(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/08 20060101AFI20220804BHJP
B60N 2/14 20060101ALI20220804BHJP
B60N 2/07 20060101ALI20220804BHJP
A47C 3/18 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
B60N2/08
B60N2/14
B60N2/07
A47C3/18 Z
(21)【出願番号】P 2019134649
(22)【出願日】2019-07-22
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 功太郎
(72)【発明者】
【氏名】松島 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】松井 健
(72)【発明者】
【氏名】黒木 和博
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-196164(JP,A)
【文献】特開2004-074966(JP,A)
【文献】特開2017-154584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 3/18
A61G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体と、前記シート本体を前後スライド可能に支持する前後スライド機構と、スライドロック機構と、前記シート本体に前後スライド以外の位置変更動作をさせる位置変更動作機構と、位置変更動作ロック機構とを備える車両用シート装置であって、
前記スライドロック機構のロック状態を解除する第1操作レバーと、
前記位置変更動作ロック機構のロック状態を解除する第2操作レバーと、
を有しており、
前記第1操作レバーで前記スライドロック機構のロック状態を解除し、前記シート本体を前記位置変更動作機構の動作可能位置まで前後スライドさせたときに、前記第2操作レバーが操作可能位置まで移動する車両用シート装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用シート装置であって、
前記シート本体が前記位置変更動作機構の動作可能位置までスライドした状態で、前記スライドロック機構をロック状態にできる車両用シート装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両用シート装置であって、
前記シート本体が前記位置変更動作機構の動作可能位置までスライドしたことを検知して可動部を動作させる位置検知機構と、
前記位置検知機構の可動部の動作を前記第2操作レバーに伝達し、前記第2操作レバーを操作可能位置まで移動させる伝達機構と、
を有する車両用シート装置。
【請求項4】
請求項3に記載された車両用シート装置であって、
前記位置検知機構は、前記前後スライド機構の固定側に設けられたカムと、前記前後スライド機構の可動側に設けられ、前記可動部として働くカムフォロアとを備えている車両用シート装置。
【請求項5】
請求項3に記載された車両用シート装置であって、
前記伝達機構は、前記位置検知機構の可動部の動作を前記第2操作レバーに伝達するリンクと、前記第2操作レバーに対して移動を妨げる方向に外力が加わった場合に前記可動部の動作伝達を解除する伝達解除手段とを備えている車両用シート装置。
【請求項6】
請求項5に記載された車両用シート装置であって、
前記伝達機構は、
前記第2操作レバーを操作可能位置まで移動させる第1リンクと、
前記第1リンクに対して回動可能な状態で一端側が連結され、他端側が前記位置検知機構の可動部に連結されている第2リンクと、
前記第1リンクと第2リンクとの連結位置に設けられた弾性体と、
を有しており、
前記位置検知機構の可動部の動作は、前記第2リンクから前記弾性体を介して前記第1リンク、及び前記第2操作レバーに伝達される構成であり、
前記第2操作レバーに対して移動を妨げる方向に外力が加わった場合に、前記第1リンクと前記第2リンクとが前記弾性体の弾性力に抗して相対回動可能となり、前記位置検知機構の可動部の動作伝達を解除する前記伝達解除手段として機能する車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート本体と、前記シート本体を前後スライド可能に支持する前後スライド機構と、前記シート本体に前後スライド以外の位置変更動作をさせる位置変更動作機構とを備える車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する車両用シート装置が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の車両用シート装置は、前後スライドと方向転換とが可能なシートである。車両用シート装置は、
