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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】接着性組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 233/09 20060101AFI20220803BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20220803BHJP
   C09D 133/26 20060101ALI20220803BHJP
   C09J 133/26 20060101ALI20220803BHJP
   C08F 20/56 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
C07C233/09 A CSP
C09J4/02
C09D133/26
C09J133/26
C08F20/56
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021033426
(22)【出願日】2021-03-03
(62)【分割の表示】P 2018544681の分割
【原出願日】2017-07-04
(65)【公開番号】P2021091719
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2016202986
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(72)【発明者】
【氏名】山手 太軌
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-269676(JP,A)
【文献】特開2013-064101(JP,A)
【文献】英国特許第00946107(GB,B)
【文献】特開平03-160459(JP,A)
【文献】特開昭54-024026(JP,A)
【文献】米国特許第02773063(US,A)
【文献】特開2005-055589(JP,A)
【文献】特開2012-224792(JP,A)
【文献】特開2006-350290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C09J
C09D
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I’)
Y-N(Ar)(R) (I’)
(式中、
Yはアクリロイル基又はメタクリロイル基を示す。
Ar及びRは、それぞれ独立して、置換基としてベンジル基又はα、α-ジメチルベンジル基を有するフェニル基を示す。)
で表される化合物。
【請求項2】
式(I’)で表される化合物由来の繰り返し単位を含有するポリマー。
【請求項3】
ポリマーが、ポリN,N-[4,4'-ビス(α、α-ジメチルベンジル)ジフェニル](メタ)アクリルアミドである請求項2に記載のポリマー。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のポリマーを含有するコーティング剤。
【請求項5】
コーティング剤がプラスチック基材のコーティング剤である請求項4に記載のコーティング剤。
【請求項6】
プラスチック基材が、ポリオレフィン樹脂基材である請求項5に記載のコーティング剤。
【請求項7】
プラスチック基材が、シクロオレフィン樹脂基材である請求項5に記載のコーティング剤。
【請求項8】
基材上に、請求項1~7のいずれかに記載のコーティング剤を塗布し硬化して得られた膜を有する成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な接着性組成物、特に、プラスチック基材との密着性に優れる接着性組成物、コーティング剤や接着剤として使用できる接着性組成物に関する。
【0002】
特許文献1には、複数のアリール基で置換されたメチル基又はシリル基を有する重合性化合物がシクロオレフィン樹脂との密着性に優れたコーティング剤となることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2014/115210号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの重合性化合物中のポリアリールメチル構造やポリアリールシリル構造は製造コストを引き上げ、汎用的な機能材料の実現上の問題となっており、密着性を維持しながらより実用的な構造へと変換する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題達成のために鋭意検討した結果、N,N-ジフェニルアクリルアミドに由来する繰返し単位を有するポリマーが、シクロオレフィン樹脂に対し密着性を示すことを見出した。本発明者は、密着性の基本原理をN,N-ジフェニルアミド基とシクロオレフィン間に生じるCH-π相互作用と考え、この原理を基により実用性の高い機能材料とすべく検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
(1)式(I)
Y-N(Ar)(R) 式(I)
(式中、
Arは、無置換の若しくは置換基を有するC6~C14のアリール基又は無置換の若しくは置換基を有するC6~C10アリールC1~C3アルキル基を表す。
Rは、無置換の若しくは置換基を有するC1~C6のアルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC3~C6シクロアルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6~C14のアリール基又は無置換の若しくは置換基を有するC6~C10アリールC1~C3アルキル基を表す。
Yは、重合可能な官能基を表す。
ここで、Ar上の置換基と、R上の置換基は一緒になって二価の有機基を形成してもよい。)
で表される重合性化合物由来の繰り返し単位を有するポリマーを含有する接着性組成物。
(2)(1)に記載のポリマーが、式(I)で表される1種類の重合性化合物由来の繰り返し単位を有するホモポリマーである(1)に記載の接着性組成物。
(3)式(I)中、Yがアクリロイル基又はメタクリロイル基である(1)又は(2)に記載の接着性組成物。
(4)式(I)で表される重合性化合物以外の重合性化合物をさらに含有する(1)~(3)のいずれかに記載の接着性組成物。
(5)接着性組成物が、プラスチック基材の接着性組成物である(1)~(4)のいずれかに記載の接着性組成物。
(6)プラスチック基材が、ポリオレフィン樹脂基材である(5)に記載の接着性組成物。
(7)プラスチック基材が、シクロオレフィン樹脂基材である(5)に記載の接着性組成物。
(8)接着性組成物がコーティング剤である(5)に記載の接着性組成物。
(9)コーティング剤が、プライマーである(8)に記載の接着性組成物。
(10)接着性組成物が、接着剤である(5)に記載の接着性組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の接着性組成物を用いることで、プラスチック基材、特にシクロオレフィン樹脂等のプラスチック基材への密着性に優れるコーティング膜を形成することができる。従来、プラスチック基材に直接形成することができなかった機能性膜を本発明のコーティング膜を介して積層させることができる。さらに、コーティング膜を介してプラスチック基材同士を接着させることができる。
UVオゾン処理等で表面を改質する必要がないため、プラスチック基材の初期の特性を維持することができる。
また、接着剤としても使用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.接着性組成物
〔ポリマー〕
本発明の接着性組成物は、式(I)で表される重合性化合物由来の繰り返し単位を有するポリマー(「ポリマー(I)」と言うことがある。)を含有する。
Y-N(Ar)(R) (I)
【0009】
式中、Arは、無置換の若しくは置換基を有するC6~C14のアリール基又は無置換の若しくは置換基を有するC6~C10アリールC1~C3アルキル基を表す。
C6~C14のアリール基としては、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等が挙げられる。
C6~C10アリールC1~C3アルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフタレン-1-イルメチル基等が挙げられる。
「無置換の若しくは置換基を有する」における「置換基」としては、具体的には、ハロゲノ基、水酸基、C1~C6のアルキル基、C1~C6のアルコキシ基、C3~C6のシクロアルキル基、C6~C10のアリール基、ベンジル基、α,α-ジメチルベンジル基、メルカプト基、C1~C6アルキルチオ基、アミノ基、C1~C6のアルキルアミノ基、C1~C6のジアルキルアミノ基、ニトロ基、又はシアノ基が挙げられる。置換基数としては、化学的に許容できる範囲内であれば制限はない。
【0010】
ハロゲノ基としては、具体的には、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、イオド基が挙げられる。
C1~C6のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
C1~C6のアルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、n-ヘキソキシ基等が挙げられる。
C3~C6のシクロアルキル基としては、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
C6~C10のアリール基としては、具体的には、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
C1~C6のアルキルチオ基としては、具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、i-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、s-ブチルチオ基、i-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基等が挙げられる。
C1~C6のアルキルアミノ基としては、具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、i-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、i-ブチルアミノ基、t-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基等が挙げられる。
