(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】呼吸ガス流の計測における中断の補償
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
A61M16/00 370A
A61M16/00 345
A61M16/00 375
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021053314
(22)【出願日】2021-03-26
(62)【分割の表示】P 2018538855の分割
【原出願日】2017-01-31
【審査請求日】2021-03-26
(32)【優先日】2016-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516160429
【氏名又は名称】マリンクロット ホスピタル プロダクツ アイピー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ジャロン エム. アッカー
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ アール. トルミー
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-532523(JP,A)
【文献】特開2008-200209(JP,A)
【文献】特開2001-046504(JP,A)
【文献】特表2009-540890(JP,A)
【文献】特表2012-505688(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0320952(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工呼吸器と共に使用するための酸化窒素ガス送達装置であって、
前記人工呼吸器と結び付けられた呼吸回路と流体連通するように配置されるように動作可能である注入器モジュールであって、
呼吸ガス流の入口と、
酸化窒素(NO)流の入口と、
呼吸ガスとNOの混合された流れを、それを必要とする患者に提供するように動作可能である混合された呼吸ガスとNOの流れの出口と
を備える注入器モジュールと、
呼吸ガス流量を感知するように構成された呼吸ガス流センサと、
前記NOの流れを測定するように動作可能である1つまたは複数のNO流センサと、
制御装置であって、
履歴の命令されたまたは制御されて入力された
呼吸ガス流量の記録を記憶するように動作可能であるメモリ
を備え、前記制御装置は、第1のモードに基づいて前記呼吸ガス
流量を制御し、前記呼吸ガス流センサからの呼吸ガス流量データの中断を検出するように動作可能であ
り、呼吸ガス流量データの前記中断を検出すると、前記制御装置は、前記履歴の命令されたまたは制御されて入力された
呼吸ガス流量の記録に基づいて、前記NOの送達流量を制御するためにバックアップモードで動作する、制御装置と
を備える装置。
【請求項2】
バックアップモードで動作している前記制御装置は、前記履歴の命令されたまたは制御されて入力された
呼吸ガス流量
に基づいて前記NOの前記送達流量を制御する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記履歴の命令されたまたは制御されて入力された
呼吸ガス流量は、NOの新たな設定投与量に対して所望されるNO流量を計算するために参照される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記バックアップモードは、履歴の測定された
呼吸ガス流量が利用できないときに前記履歴の命令されたまたは制御されて入力された
呼吸ガス流量の記録に基づいて、前記NOの前記送達流量を制御する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
ディスプレイをさらに備え、前記制御装置が前記バックアップモードで動作しているとき、前記履歴の命令されたまたは制御されて入力された
呼吸ガス流量は、前記ディスプレイ上に表示される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
導管を通り前記注入器モジュールへの前記NOの流れを調整するように動作可能な制御弁をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記1つまたは複数のNO流センサは、前記制御弁および/または前記導管よりも上流に位置し、前記1つまたは複数のNO流センサは、前記NO流の入り口を通り前記注入器モジュールへの前記NOの流れを測定するように動作可能である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記1つまたは複数のNO流センサは、前記制御弁および/または前記導管よりも下流に位置し、前記1つまたは複数のNO流センサは、前記NO流の入り口を通り前記注入器モジュールへの前記NOの流れを測定するように動作可能である、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記中断が終了したこと、ならびに/または、前記呼吸ガス流センサが、つなぎ直されること、交換されること、および/もしくは保守されることのうちの少なくとも1つが行われたことが検出されると、前記第1のモードに自動的に戻るように動作可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記呼吸ガス流センサが、つなぎ直されること、交換されること、および/または保守されることのうちの少なくとも1つが行われたことが検出および/または入力されると、前記第1のモードに基づくNOの流れの送達を自動的に再開するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
酸化窒素(NO)ガスを患者に送達するための
酸化窒素ガス送達装置の作動方法であって、
前記酸化窒素ガス送達装置は、制御装置と、呼吸ガスセンサと、1つまたは複数のNO流センサとを備え、前記方法は、
前記制御装置
が、第1のモードでの患者へのNO流を制御することと、
前記呼吸ガスセンサ
が、呼吸ガス流の感知された流量を受信することと、
前記1つまたは複数のNO流センサ
が、NO流の測定された流量を受信することと、
前記制御装置が、履歴の命令されたまたは制御されて入力された
呼吸ガス流量の記録をメモリに記憶することと、
前記制御装置が、前記呼吸ガスセンサからの前記感知された呼吸ガス流量データの中断を検出することと、
前記制御装置
が、前記履歴の命令されたまたは制御されて入力された
呼吸ガス流量に基づいて、前記第1のモードの代わりにバックアップモードで前記NO流を制御することと
を含む方法。
【請求項12】
前記酸化窒素ガス送達装置は、ディスプレイをさらに備え、前記方法は、前記制御装置が前記バックアップモードで動作しているとき、
前記ディスプレイが、前記履歴の命令されたまたは制御されて入力された
呼吸ガス流量を
前記ディスプレイ上に表示することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記制御装置がバックアップモードで動作しているとき、前記履歴の命令されたまたは制御されて入力された