図8に示すように、シートクッション101cとシートバック101bとからなるシート本体101を備えている。シート本体101は前後スライド機構102によって前後スライド可能に支持されており、前後スライド機構102がシート回転機構104上に設置されている。これにより、シート本体101は、前後スライドと水平回転とが可能になる。そして、シート回転機構104が支持台105上に設置されている。
【0003】
車両用シート装置のシート回転機構104には、回転ロック機構(図示省略)が設けられている。そして、回転ロック機構のロック状態を解除するためのレリースフック114がシート回転機構104の側面に設けられている。また、シート本体101のシートクッション101cの側面には、回転ロック機構のロック解除操作を行うためのロックオフレバー110が設けられいる。そして、シート本体101が所定位置まで前後スライドした状態で、シート本体101のロックオフレバー110がシート回転機構104のレリースフック114と係合する。これにより、シート本体101のロックオフレバー110を操作することで、レリースフック114を介して回転ロック機構のロック解除操作を行うことができる。即ち、シート本体101を所定位置まで前後スライドさせて、ロックオフレバー110を操作することで、シート本体101を水平回転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した車両用シート装置100では、シート本体101がスライドして所定位置に到達したか否かを明確に判別するのが難しい。このため、シート本体101のロックオフレバー110がシート回転機構104のレリースフック114に正しく係合しているかを容易に把握できない。即ち、シート本体101の回転ロックを解除するロックオフレバー110の操作タイミングを把握し難いため、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、位置変更動作ロック機構のロック状態を解除する第2操作レバーの操作タイミングを容易に把握できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、シート本体と、前記シート本体を前後スライド可能に支持する前後スライド機構と、スライドロック機構と、前記シート本体に前後スライド以外の位置変更動作をさせる位置変更動作機構と、位置変更動作ロック機構とを備える車両用シート装置であって、前記スライドロック機構のロック状態を解除する第1操作レバーと、前記位置変更動作ロック機構のロック状態を解除する第2操作レバーとを有しており、前記第1操作レバーで前記スライドロック機構のロック状態を解除し、前記シート本体を前記位置変更動作機構の動作可能位置まで前後スライドさせたときに、前記第2操作レバーが操作可能位置まで移動する。
【0008】
本発明によると、シート本体が位置変更動作機構の動作可能位置までスライドした状態で、位置変更動作ロック機構のロック状態を解除する第2操作レバーが操作可能位置まで移動する。このため、位置変更動作ロック機構のロック状態を解除する第2操作レバーの操作タイミングを容易に把握できる。
【0009】
第2の発明によると、シート本体が位置変更動作機構の動作可能位置までスライドした状態で、スライドロック機構をロック状態にできる。このため、第2操作レバーにより位置変更動作機構を動作させてシート本体に前後スライド以外の動作をさせる際、シート本体が前後方向にスライドしない。したがって、安定的にシート本体に前後スライド以外の動作をさせることができる。
【0010】
第3の発明によると、シート本体が位置変更動作機構の動作可能位置までスライドしたことを検知して可動部を動作させる位置検知機構と、前記位置検知機構の可動部の動作を第2操作レバーに伝達し、前記第2操作レバーを操作可能位置まで移動させる伝達機構とを有する。
【0011】
第4の発明によると、位置検知機構は、前後スライド機構の固定側に設けられたカムと、前記前後スライド機構の可動側に設けられ、前記可動部として働くカムフォロアとを備えている。このため、シート本体が位置変更動作機構の動作可能位置までスライドした状態を確実に検知して、可動部(カムフォロア)を動作させることができる。
【0012】
第5の発明によると、伝達機構は、位置検知機構の可動部の動作を前記第2操作レバーに伝達するリンクと、前記第2操作レバーに対して移動を妨げる方向に外力が加わった場合に前記可動部の動作伝達を解除する伝達解除手段とを備えている。
【0013】
