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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】拡底掘削装置
(51)【国際特許分類】
   E21B 11/00 20060101AFI20220804BHJP
【FI】
E21B11/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018075449
(22)【出願日】2018-04-10
(65)【公開番号】P2019183502
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】506226670
【氏名又は名称】株式会社コトブキ産業
(73)【特許権者】
【識別番号】503133999
【氏名又は名称】株式会社筑豊製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000177416
【氏名又は名称】三和機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】才田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 一郎
(72)【発明者】
【氏名】西谷 信次
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-008077(JP,A)
【文献】特開2009-275357(JP,A)
【文献】特開昭54-054901(JP,A)
【文献】実開昭55-097204(JP,U)
【文献】特開平11-062458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 11/00
E21B 21/00
E21B 37/00
E02D 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設されたケーシングの内周面を押圧するための第1油圧シリンダを有するグリッパー部と、
前記ケーシングの回転により縦穴の周壁を掘削するために径方向に伸長する第2油圧シリンダを有する掘削アーム部とを備え、
前記第1油圧シリンダを伸縮させるグリップ用油圧経路の伸長用油圧経路および縮小用油圧経路のいずれか一方または両方から、前記第2油圧シリンダを縮小させる掘削用油圧経路の縮小用油圧経路に、オイルを流入させるバイパス用油圧回路が設けられた拡底掘削装置。
【請求項2】
前記バイパス用油圧回路は、
前記グリップ用油圧経路の伸長用油圧経路および縮小用油圧経路のいずれか一方または両方と、前記掘削用油圧経路の縮小用油圧経路とを接続するバイパス用油圧経路と、
前記グリップ用油圧経路側と前記掘削用油圧経路側との間で、通常時に遮断し、異常時に連通する第1のストップ弁とを備えた請求項1記載の拡底掘削装置。
【請求項3】
前記バイパス用油圧回路は、バイパス用油圧経路と掘削用油圧経路の縮小用油圧経路との接続位置から上流側の前記掘削用油圧経路の縮小用油圧経路に設けられ、通常時に前記掘削用油圧経路の縮小用油圧経路を連通し、異常時に遮断する第2のストップ弁を備えた請求項2記載の拡底掘削装置。
【請求項4】
前記バイパス用油圧経路は、前記グリップ用油圧経路の伸長用油圧経路と縮小用油圧経路とからの経路を合流させ、前記第1のストップ弁を介して前記掘削用油圧経路の縮小用油圧経路に接続されるものであり、
前記グリップ用油圧経路の伸長用油圧経路および縮小用油圧経路からのそれぞれの経路に、前記掘削用油圧経路側から前記グリップ用油圧経路側への逆流防止用のチェック弁が設けられた請求項2または3記載の拡底掘削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭が立設される縦穴の底部を拡径する拡底掘削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