呼吸ガス流量の記録は、前記NOの前記流量を制御する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記制御装置が、前記中断の停止を検出する際、前記第1のモードに戻ることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記制御装置が、前記感知された呼吸ガス流量を受信することは、第1の呼吸ガス流量データと、第2の呼吸ガス流量データとを受信することを含み、
前記制御装置が、前記中断を検出することは、前記第1および第2の呼吸ガス流量データ間でそれぞれの流量データを比較することによって前記中断を検出することを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年2月2日に提出され、「COMPENSATING FOR DISRUPTIONS IN BREATHING GAS FLOW MEASUREMENT」というタイトルが付けられた米国仮出願第62/290,430号に対して優先権を主張しており、その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は一般に、治療用ガスの患者への送達に関する。
【背景技術】
【0003】
治療用ガスが患者に送達されることで、医学的恩恵を提供することができる。1つのそのような治療用ガスは、酸化窒素(NO)ガスであり、これは、吸入される際、肺の中で血管を広げるように作用し、血液への酸素供給を改善し、肺高血圧症を緩和させる。これが理由で、酸化窒素は、肺高血圧症にかかっている患者に対する吸入呼吸ガスの中の治療用ガスとして提供することができる。
【0004】
酸化窒素から恩恵を得る可能性のあるこのような患者の多くは、人工呼吸器(例えば一定流量の人工呼吸器、可変流量の人工呼吸器、高周波人工呼吸器、二相性気道陽圧人工呼吸器またはBiPAP人工呼吸器など)と結びつけられた呼吸回路から呼吸ガスを受け取る。人工呼吸器から呼吸ガスを受け取る患者に酸化窒素を提供するために、酸化窒素は、呼吸回路の中を流れる呼吸ガスに注入されてよい。このような吸入される酸化窒素(iNO)は、一定の濃度として提供されることが多く、この濃度は呼吸ガスに対するNOの比例式の送達に基づいて提供される。
【0005】
上記のことは多くの利点を提供するが、治療用ガスの送達に対する改善を求める要求が依然として存在している。例えば、限定するものではないが、酸化窒素などの治療用ガスの送達において使用される呼吸ガス流れシステムの中断などの状況に少なくとも対処する新しい技術を求める要望が依然としてある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様は、呼吸ガス流の計測におけるエラーや中断を補償するために新たな技術を利用する治療用ガス送達システム(例えば酸化窒素送達システム)に関する。一部の例では、本明細書に開示される治療用ガス送達システムは、履歴となる呼吸ガス流量データ(例えば平均の呼吸ガス流量、呼吸ガス流波形など)を記憶し、現在の呼吸ガス流量データが利用できない、または信頼できない場合、この履歴の呼吸ガス流量データを利用することができる。その結果、かかる例示の治療用ガス送達システムは、治療中にいかなる重大な断続も生じることなく治療用ガスの送達を続けることができる。
【0007】
一実装形態の一例では、治療用ガス送達装置が提供されており、この装置は、人工呼吸器と結び付けられた呼吸回路と流体連通するように配置されるように構成された治療用ガス注入器モジュールであって、呼吸ガス流の入口と、治療用ガス流の入口と、呼吸ガスと治療用ガスの混合された流れを、それを必要とする患者に提供するための混合された呼吸ガスと治療用ガスの流れの出口とを含む治療用ガス注入器モジュールと、呼吸ガス流量データを感知するように構成された第1の流量センサと、第1のモードに基づいて呼吸ガスの送達流量を制御し、中断を検出すると、第1の流量センサによって予め感知されメモリに記憶された履歴の呼吸ガス流量データに基づいて、呼吸ガスの送達流量を制御するように構成された制御装置とを備える。
【0008】
制御装置は、第1の流量センサによる感知した呼吸ガス流量データに関連する履歴の流量データを記憶するように構成されたメモリと、第1の流量センサからの感知した呼吸ガス流量データの中断を検出するように構成された検出プロセッサとを備えてよく、第1の流量センサは、ガス吸入流量センサであり、制御装置は、ガス吸入流量センサの作動の故障の形態で中断を検出すると、履歴の呼吸ガス流量を履歴の平均値に基づいて利用するように構成される。履歴の流量データは、移動平均呼吸ガス流量、移動中央値呼吸ガス流量及び/またはガス流量波形のうちの1つまたは複数を含んでよい。履歴の流量データは、10秒から5分の範囲内のある期間にわたって記憶されてよい。感知した呼吸ガス流量は、注入器モジュールから受信されてよい。感知した呼吸ガス流量は、人工呼吸器から受信される場合もある。感知した呼吸ガス流量データは、第1の呼吸ガス流量データと、第2の呼吸ガス流量データとを含む場合もあり、この場合、第1の呼吸ガス流量データは注入器モジュールから受信され、第2の呼吸ガス流量データは人工呼吸器から受信される。制御装置は、第1の呼吸ガス流量データからの流量データのそれぞれを第2の呼吸ガス流量データと比較してよい。制御装置は、第1の流量センサが、つなぎ直された、交換された、及び/または保守されたかのうちの1つが行われたことが検出及び/または入力されると、第1のモードに基づく呼吸ガスの流れの送達を自動的に再開するように構成されてよい。制御装置は、データの平滑化及び/またはローパスフィルタリングのうちの少なくとも一方を利用して、範囲外にある記憶された流量のデータポイントを取り除くようにさらに構成されてよい。
【0009】
一実装形態の別の例では、治療用ガスを患者に送達するための方法が提供されており、方法は、制御装置を介して第1のモードでの患者への呼吸ガスの流れを制御することと、呼吸ガス流の感知した流量データを受信することと、センサによる受信された呼吸ガス流量データに関連する履歴の流量データをメモリに記憶することと、センサからの感知した呼吸ガス流量データの中断を検出することと、受信した呼吸ガス流量データに基づいて、制御装置を介して、第1のモードの代わりに一時的なモードで呼吸ガス流を制御することとを含む。
【0010】
履歴の感知した流量データは、移動平均呼吸ガス流量、移動中央値呼吸ガス流量及び/またはガス流量波形のうちの1つまたは複数を含んでよい。履歴の流量データを記憶することは、履歴の流量データを10秒から5分の範囲内のある期間にわたって記憶することを含んでよい。方法はさらに、中断の停止を検出する際、第1のモードに戻ることをさらに含んでよい。受信した流量データを受信することは、2つ以上のセンサから第1の受信した流量データと、第2の受信した流量データを受信することを含み、中断を検出することは、2つ以上の受信した流量データの群の間でそれぞれの流量データを比較することによって中断を検出することを含む。
【0011】
一実装形態の別の例では、酸化窒素及び治療用ガスを患者に送達するための装置が提供されており、この装置は、第1のモードでの患者へのガスの流れを制御し、感知した流量データを受信するように構成された制御装置と、呼吸ガス流の感知した流量データを受信するように構成された受信機と、以前に感知した履歴の流量データに関連して受信した呼吸ガス流量データを記憶するように構成されたメモリと、受信した呼吸ガス流量データから受信した呼吸ガス流量データの中断を検出するように構成された検出器とを備え、制御装置は、履歴の流量データを取り出し、履歴の流量に基づいて、第1のモードの代わりに一時的なモードで呼吸ガス流量を制御するようにさらに構成される。
