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特許7116829溶接システム、中継装置、溶接方法、中継方法及び溶接システムの設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】溶接システム、中継装置、溶接方法、中継方法及び溶接システムの設置方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/10 20060101AFI20220803BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20220803BHJP
   B23K 9/12 20060101ALI20220803BHJP
   B23K 9/095 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
B23K9/10 A
B23K31/00 N
B23K31/00 K
B23K9/12 331K
B23K9/095 515A
B23K9/095 505B
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021114175
(22)【出願日】2021-07-09
【審査請求日】2021-07-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】脇田 直弥
(72)【発明者】
【氏名】後藤 憲一
(72)【発明者】
【氏名】川尻 悟
(72)【発明者】
【氏名】池内 圭
(72)【発明者】
【氏名】田代 裕一朗
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-240089(JP,A)
【文献】特開2017-084041(JP,A)
【文献】特開平01-262075(JP,A)
【文献】特開昭62-270279(JP,A)
【文献】特開2014-039948(JP,A)
【文献】特開平11-179542(JP,A)
【文献】国際公開第2014/181458(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00 - 9/32
B23K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ロボットと、
前記溶接ロボットを制御するための制御信号を作成する制御装置と、
前記溶接ロボット及び前記制御装置と接続され、前記溶接ロボットと前記制御装置との間で情報を中継する中継装置と
を備え、
前記中継装置は、計測されたアーク電圧をデジタル情報へ変換し、前記アーク電圧をデジタル情報へ変換した結果を前記制御装置へ中継し、
前記制御装置は、前記中継装置が中継した前記アーク電圧を前記デジタル情報へ変換した結果に基づいて前記アーク電圧の電圧降下を導出し、導出した前記電圧降下に基づいて溶接電源に溶接電圧を指示するための指令電圧情報を作成する、溶接システム。
【請求項2】
溶接ロボットと、
前記溶接ロボットを制御するための制御信号を作成する制御装置と、
前記溶接ロボット及び前記制御装置と接続され、前記溶接ロボットと前記制御装置との間で情報を中継する中継装置と
を備え、
前記溶接ロボットは、一又は複数のモータを備え、一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報を取得し、
前記中継装置は、前記溶接ロボットが取得した一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報の通信変換を行い、
前記制御装置は、一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報を通信変換した結果に基づいて一又は複数の前記モータの各々の回転値を演算し、
前記中継装置は、前記制御装置から一又は複数の前記モータの各々の回転値の演算結果を取得し、取得した前記演算結果を前記溶接ロボットへ中継する、溶接システム。
【請求項3】
溶接ロボットと、
前記溶接ロボットを制御するための制御信号を作成する制御装置と、
前記溶接ロボット及び前記制御装置と接続され、前記溶接ロボットと前記制御装置との間で情報を中継する中継装置と、
前記溶接ロボットが溶接する鋼材の画像情報を取得する撮像部と、
前記鋼材の温度を特定する情報を取得する入出力部と
を備え、
前記中継装置は、前記撮像部が取得した前記画像情報と前記入出力部が取得した前記温度を特定する情報とのいずれか一方又は両方を取得する、溶接システム。
【請求項4】
溶接するための溶接電力を前記溶接ロボットに供給する溶接電源と、
前記溶接電源と接続され、前記溶接電力を前記溶接ロボットへ供給するワイヤ送給機と
をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の溶接システム。
【請求項5】
前記溶接ロボットは、溶接トーチ
を備え、
前記ワイヤ送給機又は前記溶接ロボットは、前記溶接トーチのアーク電圧を計測し、
前記中継装置は、前記ワイヤ送給機又は前記溶接ロボットが計測した前記アーク電圧をデジタル情報へ変換し、前記アーク電圧をデジタル情報へ変換した結果を前記制御装置へ中継し、前記制御装置は、前記中継装置が中継した前記アーク電圧を前記デジタル情報へ変換した結果に基づいて前記アーク電圧の電圧降下を導出し、導出した前記電圧降下に基づいて前記溶接電源に溶接電圧を指示するための指令電圧情報を作成する、請求項に記載の溶接システム。
【請求項6】
前記溶接ロボットは、一又は複数のモータを備え、
前記溶接ロボットは、一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報を取得し、
前記中継装置は、前記溶接ロボットが取得した一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報の通信変換を行い、
前記制御装置は、一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報を通信変換した結果に基づいて一又は複数の前記モータの各々の回転値を演算し、
前記中継装置は、前記制御装置から一又は複数の前記モータの各々の回転値の演算結果を取得し、取得した前記演算結果を前記溶接ロボットへ中継する、請求項1又は請求項3に記載の溶接システム。
【請求項7】
前記溶接ロボットが溶接する鋼材の画像情報を取得する撮像部と、
前記鋼材の温度を特定する情報を取得する入出力部と
をさらに備え、
前記中継装置は、前記撮像部が取得した前記画像情報と前記入出力部が取得した前記温度を特定する情報とのいずれか一方又は両方を取得する、請求項1又は請求項に記載の溶接システム。
【請求項8】
溶接ロボットと、前記溶接ロボットを制御するための制御信号を作成する制御装置との間で情報を中継する中継装置であって、
溶接ロボットが計測したアーク電圧をデジタル情報へ変換するA/D変換部と、
前記アーク電圧を前記デジタル情報へ変換した結果を含むデジタル溶接電圧値を作成する処理部と、
前記処理部が作成した前記デジタル溶接電圧値を前記制御装置へ送信する通信部と
前記溶接ロボットが備える一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報の通信変換を行う通信変換部と
を備え
前記処理部は、前記通信変換部が一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報を通信変換した結果を含むモータ回転値要求を作成し、
前記通信部は、前記処理部が作成した前記モータ回転値要求を前記制御装置へ送信し、
前記通信部は、前記モータ回転値要求に対して前記制御装置が送信したモータ回転値応答を受信し、
前記処理部は、前記通信部が受信した前記モータ回転値応答に含まれる一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報を前記溶接ロボットへ中継する、中継装置。
【請求項9】
溶接ロボットと、前記溶接ロボットを制御する制御装置と、前記溶接ロボットと前記制御装置との間で情報を中継する中継装置とを備える溶接システムが実行する溶接方法であって、
溶接トーチのアーク電圧を計測するステップと、
一の鋼管の近傍又は複数の前記鋼管間に配置された中継装置が、前記アーク電圧をデジタル情報へ変換するステップと、
前記中継装置が、前記アーク電圧をデジタル情報へ変換した結果を、前記制御装置へ中継するステップと、
制御装置が、前記アーク電圧を前記デジタル情報へ変換した結果に基づいて前記アーク電圧の電圧降下を導出するステップと、
前記制御装置が、導出した前記アーク電圧の前記電圧降下に基づいて溶接電源に溶接電圧を指示するための指示電圧情報を作成するステップと、
前記制御装置が、前記溶接ロボットに溶接するための溶接電力を供給する前記溶接電源へ、作成した前記指示電圧情報を出力するステップと
を有する、溶接システムが実行する溶接方法。
【請求項10】
前記溶接ロボットが、一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報を取得するステップと、
前記中継装置が、前記溶接ロボットが取得した一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報の通信変換を行うステップと、
前記制御装置が、一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報を通信変換した結果に基づいて一又は複数の前記モータの各々の回転値を演算するステップと、
前記中継装置が、前記制御装置から一又は複数の前記モータの各々の回転値の演算結果を取得し、取得した前記演算結果を前記溶接ロボットへ中継するステップと、
前記溶接ロボットが、前記演算結果に基づいて移動するステップと
を有する、請求項に記載の溶接システムが実行する溶接方法。
【請求項11】
溶接ロボットと、前記溶接ロボットを制御するための制御信号を作成する制御装置との間で情報を中継する中継装置が実行する中継方法であって、
アーク電圧をデジタル情報へ変換するステップと、
前記アーク電圧を前記デジタル情報へ変換した結果を含むデジタル溶接電圧値を作成するステップと、
前記デジタル溶接電圧値を前記制御装置へ送信するステップと
前記溶接ロボットが備える一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報の通信変換を行うステップと、
一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報を通信変換した結果を含むモータ回転値要求を作成するステップと、
前記モータ回転値要求を前記制御装置へ送信するステップと、
前記モータ回転値要求に対して前記制御装置が送信したモータ回転値応答を受信するステップと、
前記モータ回転値応答に含まれる一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報を前記溶接ロボットへ中継するステップと
を有する、中継方法。
【請求項12】
溶接ロボットと、
前記溶接ロボットを制御するための制御信号を作成する制御装置と、
前記溶接ロボット及び前記制御装置と接続され、前記溶接ロボットと前記制御装置との間で情報を中継する中継装置と、
溶接するための溶接電力を前記溶接ロボットに供給する溶接電源と、
前記溶接電源と接続され、前記溶接電力を前記溶接ロボットへ供給するワイヤ送給機と、
電力供給ケーブルと、
第1制御ケーブルと、
第2制御ケーブルと、
を備え、
前記溶接ロボットは、鋼管を溶接する可搬型溶接ロボットであり、
前記ワイヤ送給機は、前記可搬型溶接ロボットとは別体の可搬型ワイヤ送給機であり、
前記溶接電源は、前記可搬型溶接ロボット及び前記可搬型ワイヤ送給機とは別体の据え置き型溶接電源であり、
前記制御装置は、前記可搬型溶接ロボット、及び、前記可搬型ワイヤ送給機とは別体の据え置き型制御装置であり、
