(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】プッシュプルユニット
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20220804BHJP
F24F 13/08 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
F24F7/06 101A
F24F13/08 A
(21)【出願番号】P 2018111689
(22)【出願日】2018-06-12
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591274325
【氏名又は名称】株式会社ゲンダイプラント
(73)【特許権者】
【識別番号】591274314
【氏名又は名称】元上 章清
(73)【特許権者】
【識別番号】507327752
【氏名又は名称】元上 博章
(73)【特許権者】
【識別番号】507327763
【氏名又は名称】元上 雅章
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【氏名又は名称】畠山 順一
(74)【代理人】
【識別番号】230116296
【氏名又は名称】薄葉 健司
(72)【発明者】
【氏名】元上 章清
(72)【発明者】
【氏名】元上 博章
(72)【発明者】
【氏名】元上 雅章
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-005051(JP,A)
【文献】特開2010-279679(JP,A)
【文献】特開2018-004189(JP,A)
【文献】特開平06-277563(JP,A)
【文献】実開平04-001355(JP,U)
【文献】実開昭60-168545(JP,U)
【文献】登録実用新案第3173962(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性薬剤を用いた部位を切り出す際に用いられ、
中央にフラットな作業面と第1吸気機構を有する切り出し台と、
前記切り出し台と一体となる様に併設され、付着した揮発性薬剤を洗浄する際に用いられ、第2吸気機構を有する流し台と、
前記切り出し台および流し台の上方に設けられ、前記第1吸気機構および第2吸気機構に向けて給気する給気機構と、
前記給気機構と前記第1吸気機構および第2吸気機構の間を3面にて閉塞する側壁と、
前記第1吸気機構および第2吸気機構が吸気した気体を排気する排気機構と
を備え
、
前記給気機構が形成する給気面は、前記第1吸気機構および第2吸気機構が形成する吸気面より狭く、
前記第1吸気機構は、前記作業面と同じ高さから低い位置に、前記作業面を囲むように平面視環状に形成され、
前記第2吸気機構は、前記流し台のシンク壁面に沿って形成され、排気機構に連続する風箱と、前記流し台のシンク壁面上部に設けられる開口部と、前記開口部に対向して設けられるデミスタと、前記デミスタによって分離される水をシンク底面に導く排水戻り路と、を有し、
前記切り出し台の天面と前記流し台のシンク開放面とは、同じ高さにあり、前記第1吸気機構の捕捉面と前記第2吸気機構の捕捉面とは、同じ高さにあり、
前記第1吸気機構の捕捉面における平均流速と前記第2吸気機構の捕捉面における平均流速とは、同等である
ことを特徴とするプッシュプルユニット。
【請求項2】
前記給気機構は、
前記切り出し台および流し台とを跨ぐ方向に長手方向を有し、一端部開口部において給気ファンと連続される給気ボックスと、
前記給気ボックス内に設けられる整流機構と、
を有し、
前記整流機構は、下端が同一高さとなるように、かつ、上端が一端部開口部から遠方に行くほど高くなるように並列に配設される複数の整流板から形成される
ことを特徴とする請求項1記載のプッシュプルユニット。
【請求項3】
前記第1吸気機構端部と前記第2吸気機構端部との長手方向間隔は300mm以下である
ことを特徴とする
請求項1または2記載のプッシュプルユニット。
【請求項4】
前記
第1吸気機構は、
排気機構に連続する
第1風箱と、
前記作業面を囲むように平面視環状に形成される環状溝と、
前記環状溝に沿って複数設けられ、前記環状溝底面を貫通し、前記
第1風箱と連結する連結筒と、
前記連結筒の頭部を囲い、側面に第1吸引孔を有する囲い箱と、