【0012】
履歴の感知した流量データは、移動平均呼吸ガス流量、移動中央値呼吸ガス流量及び/または呼吸ガス流量波形のうちの1つまたは複数を含んでよい。履歴の流量データは、10秒から5分の範囲内のある期間にわたって記憶されてよい。制御装置は、中断の停止を検出する際、第1のモードに戻るようにさらに構成されてよい。受信した感知した流量データは、2つ以上のセンサからの第1の受信した流量データと、第2の受信した流量データとを含んでよく、中断を検出することは、2つ以上の受信した流量データの間で流量データを比較することを含んでよい。
【0013】
他の特徴及び態様は、以下の詳細な説明、図面及びクレームから明らかになる。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
人工呼吸器と共に使用するための治療用ガス送達装置であって、
前記人工呼吸器と結び付けられた呼吸回路と流体連通するように配置されるように構成された治療用ガス注入器モジュールであって、呼吸ガス流の入口と、治療用ガス流の入口と、呼吸ガスと治療用ガスの混合された流れを、それを必要とする患者に提供するための混合された呼吸ガスと治療用ガスの流れの出口とを含む治療用ガス注入器モジュールと、呼吸ガス流量データを感知するように構成された第1の流量センサと、
第1のモードに基づいて前記呼吸ガスの送達流量を制御し、中断を検出すると、前記第1の流量センサによって予め感知されメモリに記憶された履歴の呼吸ガス流量データに基づいて、前記呼吸ガスの送達流量を制御するように構成された制御装置とを備える、前記治療用ガス送達装置。
(項目2)
前記制御装置は、
前記第1の流量センサによる前記感知した呼吸ガス流量データに関連する履歴の流量データを記憶するように構成されたメモリと、
前記第1の流量センサからの前記感知した呼吸ガス流量データの中断を検出するように構成されたプロセッサとを備え、
前記第1の流量センサは、ガス吸入流量センサであり、前記制御装置は、前記ガス吸入流量センサの作動の故障の形態で中断を検出すると、前記履歴の呼吸ガス流量を履歴の平均値に基づいて利用するように構成される、項目1に記載の装置。
(項目3)
前記履歴の流量データは、移動平均呼吸ガス流量、移動中央値呼吸ガス流量及び/またはガス流量波形のうちの1つまたは複数を含む、項目2に記載の装置。
(項目4)
前記履歴の流量データは、10秒から5分の範囲内のある期間にわたって記憶される、項目2に記載の装置。
(項目5)
前記感知した呼吸ガス流量は、前記注入器モジュール及び/または前記人工呼吸器から受信される、項目1に記載の装置。
(項目6)
前記治療用ガスは、吸入用の酸化窒素である、項目1に記載の装置。
(項目7)
前記感知した呼吸ガス流量データは、第1の呼吸ガス流量データと、第2の呼吸ガス流量データとを含み、前記第1の呼吸ガス流量データは前記注入器モジュールから受信され、及び/または前記第2の呼吸ガス流量データは前記人工呼吸器から受信される、項目1に記載の装置。
(項目8)
前記制御装置は、前記第1の呼吸ガス流量データからの流量データのそれぞれを前記第2の呼吸ガス流量データと比較する、項目7に記載の装置。
(項目9)
前記制御装置は、前記第1の流量センサが、つなぎ直された、交換された、及び/または保守されたかのうちの1つが行われたことが検出及び/または入力されると、前記第1のモードに基づく呼吸ガスの流れの送達を自動的に再開するように構成される、項目1に記載の装置。
(項目10)
前記制御装置は、データの平滑化及び/またはローパスフィルタリングのうちの少なくとも一方を利用して、範囲外にある記憶された流量のデータポイントを取り除くようにさらに構成される、項目1に記載の装置。
(項目11)
制御装置を介して第1のモードでの患者への呼吸ガスの流れを制御することと、
前記呼吸ガス流の感知した流量データを受信することと、
前記センサによる前記受信された呼吸ガス流量データに関連する履歴の流量データをメモリに記憶することと、
前記センサからの前記感知した呼吸ガス流量データの中断を検出することと、
前記受信した呼吸ガス流量データに基づいて、前記制御装置を介して、前記第1のモードの代わりに一時的なモードで前記呼吸ガス流を制御することとを含む、治療用ガスを患者に送達するための方法。
(項目12)
前記履歴の感知した流量データは、移動平均呼吸ガス流量、移動中央値呼吸ガス流量及び/またはガス流量波形のうちの1つまたは複数を含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記履歴の流量データを記憶することは、前記履歴の流量データを10秒から5分の範囲内のある期間にわたって記憶することを含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記中断の停止を検出する際、前記第1のモードに戻ることをさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目15)
前記受信した流量データを受信することは、2つ以上のセンサから第1の受信した流量データと、第2の受信した流量データを受信することを含み、
前記中断を検出することは、前記2つ以上の受信した流量データの群の間でそれぞれの流量データを比較することによって前記中断を検出することを含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
第1のモードでの患者へのガスの流れを制御し、前記呼吸ガス流の感知した流量データを受信するように構成された制御装置と、
以前に感知した履歴の流量データに関連して受信した呼吸ガス流量データを記憶するように構成されたメモリと、
前記受信した呼吸ガス流量データから受信した呼吸ガス流量データの中断を検出するように構成された検出器とを備え、
前記制御装置は、前記履歴の流量データを取り出し、前記履歴の流量に基づいて、前記第1のモードの代わりに一時的なモードで呼吸ガス流量を制御するようにさらに構成される、酸化窒素及び治療用ガスを患者に送達するための装置。
(項目17)
前記履歴の感知した流量データは、移動平均呼吸ガス流量、移動中央値呼吸ガス流量及び/またはガス流量波形のうちの1つまたは複数を含む、項目16に記載の装置。
(項目18)
前記履歴の流量データは、10秒から5分の範囲内のある期間にわたって記憶される、項目17に記載の装置。
(項目19)
前記制御装置は、前記中断の停止を検出する際、前記第1のモードに戻るようにさらに構成される、項目16に記載の装置。
(項目20)
前記感知した流量データは、2つ以上のセンサからの第1の受信した流量データと、第2の受信した流量データとを含み、
前記中断を検出することは、前記2つ以上の受信した流量データの間で流量データを比較することを含む、項目16に記載の装置。
【0014】
本記載の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて参照することでより完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本記載の例示の説明による、呼吸回路内に流量センサを有する一例の酸化窒素送達システムを例示的に描く図である。
【
図2】本記載の例示の説明による、人工呼吸器と連通する一例の酸化窒素送達システムを例示的に描く図である。