C1~C6のジアルキルアミノ基としては、具体的には、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、エチル(メチル)アミノ基等が挙げられる。
本発明においては、Arとしては、無置換の若しくは置換基を有するC6~C10のアリール基が好ましい。置換基としては、C1~C6アルキル基、C1~C6アルコキシ基が好ましい。
【0011】
式中、Rは、無置換の若しくは置換基を有するC1~C6のアルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC3~C6シクロアルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6~C14のアリール基又は無置換の若しくは置換基を有するC6~C10アリールC1~C3アルキル基を表す。
C1~C6のアルキル基、C3~C6のシクロアルキル基、C6~C14のアリール基、C6~C10アリールC1~C3アルキル基及びそれらの置換基の具体例は、上記Arで例示したものと同様のものが挙げられる。本発明においては、Rとしては、無置換の若しくは置換基を有するC6~C10のアリール基が好ましい。置換基としては、C1~C6アルキル基、C1~C6アルコキシ基が好ましい。
【0012】
本発明においては、Ar上の置換基とR上の置換基が一緒になって二価の有機基を形成してもよい。
二価の有機基としては、具体的には、メチレン基、ジメチレン基、オキソ基、スルフェニル基、カルボニル基、イミノ基、C1~C6のアルキルイミノ基を挙げることができる。
【0013】
式中、Yは、重合可能な官能基を表す。重合可能な官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルオキシカルボニル基、プロプ-1-エン-2-イルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等の重合可能な炭素―炭素二重結合を有する基等が挙げられる。
本発明においては、Yとしては、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
【0014】
本発明に用いる式(I)で表される重合性化合物のうちで、好ましくは、N,N-ジフェニルアクリルアミド、N,N-ジフェニルメタクリルアミドが挙げられる。
【0015】
本発明に用いるポリマーは、式(I)で表される重合性化合物を重合したものであれば、特に制限なく使用することができる。重合反応は、特に制限されず、ポリアクリレート等を合成する公知の方法であってもよく、例えば、ラジカル重合、アニオン重合等を挙げることができる。
用いるポリマーの分子量は、基材上への塗布可能な範囲内であれば、制限はなく、例えば、1,000~300,000、5,000~200,000、10,000~100,000などの範囲内の数平均分子量のポリマーを挙げることができる。
また、本発明に係るポリマーの分子量分布(PDI)は、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)の比で、好ましくは1.0~5.0、より好ましくは1.0~4.0、最も好ましくは1.0~3.0である。
なお、重量平均分子量および数平均分子量は、DMFを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて測定したデータを、標準として使用するポリメタクリル酸メチルの分子量に基づいて換算した値である。
【0016】
本発明に用いるポリマーは、式(I)で表される重合性化合物に由来する繰り返し単位を有するものであれば良く、式(I)で表わされる重合性化合物以外の重合性化合物由来の繰り返し単位、たとえば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の繰り返し単位、芳香族ビニル系モノマー由来の繰り返し単位、オレフィン系モノマー由来の繰り返し単位等を有するコポリマーであってもよい。
特には、式(I)で表される1種類の重合性化合物を重合したホモポリマーあるいは式(I)で表される2種以上の重合性化合物を重合したポリマーであることが好ましい。
【0017】
式(I)で表わされる重合性化合物以外の重合性化合物としては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;
スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルエーテル、アクロレイン、ジビニルベンゼン等のビニル系化合物;
エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン化合物等が挙げられる。
【0018】
〔その他の成分〕
(有機溶媒)
本発明の接着性組成物には、有機溶媒を含むことができる。使用可能な代表的有機溶媒としては、エーテル系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ケトン系、有機ハロゲン化物系等が挙げられる。
エーテル系の有機溶媒としてはジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル;エステル系の有機溶媒としてはエチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、アミルアセテート、ヘプチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルイソバリレート;脂肪族系炭化水素系の有機溶媒としてはノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、シクロヘキサン;芳香族系の有機溶媒としてはトルエン、キシレン;ケトン系の有機溶媒としてはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン;有機ハロゲン化物系の有機溶媒としてはトリクロロエタン、トリクロロエチレン;等が挙げられる。さらには、プロピレングリコールモノメチルエーテルやプロピレングリコールモノエチルエーテルなどの比較的非活性な有機溶媒も使用可能である。
中でも、本発明が自然環境下の開放系で用いられることが多いことを考慮すると、揮発性を有するプロピルアセテート、ブチルアセテート、イソアミルアセテート、ヘプチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルイソバリレートなどのエステル系の有機溶媒が好ましい。
【0019】
(重合性化合物)
本発明の接着性組成物は、式(I)で表される重合性化合物以外の重合性化合物を含んでいてもよい。
【0020】
重合性化合物は、融点、粘度又は屈折率などの目的とする物性に応じて適宜選定すればよく、特に限定されるものではないが、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0021】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリチル(メタ)アクリレート等の単官能性(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビス[(メタ)アクリロキシメチル]シクロヘキサン、ビスフェノールA-ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート等の二官能性(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の三官能性以上の多官能性(メタ)アクリレート;
【0022】
エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリブタジエンオリゴマーの(メタ)アクリレート、ポリアミド型(メタ)アクリルオリゴマー、メラミン(メタ)アクリレート、シクロペンタジエンオリゴマーの(メタ)アクリレート、シリコーンオリゴマーの(メタ)アクリレート等のアクリル系重合性オリゴマー。
【0023】
スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルエーテル、アクロレイン、ジビニルベンゼン等のビニル系化合物;
エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン化合物等。
【0024】
重合性化合物は、接着性組成物の密着性を損なわない範囲内であれば添加量に制限はない。重合性化合物の配合量は、ポリマー(I)に対して、50質量%未満とすることが好ましく、30質量%未満とすることがより好ましい。
【0025】
(重合開始剤)
また、本発明の接着性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。ここで、重合反応としては、光重合反応や熱重合反応等が挙げられるが、プラスチック基材への熱的影響がない光重合反応が好ましい。光重合反応に用いる光線としては、紫外線又は可視光線が挙げられるが、重合速度が速い紫外線が好ましい。
【0026】
光重合開始剤としては、(a)光照射によりカチオン種を発生させる化合物及び(b)光照射により活性ラジカル種を発生させる化合物等を挙げることができる。
【0027】
光照射によりカチオン種を発生させる化合物としては、例えば、カチオン部分が、スルホニウム、ヨードニウム、ジアゾニウム、アンモニウム、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチル)ベンゼン]-Feカチオンであり、アニオン部分が、BF 、PF 、SbF 、[BX(Xは、少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を示す。)で構成されるオニウム塩が挙げられる。
【0028】
具体的に、スルホニウム塩としては、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウム テトラフルオロボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0029】
ヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム テトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0030】
ジアゾニウム塩としては、フェニルジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0031】
