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特許7116950海洋性プラセンタとコラーゲンによるメラニン産生抑制剤
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  • 特許-海洋性プラセンタとコラーゲンによるメラニン産生抑制剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】海洋性プラセンタとコラーゲンによるメラニン産生抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/98 20060101AFI20220804BHJP
   A61K 8/65 20060101ALI20220804BHJP
   A61K 35/60 20060101ALI20220804BHJP
   A61K 38/39 20060101ALI20220804BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220804BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220804BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220804BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
A61K8/98
A61K8/65
A61K35/60
A61K38/39
A61P17/00
A61P43/00 111
A61Q19/00
A61Q19/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018065182
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019172638
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】500517374
【氏名又は名称】株式会社ヴェントゥーノ
(73)【特許権者】
【識別番号】500237911
【氏名又は名称】株式会社 かねふく
(73)【特許権者】
【識別番号】518109952
【氏名又は名称】株式会社カメリカフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中溝 公次
(72)【発明者】
【氏名】竹内 昌也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 秀吾
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-026273(JP,A)
【文献】特開2008-156273(JP,A)
【文献】特開2006-232693(JP,A)
【文献】特開2012-140360(JP,A)
【文献】特開2012-140378(JP,A)
【文献】特開2010-083762(JP,A)
【文献】特開2013-067580(JP,A)
【文献】盛 孝男 ほか,新ペプチドSOPのアンチエイジング機能,食品と開発,2009年,Vol.44, No.9,page.61-64
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 35/00-35/768
A61K 38/00-38/58
A61P 17/00-17/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋性プラセンタを基材に対して0.05~0.15重量%、コラーゲンを前記海洋性プラセンタに対して1~10重量%配合した
ことを特徴とするメラニン産生抑制剤。
【請求項2】
コラーゲンを前記海洋性プラセンタに対して5~10重量%配合した
ことを特徴とする請求項1に記載のメラニン産生抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋性プラセンタとコラーゲンによるメラニン産生抑制剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メラニン産生抑制剤にプラセンタとコラーゲンを配合することは、例えば、特許文献1(特開2003-171300号公報)の実施例1(段落0085)に、プラセンタエキスを10(重量%)及びコラーゲンを20(重量%)配合する点が記載され、特許文献2(特許第4902967号公報)の処方例5(段落0056)に、同じくプラセンタエキスを10(重量%)及びコラーゲンを20(重量%)配合する点が記載されているように、従来知られている。
【0003】
また、特許文献3(特開2003-176219号公報)には、美白乳液用の処方例として、サメ由来コラーゲンペプチド3.0(質量%)及び豚プラセンタ水抽出エキス1.0(質量%)を配合したものや、エモリエントクリームの処方例として、サメ由来コラーゲンペプチド3.0(質量%)及び豚プラセンタ酵素分解溶液1.0(質量%)を配合したものが記載され(段落0103及び0112を参照)、特許文献4(特開2012-67026号公報)には、各種化粧料及び飲食品の成分として、プラセンタやコラーゲンを配合する点が記載されている(段落0067~0078を参照)。
しかし、プラセンタとコラーゲンの配合量及び配合率は固定的で、特にプラセンタとコラーゲンの配合率が投与後の生細胞数やメラニン産生量に大きな影響を与えることは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-171300号公報