【
図3】本記載の例示の説明による、呼吸回路内に流量センサを有し、人工呼吸器とも連通する一例の酸化窒素送達システムを例示的に描く図である。
【
図4】呼吸ガス流の計測が中断している間の一例のNO送達補償のための方法の一例のフロー図を例示的に描く図である。
【
図5】
図4に示される方法のフロー図の変形形態を例示的に描く図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は一般に、例えば呼吸ガス流の測定値が利用できない、または信頼できない場合などに、呼吸ガス流の計測における中断を補償するために、これまでに知られていない技術を利用して、治療用ガスを患者(例えば治療用ガスを含み得る呼吸ガスを、呼吸回路を経由して人工呼吸器から受け取る患者)に送達するためのシステム及び方法に関する。そのような技術は、限定するものではないが、いくつか名前を挙げると、移動平均流量、移動中央値流量、ガスの容積を決定するための既知の時間枠にわたる流れの統合、及び/または流量波形などの履歴の呼吸ガス流量データを利用することを含むことができる。このような技術の少なくとも一部を利用して、治療用ガスの送達における断続を軽減する、及び/または治療用ガスにおいて断続が全くないことを保証することができる。それを必要とする患者に送達される治療用ガスの断続を軽減する、及び/またはなくすことは、とりわけ、患者の安全性を高めることができる。(例えば肺高血圧が跳ね上がるリスクを軽減する、及び/またはそれをなくす、誤った投与を減らす及び/またはそれをなくすことなど)。
【0017】
本明細書に記載されるシステム及び方法は、患者に対する治療用ガスを送達システムから注入器モジュールに送達することができ、この注入器モジュールは、患者が呼吸ガスを受け取る呼吸回路(人工呼吸器に結びつけられた)と流体連通することができる。このようなシステム及び方法は、呼吸回路内の患者の呼吸ガスの流れを計測することができる少なくとも1つの呼吸ガス流量センサを含むことができる。さらに、本明細書に記載されるシステム及び方法は、治療用ガス乱流が患者の呼吸ガスと混合するように、治療用ガスを呼吸回路内に送達することができる。有利には、本明細書に記載される治療用ガス送達システム及び方法は、呼吸ガス流の計測において中断が起こった場合に使用するために過去の呼吸ガス流量測定値を記憶することができる。
【0018】
用語「中断」は、様々なタイプの中断のいずれか及び全てを包含するように本明細書で使用されている。例えば用語「故障」は、時には中断のいずれかのタイプを指している。例えば中断の一例のタイプは、ガスセンサが、一例の酸化窒素送達システムと結びつけられた制御モジュールから切り離された、及び/または制御モジュールとの電気通信を失った場合に生じる可能性がある。別の一例のタイプの中断は、複数のセンサの場合に、1つまたは複数のセンサが、不正確な、または一致しない読み取り値を提供する場合である。さらに別の一例のタイプの中断は、センサからの読み取り値が、通常の、予測される、及び/または所望される範囲から外れているように制御装置によって認識される場合であり、このことは、例えば不正確である可能性のある受信したセンサデータの一部または全ての休止を含んでよい。中断の別の一例のタイプは、センサ自体または呼吸ガスの送達に関連する他の構成要素が、故障した、または切断された状態を示す可能性がある場合である。ある程度センサのシステムの場所に左右されるが、それは、若干の摩耗及び断裂(例えば周辺の物体に対してぶつかることによる)に受ける可能性がある。例えば摩耗及び断裂は、例えばセンサが、患者の呼吸回路に結合させることができる、及び/または患者の呼吸回路と流体連通することができる注入器モジュールの構成要素に配置されることによって、センサがガス流の経路の離れている患者の一端により近づく場合に生じる可能性がある。多くのタイプの中断または故障が生じる可能性があるが、単に簡単にする目的のために、全てのタイプの中断は本明細書に記載されないが、当業者には理解される。本明細書に記載されるシステム及び方法の少なくとも一部は、中断が生じたときの治療用ガスの送達の断続を阻止するのに利用することができる。
【0019】
図1を参照すると、人工呼吸器117に結びつけられてる呼吸回路104から呼吸ガスを受け取る患者108に、注入器モジュール102を介して治療用の酸化窒素ガスを送達するための一例の酸化窒素送達システム100が例示的に描かれている。本記載のいかなる教示も、呼吸装置(例えば、人工呼吸器、高周波人工呼吸器、呼吸マスク、鼻カニューラなど)から呼吸ガスを受け取る患者に治療用ガスを送達するためのいかなる利用可能なシステムにおいても使用し得ることが理解される。例えば本記載のシステム及び方法は、「Nitric Oxide Delivery System」という名称の米国特許第5,558,083号の送達システム及び/または他の教示と共に使用する、これによって改変する、及び/またはこれに結びつけることができ、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0020】
本開示は、ここでは時には人工呼吸器と共に使用することを言及しているが、本明細書に記載されるシステム及び方法は、人工呼吸器と結びつけられる可能性のあるいかなる利用可能な呼吸装置とも共に使用することができる。したがって人工呼吸器に対する言及は単に説明を簡単にするためのものであり、限定であることは決して意味していない。治療用ガス、呼吸回路内に混合される治療用ガス乱流、治療用ガス送達システムなどは、時には、吸入式の酸化窒素ガス治療法に使用される酸化窒素ガス(NO、iNOなど)を指し、説明される。他の利用可能な治療用ガスが使用される場合もあることが理解される。したがって酸化窒素、NO、iNOなどについての言及は単に簡略化するためのであり、限定であることは決して意味していない。
【0021】
一例の記載では、酸化窒素送達システム100などの一例の酸化窒素送達システムは、呼吸回路(人工呼吸器に結びつけられた)内の患者の呼吸ガスに、患者の呼吸ガスの一定の割合として治療用ガス(例えば酸化窒素、NOなど)を乱流混合するのに使用することができる。患者の呼吸ガスにNOを少なくとも乱流混合するために、酸化窒素送達システム100は、酸化窒素源103(例えばNOを貯蔵するシリンダ、NO生成器など)を含む、及び/または例えば導管105を経由して酸化窒素源103から酸化窒素を受け取ることができる。さらに導管105はまた、例えば治療用ガスの入口110を介して、注入器モジュール102と流体連通することができる。注入器モジュール102はまた、人工呼吸器117と結びつけられた患者の呼吸回路104の吸気枝管121と流体連通することもできる。
【0022】
示されるように、人工呼吸器117は、吸気枝管121と、患者の呼吸回路の「Y」字部分125とを経由して呼吸ガスを患者に送達する(例えば前方の流れ133)ための吸気用の出口と、呼気枝管127と、患者の呼吸回路の「Y」字部分125とを経由して患者の呼気を受け取るための呼気用の入口とを含むことができる。一般的に言えば、このような「Y」字部分は、吸気枝管121と、呼気枝管127を結合することができ、送達される呼吸ガス及び/または患者の呼気は、「Y」字部分を通って流れることができる。時には、簡略化するために、呼吸ガスの送達及び呼気は、「Y」字部分を参照せずに説明される。これは単に簡略化のためであり、限定であることは決して意味していない。
【0023】