第6の発明によると、伝達機構は、第2操作レバーを操作可能位置まで移動させる第1リンクと、前記第1リンクに対して回動可能な状態で一端側が連結され、他端側が前記位置検知機構の可動部に連結されている第2リンクと、前記第1リンクと第2リンクとの連結位置に設けられた弾性体とを有しており、前記位置検知機構の可動部の動作は、前記第2リンクから前記弾性体を介して前記第1リンク、及び前記第2操作レバーに伝達される構成であり、前記第2操作レバーに対して移動を妨げる方向に外力が加わった場合に、前記第1リンクと前記第2リンクとが前記弾性体の弾性力に抗して相対回動可能となり、前記位置検知機構の可動部の動作伝達を解除する前記伝達解除手段として機能する。このため、外力が加わって第2操作レバーが操作可能位置まで移動できない状態であっても、位置検知機構の可動部の動作が弾性体の部分で吸収される。この結果、伝達機構、及び位置検知機構に無理な荷重が加わらず、損傷を防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、位置変更動作ロック機構のロック状態を解除する第2操作レバーの操作タイミングを容易に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態1に係る車両用シート装置においてシート本体が車両前向きの着座位置にある状態の側面図である。
【
図2】前記シート本体が車両前向きの着座位置にある状態の斜視図である。
【
図3】前記シート本体の回転ロック状態を解除する第2操作レバー、及び第2操作レバーを操作可能位置まで移動させる伝達機構を表す斜視図である。
【
図4】前記第2操作レバーとシート本体のロック機構本体部との連結状態を表す模式図である。
【
図5】前記第2操作レバーと、前記伝達機構と、シート本体が所定位置まで前後スライドしたことを検知する位置検知機構とを表す模式図である。
【
図6】前記操作レバーと前記伝達機構と前記位置検知機構との動作を表す模式図である。
【
図7】前記操作レバーと前記伝達機構と前記位置検知機構との動作を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態1]
以下、
図1~
図7に基づいて、本発明の実施形態1に係る車両用シート装置の説明を行なう。本実施形態に係る車両用シート装置10は、前後スライド機構と回転機構とを備えるシート装置である。ここで、図中に示す前後左右及び上下は、車両用シート装置10を備える車両の前後左右及び上下に対応している。
【0017】
<車両用シート装置10の概要について>
車両用シート装置10は、
図1に示すように、乗員が着座するシート本体20と、シート本体20を車両前後方向にスライドさせる前後スライド機構30と、その前後スライド機構30上でシート本体20を回転させる回転機構40とを備えている。また、車両用シート装置10は、シート本体20の前後スライドをロックする多段式ロック機構(図示省略)と、回転機構40の回転をロックする回転ロック装置50とを備えている。
【0018】
<前後スライド機構30について>
前後スライド機構30は、
図1等に示すように、車両フロアF上に固定されて車両前後方向に延びる左右一対のロアレール32と、左右一対のロアレール32に沿って前後スライドする左右の一対のアッパレール33とを備えている。そして、左右の一対のアッパレール33が前後スライドベース35の下面に固定されている。ここで、アッパレール33は、前記多段式ロック機構の働きにより、ロアレール32に対して多段階でスライドロックできるように構成されている。また、アッパレール33の前端位置で、シート本体20の前部下側には、前記多段式ロック機構のロック状態を解除する第1操作レバー37が設けられている。
【0019】
<回転機構40について>
回転機構40は、シート本体20を車両前向きの着座位置とドア開口部側を向く乗降位置との間で約90°水平回転させる機構である。回転機構40は、
図1に示すように、前後スライドベース35上に固定された内輪41と、内輪41に対して回転可能に支持された外輪43と、外輪43上に固定された回転テーブル45とを備えている。そして、回転機構40の回転テーブル45上にシート本体20が設置されている。また、回転テーブル45と前後スライドベース35間には、シート本体20が車両前向きの着座位置にある状態で、シート本体20の水平回転をロックする回転ロック装置50が設けられている。
【0020】
<回転ロック装置50の概要について>
回転ロック装置50は、
図1、及び
図4に示すように、回転テーブル45の下面に設けられたロック機構本体部51と、前後スライドベース35上に設けられて、シート本体20が車両前向きの着座位置にあるときに、ロック機構本体部51が係合するストライカ58とを備えている。また、回転ロック装置50は、