前記中継装置は、前記可搬型溶接ロボット、前記可搬型ワイヤ送給機、前記据え置き型溶接電源、及び前記据え置き型制御装置とは別体の可搬型中継装置であり、
前記電力供給ケーブルは、端が前記可搬型ワイヤ送給機に接続され、且つ、前記据え置き型溶接電からの前記溶接電力を前記可搬型ワイヤ送給機に供給し、
前記第1制御ケーブルは、一端が前記据え置き型制御装置に接続され、他端が前記可搬型中継装置に接続され、且つ、前記可搬型溶接ロボットを制御するための制御信号であって前記据え置き型制御装置からの制御信号を伝達し、
前記第2制御ケーブルは、一端が前記可搬型中継装置に接続され、他端が前記可搬型溶接ロボットに接続され、且つ、前記可搬型溶接ロボットを制御するための制御信号であって前記可搬型中継装置により中継された制御信号を伝達する、
ことを特徴とする溶接システム。
【請求項13】
前記可搬型溶接ロボットに設けられた溶接トーチと、
前記溶接トーチのアーク電圧に関するアーク電圧信号を伝達するための電圧用ケーブルと、
を更に備え、
前記電圧用ケーブルは、前記可搬型中継装置に接続され、
前記第1制御ケーブルは、前記可搬型中継装置からの前記アーク電圧信号を前記据え置き型制御装置に伝達し、
前記据え置き型制御装置は、前記可搬型中継装置からの前記アーク電圧信号に基づいて前記アーク電圧の電圧降下を算出し、算出した電圧降下を補うように前記据え置き型溶接電源を制御する、
ことを特徴とする請求項12に記載の溶接システム。
【請求項14】
前記可搬型溶接ロボットに電力を供給する動力ケーブル、を更に備え、
前記動力ケーブルは、一端が前記可搬型中継装置に接続され、且つ、他端が前記可搬型溶接ロボットに接続される、
ことを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の溶接システム。
【請求項15】
前記可搬型溶接ロボットに設けられた撮像部と、
前記撮像部に電力を供給するカメラケーブルと、
を更に備え、
前記カメラケーブルは、一端が前記可搬型中継装置に接続され、且つ、他端が前記可搬型溶接ロボットに接続される、
ことを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項16】
前記可搬型溶接ロボットに設けられたサーボモータと、
前記サーボモータのエンコーダ信号を送信するエンコーダケーブルと、
を更に備え、
前記エンコーダケーブルは、一端が前記可搬型中継装置に接続され、且つ、他端が前記可搬型溶接ロボットに接続される、
ことを特徴とする請求項12から請求項15のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項17】
デジタル信号を送信する据え置き型制御装置と、
前記据え置き型制御装置とは別体の可搬型中継装置であって、前記据え置き型制御装置から送信される前記デジタル信号をアナログ信号に変換する可搬型中継装置と、
前記据え置き型制御装置及び前記可搬型中継装置とは別体の可搬型溶接ロボットであって、前記可搬型中継装置により変換された前記アナログ信号に応じて駆動され、且つ、建物の同一の階にある複数の鋼管を溶接する、可搬型溶接ロボットと、を備える溶接システムの設置方法であって、
前記据え置き型制御装置を前記建物に据え付ける据え付け工程と、
前記溶接システムの装置の1つについて、前記可搬型中継装置及び前記可搬型溶接ロボットのいずれであるのかを判別する判別工程と、
前記判別工程で前記可搬型中継装置であると判別された装置については、前記複数の鋼管がある階の中央に配置し、前記判別工程で前記可搬型溶接ロボットであると判別された装置については、前記複数の鋼管の1つに配置する配置工程と、
を備える溶接システムの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接システム、中継装置、溶接方法、中継方法及び溶接システムの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨、橋梁、造船などにおいて、溶接作業に溶接ロボットが使用される場合がある。溶接ロボットには、レールを自走し、全自動でセンシングを行い、自動で溶接条件を演算するものがある。
【0003】
溶接システムに関して、段取りの手間を削減することが可能で、維持や修理の費用を低減できる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この技術は、溶接作業管理装置、センサユニット、溶接者用無線端末を具備する。溶接作業管理装置はデータの処理・管理を行う。センサユニットは溶接作業管理装置と接続され、溶接用の電力の電流・電圧を計測する。溶接者用無線端末は溶接作業管理装置と無線ネットワークを介して接続され、溶接のデータが入力される。溶接作業管理装置又は溶接者用無線端末は、計測された電流及び電圧に基づき、溶接電流、溶接電圧及びアークタイムを含む第1溶接条件を算出し、溶接者用無線端末に入力された溶接長及びパス間温度を含む第2溶接条件と第1溶接条件とに基づき、温度及び入熱量を溶接結果として算出し、溶接結果に基づき、溶接の合否を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-110782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
他方、従来の溶接ロボットの駆動軸はステッピングモータで構成されている。ステッピングモータは自身の回転ステップを監視して回転制御するためエンコーダなどの外部センサが不要である。一方で、ステッピングモータはエンコーダとサーボモータとが実現する精密に位置を制御することは難しい。
ノイズの影響によって発生する外乱を限りなく小さくするために、一般的な生産工場ではエンコーダ信号を伝送するケーブルの長さを極力短くするなどの手段が採用される。しかし、一般的に溶接システムは制御装置と、溶接電源と、溶接ロボットとで構成されており、仮にエンコーダ信号を伝送するケーブルを短くしようとした場合に、溶接電圧・電流を制御している溶接電源と制御装置との間の制御ケーブルを延伸せざるを得ない。但し、溶接電源は重量が重いため、特殊建築現場において溶接機自体は地上面に設置したいという要望が高い。
【0006】
本発明の目的は、溶接ロボットと、溶接ロボットを制御する制御装置との間の距離を離して設置できる溶接システム、中継装置、溶接方法及び溶接システムの設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様に係る溶接システムは、溶接ロボットと、前記溶接ロボットを制御するための制御信号を作成する制御装置と、前記溶接ロボット及び前記制御装置と接続され、前記溶接ロボットと前記制御装置との間で情報を中継する中継装置とを備え、前記中継装置は、計測されたアーク電圧をデジタル情報へ変換し、前記アーク電圧をデジタル情報へ変換した結果を前記制御装置へ中継し、前記制御装置は、前記中継装置が中継した前記アーク電圧を前記デジタル情報へ変換した結果に基づいて前記アーク電圧の電圧降下を導出し、導出した前記電圧降下に基づいて溶接電源に溶接電圧を指示するための指令電圧情報を作成する。
(2)本発明の一態様に係る溶接システムは、溶接ロボットと、前記溶接ロボットを制御するための制御信号を作成する制御装置と、前記溶接ロボット及び前記制御装置と接続され、前記溶接ロボットと前記制御装置との間で情報を中継する中継装置とを備え、前記溶接ロボットは、一又は複数のモータを備え、一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報を取得し、前記中継装置は、前記溶接ロボットが取得した一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報の通信変換を行い、前記制御装置は、一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報を通信変換した結果に基づいて一又は複数の前記モータの各々の回転値を演算し、前記中継装置は、前記制御装置から一又は複数の前記モータの各々の回転値の演算結果を取得し、取得した前記演算結果を前記溶接ロボットへ中継する。
(3)本発明の一態様に係る溶接システムは、溶接ロボットと、前記溶接ロボットを制御するための制御信号を作成する制御装置と、前記溶接ロボット及び前記制御装置と接続され、前記溶接ロボットと前記制御装置との間で情報を中継する中継装置と、前記溶接ロボットが溶接する鋼材の画像情報を取得する撮像部と、前記鋼材の温度を特定する情報を取得する入出力部とを備え、前記中継装置は、前記撮像部が取得した前記画像情報と前記入出力部が取得した前記温度を特定する情報とのいずれか一方又は両方を取得する。
【0008】
この発明によれば、溶接システムは、溶接ロボットと、制御装置と、中継装置とを備える。中継装置は、溶接ロボット及び制御装置と接続され、溶接ロボットと制御装置との間で情報を中継する。このように構成することによって、溶接ロボットと制御装置との間に中継装置500が設置されるため、溶接ロボットと制御装置との間の距離を離して設置できる。
【0009】
)本発明の一態様に係る溶接システムは、上記(1)から上記(3)のいずれか一項記載の溶接システムであって、溶接するための溶接電力を前記溶接ロボットに供給する溶接電源と、前記溶接電源と接続され、前記溶接電力を前記溶接ロボットへ供給するワイヤ送給機とをさらに備える。
【0010】
この場合、溶接システムは、溶接ロボットに溶接電力を供給する溶接電源と、溶接電源と接続され、溶接電源を溶接ロボットへ供給するワイヤ送給機とを備える。このように構成することによって、ワイヤ送給機によって溶接ロボットに溶接ワイヤが送給されることによって、溶接電力を溶接ロボットに供給できる。
【0011】
)本発明の一態様に係る溶接システムは、上記()に記載の溶接システムであって、前記溶接ロボットは、溶接トーチを備え、前記ワイヤ送給機又は前記溶接ロボットは、前記溶接トーチのアーク電圧を計測し、前記中継装置は、前記ワイヤ送給機又は前記溶接ロボットが計測した前記アーク電圧をデジタル情報へ変換し、前記アーク電圧をデジタル情報へ変換した結果を前記制御装置へ中継し、前記制御装置は、前記中継装置が中継した前記アーク電圧を前記デジタル情報へ変換した結果に基づいて前記アーク電圧の電圧降下を導出し、導出した前記電圧降下に基づいて前記溶接電源に溶接電圧を指示するための指令電圧情報を作成する。
【0012】
溶接ロボットは溶接トーチを備え、ワイヤ送給機又は前記溶接ロボットは溶接トーチのアーク電圧を計測する。ワイヤ送給機又は前記溶接ロボットが計測することによって取得するアーク電圧はアナログ情報である。中継装置は、ワイヤ送給機又は前記溶接ロボットが計測したアーク電圧をデジタル情報へ変換する。中継装置は、アーク電圧をデジタル情報へ変換した結果を制御装置へ中継する。制御装置は、中継装置が中継したアーク電圧をデジタル情報へ変換した結果に基づいてアーク電圧の電圧降下を導出し、導出した電圧降下に基づいて溶接電源に溶接電圧を指示するための指令電圧情報を作成する。このように構成することによって、中継装置と制御装置との間でデジタル情報を伝送できるため、中継装置と制御装置との間の距離を離すことができる。
【0013】
)本発明の一態様に係る溶接システムは、上記(1)又は上記(3)のいずれか一項に記載の溶接システムであって、前記溶接ロボットは、一又は複数のモータを備え、前記溶接ロボットは、一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報を取得し、前記中継装置は、前記溶接ロボットが取得した一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報の通信変換を行い、前記制御装置は、一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報を通信変換した結果に基づいて一又は複数の前記モータの各々の回転値を演算し、前記中継装置は、前記制御装置から一又は複数の前記モータの各々の回転値の演算結果を取得し、取得した前記演算結果を前記溶接ロボットへ中継する。