アンモニウム塩としては、1-ベンジル-2-シアノピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウム ヘキサフルオロアンチモネート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0032】
(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチル)ベンゼン]-Fe塩としては、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチル)ベンゼン]-Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチル)ベンゼン]-Fe(II)ヘキサフルオロアンチモネート、2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチル)ベンゼン]-Fe(II)テトラフルオロボレート、2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチル)ベンゼン]-Fe(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0033】
光照射により活性ラジカル種を発生させる化合物としては、具体的には、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1,4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)等が挙げられる。
【0034】
熱重合開始剤は、加熱によりラジカルを発生する化合物のことを指し、有機過酸化物、アゾ化合物及びレドックス開始剤等が挙げられる。
本発明において用いられる重合開始剤の配合量は、全重合性化合物の総量に対して、0.01~20質量%配合することが好ましく、0.1~10質量%が、さらに好ましい。
【0035】
〔機能性の付与〕
(有機シラン化合物の縮合物)
本発明の接着性組成物には、コーティング膜表面を無機化することを目的として、有機シラン化合物の縮合物を含有することができる。これによって、プラスチック基材の表面にガラス状のハードコート層を積層することができる。
【0036】
有機シラン化合物の縮合物は、式(A)で表される有機シラン化合物を公知のシラノール縮合方法を用いて製造することができる。
Si(R (A)
【0037】
式中、Rは、エポキシ基、グリシジルオキシ基若しくは(メタ)アクリロキシ基で置換されていても良いC1~C30のアルキル基、C2~C8のアルケニル基、又はC6~C10のアリール基を表し、Rは水酸基又は加水分解性基を表す。
【0038】
におけるC1~C30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。C2~C8のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、2-プロペニル基等が挙げられる。
C6~C10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0039】
の加水分解性基とは、無触媒条件下若しくは過剰の水の共存下、25℃~100℃で加熱することにより、加水分解されてシラノール基を生成することができる基や、シロキサン縮合物を形成することができる基を意味し、具体的には、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲノ基、イソシアネート基等を挙げることができ、C1~C4のアルコキシ基又はC1~C6のアシルオキシ基が好ましい。
【0040】
ここで、C1~C4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられ、C1~C6のアシルオキシ基は、カルボニル基以外の炭素数が1~6であるアシルオキシ基を意味し、C1~C6のアシルオキシ基としては、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。ハロゲノ基としてはフルオロ基、クロロ基、ブロモ基、イオド基等が挙げられる。
【0041】
式(A)で表される有機シラン化合物としては、具体的には、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-ブテニルトリメトキシシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジアセトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジ3-ブテニルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルエチルジエトキシシラン、メチルトリ(メタ)アクリロキシシラン、メチルトリス[2-(メタ)アクリロキシエトキシ]シラン、メチルトリグリシジロキシシラン、メチルトリス(3-メチル-3-オキセタンメトキシ)シラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリ(n-ブトキシ)シラン、n-ブチルトリメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジ-n-ブチルジメトキシシラン、2-シクロプロペニルトリメトキシシラン、2-シクロペンテニルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、4-オキサシクロヘキシルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシジロキシ-n-プロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジロキシ-n-プロピルトリメトキシシラン、3-グリシジロキシ-n-プロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシ-n-プロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシ-n-プロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシ-n-プロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシ-n-プロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシ-n-プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0042】
公知のシラノール縮合方法としては、具体的には、シラノール縮合触媒を用いる方法を挙げることができる。シラノール縮合触媒は、式(A)で表される化合物中の加水分解性基を加水分解し、シラノールを縮合してシロキサン結合とするものであれば特に制限されず、有機金属、有機酸金属塩、金属水酸化物、酸、塩基、金属錯体、それらの加水分解物、それらの縮合物等が挙げられる。シラノール縮合触媒は1種単独又は2種以上の組合せで使用することができる。
【0043】
有機金属としては、具体的には、テトラメチルチタン、テトラプロピルジルコニウム等のアルキル金属化合物;テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコラート;等が挙げられる。
【0044】
有機酸金属塩は、金属イオンと有機酸から得られる塩からなる化合物であり、有機酸としては、酢酸、シュウ酸、酒石酸、安息香酸等のカルボン酸類;スルフォン酸、スルフィン酸等の含硫黄有機酸;フェノール化合物;エノール化合物;オキシム化合物;イミド化合物;芳香族スルフォンアミド;等の酸性を呈する有機化合物が挙げられる。具体的にはカルボン酸金属塩、スルフォン酸金属塩、フェノール金属塩等が挙げられる。
【0045】
金属水酸化物は、陰イオンとして水酸化物イオンをもつ金属化合物である。
【0046】
金属錯体としては、水酸基若しくは加水分解性基を有する金属錯体であることが好ましく、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属錯体であることがより好ましい。なお、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有するとは、加水分解性基及び水酸基の合計が2以上であることを意味する。加水分解性基としては、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン基、イソシアネート基が挙げられ、C1~C4のアルコキシ基、C1~C4のアシルオキシ基が好ましい。
【0047】
また、前記金属錯体としては、β-ケトカルボニル化合物、β-ケトエステル化合物、及びα-ヒドロキシエステル化合物が好ましく、具体的には、アセト酢酸メチル、アセト酢酸n-プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n-ブチル、アセト酢酸sec-ブチル、アセト酢酸t-ブチル等のβ-ケトエステル類;アセチルアセトン、へキサン-2,4-ジオン、ヘプタン-2,4-ジオン、ヘプタン-3,5-ジオン、オクタン-2,4-ジオン、ノナン-2,4-ジオン、5-メチル-へキサン-2,4-ジオン等のβ-ジケトン類;グリコール酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸等が金属元素に配位した化合物が挙げられる。
【0048】
また、これら有機金属、有機酸金属塩、金属水酸化物、金属錯体における金属元素としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、亜鉛(Zn)、タングステン(W)、鉛(Pb)等が挙げられ、これらの中でもチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)が好ましく、特にチタン(Ti)が好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上用いることもできる。
【0049】
酸としては、有機酸、鉱酸が挙げられ、有機酸としては酢酸、ギ酸、シュウ酸、フタル酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等、鉱酸としては、塩酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、ホウフッ化水素酸等が挙げられる。
ここで、光照射によって酸を発生する光酸発生剤、具体的には、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等も酸に包含される。
【0050】