杭が立設される縦穴の底部を拡底掘削装置により拡げることで、杭を縦穴に立設し、コンクリートを打設したときに縦穴の底部のコンクリート量を増加させることができるので、杭の支持力の増強を図ることができる。このような縦穴の底部を拡げる拡底掘削装置として特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1のオールケーシング工法における拡大根造成方法には、ケーシング内の土砂を排出して地中に所定深さにケーシングを圧入し、次に、上部縦孔の周辺地盤を、拡大掘削装置における拡大掘削アームの回転、降下により拡大掘削し、その間拡大掘削穴の底面に堆積する拡大掘削土砂を回転する土砂案内プレートによりかき集めて中央の土砂溜め穴内に落下させて回集し、次に、ケーシング内、拡大掘削穴内及び土砂溜め穴内にコンクリートを打設することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-8077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のオールケーシング工法における拡大根造成方法に用いられる拡大掘削装置では、シリンダを伸長させて、シリンダのピストンロッドの先端に固定された摩擦グリップ板をケーシングを押圧させて拡大掘削装置を固定させ、ケーシングを回転させながら掘削アームのシリンダを伸長することで、掘削アームの先端の掘削ビットにより、縦穴の周壁を掘削して底部を拡大している。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の拡大掘削装置では、掘削アーム部を伸長させて拡底するときに、掘削アーム部が縮小できない状態となることまで考慮されていない。
掘削アーム部が伸長したままの状態では、掘削アーム部の先端部が縦穴上部の周壁位置より拡がっているため、拡底掘削装置をクレーン車によりそのまま引き上げることができない。
掘削アーム部が縮小できない状態となったときに、掘削アーム部の先端を下方に向けるように、掘削アーム部に構造的な変更・追加をすることも考えられるが、掘削アーム部の構造が複雑になり、部材追加により重量も増大する。
【0007】
そこで本発明は、掘削アーム部を構造的に変更することなく掘削アーム部を引き込ませることができる拡底掘削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の拡底掘削装置は、地中に埋設されたケーシングの内周面を押圧するための第1油圧シリンダを有するグリッパー部と、前記ケーシングの回転により縦穴の周壁を掘削するために径方向に伸長する第2油圧シリンダを有する掘削アーム部とを備え、前記第1油圧シリンダを伸縮させるグリップ用油圧経路の伸長用油圧経路および縮小用油圧経路のいずれか一方または両方から、前記第2油圧シリンダを縮小させる掘削用油圧経路の縮小用油圧経路に、オイルを流入させるバイパス用油圧回路が設けられたことを特徴とする。
【0009】
本発明の拡底掘削装置によれば、第1油圧シリンダを伸縮させるグリップ用油圧経路の伸長用油圧経路および縮小用油圧経路のいずれか一方または両方から、バイパス用油圧回路を介して、掘削用油圧経路の縮小用油圧経路にオイルを流入させることで、第2油圧シリンダを縮小させ、掘削アーム部を縦穴上部の周壁位置より引き込ませることができる。従って、故障により、掘削アーム部が伸長した状態で、縦穴の底部を拡底中に引き込めなくなっても、バイパス用油圧回路により、掘削アーム部を縮小させ、引き込ませることができるので、本発明の拡底掘削装置をクレーン車により引き上げることができる。
【0010】
前記油圧回路は、前記グリップ用油圧経路の伸長用油圧経路および縮小用油圧経路のいずれか一方または両方と、前記掘削用油圧経路の伸長用油圧経路とを接続するバイパス用油圧経路と、前記グリップ用油圧経路側と前記掘削用油圧経路側との間で、通常時に遮断し、異常時に連通するストップ弁とを備えることができる。
通常時では、ストップ弁が遮断しているため、グリップ用油圧経路における伸長用油圧経路および縮小用油圧経路のいずれか一方または両方から、掘削用油圧経路の伸長用油圧経路にオイルは流入しないが、異常時にストップ弁が連通してオイルが掘削用油圧経路の伸長用油圧経路に流入することで、第2油圧シリンダを縮小させることができる。
【0011】
前記バイパス用油圧回路は、バイパス用油圧経路と掘削用油圧経路の縮小用油圧経路との接続位置から上流側の前記掘削用油圧経路の縮小用油圧経路に設けられ、通常時に前記掘削用油圧経路の縮小用油圧経路を連通し、異常時に遮断する第2のストップ弁を備えたものとすることができる。
異常時に、バイパス用油圧回路のバイパス用油圧経路を通じて、掘削用油圧経路の縮小用油圧経路にオイルを流入させるときに、掘削用油圧経路の縮小用油圧経路の上流側にオイルが流出することを防止することができる。
【0012】
前記バイパス用油圧経路は、前記グリップ用油圧経路の伸長用油圧経路と縮小用油圧経路とからの経路を合流させ、前記ストップ弁を介して前記掘削用油圧経路の縮小用油圧経路に接続されるものであり、前記グリップ用油圧経路の伸長用油圧経路および縮小用油圧経路からのそれぞれの経路に、前記掘削用油圧経路側から前記グリップ用油圧経路側への逆流防止用のチェック弁を設けることができる。