【0014】
溶接ロボットは、一又は複数のモータを備え、一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報を取得する。モータの一例は、サーボモータである。中継装置は、溶接ロボットが取得した一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報の通信変換を行う。通信変換を行うことで、異なるシリアル通信間を接続することを可能にする。制御装置は、一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報を通信変換した結果に基づいて一又は複数のモータの各々の回転値を演算する。中継装置は、制御装置から一又は複数のモータの各々の回転値の演算結果を取得し、取得した演算結果を溶接ロボットへ中継する。このように構成することによって、溶接ロボットを移動させることができる。
【0015】
)本発明の一態様に係る溶接システムは、上記(1)又は上記(2)に記載の溶接システムであって、前記溶接ロボットが溶接する鋼材の画像情報を取得する撮像部と、前記鋼材の温度を特定する情報を取得する入出力部とをさらに備え、前記中継装置は、前記撮像部が取得した前記画像情報と前記入出力部が取得した前記温度を特定する情報とのいずれか一方又は両方を取得する。
【0016】
溶接システムは、溶接ロボットが溶接する鋼材の画像情報を取得する撮像部と鋼材の温度を特定する情報を取得する入出力部をさらに備える。撮像部は、溶接ロボットに含まれてもよいし、溶接ロボットに取り付けられてもよい。中継装置は、撮像部が取得した画像情報と入出力部が取得した温度を特定する情報とのいずれか一方又は両方を取得する。このように構成することによって、溶接システムのユーザは、溶接ロボットが溶接する鋼材の画像と、鋼材の温度とを確認することによって、溶接の状態を確認できる。
【0017】
)本発明の一態様に係る中継装置は、溶接ロボットと、前記溶接ロボットを制御するための制御信号を作成する制御装置との間で情報を中継する中継装置であって、溶接ロボットが計測したアーク電圧をデジタル情報へ変換するA/D変換部と、前記アーク電圧を前記デジタル情報へ変換した結果を含むデジタル溶接電圧値を作成する処理部と、前記処理部が作成した前記デジタル溶接電圧値を前記制御装置へ送信する通信部と、前記溶接ロボットが備える一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報の通信変換を行う通信変換部とを備え、前記処理部は、前記通信変換部が一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報を通信変換した結果を含むモータ回転値要求を作成し、前記通信部は、前記処理部が作成した前記モータ回転値要求を前記制御装置へ送信し、前記通信部は、前記モータ回転値要求に対して前記制御装置が送信したモータ回転値応答を受信し、前記処理部は、前記通信部が受信した前記モータ回転値応答に含まれる一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報を前記溶接ロボットへ中継する。
【0018】
この発明によれば、中継装置は、溶接ロボットが計測したアーク電圧を取得する。溶接ロボットが計測することによって取得するアーク電圧はアナログ情報である。中継装置は、溶接ロボットが計測したアーク電圧をデジタル情報へ変換する。中継装置は、アーク電圧をデジタル情報へ変換した結果を制御装置へ中継する。このように構成することによって、中継装置は、溶接ロボットが計測することによって取得したアーク電圧を、制御装置400へ中継できる。
【0020】
中継装置は、溶接ロボットが備える一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報の通信変換を行う通信変換部をさらに備える。一又は複数のモータは、溶接ロボットを移動させるものである。通信変換を行うことで、異なるシリアル通信間を接続することを可能にする。処理部は、通信変換部が一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報を通信変換した結果を含むモータ回転値要求を作成する。通信部は、処理部が作成したモータ回転値要求を制御装置へ送信し、モータ回転値要求に対して制御装置が送信したモータ回転値応答を受信する。処理部は、通信部が受信したモータ回転値応答に含まれる一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報を溶接ロボットへ中継する。このように構成することによって、中継装置は、溶接ロボットが備える一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報を制御装置に中継し、中継装置が送信した一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報を溶接ロボットへ中継できる。
【0021】
)本発明の一態様に係る溶接システムが実行する溶接方法は、溶接ロボットと、前記溶接ロボットを制御する制御装置と、前記溶接ロボットと前記制御装置との間で情報を中継する中継装置とを備える溶接システムが実行する溶接方法であって、溶接トーチのアーク電圧を計測するステップと、一の鋼管の近傍又は複数の前記鋼管間に配置された中継装置が、前記アーク電圧をデジタル情報へ変換するステップと、前記中継装置が、前記アーク電圧をデジタル情報へ変換した結果を、前記制御装置へ中継するステップと、前記制御装置が、前記アーク電圧を前記デジタル情報へ変換した結果に基づいて前記アーク電圧の電圧降下を導出するステップと、前記制御装置が、導出した前記アーク電圧の前記電圧降下に基づいて溶接電源に溶接電圧を指示するための指示電圧情報を作成するステップと、前記制御装置が、前記溶接ロボットに溶接するための溶接電力を供給する前記溶接電源へ、作成した前記指示電圧情報を出力するステップとを有する。
【0022】
この発明によれば、一又は複数の鋼管のいずれかに設置された溶接ロボット又は溶接電源を溶接ロボットへ供給するワイヤ送給機又は溶接ロボットは、溶接トーチのアーク電圧を計測する。溶接ロボットは、一又は複数の鋼管のいずれかにガイドレールGL上を摺動できるように取り付けられている。一の鋼管の近傍又は複数の鋼管間例えば中央に配置された中継装置は、溶接ロボット又はワイヤ送給機が計測したアーク電圧をデジタル情報へ変換する。中継装置が一の鋼管の近傍又は複数の鋼管間に配置されることによって、一又は複数の鋼管の各々に溶接ロボットを取り付けて溶接させる場合に、中継装置の移動距離を短くできる。中継装置は、アーク電圧をデジタル情報へ変換した結果を、制御装置へ中継する。
中継装置と制御装置との間で伝送される情報をデジタル情報とすることによって、中継装置と制御装置との間の距離を離すことができる。制御装置は、デジタル情報へ変換した結果に基づいてアーク電圧の電圧降下を導出し、導出した電圧降下に基づいて溶接電源に溶接電圧を指示するための指示電圧情報を作成する。制御装置は、アーク電圧の電圧降下に基づいて溶接電源に溶接電圧を指示するための指示電圧情報を作成できる。制御装置は、溶接ロボットに溶接するための溶接電力を供給する溶接電源へ、作成した指示電圧情報を出力する。このように構成することによって、溶接電源は、制御装置が出力した指示電圧情報に基づいて、溶接電圧を溶接ロボットに供給できるため、一又は複数の鋼管の各々を溶接できる。
【0023】
10)本発明の一態様に係る溶接システムが実行する溶接方法は、上記()記載の溶接方法であって、前記溶接ロボットが、一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報を取得するステップと、前記中継装置が、前記溶接ロボットが取得した一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報の通信変換を行うステップと、前記制御装置が、一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報を通信変換した結果に基づいて一又は複数の前記モータの各々の回転値を演算するステップと、前記中継装置が、前記制御装置から一又は複数の前記モータの各々の回転値の演算結果を取得し、取得した前記演算結果を前記溶接ロボットへ中継するステップと、前記溶接ロボットが、前記演算結果に基づいて移動するステップとをさらに有する。
【0024】
この発明によれば、中継装置は、溶接ロボットが取得した一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報の通信変換を行う。通信変換を行うことで、異なるシリアル通信間を接続することを可能にする。制御装置は、一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報を通信変換した結果に基づいて一又は複数のモータの各々の回転値を演算する。中継装置は、制御装置から一又は複数のモータの各々の回転値の演算結果を取得し、取得した演算結果を溶接ロボットへ中継する。このように構成することによって、溶接ロボットを移動させることができる。
【0025】
11)本発明の一態様に係る中継方法は、溶接ロボットと、前記溶接ロボットを制御するための制御信号を作成する制御装置との間で情報を中継する中継装置が実行する中継方法であって、アーク電圧をデジタル情報へ変換するステップと、前記デジタル情報を含むデジタル溶接電圧値を作成するステップと、前記デジタル溶接電圧値を前記制御装置へ送信するステップと、前記溶接ロボットが備える一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報の通信変換を行うステップと、一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報を通信変換した結果を含むモータ回転値要求を作成するステップと、前記モータ回転値要求を前記制御装置へ送信するステップと、前記モータ回転値要求に対して前記制御装置が送信したモータ回転値応答を受信するステップと、前記モータ回転値応答に含まれる一又は複数の前記モータの各々の回転値を特定する情報を前記溶接ロボットへ中継するステップとを有する。
【0026】
この発明によれば、中継方法は、中継装置において、溶接ロボット又はワイヤ送給機が計測したアーク電圧をデジタル情報へ変換し、アーク電圧をデジタル情報へ変換した結果を含むデジタル溶接電圧値を作成し、作成したデジタル溶接電圧値を制御装置へ送信する。このように構成することによって、中継装置は、溶接ロボット又はワイヤ送給機が計測したアーク電圧を制御装置へ中継できる。
【0027】
12)本発明の一態様に係る溶接システムは、溶接ロボットと、前記溶接ロボットを制御するための制御信号を作成する制御装置と、前記溶接ロボット及び前記制御装置と接続され、前記溶接ロボットと前記制御装置との間で情報を中継する中継装置と、溶接するための溶接電力を前記溶接ロボットに供給する溶接電源と、前記溶接電源と接続され、前記溶接電力を前記溶接ロボットへ供給するワイヤ送給機と、電力供給ケーブルと、第1制御ケーブルと、第2制御ケーブルと、を備え、前記溶接ロボットは、鋼管を溶接する可搬型溶接ロボットであり、前記ワイヤ供給機は、前記可搬型溶接ロボットとは別体の可搬型ワイヤ送給機であり、前記溶接電源は、前記可搬型溶接ロボット及び前記可搬型ワイヤ送給機とは別体の据え置き型溶接電源であり、前記制御装置は、前記可搬型溶接ロボット、及び、前記可搬型ワイヤ送給機とは別体の据え置き型制御装置であり、前記中継装置は、前記可搬型溶接ロボット、前記可搬型ワイヤ送給機、前記据え置き型溶接電源、及び前記据え置き型制御装置とは別体の可搬型中継装置であり、前記電力供給ケーブルは、端が前記可搬型ワイヤ送給機に接続され、且つ、前記据え置き型溶接電からの前記溶接電力を前記可搬型ワイヤ送給機に供給し、前記第1制御ケーブルは、一端が前記据え置き型制御装置に接続され、他端が前記可搬型中継装置に接続され、且つ、前記可搬型溶接ロボットを制御するための制御信号であって前記据え置き型制御装置からの制御信号を伝達し、前記第2制御ケーブルは、一端が前記可搬型中継装置に接続され、他端が前記可搬型溶接ロボットに接続され、且つ、前記可搬型溶接ロボットを制御するための制御信号であって前記可搬型中継装置により中継された制御信号を伝達する。