図4に示すように、ロック機構本体部51とストライカ58との係合を解除するロック解除機構70を備えている。さらに、回転ロック装置50は、
図5等に示すように、シート本体20が回転可能位置まで前後スライドした状態で、ロック解除機構70の第2操作レバー71を操作可能位置までホップアップさせるホップアップ機構80を備えている。
【0021】
<ロック機構本体部51について>
ロック機構本体部51は、
図1、
図4に示すように、回転テーブル45の下面に固定される固定ブラケット52を備えている。なお、
図4では、回転テーブル45は省略されている。固定ブラケット52の下側には、フック55の中央部がロック位置(
図4参照)とロック解除位置間で水平回動が可能なように連結されている。さらに、固定ブラケット52とフック55間には、
図4に示すように、フック55をロック位置方向に付勢するコイルバネ54が装着されている。また、フック55の一端側には、前後スライドベース35上のストライカ58と係合可能な爪部55kが形成されており、フック55の他端側にロック解除機構70のワイヤー73が連結されるワイヤー受け部55wが形成されている。また、固定ブラケット52には、ロック解除機構70のワイヤー支持用のチューブ74の端部が連結されるチューブ受け部52uが設けられている。そして、固定ブラケット52のチューブ受け部52uがフック55のワイヤー受け部55wと対向する位置に配置されている。
【0022】
<ストライカ58について>
ストライカ58は、
図4に示すように、前後スライドベース35上の予め決められた位置に固定されている。ストライカ58は、ロック機構本体部51のフック55(爪部55k)が係合する縦ピン58pと、縦ピン58pを支持する支持ブラケット58bとから構成されている。そして、ストライカ58の縦ピン58pは、シート本体20が車両前向きの着座位置にあるときに、ロック機構本体部51のフック55が係合する位置に位置決めされている。上記構成により、シート本体20(回転テーブル45)が車両前向きの着座位置まで水平回動する過程で、ロック位置にあるフック55の爪部55kがコイルバネ54のバネ力でストライカ58と係合するようになる(ロック状態)。
【0023】
<ロック解除機構70について>
ロック解除機構70は、
図2~
図4に示すように、シート本体20のシートクッション20cの前部右側面に設けられた第2操作レバー71と、第2操作レバー71と一体で回動する解除リンク72と、ワイヤー73及びワイヤー支持用のチューブ74とを備えている。第2操作レバー71は、例えば、シート本体20に着座している乗員が指を掛けて引き上げることでロック解除操作を行うレバーである。第2操作レバー71は、
図3に示すように、シートクッション20cの前後方向に延びる回転中心軸71jによってクッションフレーム20fに上下回動可能な状態で連結されている。
【0024】
解除リンク72は、
図4に示すように、第2操作レバー71の上下回動動作をワイヤー73に伝達するとともに、ホップアップ機構80(後記する)からのホップアップ力を受けるレバーである。解除リンク72の上端部は、第2操作レバー71と共に回転中心軸71jによってシートクッション20cのクッションフレーム20fに上下回動可能な状態で連結されている。また、解除リンク72の中央部が連結ピン71zによって第2操作レバー71の端部に連結されている。これにより、解除リンク72は、第2操作レバー71と一体で回転中心軸71jを中心に上下回動が可能になる。また、解除リンク72の下端部には、
図4に示すように、ワイヤー73の一端側が連結されるワイヤー引き止め用長穴72eが形成されている。
【0025】
ワイヤー73は、解除リンク72の下端部(ワイヤー引き止め用長穴72e)の動きをロック機構本体部51のフック55に伝達する部材である。ワイヤー73の一端側は、上記したように、解除リンク72の下端部のワイヤー引き止め用長穴72eに連結されている。また、ワイヤー73を支持するチューブ74の一端側が、
図4に示すように、解除リンク72の下端部の移動延長線上に設けられたクッションフレーム20fのチューブ受け部75に連結されている。さらに、ワイヤー73の他端側はロック機構本体部51のフック55のワイヤー受け部55wに連結されており、チューブ74の他端側がロック機構本体部51の固定ブラケット52のチューブ受け部52uに連結されている。
【0026】
上記構成により、シート本体20側で第2操作レバー71が操作されてワイヤー73が引っ張られると(
図4黒太矢印参照)、固定ブラケット52のチューブ受け部52uに対してフック55のワイヤー受け部55wが接近する。この結果、フック55が固定ブラケット52に対してコイルバネ54のバネ力に抗して
図4において右回動し、ロック位置からロック解除位置まで移動する。これにより、フック55の爪部55kは、ストライカ58から外れるようになる(ロック解除状態)。