グリップ用油圧経路の伸長用油圧経路にオイルを流入させたり、グリップ用油圧経路の縮小用油圧経路にオイルを流入させたりしたときに、伸長用油圧経路から縮小用油圧経路に、またはその反対側に、オイルが流入することを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の拡底掘削装置によれば、故障により、掘削アーム部が伸長した状態で、縦穴の底部を拡底中に引き込めなくなっても、バイパス用油圧回路により、掘削アーム部を縮小させ、引き込ませることができる。従って、掘削アーム部を構造的に変更することなく掘削アーム部を引き込ませ、クレーン車により引き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る拡底掘削装置を用いた縦穴の掘削の状態を示す図である。
図2図1に示す拡底掘削装置の概略斜視図である。
図3図1に示す拡底掘削装置の内部を透視した正面図である。
図4図1に示す拡底掘削装置の内部を透視した底面図である。
図5図1に示す拡底掘削装置の油圧回路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係る拡底掘削装置を図面に基づいて説明する。
図1に示す本実施の形態に係る拡底掘削装置10は、ケーシングCが圧入された縦穴Vであり、杭が立設される縦穴Vの底部B0を拡径するものである。拡底掘削装置10は、クレーン車C1に吊り下げられ、縦穴の底部に配置される。
【0016】
(拡底掘削装置の構成)
図2に示すように、拡底掘削装置10は、吊り下げ部20と、グリッパー部30と、掘削アーム部40と、油圧回路50と、円筒状の筐体部11とを備えている。
吊り下げ部20は、クレーン車により吊り下げるためのフック部21と、外部の操作盤からの油圧用ホースまたは後述するバイパス用油圧回路を経由して連結されたスイベルジョイントを収容するスイベル部22とを備えている。
【0017】
グリッパー部30は、ケーシングの軸線位置に拡底掘削装置10の軸線を合わせた状態で固定するためのものである。
図3に示すように、グリッパー部30は操作盤OP(図1参照)からの指示により伸縮するグリッパー用シリンダ31と、グリッパー用シリンダ31の先端に設けられ、グリッパー用シリンダ31の伸長によりケーシングと接触するグリップ用板32とを備えている。
グリッパー部30は、グリッパー用シリンダ31が縮小した状態では、グリップ用板32の接触面が、筐体部11の外周面に位置する。
グリッパー用シリンダ31は、筐体部11に収容された初期状態からケーシングCの径方向F1(図1図3参照)に伸長して、地中に埋設されたケーシングCの内周面をグリップ用板32により押圧するための第1油圧シリンダとして機能する。
本実施の形態では、筐体部11の外周面から伸長するグリッパー用シリンダ31が、外周面の4箇所に等間隔で設けられている。
【0018】
図3および図4に示すように、掘削アーム部40は、ケーシングの回転により縦穴の周壁を掘削するものである。掘削アーム部40は、操作盤OP(図1参照)からの指示により伸縮する掘削用シリンダ41と、掘削用シリンダ41の先端から突出した掘削ビット42と、掘削ビット42と併設されたブラシ部43とを備えている。
【0019】
掘削用シリンダ41は、ケーシングC(図1参照)の回転により縦穴の周壁を掘削するために、ケーシングCの径方向F1に伸長する第2油圧シリンダとして機能する。
掘削ビット42は、掘削用シリンダ41の先端部に形成されている。掘削ビット42は、下側となるほど突出長さが長くなるように形成されている。
【0020】
ブラシ部43は、掘削用シリンダ41の底面に設けられている。ブラシ部43は、縦穴の底角部B1(図1参照)に接触する第1ブラシ部431と、縦穴の底面の掘削土を集土する第2ブラシ部432とを備えている。
本実施の形態では、ブラシ部43は、基材43aである2枚の直線状の板部材の間に毛材43bの基端部が挟み込まれ、並べられることで形成されている。
第1ブラシ部431は、基材43aから毛材43bが底角部B1に向かって突出するように、毛材43bを外側に拡がるように傾斜させている。
第2ブラシ部432は、基材43aから毛材43bが垂下するように形成されている。
【0021】
ブラシ部43は、掘削ビット42の回転方向F2の後方側に配置されている。ブラシ部43の先端部に位置する第1ブラシ部431は、掘削ビット42とほぼ同じ円周上に位置している。
