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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/46 20060101AFI20220804BHJP
   H01R 13/6473 20110101ALI20220804BHJP
   H01R 24/44 20110101ALI20220804BHJP
【FI】
H01R13/46 B
H01R13/6473
H01R24/44
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019102322
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020198162
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】狩田 将大
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/003466(WO,A1)
【文献】特開2018-063796(JP,A)
【文献】特開2018-147817(JP,A)
【文献】特開平10-189114(JP,A)
【文献】特開平08-148194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/46
H01R 13/6473
H01R 24/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの内導体と、インナハウジングと、を備えたコネクタであって、
前記インナハウジングは、第1ハウジングと、少なくとも1つの第2ハウジングとを互いに組み付けて形成されており、
前記第1ハウジングは、載置部と、少なくとも1つの第1側壁とを有しており、
前記内導体は、端子接続部を有し、
前記端子接続部は、前方に向かって延びて形成されており、
前記載置部には、前記内導体が端子接続部を前方に向けて突出させた状態で配置されており、
前記第1側壁は、前記載置部から前記第2ハウジングに向かって延びており、
前記第2ハウジングは、保護壁と、少なくとも1つの第2側壁とを有しており、
前記保護壁は、前記載置部から突出した前記端子接続部よりも大きく形成されており、
前記第2側壁は、前記保護壁から前記第1側壁に重なるように配置されており、
前記第1側壁と前記第2側壁とはスライド機構を有し、
前記スライド機構は、前記第1側壁および前記第2側壁のうちのいずれか一方の側壁において他方の側壁に向かって突出する嵌合部と、前記他方の側壁において前記嵌合部が嵌まる嵌合孔とを有しており、
前記嵌合孔は、前記嵌合部よりも前後方向に長く形成されているコネクタ。
【請求項2】
前記載置部には、前記内導体が前記第1側壁と前記第2側壁とが重なる方向に2つ並んで配置されており、
隣り合う前記内導体の間には、前記スライド機構の厚さ寸法よりも大きい厚さ寸法の隔壁が配置されている請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複数の内導体が取り付けられる誘電体を備えた高速通信用のコネクタは、特開2018-147817号公報(下記特許文献1)に記載のものが知られている。
【0003】
このコネクタにおける誘電体は、左右方向両端部に一対の側壁部を有する第1部品と、左右方向両端部に一対の側板部を有する第2部品とを備えている。第1部品と第2部品とは、一対の側壁部に凹んで形成されたロック溝を構成するロック突部と、一対の側板部に突出して形成されたロックリブとをそれぞれ上下方向に係止させて互いに合体することにより誘電体を構成する。
【0004】
第2部品は、ロック突部とロックリブとが互いに接触した状態で前後方向に滑り合うことによって、雄端子を覆い隠して保護する保護位置と、雄端子を露出させる露出位置との間を前後方向にスライド移動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-147817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のコネクタによると、第1部品に対して第2部品をスライドさせるスライド機構は、側壁部および側板部の厚さ寸法に加え、側壁部と側板部との間にロックリブとロック突部とを上下方向に係止させる係止代の寸法を確保する必要がある。このため、コネクタが側壁部および側板部の厚さ方向に大型化してしまう。
【0007】
