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特許7116884改善された光感受性を有するチャネルオプシン変異体における突然変異の特定及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】改善された光感受性を有するチャネルオプシン変異体における突然変異の特定及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/29 20060101AFI20220804BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220804BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220804BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220804BHJP
   C12N 13/00 20060101ALI20220804BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20220804BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220804BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220804BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20220804BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20220804BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220804BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220804BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220804BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20220804BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220804BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220804BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220804BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
C12N15/29
C12N5/10 ZNA
C12N15/63 Z
C12Q1/02
C12N13/00
C07K14/705
A61P17/02
A61P9/00
A61P19/00
A61P25/08
A61P3/00
A61P9/10
A61P27/02
A61P27/16
A61P25/00
A61K31/7088
A61P43/00 111
A61K38/16
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019531572
(86)(22)【出願日】2017-08-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017049158
(87)【国際公開番号】W WO2018044912
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-17
(31)【優先権主張番号】62/380,871
(32)【優先日】2016-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399029721
【氏名又は名称】ウェイン・ステイト・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パン,チュオ-ファ
(72)【発明者】
【氏名】ガンジャワラ,トゥーシャー
(72)【発明者】
【氏名】ルー,チー
(72)【発明者】
【氏名】アブラムズ,ゲアリー
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0223679(US,A1)
【文献】特表2016-519063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C07K
C12N 5/00-28
C12Q
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CAPLUS/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された光で活性化されるイオンチャネルポリペプチドであって、
配列番号3、5、6、および8~10のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、
前記光で活性化されるイオンチャネルポリペプチドが、細胞膜で発現され、活性化光に接触されると、配列番号2の光で活性化されるイオンチャネルポリペプチドと比べて高いレベルのイオン流及び高いレベルのプロトン流の少なくとも一方を有する、
前記単離された光で活性化されるイオンチャネルポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチドを含む細胞。
【請求項3】
請求項1に記載のポリペプチドをコードする、核酸分子。
【請求項4】
前記核酸分子がプロモーター配列に操作可能に連結される、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項5】
請求項3または4に記載の核酸分子を含む細胞。
【請求項6】
前記細胞が試験管内、生体外、または生体内にある、請求項2または5に記載の細胞。
【請求項7】
前記細胞が、光受容体細胞、双極細胞、桿体双極細胞、ON型錐体双極細胞、網膜神経節細胞、光感受性網膜神経節細胞、水平細胞、アマクリン細胞、またはAIIアマクリン細胞である、請求項2、5または6に記載の細胞。
【請求項8】
請求項3または4に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項9】
前記ベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである、請求項8に記載の発現ベクター。
【請求項10】
前記ベクターが、組換えAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11又はAAV12ベクターである、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項11】
前記核酸分子が、配列番号10のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、請求項8~10のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項12】
前記ベクターが、AAV2ベクターである、請求項11に記載の発現ベクター。
【請求項13】
膜の導電率を変える試験管内の方法であって、
a.宿主の膜にて請求項1に記載のポリペプチドを発現させることと、
b.好適な条件下で前記ポリペプチドを光に接触させて前記宿主の膜の導電率を変化させることと
を含む、前記方法。
【請求項14】
前記宿主の膜が、神経細胞、神経系の細胞、心臓細胞、循環細胞、視覚系の細胞または聴覚系の細胞の細胞膜である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載のポリペプチド、請求項3もしくは4に記載の核酸分子、または請求項8~12のいずれか一項に記載の発現ベクターを含む医薬組成物。
【請求項16】
対象にて視力を改善するまたは回復させる方法における使用のための、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記対象が、眼疾患、負傷、脳損傷、脊髄損傷、てんかん、代謝性障害、心機能不全、視力喪失、失明、難聴、聴覚喪失、または神経学的状態からなる群から選択される疾患または状態を患っている、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記対象が黄班変性症または網膜色素変性症から選択される眼疾患を患っている、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記視力を改善するまたは回復させることが、以下:
光感受性を高めること;
光電流を誘起するのに必要とされる閾値光強度を下げること;及び
視覚野における視覚誘発電位を高めること
のいずれか1以上を含む、請求項16~18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記組成物が硝子体内または網膜下の注射によって投与される、請求項16~19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その内容が全体として参照によって本明細書に組み入れられる2016年8月29日に出願された米国仮特許出願第62/380,871号に対する米国特許法119条(c)のもとでの優先権を主張する。
【0002】
政府の支援
本発明は、国立衛生研究所/国立眼病研究所の助成金NIH EY17130のもとで米国政府の支援によって行われた。政府は本発明に特定の権利を有する。
【0003】
0
電子出願されたテキストファイルの説明
添えて電子出願されたテキストファイル:配列表のコンピュータ可読形式のコピー(ファイル名:2017年8月29日と日付が記録された24kbのファイルサイズのRTRO-707/001WO_SeqList_ST25.txt)の内容は全体として参照によって本明細書に組み入れられる。
【0004】
技術分野
本発明は一般に分子生物学の分野に関する。チャネルオプシン変異体遺伝子(CoChop)における突然変異が特定される。突然変異体CoChop遺伝子を含む組成物が治療方法で使用される。たとえば、突然変異体CoChop遺伝子を含む組成物は視力喪失を改善し、且つ回復させる。
【背景技術】
【0005】
網膜は光受容体(または光受容体細胞、桿体視細胞及び錐体視細胞)で構成される。光受容体は、最終的に私たちの世界の表現を生成する、光情報伝達、または視覚系の中で事象のカスケードを伝える電気信号及び化学信号への光の変換(電磁放射の形態での)に関与する高度に特殊化されたニューロンである。
【0006】
光受容体の喪失または変性は、網膜内での視覚情報の光情報伝達を完全に抑制するとまでいかなくても重度に損なう。光受容体細胞の喪失及び/または光受容体細胞機能の喪失は、視力の低下、光感受性の低下及び失明の主要な原因である。視力喪失を経験している対象の網膜の光感受性を回復させる組成物及び方法に対する当該技術での長年にわたる切実なニーズがある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、配列番号2のアミノ酸配列及び1以上のアミノ酸修飾を有する単離された光によって活性化されるイオンチャネルポリペプチドを提供する。本明細書で開示されているCoChR突然変異体(たとえば、突然変異体CoChop)の利点は、これらの突然変異体ポリペプチドが野生型CoChR(配列番号2)よりも活性化について少ない光を必要とすることである。従って、同じ光強度では、野生型よりも高レベルのイオン流及び/またはプロトン流が突然変異体CoChRポリペプチドで観察される。一部の実施形態では、細胞膜で発現され、活性化光(たとえば、活性化の閾値を上回る)に接触させた際、配列番号2の光で活性化されるイオンチャネルポリペプチドと比べて、光で活性化されるイオンチャネルポリペプチドは高レベルのイオン流及び高レベルのプロトン流の少なくとも一方を有する。光で活性化されるイオンチャネルポリペプチドは配列番号3~10のいずれか1つのアミノ酸配列を有する。任意で、ポリペプチドはさらに、1以上の、たとえば、置換、欠失または挿入のようなアミノ酸修飾を含む。
【0008】
別の態様では、本発明は本発明のポリペプチドをコードする単離された核酸分子を提供する。任意で、核酸配列はプロモーター配列に操作可能に連結される。本発明に含まれるのはまた、本発明に係る核酸を含有するベクターである。
【0009】
本発明に含まれるのはまた、本発明に係るポリペプチドまたは核酸を含有する細胞である。細胞は、たとえば、光受容体、双極細胞、桿体双極細胞、ON型錐体双極細胞、網膜神経節細胞、光感受性網膜神経節細胞、水平細胞、アマクリン細胞、またはAIIアマクリン細胞である。細胞は、試験管内、生体外または生体内にある。
【0010】
他の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドを宿主の膜で発現させ、好適な条件下でポリペプチドを光に接触させて宿主の膜の導電率を変化させることによって膜の導電率を変える方法を提供する。宿主の膜は、たとえば、神経細胞、神経系の細胞、心臓細胞、循環細胞、視覚系の細胞、または聴覚系の細胞の細胞膜のような細胞膜である。
【0011】
さらなる態様では、本発明は、それを必要とする対象に治療上有効な量の本発明に係る核酸またはポリペプチドを投与することを含む、対象にて疾患または状態を治療する方法を提供する。疾患または状態は、たとえば、負傷、脳損傷、脊髄損傷、てんかん、代謝性障害、心機能不全、視力喪失、失明、難聴、聴覚消失、または神経学的状態である。
【0012】
さらに別の態様では、本発明は、本発明に係る核酸またはポリペプチドを対象に投与することによって、視力を改善するまたは回復させる方法を特徴とする。対象は、黄班変性症または網膜色素変性症のような眼疾患を患っている。
【0013】
視力を改善するまたは回復させることには、たとえば、光感受性を高めること;光電流を誘起するのに必要とされる閾値光強度を下げること;視覚野における視覚誘発電位を高めること;及び視運動反応のような視覚誘導行動を誘起するための閾値光強度を下げることが挙げられる。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、それを必要とする対象に本発明に係る核酸またはポリペプチドを投与することを含む、網膜色素変性症または加齢性黄班変性症を治療する方法を提供する。組成物は、硝子体内注射または網膜下注射によって投与される。
【0015】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及びクレームから明らかであろうし、それらによって包含される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】HEK細胞での記録におけるCoChR及びChR2のスペクトル曲線の比較。CoChRのピークスペクトルは約480nmであり、それはChR2のものよりもやや赤色寄りにシフトしている。
図2】HEK細胞での記録におけるCoChR及びChR2の光誘発電流の試料記録。A~D、wt-ChR2(A)、及びその3つの突然変異体、ChR2-L132C(B)、ChR2-L132C/T159C(C)、及びChR2-L132C/T159C(D)の光誘発電流。電流は、ND=0、2.5、3.0及び4.0での減光(ND)フィルターによる漸増光強度によって誘発した。赤色の出力は2.5の減光(ND)による460nmでの光によって引き出した(4.1×1015光子/cms)。E及びF、wt-CoChR(E)、及びその突然変異体、CoChR-L112C(F)の光誘発電流。赤色の出力は2.5の減光(ND)による480nmでの光によって引き出した(4.8×1015光子/cms)。
図3】HEK細胞での記録におけるwt-CoChR、及びそのさらに光感受性の突然変異体、CoChR-L112C(配列番号3)、CoChR-T139C(配列番号5)、CoChR-L112C/T139C(配列番号8)、CoChR-T145A/S146A(配列番号6)、CoChR-L112C/H94E(配列番号9)、及びCoChR-L112C/H94E/K264T(配列番号10)の電流振幅の比較。電流はND=2.5での480nmの光で誘発し(4.8×1015光子/cms)、wt-CoChRのそれに対して正規化した。データは平均値±SDとして示す。
図4】HEK細胞での記録におけるwt-CoChR、及びそのさらに光感受性の突然変異体、CoChR-L112C、CoChR-T139C、CoChR-L112C/T139C、CoChR-T145A/S146A、CoChR-L112C/H94E、及びCoChR-L112C/H94E/K264Tについての減衰時間定数(オフ速度)の比較。電流は、ND=0の10ミリ秒の光パルスによって誘発した(1.2×1018光子/cms)。データは平均値±SDとして示す。
図5】HEK細胞での記録におけるwt-CoChR、及びそのさらに光感受性の突然変異体、CoChR-L112C、CoChR-L112C/T139C、CoChR-L112C/H94E、及びCoChR-L112C/H94E/K264Tについての光誘発電流の振幅と減衰時間定数(オフ速度)の関係性。
図6】多重電極アレイ記録による網膜神経節細胞におけるChR2-L132C/T159C、wt-CoChR、及びCoChR-L112Cの光感受性の比較。光強度は減光(ND)及びプロトン/cmsで示す。
図7】ChR2-L132C/T159S及びCoChR-L112Cのウイルスベクターを注射したマウス間での回復した視運動反応の光感受性の比較のための視運動行動試験。ChR2-L132C/T159S及びCoChR-L112Cについて視運動反応を誘発するのに必要とされたスペクトル周波数と閾値光強度の関係性。実験は盲目のマウス系統を用いて実施した。視運動試験は自家製の視運動アッセイ系にて行った。光刺激は約470nmの波長を持つ青色LEDによって生成した。CoChR-L112Cを発現しているマウスについて視運動反応を誘発する閾値光強度は2~3×1013光子/cms前後であり、ChR2-L132C/T159Sを発現しているマウスについて視運動反応を誘発する閾値光強度は1~2×1014光子/cms前後であった。データは平均値±SDとして示す。