注入器モジュール102が、呼吸回路の吸気枝管121に結合される、及び/または呼吸回路と流体連通している状態で、酸化窒素を、導管105及び/または治療用ガスの入口110を経由して、酸化窒素送達システム(例えばNOの前方への流れ137)から注入器モジュール102へと送達することができる。この酸化窒素はその後、注入器モジュール102を介して、呼吸ガスを患者108に送達するのに使用される人工呼吸器117に結びつけられた患者の呼吸回路の吸気枝管121の中へと送達することができる。少なくとも一部の例では、患者の呼吸回路は、吸気と呼気の両方の流れのために1つの枝管のみを含む場合もある。簡略化のために、患者の呼吸回路は、時には、別個の吸気枝管と、呼気枝管とを有するように描かれる場合もある。これは単に簡略化のためであり、限定であることは決して意味していない。例えば時には、本開示は、二重の枝管(例えば吸気枝管と、呼気枝管)の患者の呼吸回路と共に使用するように記載される、及び/または描かれるが、本開示は、利用可能な場合、単一の枝管の患者の呼吸回路(例えば吸気枝管のみ、吸気枝管と呼気枝管の組み合わせなど)と共に使用される場合もある。ここでもやはり、これは単に簡略化のためであり、限定であることは決して意味していない。
【0024】
一例の実施形態では、導管105を通り注入器モジュール102への、及び患者の呼吸回路から呼吸ガスを受け取る患者108への酸化窒素の流れを調整するために、酸化窒素送達システム100は、1つまたは複数の制御弁109(例えば比例弁、二重弁など)を含むことができる。例えば制御弁109が開放した状態で、酸化窒素を、導管105を通って注入器モジュール102へと、及び患者108へと前方方向(例えばNOの前方の流れ137)に流すことによって患者108に送達することができる。
【0025】
少なくとも一部の例では、酸化窒素送達システム100は、治療用ガスの流れを計測する(例えば制御弁109を通る流れ、導管105を通る流れなどを計測する)ことができる1つまたは複数のNO流量センサ115を含むことができる。流量センサ115は、制御弁109及び/または導管105から上流にまたは下流に配置することができ、治療用ガスの入口110を通って注入器モジュール102へと、及び患者108へと流れる治療用ガスの流れの計測を可能にする。
【0026】
さらに少なくとも一部の例では、注入器モジュール102は、注入器モジュール102を通り、患者108への少なくとも患者の呼吸ガス(例えば前方の流れ133)の流れを計測することができる1つまたは複数の呼吸ガス流量センサ119を含むことができる。一部の実装形態では、呼気の流れを感知するセンサ(図示せず)が存在する場合もある。注入器モジュール102のところにあるように示されているが、呼吸ガス流量センサ119は、吸気枝管121内の他の場所、例えば注入器モジュール102の上流に、及び/または呼吸回路と流体連通するように配置される場合もある。また
図2に示されるように、呼吸ガス流量センサ119から流量データを受信する代わりに、少なくとも一部の例では、酸化窒素送達システム100は、人工呼吸器117から直接、人工呼吸器117からの呼吸ガスの流れを示す流量データを受信する場合もある。さらに少なくとも一部の例では、流量データは、
図3に示されるように呼吸ガス流量センサ119と、人工呼吸器117の両方によって提供される。
【0027】
酸化窒素ガス流を呼吸ガス流に比例式に(レシオメトリックとも呼ばれる)乱流混合して、混合された呼吸ガスと治療用ガス中に所望される濃度のNOを提供することができる。例えば酸化窒素送達システム100は、既知のNO濃度のNO供給源103と、呼吸ガス流量センサ119からのガス流量データを利用する患者の回路内の呼吸ガス流の量と、NO流量センサ115からのガス流量データを利用する注入器モジュール102への(及び患者108への)導管105内の治療用ガス流の量とを利用することによって、混合された呼吸ガスと治療用ガス中に所望される濃度のNOが入っていることを確認することができる。
【0028】
少なくとも所望される設定投与量の治療用ガスを患者に送達するために、及び/または患者に送達される治療用ガスの試料を採取するために、治療用ガス送達システム100は、1つまたは複数のプロセッサを備えてよいシステム制御装置111と、メモリ112とを含むことができ、この場合、システム制御装置は例えば、コンピュータシステム、シングルボードコンピュータ、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)またはそれらの組み合わせであってよい。プロセッサは、メモリに結合させることができ、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、フラッシュメモリ、コンパクト/光ディスク記憶装置、ハードディスク、またはローカルもしくはリモートデジタル記憶装置の任意の他の形態など、容易に利用可能なメモリのうちの1つまたは複数であってよい。プロセッサ、センサ、弁、試料採取システム、送達システム、ユーザ入力、ディスプレイ、注入器モジュール、呼吸装置などをサポートするために、従来式の方法でサポート回路をプロセッサに結合することができる。このような回路は、キャッシュメモリ、電源、クロック回路、入/出力回路部品、アナログデジタル及び/またはデジタルアナログ変換器、サブシステム、電力制御装置、信号調整装置などを含むことができる。プロセッサ及び/またはメモリは、センサ、弁、試料採取システム、送達システム、ユーザ入力、ディスプレイ、注入器モジュール、呼吸装置などと通信することができる。システム制御装置への、及びシステム制御装置からの通信は、通信路を介する場合があり、通信路は、ワイヤードまたはワイヤレスであってよく、この場合好適なハードウェア、ファームウェア及び/またはソフトウェアが、通信路(複数可)を介して構成要素を相互接続する、及び/または電気通信を提供するように構成されてよい。
【0029】
クロック回路は、システム制御装置の内部に位置してよい、及び/または始動、例えば起動に関する時間の測定値を提供する場合もある。システムは、実際の時間を提供するリアルタイムクロック(RTC)を備えてよく、これは例えばネットワークなどの時間保持ソースに同期されてよい。メモリ112は、センサ(複数可)、ポンプ、弁などから計算用及び/または他の値との比較用の値を受け取り、記憶するように構成されてよい。
【0030】
メモリ112は、プロセッサによって実行される際、試料採取システム及び/または送達システムに様々な方法及び作業を実行させることができる一揃いの機械実行可能命令(例えばアルゴリズム)を格納することができる。例えば酸化窒素送達システムは、所望される設定投与量の治療用ガス(例えば所望されるNO濃度、所望されるPPM単位のNOなど)を、それを必要とする患者に送達することができる。この目的のために、送達システムは、例えばユーザによって入力されてよい、患者に送達されるべき治療用ガスの所望される設定投与量を受信する、及び/または決定することができる。送達システムは、患者の呼吸回路の吸気枝管内の流量を計測することができ、NOを含有する治療用ガスを患者に送達している間、システムは、吸気流量または吸気流量の変化を監視することができる。システムはまた、その後の吸気流内に送達される治療用ガスの量(例えば体積または質量)を変えることもできる。
【0031】