しかしながら、スライド機構が大型化するという理由で、第1部品に対して第2部品がスライドできなくなると、雄端子を保護することができなくなってしまう。
【0008】
本明細書では、スライド機構を小型化する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のコネクタは、少なくとも1つの内導体と、インナハウジングと、を備えたコネクタであって、前記インナハウジングは、第1ハウジングと、少なくとも1つの第2ハウジングとを互いに組み付けて形成されており、前記第1ハウジングは、載置部と、少なくとも1つの第1側壁とを有しており、前記内導体は、端子接続部を有し、前記端子接続部は、前方に向かって延びて形成されており、前記載置部には、前記内導体が前記端子接続部を前方に向けて突出させた状態で配置されており、前記第1側壁は、前記載置部から前記第2ハウジングに向かって延びており、前記第2ハウジングは、保護壁と、少なくとも1つの第2側壁とを有しており、前記保護壁は、前記載置部から突出した前記端子接続部よりも大きく形成されており、前記第2側壁は、前記保護壁から前記第1側壁に重なるように配置されており、前記第1側壁と前記第2側壁とは、スライド機構を有し、前記スライド機構は、前記第1側壁および前記第2側壁のうちのいずれか一方の側壁において他方の側壁に向かって突出する嵌合部と、前記他方の側壁において前記嵌合部が嵌まる嵌合孔とを有しており、前記嵌合孔は、前記嵌合部よりも前後方向に長く形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、スライド機構を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1のコネクタの分解斜視図である。
図2図2は、コネクタの斜視図である。
図3図3は、第1ハウジングに一対のスライド部材を組み付ける前の状態を示す斜視図である。
図4図4は、第1ハウジングに対して一対のスライド部材が保護位置に組み付けられた状態を示す斜視図である。
図5図5は、第1ハウジングに対して一対のスライド部材が保護位置に組み付けられた状態を示す平面図である。
図6図6は、第1ハウジングに対して一対のスライド部材が保護位置に組み付けられた状態を示す側面図である。
図7図7は、第1ハウジングに対して一対のスライド部材が露出位置に組み付けられた状態を示す斜視図である。
図8図8は、第1ハウジングに対して一対のスライド部材が露出位置に組み付けられた状態を示す平面図である。
図9図9は、第1ハウジングに対して一対のスライド部材が露出位置に組み付けられた状態を示す側面図である。
図10図10は、図9のX-X線断面図である。
図11図11は、実施形態2のコネクタの図10の断面に相当する断面図である。
図12図12は、従来型のコネクタの図10の断面に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
【0013】
(1)少なくとも1つの内導体と、インナハウジングと、を備えたコネクタであって、前記インナハウジングは、第1ハウジングと、少なくとも1つの第2ハウジングとを互いに組み付けて形成されており、前記第1ハウジングは、載置部と、少なくとも1つの第1側壁とを有しており、前記内導体は、端子接続部を有し、前記端子接続部は、前方に向かって延びて形成されており、前記載置部には、前記内導体が端子接続部を前方に向けて突出させた状態で配置されており、前記第1側壁は、前記載置部から前記第2ハウジングに向かって延びており、前記第2ハウジングは、保護壁と、少なくとも1つの第2側壁とを有しており、前記保護壁は、前記載置部から突出した前記端子接続部よりも大きく形成されており、前記第2側壁は、前記保護壁から前記第1側壁に重なるように配置されており、前記第1側壁と前記第2側壁とは、スライド機構を有し、前記スライド機構は、前記第1側壁および前記第2側壁のうちのいずれか一方の側壁において他方の側壁に向かって突出する嵌合部と、前記他方の側壁において前記嵌合部が嵌まる嵌合孔とを有しており、前記嵌合孔は、前記嵌合部よりも前後方向に長く形成されている。
【0014】
第1側壁および第2側壁のうちのいずれか一方の側壁における嵌合部が、他方の側壁における嵌合孔に嵌まることによって第1ハウジングに対して第2ハウジングを移動させるスライド機構が構成される。
つまり、スライド機構は、第1側壁の厚さ寸法と第2側壁の厚さ寸法の合計寸法の範囲内で構成される。これにより、当該コネクタは、第1側壁の厚さ寸法と第2側壁の厚さ寸法の合計寸法と、互いに係止する部分の幅寸法とを確保する必要がある従来型のコネクタに比べて、スライド機構を小型化できる。