図8】視運動行動試験に基づいた、CoChR-L112Cウイルスベクターを注射したマウスについてのコントラスト感度曲線。実験は盲目のマウス系統を用いて実施した。視運動試験はバーチャル視運動系(OptoMotry;CerebralMechanics,Lethbridge,AB,Canada)にて行った。プラットフォーム内部の照度は約150luxだった。データは平均値±SDとして示す。
図9-1】AAVベクター送達が介在する網膜神経細胞におけるwt-CoChR及びCoChR-L112Cの長期の安定な発現。A及びB、ウイルス注射の1ヵ月後、蛍光画像はC57BL/6Jマウスの網膜神経節細胞におけるwt-CoChR及びその突然変異体、CoChR-L112Cの発現を示す。C及びD、ウイルス注射の6ヵ月後、蛍光画像はrd1マウスの網膜神経節細胞におけるwt-CoChR及びその突然変異体、CoChR-L112Cの発現を示す。E~G、蛍光画像は、ウイルス注射の9ヵ月後、低拡大の全載標本(E)及び高拡大(F)及び網膜縦断面(G)で見た盲目のマウス系統の網膜におけるCoChR-L112Cの発現を示す。
図9-2】図9-1の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、緑藻、Chloromonas oogamaに由来するチャネルオプシン変異体、CoChopにおける突然変異が光感受性の上昇を生じるという予想外の発見に一部において基づく。本発明に係るCoChop突然変異体のアミノ酸配列及び核酸配列は本明細書ではmCoChopと呼ばれる。野生型CoChopは、たとえば、その内容が全体として参照によって本明細書に組み入れられるWO2015/161308に記載されている。本発明に係るmCoChopのアミノ酸配列及び核酸配列は、光で活性化されるイオンチャネルが必要とされる適用で有用である。
【0018】
特定の実施形態では、本発明は、たとえば、網膜色素変性症または加齢性黄班変性症のような網膜変性疾患の治療のための組成物及び方法を特徴とする。さらに、網膜変性疾患の直接的な結果である他の疾患及び障害も本発明の方法によって治療される。たとえば、進行した網膜色素変性症及び他の網膜変性状態は黄班変性症を生じる。
【0019】
チャネルオプシン変異体、CoChopは127の藻類トランスクリプトームの新たな配列決定を介して最初に特定された。CoChopはHEK293細胞にて光電流について合成し、スクリーニングすることによって特定された(それぞれの内容が全体として参照によって組み入れられるWO2015/161308,及びKlapoetke,et al.Nature Methods,vol.11,No.3,2014を参照のこと)。
【0020】
本明細書で言及されているように、「CoChop」は、いったんレチナールに結合するとチャネルロドプシン(CoChR)を形成するチャネルオプシンをコードする遺伝子を指す。本発明の遺伝子構築物は主としてCoChop(すなわち、レチナールがない)を指し、本明細書で開示されているCoChop突然変異体(mCoChop)はすべて機能的なチャネルロドプシン(ChR)を形成する。本明細書で開示されている方法は、外来性のレチナールの有無にかかわらず、mCoChopを細胞に送達することを含んでもよい。細胞(すなわち、網膜神経細胞)でのmCoChopの発現の際、内在性で利用可能なレチナールが本発明のmCoChopタンパク質に結合して機能的な光依存性チャネルを形成することが理解される。そのようなものとして、本明細書で言及されているようなChopタンパク質はChRと同義であることもできる。
【0021】
以下の配列は、野生型CoChopの突然変異体CoChopタンパク質、ならびに本発明の上記WT及び突然変異体のChopタンパク質をコードするポリヌクレオチド、ならびに本発明の形成しているWT及び突然変異体のChRの非限定例を提供する。
【0022】
本発明はまた、CoChopの生物学的に活性がある断片または保存的アミノ酸置換または他の突然変異の変異体をコードするCoChopのタンパク質及び核酸も包含する。少なくとも1つのアミノ酸を変異させるまたは保存的に置換する、野生型CoChopの小断片も本発明で有用であってもよい。他の実施形態では、本発明のCoChopのポリペプチド及び核酸は、約275アミノ酸長、250アミノ酸長、225アミノ酸長、200アミノ酸長、175アミノ酸長、もしくは160アミノ酸長までであることができ、またはほぼその長さであることができる。
【0023】
一部の実施形態では、本開示は本明細書で開示されている1以上のCoChopポリペプチドの誘導体、変異体または突然変異体を提供する。一部の実施形態では、誘導体、変異体または突然変異体は、ネイティブのポリペプチド(配列番号2)のアミノ酸配列に比べて1以上のアミノ酸置換を含有する。一部の実施形態では、1~20のアミノ酸が置換される。一部の実施形態では、誘導体、変異体または突然変異体は、ネイティブの治療用ペプチド剤のアミノ酸配列に比べて約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10のアミノ酸置換を含有する。一部の実施形態では、誘導体、変異体または突然変異体は、ネイティブのポリペプチド(配列番号2)のアミノ酸配列に比べて1以上のアミノ酸欠失を含有する。一部の実施形態では、ネイティブのポリペプチド(配列番号2)のアミノ酸配列に比べて1~20のアミノ酸を欠失する。一部の実施形態では、誘導体、変異体または突然変異体は、ネイティブのポリペプチド(配列番号2)のアミノ酸配列に比べて約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10のアミノ酸欠失を有する。一部の実施形態では、ネイティブのポリペプチド(配列番号2)のアミノ酸配列に比べていずれかの末端で1~10のアミノ酸を欠失する。一部の実施形態では、ネイティブのポリペプチド(配列番号2)のアミノ酸配列に比べて双方の末端で1~10のアミノ酸を欠失する。一部の実施形態では、誘導体、変異体または突然変異体のアミノ酸配列はネイティブのポリペプチド(配列番号2)のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一である。一部の実施形態では、誘導体、変異体または突然変異体のアミノ酸配列はネイティブのポリペプチド(配列番号2)のアミノ酸配列に対して約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一である。
【0024】
本発明の突然変異体CoChopタンパク質はさらに遅いチャネル動態も明らかにしている。高い光感受性は遅いチャネル動態と相関することが見いだされたということは、光感受性とチャネル動態との間での二律背反を示している。本発明のChRタンパク質を形成するmCoChopタンパク質は、チャネル動態を改善してもよい、または失活速度を高めてもよい追加の突然変異または修飾も含んでもよい。特に好まれるCoChop突然変異体は光感受性の閾値とチャネル動態のバランスを取る。
【0025】
たとえば、本発明の突然変異体ChRタンパク質はチャネル開放状態の延長を介してさらに大きな光感受性を達成する。その結果、同じ光強度で活性化された場合、各突然変異体ChRのチャネルは野生型ChRチャネルよりも大きな光電流を伝導する。従って、突然変異体チャネルは、野生型ChRチャネルの活性化に必要とされるものより低い光強度によって活性化される。定量的に、突然変異体ChRタンパク質を発現している網膜神経節細胞の検出可能なスパイク活性は、野生型ChRを発現している網膜神経節細胞からスパイク活性を誘起するのに必要とされる光強度よりも1.5~2対数単位低い光強度によって誘起することができる。従って、突然変異体ChRタンパク質を活性化するのに必要とされる光強度は、正常な戸外の照明条件に近い、またはその範囲内である。
【0026】
核酸、ベクター及び組換えウイルス
本発明の一部の態様では、本開示の組成物及び方法は、それを必要とする対象または患者における細胞へのmCoChop(突然変異体CoChop)をコードする核酸の送達を提供する。場合によっては、核酸の送達は遺伝子治療と呼ばれてもよい。
【0027】
本開示の組成物及び方法は、mCoChop核酸の送達に好適な方法を提供する。場合によっては、核酸の送達は任意の好適な「ベクター」(「遺伝子送達」または「遺伝子導入」の媒体と呼ばれることもある)を用いて実施されてもよい。ベクター、送達媒体、遺伝子送達媒体、または遺伝子導入媒体は、標的細胞に送達されるポリヌクレオチドを含む任意の好適な高分子または分子の複合体を指してもよい。場合によっては、標的細胞は核酸または遺伝子が送達される任意の細胞であってもよい。送達されるポリヌクレオチドは、遺伝子治療で対象とするコーディング配列、たとえば、mCoChop遺伝子を含んでもよい。
【0028】
たとえば、好適なベクターには、たとえば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)及びレトロウイルスのようなウイルスベクター、リポソーム、他の脂質含有複合体、及びポリヌクレオチドの標的細胞への送達に介在することができる他の高分子複合体が挙げられてもよいが、これらに限定されない。
【0029】
場合によっては、ベクターは有機分子または無機分子であってもよい。場合によっては、ベクターは小分子(すなわち、<5kD)または高分子(すなわち、>5kD)であってもよい。たとえば、ベクターには、たとえば、金属粒子のような不活性の生物学的に活性がない分子が挙げられてもよいが、これらに限定されない。場合によっては、ベクターは金粒子であってもよい。
【0030】
一部の態様では、ベクターは1以上の核酸を組み込む組換えウイルスベクターを含んでもよい。本明細書に記載されているように、核酸はポリヌクレオチドを指してもよい。核酸及びポリヌクレオチドは相互交換可能に使用されてもよい。場合によっては、核酸はDNAまたはRNAを含んでもよい。一部の態様では、核酸はmCoChopの発現のためのDNAまたはRNAを含んでもよい。一部の態様では、RNA核酸には、対象とする遺伝子(たとえば、mCoChop)の転写物、イントロン、非翻訳領域、終結配列等が挙げられてもよいが、これらに限定されない。他の場合では、DNA核酸には、たとえば、ハイブリッドプロモーターの遺伝子配列、強力な構成的プロモーターの配列、対象とする遺伝子(たとえば、mCoChop)、非翻訳領域、終結配列等のような配列が挙げられてもよいが、これらに限定されない。場合によっては、DNA及びRNAの組み合わせが使用されてもよい。
【0031】
本明細書の本開示に記載されているように、用語「発現構築物」は、核酸をコードする配列の一部または全部を転写することができる遺伝子産物をコードする核酸またはポリヌクレオチドを含有する任意の種類の遺伝子構築物を含むことを意味する。転写物はタンパク質に翻訳されてもよい。一部の態様では、それは部分的に翻訳されてもよいし、または翻訳されなくてもよい。特定の態様では、発現には、遺伝子の転写及びmRNAの遺伝子産物への翻訳の双方が含まれる。他の態様では、発現には、対象とする遺伝子をコードする核酸の転写のみが含まれる。
【0032】
態様の1つでは、本開示は、たとえば、アデノ随伴ウイルス(rAAV)のような組換えウイルスをmCoChopの発現に介在するベクターとして提供する。
【0033】
場合によっては、本開示のウイルスベクターはpfu(プラーク形成単位)として測定されてもよい。場合によっては、本開示の組成物及び方法の組換えウイルスまたはウイルスベクターのpfuは約10~約5×1010pfuであってもよい。場合によっては、本開示の組換えウイルスは少なくとも約1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、及び5×1010pfuである。場合によっては、本開示の組換えウイルスは多くても約1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、及び5×1010pfuである。
【0034】
場合によっては、本開示のウイルスベクターはベクターゲノムとして測定されてもよい。場合によっては、本開示の組換えウイルスは1×1010~3×1012ベクターゲノムである。場合によっては、本開示の組換えウイルスは1×10~3×1013ベクターゲノムである。場合によっては、本開示の組換えウイルスは1×10~3×1014ベクターゲノムである。場合によっては、本開示の組換えウイルスは少なくとも約1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、1×1016、1×1017、及び1×1018ベクターゲノムである。
【0035】
場合によっては、本開示のウイルスベクターは感染多重度(MOI)を用いて測定されてもよい。場合によっては、MOIは、ベクターまたはウイルスゲノムの核酸が送達される細胞に対する比率または倍数を指してもよい。場合によっては、MOIは1×10であってもよい。場合によっては、MOIは1×10~1×10であってもよい。場合によっては、MOIは1×10~1×10であってもよい。場合によっては、本開示の組換えウイルスは、少なくとも約1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、1×1016、1×1017、及び1×1018MOIである。場合によっては、本開示の組換えウイルスは1×10~3×1014MOIである。
【0036】
一部の態様では、核酸はウイルスを使用しないで(すなわち、非ウイルス性ベクターによって)送達されてもよく、核酸の量として測定されてもよい。一般に、好適な量の核酸が本開示の組成物及び方法と共に使用されてもよい。場合によっては、核酸は少なくとも約1pg、10pg、100pg、1pg、10pg、100pg、200pg、300pg、400pg、500pg、600pg、700pg、800pg、900pg、1μg、10μg、100μg、200μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1ng、10ng、100ng、200ng、300ng、400ng、500ng、600ng、700ng、800ng、900ng、1mg、10mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1g、2g、3g、4g、または5gであってもよい。場合によっては、核酸は多くても約1pg、10pg、100pg、1pg、10pg、100pg、200pg、300pg、400pg、500pg、600pg、700pg、800pg、900pg、1μg、10μg、100μg、200μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1ng、10ng、100ng、200ng、300ng、400ng、500ng、600ng、700ng、800ng、900ng、1mg、10mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1g、2g、3g、4g、または5gであってもよい。一部の態様では、自己相補性のベクター(sc)を使用してもよい。参照によって本明細書に組み入れられるWu,Hum Gene Ther.2007,18(2):171-82によって提供されたように、自己相補性AAVベクターの使用はウイルスの第2の鎖のDNA合成についての要件を回避してもよく、導入遺伝子タンパク質の高い発現率をもたらしてもよい。
【0037】
本開示の組成物及び方法は、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、ヘルパー依存性アデノウイルス、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、センダイウイルス(HVJ)-リポソーム複合体、Moloneyマウス白血病ウイルス、及びHIV系ウイルスの少なくとも1つの使用を含むが、これらに限定されない任意の好適なウイルス核酸送達システムを提供する。好ましくは、ウイルスベクターはポリヌクレオチドに操作可能に連結される強力な真核プロモーターを含む。
【0038】
一般に、任意の好適なウイルスベクターは本開示の組成物及び方法と共に使用するのに最適化されるように操作されてもよい。たとえば、アデノウイルス(Ad)またはアデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するウイルスベクターが使用されてもよい。ヒト及び非ヒトのウイルスベクター双方を使用することができ、組換えウイルスベクターはそれがヒトにて複製欠損であってもよいように変化させることができる。ベクターがアデノウイルスである場合、ベクターはmCoChopタンパク質をコードする遺伝子に操作可能に連結されるプロモーターを有するポリヌクレオチドを含むことができ、ヒトにおいて複製欠損である。
【0039】
2つのウイルスベクターシステムの有利な特性を組み合わせるために、ハイブリッドウイルスベクターを使用してmCoChopタンパク質をコードする核酸を標的の細胞または組織に送達してもよい。ハイブリッドベクターの構築のための標準の技法は当業者に周知である。そのような技法は、たとえば、Sambrook,et al.,In Molecular Cloning:A laboratory manual.Cold Spring Harbor,N.Y.または組換えDNA技術を議論している幾つもの実験室マニュアルにて見いだすことができる。AAVとアデノウイルスITRの組み合わせを含有するアデノウイルスカプシドにおける二本鎖AAVゲノムを使用して細胞に形質導入してもよい。別の変形では、AAVベクターは、「パワー不足の」、「ヘルパー依存性の」または「高能力の」アデノウイルスベクターに配置されてもよい。アデノウイルス/AAVハイブリッドベクターはLieber,et al.,J.Virol.73:9314-9324,1999にて議論されている。レトロウイルス/アデノウイルスハイブリッドベクターはZheng,et al.,Nature Biotechnol.18:176-186,2000にて議論されている。