別の例では、試料採取システムは、患者に送達される対象ガス(例えばNO)の濃度を決定することができる。この目的のために、試料採取ポンプが、作動されてよい、及び/または気体試料採取弁(例えば三方弁など)が開放されて、患者の呼吸回路の吸気枝管から気体試料を採取することができる。気体試料は、混合空気と、患者に送達される治療用ガス(例えばNO)とを含んでよい。気体試料をガスセンサ(例えば触媒型電気化学ガスセンサ)に曝して、患者に送達されている対象ガス(例えばNO、二酸化窒素、酸素)の濃度を示すガス流量データをセンサから取得することができる。対象ガスの濃度は、ユーザに伝達されてよい。機械実行可能命令が、本明細書に記載される他の方法のいずれかに関する命令を含む場合もある。
【0032】
さらに、少なくとも治療用ガスの正確な投与を保証するために、酸化窒素送達システム100は、ディスプレイならびにキーボード及び/またはボタンを含むことができる、あるいはタッチスクリーンデバイスであり得るユーザ入力/ディスプレイ113を含むことができる。ユーザ入力/ディスプレイ113は、ユーザから、例えば患者の処方箋(mg/kg標準体重、mg/kg/hr、mg/kg/呼吸、mL/呼吸、シリンダ濃度、送達濃度、持続期間など)、患者の年齢、身長、性別、体重などの所望の設定値を受け取ることができる。ユーザ入力/ディスプレイ113を使用して、少なくとも一部の例では、例えば、試料ライン131を経由して患者108に送達されるガスの試料を受け取ることができる気体試料採取システム129を利用して、患者の投与量及び/またはガスの測定値を確認することができる。気体試料採取システム129は、多くのセンサを含むことができ、いくつかの名前を挙げると、限定するものではないが、ユーザ入力/ディスプレイ113上に少なくとも関連情報(例えばガスの濃度など)を表示する、及び/またはユーザに警告を与えるために使用することができる酸化窒素ガスセンサ、二酸化窒素ガスセンサ及び/または酸素ガスセンサなどがある。酸化窒素送達システム100はこれにより、ガス流が所望される設定値及び/またはパラメータに基づいて送達される第1のモードで作動することができる。
【0033】
図1は、システム制御装置111が、注入器モジュール102に配置されたセンサ119から通信経路C1を経由して感知したデータを受信するように構成された一例を示している。
図1~
図3に示される構成要素は、同様の参照番号を有する同様な構成要素を開示している。したがって、明瞭さ及び簡潔さのために、
図1~
図3に共通の構成要素は、概ね
図1に関して本明細書では記載される。
【0034】
上記のことは、人工呼吸器に結びつけられた患者の呼吸回路から呼吸ガスを受け取る患者に対して治療用ガスを送達するのに有利に使用することができるが、患者の呼吸ガスのあるパーセンテージとして患者の呼吸ガス中にNOを乱流混合することは、呼吸ガス流量情報が利用できない及び/または信頼できない場合、失敗する場合もある。
【0035】
一例の実施形態では、少なくとも注入器モジュール102は、摩耗及び断裂に曝される場合がある。例えば
図1に示されるように、注入器モジュール102は、それがメインの送達システム100の外部にある構成要素であり、呼吸回路の吸気枝管に結合されるため、摩耗及び断裂に曝される可能性があり、注入器モジュール102は、消毒及び/または滅菌プロセスに曝されることで、さらなる摩耗及び断裂が加わる場合もある。注入器モジュール102はまた、容易に落下したり、引きずられたりする場合、または呼吸回路の不適切な部分(例えば加湿器の下流、または回路の呼気側に)に配置される場合もあり、このことは、さらなる摩耗及び断裂を引き起こす可能性がある。要約すると、注入器モジュール102及びその中のセンサ(例えば呼吸ガス流量センサ119など)は、例えば少なくとも上記に記載した摩耗及び断裂が理由で、システム内の他の構成要素よりも故障/中断し易い可能性がある。
【0036】
人工呼吸器と直接通信する(例えばシリアル、USB、イーサネット(登録商標)、無線通信など)酸化窒素送達システムの場合、呼吸回路内の呼吸ガス流量センサの代わりに、またはそれに加えて、吸気流量情報が人工呼吸器によって提供される場合もあり、ここでもまた人工呼吸器から酸化窒素送達システムへの流量データの通信における中断が生じる可能性がある。少なくとも一部の実装形態では、本開示のシステム及び方法は、本明細書にさらに説明するように、複数のセンサのうちのいずれか、またはその一部における差異を検出する場合がある。すなわち、流量の感知作業は、本明細書に記載されるセンサのうちの任意の1つまたは複数から生じてよい。
【0037】
一例の実施形態では、本開示は、メモリ112内などで、酸化窒素送達システム100内に記憶された呼吸ガス流量データ(例えば人工呼吸器の吸気流情報)の履歴を有利に生成する、組み込む及び/または利用することによって、本明細書に記載される問題の少なくとも一部を克服することができる。一例の実施形態では、そのような履歴の流量データは、例えば過去5、10、15、20、30または45秒、過去1、2、5、10、15、20、30、45、60分などの特定の期間にわたって、あるいは現在の治療の投与の開始時からの移動平均または移動中央値呼吸ガス流量のうちの1つまたは複数を含むことができる。少なくとも一部の実装形態では、呼吸ガス流量履歴は、過去1分(すなわち60秒)にわたって計算される。
【0038】
さらに一例の実施形態では、移動平均または移動中央値流量の代わりに及び/またはそれに加えて、一部の説明では、酸化窒素送達システムは、呼吸ガス流量波形に関する情報を記憶する。移動平均または移動中央値呼吸ガス流量の場合のように、流量波形情報は、例えば過去5、10、15、20、30または45秒、過去1、2、5、10、15、20、30、45、60分などの特定の期間にわたって、あるいは現在の治療の投与の開始時から記憶することができる。一例の実施形態では、波形自体は、複数のスライスまたは時間識別データポイントになるように処理されてよい。少なくとも一部の実装形態では、検出された中断のすぐ直前の時間のデータは、それ自体は信頼できない可能性があるため、本開示は、検出された中断のデータ時間より設定された増加量だけ前に終わり、その窓の開始の設定時間だけ前の期間に始まるデータの「窓」を調べることができる。一例として、データは、例えば中断の検出の35秒前に始まり、中断の検出の5秒前に終わる窓など任意の範囲によって選択されたデータから選択されてよい。
【0039】
一部の実装形態では、履歴のガス流量データを修正する、及び/または分析するために、より進歩した信号処理技術が使用される場合もある。例えば平滑化作業及び/またはローパスフィルタリング、デジタル有限インパルス応答フィルタ及び/またはデジタル無限インパルス応答フィルタを利用して、範囲外の流量データポイントを取り除く場合もある。
【0040】
図2は、両方のセンサを有し、システム制御装置111が、人工呼吸器117の中または人工呼吸器117に配置されたセンサから通信経路C2を経由して感知したデータを受信するように構成された一例を示している。先に指摘したように、
図1~
図3に示される構成要素は、同様の参照番号を有する同様の構成要素を開示している。したがって明瞭さ及び簡潔さのために、
図1~
図3に共通の構成要素は、概ね
図1に関して本明細書では記載される。
【0041】