【0015】
(2)前記載置部には、前記内導体が前記第1側壁と前記第2側壁とが重なる方向に2つ並んで配置されており、隣り合う前記内導体の間には、前記スライド機構の厚さ寸法よりも大きい厚さ寸法の隔壁が配置されている。
一般に、信号が流れる内導体の周囲において金属導体の割合が大きくなると、インピーダンスが低下してしまう。
【0016】
ところが、当該コネクタは、隣り合う内導体間のピッチをスライド機構の厚さ寸法よりも大きくできる。
すなわち、内導体間ピッチが大きくなることによってそれぞれの内導体におけるインピーダンスの低下を抑制できる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタの具体例を、以下の図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
<実施形態1>
本開示における実施形態1について図1から図10を参照して説明する。
実施形態1のコネクタ10は、車両に搭載される高速通信用のコネクタである。
コネクタ10は、図1および図2に示されるように、複数の内導体20と、インナハウジング30と、外導体60と、アウタハウジング70とを備えている。
【0019】
[内導体20]
複数の内導体20は、それぞれが導電性を有する金属板材を加工することによって形成されている。実施形態1は、4つの内導体20を備えている。内導体20は、図1に示されるように、雄型の端子であって、端子本体21と、端子接続部22と、電線接続部24と、を備えている。
【0020】
端子本体21は、前後方向に長い角筒状に形成されている。端子接続部22は、内導体20の前端部において端子本体21の前方に連なって形成されている。端子接続部22は、端子本体21から前方に向かって延びる細長い角柱状に形成されている。電線接続部24は、端子本体21の後方に連なって形成されている。電線接続部24は、シールド電線80の前端部に圧着されている。
【0021】
[シールド電線80]
シールド電線80は、図1に示されるように、複数の電線(実施形態1では4本)81と、複数の電線81の外周を覆う編組体82と、編組体82の外周を覆う外被覆84とを備えている。
【0022】
シールド電線80の前端部では、編組体82と外被覆84とが皮剥ぎされることによって4本の電線81が露出している。
露出した4本の電線81のうち、下側に配置された2本は電源用の電線81とされている。上側に配置された2本は、下側の2本よりも電線径が大きい信号用の電線81とされている。
【0023】
露出した4本の電線81の前端部では、被覆を剥がされた芯線が内導体20の電線接続部24にそれぞれ圧着されている。これにより、各電線81と内導体20とが電気的に接続されている。
露出した4本の電線81の後方では、外被覆84のみが皮剥ぎされて露出した編組体82が外被覆84の外周に折り返されている。
【0024】
[インナハウジング30]
インナハウジング30は、絶縁性の合成樹脂によって形成されている。
インナハウジング30は、図1図3および図4に示されるように、第1ハウジング31と、2つの第2ハウジング42とが、上下方向に互いに組み付けられて形成される。
【0025】
第1ハウジング31は、図1および図3に示されるように、載置部32と、隔壁33と、一対の第1側壁34とを備えている。
載置部32は、左右方向の幅寸法よりも前後方向に長い矩形の板状に形成されている。
【0026】
隔壁33は、載置部32を上下方向に貫通した形態で、載置部32の左右方向の中央部に形成されている。隔壁33は、内導体20の端子本体21よりも前後方向に長い矩形の板状に形成されている。隔壁33は、端子本体21の高さ寸法よりも載置部32から上下方向へ延びて形成されている。
隔壁33の先端部には、載置部32から離れる方向に突出する位置決め突部35が形成されている。
【0027】
一対の第1側壁34は、載置部32の左右方向両側の側縁部よりもやや内側の位置にそれぞれ形成されている。各第1側壁34は、載置部32を上下方向に貫通した形態で内導体20の端子本体21よりも前後方向に長い矩形の板状に形成されている。第1側壁34は、第2ハウジング42に向かうように端子本体21の高さ寸法よりも上下方向に大きい形態とされている。第1側壁34の先端部には、嵌合部36がそれぞれ形成されている。
それぞれの嵌合部36は、第1側壁34の先端部に沿うように前後方向に延びると共に、互いに離れるように左右方向に突出して形成されている。
