(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】カバー付きコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20220804BHJP
H01R 13/74 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
H01R13/52 B
H01R13/52 301E
H01R13/74 B
(21)【出願番号】P 2019039498
(22)【出願日】2019-03-05
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 昇
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-140675(JP,A)
【文献】特開2017-118624(JP,A)
【文献】特開平10-097881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/74
B60R 16/02
H02G 3/10,3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体に取り付けられるカバー付きコネクタであって、
電線と、
前記電線の端末を保持する電線保持部を備えるハウジング本体と、前記ハウジング本体から連なり、一面に差込口を有するカセット部とを備えるコネクタハウジングと、
前記電線に装着されて、前記電線保持部と前記電線との隙間をシールするシール部材と、
前記コネクタハウジングに組み付けられて前記電線保持部と前記電線とを覆うカバーと、を備え、
前記カバーが、前記差込口から前記カセット部の内部に挿入される差込片を備えて前記カセット部に組み付けられるブラケット部と、前記ブラケット部に連なり、前記車体に取り付けられる車体取付部とを備え
、
前記カセット部が、前記差込片に沿って配置される外壁部を備えており、
前記ブラケット部が、前記差込片との間で前記外壁部を挟むように配置される補助片を備え、
前記ブラケット部が、前記カバーの外部に配され、
前記カセット部が、前記ハウジング本体の外面から延びて前記差込片の側縁に沿って配される側壁部を備え、前記外壁部が、前記側壁部から前記差込片と平行に延びており、
前記補助片が、前記外壁部の外面に沿って配されてい
る、カバー付きコネクタ。
【請求項2】
前記車体取付部が、前記ブラケット部に対して前記コネクタハウジングとは反対側に延びている、請求項
1に記載のカバー付きコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、カバー付きコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタにおける電線端末部の防水構造として、電線とコネクタハウジングとの隙間をシールするゴム栓を備える構造が知られている。
【0003】
この種のコネクタにおいて、コネクタハウジングの側面に配置されたカセット型挿入部が備えられる場合がある。車体に備えられるブラケットの先端がカセット型挿入部に挿入されることで、コネクタが車体に固定される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両を高圧洗浄した場合など、通常よりも高い水圧が作用した場合においても、コネクタハウジング内部への浸水を確実に回避するための対策を、大きな設計変更なく実現したいという要請がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示されるカバー付きコネクタは、車両の車体に取り付けられるカバー付きコネクタであって、電線と、前記電線の端末を保持する電線保持部を備えるハウジング本体と、前記ハウジング本体から連なり、一面に差込口を有するカセット部とを備えるコネクタハウジングと、前記電線に装着されて、前記電線保持部と前記電線との隙間をシールするシール部材と、前記コネクタハウジングに組み付けられて前記電線保持部と前記電線とを覆うカバーと、を備え、前記カバーが、前記差込口から前記カセット部の内部に挿入される差込片を備えて前記カセット部に組み付けられるブラケット部と、前記ブラケット部に連なり、前記車体に取り付けられる車体取付部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本明細書によって開示されるカバー付きコネクタによれば、車両を高圧洗浄した場合など、通常よりも高い水圧が作用した場合においても、ハウジング内部への浸水を確実に回避するための対策を、大きな設計変更なく実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態のカバー付きコネクタの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態において、端子付き電線とゴム栓とが組み付けられたコネクタハウジングの斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態のコネクタハウジングの正面図である。