【0027】
<ホップアップ機構80について>
ホップアップ機構80は、シート本体20がそのシート本体20の回転可能位置までスライドした状態で、ロック解除機構70の第2操作レバー71を操作可能位置までホップアップ(上回動)させる機構である。ホップアップ機構80は、
図5等に示すように、シート本体20が回転可能位置までスライドしたことを検知する位置検知機構80dと、位置検知機構80dの動作を第2操作レバー71(解除リンク72)に伝達する伝達機構80tとから構成されている。
【0028】
位置検知機構80dは、
図5に示すように、前後スライド機構30のロアレール32の側面に固定されたカム81と、前後スライドベース35の下面に設けられたカムフォロア82とを備えている。カム81は、山形の板状体であり、そのカム81の端縁に沿ってカム面81cが形成されている。カムフォロア82は、略台形をした板状体であり、台形の下底に相当する中央部にそのカムフォロア82を水平回動可能な状態で前後スライドベース35の下面に連結する縦軸82jが設けられている。
【0029】
また、カムフォロア82には、台形の下底に相当する端部にカム81のカム面81cに沿って移動可能なカムフォロア本体部82fが縦ピン状に設けられている。さらに、カムフォロア82には、台形の上底に相当する位置に伝達機構80tのワイヤー83の一端が連結されるワイヤー引き止め用長穴82eが形成されている。そして、シート本体20が回転可能位置までスライドする過程で、
図6に示すように、カムフォロア82のカムフォロア本体部82fがカム81のカム面81cに沿ってカム面81cの頂点方向に移動し、カムフォロア82が縦軸82jの軸心回りに右回動(
図6の矢印参照)するようになる。
【0030】
伝達機構80tは、上記したように、位置検知機構80dの動作を第2操作レバー71(解除リンク72)に伝達する機構であり、
図5等に示すように、第1リンク87と、第2リンク88と、ワイヤー83、及びワイヤー支持用のチューブ84とを備えている。第1リンク87は、解除リンク72を介して第2操作レバー71を操作可能位置まで上回動させるリンクである。第1リンク87は、
図3、及び
図5に示すように、第2操作レバー71の回転中心軸71jと平行なレバー用回転中心軸89によってクッションフレーム20fの前面に上下回動可能な状態で連結されている。また、第1リンク87の右上角部には、その第1リンク87を厚み方向(前後方向)に貫通するように押圧ピン87pが形成されており、その押圧ピン87pの外周面が解除リンク72の左端面72xに当接している。
【0031】
これにより、第1リンク87がレバー用回転中心軸89の回りに左回動すると、
図6に示すように、押圧ピン87pが解除リンク72の左端面72xを右方向に押圧し、解除リンク72及び第2操作レバー71が回転中心軸71jの回りを右回動(上回動(ホップアップ))する。また、第1リンク87の右上角部には、
図3に示すように、バネ受け87yが形成されており、そのバネ受け87yに第1リンク87を原位置(右回動限位置)に保持する保持バネ87bが接続されている。
【0032】
第2リンク88は、ワイヤー83により伝達されたカムフォロア82の動きを第1リンク87に対して力伝達用コイルバネ89b(後記する)を介して伝達するリンクである。第2リンク88は、
図3、及び
図5に示すように、第1リンク87と共にレバー用回転中心軸89によってクッションフレーム20fの前面に上下回動可能な状態で連結されている。また、第2リンク88の上端位置には、第1リンク87のピン状ストッパ87sの側面に当接することで、その第2リンク88の右回動を止める回動ストッパ88sが形成されている。さらに、レバー用回転中心軸89の回りには、第1リンク87に対して第2リンク88をレバー用回転中心軸89の回りに右回動させるように付勢された前記力伝達用コイルバネ89bが装着されている。
【0033】
これにより、第2リンク88は、力伝達用コイルバネ89bの働きでその第2リンク88の回動ストッパ88sが第1リンク87のピン状ストッパ87sに当接する右回動限位置に保持されている。即ち、第1リンク87と第2リンク88とは、力伝達用コイルバネ89bのバネ力と回動ストッパ88s、ピン状ストッパ87sの働きにより、相対回転不能に保持されている。ここで、前記力伝達用コイルバネ89bのバネ力は、前記保持バネ87bのバネ力よりも十分に大きな値に設定されている。また、第2リンク88の下端部には、ワイヤー83の一端側が接続されるワイヤー引き止め用長穴88eが形成されている。
【0034】
ワイヤー83は、カムフォロア82の動きを第2リンク88に伝達する部材である。ワイヤー83の一端側は、上記したように、第2リンク88の下端部のワイヤー引き止め用長穴88eに連結されている。また、ワイヤー83を支持するチューブ84の一端側が、