塩基としては、テトラメチルグアニジン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン等の強塩基類;有機アミン類、有機アミンのカルボン酸中和塩、4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0051】
シラノール縮合触媒の配合比は、有機シラン化合物の質量に対して、1:99~99:1、好ましくは1:99~50:50である。
【0052】
(金属化合物等)
本発明の接着性組成物には、コーティング膜の屈折率や硬度を上げることを目的として、金属化合物を添加することができる。金属化合物としては、前述の有機シラン化合物や、シラノール縮合触媒として例示された有機金属、有機酸金属塩、金属水酸化物、金属錯体が挙げられるが、それら以外の金属化合物としては、金属酸化物が挙げられ、具体的には、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化コバルトの金属酸化物粒子等が挙げられる。特に酸化ジルコニウムが好ましい。
粒子の形状としては、球状、多孔質粉末、鱗片状、繊維状等が挙げられるが、多孔質粉末状であることがより好ましい。
また、本発明の金属酸化物粒子としては、コロイド状金属酸化物粒子も使用できる。具体的には、コロイド状シリカ、コロイド状ジルコニウムを挙げることができ、水分散コロイド状、あるいはメタノール若しくはイソプロパノールなどの有機溶媒分散コロイド状の金属酸化物粒子を挙げることができる。
【0053】
また、コーティング膜の着色、厚膜化、紫外線透過防止、防蝕性の付与、耐熱性などの諸特性を発現させるために、別途、充填材を添加・分散させることも可能である。充填材としては、有機顔料、無機顔料などの非水溶性の顔料又は顔料以外の粒子状、繊維状もしくは鱗片状の金属および合金ならびにこれらの酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物等が挙げられる。
その他、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、テトラエトキシシランなどの公知の脱水剤、各種界面活性剤、前記以外のシランカップリング剤、チタンカップリング剤、染料、分散剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を添加することもできる。
【0054】
なお、本発明においては、必要に応じて増感剤、紫外線吸収剤、染料、防錆剤、防腐剤等の添加成分を配合することができる。
【0055】
〔接着性組成物の調製〕
本発明における接着性組成物は、通常、有機溶媒中にポリマー(I)のほか、必要に応じて、前記重合性化合物、前記有機シラン化合物の縮合物、光重合開始剤、金属化合物等を混合して調製される。本発明の接着性組成物中の固形分は、1~90質量%であることが好ましく、5~60質量%であることがより好ましい。
【0056】
2.成形体
本発明の成形体は、前記の接着性組成物を、プラスチック基材上に塗布し、前記の接着性組成物を硬化させた膜(コーティング膜)を基材上に直接設けたものである。
【0057】
〔基材〕
本発明の接着性組成物が使用できる基材としては、プラスチック基材が好ましく、具体的には、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等のシクロオレフィン樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリイソシアネート樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエステル樹脂;アクリル樹脂;メタクリル樹脂;エポキシ樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂;芳香族ポリエーテルケトン樹脂が挙げられる。
特に、シクロオレフィン樹脂及びポリオレフィン樹脂が好適に用いられる。
【0058】
〔コーティング膜の形成〕
本発明の接着性組成物は、ポリマー(I)が基材表面上にCH-π相互作用を介して強固に密着するため、接着性組成物を塗布後加熱乾燥するだけでコーティング膜を形成することができる。接着性組成物中に重合性化合物をさらに含有する場合は、光重合開始剤を併用した紫外線照射処理、又は熱重合開始剤を併用した加熱処理を行うことが好ましい。
UVオゾン処理等で基材表面を改質する必要がないため、プラスチック基材の初期の特性を維持することができる。
【0059】
接着性組成物の塗布方法としては、公知の塗布方法を用いることができ、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン法、インクジェット法等が挙げられる。また、形成されるコーティング膜の厚さは、特に制限されるものではなく、0.1~200μm程度である。
【0060】
コーティング膜の加熱乾燥処理は、40~200℃で0.5~120分程度行うことが好ましく、60~120℃で1~60分程度行うことがより好ましい。
紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーランプ等の公知の装置を用いて行うことができる。
加熱処理は、乾燥処理と連続で行うことができる。
【0061】
〔機能性膜の積層〕
本発明のコーティング膜は、非常にプラスチック基材と密着性がよいため、本発明のコーティング膜をプライマー層として用いることができる。これにより、従来プラスチック基材に直接形成することができなかった機能性膜を、本発明のコーティング膜を介して積層させることができる。複数層を積層することができ、また、本発明のコーティング剤を複数層上にさらに塗布し、さらに積層することもできる。
【0062】
機能性膜としては、導電膜、反射防止膜、ガスバリア膜、ハードコート膜、撥水性膜、親水性膜等が挙げられる。
導電膜としては、スズがドープされた酸化インジウム膜(ITO膜)、フッ素がドープされた酸化スズ膜(FTO膜)、アンチモンがドープされた酸化亜鉛膜、インジウムがドープされた酸化亜鉛膜等が挙げられる。
ガスバリア膜は、酸素、水蒸気等のガスバリア性を有する限り特に制限はないが、好ましくは、無機化合物の薄膜であり、特に、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン及び鉛から成る群より選ばれた金属元素を有する金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物又はそれらの複合物の薄膜が好ましい。
【0063】
これらの機能性膜の厚さは、通常10~300nm、好ましくは10~200nm、より好ましくは10~100nmである。
【0064】
無機化合物からなる導電性膜、ガスバリア膜等を、本発明のコーティング膜上に形成する方法は、公知の方法により形成することが可能であるが、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の物理的方法や、スプレー法、ディップ法、熱CVD法、プラズマCVD法等の化学的方法等により行うことができる。
【0065】
例えば、スパッタリング法等によれば、ケイ素化合物を酸素ガス存在下で焼結させたもの等をターゲットとして用いることにより、酸化ケイ素からなる膜を形成することもでき、金属シリコンをターゲットとして酸素存在下で反応性スパッターすることによっても膜を形成することができる。また、プラズマCVD法によれば、シランガスを、酸素ガス及び窒素ガスと共に、プラズマを発生させたチャンバーの中に供給し、反応させ、基材上に酸化窒化ケイ素からなる膜を形成することができる。また、熱CVD法等によれば、ケイ素化合物を含有する有機溶媒溶液等を蒸発物として用いることにより、酸化ケイ素からなる膜を形成することができる。
【0066】
本発明においては、特に、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法又はプラズマCVD法により、機能性膜を形成するのが好ましい。また、機能性膜を形成する際に、必要に応じて、本発明のコーティング膜の表面を予めプラズマ処理又はUVオゾン処理しておいてもよい。
【0067】
本発明のコーティング膜は、プラスチック基材同士、又はプラスチック基材と他の成形されたシートを接着する際に用いる接着層として使用することもできる。
成形されたシートとしては、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シクロオレフィン樹脂等の材質から成るプラスチックシート;偏光板、位相差フィルム、反射防止フィルム等の光学フィルム;アルミ、銅、シリコン等の金属箔;等を挙げることができる。
【0068】
以下に実施例を示すが、本発明の技術的範囲はこれら実施例により限定されるものではない。
【実施例
【0069】
実施例において得られたポリマーの数平均分子量の測定は、以下の装置及び条件で行った。
[装置]
サンプル注入装置:Waters 2695 アライアンス
分離カラム:Shodex SB-G、SB-806HQ、SB-805HQ、SB-804HQ、SB-803HQ
検出器:Waters 2414 示差屈折(RI)検出器
2998 フォトダイオードアレイ(PDA)検出器
カラムオーブン:Waters社製カラムオーブン
[条件]
カラムオーブン温度:40℃
RI検出器温度:40℃
移動相:DMF
流量:1.0mL/min
標準注入量:200μL
PDA検出器抽出波:254.0nm
定量計算:標準ポリメタクリル酸メチル換算
【0070】
(実施例1)
(1)N,N-ジフェニルアクリルアミドの合成
【0071】
【化1】
【0072】
窒素置換した100mL四ツ口フラスコに、ジフェニルアミン(5.00g,29.6mmol)、N,N-ジメチルアニリン(5.37g,44.3mmol)、及び超脱水ジクロロメタン50mLを仕込んだ。反応溶液を氷浴で10℃以下に冷却し、アクリル酸クロライド(3.21g,35.5mmol)をゆっくり滴下し、30分間撹拌した。その後、反応液を室温まで昇温し、24時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を1N塩酸水溶液、飽和重曹水、食塩水で水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、その後濾液をエバポレーターで留去した。粗生成物をトルエン/ヘキサンで再結晶することで、N,N-ジフェニルアクリルアミド(4.61g、収率70%)を得た。
質量分析の結果を以下に示す。
High Resolution ESI-TOF-MS m/z Calcd. for [C15H13N1O1([M+Na]+)]: 246.0889 found 246.0880.