【0040】
アデノウイルス内に含有されたレトロウイルスゲノムは標的細胞のゲノム内に組み込んでもよく、安定な遺伝子発現を達成してもよい。
【0041】
複製欠損の組換えアデノウイルスベクターは既知の技法に従って作製することができる。Quantin,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:2581-2584(1992);Stratford-Perricadet,et al.,J.Clin.Invest.,90:626-630(1992);及びRosenfeld,et al.,Cell,68:143-155(1992)を参照のこと。
【0042】
さらに好まれるベクターには、ウイルスベクター、融合タンパク質及び化学的コンジュゲートが挙げられてもよいが、これらに限定されない。レトロウイルスベクターにはMoloneyマウス白血病ウイルス及びHIV系ウイルスが含まれる。場合によっては、HIV系ウイルスベクターが使用されてもよく、その際、HIV系ウイルスベクターは、gag及びpolの遺伝子がHIVゲノムに由来し、env遺伝子が別のウイルスに由来する少なくとも2つのベクターを含む。DNAウイルスベクターが使用されてもよい。これらのベクターには、たとえば、オルソポックスベクターまたはアビポックスベクターのようなポックスベクター、たとえば、単純ヘルペスウイルスI(HSV)ベクターのようなヘルペスウイルスベクター[参照によって本明細書に組み入れられる、Geller,A.I.et al.,J.Neurochem,64:487(1995);Lim,F.,et al.,in DNA Cloning:Mammalian Systems,D.Glover,Ed.(Oxford Univ.Press,Oxford England)(1995);Geller,A.I.et al.,Proc Natl.Acad.Sci.:U.S.A.:90 7603(1993);Geller,A.I.,et al.,Proc Natl.Acad.Sci.USA:87:1149(1990)]、アデノウイルスベクター[参照によって本明細書に組み入れられる、LeGal LaSalle,et al.,Science,259:988(1993);Davidson,et al.,Nat.Genet.3:219(1993);Yang,et al.,J.Virol.69:2004(1995)]、及びアデノ随伴ウイルスベクター[参照によって本明細書に組み入れられるKaplitt,M.G.,et al.,Nat.Genet.8:148(1994)]が挙げられる。
【0043】
本開示に従って使用することができる他のウイルスベクターには単純ヘルペスウイルス(HSV)系ベクターが挙げられる。1以上の前初期遺伝子(IE)を欠失したHSVベクターは、一般に細胞傷害性ではなく、標的細胞にて潜伏に類似する状態で持続し、効率的な標的細胞の形質導入を生じるので有利である。組換えHSVベクターはおよそ30kbの異種核酸を組み込むことができる。
【0044】
たとえば、C型レトロウイルス及びレンチウイルスのようなレトロウイルスも本開示で使用されてもよい。たとえば、レトロウイルスベクターは、参照によって本明細書に組み入れられるHu and Pathak,Pharmacol.Rev.52:493511,2000及びFong,et al.,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.17:1-60,2000によって提供されたようなマウス白血病ウイルス(MLV)に基づいてもよい。MLV系ベクターはウイルス遺伝子の代わりに8kbまでの異種(治療用)DNAを含有してもよい。参照によって本明細書に組み入れられるVigna and Naldini,J.Gene Med.5:308-316,2000及びMiyoshi,et al.,J.Virol.72:8150-8157,1998によって提供されたようなヒト免疫不全(HIV)系ベクターを含む、複製欠損レンチウイルス系ベクターを含むが、これらに限定されない追加のレトロウイルスベクターが使用されてもよい。レンチウイルスベクターは、活発に分裂している細胞及び非分裂細胞の双方に感染することができるという点で有利であってもよい。それらはまた、ヒト上皮細胞に形質導入する際、高度に効率的であってもよい。
【0045】
本開示で使用するためのレンチウイルスベクターは、ヒト及び非ヒト(SIVを含む)のレンチウイルスに由来してもよい。レンチウイルスベクターの例には、ベクターの増殖と同様にmCoChop遺伝子に操作可能に連結される組織特異的なプロモーターに必要とされる核酸配列が挙げられる。核酸配列は、ウイルスLTR、プライマー結合部位、ポリプリン配列、att部位及びカプシド被包部位を含んでもよい。
【0046】
レンチウイルスベクターは好適なレンチウイルスカプシドにパッケージされてもよい。粒子タンパク質の1つが異なるウイルスに由来する別のタンパク質に置き換えられることは「偽型化」と呼ばれる。ベクターのカプシドは、マウス白血病ウイルス(MLV)または水疱性口内炎ウイルス(VSV)を含む他のウイルスに由来するウイルスのエンベロープタンパク質を含有してもよい。VSVのGタンパク質の使用は高いベクター力価が得られ、ベクターウイルス粒子の大きな安定性を生じる。
【0047】
セムリキ森林熱ウイルス(SFV)及びシンドビスウイルス(SIN)から作られるもののようなアルファウイルス系ベクターも本開示で使用されてもよい。アルファウイルスの使用は、参照によって本明細書に組み入れられるLundstrom,K.,Intervirology,43:247-257,2000及びPerri,et al.,Journal of Virology,74:9802-9807,2000に記載されている。
【0048】
組換えの、複製欠損のアルファウイルスベクターは、高レベルの異種(治療用)遺伝子発現が可能であり、広い範囲の標的細胞に感染することができるので有利となり得る。アルファウイルスのレプリコンは、機能的な異種リガンドを、または同族の結合相手を発現している標的細胞に選択的に結合させる結合ドメインをそのビリオンの表面に表示することによって特定の細胞型に対して標的化されてもよい。アルファウイルスのレプリコンは潜伏を確立してもよいので、標的細胞における長期の異種核酸の発現を確立してもよい。レプリコンは標的細胞にて一時的な異種核酸の発現も示してもよい。
【0049】
ポックスウイルスベクターは遺伝子を細胞の細胞質に導入してもよい。アビポックスウイルスベクターは遺伝子または核酸の短期の発現のみを生じてもよい。アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター及び単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターは本開示の組成物及び方法と共に使用されてもよい。アデノウイルスベクターは一部の態様ではアデノ随伴ウイルスよりも短期の(たとえば、約1ヵ月未満)発現を生じてもよいし、はるかに長い発現を示してもよい。選択される特定のベクターは標的細胞及び治療され状態に左右されてもよい。
【0050】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は小型でエンベロープのない一本鎖DNAウイルスである。それらは非病原性のヒトパルボウイルスであり、複製については、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス及びCMVを含むヘルパーウイルスに依存してもよい。野生型(wt)AAVへの曝露は任意のヒトの病的状態を引き起こすことに関連せず、またはそのことは知られておらず、一般集団で一般的であり、アデノウイルス感染に関連して最初の10年間において通常、発生する。
【0051】
本明細書に記載されているように、「AAV」はアデノ随伴ウイルスを指し、「rAAV」は組換えアデノ随伴ウイルスを指す。
【0052】
場合によっては、野生型AAVはrep遺伝子及びcap遺伝子をコードする。rep遺伝子はウイルス複製に必要とされ、cap遺伝子はカプシドタンパク質の合成に必要とされる。選択的翻訳の開始とスプライシング部位の組み合わせを介して、小型のゲノムは4つのrep及び3つのcapの遺伝子産物を発現することができ得る。逆方向末端反復(ゲノムに隣接する145bpのITR)におけるrep遺伝子の産物及び配列はこの過程に重要であり得る。今日まで、AAVの11の血清型が単離されている。本開示の組成物及び方法は好適なAAV血清型の使用を提供する。一部の態様では、AAVは、AAV1、AAV2、AAV2.5、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、rh10、及びそれらのハイブリッドから成る群から選択される。AAV2が本開示の組成物及び方法と共に使用されてもよい。
【0053】
AAV2は最も特徴づけされている。rAAV2は、多数の動物種の眼において長期の導入遺伝子の発現に介在できることが示されている。ラットでは、rAAVが介在するレポーター遺伝子(緑色蛍光タンパク質)は注入後18ヵ月にてまだ存在した。サルでは、同じレポーター遺伝子は注入後17ヵ月にて存在した。
【0054】
ベクターは、遺伝子送達及び/または遺伝子発現をさらに調節する、またはさもなければ標的とされた細胞に有益な特性を提供する成分または機能性を含むことができる。そのような他の成分には、たとえば、細胞に結合することまたは細胞を標的とすることに影響を及ぼす成分(細胞型または組織に特異的な結合に介在する成分を含む);細胞によるベクター核酸の取り込みに影響を及ぼす成分;取り込みの後、細胞内でのポリヌクレオチドの局在化に影響を及ぼす成分(たとえば、核局在化に介在する作用物質);及びポリヌクレオチドの発現に影響を及ぼす成分が挙げられる。そのような成分にはまた、ベクターによって送達された核酸を取り込んでいる及び発現している細胞を検出するまたは選択するのに使用することができる検出可能なマーカー及び/または選択可能なマーカーのようなマーカーが挙げられてもよい。そのような成分をベクターの天然の特徴として提供することができ(たとえば、結合及び取り込みに介在する成分または機能性を有するある特定のウイルスベクターの使用)、またはベクターを修飾してそのような機能性を提供することができる。
【0055】
選択可能なマーカーは陽性、陰性、または二機能性であることができる。陽性の選択可能なマーカーはマーカーを運ぶ細胞を選択させるのに対して、陰性の選択可能なマーカーは選択的に排除されるマーカーを運ぶ細胞を認める。二機能性(すなわち、陽性/陰性)マーカーを含む種々のそのようなマーカー遺伝子が記載されている(たとえば、1992年5月29日に公開されたLupton,S.,WO92/08796;及び1994年12月8日に公開されたLupton,S.,WO94/28143を参照のこと)。陰性の選択可能なマーカーの例には、たとえば、アンピシリンまたはカナマイシンのような抗生剤に対する耐性遺伝子の包含が挙げられてもよい。そのようなマーカー遺伝子は遺伝子治療の文脈で有利であることができる追加のコントロール手段を提供することができる。多種多様なそのようなベクターが当該技術で知られており、一般に利用可能である。
【0056】
本開示の方法に適合するウイルスベクターの多くでは、1以上のプロモーターがベクターに含まれて1を超える異種遺伝子がベクターによって発現されるようにすることができる。さらに、ベクターは、標的細胞からのmCoChopタンパク質の発現を促すシグナルペプチドまたは他の部分をコードする配列を含むことができる。
【0057】
遺伝子産物をコードする核酸はプロモーターによる転写制御下にあってもよい。「プロモーター」は本明細書で提供されるとき、遺伝子の転写を開始するのに必要とされる好適なDNA配列を指す。語句「転写制御下」は、プロモーターがRNAポリメラーゼの開始及び遺伝子の発現を制御するために核酸に関して正しい位置及び配向にあることを意味する。場合によっては、プロモーターには「強力な」または構成的に活性があるプロモーターが挙げられてもよい。たとえば、CMVプロモーターは当該技術で知られる構成的に活性があるプロモーターとして使用されてもよい。場合によっては、CMVプロモーターは発現を促進するために追加の調節要素を含んでもよい。
【0058】
場合によっては、プロモーターは「弱い」プロモーター、または強力なプロモーターよりも低レベルのmCoChopタンパク質が得られる配列を指してもよい。場合によっては、プロモーターはプロモーターがmCoChopの選択的発現を主導するように使用されてもよい。場合によっては、本明細書に記載されているような他の配列との組み合わせで使用されるプロモーターまたは他の調節要素を用いて眼細胞または眼組織にてmCoChopの選択的発現を主導してもよい。
【0059】
さらに、「プロモーター」は、RNAポリメラーゼの開始部位のそばに存在してもよい任意の追加の好適な転写制御モジュールを指すのに本明細書でも相互交換可能に使用されてもよい。本開示の組成物及び方法は、導入遺伝子の発現のための任意の好適なプロモーター及び転写制御モジュールを使用してもよい。追加の転写制御モジュールには、HSVのチミジンキナーゼ(tk)及びSV40の早期転写単位のような要素が挙げられてもよいが、これらに限定されない。一般に、プロモーターは、それぞれおよそ7~20bpのDNAまたは20~5000bpのDNAから成る別個の機能的モジュールで構成されてもよく、転写活性化因子またはリプレッサータンパク質のための1以上の認識部位を含有してもよい。本開示の組成物及び方法は任意の好適な調節配列またはそれらの組み合わせを提供する。場合によっては、これらの転写制御モジュール配列はエンハンサー配列またはリプレッサー配列と呼ばれてもよく、それとして特定されてもよい。
【0060】
各プロモーターにおける少なくとも1つのモジュールが機能してRNA合成についての開始部位を配置する。一例はTATAボックスである。他の例には、TATAボックスを欠く一部のプロモーター、たとえば、哺乳類の末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子のためにプロモーター及びSV40後期遺伝子のためのプロモーター、開始の場所を固定するのに役立つ開始部位自体の基礎となる個別要素が挙げられてもよい。
【0061】
追加のプロモーター要素は転写開始の頻度を調節する。一般に、多数のプロモーターが同様に開始部位の下流で機能的要素を含有してもよいが、これらは開始部位の30~110bp下流の領域に位置する。プロモーター要素間の間隔は自由自在であってもよいことが多いので、プロモーター機能は要素が互いに対して逆転するまたは移動する場合、維持される。たとえば、tkプロモーターでは、プロモーター要素間の間隔は活性が低下し始める前に50bp離れるように増やすことができる。プロモーターに応じて、個々の要素は共同してまたは独立して機能して転写を活性化するように配置してもよい。
【0062】
本開示の組成物及び方法は標的とされる細胞における対象とする核酸配列の発現の制御のための任意の好適な配列を提供する。従って、ヒト細胞が標的とされる場合、核酸がコードする領域は、ヒト細胞で発現することが可能であるプロモーターに隣接し、その制御下にあるように操作されてもよい。一般に、そのようなプロモーターはヒトまたはウイルスのプロモーターを含んでもよい。
【0063】
本開示の種々の態様では、ヒトのサイトメガロウイルス(CMV)前早期(IE)エンハンサー、ニワトリのβ-アクチンのプロモーター、ニワトリのβ-アクチンのエキソン1、ハイブリッドのニワトリβ-アクチンとウサギβ-グロビンのイントロン、サルウイルス40のポリアデニル化シグナルを用いて対象とするコーディング配列(たとえば、mCoChop)の高レベルの発現を得ることができる。
【0064】
対象とするコーディング配列の発現を達成することが当該技術で周知である他のウイルスまたは哺乳類細胞または細菌ファージのプロモーターの使用は、発現のレベルが所与の目的に十分であるという条件で同様に熟考される。一部の態様では、たとえば、T7RNAポリメラーゼプロモーター配列のような原核細胞の調節配列がベクターに存在してもよい。他の態様では、ベクターはそのような調節配列を含まない。既知の特性を持つプロモーターを採用することによって、形質移入または形質転換に続く対象とするタンパク質の発現のレベル及びパターンを最適化することができる。
【0065】
特定の生理的なシグナルまたは合成シグナルに応答して調節されるプロモーターの選択は遺伝子産物の誘導性発現を可能にすることができる。たとえば、マルチシストロンベクターが利用されるとき、導入遺伝子(複数可)の発現が、ベクターが作られる細胞にて毒性である場合、導入遺伝子の1以上の発現を禁止するまたは低減することが望ましくてもよい。産生細胞株に対して毒性であってもよい導入遺伝子の例は、アポトーシス誘発性遺伝子及びサイトカイン遺伝子である。導入遺伝子産物が毒性であってもよい場合、幾つかの誘導性プロモーター系がウイルスベクターの産生に利用可能である。本開示の組成物及び方法はプロモーター配列、調節配列及び導入遺伝子の任意の好適な組み合わせを提供する。場合によっては、配列の組み合わせは細胞に対する非毒性を生じてもよい。場合によっては、配列の組み合わせは細胞に対する高い毒性を生じてもよい。場合によっては、配列の組み合わせは細胞における中等度のレベルの毒性を生じてもよい。
【0066】