【0028】
載置部32と、隔壁33と、第1側壁34とに囲まれた領域は、後述する第2ハウジング42の保護壁43と共に、内導体20の端子本体21および電線接続部24を収容する端子収容部37とされている。つまり、インナハウジング30には、左右方向に並んだ2つの端子収容部37が上下に2段に構成されている。
そして、内導体20が端子収容部37に収容されると、図3に示されるように、端子接続部22が端子収容部37から前方に突出する。したがって、載置部32には、4つの内導体20が端子接続部22を前方に向けて突出させると共に、上下方向および左右方向に2つずつ並んだ状態で配置されている。
【0029】
2つの第2ハウジング42は、図3から図9に示されるように、上下方向から第1ハウジング31に対して組み付けられる。各第2ハウジング42は、保護壁43と、一対の第2側壁46と、前壁48とを備えている。
【0030】
保護壁43は、第1ハウジング31の載置部32よりも前後方向および左右方向に大きい矩形板状に形成されている。これにより、第2ハウジング42が第1ハウジング31に対して組み付けられると、保護壁43は、図10に示されるように、載置部32と、隔壁33と、第1側壁34と共に、一対の内導体20の外周を取り囲むようになっている。
【0031】
保護壁43の左右方向の中央部には、図3から図5に示されるように、第1ハウジング31の位置決め突部35が嵌まる位置決め孔44が保護壁43を上下方向に貫通して形成されている。
位置決め孔44は、位置決め突部35よりも前後方向に延びて形成されている。位置決め孔44の前端部および後端部は、位置決め突部35の左右方向の幅寸法よりも僅かに大きく形成された突部保持孔44Aとされており、位置決め孔44における突部保持孔44Aの間の領域は、位置決め突部35の幅寸法よりもやや狭い幅狭孔44Bとされている。
【0032】
位置決め孔44の左右方向両側には、撓み変形孔45が保護壁43を上下方向に貫通して形成されている。
撓み変形孔45は、位置決め孔44よりも前後方向にやや短めに形成されている。
【0033】
一対の第2側壁46は、図3および図10に示されるように、保護壁43の左右方向両側の側縁部において第1側壁34の外側に重なるように第1ハウジング31に向けて延びて形成されている。第2側壁46は、内導体20の端子本体21よりも前後方向に長い矩形の板状に形成されている。
【0034】
第2側壁46は、図3図4および図6に示されるように、第2ハウジング42が第1ハウジング31に組み付けられた際に、第1側壁34の嵌合部36が内側から嵌まる嵌合孔47を有している。嵌合孔47は、第2側壁46を左右方向に貫通する側面視矩形状に形成されている。嵌合孔47は、嵌合部36よりも前後方向に長く形成されている。
また、第2側壁46は、第2ハウジング42が第1ハウジング31に組み付けられた際に、図6および図9に示されるように、第1ハウジング31の載置部32に沿って配置される。
【0035】
前壁48は、保護壁43の前端部と、一対の第2側壁46における前端部とに連なるように形成されている。前壁48は、第2ハウジング42が第1ハウジング31に組み付けられると、第1ハウジング31の前端部と共に内導体20を前止まりするようになっている。
【0036】
また、各第2ハウジング42は、嵌合孔47内において嵌合部36を前後方向に移動させることにより、第1ハウジング31に対して保護位置と露出位置との間を前後方向に独立してスライド移動可能とされている。各第2ハウジング42は、前後方向に移動する際には、一対の第2側壁46が載置部32に沿って滑らかに移動する。
【0037】
保護位置は、図4から図6に示されるように、嵌合部36が嵌合孔47の後端部に配置されると共に、保護壁43が端子収容部37から前方に突出した端子接続部22を上方もしくは下方から覆う位置とされている。露出位置は、図7から図9に示されるように、嵌合部36が嵌合孔47の前端部に配置されると共に、保護壁43が端子収容部37から前方に突出した端子接続部22を露出させる位置とされている。
【0038】
したがって、実施形態1では、図4図6図7図9および図10に示されるように、一対の第1側壁34の嵌合部36が、一対の第2側壁46の嵌合孔47に嵌まることによって、第1ハウジング31の第1側壁34と第2ハウジング42の第2側壁46とがスライド機構50を有する構成とされている。そして、第1側壁34における嵌合部36が、第2側壁46における嵌合孔47内を移動することによって第1ハウジング31に対して第2ハウジング42が保護位置と露出位置との間を前後方向に移動する。