【0073】
(2)ポリ(N,N-ジフェニルアクリルアミド)の作製
ポリマーは、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を開始剤としたラジカル重合反応で作製した。
N,N-ジフェニルアクリルアミド1.00gとAIBN7.35mgを、50mLシュレンク管に仕込んだ。撹拌子を入れ、三方コックで密閉した後、窒素入りのガス採取袋を設置した。真空ポンプで反応容器の脱気を行った後、窒素置換した。続いて、脱酸素トルエン4.00mLを加え、65℃のオイルバスで24時間加熱することで、ラジカル重合反応を行った。反応終了後、反応液をメタノール中に加えることで再沈殿を行った。GPCからポリマーの数平均分子量(M)は、23,100、分子量分布(PDI)は1.39であった。
【0074】
(3)コーティング剤の作製
ポリ(N,N-ジフェニルアクリルアミド)0.1gをシクロヘキサノン9.9gに加熱溶解させることで、固形分濃度1wt%のコーティング剤(A-1)を得た。
【0075】
(4)コーティング膜の形成
50×50mmサイズの各種の基材に、コーティング剤(A-1)をバーコートで成膜した。コートした基材を、オーブン内で乾燥(80℃、5分間)することで、成形体を得た。
用いた基材を以下に示す。
ZEONOR Film ZF-16(日本ゼオン製, シクロオレフィンポリマー(COP),188μm)
ZEONEX790R(日本ゼオン製, シクロオレフィンポリマー(COP),2mm)
APEL 6015T(三井化学製, シクロオレフィンコポリマー(COC),2mm)
オプティカフィルム 6013T(三井化学製,COCフィルム,100μm)
TOPAS 6015S(ポリプラスチックス製, COC,1mm)
TPX RT18(三井化学製、メチルペンテンコポリマー,2mm)
MX0200(三井化学製、メチルペンテンコポリマー,2mm)
ポリエチレンプレート(Wako,1mm)
ポリプロピレンプレート(Wako,1mm)
【0076】
(実施例2)
(1)N,N-ジ-p-トリルアクリルアミドの合成
【0077】
【化2】
【0078】
窒素置換した100mL四ツ口フラスコに、ジ-p-トリルアミン(5.00g,25.3mmol)、N,N-ジメチルアニリン(3.69g,30.4mmol)、及び超脱水ジクロロメタン50mLを仕込んだ。反応溶液を氷浴で10℃以下に冷却し、アクリル酸クロライド(2.75g,30.4mmol)をゆっくり滴下し、30分間撹拌した。その後、反応液を室温まで昇温し、24時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を1N塩酸水溶液、飽和重曹水、食塩水で水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、その後濾液をエバポレーターで留去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=3/7、シリカゲル)で精製することで、N,N-ジ-p-トリルアクリルアミド(2.87g、収率45%)を得た。質量分析の結果を以下に示す。
High Resolution ESI-TOF-MS m/z Calcd. for [C17H17N1O1([M+Na]+)]: 274.1202 found 274.1221.
【0079】
(2)ポリ(N,N-ジ-p-トリルアクリルアミド)の作製
ポリマーは、N,N-ジ-p-トリルアクリルアミド1.00g、AIBN8.3mgを使用する以外は、実施例1と同様の手法で作製した。GPCからポリマーの数平均分子量(M)は、24,900、分子量分布(PDI)は1.95であった。
【0080】
(3)コーティング剤の作製
ポリ(N,N-ジ-p-トリルアクリルアミド)0.1gをシクロへキサノン9.9gに加熱溶解させることで、固形分濃度1wt%のコーティング剤(B-1)を得た。
【0081】
(4)コーティング膜の形成
コーティング剤に(B-1)を使用する以外は、実施例1と同様の操作で行った。
【0082】
(実施例3)
(1)N,N-ジ-4-メトキシフェニルアクリルアミドの合成
【0083】
【化3】
【0084】
窒素置換した100mL四ツ口フラスコに、ビス(4-メトキシフェニル)アミン(5.00g,21.8mmol)、N,N-ジメチルアニリン(3.17g,26.2mmol)、及び超脱水ジクロロメタン50mLを仕込んだ。反応溶液を氷浴で10℃以下に冷却し、アクリル酸クロライド(2.37g,26.2mmol)をゆっくり滴下し、30分間撹拌した。その後、反応液を室温まで昇温し、24時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を1N塩酸水溶液、飽和重曹水、食塩水で水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、その後濾液をエバポレーターで留去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=3/7、シリカゲル)で精製することで、N,N-ジ-4-メトキシフェニルアクリルアミド(3.83g、収率62%)を得た。質量分析の結果を以下に示す。
High Resolution ESI-TOF-MS m/z Calcd. for [C17H17N1O3([M+Na]+)]: 306.1101 found 306.1109.
【0085】
(2)ポリ(N,N-ジ-4-メトキシフェニルアクリルアミド)の作製
ポリマーは、N,N-ジ-4-メトキシフェニルアクリルアミド1.00g、AIBN7.16mgを使用する以外は、実施例1と同様の手法で作製した。GPCからポリマーの数平均分子量(M)は、28,900、分子量分布(PDI)は1.73であった。
【0086】
(3)コーティング剤の作製
ポリ(N,N-ジ-4-メトキシフェニルアクリルアミド)0.1gをシクロへキサノン9.9gに加熱溶解させることで、固形分濃度1wt%のコーティング剤(C-1)を得た。
【0087】
(4)コーティング膜の形成
コーティング剤に(C-1)を使用する以外は、実施例1と同様の操作で行った。
【0088】
(実施例4)
(1)N-アクリロイルジヒドロアクリジンの合成
【0089】
【化4】
【0090】
窒素置換した100mL四ツ口フラスコに、9,10-ジヒドロアクリジン(5.00g,27.6mmol)、N,N-ジメチルアニリン(6.69g,55.2mmol)、及び超脱水ジクロロメタン50mLを仕込んだ。反応溶液を氷浴で10℃以下に冷却し、アクリル酸クロライド(3.75g,41.4mmol)をゆっくり滴下し、30分間撹拌した。その後、反応液を室温まで昇温し、24時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を1N塩酸水溶液、飽和重曹水、食塩水で水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、その後濾液をエバポレーターで留去した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/9)で精製することで、N-アクリロイルジヒドロアクリジン(3.05g、収率47%)を得た。質量分析の結果を以下に示す。
High Resolution ESI-TOF-MS m/z Calcd. for [C16H13N1O1([M+Na]+)]: 258.0889 found 258.0871.