一部の状況では、遺伝子治療ベクターにて導入遺伝子の発現を調節することが望ましくてもよい。たとえば、所望の発現レベルに応じて、様々な活性強度を持ついろいろなウイルスプロモーターが利用されてもよい。哺乳類細胞では、CMVの前初期プロモーターを使用して強力な転写活性化を提供してもよい。あまり強力ではないCMVプロモーターの修飾型も、導入遺伝子の低下した発現レベルが所望である場合、使用されている。造血細胞における導入遺伝子の発現が所望である場合、MLVまたはMMTVに由来するLTR(長い末端反復)のようなレトロウイルスプロモーターが使用されることが多い。所望の効果に応じて使用されてもよい他のウイルスプロモーターには、SV40、RSVのLTR、HIV-1及びHIV-2のLTR、たとえば、E1A、E2AまたはMLPの領域に由来するようなアデノウイルスプロモーター、AAVのLTR、カリフラワーモザイクウイルス、HSV-TK、及び鳥類肉腫ウイルスが挙げられる。
【0067】
場合によっては、プロモーターまたは調節配列の要素を用いて眼細胞または眼組織における選択的発現を指向してもよい。たとえば、網膜色素上皮細胞のような特定の眼細胞型で見いだされるプロモーター、配列要素または調節配列を好適な発現構築物で使用してもよい(たとえば、RPE65またはVMD2プロモーター)。
【0068】
適当なプロモーターの選択は容易に達成することができる。場合によっては、高発現の、または強力なプロモーターが使用されてもよい。
【0069】
たとえば、tat遺伝子及びtar要素のような高レベルの発現を生じるエンハンサーまたはシステムのような発現を高めることができる他の要素も含めることができる。次いでこのカセットをベクター、たとえば、pUC19、pUC118、pBR322のようなプラスミドベクター、または、たとえば、E.coliの複製開始点を含む他の既知のプラスミドベクターに挿入することができる。Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory press,(1989)を参照のこと。プロモーターは以下で議論されている。マーカーポリペプチドが治療される生物の代謝に有害に影響を及ぼさないという条件で、プラスミドベクターはアンピシリン耐性のためのベータ・ラクタマーゼ遺伝子のような選択可能なマーカーも含んでもよい。カセットは、参照によって本明細書に組み入れられるWO95/22618にて開示されたシステムのような合成送達システムにて核酸結合部分にも結合することができる。一般に、プロモーター配列及び/または関連する調節配列は少なくとも約150bp、200bp、300bp、400bp、500bp、600bp、700bp、800bp、900bp、1000bp、2000bp、3000bp、4000bp、5000bpまたは10000bpを含んでもよい。プロモーター配列及び任意の関連する調節配列は多くても約150bp、200bp、300bp、400bp、500bp、600bp、700bp、800bp、900bp、1000bp、2000bp、3000bp、4000bp、5000bpまたは10000bpを含んでもよい。
【0070】
一部の態様では、組換えのウイルスまたはプラスミドはサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、及びMMTプロモーター、EF-1アルファプロモーター、UB6プロモーター、ニワトリβ-アクチンプロモーター、CAGプロモーター、RPE65プロモーター、及びオプシンプロモーターから選択されるプロモーターを含む。
【0071】
一部の態様では、抗生剤マーカーは組換えウイルスの作製の過程で使用される。抗生剤耐性マーカーを使用して組換えウイルスの生成にて陽性のトランスジェニック細胞を特定してもよい。たとえば、耐性を付与するマーカーには、カナマイシン、ゲンタマイシン、アンピシリン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ドキシサイクリンまたはハイグロマイシンが挙げられてもよいが、これらに限定されない。一部の態様では、抗生剤耐性遺伝子は、たとえば、カナマイシンのような非ベータ-ラクタム抗生剤耐性遺伝子である。
【0072】
一部の態様では、組換えウイルス及び/また組換えウイルスを生成するのに使用されるプラスミドは本明細書で提供されるもののような複製開始点配列をコードする配列を含む。複製開始点配列は一般にプラスミドを増やすのに有用な配列を提供する。
【0073】
一部の態様では、組換えウイルス及び/また組換えウイルスを生成するのに使用されるプラスミドは、たとえば、本明細書で提供されるもののようなエンハンサーを含む。好ましくは、エンハンサーはCMVの前初期エンハンサーである。
【0074】
一部の態様では、組換えウイルス及び/また組換えウイルスを生成するのに使用されるプラスミドは、たとえば、本明細書で提供されるもののようなポリA(ポリアデニル化)配列(たとえば、SV40ポリA配列)を含む。一般に、任意の好適なポリA配列は導入遺伝子(すなわち、mCoChop)の所望の発現に使用されてもよい。たとえば、場合によっては、本開示はSV40ポリA配列またはSV40ポリA配列の一部を含む配列を提供する。場合によっては、本開示は1以上のポリA配列または配列要素の組み合わせを含むポリA配列を提供する。場合によっては、ポリA配列は使用されない。場合によっては、1以上のポリA配列は、非翻訳領域(UTR)、3’UTR、または終結配列と呼ばれてもよい。好ましくは、SV40のポリA配列が使用される。
【0075】
ポリA配列は、長さで1~10bp、10~20bp、20~50bp、50~100bp、100~500bp、500bp~1Kb、1Kb~2Kb、2Kb~3Kb、3Kb~4Kb、4Kb~5Kb、5Kb~6Kb、6Kb~7Kb、7Kb~8Kb、8Kb~9Kb、及び9Kb~10Kbの長さを含んでもよい。ポリA配列は、長さで少なくとも1bp、2bp、3bp、4bp、5bp、6bp、7bp、8bp、9bp、10bp、20bp、30bp、40bp、50bp、60bp、70bp、80bp、90bp、100bp、200bp、300bp、400bp、500bp、600bp、700bp、800bp、900bp、1Kb、2Kb、3Kb、4Kb、5Kb、6Kb、7Kb、8Kb、9Kb、及び10Kbの長さを含んでもよい。ポリA配列は、長さで多くても1bp、2bp、3bp、4bp、5bp、6bp、7bp、8bp、9bp、10bp、20bp、30bp、40bp、50bp、60bp、70bp、80bp、90bp、100bp、200bp、300bp、400bp、500bp、600bp、700bp、800bp、900bp、1Kb、2Kb、3Kb、4Kb、5Kb、6Kb、7Kb、8Kb、9Kb、及び10Kbの長さを含んでもよい。
【0076】
場合によっては、ポリA配列は、細胞における導入遺伝子のmRNA半減期、導入遺伝子のmRNAの安定性または転写調節を含むが、これらに限定されない、タンパク質の発現に影響を及ぼす種々のパラメーターについて最適化されてもよい。たとえば、ポリA配列を変化させて導入遺伝子のmRNA転写物を増やしてもよく、それは高いタンパク質発現を生じ得る。場合によっては、ポリA配列を変化させて導入遺伝子のmRNA転写物の半減期を減らしてもよく、それは低いタンパク質発現を生じてもよい。
【0077】
本開示のある特定の態様では、内部リボソーム進入部位(IRES)または手足口病ウイルス(FMDV)要素の使用を用いて多重遺伝子またはポリシストロンメッセージを作り出してもよい。IRES要素は5’メチル化Cap依存性翻訳のリボソーム走査モデルを回避することができ、内部部位で翻訳を始めることができる。ピコルナウイルスファミリーの2つのメンバー(ポリオウイルス及び脳心筋炎)に由来するIRES要素が哺乳類のメッセージに由来するIRESと同様に記載されている。IRES要素は異種のオープンリーディングフレームに連結することができる。複数のオープンリーディングフレームを一緒に転写することができ、IRESによってそれぞれ分離され、ポリシストロンメッセージを作り出す。IRES要素のおかげで、各オープンリーディングフレームは効率的な翻訳のためにリボソームにアクセス可能であってもよい。単一のメッセージを転写する単一のプロモーター/エンハンサーを用いて複数の遺伝子を効率的に発現させることができる。遺伝子治療送達ベクターにおける2つのタンパク質の同時発現のための選択的なシステムはFMDV2Aシステムである。FMDV2Aシステムは、2つの遺伝子がピコルナウイルス手足口病ウイルスに由来する2A配列をコードするヌクレオチド配列に連結されてもよいレトロウイルスプラスミドベクターを採用する。転写及び翻訳によってバイシストロン性のmRNA及び2つの独立したタンパク質産物を生じさせる。
【0078】
異種のオープンリーディングフレームをIRES要素に連結することができる。これには、分泌タンパク質、独立した遺伝子によってコードされる多重サブユニットタンパク質、細胞内のまたは膜結合型のタンパク質及び選択可能なマーカーについての遺伝子が含まれてもよい。このように、幾つかのタンパク質の発現を単一の構築物及び単一の選択可能なマーカーによって細胞内にて同時に操作することができる。
【0079】
一部の態様では、組換えウイルス及び/また組換えウイルスを生成するのに使用されるプラスミドは、ヒトのmCoChopタンパク質またはその機能的断片をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0080】
一部の態様では、組換えウイルス及び/また組換えウイルスを生成するのに使用されるプラスミドは、眼細胞にてmCoChopタンパク質の選択的な発現を指向することができる調節性核酸断片を含む。
【0081】
一部の態様では、組換えウイルス及び/また組換えウイルスを生成するのに使用されるプラスミドは、1以上の非翻訳領域(UTR)または非翻訳配列を含んでもよい。一般に、好適なUTR配列は導入遺伝子(すなわち、mCoChop)の所望の最適な発現のために使用されてもよい。たとえば、場合によっては、UTRの領域または配列はネイティブの配列を含んでもよい。場合によっては、UTR配列は、ヒトのゲノム配列またはその一部で見いだされるようなヒトmCoChop遺伝子の上流(5’UTR)または下流(3’UTR)で見いだされるような配列であってもよい。他の場合では、UTR配列は、mCoChop以外の遺伝子の上流または下流で見いだされるようなネイティブではない配列を含んでもよく、本明細書にさらに記載されているような1以上のUTR配列要素の組み合わせをさらに含む配列を含んでもよい。場合によっては、5’UTR配列のみが使用される。場合によっては、3’UTR配列のみが使用される。場合によっては、UTR配列は使用されない。
【0082】
UTR配列は長さで1~10bp、10~20bp、20~50bp、50~100bp、100~500bp、500bp~1Kb、1Kb~2Kb、2Kb~3Kb、3Kb~4Kb、4Kb~5Kb、5Kb~6Kb、6Kb~7Kb、7Kb~8Kb、8Kb~9Kb、及び9Kb~10Kbの長さを含んでもよい。UTR配列は長さで少なくとも1bp、2bp、3bp、4bp、5bp、6bp、7bp、8bp、9bp、10bp、20bp、30bp、40bp、50bp、60bp、70bp、80bp、90bp、100bp、200bp、300bp、400bp、500bp、600bp、700bp、800bp、900bp、1Kb、2Kb、3Kb、4Kb、5Kb、6Kb、7Kb、8Kb、9Kb、及び10Kbの長さを含んでもよい。UTR配列は長さで多くても1bp、2bp、3bp、4bp、5bp、6bp、7bp、8bp、9bp、10bp、20bp、30bp、40bp、50bp、60bp、70bp、80bp、90bp、100bp、200bp、300bp、400bp、500bp、600bp、700bp、800bp、900bp、1Kb、2Kb、3Kb、4Kb、5Kb、6Kb、7Kb、8Kb、9Kb、及び10Kbの長さを含んでもよい。
【0083】
場合によっては、5’UTR及び/または3’UTRの変動をタンパク質発現の所望のレベルについて最適化してもよい。場合によっては、3’UTR配列は、細胞における導入遺伝子のmRNAの半減期、導入遺伝子のmRNAの安定性もしくは二次構造、または条件付き調節(たとえば、翻訳を調節するための種々の因子の結合)を含むが、これらに限定されない、タンパク質の発現に影響を及ぼす種々のパラメーターについて最適化されてもよい。たとえば、3’UTR配列を変化させて導入遺伝子のmRNA転写物の半減期を増やしてもよく、それは高いタンパク質発現を生じてもよい。場合によっては、3’UTR配列を変化させて導入遺伝子のmRNA転写物の半減期を減らしてもよく、それは低いタンパク質発現を生じてもよい。
【0084】
一般に、3’UTR配列は種々の配列要素を含んでもよい。本開示は、たとえば、1以上のポリアデニル化シグナル、リンカー配列、スペーサー配列、SECIS要素、AUが豊富な配列またはAREの配列、またはmiRNAもしくはRNAi結合配列、転写終止配列、3’終止配列またはそれらの変異体及び/または組み合わせのような配列要素を含んでもよいが、これらに限定されない3’UTR配列を提供する。
【0085】
場合によっては、5’UTR配列は、細胞における導入遺伝子のmRNAの半減期、導入遺伝子のmRNAの安定性もしくは二次構造、または転写調節を含むが、これらに限定されない、タンパク質の発現に影響を及ぼす種々のパラメーターについて最適化されてもよい。たとえば、5’UTR配列を変化させて導入遺伝子のmRNA転写物の翻訳効率を高めてもよく、それは高いタンパク質発現を生じてもよい。場合によっては、5’UTR配列を変化させて導入遺伝子のmRNA転写物の翻訳効率を低下させてもよく、それは低いタンパク質発現を生じてもよい。
【0086】
一般に、5’UTR配列は種々の配列要素を含んでもよい。本開示は、たとえば、1以上のリボソーム結合部位(RBS)、リンカー配列、スペーサー配列、調節配列、調節性応答要素、リボスイッチ、翻訳開始を促進するまたは抑制する配列、mRNA輸送のための調節配列またはそれらの変異体及び/または組み合わせのような配列要素を含んでもよいが、これらに限定されない5’UTR配列を提供する。
【0087】
一部の態様では、組換えウイルス及び/また組換えウイルスを生成するのに使用されるプラスミドは、1以上のリンカー配列またはスペーサー配列を含んでもよい。本明細書に記載されているように、リンカー配列またはスペーサー配列は相互交換可能に使用されてもよい。一般に、リンカー配列またはスペーサー配列は、少なくとも2つの配列要素間で不連続な配列を作り出すのに使用される任意の好適な配列であってもよい。一般に、任意の好適なリンカー配列またはスペーサー配列を用いて不連続の配列を作り出してもよい。たとえば、場合によっては、リンカー配列は無作為に生成された配列であってもよい。場合によっては、リンカー配列は、タンパク質の発現に有害に影響を及ぼし得る二次構造または分子内相互作用を妨げるように最適化された非特異的配列であってもよい。場合によっては、リンカー配列は、イントロン、調節配列、エンハンサー等を含むが、これらに限定されない任意の追加の機能的な配列要素を含んでもよい。リンカー配列における機能的な要素はウイルスの所望の最適な製造及び/または導入遺伝子発現の発現のために使用されてもよい。場合によっては、リンカー配列は、クローニング部位、以前のクローニング部位の残部または他の重要ではない配列であり、2つの配列要素間でのそのようなリンカーの挿入は任意である。
【0088】
リンカー配列は長さで1~10bp、10~20bp、20~50bp、50~100bp、100~500bp、500bp~1Kb、1Kb~2Kb、2Kb~3Kb、3Kb~4Kb、4Kb~5Kb、5Kb~6Kb、6Kb~7Kb、7Kb~8Kb、8Kb~9Kb、及び9Kb~10Kbの長さを含んでもよい。リンカー配列は長さで少なくとも1bp、2bp、3bp、4bp、5bp、6bp、7bp、8bp、9bp、10bp、20bp、30bp、40bp、50bp、60bp、70bp、80bp、90bp、100bp、200bp、300bp、400bp、500bp、600bp、700bp、800bp、900bp、1Kb、2Kb、3Kb、4Kb、5Kb、6Kb、7Kb、8Kb、9Kb、及び10Kbの長さを含んでもよい。リンカー配列は長さで多くても1bp、2bp、3bp、4bp、5bp、6bp、7bp、8bp、9bp、10bp、20bp、30bp、40bp、50bp、60bp、70bp、80bp、90bp、100bp、200bp、300bp、400bp、500bp、600bp、700bp、800bp、900bp、1Kb、2Kb、3Kb、4Kb、5Kb、6Kb、7Kb、8Kb、9Kb、及び10Kbの長さを含んでもよい。
【0089】
一部の態様では、組換えウイルスは、ウイルスベクターのビリオンに組換え遺伝子発現カセットをパッケージするのに使用される逆方向末端反復(ITR)の配列を含む。場合によっては、ITRはアデノ随伴ウイルス(AAV)に由来する。場合によっては、ITRはAAVの血清型2に由来する。
【0090】
一部の態様では、組換えウイルス及び/また組換えウイルスを生成するのに使用されるプラスミドは、以下の順序:(a)第1のITR配列;(b)エンハンサー配列;(c)プロモーター配列;(d)第1のエキソン配列;(e)イントロン配列;(f)第2のエキソン配列;(g)mCoChopをコードする配列;(h)ポリA配列;及び(i)第2のITR配列での核酸要素を含む。組換えウイルス及び/また組換えウイルスを生成するのに使用されるプラスミドの一部の態様では、プロモーター配列はプロモーター/エンハンサーの配列を含む。一部の態様では、mCoChopをコードする配列はヒトのmCoChopタンパク質またはその機能的な断片をコードする配列を含む。他の態様では、組換えウイルスを生成するのに使用されるプラスミドは複製開始点の配列をさらに含む。一部の態様では、プラスミドはさらに抗生剤耐性遺伝子のための配列を含む。
【0091】
医薬組成物