【
図4】
図4は、実施形態のコネクタハウジングの底面図である。
【
図8】
図8は、実施形態のカバー付きコネクタの分解斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態のカバー付きコネクタの平面図である。
【
図10】
図10は、実施形態のカバー付きコネクタの正面図である。
【
図11】
図11は、実施形態のカバー付きコネクタの側面図である。
【
図12】
図12は、実施形態のカバー付きコネクタの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
本明細書によって開示されるカバー付きコネクタは、車両の車体に取り付けられるカバー付きコネクタであって、電線と、前記電線の端末を保持する電線保持部を備えるハウジング本体と、前記ハウジング本体から連なり、一面に差込口を有するカセット部とを備えるコネクタハウジングと、前記電線に装着されて、前記電線保持部と前記電線との隙間をシールするシール部材と、前記コネクタハウジングに組み付けられて前記電線保持部と前記電線とを覆うカバーと、を備え、前記カバーが、前記差込口から前記カセット部の内部に挿入される差込片を備えて前記カセット部に組み付けられるブラケット部と、前記ブラケット部に連なり、前記車体に取り付けられる車体取付部とを備える。
【0010】
上記の構成によれば、電線保持部と、この電線保持部から導出される電線とがカバーによって覆われている。すなわち、電線保持部と電線との隙間がシール部材によってシールされている部分が、カバーによって覆われている。これにより、シール部分に直接水がかかることが回避されるため、車両を高圧洗浄した場合など、通常よりも高い水圧が作用した場合においても、シール部分からコネクタハウジングの内部に浸水することが回避される。
【0011】
また、カバーが、カセット部に組み付けられるブラケット部と、車体に取り付けられる車体取付部とを備えている。これにより、従来、コネクタハウジングの車体への取り付けのために設けられていたカセット部を、カバーへの取り付けのために利用することができるので、大きな設計変更を行うことなく、コネクタハウジングにカバーを取り付け、防水性能を向上させることができる。
【0012】
さらに、車体取付部が、ブラケット部に連なって設けられている。このような構成によれば、車体取付部とブラケット部とが離れた位置に設けられている場合と比較して、通常よりも高い水圧が作用した場合に、コネクタハウジングとカバーとの組み付け部分、およびカバーと車体パネルとの組み付け部分が互いに支えあって踏ん張ることができ、取付強度が確保される。
【0013】
上記の構成において、前記カセット部が、前記差込片に沿って配置される外壁部を備えており、前記ブラケット部が、前記差込片との間で前記外壁部を挟むように配置される補助片を備えていても構わない。
【0014】
このような構成によれば、補助片が、差込片との間で外壁部を挟むように配置されているので、カバー付きコネクタに対し、通常よりも高い水圧が作用した場合においても、カバーがコネクタハウジングから外れにくくなり、取付強度が向上する。
【0015】
上記の構成において、前記車体取付部が、前記ブラケット部に対して前記コネクタハウジングとは反対側に延びていても構わない。
【0016】
このような構成によれば、コネクタハウジング、コネクタハウジングとカバーとの組み付け部分、およびカバーと車体パネルとの組み付け部分が一列に並ぶ形態となっているので、通常よりも高い水圧が作用した場合に、コネクタハウジングとカバーとの組み付け部分、およびカバーと車体パネルとの組み付け部分が互いに支えあって踏ん張る力をより大きくすることができ、取付強度が確保される。
【0017】
[実施形態の詳細]
本明細書によって開示される技術の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
<実施形態>
実施形態を、