【文献】特許第4902967号公報
【文献】特開2003-176219号公報
【文献】特開2012-67026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、海洋性プラセンタとコラーゲンの配合量を変化させた培養液を用いて正常ヒトメラノサイトを培養した後における生細胞数を測定した結果に基づき、それらの配合量の範囲を特定した上で、海洋性プラセンタとコラーゲンの配合量及び配合率を変化させた試験培養液を作成し、生細胞数及びメラニン産生量に良い結果を及ぼすことのできる最適な組み合わせを見出す実験を行った。
【0006】
そして、海洋性プラセンタとコラーゲンの配合量及び配合率を最適化することにより、培養後の生細胞数を減少させず、かつ、メラニン産生量を減少させることができるメラニン産生抑制剤が得られることを突き止めるに至った。
すなわち、本発明は、メラニン産生量を抑制できるだけでなく細胞にも優しいメラニン産生抑制剤の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、海洋性プラセンタを基材に対して0.05~0.15重量%、コラーゲンを前記海洋性プラセンタに対して1~10重量%配合したことを特徴とするメラニン産生抑制剤である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のメラニン産生抑制剤であって、コラーゲンを前記海洋性プラセンタに対して5~10重量%配合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1又は2に係る発明のメラニン産生抑制剤によれば、メラニン産生抑制作用の強いフェニルチオ尿素(Phenylthiourea、PTU)に匹敵するメラニン産生抑制作用を有するだけでなく、投与後の生細胞数を減少させることなく、すなわち細胞に優しいメラニン産生抑制剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】プラセンタ量と生細胞数の関係を評価する予備試験結果の表とグラフ。
図2】コラーゲン量と生細胞数の関係を評価する予備試験結果の表とグラフ。
図3】各種試験培養液と生細胞数の関係を示す表とグラフ。
図4】各種試験培養液とメラニン産生量の関係を示す表とグラフ。
図5】各種試験培養液と細胞当たりメラニン産生量の関係を示す表とグラフ。
図6】本試験により得られた各種試料の顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、予備試験、本試験及び実施例を挙げて本発明を詳しく説明する。
【0012】
[予備試験]
予備試験においては、まず、プラセンタ量と生細胞数の関係を評価するため、正常ヒトメラノサイトを24時間培養した後、海洋性プラセンタ(以下、単に「プラセンタ」という)の添加量が異なる培養液(Medium254)に交換して3日間培養した。
プラセンタの添加量が異なる培養液としては、プラセンタを添加しないもの、プラセンタを培養液1ml当たり1×10-5mg添加したもの、同じく1×10-4mg添加したもの、同じく1×10-3mg添加したもの、同じく0.01mg添加したもの、同じく0.1mg添加したもの、同じく1mg添加したもの、同じく10mg添加したものの8種類を用意し、それぞれの培養液を3箇所に添加した。
正常ヒトメラノサイトを3日間培養した後、細胞増殖能をWST-8法にて測定(具体的には試料の吸光度を測定)し、同じ種類の培養液によって3箇所の培地で培養した試料の測定値の平均値を算出した。
図1は、プラセンタ量と生細胞数の関係を評価する予備試験結果の表とグラフ、すなわち、予備試験により得られた測定値、平均値及び相対生細胞数(プラセンタを添加しないものに対する比率)等を示す表と、相対生細胞数のグラフである。
図1によると、プラセンタを1mg/ml添加したものでは相対生細胞数が無添加のものと比べて大きな変化がないことが分かる。
【0013】
次に、コラーゲン量と生細胞数の関係を評価するため、正常ヒトメラノサイトを24時間培養した後、コラーゲンの添加量が異なる培養液を添加した培地に交換して3日間培養した。
コラーゲンの添加量が異なる培養液としては、コラーゲンを添加しないもの、コラーゲンを培養液1ml当たり1×10-5mg添加したもの、同じく1×10-4mg添加したもの、同じく1×10-3mg添加したもの、同じく0.01mg添加したもの、同じく0.1mg添加したもの、同じく1mg添加したもの、同じく10mg添加したものの8種類を用意し、各種類の培養液を3箇所に添加した。
正常ヒトメラノサイトを3日間培養した後、細胞増殖能をWST-8法にて測定し、同じ種類の培養液によって3箇所の培地で培養した試料の測定値の平均値を算出した。
図2は、コラーゲン量と生細胞数の関係を評価する予備試験結果の表とグラフ、すなわち、予備試験により得られた測定値、平均値及び相対生細胞数(コラーゲンを添加しないものに対する比率)等を示す表と、相対生細胞数のグラフである。
図2によると、コラーゲンの添加量を増やすほど相対生細胞数が減少することが分かる。
【0014】
[本試験]
以上の予備試験結果から、プラセンタ及びコラーゲンの添加量は0.01~1mg/ml程度が良いことが分かったので、プラセンタ及びコラーゲンを0.01mg/ml添加した培養液(以下「プラセンタ0.01」及び「コラーゲン0.01」という)、プラセンタ及びコラーゲンを0.1mg/ml添加した培養液(以下「プラセンタ0.1」及び「コラーゲン0.1」という)並びにプラセンタ及びコラーゲンを1mg/ml添加した培養液(以下「プラセンタ1」及び「コラーゲン1」という)を用いて、予備試験と同様に正常ヒトメラノサイトを培養した。
