊的サテライトの放出を伴うことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第6241344号明細書
【文献】米国特許第5021808号明細書
【文献】独国特許出願公開第10210146号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
比較すると、本発明の目的は、少なくとも、従来技術の上記の欠点を低減することである。一般に、目的は、良好な印刷結果を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、請求項1に記載の印刷方法によって既に達成される。
【0011】
本発明の好ましい実施形態および発展形態は、従属請求項の要旨および明細書から明らかである。
【0012】
本発明は、印刷される基板が、インク層を有するインクキャリアに対向して配置され、前記インク層が、レーザ光線によって局所的に照射される印刷方法であって、前記インク層が、反射性粒子と、250,000g/molより大きい重量平均分子量(Mw)を有する可溶性ポリマーとを含み、前記可溶性ポリマーの重量平均分子量(Mw)が、DIN55672-2:2016-3に従って決定される、印刷方法に関する。このようにして、特に、インクの液滴がインク層から抽出され、基板上に転写される。
【0013】
インク層は、反射性粒子、可溶性ポリマー、染料および/または顔料、ならびに溶媒を含むインクでインクリボンをコーティングすることによって形成することができる。可溶性ポリマーは、インク組成物の溶媒として用いられる溶媒に溶解可能なポリマーである。
【0014】
本発明によれば、本発明の方法に使用されるインクは、インク層の部分でのレーザ吸収のために反射性粒子と混合される。
【0015】
反射性粒子はまた、特に使用されるレーザの波長範囲、より具体的には300~3000nmの範囲のレーザ光線に対して吸着性を有し得る。しかしながら、カーボンブラック粒子のような吸収粒子とは対照的に、反射性粒子は、可視波長スペクトルに関する反射特性も有する。
【0016】
使用するレーザの波長、特に300~3000nmに対して高い反射率を有する粒子を使用することができる。
【0017】
例えば、カーボンブラックなどの従来技術から知られている吸収粒子とは対照的に、反射性粒子は、インク層によって伝えられる着色された印象に対して実質的に中性であってもよい。
【0018】
使用することができる粒子は、まず、例えば、金属または金属被覆キャリア材料の粒子である。これらの粒子は、鏡面に基づいて反射を生じる。特に、いわゆるエフェクト顔料、好ましくは光沢顔料を使用することが可能である。
【0019】
反射性粒子は、特に、インク層に使用されるインクに対して1重量%超および/または10重量%未満の量で添加することができる。
【0020】
さらに、全反射によってミラーリング効果を発揮する透明粒子を使用することができる。光学干渉コーティングを有する粒子も使用することができる。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、0.1~10μm、好ましくは1~5μmの平均粒径を有する粒子が使用される。
【0022】
粒径は、レーザ回折測定によって決定することができる。これは、測定機器として、例えば、Shimadzu(登録商標)SALD-2201レーザサイズ分析器を使用して行うことができる。
【0023】
このようにして、特に有効な吸収を達成することができる。
【0024】
高い反射効果を達成するために、L色空間において50より大きい、好ましくは70より大きい、より好ましくは80より大きいL値を有する粒子を使用することができる。
【0025】
さらに、粒子は、中性色であってもよい。一実施形態では、L色空間における粒子は、+/-30のaおよび/またはb値を有する。より具体的には、+/-5未満、好ましくは+/-3未満のL色空間におけるaおよび/またはb値を有する粒子を使用することができる。
【0026】
色空間における値は、例えば、DTM1045(登録商標)分光光度計を使用して決定することができる。
【0027】
本発明はさらに、印刷される基板がインク層を有するインクキャリアに対向して配置され、インク層がレーザ光線によって局所的に照射され、前記層が基板方向にレーザ光線の吸収によって加速し、レーザ吸収が粒子によって生成される印刷方法に関する。
【0028】
本発明によれば、250,000g/molより大きい分子量Mwを有する可溶性ポリマーが、インク層に使用されるインクの溶媒に添加剤として添加される。
【0029】
前記重量平均分子量(Mw)は、DIN 55672-2:2016-3に従って決定される。N,N-ジメチルアセトアミドが溶出溶媒として使用される。
【0030】
さらなる実際の測定詳細:特に、PSS-SDV-ゲル(マクロポーラススチレン-ジビニルベンゼンコポリマーネットワーク)カラムの使用。(詳細)特に、4つのPSS-SDV-ゲル(マクロポーラススチレン-ジビニルベンゼンコポリマーネットワーク)カラムの組み合わせの使用;寸法:カラム当たり300mm×8mmID;粒径:5または10μm;孔径:1×10Å;1×10Å;1×10Å;1×500Å。
【0031】
インクは、特に溶媒、染料、特に顔料、およびレーザ光の吸収を促進する粒子、特に上記の反射性粒子を含む。
【0032】
溶媒に可溶性のポリマーを添加することによって、サテライト(飛沫)の形成の危険性を有意に減少させることが可能であることが明らかになった。
【0033】