図5に示すように、第2リンク88の下端部の移動延長線上に設けられたクッションフレーム20fのチューブ受け部88uに連結されている。さらに、ワイヤー83の他端側はカムフォロア82のワイヤー引き止め用長穴82eに連結されており、チューブ84の他端側が前後スライドベース35の下面においてカムフォロア82の近傍に設けられたチューブ受け部82uに連結されている。
【0035】
これにより、
図6に示すように、カム81のカム面81cとカムフォロア本体部82fとの働きでカムフォロア82が縦軸82jの回りを右回動すると、ワイヤー83の他端側が引っ張られて第2リンク88はレバー用回転中心軸89の回りを左回動する(矢印参照)。ここで、第1リンク87と第2リンク88とは、力伝達用コイルバネ89bのバネ力と、回動ストッパ88s、ピン状ストッパ87sの働きにより相対回転不能に保持(一体化)されている。また、力伝達用コイルバネ89bのバネ力は保持バネ87bのバネ力よりも十分に大きな値に設定されている。このため、第2リンク88がレバー用回転中心軸89の回りを左回動すると、第1リンク87も保持バネ87bのバネ力に抗して第2リンク88と共にレバー用回転中心軸89の回りを左回動する。この結果、第1リンク87の押圧ピン87pが解除リンク72の左端面72xを右方向に押圧し、解除リンク72及び第2操作レバー71が回転中心軸71jの回りを右回動してホップアップする。
【0036】
<車両用シート装置10の取り扱いについて>
車両用シート装置10のシート本体20が車両前向きの着座位置にある状態では、
図4に示すように、ロック機構本体部51のフック55がストライカ58の縦ピン58pと係合しており、シート本体20は回転不能に保持されている。この状態では、シート本体20は前後スライド機構30により前後スライドのみが可能になる。このため、第1操作レバー37を上方に引き操作して多段式ロック機構のロック状態を解除すれば、シート本体20に対して前後方向に力を加えることで、前後スライド機構30の働きによりシート本体20の前後位置調整できる。
【0037】
シート本体20をドア開口部側に水平回転させる場合には、第1操作レバー37を上方に引き操作してシート本体20を回転可能位置までスライドさせる。なお、
図5、
図6の黒太矢印はシート本体20のスライド方向を表している。シート本体20のスライド過程でシート本体20が回転可能位置に近づくと、
図5、
図6に示すように、前後スライドベース35に設けられたカムフォロア82のカムフォロア本体部82fがロアレール32(フロア側)に設けられたカム81のカム面81cに沿って移動する。これにより、カムフォロア82は、縦軸82jを中心に右回動する。この結果、
図6に示すように、ワイヤー83がカムフォロア82によって右方向(矢印方向)に引っ張られ、第2リンク88はレバー用回転中心軸89の回りを左回動する(矢印参照)。
【0038】
前述のように、第1リンク87と第2リンク88とは、力伝達用コイルバネ89bのバネ力と回動ストッパ88s、ピン状ストッパ87sの働きにより一体化されており、さらに力伝達用コイルバネ89bのバネ力は保持バネ87bのバネ力よりも十分に大きな値に設定されている。このため、第2リンク88がレバー用回転中心軸89の回りを左回動すると、第1リンク87も保持バネ87bのバネ力に抗して第2リンク88と共にレバー用回転中心軸89の回りを左回動する。この結果、第1リンク87の押圧ピン87pが解除リンク72の左端面72xを右方向に押圧し、解除リンク72及び第2操作レバー71が回転中心軸71jの回りを右回動する。そして、シート本体20が回転可能位置に到達すると、第2操作レバー71が操作可能位置まで上回動(ホップアップ)する。これにより、乗員はシート本体20が回転可能位置まで到達したことを把握できる。この状態で、第1操作レバー37を離すことで多段式ロック機構がロック状態となり、シート本体20の前後スライドが禁止される。
【0039】
次に、ホップアップした第2操作レバー71を引き上げて、
図4に示す状態から回転中心軸71jの回りに右回動させることで、ワイヤー73がロック機構本体部51のフック55のワイヤー受け部55wを引っ張り、フック55がコイルバネ54のバネ力に抗してロック位置からロック解除位置まで回動する。これにより、フック55の爪部55kがストライカ58の縦ピン58pから外れ、回転ロック装置50のロック状態が解除される。この状態で、シート本体20を車両前向きの着座位置からドア開口部側を向く乗降位置まで水平回動させることができる。ここで、シート本体20がスライドにより回転可能位置から離れると、
図5に示すように、カムフォロア82がカム81から離れるため、第1リンク87と第2リンク88とは保持バネ87b(