また、生細胞数やメラニン産生量の参考値を得るため、プラセンタ及びコラーゲンを添加しない培養液(以下「無添加液」という)、細胞やメラニン産生に影響を与えない物質であるジメチルスルホキシド(DMSO)を0.1mg/ml添加した培養液(以下「DMSO液」という)、メラニン産生抑制作用の強い物質であるPTUを400μM添加した培養液(以下「PTU液」という)を用いて、同様に正常ヒトメラノサイトを培養した。
さらに、プラセンタとコラーゲンの配合量及び配合率を変化させて添加した培養液(以下「混合サンプル」という)を用いて、同様に正常ヒトメラノサイトを培養した。
【0015】
混合サンプルとしては、以下の7種類を用意した。
・混合サンプル1:プラセンタ0.01mg/ml、コラーゲン1mg/ml添加
・混合サンプル2:プラセンタ0.1mg/ml、コラーゲン0.01mg/ml添加
・混合サンプル3:プラセンタ0.1mg/ml、コラーゲン0.1mg/ml添加
・混合サンプル4:プラセンタ0.1mg/ml、コラーゲン1mg/ml添加
・混合サンプル5:プラセンタ1mg/ml、コラーゲン0.01mg/ml添加
・混合サンプル6:プラセンタ1mg/ml、コラーゲン0.1mg/ml添加
・混合サンプル7:プラセンタ1mg/ml、コラーゲン1mg/ml添加
なお、本試験では、同じ種類の培養液によって5箇所の培地で培養した試料について、予備試験と同様にWST-8法による測定とメラニン産生量の測定を行い、それぞれ平均値等を算出した。
そして、図3は、本試験により得られた各種試験培養液と生細胞数の関係を示す表とグラフ、図4は、本試験により得られた各種試験培養液とメラニン産生量の関係を示す表とグラフ、図5は、本試験により得られた各種試験培養液と細胞当たりのメラニン産生量の関係を示す表とグラフである。
また、図6は、本試験により得られた各種試料の顕微鏡写真である。
【0016】
図3の表及びグラフによると、混合サンプル5~7で、無添加液、DMSO液、PTU液並びにプラセンタのみ又はコラーゲンのみを添加した培養液による生細胞数を超える生細胞数が得られており、混合サンプル5~7が細胞に優しいものであることが分かる。
図4の表及びグラフによると、混合サンプル5~7で、PTU液以外の培養液によるメラニン産生量を下回るメラニン産生量となることが見て取れる。
そして、図5の表及びグラフによると、混合サンプル5~7で、PTU液以外の培養液による細胞当たりのメラニン産生量を下回るメラニン産生量となることが見て取れ、PTU液を除いて細胞当たりのメラニン産生量が最も少ないプラセンタ1(平均値137.9)と比較しても、混合サンプル5及び混合サンプル6では、それぞれ平均値124.7及び117.3と非常に低い値となっており、メラニン産生を抑制する効果が明らかなPTU液(平均値96.7)に匹敵する値が得られた。
【0017】
本試験の結果から、プラセンタを基材に対して0.5~1.5mg/ml(0.05~0.15重量%)、コラーゲンをプラセンタに対して1~10重量%配合することによって、メラニン産生量を抑制できるだけでなく、細胞にも優しいメラニン産生抑制剤を提供できることが分かる。
また、図5の混合サンプル5~7のグラフからみて、プラセンタを1mg/ml配合した混合サンプルにおいては、細胞当たりのメラニン産生量の極小値はサンプル5と6の間で得られるものと推測できるので、コラーゲンをプラセンタに対して5~10重量%配合することで、より優れたメラニン産生抑制剤を提供することができる。
【0018】
本発明のメラニン産生抑制剤は、内用剤或いは外用剤として処方することができ、また食品或いは飲料の成分としても使用することができる。
そして、本発明のメラニン産生抑制剤は、細胞に優しく、効果的にメラニンの産生を抑制して、色素の沈着を有効に抑制できる。
また、本発明のメラニン産生抑制剤を適用するにあたっては、必要に応じて、基材に対し無機顔料、紫外線吸収剤、美白成分、チロシナーゼ活性阻害剤、メラニン色素還元剤、界面活性剤、細胞賦活剤、抗炎症剤、抗菌剤、保湿剤、香料、着色剤等の添加剤を適宜添加してもよい。
【実施例
【0019】
以下、実施例によって本発明のメラニン産生抑制剤の処方例を説明する。
<処方例1>化粧水(重量%)
海洋性プラセンタ(0.1)
コラーゲン(0.01)
ヒアルロン酸(0.01)
プロテオグリカン(0.01)
エラスチン(0.01)
BG(5)
ステアリン酸(3)
スクワラン(0.05)
香料(適量)
防腐剤(適量)
精製水(残部)
合計(100.0)
【0020】
<処方例2>化粧水(重量%)
海洋性プラセンタ(0.15)
コラーゲン(0.015)
ヒアルロン酸(0.01)
プロテオグリカン(0.01)
エラスチン(0.01)
BG(5)
ステアリン酸(3)
スクワラン(0.05)
香料(適量)
防腐剤(適量)
精製水(残部)
合計(100.0)
【0021】
<処方例3>化粧用クリーム(重量%)
海洋性プラセンタ(0.1)
コラーゲン(0.01)
ヒアルロン酸(0.01)
プロテオグリカン(0.01)
エラスチン(0.01)
スクワラン(0.05)
BG(5)
グリセリン(11)
アルコール(5)
カルボマー(1)
香料(適量)
防腐剤(適量)
精製水(残部)
合計(100.0)
【0022】
<処方例4>化粧用クリーム(重量%)
海洋性プラセンタ(0.15)
コラーゲン(0.015)
ヒアルロン酸(0.01)
プロテオグリカン(0.01)
エラスチン(0.01)
スクワラン(0.05)
BG(5)
グリセリン(11)
アルコール(5)
カルボマー(1)
香料(適量)
防腐剤(適量)
精製水(残部)
合計(100.0)
図1
図2
図3
図4
図5
図6