【0091】
(2)ポリ(N-アクリロイルジヒドロアクリジン)の作製
ポリマーは、N-アクリロイルジヒドロアクリジン1.00g、AIBN9.06mgを使用する以外は、実施例1と同様の手法で作製した。GPCからポリマーの数平均分子量(M)は、20,000、分子量分布(PDI)は1.75であった。
【0092】
(3)コーティング剤の作製
ポリ(N-アクリロイルジヒドロアクリジン)0.1gをシクロへキサノン9.9gに加熱溶解させることで、固形分濃度1wt%のコーティング剤(D-1)を得た。
【0093】
(4)コーティング膜の形成
コーティング剤に(D-1)を使用する以外は、実施例1と同様の操作で行った。
【0094】
(実施例5)
(1)N-アクリロイルイミノジベンジルの合成
【0095】
【化5】
【0096】
窒素置換した100mL四ツ口フラスコに、イミノジベンジル(5.00g,25.6mmol)、N,N-ジメチルアニリン(3.72g,30.7mmol)、及び超脱水ジクロロメタン50mLを仕込んだ。反応溶液を氷浴で10℃以下に冷却し、アクリル酸クロライド(2.78g,30.7mmol)をゆっくり滴下し、30分間撹拌した。その後、反応液を室温まで昇温し、24時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を1N塩酸水溶液、飽和重曹水、食塩水で水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、その後濾液をエバポレーターで留去した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=3/7)で精製することで、N-アクリロイルイミノジベンジル(3.70g、収率58%)を得た。質量分析の結果を以下に示す。
High Resolution ESI-TOF-MS m/z Calcd. for [C17H15N1O1([M+Na]+)]: 272.1046 found 272.1065.
【0097】
(2)ポリ(N-アクリロイルイミノジベンジル)の作製
ポリマーは、N-アクリロイルイミノジベンジル1.00g、AIBN6.59mgを使用する以外は、実施例1と同様の手法で作製した。GPCからポリマーの数平均分子量(M)は、20,000、分子量分布(PDI)は1.75であった。
【0098】
(3)コーティング剤の作製
ポリ(N-アクリロイルイミノジベンジル)0.1gをシクロへキサノン9.9gに加熱溶解させることで、固形分濃度1wt%のコーティング剤(E-1)を得た。
【0099】
(4)コーティング膜の形成
コーティング剤に(E-1)を使用する以外は、実施例1と同様の操作で行った。
【0100】
(実施例6)
(1)N-アクリロイルフェノキサジンの合成
【0101】
【化6】
【0102】
窒素置換した100mL四ツ口フラスコに、フェノキサジン(5.00g,27.3mmol)、N,N-ジメチルアニリン(6.61g,54.6mmol)、及び超脱水ジクロロメタン50mLを仕込んだ。反応溶液を氷浴で10℃以下に冷却し、アクリル酸クロライド(3.71g,40.9mmol)をゆっくり滴下し、30分間撹拌した。その後、反応液を室温まで昇温し、24時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を1N塩酸水溶液、飽和重曹水、食塩水で水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、その後濾液をエバポレーターで留去した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=3/7)で精製することで、N-アクリロイルフェノキサジン3.89g(収率60%)を得た。質量分析の結果を以下に示す。
High Resolution ESI-TOF-MS m/z Calcd. for [C15H11N1O2([M+Na]+)]: 260.0682 found 260.0691.
【0103】
(2)ポリ(N-アクリロイルフェノキサジン)の作製
ポリマーは、N-アクリロイルフェノキサジン1.00g、AIBN6.92mgを使用する以外は、実施例1と同様の手法で作製した。GPCからポリマーの数平均分子量(M)は、31,200、分子量分布(PDI)は1.83であった。
【0104】
(3)コーティング剤の作製
ポリ(N-アクリロイルフェノキサジン)0.1gをシクロへキサノン9.9gに加熱溶解させることで、固形分濃度1wt%のコーティング剤(F-1)を得た。
【0105】
(4)コーティング膜の形成
コーティング剤に(F-1)を使用する以外は、実施例1と同様の操作で行った。
【0106】
(実施例7)
(1)N-アクリロイルフェノチアジンの合成
【0107】
【化7】
【0108】
窒素置換した100mL四ツ口フラスコに、フェノチアジン(5.00g,25.1mmol)、N,N-ジメチルアニリン(6.08g,50.2mmol)、及び超脱水ジクロロメタン50mLを仕込んだ。反応溶液を氷浴で10℃以下に冷却し、アクリル酸クロライド(3.41g,37.6mmol)をゆっくり滴下し、30分間撹拌した。その後、反応液を室温まで昇温し、24時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を1N塩酸水溶液、飽和重曹水、食塩水で水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、その後濾液をエバポレーターで留去した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=3/7)で精製することで、N-アクリロイルフェノチアジン(3.81g、収率60%)を得た。質量分析の結果を以下に示す。
High Resolution ESI-TOF-MS m/z Calcd. for [C15H11N1O1S1([M+Na]+)]: 276.0454 found 276.0478.
【0109】
(2)ポリ(N-アクリロイルフェノチアジン)の作製
ポリマーは、N-アクリロイルフェノチアジン1.00g、AIBN6.92mgを使用する以外は、実施例1と同様の手法で作製した。GPCからポリマーの数平均分子量(M)は、31,200、分子量分布(PDI)は1.61であった。
【0110】
(3)コーティング剤の作製
ポリ(N-アクリロイルフェノチアジン)0.1gをシクロへキサノン9.9gに加熱溶解させることで、固形分濃度1wt%のコーティング剤(G-1)を得た。
【0111】
(4)コーティング膜の形成
コーティング剤に(G-1)を使用する以外は、実施例1と同様の操作で行った。
【0112】
(実施例8)
(1)N,N-ジ-2-ナフチル-アクリルアミドの合成
【0113】
【化8】
【0114】
窒素置換した100mL四ツ口フラスコに、ジ-2-ナフチルアミン(5.00g,18.6mmol)、N,N-ジメチルアニリン(4.50g,37.1mmol)、及び超脱水ジクロロメタン50mLを仕込んだ。反応溶液を氷浴で10℃以下に冷却し、アクリル酸クロライド(2.52g,27.8mmol)をゆっくり滴下し、30分間撹拌した。その後、反応液を室温まで昇温し、24時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を1N塩酸水溶液、飽和重曹水、食塩水で水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、その後濾液をエバポレーターで留去した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/10)で精製することで、N,N-ジ-2-ナフチル-アクリルアミド(2.94g、収率49%)を得た。質量分析の結果を以下に示す。
High Resolution ESI-TOF-MS m/z Calcd. for [C23H17N1O1([M+Na]+)]: 346.1202 found 346.1200.