ブラシ部43における毛材43bの配列方向F3は、回転中心に向かうに従って、回転方向F2の後方に向かって傾斜している。
【0022】
(油圧回路の構成)
ここで、グリッパー用シリンダ31と掘削用シリンダ41とを伸縮させる油圧回路の構成について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、操作盤OPからの4本の油圧用ホースHは、拡底掘削装置10に接続されている。なお、図1では、油圧用ホースHを1本のみ図示している。
拡底掘削装置10では、油圧用ホースHは、図3に示すフック部21から水平方向に延びる支持部材23により支持された、図5に示す油圧回路50の接続管T1~T4に接続されている。接続管T1,T2,T4は、スイベルジョイント55(ロータリージョイント)に直接接続されている。接続管T3は、バイパス用油圧回路54を介して、4ポートが一体型のスイベルジョイント55に接続されている。
【0023】
スイベルジョイント55から、グリップ用油圧経路51として、伸長用油圧経路51aと、縮小用油圧経路51bとが、それぞれのグリッパー用シリンダ31に接続されている。
スイベルジョイント55から、掘削用油圧経路52として、伸長用油圧経路52aと縮小用油圧経路52bとが、掘削用シリンダ41に接続されている。
【0024】
グリップ用油圧経路51の伸長用油圧経路51aには、オイルの流量を均等に分流して、4本のグリッパー用シリンダ31を同時作動させるための分集流弁53aが設けられている。
掘削用油圧経路52の伸長用油圧経路52aにも同様に、オイルの流量を均等に分流して、2本の掘削用シリンダ41を同時作動させるための分集流弁53bが設けられている。
【0025】
そして、グリッパー用シリンダ31を伸長させる伸長用油圧経路51aと、グリッパー用シリンダ31を縮小させる縮小用油圧経路51bとに、掘削用シリンダ41を縮小させる縮小用油圧経路52bを接続するバイパス用油圧回路54が設けられている。
バイパス用油圧回路54は、バイパス用油圧経路54aと、ストップ弁54b,54cと、チェック弁54d,54eとを備えている
バイパス用油圧経路54aは、グリップ用油圧経路51の伸長用油圧経路51aと縮小用油圧経路51bとからの経路を合流させ、掘削用油圧経路52の縮小用油圧経路52bに接続している。
【0026】
ストップ弁54b(第1のストップ弁)は、グリップ用油圧経路51側(伸長用油圧経路51a)と掘削用油圧経路52側(縮小用油圧経路52b)との間で、通常時に遮断し、異常時に連通する電動弁である。ストップ弁54bは、バイパス用油圧経路54aにおける、グリップ用油圧経路51の伸長用油圧経路51aからの経路と縮小用油圧経路51bからの経路とが合流した位置と、掘削用油圧経路52の縮小用油圧経路52bとの接続位置との間に設けられている。ストップ弁54bは、操作盤OPからの指示により作動する。
【0027】
ストップ弁54c(第2のストップ弁)は、通常時に掘削用油圧経路52の縮小用油圧経路52bを連通し、異常時に遮断する電動弁である。ストップ弁54cは、バイパス用油圧経路54aと掘削用油圧経路52の縮小用油圧経路52bとの接続位置から上流側に設けられている。ストップ弁54cは、操作盤OPからの指示により作動する。
チェック弁54d,54eは、掘削用油圧経路52側からグリップ用油圧経路51側への逆流防止用弁である。チェック弁54dは、グリップ用油圧経路51の伸長用油圧経路51aからの経路と合流位置との間に設けられている。チェック弁54eは、グリップ用油圧経路51の縮小用油圧経路51bからの経路と合流位置との間に設けられている。
【0028】
(拡底掘削装置の動作および使用状態)
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る拡底掘削装置10の動作および使用状態を図面に基づいて接続する。
まず、図1に示すように、縦穴が掘削され、この縦穴に図示しない圧入装置により圧入されたケーシングC内に、クレーン車C1によって吊り下げされた状態の拡底掘削装置10を下降させることで、ケーシングCの下端から掘削アーム部40が露出して、縦穴の底部に位置しているものとする。
【0029】
作業者が操作盤OPを操作して、掘削用シリンダ41の伸長を指示する。この指示により、図5に示すグリップ用油圧経路51の伸長用油圧経路51aを介してグリッパー用シリンダ31にオイルが流入して油圧が掛かり、グリッパー用シリンダ31が伸長する。