前記環状溝を塞ぎ、天面に第2吸引孔を有する溝蓋とを
有する
ことを
請求項1~3いずれか記載のプッシュプルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプッシュプルユニットに関し、特に、切り出し台と流し台が一体として併設されるプッシュプルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
病院の病理検査において、ホルマリンに浸して検体臓器を固定(細胞組織形態が変化するのを防止)したり、固定した検体臓器を切り出し台において適切な大きさに切り出す作業が行われている。固定作業や切り出し作業の際に付着したホルマリン等を流し台において洗浄する。その際に、ホルマリンからホルムアルデヒドが揮発するおそれがある。
【0003】
一方、特定化学物質障害予防規則が改正され、発癌性の観点から、例えばホルムアルデヒドや1,3-ブタンジエン、硫酸ジエチルの取扱いには大きな注意が要求されるようになった。今回の改正で、ホルムアルデヒドは第3類物質から特定第2類物質に変更された。
【0004】
病理検査室内においても、ホルムアルデヒドの管理濃度は0.1ppm以下と設定され、排気設備の設置や定期的な作業環境測定が義務付けられている。
【0005】
ところで、吸引のみし排気する排気設備では、揮発したホルムアルデヒド等の有害な気体の拡散を防止するためには、大量の空気を吸引して排気する必要がある。その結果、吸引箇所の流速が速くなる。
【0006】
これに対し、プッシュプル型の排気設備が提案されている(例えば特許文献1)。プッシュ機構による給気により、緩やかな気流を発生させ、当該気流とともに有害な気体を吸気して、排出する。これによれば、吸引箇所の流速を穏やかにできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
「プッシュプル型換気装置の性能及び構造上の要件等について」法令により定められ、捕捉気流の一様性について言及されている。特許文献1においても、一様な給気を実現するプッシュ機構について開示されている。
【0009】
特許文献1においては、プッシュ機構のみ開示されているが、特許文献1におけるプッシュ機構が全てのプッシュプルユニットに適用できるとは限らない。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、一様な捕捉気流を実現するプッシュプルユニットを提供することを目的とする。
【0011】
さらに、一様な給気を実現するプッシュ機構および一様な吸気を実現するプル機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の一態様であるプッシュプルユニットは、揮発性薬剤を用いた部位を切り出す際に用いられ、第1吸気機構を有する切り出し台と、前記切り出し台と一体となる様に併設され、付着した揮発性薬剤を洗浄する際に用いられ、第2吸気機構を有する流し台と、前記切り出し台および流し台の上方に設けられ、前記第1吸気機構および第2吸気機構に向けて給気する給気機構と、前記給気機構と前記第1吸気機構および第2吸気機構の間を3面にて閉塞する側壁と、前記第1吸気機構および第2吸気機構が吸気した気体を排気する排気機構とを備える。
【0013】
給気機構は一様な給気を実現し、第1吸気機構および第2吸気機構は一様な吸気を実現する。その結果、一様な捕捉気流を実現できる。
【0014】
上記発明の一態様において、好ましくは、前記給気機構は、前記切り出し台および流し台とを跨ぐ方向に長手方向を有し、一端部開口部において給気ファンと連続される給気ボックスと、前記給気ボックス内に設けられる整流機構と、を有する。前記整流機構は、下端が同一高さとなるように、かつ、上端が一端部開口部から遠方に行くほど高くなるように並列に配設される複数の整流板から形成される。
【0015】
これにより、給気機構は一様な給気を実現できる。
【0016】
上記発明の一態様において、好ましくは、前記切り出し台は、中央にフラットな作業面を有し、前記第1吸気機構は、前記作業面と同じ高さから低い位置に、前記作業面を囲むように平面視環状に形成されている。
【0017】
これにより、第1吸気機構は一様な吸気を実現できる。また、フラットな作業面により作業性が向上する。
【0018】