【0115】
(2)ポリ(N,N-ジ-2-ナフチル-アクリルアミド)の作製
ポリマーは、N,N-ジ-2-ナフチル-アクリルアミド1.00g、AIBN5.08mgを使用する以外は、実施例1と同様の手法で作製した。GPCからポリマーの数平均分子量(M)は、29,100、分子量分布(PDI)は1.39であった。
【0116】
(3)コーティング剤の作製
ポリ(N,N-ジ-2-ナフチル-アクリルアミド)0.1gをシクロへキサノン9.9gに加熱溶解させることで、固形分濃度1wt%のコーティング剤(H-1)を得た。
【0117】
(4)コーティング膜の形成
コーティング剤に(H-1)を使用する以外は、実施例1と同様の操作で行った。
【0118】
(実施例9)
(1)[N,N-ジフェニルアクリルアミド]/[N,N-ジ-p-トリルアクリルアミド]コポリマーの作製
ポリマーは、N,N-ジフェニルアクリルアミド(5.00g,22.4mmol)、N,N-ジ-p-トリルアクリルアミド(6.35g,22.4mmol)、AIBN(36.8mg,0.22mmol)を使用する以外は、実施例1と同様の手法で作製した。GPCからコポリマーの数平均分子量(Mn)は、23,100、分子量分布(PDI)は1.91であった。
【0119】
(2)コーティング剤の作製
[N,N-ジフェニルアクリルアミド]/[N,N-ジ-p-トリルアクリルアミド]コポリマー0.1gをシクロヘキサノン9.9gに加熱溶解させることで、固形分濃度1wt%のコーティング剤(I-1)を得た。
【0120】
(3)コーティング膜の形成
コーティング剤に(I-1)を使用する以外は、実施例1と同様の操作で行った。
【0121】
(実施例10)
(1)[N,N-ジフェニルアクリルアミド]/[N,N-ジ-2-ナフチル-アクリルアミド]コポリマーの作製
ポリマーは、N,N-ジフェニルアクリルアミド(5.00g,22.4mmol)、N,N-ジ-2-ナフチル-アクリルアミド(7.23g,22.4mmol)、AIBN(36.8mg,0.22mmol)を使用する以外は、実施例1と同様の手法で作製した。GPCからコポリマーの数平均分子量(Mn)は、28,600、分子量分布(PDI)は1.87であった。
【0122】
(2)コーティング剤の作製
[N,N-ジフェニルアクリルアミド]/[N,N-ジ-2-ナフチル-アクリルアミド]コポリマー0.1gをシクロヘキサノン9.9gに加熱溶解させることで、固形分濃度1wt%のコーティング剤(J-1)を得た。
【0123】
(3)コーティング膜の形成
コーティング剤に(J-1)を使用する以外は、実施例1と同様の操作で行った。
【0124】
(実施例11)
(1)[N,N-ジフェニルアクリルアミド]/[N-アクリロイルイミノジベンジル]コポリマーの作製
ポリマーは、N,N-ジフェニルアクリルアミド(5.00g,22.4mmol)、N-アクリロイルイミノジベンジル(5.58g,22.4mmol)、AIBN(36.8mg,0.22mmol)を使用する以外は、実施例1と同様の手法で作製した。GPCからコポリマーの数平均分子量(Mn)は、27,300、分子量分布(PDI)は2.33であった。
【0125】
(2)コーティング剤の作製
[N,N-ジフェニルアクリルアミド]/[N-アクリロイルイミノジベンジル]コポリマー0.1gをシクロヘキサノン9.9gに加熱溶解させることで、固形分濃度1wt%のコーティング剤(K-1)を得た。
【0126】
(3)コーティング膜の形成
コーティング剤に(K-1)を使用する以外は、実施例1と同様の操作で行った。
【0127】
(実施例12)
【化9】
【0128】
(1)N,N-[4,4'-ビス(α、α―ジメチルベンジル)ジフェニル]アクリルアミドの合成
窒素置換した100mL四ツ口フラスコに、4,4'-ビス(α、α―ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(25.00g,61.6mmol)、N,N-ジメチルアニリン(14.9g,123mmol)、及び超脱水ジクロロメタン200mLを仕込んだ。反応溶液を氷浴で10℃以下に冷却し、アクリル酸クロライド(6.69g,74.0mmol)をゆっくり滴下し、30分間撹拌した。その後、反応液を室温まで昇温し、24時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を1N塩酸水溶液、飽和重曹水、食塩水で水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、その後濾液をエバポレーターで留去した。得られた粗生成物を酢酸エチル/ヘキサンで再結晶することで、N,N-[4,4'-ビス(α、α―ジメチルベンジル)ジフェニル]アクリルアミド(22.95g、収率81%)を得た。質量分析の結果を以下に示す。
High Resolution ESI-TOF-MS m/z Calcd. for [C33H33NO([M+Na]+)]: 482.2454 found 482.2411.
【0129】
(2)ポリ{N,N-[4,4'-ビス(α、α―ジメチルベンジル)ジフェニル]アクリルアミド}の作製
ポリマーは、N,N-[4,4'-ビス(α、α―ジメチルベンジル)ジフェニル]アクリルアミド1.00g、AIBN9.20mgを使用する以外は、実施例1と同様の手法で作製した。GPCからポリマーの数平均分子量(M)は、29,900、分子量分布(PDI)は1.88であった。
【0130】
(3)コーティング剤の作製
ポリ{N,N-[4,4'-ビス(α、α―ジメチルベンジル)ジフェニル]アクリルアミド}0.1gをシクロへキサノン9.9gに加熱溶解させることで、固形分濃度1wt%のコーティング剤(L-1)を得た。
【0131】
(4)コーティング膜の形成
コーティング剤に(L-1)を使用する以外は、実施例1と同様の操作で行った。
【0132】
(実施例13)
【化10】
【0133】
(1)N,N-シクロヘキシルフェニルアクリルアミドの合成
窒素置換した100mL四ツ口フラスコに、N-シクロヘキシルアニリン(10.0g,57.1mmol)、N,N-ジメチルアニリン(8.30g,68.5mmol)、及び超脱水ジクロロメタン50mLを仕込んだ。反応溶液を氷浴で10℃以下に冷却し、アクリル酸クロライド(6.20g,68.5mmol)をゆっくり滴下し、30分間撹拌した。その後、反応液を室温まで昇温し、24時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を1N塩酸水溶液、飽和重曹水、食塩水で水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、その後濾液をエバポレーターで留去した。得られた粗生成物をメタノール/水で再結晶することで、N,N-シクロヘキシルフェニルアクリルアミド(9.68g、収率74%)を得た。質量分析の結果を以下に示す。
High Resolution ESI-TOF-MS m/z Calcd. for [C15H19NO([M+Na]+)]: 252.1359 found 252.1358.