【0028】
この発明によれば、溶接システムは、可搬型溶接ロボットと、可搬型ワイヤ送給機と、据え置き型溶接電源と、据え置き型制御装置と、電力供給ケーブルと、第1制御ケーブルと、第2制御ケーブルと、を備える。第1制御ケーブルは、一端が据え置き型制御装置に接続され、他端が可搬型中継装置に接続され、且つ、可搬型溶接ロボットを制御するための制御信号であって据え置き型制御装置からの制御信号を伝達し、第2制御ケーブルは、一端が可搬型中継装置に接続され、他端が可搬型溶接ロボットに接続され、且つ、可搬型溶接ロボットを制御するための制御信号であって可搬型中継装置により中継された制御信号を伝達する。このように構成することによって、可搬型溶接ロボットと据え置き型制御装置との間に可搬型中継装置が設置されるため、可搬型溶接ロボットと据え置き型制御装置との間の距離を離して設置できる。
【0029】
13)本発明の一態様に係る溶接システムは、上記(12)記載の溶接システムであって、前記可搬型溶接ロボットに設けられた溶接トーチと、前記溶接トーチのアーク電圧に関するアーク電圧信号を伝達するための電圧用ケーブルと、を更に備え、前記電圧用ケーブルは、前記可搬型中継装置に接続され、前記第1制御ケーブルは、前記可搬型中継装置からの前記アーク電圧信号を前記据え置き型制御装置に伝達し、前記据え置き型制御装置は、前記可搬型中継装置からの前記アーク電圧信号に基づいて前記アーク電圧の電圧降下を算出し、算出した電圧降下を補うように前記据え置き型溶接電源を制御する。
【0030】
この発明によれば、溶接システムは、可搬型溶接ロボットに設けられた溶接トーチと、溶接トーチのアーク電圧に関するアーク電圧信号を伝達するための電圧用ケーブルと、を更に備える。電圧用ケーブルは、可搬型中継装置に接続される。第1制御ケーブルは、可搬型中継装置からのアーク電圧信号を据え置き型制御装置に伝達する。据え置き型制御装置は、可搬型中継装置からのアーク電圧信号に基づいてアーク電圧の電圧降下を算出し、算出した電圧降下を補うように据え置き型供給装置を制御する。このように構成することによって、可搬型溶接ロボットと据え置き型制御装置との間の距離を離すことができる。また、電力を供給するためのケーブルに起因するノイズの影響(特にエンコーダ信号に与える影響)を低減できる。
【0031】
14)本発明の一態様に係る溶接システムは、上記(12)又は上記(13)記載の溶接システムであって、前記可搬型溶接ロボットに電力を供給する動力ケーブル、を更に備え、前記動力ケーブルは、一端が前記可搬型中継装置に接続され、且つ、他端が前記可搬型溶接ロボットに接続される。
【0032】
この発明によれば、溶接システムは、可搬型溶接ロボットに電力を供給する動力ケーブルを更に備える。動力ケーブルは、一端が可搬型中継装置に接続され、且つ、他端が可搬型溶接ロボットに接続される。このように構成することによって、ケーブルの取扱いの煩雑さを低減できる。可搬型溶接ロボットに電力を供給する動力ケーブルもノイズ源となり得るが、これらケーブルのノイズの影響は、電力ケーブルのそれと比べると、かなり小さい。そこで、動力ケーブルを、可搬型中継装置を介し、可搬型溶接ロボットに接続されることによって、ケーブルの取扱いの煩雑さを低減できる。
【0033】
15)本発明の一態様に係る溶接システムは、上記(12)から上記(14)のいずれか一項に記載の溶接システムであって、前記可搬型溶接ロボットに設けられた撮像部と、前記撮像部に電力を供給するカメラケーブルと、を更に備え、前記カメラケーブルは、一端が前記可搬型中継装置に接続され、且つ、他端が前記可搬型溶接ロボットに接続される。
【0034】
この発明によれば、溶接システムは、可搬型溶接ロボットに設けられた撮像部と、撮像部に電力を供給するカメラケーブルと、を更に備える。カメラケーブルは、一端が可搬型中継装置に接続され、且つ、他端が可搬型溶接ロボットに接続される。このように構成することによって、ケーブルの取扱いの煩雑さを低減できる。撮像部に電力を供給するカメラケーブルもノイズ源となり得るが、これらケーブルのノイズの影響は、電力ケーブルのそれと比べると、かなり小さい。そこで、カメラケーブルを、可搬型中継装置を介して、可搬型溶接ロボットに接続することによって、ケーブルの取扱いの煩雑さを低減できる。
【0035】
16)本発明の一態様に係る溶接システムは、上記(12)から上記(15)のいずれか一項に記載の溶接システムであって、前記可搬型溶接ロボットに設けられたサーボモータと、前記サーボモータのエンコーダ信号を送信するエンコーダケーブルと、を更に備え、前記エンコーダケーブルは、一端が前記可搬型中継装置に接続され、且つ、他端が前記可搬型溶接ロボットに接続される。
【0036】
この発明によれば、溶接システムは、可搬型溶接ロボットに設けられたサーボモータと、サーボモータのエンコーダ信号を送信するエンコーダケーブルと、を更に備える。エンコーダケーブルは、一端が可搬型中継装置に接続され、且つ、他端が可搬型溶接ロボットに接続される。このように構成することによって、溶接電力を供給する電力供給ケーブルは、大きなノイズ源となるので、可搬型中継装置を介することなく、据え置き型溶接電源及び可搬型ワイヤ送給機のそれぞれに接続できるため、電力供給ケーブルで生じるノイズがエンコーダ信号に影響を与えることを低減できる。
【0037】
17)本発明の一態様に係る溶接システムの設置方法は、デジタル信号を送信する据え置き型制御装置と、前記据え置き型制御装置とは別体の可搬型中継装置であって、前記据え置き型制御装置から送信される前記デジタル信号をアナログ信号に変換する可搬型中継装置と、前記据え置き型制御装置及び前記可搬型中継装置とは別体の可搬型溶接ロボットであって、前記可搬型中継装置により変換された前記アナログ信号に応じて駆動され、且つ、建物の同一の階にある複数の鋼管を溶接する、可搬型溶接ロボットと、を備える溶接システムの設置方法であって、前記据え置き型制御装置を前記建物に据え付ける据え付け工程と、前記溶接システムの装置の1つについて、前記可搬型中継装置及び前記可搬型溶接ロボットのいずれであるのかを判別する判別工程と、前記判別工程で前記可搬型中継装置であると判別された装置については、前記複数の鋼管がある階の中央に配置し、前記判別工程で前記可搬型溶接ロボットであると判別された装置については、前記複数の鋼管の1つに配置する配置工程と、を備える。
【0038】
この発明によれば、溶接システムの設置方法は、据え置き型制御装置を建物に据え付ける据え付け工程と、溶接システムの装置の1つについて、可搬型中継装置及び可搬型溶接ロボットのいずれであるのかを判別する判別工程と、判別工程で可搬型中継装置であると判別された装置については、複数の鋼管がある階の中央に配置し、判別工程で可搬型溶接ロボットであると判別された装置については、複数の鋼管の1つに配置する配置工程とを備える。このように構成することによって、可搬型溶接ロボットを可搬型中継装置により変換されたアナログ信号に応じて駆動でき、且つ、建物の同一の階にある複数の鋼管を溶接できる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の実施形態によれば、溶接ロボットと、溶接ロボットを制御する制御装置との間の距離を離して設置できる溶接システム、中継装置、溶接方法及び中継方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の実施形態に係る溶接システムを示す図である。
図2】本実施形態に係る溶接システムの溶接ロボットの一例を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係る溶接システムの動作の一例を説明するための図である。
図4】本実施形態に係る溶接システムの動作の一例を説明するための図である。
図5】本実施形態に係る溶接システムの動作の例1を示すフロー図である。
図6】本実施形態に係る溶接システムの動作の例2を示すフロー図である。
図7】本実施形態に係る溶接システムの使用例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、本実施形態の溶接システム、中継装置、溶接方法、中継方法及び溶接システムの設置方法を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
また、本願でいう「XXに基づいて」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づいて」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0042】
(実施形態)
(溶接システム)
図1は、本発明の実施形態に係る溶接システムを示す図である。
本実施形態に係る溶接システム1は、例えば鋼管を継ぎ足すために使用される。鋼管SPを継ぎ足す場合に、ガイドレールGLに沿って鋼管SPの周囲を溶接ロボット100が巡回することによって、鋼管同士が溶接される。図1では、鋼管SPaと鋼管SPbとが継ぎ足される。
溶接システム1は、溶接ロボット100と、ワイヤ送給機200と、溶接電源300と、制御装置400と、中継装置500とを備える。
溶接ロボット100の一例は可搬型であり、鋼管SPを溶接する。溶接ロボット100は、一又は複数のモータを備える。一又は複数のモータの一例はサーボモータである。一又は複数のモータの各々が駆動することで、溶接ロボット100がガイドレールGL上を摺動することで移動する。
【0043】
ワイヤ送給機200の一例は可搬型であり、溶接ロボット100とは別体に構成される。ワイヤ送給機200の一例は、フロア(床面)に設置されて使用される。また、ワイヤ送給機200は、梁BEに吊り下げ部材によって吊り下げられて使用されてもよい。以下、一例として、ワイヤ送給機200がフロア(床面)に設置されて使用される場合について説明を続ける。
溶接電源300の一例は据え置き型であり、溶接ロボット100とワイヤ送給機200とは別体に構成される。
制御装置400の一例は据え置き型であり、溶接ロボット100とワイヤ送給機200と溶接電源300は別体に構成される。
中継装置500の一例は可搬型であり、溶接ロボット100とワイヤ送給機200と溶接電源300と制御装置400は別体に構成される。中継装置500の一例は、フロア(床面)に設置されて使用される。また、ワイヤ送給機200は、梁BEに吊り下げ部材によって吊り下げられて使用されてもよい。以下、一例として、中継装置500がフロア(床面)に設置されて使用される場合について説明を続ける。
【0044】
溶接システム1の一例では、溶接ロボット100、ワイヤ送給機200および中継装置500は、溶接電源300および制御装置400と離れた位置に設置されてもよい。具体的には、溶接ロボット100によって溶接される対象の位置との間の距離が100m以上であってもよい。
例えば、溶接システム1の一例では、溶接ロボット100、ワイヤ送給機200および中継装置500は、溶接電源300および制御装置400と異なる階に設置されてもよい。具体的には、溶接ロボット100、ワイヤ送給機200および中継装置500は溶接作業が行われる階に設置され、溶接電源300および制御装置400は溶接作業が行われる階よりも下の階に設置されてもよい。このように構成することによって重量が非常に重い溶接電源300を高層階に設置することなく溶接作業を行うことができる。
【0045】
溶接システム1は、電力供給ケーブルPSCを有する。電力供給ケーブルPSCは、一端が溶接電源300に接続され、他端がワイヤ送給機200に接続される。電力供給ケーブルPSCの長さの一例は、50mから150mである。電力供給ケーブルPSCは、溶接電源300からの溶接電力をワイヤ送給機200に供給する。