グリッパー用シリンダ31が伸長することで、図2および図3に示すグリッパー用シリンダ31の先端部に設けられたグリップ用板32が、ケーシングC(図1参照)の内周壁を押圧する。この押圧により、拡底掘削装置10がケーシング内の底部に固定される。
ケーシングを回転させることで、グリッパー部30によりケーシングに固定された拡底掘削装置10全体が回転するため、掘削アーム部40の掘削ビット42が、縦穴の周壁底部を掘削する。
【0030】
圧入装置によりケーシングCを更に圧入しながら、図5に示す掘削用油圧経路52の伸長用油圧経路52aを介して掘削用シリンダ41にオイルを流入させ油圧を掛け、掘削用シリンダ41を伸長させることで、掘削ビット42が縦穴の周壁を徐々に径方向F1に切削するので、縦孔の底部を拡径させることができる。
そして、掘削用シリンダ41を深さに応じて伸長させることで、縦穴の底部に、下方に向かうに従って徐々に直径が拡がる切頭円錐状の傾斜面が形成される。
【0031】
図3および図4に示す掘削ビット42が縦穴の周壁を掘削するときに発生する掘削土は、縦穴の底角部B1に堆積する。しかし、ブラシ部43の第1ブラシ部431が掘削ビット42の回転方向F2の後方に位置しており、縦穴の底角部B1に接触して掘削アーム部40と共に回転するため、第1ブラシ部431が掘削土を掻き出し、径方向F1の中心側に案内する。
そして、掘削土は、第2ブラシ部432により拡底掘削装置10の下方の中央部に寄せられる。掘削用シリンダ41を縮小させながら拡底掘削装置10を回転させることで、ブラシ部43が回転半径を短くしながら掘削土を中央部に集土するので、掘削土を縦穴の底部中央の土砂溜め穴に落下させることができる。
【0032】
縦穴の拡底が完了すると、作業者が図1に示す操作盤OPを操作して、図5に示す掘削用シリンダ41と、グリッパー用シリンダ31の縮小を指示する。この指示により、掘削用油圧経路52の縮小用油圧経路52bを介して掘削用シリンダ41にオイルが流入して油圧が掛かり、掘削用シリンダ41が縮小する。また、グリップ用油圧経路51の縮小用油圧経路51bを介してグリッパー用シリンダ31にオイルが流入して油圧が掛かり、グリッパー用シリンダ31が縮小する。
図3および図4に示す掘削用シリンダ41が縮小することで、掘削アーム部40が引っ込み、グリッパー用シリンダ31が縮小することでグリッパー部30が引っ込む。
そして、図1に示すクレーン車C1により拡底掘削装置10をケーシングCから引き上げ、ケーシングCを縦穴Vから引き抜けば、作業は終了である。
【0033】
以上のように拡底掘削装置10によれば、図3および図4に示す第1ブラシ部431が、毛材43bにより形成されている。そのため、径方向F1の突出長さが掘削ビット42より長く、第1ブラシ部431の毛材43bが縦穴の底角部B1に接触しても撓るので、第1ブラシ部431は破損することなく、底角部B1から掘削土を除去することができる。
【0034】
また、掘削用シリンダ41の底面に、縦穴の底面の掘削土を集土する第2ブラシ部432を備えているので、第1ブラシ部431により縦穴の底角部B1から掻き出した掘削土を第2ブラシ部432により集土することができる。
【0035】
第2ブラシ部432は、第1ブラシ部431から連続して配置されたものである。そのため、第1ブラシ部431により縦穴の底角部B1から掻き出した掘削土を第2ブラシ部431により続けて集土することができる。
【0036】
第1ブラシ部431に続く第2ブラシ部432が、回転中心に向かうに従って、回転方向の後方に向かって傾斜している。そのため、第1ブラシ部431により径方向F1の内側に案内された掘削土は、ブラシ部43の回転が進むと徐々に第1ブラシ部431から第2ブラシ部432へ、第2ブラシ部432を伝って中心側へと掘削土を案内することができる。
【0037】
第1ブラシ部431と第2ブラシ部432とは、掘削ビット42の回転方向F2の後方側に配置されている。そのため掘削ビット42により掘削された掘削土をブラシ部43により直ぐに掻き出し集土することができる。
【0038】
(油圧回路の動作および使用状態)
次に、図5に示すバイパス用油圧回路54の動作および使用状態について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示す拡底掘削装置10が通常動作を行っている場合には、図5に示すグリップ用油圧経路51の伸長用油圧経路51aまたは縮小用油圧経路51bを介してグリッパー用シリンダ31に掛けた油圧は、チェック弁54d,54eを介してストップ弁54bへも掛かる。
しかし、通常動作時は、ストップ弁54bは閉鎖状態であるため、グリッパー用シリンダ31の伸縮動作を、掘削用シリンダ41へ伝達しないようにすることができる。