医薬組成物は、1以上の有効成分と同様に1以上の賦形剤、キャリア、安定剤または増量剤を含有する製剤であり、それは所望の診断結果または治療効果または予防効果を達成するためにヒト患者に投与するのに好適である。保存安定性及び取り扱いの利便性のために、医薬組成物は、患者に投与するのに先立って生理食塩水または水で再構成することができる凍結乾燥した(すなわち、凍結して乾燥させた)または真空乾燥した粉末として製剤化することができる。或いは、医薬組成物は水溶液として製剤化することができる。医薬組成物はタンパク性の有効成分を含有することができる。たとえば、アルブミン及びゼラチンのような種々の賦形剤を様々な成功度で使用して医薬組成物に存在するタンパク質有効成分を安定化しようとしている。さらに、アルコールのような凍結保護剤を使用して凍結乾燥の凍結条件下でのタンパク質の変性を減らしている。
【0092】
内部使用に好適な医薬組成物には、無菌の水溶液または分散液、及び無菌の注射用の溶液または分散液の即時調製のための無菌の粉末が挙げられる。静脈内投与については、好適なキャリアには、生理的食塩水、静菌水、またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。あらゆる場合で、組成物は無菌でなければならず、注射針通過が容易である程度に流体であるべきである。それは製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌のような微生物の混入作用に対して保護されなければならない。キャリアは、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液状ポリエチレングリコール、等)及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であることができる。適正な流動性は、たとえば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散液の場合、必要とされる粒度を維持することによって、及び、たとえば、ポリソルベート(Tween,TM)、ドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)、ラウリルジメチルアミンオキシド、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ポリエトキシ化アルコール、ポリオキシエチレンソルビタン、オクトキシノール(Triton X100.TM.)、N,N-ジメチルドデシルアミン-N-オキシド、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(HTAB)、ポリオキシ10ラウリルエーテル、Brij721.TM.、胆汁塩(デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム)、プロニック酸(F-68、F-127)、ポリオキシルヒマシ油(Cremophor.TM.)、ノニルフェノールエトキシレート(Tergitol.TM.)、シクロデキストリン及び塩化エチルベンゼトニウム(Hyamine.TM.)のような界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の活動の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成することができる。多くの場合、等張剤、たとえば、糖類、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコール、塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましいであろう。内部組成物の長期の吸収は、吸収を遅らせる作用物質、たとえば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。
【0093】
好適な溶液は、必要に応じて、上記で列挙された成分の1つまたは成分の組み合わせと共に必要な量の活性化合物を適当な溶媒に組み込み、その後、濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、基本分散媒と上記に列挙されたものに由来する必要とされる他の成分とを含有する無菌溶剤に活性化合物を組み込むことによって調製される。無菌の注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製の方法は、有効成分に加えて前に無菌濾過したその溶液に由来する追加の所望の成分の粉末が得られる真空乾燥及び凍結乾燥である。
【0094】
態様の1つでは、活性化合物は、身体からの迅速な排除に対して化合物を保護するであろうキャリア、たとえば、インプラント及び微量被包送達システムを含む制御放出製剤と共に調製される。たとえば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステル、及びポリ乳酸のような生分解性、生体適合性のポリマーを使用することができる。そのような製剤の調製方法は当業者に明らかであろう。物質は商業的にも入手することができる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体によって感染細胞に対して標的化されたリポソームを含む)も薬学上許容できるキャリアとして使用することができる。これらは、たとえば、参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第4,522,811号に記載されているような、当業者に既知の方法に従って調製することができる。
【0095】
医薬組成物を投与についての指示書と一緒に容器、パックまたは分注器に含めることができる。
【0096】
本開示の医薬組成物は、溶液、エマルション及びリポソーム含有製剤を含むが、これらに限定されない。これらの組成物は、予め形成された液体、自己乳化する固体及び自己乳化する半固体を含むが、これらに限定されない種々の成分から生成されてもよい。
【0097】
本開示の特定の組成物はキャリア化合物も製剤に組み込む。本明細書で使用されるとき、「キャリア化合物」または「キャリア」は、不活性である(すなわち、それ自体生物活性を持たない)が、たとえば、生物学的に活性のある核酸を分解するまたは循環からのその除去を促進することによって生物活性を有する核酸の生体利用効率を低下させる生体内の過程によって核酸として認識される核酸またはその類似体を指すことができる。核酸及びキャリア化合物の同時投与は一般に後者の物質の過剰によって、多分、共通する受容体についてのキャリア化合物と核酸との間での競合のせいで、肝臓、腎臓または他の追加の循環臓器にて回収される核酸の量の実質的な低下を生じることができる。たとえば、肝臓組織における部分的にホスホロチオエートのオリゴヌクレオチドの回収は、それがポリイノシン酸、デキストラン硫酸、ポリシチジル酸または4-アセトアミド-4’-イソチオシアノ-スチルベン-2,2’-ジスルホン酸と同時投与されると、低下させることができる(Miyao,et al.,Antisense Res.Dev.,1995,5,115-121;Takakura,et al.,Antisense & Nucl.Acid Drug Dev.,1996,6,177-183)。
【0098】
ベクターまたは組換えウイルス(ビリオン)は、哺乳類患者、特にヒトへの投与のために医薬組成物に組み込むことができる。ベクターまたはビリオンは、好ましくは3から8に及ぶpHにて、さらに好ましくは6から8に及ぶpHにて、最も好ましくは6.8から7.2に及ぶpHにて非毒性で不活性の薬学上許容できる水性キャリアにおいて製剤化することができる。そのような無菌の組成物は、再構成の際、許容できるpHを有する水性緩衝液に溶解された治療用分子をコードする核酸を含有するベクターまたはビリオンを含むであろう。
【0099】
一部の態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、薬学上許容できるキャリア及び/または賦形剤、たとえば、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、リン酸塩及びアミノ酸、ポリマー、ポリオール、糖、緩衝液、保存剤及び他のタンパク質との混合物にて治療上有効な量のベクターまたはビリオンを含む。例となるアミノ酸、ポリマー及び糖類等は、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール化合物、ポリエチレングリコールモノステアリン酸化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、スクロース、フルクトース、デキストロース、マルトース、グルコース、マンニトール、デキストラン、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、キシリトール、ラクトース、トレハロース、ウシまたはヒトの血清アルブミン、クエン酸塩、酢酸塩、リンガー溶液及びハンクス溶液、システイン、アルギニン、カルニチン、アラニン、グリシン、リシン、バリン、ロイシン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン及びグリコールである。好ましくは、この製剤は-60℃で少なくとも14ヵ月間安定である。
【0100】
一部の態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、緩衝液、たとえば、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)またはリン酸ナトリウム/硫酸ナトリウム、トリス緩衝液、グリシン緩衝液、無菌水及びGood et al.(1966) Biochemistry 5:467に記載されているもののような当業者に既知の他の緩衝液を含む。好まれる医薬組成物はリン酸ナトリウム、塩化ナトリウム及びソルビタールを含有する。最も好まれる医薬組成物は10mMのリン酸ナトリウム、350mMの塩化ナトリウム及び5%(v/v)ソルビタールを含有する。その中で医薬組成物がアデノウイルスベクター送達システムに含有されたmCoChopを含む緩衝液のpHは、6.5~7.75、6.5~7.5、6.8~7.4または6.8~7.2の範囲であってもよい。
【0101】
一部の態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、約1~10パーセント、たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10パーセント(v/v)の量で、たとえば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランのような、懸濁液の粘度を高める物質を含む。好ましくは、ソルビトールは約3~6%(v/v)であり、最も好ましくは、ソルビトールは約5%(v/v)である。
【0102】
投与に先立って、医薬組成物は、製造の間で使用される成分、たとえば、培養成分、宿主細胞のタンパク質、宿主細胞のDNA、プラスミドDNAを含まず、マイコプラズマ、エンドトキシン及び微生物混入を実質的に含まない。好ましくは、医薬組成物は10、5、3、2または1未満のCFU/スワブを有する。最も好ましくは、医薬組成物は0CFU/スワブを有する。医薬組成物におけるエンドトキシンのレベルは20EU/mL未満、10EU/mL未満または5EU/mL未満である。
【0103】
医薬組成物は、投与に先立って十分に完全なカプシドを有さなければならない。医薬組成物は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%以上完全なカプシドを有する。
【0104】
キット
本開示に有用な組成物及び試薬がキットに包装されて本開示の適用を円滑にしてもよい。一部の態様では、本方法は、本開示の組換え核酸を含むキットを提供する。一部の態様では、本方法は本開示の組換えウイルスを含むキットを提供する。指示書は、キット挿入物に印刷されたもの、1以上の容器に印刷されたもの、と同様に電子保存媒体、たとえば、コンピュータ可読保存媒体にて提供される電子的に保存された指示書を含むが、これらに限定されない所望の形態であってもよい。任意で含まれるのはまた、ユーザーが情報を組込み、対照用量を算出することができるコンピュータ可読保存媒体におけるソフトウエアパッケージである。
【0105】
別の態様では、本開示は本明細書で提供される医薬組成物を含むキットを提供する。さらに別の態様では、本開示は疾患の治療にてキットを提供する。
【0106】
態様の1つでは、キットは、(a)本明細書で提供される組換えウイルスと、(b)治療上有効な量の組換えウイルスを細胞または個体に投与するための指示書とを含む。一部の態様では、キットは組換えウイルスを投与するための薬学上許容できる塩または溶液を含んでもよい。任意で、キットはさらに、ラベルまたは別々の挿入物の形態で好適な操作パラメーターのための指示書を含むことができる。たとえば、キットは、組換えウイルスの用量を調製するように医師または検査技師に知らせる標準の指示書を有してもよい。
【0107】
任意で、キットはさらに、患者の試料が対照情報の標準と比較されて組換えウイルスの試験量が治療量であるかどうかを判定することができるように、標準のまたは対照の情報を含んでもよい。任意で、キットはさらに、投与のための用具、たとえば、注射器、フィルター、針、延長配管、カニューレ及び網膜下注射器を含んでもよい。
【0108】
組換えウイルスは好適な手段によって生成されてもよい。本開示の方法及び組成物は、哺乳類細胞、昆虫細胞、動物細胞または真菌細胞を含んでもよいトランスジェニック細胞の使用を含む種々の手段を介した組換えウイルスの生成を提供する。
【0109】
たとえば、一部の態様では、組換えウイルスは組換えバキュロウイルスによる昆虫細胞の形質移入を介して生成されてもよい。場合によっては、組換えバキュロウイルスは中間体として生成されてもよく、それによってバキュロウイルスはAAVまたはrAAV2ウイルスのような他のウイルスの生成に必要な配列を含有してもよい。場合によっては、1以上のバキュロウイルスは、本開示の組成物及び治療方法に使用される組換えウイルスの生成で使用されてもよい。場合によっては、たとえば、Sf9、High-Five、またはSf21細胞株のような昆虫細胞が使用されてもよい。場合によっては、細胞株は一時的な方法(すなわち、安定的に組み込まれていない導入遺伝子による感染)を用いて生成されてもよい。他の場合では、細胞株は安定な細胞株の生成(すなわち、宿主細胞のゲノムに安定して組み込まれた導入遺伝子による感染)を介して生成されてもよい。他の態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、付着性のヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞を用いて製造される。代替の態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、浮遊適合させたHEK293細胞を用いて製造される。別の態様では、本明細書で提供される医薬組成物は昆虫細胞におけるバキュロウイルス発現系(BYES)を用いて製造される。一部の態様では、ベクターはヘルペスヘルパーウイルスを用いて作製される。一部の態様では、ベクターは産生株-クローン法を用いて作製される。一部の態様では、ベクターはAd-AAVを用いて作製される。
【0110】
一般に、本明細書に記載されているような医薬組成物で使用するための組換えウイルスの生化学的精製では任意の好適な方法が使用されてもよい。組換えウイルスは細胞から、または宿主細胞の周りの培養培地から直接回収されてもよい。ウイルスは、種々の生化学的な手段、たとえば、ゲル濾過、濾過、クロマトグラフィ、アフィニティ精製、勾配超遠心分離、またはサイズ排除法を用いて精製されてもよい。組換えウイルスは、医薬組成物への製剤化の前に任意の好適な手段を用いて内容(すなわち、独自性)、純度または効力(すなわち、活性)について調べられてもよい。方法には、免疫アッセイ、ELISA、SDS-PAGE、ウエスタンブロット、ノーザンブロット、サザンブロットまたはPCR、HUVECアッセイ、等が挙げられてもよいが、これらに限定されない。
【0111】
治療方法
本発明のmCoChopタンパク質及び核酸ならびに得られるChRタンパク質が視力の1以上のパラメーターを改善するように意図されるまたは使用されてもよい眼疾病には、前眼部及び後眼部の双方に影響を及ぼす発達異常が挙げられるが、これらに限定されない。前眼部疾病には、緑内障、白内障、角膜ジストロフィ、円錐角膜が挙げられる。後眼部疾病には、光受容体の機能不全が原因で生じる失明疾病及び/または網膜のジストロフィ及び変性が原因で生じる死亡が挙げられる。網膜疾病には、先天性停止性夜盲、加齢性黄班変性症のような黄班変性症、先天性錐体ジストロフィ、及び網膜色素変性症(RP)に関連する疾病の大きな群が挙げられる。これらの疾病には、種々の年齢で発生する網膜における光受容体細胞、桿体視細胞及び錐体視細胞の遺伝的に素因がある細胞死が一般に含まれる。これらの中で、重度の網膜症は、たとえば、年齢と共に進行し、小児及び青年期に失明を生じるRP自体の亜型、及び小児の間、1歳ほどの若年で視力の喪失を生じることが多いLCAの遺伝的亜型のようなRP関連の疾患である。後者の疾病は一般に光受容体細胞、桿体視細胞及び錐体視細胞の重度の減少及び多くはその完全な喪失を特徴とする(Trabulsi,EI,ed.,Genetic Diseases of the Eye,Oxford University Press,NY,1998)。
【0112】
特に、機能の喪失にもかかわらず眼組織構造の長期の維持と、対象の眼細胞における機能喪失と正常遺伝子の欠損または非存在との間での関連性とを特徴とする、たとえば、RPE関連網膜症のような眼疾病のせいで視力を失っている対象にとって少なくとも部分的な視力の治療及び/または回復に有用な本発明のmCoChop及びChRのタンパク質。当該技術で既知の失明性疾患と同様に、たとえば、小児発症失明性疾患、網膜色素変性症、黄班変性症、及び糖尿病性網膜症のような種々のそのような眼疾患が知られている。上述と同じ記載を特徴とする現在原因が分からない失明性疾患と同様に、これらの他の疾患も本発明のCoChopタンパク質及びChRタンパク質によって上手く治療されてもよいことが期待される。従って、本発明によって治療される特定の眼疾病には、上述の疾病及びまだそのように特徴付けられていない多数の疾患が挙げられてもよい。