【0039】
つまり、実施形態1のスライド機構50は、第1側壁34の厚さ寸法L1と第2側壁46の厚さ寸法L2との合計寸法に、第1側壁34と第2側壁46との間の僅かな隙間寸法を加えた寸法の範囲内に形成されている。
【0040】
また、第2ハウジング42は、図4および図5に示されるように、位置決め突部35が位置決め孔44の後側の突部保持孔44Aにセミロック状態で保持されることにより保護位置に保持される。一方、図7および図8に示されるように、位置決め突部35が位置決め孔44の前側の突部保持孔44Aにセミロック状態で保持されることにより第2ハウジング42が露出位置に保持される。そして、第2ハウジング42を保護位置と露出位置との間において移動させる場合には、位置決め突部35が幅狭孔44Bに進入して幅狭孔44Bの内壁が撓み変形孔45側に弾性変位することによって位置決め突部35の前後方向への移動が許容される。
【0041】
[外導体60]
外導体60は、導電性を有する金属板材を加工することによって角筒状に形成されている。
外導体60は、図1および図2に示されるように、アッパシェル61と、ロアシェル66とが、上下方向に互いに組み付けられて形成される。
【0042】
アッパシェル61は、天井板62と、一対のアッパ側板63と、接続片65とを備えている。
天井板62は、前後方向に延びる矩形の板状に形成されている。一対のアッパ側板63は、天井板62の左右方向両側の側縁から下方に延びて形成されている。各アッパ側板63は、天井板62の側縁に全長にわたって連なる矩形板状に形成されている。アッパ側板63の前端下縁には、アッパ側板63の間を左右方向に繋ぐ繋ぎ板64が形成されている。
接続片65は、天井板62の後端縁に連なって形成されている。接続片65は、シールド電線80の編組体82の外面に配置される。
【0043】
ロアシェル66は、底板67と、一対のロア側板68と、圧着部69とを備えている。
底板67は、前後方向に延びる矩形の板状に形成されている。一対のロア側板68は、底板67の左右方向両側の側縁から上方に延びて形成されている。各ロア側板68は、底板67の側縁に全長に連なって形成されている。
【0044】
圧着部69は、底板67および一対のロア側板68の後端縁において円筒状に形成されている。圧着部69は、アッパシェル61の接続片65と編組体82との外周に圧着されている。これにより、外導体60は、シールド電線80の編組体82に電気的に接続されている。
【0045】
また、アッパシェル61とロアシェル66とが互いに組み付けられると、角筒状の筒部60Aが形成される。筒部60Aには、図2および図10に示されるように、インナハウジング30が収容される
【0046】
インナハウジング30が筒部60Aに収容されると、図10に示すように、アッパシェル61の天井板62とロアシェル66の底板67とがインナハウジング30の上下面に沿って配置される共に、アッパシェル61のアッパ側板63とロアシェル66のロア側板68とがインナハウジング30の左右方向両側の外側面に沿って配置されるようになっている。
【0047】
[アウタハウジング70]
アウタハウジング70は、絶縁性の合成樹脂によって形成されている。
アウタハウジング70の内部には、図2に示されるように、シールド電線80の前端部に接続された外導体60が収容可能とされている。
【0048】
アウタハウジング70の前端部は、図示しない相手側コネクタが内部に進入可能とされている。アウタハウジング70内に相手側コネクタが進入すると、相手側コネクタが2つの第2ハウジング42を押圧することにより、第2ハウジング42が保護位置から露出位置に移動する。これにより、端子接続部22が第2ハウジング42から露出し、相手側コネクタに設けられた図示しない相手側端子と電気的に接続されるようになっている。
【0049】
実施形態1は、以上のような構成であって、続いて、コネクタ10の作用および効果について説明する。
例えば、図12には、従来型のコネクタ201が示されている。従来型のコネクタ201は、従来型の第1ハウジング202の一対の第1側壁203に形成された第1ロックリブ204と、従来型の第2ハウジング205の一対の第2側壁206に形成された第2ロックリブ207とをそれぞれ上下方向に係止させて従来型の第1ハウジング202と従来型の第2ハウジング205とを互いに組み付けて構成されている。
【0050】