溶接システム1は、第1制御ケーブルCC01を有する。第1制御ケーブルCC01は、一端が制御装置400に接続され、他端が中継装置500に接続されるケーブルを含む。一端が制御装置400に接続され、他端が中継装置500に接続されるケーブルの長さの一例は、50m以上である。一端が制御装置400に接続され、他端が中継装置500に接続されるケーブルは、制御装置400が出力する溶接ロボット100を制御するための制御信号を、中継装置500へ伝達する。第1制御ケーブルCC01は、中継装置500に含まれる機器へ電力を供給するケーブル(図示なし)と、溶接ロボット100が備えるモータへ電力を供給するケーブル(図示なし)と、ワイヤ送給機200が備えるモータへ電力を供給するケーブル(図示なし)とを含む。
溶接システム1は、第2制御ケーブルCC02を有する。第2制御ケーブルCC02は、一端が中継装置500に接続され、他端が溶接ロボット100に接続されるケーブルを含む。一端が中継装置500に接続され、他端が溶接ロボット100に接続されるケーブルの長さの一例は、15mから25mである。一端が中継装置500に接続され、他端が溶接ロボット100に接続されるケーブルは、中継装置500が出力する溶接ロボット100を制御するための制御信号を、溶接ロボット100へ伝達する。第2制御ケーブルCC02は、溶接ロボット100が備えるモータへ電力を供給するケーブル(図示なし)を含む。
【0046】
溶接ロボット100が溶接する処理について説明する。
溶接ロボット100は、鋼管同士を溶接する。ワイヤ送給機200は、溶接電圧を計測する。例えば、ワイヤ送給機200は、アーク放電で降下するアーク電圧Varcを計測する。ただし、溶接ロボット100が、溶接電圧を計測するようにしてもよい。例えば、溶接ロボット100は、アーク放電で降下するアーク電圧Varcを計測するようにしてもよい。以下、ワイヤ送給機200がアーク電圧Varcを計測する場合について説明を続ける。
ワイヤ送給機200は、アーク電圧の計測値(以下「溶接電圧値」という)を中継装置500へ出力する。ここで、ワイヤ送給機200が中継装置500へ出力する溶接電圧値は、アナログ値である。
中継装置500は、ワイヤ送給機200が出力した溶接電圧値を取得する。中継装置500は、取得した溶接電力値をデジタル値へ変換する。中継装置500は、デジタル値へ変換した溶接電圧値を制御装置400へ送信する。
【0047】
制御装置400は、中継装置500が送信した溶接電圧値を受信する。制御装置400は、受信した溶接電圧値に基づいて、溶接ロボット100へ供給する電圧を溶接電源300に指示するための指令電圧Vsetを演算する。制御装置400は、演算することによって得られる指令電圧Vsetを特定する情報を含む指令電圧情報を作成する。制御装置400は、作成した指令電圧情報を溶接電源300へ出力する。
溶接電源300は、制御装置400が出力する指令電圧情報を取得(受令)する。溶接電源300は、受令した指令電圧情報に含まれる指令電圧Vsetを特定する情報に基づいて、溶接ロボット100へ電圧を出力する。
溶接ロボット100は、溶接電源300が出力した電圧によってアーク放電を行う。
【0048】
溶接ロボット100を移動させる処理について説明する。
溶接ロボット100は、一又は複数のモータの各々のエンコーダ値をエンコーダ(図示なし)から取得する。エンコーダ値は、一又は複数のモータの各々の回転値をパルスで検出した結果である。溶接ロボット100は、取得した一又は複数のモータの各々のエンコーダ値を中継装置500へ出力する。
中継装置500は、溶接ロボット100が出力した一又は複数のモータの各々のエンコーダ値を取得する。中継装置500は、取得した一又は複数のモータの各々のエンコーダ値の通信変換を行う。中継装置500は、一又は複数のモータの各々のエンコーダ値の通信変換を行った結果を含むモータ回転値要求を作成する。中継装置500は、作成したモータ回転値要求を、制御装置400へ送信する。
【0049】
制御装置400は、中継装置500が送信したモータ回転値要求を受信する。制御装置400は、受信したモータ回転値要求に含まれる一又は複数のモータの各々のエンコーダ値の通信変換を行った結果を取得する。制御装置400は、取得した一又は複数のモータの各々のエンコーダ値の通信変換を行った結果に基づいて、溶接ロボット100が備える一又は複数のモータの各々の回転値を演算する。制御装置400は、演算することによって得られた一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報を含むモータ回転値応答を作成する。制御装置400は、作成したモータ回転値応答を中継装置500へ出力する。
中継装置500は、溶接ロボット100が出力したモータ回転値応答を取得する。中継装置500は、取得したモータ回転値応答に含まれる一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報を取得する。中継装置500は、取得した一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報を溶接ロボット100へ出力する。
溶接ロボット100は、中継装置500が出力した一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報に基づいて、一又は複数のモータの各々を回転させる。
【0050】
以下、溶接ロボット100と、ワイヤ送給機200と、溶接電源300と、制御装置400と、中継装置500とについて、順次説明する。
(溶接ロボット100)
溶接ロボット100は、溶接対象の複数の鋼材などの部材(以下「被溶接部材」ともいう)同士を溶接する。溶接ロボット100は、被溶接部材の端部同士を溶接する。鋼材の一例は、鋼管SPである。
図2は、本実施形態に係る溶接システムの溶接ロボットの一例を示すブロック図である。
溶接ロボット100は、溶接トーチ102と、入出力部104と、制御部108と、撮像部110と、モータ112-1からモータ112-n(nは、n>0の整数)とを備える。
【0051】
溶接トーチ102は、被溶接部材同士を溶接する。溶接方法の一例は、アーク溶接である。アーク溶接とは、空気(気体)中の放電現象(アーク放電)を利用して、同じ金属同士をつなぎ合わせる溶接方法である。アーク放電では、溶接トーチ102に溶接電源300が出力する電圧が印加されることで溶接トーチ102の先端部から被溶接部材の開先へ向けてアーク放電が行われる。溶接トーチ102の先端部から被溶接部材の開先へ向けてアーク放電が行われることで、被溶接部材同士が溶接される。開先は、被溶接部材の端部同士の間に形成される空間である。開先は、例えば一方の被溶接部材の端部を削り、傾斜を形成することで得られる。溶接ロボット100は、溶接トーチ102の先端が被溶接部材の開先に合うように設置される。
【0052】
入出力部104は、中継装置500との間のインタフェイスである。入出力部104は、ワイヤ送給機200が出力する溶接電圧値を取得する。入出力部104が取得した溶接電圧値は、中継装置500へ出力される。また、入出力部104は、制御部108が出力するエンコーダ値を取得する。入出力部104が取得したエンコーダ値は、中継装置500へ出力される。また、入出力部104は、中継装置500が出力するモータ回転値を特定する情報が入力される。入出力部104に入力されたモータ回転値は、制御部108へ出力される。また、入出力部104は、温度計(図示なし)が出力する鋼材の温度を特定する情報が入力される。入出力部104に入力された鋼材の温度を特定する情報は、制御部108へ出力される。
【0053】
制御部108は、溶接ロボット100の移動を制御する。制御部108は、一又は複数のモータの各々のエンコーダ値を取得し、取得した一又は複数のモータの各々のエンコーダ値を入出力部104へ出力する。
制御部108は、入出力部104から一又は複数のモータの各々のモータ回転値を特定する情報などの制御信号を取得し、取得した制御信号に基づいて溶接ロボット100の移動を制御する。具体的には、制御部108は、取得した一又は複数のモータの各々のモータ回転値を特定する情報に基づいて、モータ112-1からモータ112-nの各々を駆動させることによって溶接ロボット100を移動させる制御を実行する。
撮像部110は、溶接ロボット100による溶接の様子を撮影する。撮像部110の一例は、カメラである。撮像部110は、例えば溶接ロボット100に内蔵されるものであってもよいし、取り付けられるものであってもよい。撮像部110と中継装置500とは、ワイヤ送給機200を介して、ケーブルSCによって接続されている。また、撮像部110と中継装置500とは、ワイヤ送給機200を介することなく、ケーブルCC02によって接続されていてもよい。ケーブルSCは、中継装置500からワイヤ送給機200が備えるモータへ電力を供給する。撮像部110は撮影により取得した画像又は動画のデータ(以下「画像データ」という。)を中継装置500へ出力する。
【0054】
モータ112-1からモータ112-nの各々は、制御部108によって制御されることで駆動する。モータ112-1からモータ112-nの各々が駆動することによって、溶接ロボット100がガイドレールGL上を摺動することで移動する。図1に戻り、説明を続ける。
ガイドレールGLは、溶接ロボット100を支持することによって溶接ロボット100の移動を補助する。ガイドレールGLは、被溶接部材に沿って、被溶接部材の周方向に環状に被溶接部材を囲むように配置される。
【0055】
(ワイヤ送給機200)
ワイヤ送給機200は、溶接に使用するための溶接ワイヤを送給する。溶接ワイヤの一例は、コイル状の長いソリッドワイヤ、フラックス入りワイヤである。例えば、ワイヤ送給機200は、加圧ローラとモータ軸に取り付けられた送給ローラとを上下に配し、それら2個のローラでワイヤを上下から加圧し、その加圧によって得られる摩擦力を利用して溶接ワイヤを送給する。溶接ワイヤはコンジットケーブルCCによってガイドされて溶接トーチ102まで送給される。コンジットケーブルCCの一例は、筒状の導電体に絶縁性の筒体(絶縁筒体)が被覆された構成を有する。導電体の内側にはコイルライナが挿入され、このコイルライナによって溶接ワイヤがガイドされる。
また、ワイヤ送給機200は、溶接電圧を計測する。具体的には、ワイヤ送給機200は、アーク放電で降下するアーク電圧Varcを計測する。ワイヤ送給機200は、溶接電圧の計測結果である溶接電圧値を中継装置500へ出力する。
【0056】
(中継装置500)
中継装置500は、パーソナルコンピュータ、PLC(Programmable Logic Controller)、サーバー、スマートフォン、タブレットコンピュータ又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。中継装置500は、例えば、入出力部502と、A/D変換部504と、通信変換部506と、処理部508と、通信部510とを備える。
通信部510は、通信モジュールによって実現される。通信部510は、制御装置400などの他の装置と通信を行う。通信部510は、例えばケーブルで制御装置400と接続される。また、通信部510は、有線LANなどの通信方式で通信してもよい。
入出力部502は、溶接ロボット100及びワイヤ送給機200との間のインタフェイスである。入出力部502は、溶接ロボット100の入出力部104及びワイヤ送給機200と例えばケーブルで接続される。入出力部502は、ワイヤ送給機200が出力した溶接電圧値を取得する。
A/D変換部504は、入出力部502から溶接電圧値を取得する。A/D変換部504は、取得した溶接電圧値をデジタルデータへ変換する。
処理部508は、A/D変換部504から溶接電圧値をデジタルデータへ変換した結果を取得する。処理部508は、取得した溶接電圧値をデジタルデータへ変換した結果を含むデジタル溶接電圧値を作成する。処理部508は、作成したデジタル溶接電圧値を通信部510へ出力する。