図3は、システム制御装置111が、2つの経路C1及びC2の両方を経由して感知したデータを受信するように構成された一例を示している。システム制御装置111は、2つ以上のセンサデバイスからデータを受信し、その後、所望であれば、それは、いずれかのデータストリームが、単一のそれぞれのセンサの中断を表すかどうかを検出するために各データストリームを独立して監視することができる、及び/またはシステム制御装置111は、感知したデータのうちの1つまたは複数における中断を検出するプロセスの一部として、2つのデータストリームを比較する場合もある。本開示の様々な部分でさらに説明するように、情報を人工呼吸器117から受信しようと、及び/または流量センサ119から受信しようと、システム制御装置111は、中断を検出すると、通常モードと呼ばれる場合もある第1のモードから外れることができ、中断が終わるまで一時的なバックアップモード(これはまたリンプモードとして記載される場合もある)で作動することができ、中断が終わったとき、システム制御装置111は、その通常モードに戻ることができる。
【0042】
中断の検出は、制御装置111によって実行されてよく、これは、任意のまたは全ての関連するセンサから感知した流量計測の中断を検出するように構成された検出プロセッサを組み込む、またはそれと結びつけられる場合もある。一部の実装形態では、検出プロセッサは、流量データを監視し、例えばデータの終了またはデータの変化、デジタルデータエラーチェックなどの中断を示す方法で流量データがいつ変化したかを判断することができる。少なくとも一部の例では、検出プロセスは、例えば注入器モジュールが完全にまたは部分的にシステムから分断された、または取り外された場合に生じる可能性がある、センサが分断されたことの指標を受信する及び/または検出してよい。中断を検出すると、酸化窒素送達システムは、呼吸ガス流の測定において万一中断または他のエラーが生じた場合に、治療用ガスの現行の送達のために履歴の呼吸ガス流量データを利用する。例えば呼吸ガス流の計測において中断が生じた場合には、酸化窒素送達システムは、履歴の呼吸ガス流量データに基づいた(例えばこれに比例して)設定投与量でNOを送達するように移行することができる。一部の記載では、このような移行は、ユーザが介在せずに自動的に生じる場合がある。
【0043】
呼吸ガス流量センサならびに人工呼吸器の両方と直接通信する酸化窒素送達システムの場合(例えば
図3に示される)、流量データの一方の供給源が予期せず利用できなくなった場合、システムは、他方の流量データ供給源へと途切れることなく移行することができる。両方のデータ供給源に中断が生じた場合、または2つの供給源からの呼吸ガス流量情報の間に違いが生じた場合、このとき酸化窒素送達システムは、上記に記載したように履歴の流量データを利用する送達に移行することができる。2つのデータ供給源(例えばNO濃度センサと、IM流量センサ)のみの場合、このとき、例えばデータの損失が生じた場合、または流量センサが範囲外の値を読み取った場合、これら2つの供給源に基づいた中断の検出を利用することができる。
【0044】
ひとたび呼吸ガス流量情報の欠陥/中断の状況が解消されると(例えばひとたび注入器モジュールセンサまたは注入器モジュール全体が保守されるもしくは交換される、及び/または人工呼吸器との通信が回復される、及び/または人工呼吸器センサが交換されるもしくは保守されると)、酸化窒素送達システムは、呼吸ガス流量センサによって、及び/または人工呼吸器から提供される現在の呼吸ガス流量データによる設定投与量での通常の比例式のNO送達を途切れることなく再開することができる。
【0045】
さらに一部の実装形態では、呼吸ガス流量情報における中断が検出された場合には、警告(可聴式の警告、視覚による警告など)がユーザに提供されて中断を指示する場合もある。例えばメッセージがユーザインターフェースディスプレイ上に現れて、呼吸ガス流量センサが中断された、または人工呼吸器が中断されたことの検出を合図して知らせる場合もある。別の例では、メッセージまたはインジケータまたは警報などがユーザに提供され、中断の検出を示す、及び/またはこのような状況が起きている間、NOが履歴データに基づいて送達されていないことを示す場合もある。
【0046】
図4は、呼吸ガス流の計測における中断を補償するための一例の方法のフロー図を示している。一部の実装形態では、本明細書に記載されるような1つまたは複数のセンサによって、流量のみならず他の流れ特性も感知される、または測定される場合もあることが理解される。
【0047】
プロセス410において、呼吸ガス流量は、通常モードで制御され、事前設定された、所望された入力設定値、またはそうでなければ望ましい入力された設定値に基づいて提供される。通常モードの設定値は、一部の実装形態では、ユーザ入力/ディスプレイ113において操作者によって入力され、制御装置111によって制御されてよい。
【0048】
プロセス420において、流量データは、システム内の1つまたは複数のセンサによって感知される。センサ(複数可)は、一部の実装形態では、注入器モジュールにおけるセンサ119、及び/または人工呼吸器117内のセンサを含んでよい、あるいは呼吸ガス回路全体の他の場所に配置される場合もある。
【0049】
プロセス430において、制御装置が、1つまたは複数のセンサからの感知した流量データを処理する。センサ(複数可)は、一部の実装形態では、注入器モジュールにおけるセンサ119、及び/または人工呼吸器117内のセンサを含んでよい、あるいは呼吸ガス回路全体の他の場所に配置される場合もある。センサ(複数可)と、制御装置との間の通信は、例えば
図1~
図3において点線C1及びC2として示されるようなものであってよい。通信の例には、本明細書に記載される全てのものが含まれ、各々が、例えば配線接続式及び/または無線通信接続を含んでよい。
【0050】
プロセス440において、一定の時間の間、履歴の流量データがメモリに記憶される。一実装形態の一例では、履歴の流量データは、10秒から5分の範囲内のある期間にわたって、または1分間にわたって計算された呼吸率にわたって記憶される。呼吸サイクルを識別し、平均の「呼吸の流れプロフィール」をまとめることも可能である。センサ(複数可)と、メモリ間の通信は、例えば、
図1~
図3において点線C1及びC2として示されるようなものであってよい。通信の例には、本明細書に記載される全てのものが含まれ、各々が、例えば配線接続式及び/または無線通信接続を含んでよい。制御装置及びメモリは、任意の順序で配列されてよく、単一モジュール内に配列される場合もある。
【0051】
プロセス450において、制御装置111は、受信した流量データの分析によってセンサの中断(または故障とも呼ばれる)状況が検出されたかどうかをチェックする、または検出する。アナログまたはデジタルのいずれかで受信した流量データの分析は、制御装置111を介して行われてよい。中断が検出されなかった場合、このときシステムは通常の作動を続ける。中断は、データが完全に欠落している、もしくは他の障害の状況である場合、またはデータの不規則性を示すデータの何らかの変化、またはシステムの障害である場合もある。例えば、中断は、本明細書に記載されるもののいずれかであってよい、または一部の実装形態では、注入器モジュールの分断、2つのセンサ間でのマッチングデータの欠落、予測した帯域から外れた流量データ読み取り値などを含めた他の中断である場合もある。予測した帯域から外れた流量データ読み取り値の一例は、10msのデータロス、または範囲外の流量読み取り値、または10秒のミスマッチの流量読み取り値であってよい。
【0052】