図1から
図14を参照しつつ説明する。本実施形態のカバー付きコネクタ1は、車両の電動ブレーキシステム用のコネクタであって、車体パネルに取り付けられて、タイヤの近傍に配置される。このカバー付きコネクタ1は、電線11を備える端子付き電線10と、電線11に装着されるゴム栓20(シール部材に該当)と、端子付き電線10を保持するコネクタハウジング30と、コネクタハウジング30に組み付けられるカバー50とを備える。
図1に示すように、コネクタハウジング30はカセット部41を備えている。また、カバー50は、コネクタハウジング30から導出される電線11を覆うカバー本体51と、カバー本体51から連なり、カセット部41に組み付けられるブラケット部61と、このブラケット部61から連なり、車体パネルに組み付けられる車体取付部71とを備えている。
【0019】
[端子付き電線10およびゴム栓20]
複数の端子付き電線10のそれぞれは、電線11と、電線11の端末に圧着された端子金具とを備えている。端子金具は、タブ部を有する雄端子金具である。複数の端子付き電線10のそれぞれには、
図2に示すように、ゴム栓20が装着されている。ゴム栓20は、円筒状であって、このゴム栓20の中心孔内に電線11が緊密に挿通されている。ゴム栓20の一端部は、電線11とともに端子金具に圧着されている。
【0020】
[コネクタハウジング30]
コネクタハウジング30は、合成樹脂製であって、
図4に示すように、ハウジング本体31と、このハウジング本体31から連なるカセット部41とを備えている。
【0021】
ハウジング本体31は、
図2および
図4に示すように、相手側コネクタと嵌合されるフード部32と、フード部32から連なる電線保持部33とを備えている。
【0022】
フード部32は、
図3に示すように、矩形板状の底壁部34と、この底壁部34の周縁から延びる角筒状の周壁部35とを備えている。電線保持部33は、
図2に示すように、複数の収容筒部36を備えている。複数の収容筒部36のそれぞれは、円筒状であって、底壁部34から延びている。複数の収容筒部36は、縦横に並び、互いに密着して配置されている。各収容筒部36の内部空間は、キャビティ37となっており、キャビティ37の内部には、電線11の端末と、端子金具において電線11の端末に圧着されている部分と、ゴム栓20の大部分とが収容されている。ゴム栓20は、電線11と収容筒部36の内壁との隙間をシールしている。なお、図面の見易さを考慮し、
図2以外の図面では、電線保持部33の構造を簡略化し、電線11とゴム栓20とを省略して示している。
【0023】
カセット部41は、
図2に示すように、ハウジング本体31に連なり、電線保持部33側の一面に差込口42を有する細長い箱状の部分である。このカセット部41は、
図2、
図4および
図13に示すように、ハウジング本体31から延び、互いに平行に配置される一対の側壁部43と、2つの側壁部43間に配置される第1支持壁44(外壁部に該当)および第2支持壁45と、第1支持壁44の一端に配置される突き当たり壁46と、第1支持壁44から延びる係合部47とを備えている。
【0024】
一対の側壁部43のそれぞれは、
図2に示すように、フード部32と電線保持部33とにまたがって配置されている細長い壁部である。第1支持壁44は、
図4に示すように、2つの側壁部43のそれぞれの延出端に沿って延びる帯状の縦板部44Aと、2つの縦板部44A間を繋ぐ横板部44Bとを備えるH字型の壁部であって、2つの側壁部43の延出端同士を繋いでいる。第2支持壁45は、
図2および
図13に示すように、底壁部34から、電線保持部33に沿って延びる壁部であって、第1支持壁44と平行に配置されている。突き当たり壁46は、
図2、
図4および
図14に示すように、2つの縦板部44Aと周壁部35とを繋ぐ壁部であって、差込口42とは反対側に配置されている。突き当たり壁46は、2つの側壁部43間の中央位置に、ブラケット部61とカセット部41との係合を解除する際に冶具を挿入するための第1冶具挿入口48を有している。
【0025】
係合部47は、
図14に示すように、横板部44Bから延びる板片状の係合片47Aと、係合片47Aの先端から内側に向かって延びる係合爪47Bとを備えている。係合片47Aは、ハウジング本体31に対して近接-離間する方向へ撓むことが可能となっている。
【0026】
[カバー50]
カバー50は、
図5に示すように、カバー本体51と、このカバー本体51に連なり、カセット部41に組み付けられるブラケット部61と、ブラケット部61に連なり、車体パネルに取り付けられる車体取付部71とを備える。