【0039】
また、バイパス用油圧回路54にチェック弁54d,54eが設けられているため、グリップ用油圧経路51の伸長用油圧経路51aにオイルを流入させたり、グリップ用油圧経路51の縮小用油圧経路51bにオイルを流入させたりしたときに、伸長用油圧経路51aから縮小用油圧経路51bに、またはその反対側に、オイルが流入することを防止することができる。
【0040】
このとき、なんらかの異常により、掘削アーム部40が伸長した状態で、縦穴の底部を拡底中に引き込めなくなったとする。例えば、掘削用油圧経路52の縮小用油圧経路52bに接続された接続管T3や、接続管T3に接続された油圧用ホースH(図1参照)が破断などした場合には、掘削用シリンダ41を縮小させるための油圧を掘削用シリンダ41に掛けることができない。
図1に示す掘削アーム部40が伸長して拡底している状態では、掘削アーム部の先端部が縦穴V上部の周壁位置より拡がっており、掘削アーム部40の回転直径が縦穴V上部の直径より長くなっているため、拡底掘削装置10をクレーン車C1によりそのまま引き上げることができない。
【0041】
そこで、図5に示すバイパス用油圧回路54のストップ弁54cを遮断状態とし、ストップ弁54bを開放状態とする。
そうすることで、異常時に、掘削用油圧経路52の縮小用油圧経路52bの上流側にオイルが流出することなく、グリップ用油圧経路51側と掘削用油圧経路52側とが連通して、グリップ用油圧経路51の伸長用油圧経路51aから、チェック弁54dおよびストップ弁54bを通じてオイルを掘削用油圧経路52の縮小用油圧経路52bへ流入させることができる。
また、グリップ用油圧経路51の縮小用油圧経路51bから、チェック弁54eおよびストップ弁54bを通じてオイルを掘削用油圧経路52の縮小用油圧経路52bへ流入させることができる。
オイルが掘削用油圧経路52の縮小用油圧経路52bに流入すれば、掘削アーム部40を縮小させ、図3に示す掘削アーム部40の先端位置(掘削ビット42の位置)を縦穴上部の周壁位置より引き込ませることができる。
【0042】
従って、故障により、掘削アーム部40が伸長した状態で、縦穴の底部を拡底中に引き込めなくなっても、掘削アーム部40を縮小させ、引き込ませることができるので、図1に示す拡底掘削装置10をクレーン車C1により引き上げることができる。
このように、図5に示す油圧回路50にバイパス用油圧回路54を設けるだけなので、掘削アーム部40を構造的に変更したり、部材の追加をしたりすることなく、バイパス用油圧回路54の追加により、掘削用シリンダ41が引き込めなくなった掘削アーム部40の異常時にも対応することができる。
【0043】
なお、図5に示す本実施の形態のバイパス用油圧回路54では、グリップ用油圧経路51の伸長用油圧経路51aおよび縮小用油圧経路51bの両方から、掘削用油圧経路52の縮小用油圧経路52bにオイルを流入させていたが、いずれか一方だけでもよい。
しかし、グリップ用油圧経路51の伸長用油圧経路51aおよび縮小用油圧経路51bの両方からオイルを流入させるようする方が、グリッパー部30のグリッパー用シリンダ31が伸長してケーシングを押圧した状態であったり、グリッパー用シリンダ31が縮小して、筐体部11に収納された状態であったりしても、掘削アーム部40の掘削用シリンダ41を縮小させることができるため望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の拡底掘削装置は、杭が立設される縦穴を掘削する工事に好適である。
【符号の説明】
【0045】
10 拡底掘削装置
11 筐体部
20 吊り下げ部
21 フック部
22 スイベル部
23 支持部材
30 グリッパー部
31 グリッパー用シリンダ
32 グリップ用板
40 掘削アーム部
41 掘削用シリンダ
41a シリンダ部
41b ピストンロッド部
42 掘削ビット
43 ブラシ部
431 第1ブラシ部
432 第2ブラシ部
43a 基材
43b 毛材
50 油圧回路
51 グリップ用油圧経路
51a 伸長用油圧経路
51b 縮小用油圧経路
52 掘削用油圧経路
52a 伸長用油圧経路
52b 縮小用油圧経路
53a,53b 分集流弁
54 バイパス用油圧回路
54a バイパス用油圧経路
54b,54c ストップ弁
54d,54e チェック弁
55 スイベルジョイント
F1 径方向
F2 回転方向
F3 配列方向
C ケーシング
V 縦穴
B0 底部
B1 底角部
C1 クレーン車
H 油圧用ホース
OP 操作盤
T1~T4 接続管
図1
図2
図3
図4
図5