【0113】
特定の実施形態では、本開示は、そのような治療を必要とする対象に薬学上有効な量の本明細書で提供される医薬組成物を投与することを含む網膜変性疾患を治療する方法を提供する。好ましくは、網膜変性疾患は網膜色素変性症、または加齢性黄班変性症(AMD)、湿性AMD、乾性AMDである。さらに、網膜変性疾患の直接的な結果である他の疾患及び疾病も本発明の方法によって治療される。
【0114】
一部の実施形態では、乾性AMDが治療されてもよい。場合によっては、乾性AMDは、網膜の下後部での網膜色素上皮の萎縮と眼の中央部での光受容体のその後の喪失とを特徴とする中央地理的萎縮と呼ばれてもよい。本開示の組成物及び方法はAMDのいずれか及びすべての形態の治療を提供する。
【0115】
別の態様では、本開示は、そのような治療を必要とするヒト対象に薬学上有効な量の本明細書で提供される医薬組成物を投与することを含む、本明細書に記載されているようなAMDまたは網膜色素変性症の予防的治療の方法を提供する。本開示を用いてAMDを発症するリスクがある患者または疾患の早期の症状を呈する患者を治療してもよい。本開示を用いてAMDを発症するリスクがある患者または疾患の早期の症状を呈する患者、たとえば、網膜変性疾患を有する個人を治療してもよい。これには、同時にまたは順次、眼を治療することが含まれてもよい。同時治療は、治療が各眼に同時に投与されること、または治療医師もしくは医療サービス提供者への同じ来診の間で両方の眼が治療されることを意味する。患者は、AMDの症状を呈する眼の健常な他眼において、またはAMDを発症する遺伝的素因を有する患者においてAMDを発症する高いリスクを有することが立証されている。本開示は、他眼でのAMDの予防における予防的治療として使用することができる。
【0116】
一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物(たとえば、ヌクレオチド、ポリペプチド、上記ポリペプチドを発現しているまたは上記ヌクレオチドを含有している細胞、医薬組成物、等)が患者に投与される。一部の実施形態では、方法を用いて作り出された突然変異体CoChop組成物は疾患または疾病を改善し、またはその発症を遅らせる。一部の実施形態では、疾患または疾病は、変性疾患または変性疾病である。一部の実施形態では、疾患または疾病は眼疾病である。一部の実施形態では、眼疾病は、AMD、黄班変性症または網膜色素変性症である。一部の実施形態では、疾患または疾病は、負傷、脳損傷、脊髄損傷、てんかん、代謝性疾病、心機能不全、視力喪失、失明、難聴、聴力喪失、または神経学的な状態である。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物が患者に投与されて視力喪失を回復させる。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物が患者に投与されて視力喪失を防ぐ、遅延させる、または改善する。
【0117】
一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物は患者に1回投与される。一部の実施形態では、本明細書で開示されているベクター、核酸または細胞は、約2回、約3回、約4回、約5回、約6回、約7回、約8回、約9回、約10回、約20回、約40回以上、患者に投与される。本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物は疾患または疾病の症状が改善するまで投与される。
【0118】
一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者に比べて治療された患者にて視力喪失を改善する、防ぐ、遅延させるまたは改良する。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、治療された患者にて1日目~10年目の間視力喪失を改善する、防ぐ、遅延させるまたは改良する。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者における視力喪失に比べて約1日目で、約2日目で、約3日目で、約4日目で、約5日目で、約6日目で、約1週目で、約2週目で、約3週目で、約4週目で、約5週目で、約6週目で、約7週目で、約8週目で、約9週目で、約10週目で、約20週目で、約30週目で、約40週目で、約50週目で、約60週目で、約70週目で、約80週目で、約90週目で、約100週目で、約1年目で、約2年目で、または約3年目で、視力喪失を改善する、防ぐ、遅延させるまたは改良する。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者における視力喪失に比べて約1日、約1週間、約1ヵ月間、約2ヵ月間、約3ヵ月間、約4ヵ月間、約5ヵ月間、約6ヵ月間、約1年間、約2年間、約5年間、または約10年間以上、視力喪失を改善する、予防する、遅延させる、または改良する。
【0119】
一部の実施形態では、視力喪失は、対照または他の組成物で治療された患者に比べて約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%減らされる。一部の実施形態では、突然変異体CoChop組成物の投与は、対照または他の組成物で治療された患者に比べて約1日目で、約2日目で、約3日目で、約4日目で、約5日目で、約6日目で、約1週目で、約2週目で、約3週目で、約4週目で、約5週目で、約6週目で、約7週目で、約8週目で、約9週目で、約10週目で、約20週目で、約30週目で、約40週目で、約50週目で、約60週目で、約70週目で、約80週目で、約90週目で、約100週目で、約1年目で、約2年目で、または約3年目で視力喪失を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%改善する、防ぐ、改良する、または遅延させる。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、対照または他の方法で治療された患者に比べて約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヵ月間、約2ヵ月間、約3ヵ月間、約4ヵ月間、約5ヵ月間、約6ヵ月間、約1年間、約2年間、約5年間、または約10年間以上、視力喪失を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%改善する、防ぐ、改良する、または遅延させる。
【0120】
一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者に比べて治療された患者にて光感受性を高める。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、治療された患者にて1日目~10年目の間光感受性を高める。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者における光感受性に比べて約1日目で、約2日目で、約3日目で、約4日目で、約5日目で、約6日目で、約1週目で、約2週目で、約3週目で、約4週目で、約5週目で、約6週目で、約7週目で、約8週目で、約9週目で、約10週目で、約20週目で、約30週目で、約40週目で、約50週目で、約60週目で、約70週目で、約80週目で、約90週目で、約100週目で、約1年目で、約2年目で、または約3年目で光感受性を高める。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者における光感受性に比べて約1日、約1週間、約1ヵ月間、約2ヵ月間、約3ヵ月間、約4ヵ月間、約5ヵ月間、約6ヵ月間、約1年間、約2年間、約5年間、または約10年間以上、光感受性を高める。
【0121】
一部の実施形態では、光感受性は、対照または他の組成物で治療された患者に比べて約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%高められる。一部の実施形態では、突然変異体CoChop組成物の投与は、対照または他の組成物で治療された患者に比べて約1日目で、約2日目で、約3日目で、約4日目で、約5日目で、約6日目で、約1週目で、約2週目で、約3週目で、約4週目で、約5週目で、約6週目で、約7週目で、約8週目で、約9週目で、約10週目で、約20週目で、約30週目で、約40週目で、約50週目で、約60週目で、約70週目で、約80週目で、約90週目で、約100週目で、約1年目で、約2年目で、または約3年目で光感受性を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%高める。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、対照または他の方法で治療された患者に比べて約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヵ月間、約2ヵ月間、約3ヵ月間、約4ヵ月間、約5ヵ月間、約6ヵ月間、約1年間、約2年間、約5年間、または約10年間以上、光感受性を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%高める。
【0122】
一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者に比べて治療された患者にて光電流を誘起するのに必要とされる光強度を低下させる。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、1日目~10年目の間、治療された患者にて光電流を誘起するのに必要とされる光強度を低下させる。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者にて光電流を誘起するのに必要とされる光強度に比べて、約1日目で、約2日目で、約3日目で、約4日目で、約5日目で、約6日目で、約1週目で、約2週目で、約3週目で、約4週目で、約5週目で、約6週目で、約7週目で、約8週目で、約9週目で、約10週目で、約20週目で、約30週目で、約40週目で、約50週目で、約60週目で、約70週目で、約80週目で、約90週目で、約100週目で、約1年目で、約2年目で、または約3年目で光電流を誘起するのに必要とされる光強度を低下させる。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者にて光電流を誘起するのに必要とされる光強度に比べて、約1日、約1週間、約1ヵ月間、約2ヵ月間、約3ヵ月間、約4ヵ月間、約5ヵ月間、約6ヵ月間、約1年間、約2年間、約5年間、または約10年間以上、光電流を誘起するのに必要とされる光強度を低下させる。
【0123】
一部の実施形態では、光電流を誘起するのに必要とされる光強度は、対照または他の組成物で治療された患者に比べて約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%低下する。一部の実施形態では、突然変異体CoChop組成物の投与は、対照または他の組成物で治療された患者に比べて約1日目で、約2日目で、約3日目で、約4日目で、約5日目で、約6日目で、約1週目で、約2週目で、約3週目で、約4週目で、約5週目で、約6週目で、約7週目で、約8週目で、約9週目で、約10週目で、約20週目で、約30週目で、約40週目で、約50週目で、約60週目で、約70週目で、約80週目で、約90週目で、約100週目で、約1年目で、約2年目で、または約3年目で光電流を誘起するのに必要とされる光強度を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%低下させる。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、対照または他の方法で治療された患者に比べて約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヵ月間、約2ヵ月間、約3ヵ月間、約4ヵ月間、約5ヵ月間、約6ヵ月間、約1年間、約2年間、約5年間、または約10年間以上、光電流を誘起するのに必要とされる光強度を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%低下させる。
【0124】
一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者に比べて治療された患者にてイオン流及び/またはプロトン流を高める。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、治療された患者にて1日目~10年目の間、イオン流及び/またはプロトン流を高める。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者におけるイオン流及び/またはプロトン流に比べて、約1日目で、約2日目で、約3日目で、約4日目で、約5日目で、約6日目で、約1週目で、約2週目で、約3週目で、約4週目で、約5週目で、約6週目で、約7週目で、約8週目で、約9週目で、約10週目で、約20週目で、約30週目で、約40週目で、約50週目で、約60週目で、約70週目で、約80週目で、約90週目で、約100週目で、約1年目で、約2年目で、または約3年目でイオン流及び/またはプロトン流を高める。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者におけるイオン流及び/またはプロトン流に比べて、約1日、約1週間、約1ヵ月間、約2ヵ月間、約3ヵ月間、約4ヵ月間、約5ヵ月間、約6ヵ月間、約1年間、約2年間、約5年間、または約10年間以上、イオン流及び/またはプロトン流を高める。
【0125】
一部の実施形態では、イオン流及び/またはプロトン流は対照または他の組成物で治療された患者に比べて約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%高められる。一部の実施形態では、突然変異体CoChop組成物の投与は、対照または他の組成物で治療された患者に比べて約1日目で、約2日目で、約3日目で、約4日目で、約5日目で、約6日目で、約1週目で、約2週目で、約3週目で、約4週目で、約5週目で、約6週目で、約7週目で、約8週目で、約9週目で、約10週目で、約20週目で、約30週目で、約40週目で、約50週目で、約60週目で、約70週目で、約80週目で、約90週目で、約100週目で、約1年目で、約2年目で、または約3年目でイオン流及び/またはプロトン流を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%高める。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、対照または他の方法で治療された患者に比べて、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヵ月間、約2ヵ月間、約3ヵ月間、約4ヵ月間、約5ヵ月間、約6ヵ月間、約1年間、約2年間、約5年間、または約10年間以上、イオン流及び/またはプロトン流を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%高める。
【0126】
一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者に比べて治療された患者にて視覚野における視覚誘発電位を上昇させる。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、治療された患者にて1日目~10年目の間、視覚野における視覚誘発電位を上昇させる。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者での視覚野における視覚誘発電位に比べて、約1日目で、約2日目で、約3日目で、約4日目で、約5日目で、約6日目で、約1週目で、約2週目で、約3週目で、約4週目で、約5週目で、約6週目で、約7週目で、約8週目で、約9週目で、約10週目で、約20週目で、約30週目で、約40週目で、約50週目で、約60週目で、約70週目で、約80週目で、約90週目で、約100週目で、約1年目で、約2年目で、または約3年目で、視覚野における視覚誘発電位を上昇させる。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者での視覚野における視覚誘発電位に比べて、約1日、約1週間、約1ヵ月間、約2ヵ月間、約3ヵ月間、約4ヵ月間、約5ヵ月間、約6ヵ月間、約1年間、約2年間、約5年間、または約10年間以上、視覚野における視覚誘発電位を上昇させる。
【0127】
一部の実施形態では、視覚野における視覚誘発電位は、対照または他の組成物で治療された患者に比べて約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%上昇する。一部の実施形態では、変異体CoChop組成物の投与は、対照または他の組成物で治療された患者に比べて、約1日目で、約2日目で、約3日目で、約4日目で、約5日目で、約6日目で、約1週目で、約2週目で、約3週目で、約4週目で、約5週目で、約6週目で、約7週目で、約8週目で、約9週目で、約10週目で、約20週目で、約30週目で、約40週目で、約50週目で、約60週目で、約70週目で、約80週目で、約90週目で、約100週目で、約1年目で、約2年目で、または約3年目で、視覚野における視覚誘発電位を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%上昇させる。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、対照または他の方法で治療された患者に比べて、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヵ月間、約2ヵ月間、約3ヵ月間、約4ヵ月間、約5ヵ月間、約6ヵ月間、約1年間、約2年間、約5年間、または約10年間以上、視覚野における視覚誘発電位を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%上昇させる。