【0027】
カバー本体51は、
図5に示すように、全体としてL字の筒状をなしている。このカバー本体51は、一端部に、一面(挿入面52)に開口するとともに、内部にコネクタハウジング30を保持する筒状のハウジング保持部53を備えており、他端部に、上記挿入面52とは異なる導出面54に開口する筒状の導出部55を備えている。導出部55には、電線11に外装されるコルゲートチューブが保持される。カバー本体51は、
図6に示すように、下カバー部51Aと、この下カバー部51Aとは別体の部材であって、下カバー部51Aに組み付けられる上カバー51Bとで構成されている。上カバー51Bは、ハウジング保持部53の一部を構成する上保持部53Bと、導出部55の一部を構成する上導出部55Bとを備えている。下カバー部51Aは、ハウジング保持部53の残りの部分を構成する下保持部53Aと、導出部55の残りの部分を構成する下導出部55Aとを備えている。
【0028】
ブラケット部61は、
図7に示すように、下カバー部51Aから延びる連結部62と、連結部62から延びる差込片63および補助片65と、差込片63と補助片65とを繋ぐ2つの柱部67とを備えている(
図13を併せて参照)。
【0029】
連結部62は、
図8に示すように、互いに間隔をあけて配置された2枚の連結板62Aによって構成されている。2枚の連結板62Aの隙間は、ブラケット部61とカセット部41との係合を解除する際に冶具を挿入するための第2冶具挿入口68となっている。差込片63は、
図5、
図7および
図8に示すように、連結部62から延び、挿入面52に対して垂直な向きで配置される細長い板状の部分であって、
図5に示すように、係合爪47Bを受け入れ可能な係合孔64を有している。補助片65は、
図5、
図7および
図8に示すように、連結部62から延び、差込片63と平行に、差込片63に対して間隔をあけて延びる細長い板状の部分である。補助片65は、
図5に示すように、差込片63と対向する面から凹む撓み凹部66を有している。2つの柱部67のそれぞれは、
図8および13に示すように、差込片63と補助片65とをつなぐ板壁状の部分であって、連結部62から、差込片63および補助片65と同方向に延びている。2つの柱部67は、
図13に示すように、係合孔64の両側に配置されている。
【0030】
車体取付部71は、車体パネルに固定される部分であって、
図6および
図8に示すように、フランジ部72と、フランジ部72から延びる基部73と、基部73から延びる一対の傾斜片部74とを備えている。フランジ部72は、
図6および
図8に示すように、アーチ状をなしており、
図7および
図8に示すように、アーチの凸面が補助片65において差込片63および下保持部53Aとは反対側の面(
図7の下面)に接続されている。基部73は、
図6に示すように、フランジ部72から連なり、補助片65に対して垂直な方向に延びる板片状の部分である。一対の傾斜片部74のそれぞれは、
図6に示すように、基部73の延出端から、フランジ部72に近接する方向に延びる板片状の部分である。2つの傾斜片部74は、フランジ部72に近づくほど互いに離れるように、基部73に対して傾斜している。
【0031】
[カバー付きコネクタ1の組み立て、および車体への取り付け]
カバー付きコネクタ1を組み立てる際には、まず、ゴム栓20が装着された端子付き電線10がコネクタハウジング30に組み付けられる。電線11の端末に圧着された端子金具がキャビティ37の内部に挿入される。端子金具が正規位置に保持された状態では、タブ部が奥壁を貫通してフード部32の内部に臨む。また、ゴム栓20が、電線11の外周面と収容筒部36の内壁とに密着し、電線11と収容筒部36との隙間をシールする。このようにして、端子付き電線10のコネクタハウジング30への組み付けが完了する。
【0032】
次に、端子付き電線10が組み付けられたコネクタハウジング30に、カバー50が組み付けられる。
【0033】
まず、下カバー部51Aから上カバー51Bが取り外された状態で、カセット部41にブラケット部61が組み付けられる。差込片63が、差込口42からカセット部41の内部に挿入され、第1支持壁44と第2支持壁45との隙間に進入していく。差込片63が係合爪47Bに突き当たると、係合爪47Bが押し下げられ、係合片47Aがコネクタハウジング30から離間する方向へ撓む。このとき、係合片47Aが撓み凹部66の内部に入り込むので、補助片65が係合片47Aに干渉して係合片47Aの撓みが妨げられることがない。差込片63の進入が進むにつれて、電線保持部33が下保持部53Aの内部に進入していく。差込片63が、先端が突き当たり壁46に突き当たる位置まで進入すると、係合爪47Bが係合孔64の内部に入り込んで係合孔64の孔縁に係合する。これにより、差込片63が抜け止め状態となる。このようにして、カセット部41へのブラケット部61の組み付けが完了する(