通信部510は、制御装置400へ、処理部508が出力したデジタル溶接電圧値を送信する。
【0057】
入出力部502は、溶接ロボット100が出力した一又は複数のモータの各々のエンコーダ値を取得する。
通信変換部506は、入出力部502から一又は複数のモータの各々のエンコーダ値を取得する。通信変換部506は、取得した一又は複数のモータの各々のエンコーダ値を制御装置400へ送信するために、インタフェイスを変換することによって通信変換を行う。インタフェイスを変換することによって異なるシリアル通信間を接続することができる。
処理部508は、通信変換部506からインタフェイスを変換した一又は複数のモータの各々のエンコーダ値を取得する。処理部508は、取得したインタフェイスを変換した一又は複数のモータの各々のエンコーダ値を含むモータ回転値要求を作成する。処理部508は、作成したモータ回転値要求を通信部510へ出力する。
通信部510は、制御装置400へ、処理部508が出力したモータ回転値要求を送信する。
通信部510は、モータ回転値要求に対して、制御装置400が送信したモータ回転値応答を受信する。
処理部508は、通信部510からモータ回転値応答を取得する。処理部508は、取得したモータ回転値応答に含まれる一又は複数のモータの各々のモータ回転値を特定する情報を取得する。処理部508は、取得した一又は複数のモータの各々のモータ回転値を特定する情報を、入出力部502へ出力する。
入出力部502は、処理部508が出力した一又は複数のモータの各々のモータ回転値を特定する情報を取得し、取得した一又は複数のモータの各々のモータ回転値を特定する情報を溶接ロボット100へ送信する。
通信部510は、溶接ロボット100が送信した画像データを受信する。処理部508は、通信部510が受信した画像データを取得する。処理部508は、取得した画像データを処理することによって、表示部(図示なし)に、溶接ロボット100による溶接の様子を表示させるようにしてもよい。このように構成することによって、溶接状態を確認できる。
【0058】
A/D変換部504と、通信変換部506と、処理部508との全部または一部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが記憶部(図示なし)に格納されたプログラムを実行することにより実現される機能部(以下、ソフトウェア機能部と称する)である。なお、A/D変換部504と、通信変換部506と、処理部508との全部または一部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0059】
(制御装置400)
制御装置400は、産業用コンピュータ等を含む装置によって実現される。制御装置400は、例えば通信部402と、演算部404と、処理部406とを備える。
通信部402は、通信モジュールによって実現される。通信部402は、中継装置500、溶接電源300などの他の装置と通信を行う。通信部402は、例えばケーブルで中継装置500と接続される。また、通信部402は、有線LANなどの通信方式で通信してもよい。具体的には、通信部402は、中継装置500が送信したデジタル溶接電圧値を受信する。
演算部404は、通信部402が受信したデジタル溶接電圧値を特定する情報を取得する。演算部404は、取得したデジタル溶接電圧値を特定する情報に基づいて、指令電圧を演算する。
【0060】
図3図4とは、本実施形態に係る溶接システムの動作の一例を説明するための図である。
図3図4とを参照して、制御装置400の演算部404の処理の一例について説明する。
制御装置400が指令電圧Vsetを特定する情報を溶接電源300に出力することによって、溶接電源300が有する出力特性によって、溶接電源300が出力する電圧(出力電圧Vout)は一意に決定される。
図4は、溶接電源300が有する出力特性の一例を示す。図4において、横軸は溶接電源300の出力電圧Voutであり、縦軸は溶接電源300への指令電圧Vsetである。図4によれば、Vset=A×Vout+B(A、Bが定数)で表されるのが分かる。つまり、溶接電源300への指令電圧Vsetは、溶接電源300の出力電圧Voutの一次式で表現できる。図3に戻り説明を続ける。
【0061】
溶接電源300が出力する電圧(出力電圧Vout)への負荷は主に、パワーケーブル(電力供給ケーブルPSC)による電圧降下Vdownとアーク放電で降下するアーク電力Varcとの2つである。
適正な出力電圧Voutを導出するために、電力供給ケーブルPSCによる電圧降下Vdownとアーク放電で降下するアーク電力Varcとの2つの負荷要素によって必要とされる電圧が見積もられる。必要とされる電圧を見積もった結果に基づいて溶接電源300への指令電圧Vsetが決定される。決定した指令電圧Vsetを特定する情報が溶接電源300に入力される。具体的に説明する。
演算部404は、式(1)に基づいて、仮の出力電圧Vaoutを導出する。
Vaarc+Vadown+ΔV=Vaout (1)
式(1)において、Vaarcは、溶接作業を行う際の設定電圧であり、アーク放電で降下するアーク電圧Varcに該当する。アーク放電で降下するアーク電圧Varcは、溶接システム1によって計測を行う値であるので、溶接電圧フィードバックシステムにおいて、このアーク放電で降下するアーク電圧Varcが溶接作業を行う際の仮の設定電圧Vaarcと等しくなるように、演算部404においてフィードバック制御による補正項ΔVを調整する。Vddownは、電力供給ケーブルによる理論上の電圧降下であり、電力供給ケーブルの太さと長さとによって見積もられる。
【0062】
演算部404は、導出した仮の出力電圧Vaoutに対応する指令電圧Vsetを、溶接電源300が有する出力特性から取得する。具体的には、図4において、(1)で示すように、仮の出力電圧Vaout(図4では、溶接電源の出力電圧Vout)から指令電圧Vsetを取得する。図1に戻り説明を続ける。
処理部406は、演算部404から指令電圧Vsetを特定する情報を取得する。処理部406は、取得した指令電圧Vsetを特定する情報を含む指令電圧情報を作成する。処理部406は、作成した指令電圧情報を通信部402へ出力する。
通信部402は、処理部406が出力した指令演算情報を取得し、取得した指令演算情報を、溶接電源300へ送信する。
通信部402は、中継装置500が送信したモータ回転値要求を受信する。
演算部404は、通信部402が受信したモータ回転値要求を取得する。演算部404は、取得したモータ回転値要求に含まれる一又は複数のモータの各々のエンコーダ値の通信変換を行った結果を取得する。演算部404は、取得した一又は複数のモータの各々のエンコーダ値の通信変換を行った結果に基づいて、一又は複数のモータの各々のモータ回転値を演算する。
処理部406は、演算部404から一又は複数のモータの各々のモータ回転値を特定する情報を取得する。処理部406は、取得した一又は複数のモータの各々のモータ回転値を特定する情報を、中継装置500の入出力部502へ出力する。
入出力部502は、処理部406が出力した一又は複数のモータの各々のモータ回転値を特定する情報を取得し、取得した一又は複数のモータの各々のモータ回転値を特定する情報を溶接ロボット100へ送信する。
演算部404と処理部406とは、例えば、CPUなどのプロセッサが記憶部(図示なし)に格納されたプログラムを実行することにより実現される機能部(以下、ソフトウェア機能部と称する)である。なお、演算部404は、LSI、またはFPGAなどのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0063】
(溶接電源300)
溶接電源300は、受令部302を備える。
受令部302は、通信モジュールによって実現される。受令部302は、制御装置400などの他の装置と通信を行う。受令部302は、例えばケーブルで制御装置400と接続される。また、受令部302は、有線LANなどの通信方式で通信してもよい。具体的には、受令部302は、制御装置400が送信した指令電圧Vsetを特定する情報を受信する。
溶接電源300は、受令部302が受信した指令電圧Vsetを特定する情報に基づいて、溶接電源300が有する出力特性から溶接電源300が出力する電圧(出力電圧Vout)を決定する。溶接電源300は、決定した出力電圧Voutを電圧供給ケーブルPSCへ供給することによって溶接ロボット100に電力を給電する。電力供給ケーブルPSCは、ワイヤ送給機200によって、溶接ロボット100とワイヤ送給機200との距離に基づいて長さが調節される。溶接ロボット100は、溶接電源300によって給電された電力で溶接を行う。
【0064】
(溶接システム1の動作)
図5は、本実施形態に係る溶接システムの動作の例1を示すフロー図である。図5を参照して、溶接ロボット100に供給する出力電圧Voutを制御する処理について説明する。
(ステップS1-1)
ワイヤ送給機200は、溶接電圧を計測する。
(ステップS2-1)
ワイヤ送給機200は、溶接電圧値を取得し、取得した溶接電圧値を中継装置500へ出力する。
(ステップS3-1)
中継装置500において、入出力部502は、ワイヤ送給機200が出力した溶接電圧値を取得する。
(ステップS4-1)
中継装置500において、A/D変換部504は、入出力部502から溶接電圧値を取得する。A/D変換部504は、取得した溶接電圧値をデジタルデータへ変換する。
【0065】
(ステップS5-1)
中継装置500において、処理部508は、A/D変換部504から溶接電圧値をデジタルデータへ変換した結果を取得する。処理部508は、取得した溶接電圧値をデジタルデータへ変換した結果を含むデジタル溶接電圧値を作成する。
(ステップS6-1)
中継装置500において、処理部508は、作成したデジタル溶接電圧値を通信部510へ出力する。通信部510は、制御装置400へ、処理部508が出力したデジタル溶接電圧値を送信する。
(ステップS7-1)
制御装置400において、通信部402は、中継装置500が送信したデジタル溶接電圧値を受信する。
(ステップS8-1)
制御装置400において、演算部404は、式(1)に基づいて、仮の出力電圧Vaoutを導出している。アーク放電で降下するアーク電圧Varcは、溶接システム1によって計測を行う値であるので、溶接電圧フィードバックシステムにおいて、このアーク放電で降下するアーク電圧Varcが溶接作業を行う際の仮の設定電圧Vaarcと等しくなるように、演算部404は、フィードバック制御による補正項ΔVを調整している。このフィードバック制御の一例は、PID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)である。演算部404は、通信部402が受信したデジタル溶接電圧値を特定する情報を取得する。演算部404は、取得したデジタル溶接電圧値を特定する情報に基づいて、指令電圧Vsetを演算する。
【0066】
(ステップS9-1)
制御装置400において、処理部406は、演算部404から指令電圧Vsetを取得する。処理部406は、取得した指令電圧Vsetを特定する情報を通信部402へ出力する。
通信部402は、処理部406が出力した指令電圧Vsetを特定する情報を取得し、取得した指令電圧Vsetを特定する情報を、溶接電源300へ送信する。
(ステップS10-1)
溶接電源300において、受令部302は、制御装置400が送信した指令電圧Vsetを特定する情報を受令する。
(ステップS11-1)
溶接電源300は、受令部302が受信した指令電圧Vsetを特定する情報に基づいて、出力電圧Voutを電圧供給ケーブルPSCへ供給する。
(ステップS12-1)
溶接ロボット100において、溶接トーチ102は、溶接電源300が供給した出力電圧Voutによって放電する。
【0067】
図6は、本実施形態に係る溶接システムの動作の例2を示すフロー図である。図6を参照して、溶接ロボット100の移動を制御する処理について説明する。
(ステップS1-2)