【0128】
一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者に比べて治療された患者にて疾患または疾病の症状を軽減する。一部の実施形態では、疾患または疾病の症状は1日目~10年目の間で治療された患者にて測定される。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者における疾患または疾病の症状に比べて、約1日目で、約2日目で、約3日目で、約4日目で、約5日目で、約6日目で、約1週目で、約2週目で、約3週目で、約4週目で、約5週目で、約6週目で、約7週目で、約8週目で、約9週目で、約10週目で、約20週目で、約30週目で、約40週目で、約50週目で、約60週目で、約70週目で、約80週目で、約90週目で、約100週目で、約1年目で、約2年目で、または約3年目で、疾患または疾病の症状を軽減する。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者における疾患または疾病の症状に比べて、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヵ月間、約2ヵ月間、約3ヵ月間、約4ヵ月間、約5ヵ月間、約6ヵ月間、約1年間、約2年間、約5年間、または約10年間以上、疾患または疾病の症状を軽減する。
【0129】
一部の実施形態では、疾患または疾病の症状は、未治療の患者または治療前の同じ患者における疾患または疾病の症状に比べて、約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%軽減される。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者における疾患または疾病の症状に比べて、約1日目で、約2日目で、約3日目で、約4日目で、約5日目で、約6日目で、約1週目で、約2週目で、約3週目で、約4週目で、約5週目で、約6週目で、約7週目で、約8週目で、約9週目で、約10週目で、約20週目で、約30週目で、約40週目で、約50週目で、約60週目で、約70週目で、約80週目で、約90週目で、約100週目で、約1年目で、約2年目で、または約3年目で、疾患または疾病の症状を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%軽減する。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者における疾患または疾病の症状に比べて、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヵ月間、約2ヵ月間、約3ヵ月間、約4ヵ月間、約5ヵ月間、約6ヵ月間、約1年間、約2年間、約5年間、または約10年間以上、疾患または疾病の症状を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%軽減する。
【0130】
一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者に比べて治療された患者にてAMDの症状を軽減する。一部の実施形態では、症状は、かすみ眼、視力の低下、視力の部分喪失、及び/または薄暗がりでの目視不能である。一部の実施形態では、AMDの症状は1日目~10年目の間で治療された患者にて測定される。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者におけるAMDの症状に比べて、約1日目で、約2日目で、約3日目で、約4日目で、約5日目で、約6日目で、約1週目で、約2週目で、約3週目で、約4週目で、約5週目で、約6週目で、約7週目で、約8週目で、約9週目で、約10週目で、約20週目で、約30週目で、約40週目で、約50週目で、約60週目で、約70週目で、約80週目で、約90週目で、約100週目で、約1年目で、約2年目で、または約3年目で、AMDの症状を軽減する。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者におけるAMDの症状に比べて、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヵ月間、約2ヵ月間、約3ヵ月間、約4ヵ月間、約5ヵ月間、約6ヵ月間、約1年間、約2年間、約5年間、または約10年間以上、AMDの症状を軽減する。
【0131】
一部の実施形態では、AMDの症状は、未治療の患者または治療前の同じ患者におけるAMDの症状に比べて約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%軽減される。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者におけるAMDの症状に比べて、約1日目で、約2日目で、約3日目で、約4日目で、約5日目で、約6日目で、約1週目で、約2週目で、約3週目で、約4週目で、約5週目で、約6週目で、約7週目で、約8週目で、約9週目で、約10週目で、約20週目で、約30週目で、約40週目で、約50週目で、約60週目で、約70週目で、約80週目で、約90週目で、約100週目で、約1年目で、約2年目で、または約3年目で、AMDの症状を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%軽減する。一部の実施形態では、本明細書で開示されている突然変異体CoChop組成物の投与は、未治療の患者または治療前の同じ患者におけるAMDの症状に比べて、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヵ月間、約2ヵ月間、約3ヵ月間、約4ヵ月間、約5ヵ月間、約6ヵ月間、約1年間、約2年間、約5年間、または約10年間以上、AMDの症状を約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%軽減する。
【0132】
用語「対象」または「個体」または「患者」は、疾患もしくは疾病を有する、または疾患もしくは疾病等を有することが疑われる個体を参照して本明細書で使用される。対象、個体または患者は本開示で相互交換可能に使用されてもよく、哺乳類及び非哺乳類を包含してもよい。哺乳類の例には、哺乳動物綱の任意のメンバー:ヒト、たとえば、チンパンジー、及び他の類人猿及びサル種のような非ヒト霊長類;たとえば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタのような家畜;たとえば、ウサギ、イヌ及びネコのような飼育動物;たとえば、ラット、マウス及びモルモットのような齧歯類を含む実験動物、等が挙げられるが、これらに限定されない。非哺乳類の例には、鳥類及び魚類等が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で提供される方法及び組成物の一部の態様では、哺乳類はヒトである。
【0133】
治療の有効性は、各眼の最良に矯正された視力を評価することによって確立されるであろう。視力検査は、電子視力(EVA)ETDRS(糖尿病性網膜症の研究のための早期治療)法、または手の動きと光覚の低視力評価を用いて行われる。
【0134】
用語「視力」は本明細書で使用されるとき、区別または活動のための刺激としての光を普通に検出する生物の能力として定義される。視力は以下を包含するように意図される:
1.光の検知または認知―光が存在するかどうかを識別する能力;
2.光投影―光刺激が入ってくる方向を識別する能力;
3.分解能―格子または文字の標的にて様々な明度レベル(すなわち、コントラスト)を検知する能力;
4.認識―視覚対象内の様々なコントラストのレベルを参照することによって視覚対象の形状を認識する能力。
従って、「視力」には光の存在を単純に検知する能力が含まれる。本発明の突然変異体CoChopをコードするポリペプチド及びポリヌクレオチドを用いて視力を改善するまたは回復させることができ、その際、視力の改善または回復には、たとえば、光の検知または認知の増加、光刺激に応答した光の感受性または光感受性の増大、光刺激が入ってくる方向を識別する能力の増大、様々な明度レベルを検知する能力の増大、視覚対象の形状を認識する能力の増大、及び視覚誘発電位または網膜から皮質への伝達の増大が挙げられる。そのように、視力の改善または回復は視界の完全な回復を含んでもよいし、または含まなくてもよく、すなわち、本発明によって治療された患者の視力は冒されていない個体の視力までの程度まで回復する。以下に記載されている動物試験で記載された視覚の回復は、ヒトにとっては、完全な視界を回復させることなく、視力の1つの局面(すなわち、光感受性、または視覚誘発電位)を増大させることによって、視力機能の下端に人間を位置づける可能性がある。それにもかかわらず、これらの個体は、移動においておよび潜在的には低次の解像課題において訓練され得、これは全盲と比較して大幅に改善されたレベルの視覚独立性を提供すると考えられるため、そのようなレベルでの位置づけは、有意の恩恵となるであろう。基本的な光認知さえも、視覚が損なわれた個体は利用することができるが、特定の日々の課題を達成し、かつ全般的な移動、可能性、および生活の質を改善するように、本組成物および方法を用いてその視力が改善される。
【0135】
視力の回復の程度は、たとえば、CoChopをコードするDNAを含むベクターを投与する前の、及び好ましくはその後での視力の測定を介して判定することができる。視力は当該技術で周知の多数の方法またはまだ確立されていない方法のいずれかを用いて測定することができる。本発明によって改善されたまたは回復したような視力は、以下の視覚反応のいずれかによって測定することができる:
1.光刺激に曝露した後の対象による光検知反応―その際、証拠は、光が点灯されたときの対象個体による光の一般的方向における指示または動きの信頼できる反応について求められる;
2.光刺激に曝露した後の対象による光投影反応、その際、証拠は、光が点灯されたときの個体による光の特定の方向における指示または動きの信頼できる反応について求められる;
3.明対暗のパターン化された視覚刺激の対象による光分解能、それは、
a.標的(上記参照)の追跡を明らかにする、実証可能な、信頼できる視運動性に生じる眼振様眼球運動及び/または関連する頭部または身体の動きの存在、及び/または
b.パターン視覚刺激を識別し、且つ、たとえば、棒もしくはボタンを配置すること、または押し付けることを含む、言語手段もしくは非言語手段によってそのような識別を指し示す信頼できる能力の存在
によって証拠付けられるような明対暗のパターン化された視覚刺激を分解する対象の能力を測定する;または
4.閃光刺激もしくはパターン視覚刺激に対する視覚野の応答の電気的記録、それは回復させた網膜から視覚野への送電の終点であり、視覚誘発電位(VEP)と呼ばれる。測定は、視覚野の領域での頭皮表面、皮質表面における電気的記録、及び/または視覚野の細胞内での記録によってもよい。
【0136】
従って、本発明に係る視力の改善または回復には、網膜細胞における光刺激に応答した光電流または電気的応答の振幅または動態の増大、網膜細胞の光感受性の増大(すなわち、光刺激に応答して光電流または電気的応答を開始するのに必要とされる閾値光強度を低下させ、それによって光電流を誘発するのに少ないまたは低い光を必要とすること)、光誘発のスパイキングまたはスパイク発火の数または振幅の上昇、視覚野に対する光応答の増加が挙げることができるが、これらに限定されず、それには、網膜または網膜細胞から視覚野または脳に伝達される視覚誘発電位の上昇が含まれる。
【0137】
失明に至るヒト眼疾病の認識された動物モデルを含む、本発明の種々のパラメーターを評価するための試験管内及び生体内双方の研究が使用されてもよい。ヒト網膜症、たとえば、小児失明の大型動物モデルが有用である。本明細書で提供される例は、この方法が様々な網膜疾患を治療するのに同様に使用されてもよいことを当業者が容易に予想できるようにする。
【0138】
他者による早期の研究は網膜変性を遺伝子治療法によって遅らせることができることを実証している一方で、本発明は機能の明確な生理的回復を実証し、それは行動パラメーターを含む視力の種々のパラメーターを生成するまたは改善することが期待される。
【0139】
行動測定は、既知の動物のモデル及び試験、たとえば、水迷路における成績を用いて得ることができ、その際、その視力が様々な程度に保護されているまたは回復している対象は光に向かって泳ぐであろう(Hayes,JM.et al.,1993,Behav.Genet.23:395-403)。
【0140】
失明が成人期に誘導される、または個体に視力があり、その後視力を失うという先天性の失明がかなりゆっくり発症するモデルでは、種々の検査における対象の訓練が行われてもよい。このように、これらの検査が視力喪失の後、再施行されてその視力回復効果について本発明の組成物及び方法の有効性を調べる場合、動物は、失明状態である間、新たな課題を習得する必要はない。他の行動検査は習得を必要とせず、特定の行動の本能性を当てする。一例は、視運動性眼振検査である(Balkema,GW.,et al.,1984,Invest Ophthalmol Vis Sci.25:795-800;Mitchiner,JC.,et al.,1976,Vision Res.16:1169-71)。
【0141】
本発明は当該技術で既知の視覚療法の他の形態と併用して視力を改善してもよいし、または回復させてもよい。たとえば、網膜移植、皮質移植、外側膝状体核移植または視神経移植を含む人工視覚の使用。従って、本発明の方法を用いて網膜神経細胞を生存させる遺伝子操作に加えて、治療されている対象には、分子法が採用される前に、それと同時に、またはその後で、人工視覚が提供されてもよい。人工視覚の有効性は個体の訓練によって改善することができるので、本明細書で熟考されるように患者細胞のCoChopの形質転換の潜在的な効果を高めることができる。(i)種々のレベルの光及び/またはパターンの刺激及び/または(ii)当業者によって理解されるような一般的な光源または物体からの環境刺激を認識するように対象を訓練することを特徴とする習慣化訓練、及び設置の物体を視覚的に検知し、訓練がないときより効果的に上記物体の間を移動するように対象を訓練することを特徴とする方向付け及び移動性の訓練のような訓練方法。実際、視力低下のリハビリテーションの分野で通常使用される視覚刺激法はここでは適用可能である。
【0142】
一部の実施形態では、本発明の突然変異体CoChopタンパク質及び標的とされる遺伝子発現に加えて様々なオプシン遺伝子を使用することはさらに、光感受性を高め、または視力を改善してもよい。視覚情報は、2つの経路:光ONの信号を送るON経路及び光OFFの信号を送るOFF経路を介した網膜を介して処理される。ON及びOFFの経路の存在はコントラスト感度を高める上で重要である。ON経路における視覚信号はON-錐体双極細胞からON神経節細胞までのリレーである。ON-錐体双極細胞及びON-神経節細胞は双方とも光に応答して脱分極する。その一方で、OFF経路における視覚信号はOFF-錐体双極細胞からOFF神経節細胞まで運ばれる。OFF-錐体双極細胞及びOFF-神経節細胞は双方とも光に応答して低分極を起こす。薄暗がりで見る能力(暗所視)に関与する桿体双極細胞はON双極細胞(光に応答して脱分極する)である。桿体双極細胞はAIIアマクリン細胞(ON型網膜細胞)を介して視覚信号をON及びOFF錐体双極細胞にリレーする。
【0143】
従って、二重ロドプシン系を用いて視覚処理及び視力に不可欠なON及びOFF経路を反復することができる。手短には、本発明のCoChopタンパク質はON型網膜神経細胞(すなわち、ON型神経節細胞及び/またはON型双極細胞)を特異的に標的とすることができる一方で、低分極する光センサー(すなわち、ハロロドプシンまたは当該技術で既知の他の塩素ポンプ)はOFF型網膜神経細胞(すなわち、OFF型神経節細胞及び/またはOFF型双極細胞)を標的とすることができ、ON及びOFF経路を作り出す。好まれる細胞亜集団に対する特異的な標的指向化は様々な細胞型に特異的なプロモーターの使用を介して達成することができる。たとえば、CoChopの発現は、ON型網膜神経細胞(すなわち、ON型神経節細胞及び/またはON型双極細胞)における標的とされる発現のためのmGluR6プロモーターが主導し得る一方で、たとえば、ハロロドプシンのような低分極チャネルの発現は、OFF型網膜神経細胞(すなわち、OFF型神経節細胞及び/またはOFF型双極細胞)における標的とされる発現のためのNK-3プロモーターが主導する。
【0144】
網膜にてON及びOFF経路を回復させる代替のアプローチは、桿体双極細胞またはAIIアマクリンに対して脱分極光センサーを発現させることによって達成される。このアプローチでは、桿体双極細胞またはAIIアマクリン細胞の脱分極が、錐体双極細胞及び下流の網膜神経節細胞のレベルでのON及びOFFの応答をもたらすことができる。従って、網膜にて本来備わっているON及びOFFの経路が維持される。
【0145】
送達方法
【0146】
一部の態様では、医薬組成物は特定の疾患または疾病を治療するまたは予防するために当該技術で既知の任意の方法によって投与される。好まれる実施形態では、眼疾患を治療する場合、医薬組成物は直接法を用いて硝子体内の部位に投与される。場合によっては、送達法は、全体として参照によって本明細書に組み入れられる米国特許公開第2010008170号に記載されているもののような注射によってもよい。場合によっては、硝子体への直接投与には、注射器を介した液状医薬組成物の注射が含まれる。別の例では、直接投与には、ベクターまたは組換えウイルスの送達のためのカニューレまたは他の好適な器具を介した注入を含み得る。他の例では、直接投与は、たとえば、mCoChopのような導入遺伝子の送達のための好適なベクターをさらに含む移植片を含んでもよい。場合によっては、移植片は網膜にてまたは網膜の近傍にて直接移植されてもよい。