図11参照)。
【0034】
カセット部41にブラケット部61が組み付けられた状態では、
図11および
図13に示すように、差込片63は、第2支持壁45および周壁部35と第1支持壁44との隙間に収容されている。第1支持壁44は差込片63に沿って配置されており、補助片65が、カセット部41の外側に、第1支持壁44に沿って配置されている。このように、補助片65が第1支持壁44を外側から覆い、差込片63との間で第1支持壁44を挟むように配置されている。これにより、ブラケット部61が補助片65を備えない場合と比較して、カセット部41とブラケット部61との係合部分に高圧洗浄の水圧が作用した場合であっても、カセット部41からブラケット部61が外れにくくなっている。また、
図11に示すように、第1支持壁44から延びる係合片47Aも、補助片65によって外側から覆われているので、意図しない状況で係合片47Aの差込片63に対する係合が解除される方向に撓まされることが回避される。
【0035】
また、
図13に示すように、2つの柱部67が、2つの縦板部44Aの間に入り込む。これらの柱部67は、係合孔64を挟むように配置されているから、係合孔64の孔縁に係合している係合片47Aが、2つの柱部67に挟まれて位置することとなる。このように、係合片47Aの周囲が柱部67によって囲まれているので、意図しない状況で係合片47Aの差込片63に対する係合が解除される方向に撓まされることが回避される。なお、2つの柱部67は、横板部44Bよりも連結部62に近接して配置されており、柱部67が横板部44Bに干渉しないようになっている。
【0036】
カセット部41へのブラケット部61の組み付けが完了すると、電線保持部33の大部分が下保持部53Aの内部に嵌まり込んだ状態となる。この状態で、電線保持部33から導出された電線11が下カバー部51Aの内部に通され、下導出部55Aから外部に導出される。
【0037】
次に、上カバー51Bが、下カバー部51Aに組み付けられ、筒状のカバー本体51とされる。これにより、カバー付きコネクタ1の組み立てが完了する。カバー付きコネクタ1の組み立てが完了した状態では、
図9および
図11に示すように、電線保持部33の大部分がハウジング保持部53の内部に収容され、この電線保持部33から導出される電線11がカバー50によって覆われる。すなわち、電線保持部33と電線11との隙間がゴム栓20によってシールされている部分が、カバー50によって覆われる状態となる。電線11の他端部は、カバー本体51の内部を通って導出部55から外部に導出される。また、車体取付部71は、
図10に示すように、補助片65において下保持部53Aとは反対側の面から延びている。すなわち、車体取付部71が、ブラケット部61に対してコネクタハウジング30とは反対側に延びている。
【0038】
カバー付きコネクタ1の組み立てが完了したら、カバー付きコネクタ1が車体パネルに取り付けられる。車体パネルは、取付孔を有しており、この取付孔に、基部73と一対の傾斜片部74とが押し込まれる。すると、一対の傾斜片部74が、取付孔の開口縁に押されて内方に撓む。フランジ部72が車体パネルに当たるまで車体取付部71が押し込まれると、一対の傾斜片部74が取付孔を通り抜けて撓みが復元する。これにより、フランジ部72と、一対の傾斜片部74との間で車体パネルが挟み付けられる。このようにして、カバー付きコネクタ1の車体パネルへの取り付けが完了する。
【0039】
メンテナンス等のために、コネクタハウジング30をカバー50から外す際には、第1冶具挿入口48および第2冶具挿入口68から冶具が挿入される。そして、冶具によって係合片47Aが撓まされて、係合爪47Bの係合孔64の孔縁への係合が解除される。この状態で、差込片63がカセット部41から引き抜かれる。
【0040】
[作用効果]
以上のように本実施形態によれば、カバー付きコネクタ1は、車両の車体パネルに取り付けられるコネクタであって、電線11と、電線11の端末を収容する電線保持部33を備えるハウジング本体31と、ハウジング本体31から連なり、一面に差込口42を有するカセット部41とを備えるコネクタハウジング30と、電線11に装着されて、電線保持部33と電線11との隙間をシールするゴム栓20と、コネクタハウジング30に組み付けられて電線保持部33と電線11とを覆うカバー50と、を備える。カバー50が、差込口42からカセット部41の内部に挿入される差込片63を備えてカセット部41に組み付けられるブラケット部61と、ブラケット部61に連なり、車体パネルに取り付けられる車体取付部71とを備える。