溶接ロボット100において、制御部108は、一又は複数のモータの各々のエンコーダ値を取得し、取得した一又は複数のモータの各々のエンコーダ値を入出力部104へ出力する。
(ステップS2-2)
溶接ロボット100において、入出力部104は、制御部108が出力する一又は複数のモータの各々のエンコーダ値を取得し、取得した一又は複数のモータの各々のエンコーダ値を中継装置500へ出力する。
(ステップS3-2)
中継装置500において、入出力部502は、溶接ロボット100が出力した一又は複数のモータの各々のエンコーダ値を取得する。
(ステップS4-2)
中継装置500において、通信変換部506は、入出力部502から一又は複数のモータの各々のエンコーダ値を取得する。通信変換部506は、取得した一又は複数のモータの各々のエンコーダ値を制御装置400へ送信するために、インタフェイスを変換することによって通信変換を行う。
【0068】
(ステップS5-2)
中継装置500において、処理部508は、通信変換部506からインタフェイスを変換した一又は複数のモータの各々のエンコーダ値を取得する。処理部508は、取得したインタフェイスを変換した一又は複数のモータの各々のエンコーダ値を含むモータ回転値要求を作成する。
(ステップS6-2)
中継装置500において、処理部508は、作成したモータ回転値要求を通信部510へ出力する。通信部510は、制御装置400へ、処理部508が出力したモータ回転値要求を送信する。
(ステップS7-2)
制御装置400において、通信部402は、中継装置500が送信したモータ回転値要求を受信する。
(ステップS8-2)
制御装置400において、演算部404は、通信部402が受信したモータ回転値要求を取得する。演算部404は、取得したモータ回転値要求に含まれるインタフェイスを変換した一又は複数のモータの各々のエンコーダ値に基づいて、モータ回転値を演算する。
【0069】
(ステップS9-2)
制御装置400において、処理部406は、演算部404から一又は複数のモータの各々のモータ回転値を特定する情報を取得する。処理部406は、取得した一又は複数のモータの各々のモータ回転値を特定する情報を含むモータ回転値応答を作成する。処理部406は、作成したモータ回転値応答を通信部402へ出力する。
通信部402は、処理部406が出力したモータ回転値応答を取得し、取得したモータ回転値応答を、中継装置500へ送信する。
(ステップS10-2)
中継装置500において、通信部510は、制御装置400が送信したモータ回転値応答を受信する。
(ステップS11-2)
中継装置500において、処理部508は、通信部510からモータ回転値応答を取得する。処理部508は、取得したモータ回転値応答に含まれる一又は複数のモータの各々のモータ回転値を特定する情報を取得する。処理部508は、取得した一又は複数のモータの各々のモータ回転値を特定する情報を、入出力部502へ出力する。
(ステップS12-2)
溶接ロボット100において、入出力部104は、中継装置500が出力する一又は複数のモータの各々のモータ回転値を特定する情報を取得する。制御部108は、入出力部104から一又は複数のモータの各々のモータ回転値を特定する情報を取得し、取得した一又は複数のモータの各々のモータ回転値を特定する情報に基づいて溶接ロボット100の動作を制御する。
【0070】
(溶接システム1の使用例)
図7は、本実施形態に係る溶接システムの使用例を説明するための図である。図7は、建物の平面図を示す。図7において、フロアに平行な方向をX軸とY軸とし、X軸とY軸とに垂直な方向をZ軸とする。建物の同一階には、鋼管SP-1と、鋼管SP-2と、鋼管SP-3と、鋼管SP-4とが配置されている。鋼管SP-1と鋼管SP-4との間(鋼管SP2と鋼管SP-4との間)のY軸方向の長さL1の一例は、10mから20mである。鋼管SP-1と鋼管SP-2との間(鋼管SP3と鋼管SP-4との間)のX軸方向の長さL1の一例は、10mから20mである。
【0071】
溶接システム1において、溶接ロボット100は、鋼管SP-1に取り付けられたガイドレールGL-1上を摺動できるように取り付けられている。
中継装置500は、X軸とY軸とからなる平面において、鋼管SP-1と、鋼管SP-2と、鋼管SP-3と、鋼管SP-4とが配置されている位置の中央の領域に配置される。換言すれば、中継装置500は、フロアの中央に配置される。
中継装置500と制御装置400との間は、60mから100m程度の距離離して配置できる。このため、制御装置400と溶接電源300とは、溶接ロボット100と中継装置500とが配置される階と同じ階に配置されていてもよいし、異なる階に配置されてもよい。図7において、ワイヤ送給機200(図示なし)が、梁BEに吊り下げられていてもよい。
鋼管SP-1への溶接が終了した後に、鋼管SP-2への溶接が行われる。鋼管SP-2への溶接の準備の際に、溶接ロボット100は、鋼管SP-1から鋼管SP-2へ移動させる。ここで、溶接ロボット100の移動に伴って、ワイヤ送給機200(図示なし)も移動させる。中継装置500は、鋼管SP-1と、鋼管SP-2と、鋼管SP-3と、鋼管SP-4とが配置されている中央の領域に配置されているため、その移動は不要である。
中継装置500をフロアの中央の領域に配置することによって、中継装置500を移動させることなく、溶接ロボット100を移動させることで、フロアに配置された複数の鋼管の各々を溶接できる。
【0072】
前述した実施形態において、溶接ロボット100は、温度計(図示なし)が取得した温度分布などの温度を特定する情報を取得し、取得した温度を特定する情報を中継装置500へ出力するようにしてもよい。
また、溶接ロボット100は、撮像部110が、溶接状態を撮像することにより取得した画像データと温度計が取得した温度を特定する情報とのいずれか一方又は両方を取得し、取得した画像データと温度を特定する情報とのいずれか一方又は両方を中継装置500へ出力するようにしてもよい。
このように構成することによって、溶接システムのユーザは、溶接ロボットが溶接する鋼材の画像と、鋼材の温度とを確認することによって、溶接の状態を確認できる。
前述した実施形態では、制御装置400と中継装置500との間が有線で接続される場合について説明したが、この例に限られない。例えば、制御装置400と中継装置500との間が、無線接続されていてもよい。
【0073】
本実施形態に係る溶接システム1によれば、溶接システム1は、溶接ロボット100と、溶接ロボット100を制御するための制御信号を作成する制御装置400と、溶接ロボット100及び制御装置400と接続され、溶接ロボット100と制御装置400との間で情報を中継する中継装置500とを備える。中継装置500は、制御装置400が作成した制御信号を溶接ロボット100へ中継する。
このように構成することによって、溶接ロボット100と制御装置400との間に中継装置500が設置されるため、溶接ロボット100と制御装置400との間の距離を離して設置できる。
【0074】
また、溶接するための溶接電力を溶接ロボット100に供給する溶接電源300と、溶接電源300と接続され、溶接電源300を溶接ロボット100へ供給するワイヤ送給機200とをさらに備える。このように構成することによって、ワイヤ送給機200によって溶接ロボット100に溶接ワイヤが送給されることによって、溶接電力を溶接ロボット100に供給できる。
【0075】
また、溶接ロボット100は、溶接トーチ102を備える。溶接ロボット100又はワイヤ送給機200は、溶接トーチ102のアーク電圧を計測する。中継装置500は、溶接ロボット100又はワイヤ送給機200が計測したアーク電圧をデジタル情報へ変換し、アーク電圧をデジタル情報へ変換した結果を制御装置400へ中継する。制御装置400は、中継装置500が中継したアーク電圧をデジタル情報へ変換した結果に基づいてアーク電圧の電圧降下を導出し、導出した電圧降下に基づいて溶接電源300に溶接電圧を指示するための指令電圧情報を作成する。
このように構成することによって、中継装置と制御装置との間でデジタル情報を伝送できるため、中継装置と制御装置との間の距離を離すことができる。アーク電圧Varcを測定する場合、測定点は溶接トーチ102にあることが理想であるがノイズ源となる。ワイヤ送給機200がアーク電圧を測定することによって、溶接ロボット100-中継盤(中継装置)のラインに測定点を入れることを避けることができる。また、仮に、計測用のケーブルを別に設けた場合も溶接ロボット100が引き回すことになるので動作の邪魔になる。ワイヤ送給機200がアーク電圧を測定することによって、溶接ロボット100を邪魔することなく、アーク電圧を測定できる。
【0076】
また、溶接ロボット100は、一又は複数のモータ112-1~112-nを備える。溶接ロボット100は、一又は複数のモータ112-1~112-nの各々の回転値を特定する情報を取得する。中継装置500は、溶接ロボット100が取得した一又は複数のモータ112-1~112-nの各々の回転値を特定する情報の通信変換を行う。制御装置400は、一又は複数のモータ112-1~112-nの各々の回転値を特定する情報を通信変換した結果に基づいて一又は複数のモータ112-1~112-nの各々の回転値を演算する。
中継装置500は、制御装置400から一又は複数のモータ112-1~112-nの各々の回転値の演算結果を取得し、取得した演算結果を溶接ロボット100へ中継する。このように構成することによって、溶接ロボットを移動させることができる。モータ112-1~112-nの一例は、サーボモータである。サーボモータとエンコーダとで構成することにより、ステッピングモータで構成する溶接ロボットより精緻な速度制御、位置制御が可能となり、溶接品質を向上できる。さらに、通常は背反となる溶接システムの可搬性を保つ構成により、施工性の向上を建築現場で確保できる。
【0077】
また、溶接ロボット100が溶接する鋼材の画像情報を取得する撮像部110と、鋼材の温度を特定する情報を取得する入出力部104とをさらに備える。中継装置500は、撮像部110が取得した画像情報と入出力部が取得した温度を特定する情報とのいずれか一方又は両方を取得する。このように構成することによって、溶接システムのユーザは、溶接ロボットが溶接する鋼材の画像と、鋼材の温度とを確認することによって、溶接の状態を確認できる。
【0078】
本実施形態に係る中継装置500によれば、中継装置500は、溶接ロボット100と、溶接ロボット100を制御するための制御信号を作成する制御装置400との間で情報を中継する。中継装置500は、溶接ロボット100が計測したアーク電圧をデジタル情報へ変換するA/D変換部504と、アーク電圧をデジタル情報へ変換した結果を含むデジタル溶接電圧値を作成する処理部508と、処理部508が作成したデジタル溶接電圧値を制御装置400へ送信する通信部510とを備える。このように構成することによって、中継装置は、溶接ロボットが計測することによって取得したアーク電圧を、制御装置400へ中継できる。
【0079】
また、溶接ロボット100が備える一又は複数のモータ112-1~112-nの各々の回転値を特定する情報の通信変換を行う通信変換部506をさらに備える。処理部508は、通信変換部506が一又は複数のモータ112-1~112-nの各々の回転値を特定する情報を通信変換した結果を含むモータ回転値要求を作成する。通信部510は、処理部508が作成したモータ回転値要求を制御装置400へ送信する。通信部510は、モータ回転値要求に対して制御装置400が送信したモータ回転値応答を受信する。
処理部508は、通信部510が受信したモータ回転値応答に含まれる一又は複数のモータ112-1~112-nの各々の回転値を特定する情報を溶接ロボット100へ中継する。このように構成することによって、中継装置は、溶接ロボットが備える一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報を制御装置に中継し、中継装置が送信した一又は複数のモータの各々の回転値を特定する情報を溶接ロボットへ中継できる。