理論に束縛されるものではないが、これはおそらく、このように改質されたインクの部分のより大きな弾性を含む要因に起因する。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、可溶性ポリマーの割合は、全インク混合物の0.05~2重量%である。可溶性ポリマーの割合は、好ましくは、全インク混合物の0.05重量%超および/または1重量%未満、典型的には0.1重量%超および/または0.8重量%未満である。
【0035】
本発明の好ましい一実施形態に従って使用される可溶性ポリマーは、セルロースエステル、硝酸セルロース、セルロースエーテル、より具体的にはヒドロキシプロピルセルロース、ポリウレタンまたはビニルポリマーを含む。特にヒドロキシプロピルセルロース、言い換えれば、ヒドロキシル基のいくつかがエーテルとしてヒドロキシプロピル基と結合しているセルロースエーテルは、本発明の効果に特に適していると思われる。
【0036】
本発明はさらに、上記した印刷方法のための、反射性粒子と250,000g/molより大きい分子量を有する可溶性ポリマーとを有するインクの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本発明の主題は、図1の図面を参照して、以下でより詳細に説明される。
図1】本発明の方法に使用される印刷機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、本発明の印刷機(1)の一つの例示的な実施形態の概略図である。
【0039】
印刷機(1)は、インクキャリア(4)として循環インクリボンを備える。
【0040】
インクリボンは、インキング装置(8)によってインク(2)で均一にかつ全面的にコーティングされる。続いて、インクリボンは、印刷ニップ(10)に向かって矢印方向に移動する。インクキャリア(4)は、印刷される基板(6)からギャップによって隔てられている。好ましくは、ギャップの幅は調整可能であり、および/または連続的に調整される。これは、例えば、適合可能な間隔調整(distancing)ロール(5)によって行うことができる。
【0041】
印刷ニップ(10)では、レーザスキャナ(11)を使用して、レーザ光線(3)が、レーザ光に対して透過性であるインクキャリア(4)を通してインク(2)に集束される。レーザ光線(3)によるインク(2)の部分の局所的かつ目標を定めた加熱は、インク(2)の小さな領域の爆発的な気化を引き起こし、その結果、印刷インク(2)の一部がインクリボンから反対側の基板(6)上に転写される。
【0042】
間隔調整ロール(5)および偏向ローラ(7)によって制御されたインクリボンは、その後、インキング装置(8)の方向に戻る。インキング装置(8)とインクリボンとが接触すると、消費されたインク(2)が補充される。
【0043】
インキング装置(8)内の余剰インク(2)は、底部のインク桶(9)内に集められ、印刷操作に繰り返し連続的に供給される。
【0044】
金属および金属被覆ポリマー粒子からなる反射性材料を使用することが可能である。
【0045】
印刷品質を改善するためのさらなる態様は、破壊的な飛沫が全く形成されないか、または大幅に低減された程度にしか形成されないように、印刷されるインクのレオロジーを変更することを含む。Mw:約250,000g/mol~約1,500,000g/molの平均分子量範囲の可溶性ポリマーの低レベル混合は、インクの印刷挙動にプラスの影響を及ぼすことが見出された。
【0046】
これらの混合物は、いわゆるインクの弾性を変化させる。より低いMw範囲(Mw:10,000g/mol~約100,000g/mol)付近の可溶性ポリマーの混合物は、増粘効果のみおよびわずかな飛散防止性のみを有する。より高いMw値(1,500,000g/mol超)を有するポリマーは、対照的に、飛散防止性のさらなる改善をもたらさず、単に溶解性をさらに妨げる。したがって、2,500,000g/mol未満、より好ましくは1,500,000g/mol未満の分子量(Mw)を有するポリマーを使用することが好ましい。
【0047】
以下のリストは、印刷業界内で慣習的な種々の溶媒との適切な可溶性ポリマー混合物の例、および全インク混合物中で典型的に使用される量(重量%)を示す。
【0048】
【表1】
【0049】
本発明により、サテライトの形成のリスクを低減することができ、これにより印刷結果の品質が改善される。使用される可溶性ポリマーの分子量の影響は、上記の印刷方法におけるポリマー溶液の抗スプレー効果によって以下にさらに示される。
【0050】
種々のインク混合物を上記の方法に従って印刷した。ここで、添加剤を含まない純粋な印刷では、印刷されたドットは多数の飛散した飛沫を示すことが観察された。
【0051】
この飛沫の数は、少量の高分子可溶性添加剤をインクに添加することによって著しく減少させることができた。
【0052】
これに関連して、化学物質群「セルロースエステル」、「硝酸セルロース」、「セルロースエーテル」、「ポリウレタン」、および「ビニルポリマー」からの添加剤は、250,000Mw超の適切な分子量を有し、総割合が0.05~2%であり、優れた抗スプレー添加剤であることが証明されている。
【0053】
以下の表の評価(重量%での全割合、3-エトキシ-1-プロパノールを溶媒として使用し、反射性アルミニウム粒子を使用し、散乱した飛沫を顕微鏡で計数した)は、対応する実験例を提供する。
【0054】
【表2】
【符号の説明】
【0055】
1 印刷機
2 インク
3 レーザ光
4 インクキャリア
5 間隔調整ロール
6 基板
7 偏向ローラ
8 インキング装置
9 インク桶
10 印刷ニップ
11 レーザスキャナ
図1