【0147】
一般に、ベクターは、眼内(硝子体内)注入される懸濁液の形態で送達することができる。具体的には、ベクターは毛様体扁平部を介して経強膜で注入される。
【0148】
定義
本明細書に記載されているような本開示の組成物及び方法は、特に指示されない限り、当業者の技量の範囲内にある、分子生物学(組換え法を含む)、細胞生物学、生化学、免疫化学及び眼科技法の従来の技法及び説明を採用し得る。そのような従来の技法には、対象における網膜または視力を観察し、分析する方法、組換えウイルスのクローニング及び増殖のための方法、医薬組成物の形成のための方法、ならびに生化学的精製及び免疫化学の方法が挙げられる。好適な技法の具体的な説明は本明細書の実施例を参照して得ることができる。しかしながら、同等の従来の手順も当然使用することができる。そのような従来の技法及び説明は、たとえば、すべてあらゆる目的で全体として参照によって本明細書に組み入れられるGreen,et al.,Eds.,Genome Analysis:A Laboratory Manual Series,(Vols.I-IV)(1999);Weiner,et al.,Eds.,Genetic Variation:A Laboratory Manual,(2007);Dieffenbach,Dveksler,Eds.,PCR Primer:A Laboratory Manual,(2003);Bowtell及びSambrook,DNA Microarrays:A Molecular Cloning Manual,(2003);Mount,Bioinformatics:Sequence and Genome Analysis,(2004);Sambrook及びRussell,Condensed Protocols from Molecular Cloning:A Laboratory Manual (2006);及びSambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,(2002)(all from Cold Spring Harbor Laboratory Press);Stryer,L.,Biochemistry,(4th Ed.)W.H.Freeman,N.Y.(1995);Gait,’’Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach’’IRL Press,London(1984);Nelson and Cox,Lehninger,Principles of Biochemistry,3rd Ed.,W.H.Freeman Pub.,New York(2000);ならびにBerg,et al.,Biochemistry,5th Ed.,W.H.Freeman Pub.,New York,(2002)のような標準的な実験室マニュアルにて見いだすことができる。
【0149】
本明細書で使用されるとき、単数形態、「a」、「an」及び「the」は、文脈が明瞭に指示しない限り、同様に複数形態を含むように意図される。さらに、用語「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」またはそれらの変形が詳細な説明及び/または特許請求の範囲のいずれかで使用されている限りでは、そのような用語は用語「含む(comprising)」に類似した方法で包含的であるように意図される。
【0150】
範囲は本明細書では、「約」1つの特定の値から、及び/または「約」別の特定の値までとして表現することができる。そのような範囲が表現されるとき、別の場合は1つの特定の値から及び/または他の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」の使用によって近似値として表現される場合、特定の値は別の場合を形成することが理解されるであろう。範囲のそれぞれの端点は他方の端点との関連で双方とも有意であり、他方の端点とは無関係であることがさらに理解されるであろう。用語「約」は本明細書で使用されるとき、特定の使用の文脈内で言及された数値からプラスマイナス15%である範囲を指す。たとえば、約10は8.5から11.5までの範囲を含むことになる。用語「約」はまた値の測定における典型的な誤差または不正確さも説明する。
【0151】
用語「網膜変性疾患」は光受容体の変性に関連する疾患すべてを包含する。網膜変性疾患には、網膜色素変性症、加齢性黄班変性症、Bardet-Biedel症候群、Bassen-Kornzweig症候群、Best病、先天性脈絡膜欠如、脳回転状萎縮、Leber先天性黒内障、Refsun症候群、Stargardt病またはUsher症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0152】
本発明の文脈では、用語「治療すること」または「治療」は本明細書で使用されるとき、そのような用語が適用される疾病または状態、またはそのような疾病または状態(たとえば、網膜変性疾患)の1以上の症状を元に戻すこと、それを緩和すること、その進行を抑制すること、またはそれを予防することを意味する。
【0153】
本発明によれば、用語「患者」または「それを必要とする患者」は網膜変性疾患に冒されたまたは冒される可能性があるヒトまたは非ヒト哺乳類を対象とする。
【0154】
本明細書で意図されるように、表現「単離された核酸」は任意の種類の単離された核酸を指し、それは特に、天然のまたは合成のDNAまたはRNA、一本鎖または二本鎖であることができる。特に、核酸が合成である場合、それは、特に核酸の分解に対する耐性を高めるために塩基または結合の非天然の修飾を含むことができる。核酸がRNAである場合、修飾は特に、その末端をキャッピングすること、またはヒドロキシ部分の反応性を低下させるように、たとえば、ヒドロキシル部分を抑制する(2’-デオキシリボースまたは2’-デオキシリボース-2’-フルオロリボースを得る)ことによって、またはヒドロキシル部分をメチル基のようなアルキル基で置換する(2’-O-メチル-リボースを得る)ことによってリボース主鎖の2’位を修飾することを包含する。
【0155】
用語「チャネルロドプシン」は、光依存性イオンチャネルとして機能するレチニリデンタンパク質(ロドプシン)のスーパーファミリーを指す。一部は単細胞緑藻にて感覚光受容体として役立ち、走光性:光に応答した動きを制御する。他の生物の細胞で発現されて、それらは光が電気興奮性、細胞内酸性度、カルシウム流入、及び他の細胞過程を制御できるようにする。それらは多数の他のロドプシンより大きく、7回膜貫通(7TM)領域及び長いC末端伸長を有する。藻類では、感覚光受容体は、藻類を光源に向けるまたはそれから遠ざける視覚タンパク質として機能し、且つ光合成成長に最適である光条件を見いだすように機能する。7TM領域は、光駆動ポンプとして機能する(バクテリオロドプシン、アーチロドプシン及びハロロドプシン)またはセンサーとして機能する他の微生物(原核生物)のロドプシンに対して若干の相同性を示す。その用語はまた、チャネルロドプシンに対して相同であるポリペプチドも含む。
【0156】
80%を超える、好ましくは85%を超える、好ましくは90%を超えるアミノ酸配列もしくは核酸配列が同一である、または約90%を超える、好ましくは95%を超えるものが類似する(機能的に同一である)場合、2つのアミノ酸配列または核酸配列は「実質的に相同である」または「実質的に類似する」。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性を判定するために、最適な比較目的で配列が並べられる(たとえば、第2のアミノ酸配列または核酸配列との最適な配列比較のために第1のアミノ酸配列または核酸配列の配列にギャップを導入することができる)。次いで対応するアミノ酸の位置またはヌクレオチドの位置でアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第1の配列における位置が第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められる場合、そのとき、分子はその位置で同一である。2つの配列間でのパーセント同一性は、配列によって共有される同一の位置の数の関数である。一実施形態では、2つの配列は同一の長さである。2つの配列間でのパーセント同一性の判定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。好ましくは、類似のまたは相同の配列は、たとえば、GCG(Genetics Computer Group,Program Manual for the GCG Package,Version 7,Madison,Wis)パイルアッププログラム、または、たとえば、BLAST、FASTA等のような配列比較アルゴリズムのいずれかを用いた配列比較によって特定される。
【0157】
本明細書で使用されるとき、用語「ベクター」は、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの種類の1つは、追加のDNAセグメントをライゲーションすることができる環状二本鎖のDNAループを指す「プラスミド」である。ベクターの別の種類はウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントはウイルスゲノムにライゲーションすることができる。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞にて自己複製が可能である(たとえば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクター及びエピソーム性の哺乳類ベクター)。他のベクター(たとえば、非エピソーム性の哺乳類ベクター)は宿主細胞への導入の際、宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって宿主のゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターである発現ベクターはそれらが操作可能に連結される遺伝子の発現を指示することができる。
【0158】
他の実施形態
本発明はその詳細な説明と併せて記載されてきた一方で、前述の記載は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するのではなく説明するように意図される。他の態様、利点及び改変は以下の特許請求の範囲内である。
【0159】
本明細書で参照されている特許及び科学文献は当業者に利用可能である知識を立証する。本明細書で引用されている米国特許及び公開されたまたは公開されていない米国特許出願はすべて全体として参照によって組み入れられる。本明細書で引用されている公開された外国の特許及び特許出願は全体として参照によって本明細書に組み入れられる。本明細書で引用されている他の公開された参考文献、文書、原稿及び科学文献はすべて全体として参照によって本明細書に組み入れられる。
【0160】
本発明はその好まれる実施形態を参照して詳細に示され、記載されている一方で、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなくその中で、形態及び詳細にて種々の変更が為されてもよいことが当業者によって理解されるであろう。
【0161】
本開示は以下の非限定の実施例によってさらに説明される。
【実施例
【0162】
実施例1:突然変異体CoChopポリペプチドの作製及び分析
ChR2のようなチャネルロドプシン(ChR)は視力回復のための有望な光操作での光センサーである。視力回復でChR2を使用するための主要な障害はその低い光感受性である。我々は以前、部位特異的変異誘発を介してその動態を最適化することによって、最も光感受性のChR2突然変異体、ChR2-L132C/T159Sを含むさらに光感受性のChR2を作製した。最近、藻類の新たなトランスクリプトームの配列決定によって多数のChR変異体が報告されている(Klapoetke,et al.,2014,Nat.Methods,11(3):338-46)。我々は、変異体の1つであるCoChRが大きな光電流を示すことを見いだした。本発明では、我々は、部位特異的変異誘発を介してその動態を最適化することによって幾つかの高度に光感受性のCoChR突然変異体(すなわち、突然変異体CoChop)を作製した。これらの突然変異体には、CoChR-L112C(配列番号3)、CoChR-T139C(配列番号5)、C68S/V69I(配列番号4)、C68T/V69I(配列番号7)、CoChR-T145A/S146A(配列番号6)、CoChR-L112C/T139C(配列番号8)、CoChR-L112C/H94E(配列番号9)、及びCoChR-L112C/H94E/K264T(配列番号10)が挙げられる。CoChR及びその突然変異体は、480nmでのピークスペクトルを伴ってChR2よりもやや赤色にシフトしたスペクトル曲線を示す(図1)。CoChR突然変異体の光感受性(CoChR-L112Cについて示されるような)は、HEK細胞における電気生理学の記録(図2~5)、及び網膜神経細胞からの多重電極アレイの記録(図6)、及び生体内での盲目マウスに由来する視運動行動試験(図7)に基づいて、最も光感受性のChR2突然変異体ChR2-L132C/T159Sのそれよりもはるかに高い。さらに、周囲の光条件下でCoChR-L112Cを発現しているマウスについて視運動反応を観察することができる(図8)。加えて、CoChR-L112C突然変異体の長期の安定した発現が網膜神経細胞にて観察された(図9)。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]単離された光で活性化されるイオンチャネルポリペプチドであって、
1以上のアミノ酸修飾を含む配列番号2のアミノ酸配列を含み、
前記光で活性化されるイオンチャネルポリペプチドが、細胞膜で発現され、活性化光に接触されると、配列番号2の前記光で活性化されるイオンチャネルポリペプチドと比べて高いレベルのイオン流及び高いレベルのプロトン流の少なくとも一方を有する、前記単離された光で活性化されるイオンチャネルポリペプチド。
[実施形態2]前記ポリペプチドが配列番号3~10のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の光で活性化されるイオンチャネルポリペプチド。
[実施形態3]配列番号3~10のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
[実施形態4]1以上のアミノ酸修飾を含む、配列番号3~10のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
[実施形態5]前記1以上の修飾が、置換、欠失または挿入である、実施形態4に記載の単離されたポリペプチド。
[実施形態6]実施形態1~5のいずれかに記載のポリペプチドを含む細胞。
[実施形態7]実施形態1~5のいずれかに記載のポリペプチドをコードする、単離された核酸分子。
[実施形態8]前記核酸配列がプロモーター配列に操作可能に連結される、実施形態7に記載の単離された核酸分子。
[実施形態9]実施形態7または8に記載の単離された核酸分子を含む細胞。
[実施形態10]実施形態7または8に記載の単離された核酸分子を含む組成物。
[実施形態11]前記細胞が試験管内、生体外、または生体内にある、実施形態6または9に記載の細胞。
[実施形態12]実施形態7または8に記載の単離された核酸分子を含むベクター。
[実施形態13]前記細胞が、光受容体、双極細胞、桿体双極細胞、ON型錐体双極細胞、網膜神経節細胞、光感受性網膜神経節細胞、水平細胞、アマクリン細胞、またはAIIアマクリン細胞である、実施形態6または9に記載の細胞。
[実施形態14]膜の導電率を変える方法であって、
a.宿主の膜にて実施形態1~5のいずれかに記載のポリペプチドを発現させることと、
b.好適な条件下で前記ポリペプチドを光に接触させて前記宿主の膜の導電率を変化させることとを含む、前記方法。
[実施形態15]前記宿主の膜が細胞膜である、実施形態14に記載の方法。
[実施形態16]前記宿主の膜が、神経細胞、神経系の細胞、心臓細胞、循環細胞、視覚系の細胞または聴覚系の細胞の細胞膜である、実施形態15に記載の方法。
[実施形態17]対象にて疾患または状態を治療する方法であって、
それを必要とする対象に治療上有効な量の、実施形態1~5に記載のポリペプチドまたは実施形態7~8に記載の核酸を投与することを含む、前記方法。
[実施形態18]前記疾患または状態が、負傷、脳損傷、脊髄損傷、てんかん、代謝性障害、心機能不全、視力喪失、失明、難聴、聴覚喪失、または神経学的状態である、実施形態17に記載の方法。
[実施形態19]視力を改善するまたは回復させる方法であって、実施形態1~5に記載のポリペプチドまたは実施形態7~8に記載の核酸を対象に投与することを含む、前記方法。
[実施形態20]前記対象が眼疾患を患っている、実施形態19に記載の方法。
[実施形態21]前記眼疾患が黄班変性症または網膜色素変性症である、実施形態20に記載の方法。
[実施形態22]前記視力を改善するまたは回復させることが、以下:光感受性を高めること;光電流を誘起するのに必要とされる閾値光強度を下げること;及び視覚野における視覚誘発電位を高めることのいずれかを含む、実施形態19~21のいずれかに記載の方法。
[実施形態23]網膜色素変性症または加齢性黄班変性症を治療する方法であって、それを必要とする対象に実施形態1~5に記載のポリペプチドまたは実施形態7~8に記載の核酸を投与することを含む、前記方法。
[実施形態24]前記組成物が硝子体内または網膜下の注射によって投与される、実施形態19~23のいずれかに記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
【配列表】
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