【0080】
本実施形態に係る溶接システムが実行する溶接方法によれば、溶接方法は、溶接ロボット100と、溶接ロボット100を制御する制御装置400と、溶接ロボット100と制御装置400との間で情報を中継する中継装置500とを備える溶接システムが実行する。溶接方法は、溶接トーチ102のアーク電圧を計測するステップと、一の鋼管の近傍又は複数の鋼管間に配置された中継装置500が、アーク電圧をデジタル情報へ変換するステップと、中継装置500が、アーク電圧をデジタル情報へ変換した結果を、制御装置400へ中継するステップと、制御装置400が、アーク電圧をデジタル情報へ変換した結果に基づいてアーク電圧の電圧降下を導出するステップと、制御装置400が、導出したアーク電圧を電圧降下に基づいて溶接電源に溶接電圧を指示するための指示電圧情報を作成するステップと、制御装置400が、溶接ロボット100に溶接するための溶接電力を供給する溶接電源300へ、作成した指示電圧情報を出力するステップとを有する。
このように構成することによって、溶接電源は、制御装置が出力した指示電圧情報に基づいて、溶接電圧を溶接ロボットに供給できるため、一又は複数の鋼管の各々を溶接できる。
【0081】
また、溶接ロボット100が、一又は複数のモータ112-1から112-nの各々の回転値を特定する情報を取得するステップと、中継装置500が、溶接ロボット100が取得した一又は複数のモータ112-1から112-nの各々の回転値を特定する情報の通信変換を行うステップと、制御装置400が、一又は複数のモータ112-1から112-nの各々の回転値を特定する情報を通信変換した結果に基づいて一又は複数のモータ112-1から112-nの各々の回転値を演算するステップと、中継装置500が、制御装置400から一又は複数のモータ112-1から112-nの各々の回転値の演算結果を取得し、取得した演算結果を溶接ロボット100へ中継するステップと、溶接ロボット100が、演算結果に基づいて移動するステップとをさらに有する。このように構成することによって、溶接ロボット100を移動させることができる。
【0082】
本実施形態に係る中継装置が実行する中継方法によれば、中継方法は、溶接ロボット100と、溶接ロボット100を制御するための制御信号を作成する制御装置400との間で情報を中継する中継装置500が実行する中継方法であって、アーク電圧をデジタル情報へ変換するステップと、アーク電圧をデジタル情報へ変換した結果を含むデジタル溶接電圧値を作成するステップと、デジタル溶接電圧値を制御装置400へ送信するステップとを有する。このように構成することによって、中継装置500は、溶接ロボット100が計測したアーク電圧を制御装置400へ中継できる。
【0083】
本発明の一態様に係る溶接システムは、鋼管SPを溶接する可搬型溶接ロボット(実施形態では、溶接ロボット100)と、可搬型溶接ロボットとは別体の可搬型ワイヤ送給機(実施形態では、ワイヤ送給機200)と、可搬型溶接ロボット及び可搬型ワイヤ送給機とは別体の据え置き型溶接電源(実施形態では、溶接電源300)と、可搬型溶接ロボット、可搬型ワイヤ送給機、及び、据え置き型溶接電源とは別体の据え置き型制御装置(実施形態では、制御装置400)と、可搬型溶接ロボット、可搬型ワイヤ送給機、据え置き型溶接電源、及び据え置き型制御装置とは別体の可搬型中継装置(実施形態では、制御装置400)と、電力供給ケーブルPSCと、第1制御ケーブルCC01と、第2制御ケーブルCC02とを備える。
電力供給ケーブルPSCは、一端が据え置き型溶接電源に接続され、他端が可搬型ワイヤ送給機に接続され、且つ、据え置き型溶接電力からの溶接電力を可搬型ワイヤ送給機に供給する。第1制御ケーブルCC01は、一端が据え置き型制御装置に接続され、他端が可搬型中継装置に接続され、且つ、可搬型溶接ロボットを制御するための制御信号であって据え置き型制御装置からの制御信号を伝達する。
第2制御ケーブルCC02は、一端が可搬型中継装置に接続され、他端が可搬型溶接ロボットに接続され、且つ、可搬型溶接ロボットを制御するための制御信号であって可搬型中継装置により中継された制御信号を伝達する。
このように構成することによって、可搬型溶接ロボットと据え置き型制御装置との間に可搬型中継装置が設置されるため、可搬型溶接ロボットと据え置き型制御装置との間の距離を離して設置できる。
【0084】
また、可搬型溶接ロボットに設けられた溶接トーチと、溶接トーチのアーク電圧に関するアーク電圧信号を伝達するための電圧用ケーブルとを更に備える。電圧用ケーブルは、可搬型中継装置に接続され、第1制御ケーブルは、可搬型中継装置からのアーク電圧信号を据え置き型制御装置に伝達し、据え置き型制御装置は、可搬型中継装置からの前記アーク電圧信号に基づいてアーク電圧の電圧降下を算出し、算出した電圧降下を補うように据え置き型供給装置を制御する。
このように構成することによって、可搬型溶接ロボットと据え置き型制御装置との間の距離を離すことができる。また、電力を供給するためのケーブルに起因するノイズの影響(特にエンコーダ信号に与える影響)を低減できる。
【0085】
また、可搬型溶接ロボットに電力を供給する動力ケーブルを更に備える。動力ケーブルは、一端が可搬型中継装置に接続され、且つ、他端が可搬型溶接ロボットに接続される。このように構成することによって、ケーブルの取扱いの煩雑さを低減できる。可搬型溶接ロボットに電力を供給する動力ケーブルもノイズ源となり得るが、これらケーブルのノイズの影響は、電力ケーブルのそれと比べると、かなり小さい。そこで、動力ケーブルを、可搬型中継装置を介し、可搬型溶接ロボットに接続されることによって、ケーブルの取扱いの煩雑さを低減できる。
【0086】
また、可搬型溶接ロボットに設けられた撮像部と、撮像部に電力を供給するカメラケーブルとを更に備える。カメラケーブルは、一端が可搬型中継装置に接続され、且つ、他端が可搬型溶接ロボットに接続される。このように構成することによって、ケーブルの取扱いの煩雑さを低減できる。撮像部に電力を供給するカメラケーブルもノイズ源となり得るが、これらケーブルのノイズの影響は、電力ケーブルのそれと比べると、かなり小さい。そこで、カメラケーブルを、可搬型中継装置を介して、可搬型溶接ロボットに接続することによって、ケーブルの取扱いの煩雑さを低減できる。
【0087】
また、可搬型溶接ロボットに設けられたサーボモータと、サーボモータのエンコーダ信号を送信するエンコーダケーブルとを更に備える。エンコーダケーブルは、一端が可搬型中継装置に接続され、且つ、他端が可搬型溶接ロボットに接続される。このように構成することによって、溶接電力を供給する電力供給ケーブルは、大きなノイズ源となるので、可搬型中継装置を介することなく、据え置き型溶接電源及び可搬型ワイヤ送給機のそれぞれに接続できるため、電力供給ケーブルで生じるノイズがエンコーダ信号に影響を与えることを低減できる。
【0088】
本発明の一態様に係る溶接システムの設置方法は、デジタル信号を送信する据え置き型制御装置(実施形態では、制御装置400)と、据え置き型制御装置とは別体の可搬型中継装置(実施形態では、中継装置500)であって、据え置き型制御装置から送信されるデジタル信号をアナログ信号に変換する可搬型中継装置と、据え置き型制御装置及び可搬型中継装置とは別体の可搬型溶接ロボット(実施形態では、溶接ロボット100)であって、可搬型中継装置により変換されたアナログ信号に応じて駆動され、且つ、建物の同一の階にある複数の鋼管SPを溶接する、可搬型溶接ロボットとを備える溶接システムの設置方法である。
溶接システムの設置方法は、据え置き型制御装置を建物に据え付ける据え付け工程と、溶接システムの装置の1つについて、可搬型中継装置及び可搬型溶接ロボットのいずれであるのかを判別する判別工程と、判別工程で可搬型中継装置であると判別された装置については、複数の鋼管がある階の中央に配置し、判別工程で可搬型溶接ロボットであると判別された装置については、複数の鋼管の1つに配置する配置工程とを備える。据え付け工程と、判別工程と、配置工程とは、例えば作業ロボットによって実行される。このように構成することによって、可搬型溶接ロボットを可搬型中継装置により変換されたアナログ信号に応じて駆動でき、且つ、建物の同一の階にある複数の鋼管を溶接できる。
【0089】
以上、実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組合せを行うことができる。これら実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0090】
なお、上述した溶接ロボット100、制御装置400、中継装置500は、コンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、各機能ブロックの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録する。この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、CPUが実行することで実現してもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROMなどの可搬媒体のことをいう。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクなどの記憶装置を含む。
【0091】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、短時間の間、動的にプログラムを保持するものを含んでいてもよい。短時間の間、動的にプログラムを保持するものは、例えば、インターネットなどのネットワークや電話回線などの通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線である。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」には、サーバーやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。また、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、上記プログラムは、プログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。プログラマブルロジックデバイスは、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)である。
【0092】
なお、上述の溶接ロボット100、制御装置400、中継装置500は内部にコンピュータを有している。そして、上述した溶接ロボット100、制御装置400、中継装置500の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどをいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 溶接システム
100 溶接ロボット
102 溶接トーチ
104 入出力部
108 制御部
110 撮像部
112-1、・・・、112-n モータ
200 ワイヤ送給機
300 溶接電源
302 受令部
400 制御装置
402 通信部
404 演算部
406 処理部
500 中継装置
502 入出力部
504 A/D変換部
506 通信変換部
508 処理部
510 通信部
【要約】
【課題】溶接ロボットと、溶接ロボットを制御する制御装置との間の距離を離して設置できる溶接システム、中継装置、及び溶接方法及び溶接システムの設置方法を提供すること。
【解決手段】溶接システムは、溶接ロボットと、溶接ロボットを制御するための制御信号を作成する制御装置と、溶接ロボット及び制御装置と接続され、溶接ロボットと制御装置との間で情報を中継する中継装置とを備える。中継装置は、制御装置が作成した制御信号を溶接ロボットへ中継する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7