図3参照)のバネ力で原位置に戻される。
【0040】
次に、第2操作レバー71がホップアップしないように押さえた状態(誤操作)でシート本体を回転可能位置までスライドさせた場合について説明する。この場合でも、シート本体20が回転可能位置に近づくと、
図7に示すように、前後スライドベース35に設けられたカムフォロア82のカムフォロア本体部82fがロアレール32(フロア側)に設けられたカム81のカム面81cに沿って移動する。これにより、カムフォロア82は、縦軸82jを中心に右回動する。これにより、ワイヤー83がカムフォロア82によって右方向(矢印方向)に引っ張られ、第2リンク88はレバー用回転中心軸89の回りを左回動する(矢印参照)。しかし、第2操作レバー71がホップアップしないように押さえられているため、第2操作レバー71と一体化された解除リンク72も回動不能に保持されている。このため、第1リンク87は、第2リンク88と共に左回動することはできず、この位置に保持される。即ち、第2リンク88は、第1リンク87に対し、力伝達用コイルバネ89bのバネ力に抗して左回動するようになる。したがって、カムフォロア82の回動動作は力伝達用コイルバネ89bが変形することで吸収される。このため、第2操作レバー71がホップアップしないような誤操作が行われた場合でも、カムフォロア82、第1リンク87、第2リンク88、ワイヤー83等に無理な力が加わらなくなり、損傷を防止できる。
【0041】
<実施形態で使用された用語と本発明の用語との対応>
前後スライド機構30のロアレール32が本発明の前後スライド機構の固定側に相当し、前後スライドベース35が本発明の前後スライド機構の可動側に相当する。また、多段式ロック機構が本発明のスライドロック機構に相当する。さらに、回転機構40が本発明の位置変更動作機構に相当し、回転ロック装置50が本発明の位置変更動作ロック機構に相当する。また、位置検知機構80dのカムフォロア82が本発明の位置検知機構の可動部に相当する。また、伝達機構80tの力伝達用コイルバネ89bが本発明の第1リンクと第2リンクとの連結位置に設けられた弾性体に相当する。また、伝達機構80tの第1リンク87と第2リンク88と力伝達用コイルバネ89bとが本発明の伝達解除手段に相当する。
【0042】
<本実施形態に係る車両用シート装置10の長所について>
本発明によると、シート本体20が回転可能位置まで前後スライドした状態で、シート本体20の回転ロック(位置変更動作ロック)を解除する第2操作レバー71が操作可能位置までホップアップする。このため、シート本体20の回転ロックを解除する第2操作レバー71の操作タイミングを容易に把握できる。また、外力で第2操作レバー71が操作可能位置までホップアップできない状態であっても、位置検知機構80dのカムフォロア82(可動部)が待機位置から使用位置まで回動する動作が力伝達用コイルバネ89b(弾性体)で吸収される。この結果、伝達機構80t、及び位置検知機構80dに無理な荷重が加わらず、損傷を防止できる。
【0043】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、カム81とカムフォロア82とからなる位置検知機構80dによりシート本体20が回転可能位置までスライドしたことを検知し、カムフォロア82の動作を伝達機構80tにより第2操作レバー71に伝達して第2操作レバー71をホップアップさせる例を示した。しかし、シート本体20が回転可能位置までスライドしたことを、例えば、センサにより検知し、第2操作レバー71をモータ等で電気的にホップアップさせる構成でも可能である。また、本実施形態では、位置変更動作機構の一例として回転機構40を例示した。しかし、位置変更動作機構としてシートアレンジ機構等を使用することも可能である。また、第2操作レバー71を操作可能位置までホップアップさせる例を示したが、例えば、第2操作レバー71を操作可能位置までスライド等させる構成でも可能である。
【符号の説明】
【0044】
10・・・・車両用シート装置
20・・・・シート本体
30・・・・前後スライド機構
32・・・・ロアレール(前後スライド機構の固定側)
33・・・・アッパレール
35・・・・前後スライドベース(前後スライド機構の可動側)
37・・・・第1操作レバー
40・・・・回転機構(位置変更動作機構)
50・・・・回転ロック装置(位置変更動作ロック機構)
71・・・・第2操作レバー
80d・・・位置検知機構
81・・・・カム
81c・・・カム面
82・・・・カムフォロア(可動部)
82f・・・カムフォロア本体部
80t・・・伝達機構
87・・・・第1リンク(伝達解除手段)
88・・・・第2リンク(伝達解除手段)
89b・・・力伝達用コイルバネ(弾性体、伝達解除手段)