この従来型のコネクタ201は、従来型の第1ロックリブ204と従来型の第2ロックリブ207とが互いに接触した状態で従来型の第2ロックリブ207が従来型の第1ロックリブ204に対して前後方向に滑ることにより従来型の第1ハウジング202に対して従来型の第2ハウジング205がスライド移動する。
【0051】
ところが、従来型の第1ハウジング202に対して従来型の第2ハウジング205をスライドさせる従来型のスライド機構208は、従来型の第1側壁203の厚さ寸法L11および従来型の第2側壁206の厚さ寸法L12に加え、従来型の第1側壁203と従来型の第2側壁206との間に、従来型の第1ロックリブ204と従来型の第2ロックリブ207とを上下方向に係止させる係止代の寸法L13を確保する必要がある。したがって、従来型のコネクタ201におけるスライド機構208は、左右方向に大型化してしまう。
【0052】
しかしながら、従来型のスライド機構208が左右方向に大型化するという理由で、従来型の第2ハウジング205を従来型の第1ハウジング202に対してスライド移動できなくすると、従来型の第2ハウジング205によって従来型の内導体209の端子接続部を保護できなくなってしまう。
【0053】
そこで、本発明者らは、上記の課題を解決するため、鋭意検討を行った結果、実施形態1の構成を見出した。すなわち、実施形態1は、少なくとも1つの内導体20と、インナハウジング30と、を備えたコネクタ10であって、インナハウジング30は、第1ハウジング31と、少なくとも1つの第2ハウジング42とを互いに組み付けて形成されている。
【0054】
第1ハウジング31は、載置部32と、少なくとも1つの第1側壁34とを有しており、内導体20は、端子接続部22を有し、端子接続部22は、前方に向かって延びて形成されており、載置部32には、内導体20が端子接続部22を前方に向けて突出させた状態で配置されており、第1側壁34は、載置部32から第2ハウジング42に向かって延びている。
【0055】
第2ハウジング42は、保護壁43と、少なくとも1つの第2側壁46とを有している。保護壁43は、載置部32から前方に突出した端子接続部22よりも大きく形成されており、第2側壁46は、保護壁43から第1側壁34に重なるように配置されている。第1側壁34と第2側壁46とは、スライド機構50を有している。
【0056】
スライド機構50は、第1側壁34(第1側壁34および第2側壁46のうちのいずれか一方の側壁)において第2側壁(他方の側壁)46に向かって突出する嵌合部36と、第2側壁46において嵌合部36が嵌まる嵌合孔47とを有しており、嵌合孔47は、嵌合部36よりも前後方向に長く形成されている。
【0057】
第2ハウジング42は、嵌合部36が嵌合孔47内を前後方向に移動することにより、端子接続部22を保護壁43によって覆う保護位置と、端子接続部22を保護壁43から露出させる露出位置との間を移動可能となっている。
【0058】
すなわち、実施形態1のコネクタ10は、第1側壁34における嵌合部36が、第2側壁46における嵌合孔47に嵌まることによってスライド機構50が構成されている。そして、嵌合部36が嵌合孔47内を前後方向に移動することによって第1ハウジング31に対して第2ハウジング42を保護位置と露出位置との間で移動させることができるようになっている。
【0059】
つまり、実施形態1のスライド機構50は、第1側壁34の厚さ寸法L1と第2側壁46の厚さ寸法L2との合計寸法に、第1側壁34と第2側壁46との間の僅かな隙間寸法を加えた寸法の範囲内に構成されている。これにより、図12に示される従来型のコネクタ1の従来型のスライド機構208(従来型の第1側壁203の厚さ寸法L11と従来型の第2側壁206の厚さ寸法L12の合計寸法に加えて、従来型の第1側壁203と従来型の第2側壁206との間に従来型の第1ロックリブ204と従来型の第2ロックリブ207との係止代の寸法L13をさらに確保する)に比べて、スライド機構50を小型化できる。さらには、スライド機構50が小型化されることにより、コネクタ10を小型化できる。
【0060】
また、実施形態1は、インナハウジング30を収容する外導体60をさらに備え、外導体60は、第1側壁34および第2側壁46の外側に沿って配されるアッパ側板63およびロア側板68を有している。
【0061】
ところで、一般に、信号が流れる内導体の周囲において金属導体の割合が大きくなると、インピーダンスが低下する。ここで、実施形態1の内導体20の端子接続部22は、相手側端子と接続されることにより、端子接続部22の周囲における金属導体の割合が大きくなる。したがって、インピーダンスが低下することが懸念される。
【0062】