プロセス460において、中断がプロセス450において検出された場合、制御装置111は、メモリ112から履歴の流量データを取り出す。制御装置及びメモリは、任意の順序で配列されてよく、単一モジュール内に配列される場合もある。一部の実装形態では、履歴の流量データは、選択された時間窓であってよく、これは本明細書に記載されるように検出された中断より前の時間窓の期間中の履歴データの固定された時間窓であってよい。時間窓は、一部の実装形態では、検出された中断時間の直前に終わってよい、または検出された中断の時間より一定の期間前に終わる場合もある。例えば基準の中断時間は、信号ロスの時点の10秒前までに計算された移動平均流量、範囲外の信号、または信号不一致であってよい。
【0053】
プロセス470において流量制御は、履歴の流量データに基づいている。一部の実装形態では、制御装置111は、その作動パラメータとして、メモリ112からの履歴の流量データを利用して、第2のモードを実現し、このモードは、履歴の比例式のガス送達バックアップモードと呼ばれる場合がある、及び/またはさらには注入器の故障の一時的なバックアップモードと呼ばれる場合もある。本明細書に記載されるように、一時的なバックアップモードが、システム全体の継続的な作動を実現することで、ガス流量の通常の感知作業の何らかの中断が検出された後でも、ガスは継続して提供され、制御装置111によって制御されることになる。
【0054】
プロセス480において、ユーザがそのように指示した場合、または制御装置が、中断がもはや生じていない、及び/または解消された(例えばユーザが、センサの交換または保守を指示する、及び/またはシステムがセンサの修理または交換を検出することによって)と判断した場合、このときシステムは、通常モードに戻り、例えばプロセス410において入力されたパラメータなど通常モードからの最初の設定値を利用する。一例として、中断は、体積測定の流量が履歴の平均値の20%の範囲内であると判断された後、解消されたとみなされてよい。デジタル通信信号が、CRCメッセージによって確立される。アナログ信号の場合、流量が、流量または温度の報告のいずれかに関する予測されるADCカウントリミットの範囲内であるとき、中断は解消されたとみなされてよい。
【0055】
図5は、
図4と同様のフロー図であり、同様の参照番号を有するが、一実装形態の一変形形態を示している。
図5の実装形態500では、プロセス480において、中断が解消されたと検出されない場合、このとき流量は、プロセス470における履歴の流量データに基づいて制御される。
【0056】
本明細書の記載は、ガス流量データ(例えば体積測定の流量、質量の流量など)という用語を利用している。しかしながら一部の実装形態では、この用語は、流量以外に、またはそれに加えて、追加のまたは他の情報を指す場合もあり、例えばガスの比率の測定値、ガスの濃度など治療用ガスの送達に関連する任意の情報などを指す場合もある。システムはまた、履歴のNO流量センサ読み取りデータ、または履歴の制御システムが命令したNO流量を追跡する場合もある。
【0057】
一部の実装形態では、ユーザは、システムがバックアップモードにあるとき、治療用ガスの投与量を調節することができる。履歴データは引き続き、新たな設定投与量に対して所望されるNO流量を計算するために参照されてよい。バックアップモードにあるとき、使用されている履歴の平均流量は、デバイスに対応付けられた情報ディスプレイスクリーン上に表示されてよい。例えばGUIまたは他の制御インターフェースが提供されてよく、それはバックアップモードの進行中に、人工呼吸器または他の構成要素の様々な設定値を変更するためにユーザに提供されてよい。また履歴の計測後の流量を利用する代わりに、またはそれに加えて、制御装置は、制御装置からのものである履歴の命令された(または制御されて入力された)流量のメモリ内の記録を利用する場合もある。
【0058】
上述の詳細な記載は、当業者が開示される主題を作成し使用することを可能にするために提示されている。説明する目的で、十分な理解を提供するために特有の専門用語が記載されている。しかしながら、このような特有の詳細は、開示される主題を実施するのに不可欠ではないことは当業者に明らかである。特有の用途の記載は、単に代表的な例として提供されている。この開示される実装形態に対する種々の修正形態が当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される包括的な原理は、本開示の範囲から逸脱することなく他の実装形態及び用途にも適用され得る。本明細書に記載される作業の順序は単なる例であり、当業者に明らかであるように、必ず特定の順番で行われる作業を除いて、作業の順序は、本明細書に記載されるものに限定されず、変更される場合もある。また当業者によく知られる機能及び構造の説明は、明確さ及び簡潔さのために省略される場合もある。本開示は、示される実装形態に限定されることは意図されていないが、本明細書に開示される原理及び特徴と一致する最も広範な可能な範囲が与えられるべきである。
【0059】
本記載の趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の修正及び変形を本記載の方法及びシステムに対して行うことができることは当業者に明らかである。よって本記載は、添付のクレームの範囲内にある修正形態及び変形形態ならびにその等価物を含めることが意図されている。
【0060】
記載されるステップのいずれも、本発明の範囲から逸脱することなく、再編成する、切り離す及び/または組み合わせることができることが理解される。簡単にするために、ステップは、時には、順を追って提示される。これは単に簡単にするためであり、限定であることは決して意味していない。さらに、記載される本発明の要素及び/または実施形態のいずれも、本発明の範囲から逸脱することなく、再編成する、切り離す及び/または組み合わせることができることが理解される。簡単にするために、種々の要素は、時には別々に記載される。これは単に簡単にするためであり、限定であることは決して意味していない。
【0061】
上記に記載した例における種々のシステム構成要素の分離は、全ての例においてそのような分離を必要とするように理解すべきではなく、記載される構成要素及びシステムは全体として、単一のパッケージ内に一緒にまとめられて複数のシステムになる、及び/または複数の構成要素になることができることが理解される。種々の修正がその中で行われてよく、本明細書に開示される主題は、様々な形態及び例において実施されてよく、その教示は、多くの用途に適用されてよく、そのうちの一部が本明細書に記載されていることが理解されよう。そうでないことが述べられていなければ、本明細書に記載され、以下に続くクレームの中に含まれる全ての測定値、値、等級、位置、規模、サイズ及び他の仕様は、概算の値であり、正確な値ではない。それらは、それらが関連する機能と矛盾がなく、それらが属する分野において慣例的であるものと矛盾しない妥当な範囲を有することが意図されている。
【0062】
本明細書に記載する発明は特定の実施形態に関連して記載されているが、これらの実施形態は本発明の原理及び用途の単なる例示であることが理解されるべきである。発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の方法及び装置に対して様々な修正及び変更を成すことができることは、当業者にとって明らかである。したがって、本発明は、添付する請求の範囲の範囲内にある修正形態及び変更形態、ならびにこれらの等価物を含むことが企図されている。