【0134】
(2)ポリ(N,N-シクロヘキシルフェニルアクリルアミド)の作製
ポリマーは、N,N-シクロヘキシルフェニルアクリルアミド1.00g、AIBN2.90mgを使用する以外は、実施例1と同様の手法で作製した。GPCからポリマーの数平均分子量(M)は26,700、分子量分布(PDI)は1.79であった。
【0135】
(3)コーティング剤の作製
ポリ(N,N-シクロヘキシルフェニルアクリルアミド)0.1gをシクロへキサノン9.9gに加熱溶解させることで、固形分濃度1wt%のコーティング剤(M-1)を得た。
【0136】
(4)コーティング膜の形成
コーティング剤に(M-1)を使用する以外は、実施例1と同様の操作で行った。
【0137】
(実施例14)
【化11】
【0138】
(1)N,N-フェニル-2-ナフチルアクリルアミドの合成
窒素置換した100mL四ツ口フラスコに、N-フェニル-2-ナフチルアミン(10.0g,50.2mmol)、N,N-ジメチルアニリン(12.2g,100mmol)、及び超脱水ジクロロメタン100mLを仕込んだ。反応溶液を氷浴で10℃以下に冷却し、アクリル酸クロライド(5.45g,60.2mmol)をゆっくり滴下し、30分間撹拌した。その後、反応液を室温まで昇温し、24時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を1N塩酸水溶液、飽和重曹水、食塩水で水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、その後濾液をエバポレーターで留去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(トルエン/ヘキサン=5/5)で精製することで、N,N-フェニル-2-ナフチルアクリルアミド(10.45g、76%)を得た。質量分析の結果を以下に示す。
High Resolution ESI-TOF-MS m/z Calcd. for [C19H15NO([M+Na]+)]: 296.1046 found 296.1067.
【0139】
(2)ポリ(N,N-フェニル-2-ナフチルアクリルアミド)の作製
ポリマーは、N,N-フェニル-2-ナフチルアクリルアミド1.00g、AIBN2.00mgを使用する以外は、実施例1と同様の手法で作製した。GPCからポリマーの数平均分子量(M)は、31,100、分子量分布(PDI)は2.01であった。
【0140】
(3)コーティング剤の作製
ポリ(N,N-フェニル-2-ナフチルアクリルアミド)0.1gをシクロへキサノン9.9gに加熱溶解させることで、固形分濃度1wt%のコーティング剤(N-1)を得た。
【0141】
(4)コーティング膜の形成
コーティング剤に(N-1)を使用する以外は、実施例1と同様の操作で行った。
【0142】
(実施例15)
【化12】
【0143】
(1)N,N-ジベンジルアクリルアミドの合成
窒素置換した100mL四ツ口フラスコに、ジベンジルアミン(5.00g,25.3mmol)、N,N-ジメチルアニリン(3.85g,31.8mmol)、及び超脱水ジクロロメタン100mLを仕込んだ。反応溶液を氷浴で10℃以下に冷却し、アクリル酸クロライド(2.75g,30.4mmol)をゆっくり滴下し、30分間撹拌した。その後、反応液を室温まで昇温し、24時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を1N塩酸水溶液、飽和重曹水、食塩水で水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、その後濾液をエバポレーターで留去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=10/1)精製することで、N,N-ジベンジルアクリルアミド(5.15g、収率81%)を得た。質量分析の結果を以下に示す。
High Resolution ESI-TOF-MS m/z Calcd. for [C33H33NO([M+Na]+)]: 274.1202 found 274.1162.
【0144】
(2)ポリ(N,N-ジベンジルアクリルアミド)の作製
ポリマーは、N,N-ジベンジルアクリルアミド5.00g、AIBN9.20mgを使用する以外は、実施例1と同様の手法で作製した。GPCからポリマーの数平均分子量(M)は、24,700、分子量分布(PDI)は1.59であった。
【0145】
(3)コーティング剤の作製
ポリ(N,N-ジベンジルアクリルアミド)0.1gをシクロへキサノン9.9gに加熱溶解させることで、固形分濃度1wt%のコーティング剤(O-1)を得た。
【0146】
(4)コーティング膜の形成
コーティング剤に(O-1)を使用する以外は、実施例1と同様の操作で行った。
【0147】
(剥離試験)
本発明のコーティング剤が基材との密着性に優れるものであることを示すために、旧JIS K5400の碁盤目テープ剥離試験を、上記の実施例1~15にて得られた成形体それぞれに対して行った。
試験結果を以下の表に示す。
表において、分数の分母は碁盤目全部の数(100個)を表し、分子は剥離されなかった碁盤目の数を表す。100/100は、100個の碁盤目のすべてに剥離がないことを示す。
【0148】
【表1】
【0149】
[実施例16]
重合反応は、Macromol. Rapid. Commun. 2005, 26, 1499-1503を参考に行った。N,N-ジフェニルアクリルアミド10.0g(45mmol)とTHF100mLを300ml四ツ口フラスコに仕込み、15分間撹拌した。均一に溶解したことを確認し、続いて氷浴を用いて反応液を0℃以下まで冷却した。その後、23% TIBAL in Toluene 0.23mL(0.22mmol)を滴下した。反応溶液を30分間撹拌した後、2M HCl/MeOH混合溶液を用いて失活し、さらに過剰のメタノールを用いて再沈殿を行った。濾過によって得られた白色粉末を120℃の条件下で6時間の減圧乾燥を行った。得られたポリ(N,N-ジフェニルアクリルアミド)をGPCで測定したところ、メタクリル酸メチル換算で数平均分子量(Mn)が138,100,分散度(PDI)が1.29であった。
得られたポリ(N,N-ジフェニルアクリルアミド)をシクロヘキサノンに1wt%となるように溶解し、そのコーティング剤をZEONOR Film ZF-16, ZEONEX790R, APL6015Tにバーコート法を用いて塗布し、100℃,3分間の加熱乾燥を行うことで積層サンプルを作製した。得られたサンプルの密着性をJIS K5400碁盤目テープ剥離試験にて評価したところ、すべて100/100であった。
【0150】
試験結果から、本発明の接着性組成物は、特にシクロオレフィン樹脂基材に対して密着性に優れるものであることが分かる。
【0151】
(接着剤としての試験)
(1)接着剤の作製
実施例1で得られたポリ(N,N-ジフェニルアクリルアミド)0.2gをテトラヒドロフラン0.8gに溶解させることで、固形分濃度10wt%の接着剤(L-1)を得た。
【0152】
(2)接着試験サンプルの作製
接着剤(L-1)0.1gを用いて、2枚の25×50×1.0mmサイズのPE基板を25×25mmの面積で貼り合わせた。貼り合せ箇所をクリップで固定し、50℃,30分間加熱乾燥することで、接着試験サンプルを得た。
【0153】
(3)引張せん断剥離試験
接着試験として、引張せん断剥離試験を実施した。試験には、1kNのロードセルを備えたSIMAZU AGS-J universal tensile tester を使用した。(2)で得た接着試験サンプルを装置に装着し、1mm/minの速度で試験を行った。試験は、室温下で実施した。得られた接着力は、0.61MPaであった。
【0154】
試験結果から、本発明の接着性組成物は、接着性に優れるものであることが分かる。