ところが、実施形態1は、スライド機構50が小型化したことに伴って、外導体60が小型化されている。つまり、端子接続部22の周囲における金属導体の割合が少なくなっているから、従来型のコネクタ1に比べて、端子接続部22の位置においてインピーダンスが低下することを抑制できる。
【0063】
<実施形態2>
次に、実施形態2について図11を参照して説明する。
実施形態2のインナハウジング130は、実施形態1における隔壁33の左右方向の厚さ寸法を変更したものであって、実施形態1と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0064】
実施形態2の隔壁133は、図11に示すように、左右方向の厚さ寸法が実施形態1の厚さ寸法の2倍以上とされている。また、隔壁133の左右方向の厚さ寸法は、第1側壁34と第2側壁46とにわたって形成されるスライド機構50の左右方向の厚さ寸法よりも大きくなっている。
【0065】
また、実施形態2におけるインナハウジング130の左右方向の幅寸法は、図12に示される従来型のコネクタ1の左右方向の幅寸法と同一とされている。
つまり、実施形態2は、コネクタ110の左右方向の長さ寸法が、従来型のコネクタ1と同一の大きさとなっているものの、左右方向に並ぶ内導体20間のピッチが大きくなっている。
【0066】
実施形態1で述べたように、信号が流れる内導体の周囲において金属導体の割合が大きくなると、インピーダンスが低下してしまう。ところが、実施形態2は、従来型のコネクタ1と左右方向の大きさが同一になっているものの、左右方向に隣り合う内導体20間のピッチが大きくなっている。
つまり、端子接続部22が相手側端子と接続して端子接続部22の周囲における金属導体の割合が大きくなった場合でも、左右方向に隣り合う内導体20との距離が離れているから、従来型のコネクタ1に比べて、インピーダンスの低下を抑制できる。
【0067】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態1,2は、4つの内導体20を備える構成にした。しかしながら、これに限らず、コネクタは、3つ以下や5つ以上の内導体を備えていてもよい。
(2)上記実施形態1,2では、外導体60およびアウタハウジング70を備えた構成にした。しかしながら、これに限らず、外導体やアウタハウジングを備えていないコネクタに構成してもよい。
【0068】
(3)上記実施形態1,2では、第1側壁34に嵌合部36を形成し、第2側壁46に嵌合孔47を形成した構成にした。しかしながら、これに限らず、第1側壁に嵌合孔を形成し、第2側壁に嵌合部を形成する構成にしてもよい。
(4)上記実施形態1,2では、外導体60は、アッパシェル61とロアシェル66とが互いに組み付けられて形成される構成とした。しかしながら、これに限らず、外導体は、1つの部材によって構成されてもよい。
【0069】
(5)上記実施形態1,2は、第1ハウジング31に対して2つの第2ハウジング42がそれぞれ独立してスライド移動する構成にした。しかしながら、これに限らず、2つの第2ハウジングが連結されることによって1つの第2ハウジングとして構成されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10、110: コネクタ
20: 内導体
21: 端子本体
22: 端子接続部
24: 電線接続部
30、130: インナハウジング
31: 第1ハウジング
32: 載置部
33、133: 隔壁
34: 第1側壁
35: 位置決め突部
36: 嵌合部
37: 端子収容部
42: 第2ハウジング
43: 保護壁
44: 位置決め孔
44A: 突部保持孔
44B: 幅狭孔
45: 撓み変形孔
46: 第2側壁
47: 嵌合孔
48: 前壁
50: スライド機構
60: 外導体
60A: 筒部
61: アッパシェル
62: 天井板
63: アッパ側板
64: 繋ぎ板
65: 接続片
66: ロアシェル
67: 底板
68: ロア側板
69: 圧着部
70: アウタハウジング
80: シールド電線
81: 電線
82: 編組体
84: 外被覆
201: コネクタ
202: 第1ハウジング
203: 第1側壁
204: 第1ロックリブ
205: 第2ハウジング
206: 第2側壁
207: 第2ロックリブ
208: スライド機構
209: 内導体
L1、L11: 第1側壁の厚さ寸法
L2、L12: 第2側壁の厚さ寸法
L13: 係止代の寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12