【0041】
上記の構成によれば、電線保持部33と、この電線保持部33から導出される電線11とがカバー50によって覆われている。すなわち、電線保持部33と電線11との隙間がゴム栓20によってシールされている部分が、カバー50によって覆われている。これにより、シール部分に直接水がかかることが回避されるため、車両を高圧洗浄した場合など、通常よりも高い水圧が作用した場合においても、シール部分からコネクタハウジング30の内部に浸水することが回避される。
【0042】
また、カバー50が、カセット部41に組み付けられるブラケット部61と、車体パネルに取り付けられる車体取付部71とを備えている。これにより、従来、コネクタハウジング30の車体への取り付けのために設けられていたカセット部41を、カバー50への取り付けのために利用することができるので、大きな設計変更を行うことなく、コネクタハウジング30にカバー50を取り付け、防水性能を向上させることができる。
【0043】
さらに、車体取付部71が、ブラケット部61に連なって設けられている。このような構成によれば、車体取付部71とブラケット部61とが離れた位置に設けられている場合と比較して、通常よりも高い水圧が作用した場合に、コネクタハウジング30とカバー50との組み付け部分、およびカバー50と車体パネルとの組み付け部分が互いに支えあって踏ん張ることができ、取付強度が確保される。
【0044】
また、カセット部41が、差込片63に沿って配置される第1支持壁44を備えており、ブラケット部61が、差込片63との間で第1支持壁44を挟むように配置される補助片65を備える。このような構成によれば、補助片65が、差込片63との間で第1支持壁44を挟むように配置されているので、カバー付きコネクタ1に対し、通常よりも高い水圧が作用した場合においても、カバー50がコネクタハウジング30から外れにくくなり、取付強度が向上する。
【0045】
また、車体取付部71が、ブラケット部61に対してコネクタハウジング30とは反対側に延びている。このような構成によれば、コネクタハウジング30、コネクタハウジング30とカバー50との組み付け部分、およびカバー50と車体パネルとの組み付け部分が一列に並ぶ形態となっているので、通常よりも高い水圧が作用した場合に、コネクタハウジング30とカバー50との組み付け部分、およびカバー50と車体パネルとの組み付け部分が互いに支えあって踏ん張る力をより大きくすることができ、取付強度が確保される。
【0046】
<他の実施形態>
(1)車体保持部の形状は上記実施形態の限りではなく、例えば、車体パネルに対してねじ止めされる第2のブラケット部であっても構わない。
【0047】
(2)ブラケット部は、補助片を備えていなくても構わない。その場合、車体取付部は差込片から延びていても構わない。
【0048】
(3)車体取付部は、カバー本体およびブラケット部とは別体の部材であって、ブラケット部に組み付けられていても構わない。その場合、外力が加えられた場合に最も大きな応力がかかりやすい車体取付部が強度の高い材料により形成され、カバー本体およびブラケット部が安価な材料により形成されていても構わない。車体取付部の材料としてはポリアミド6T、カバー本体およびブラケット部の材料としてはポリプロピレンが例示される。
【符号の説明】
【0049】
1:カバー付きコネクタ
10:端子付き電線
11:電線
20:ゴム栓(シール部材)
30:コネクタハウジング
31:ハウジング本体
32:フード部
33:電線保持部
34:底壁部
35:周壁部
36:収容筒部
37:キャビティ
41:カセット部
42:差込口
43:側壁部
44:第1支持壁(外壁部)
44A:縦板部
44B:横板部
45:第2支持壁
46:突き当たり壁
47:係合部
47A:係合片
47B:係合爪
48:第1冶具挿入口
50:カバー
51:カバー本体
51A:下カバー部
51B:上カバー
52:挿入面
53:ハウジング保持部
53A:下保持部
53B:上保持部
54:導出面
55:導出部
55A:下導出部
55B:上導出部
61:ブラケット部
62:連結部
62A:連結板
63:差込片
64:係合孔
65:補助片
66:撓み凹部
67:柱部
68:第2冶具挿入口
71:車体取付部
72:フランジ部
73:基部
74:傾斜片部