上記発明の一態様において、好ましくは、前記第2吸気機構は、前記流し台のシンク壁面に沿って形成されている。
【0019】
これにより、第1吸気機構は一様な吸気を実現できる。
【0020】
上記発明の一態様において、好ましくは、前記切り出し台の天面と前記流し台のシンク開放面とは、同じ高さにあり、前記第2吸気機構は、前記流し台のシンク壁面上部に沿って形成され、前記第1吸気機構の捕捉面と前記第2吸気機構の捕捉面とは、同じ高さにある。
【0021】
第1吸気機構の吸気面と前記第2吸気機構の吸気面とを同じ高さにすることにより、第1吸気機構の捕捉面と第2吸気機構の捕捉面とは、同じ高さになる。
【0022】
上記発明の一態様において、好ましくは、前記第1吸気機構の捕捉面における平均流速と前記第2吸気機構の捕捉面における平均流速とは、同等である。
【0023】
すなわち、一様な捕捉気流を実現できる。
【0024】
上記発明の一態様において、好ましくは、前記第1吸気機構端部と前記第2吸気機構端部との長手方向間隔は300mm以下である。
【0025】
これにより、一様な捕捉気流を実現できる。
【0026】
上記課題を解決するために、本発明の一態様である切り出し台は、揮発性薬剤を用いた部位を切り出す際に用いる切り出し台であって、中央にフラットな作業面と、前記作業面と同じ高さから低い位置に、前記作業面を囲むように平面視環状に形成される吸気機構とを有する。
【0027】
これにより、吸気機構は一様な吸気を実現できる。また、フラットな作業面により作業性が向上する。
【0028】
上記発明の一態様において、好ましくは、前記吸気機構は、排気機構に連続する風箱と、前記作業面を囲むように平面視環状に形成される環状溝と、前記環状溝に沿って複数設けられ、前記環状溝底面を貫通し、前記風箱と連結する連結筒と、前記連結筒の頭部を囲い、側面に第1吸引孔を有する囲い箱と、前記環状溝を塞ぎ、天面に第2吸引孔を有する溝蓋とを有する。
【0029】
これにより、吸気の一様性が向上する。
【0030】
上記課題を解決するために、本発明の一態様である流し台は、付着した揮発性薬剤を洗浄する際に用いられ、シンクと、前記流し台のシンク壁面上部に沿って形成される吸気機構とを有する。
【0031】
これにより、吸気機構は一様な吸気を実現できる。
【0032】
上記発明の一態様において、好ましくは、前記吸気機構は、前記流し台のシンク壁面周囲に設けられ、排気機構に連続する風箱と、前記流し台のシンク壁面上部に設けられる開口部と、前記開口部に対向して設けられるデミスタと、前記デミスタによって分離される水をシンク底面に導く排水戻り路と、を有する。
【0033】
これにより、吸気の一様性が向上する。
【発明の効果】
【0034】
本発明のプッシュ機構(給気機構)によれば、一様な給気を実現できる。本発明のプル機構(第1吸気機構および第2吸気機構)によれば、一様な吸気を実現できる。
【0035】
その結果、本発明のプッシュプルユニットによれば、一様な捕捉気流を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】プッシュプルユニット全体構成図(分解斜視図)
【発明を実施するための形態】
【0037】
~プッシュプルユニット~
図1および
図2は、プッシュプルユニット全体構成図である。
図1は各構成の分解斜視図であり、
図2は立面図である。
【0038】
プッシュプルユニットは、プッシュ機構(給気機構10)とプル機構(吸気機構)とから構成される。吸気機構21,31は、それぞれ、切り出し台20と流し台30とに設けられている。
【0039】
給気機構10と吸気機構21,31の間は3面(右側面、背面、左側面)の側壁40により閉塞されている。ただし、正面のみ開放され、作業者が切り出し台20や流し台30にアクセス可能となっている。
【0040】
切り出し台20や流し台30において発生した有害な気体は、給気機構10からの気流とともに吸気機構21,31に吸引され、排気機構50を介して排気される。
【0041】
排気機構50は吸気機構21,31と連続しており、側壁40のうち背面の裏側に設けられている。排気機構50は外部の排風機と接続される。外部排気に変えて室内循環型排気としてもよい。
【0042】
切り出し台20と流し台30とが一体となる様に併設されている。切り出し台20の天面と流し台30のシンク開放面とは、同じ高さにある。
【0043】
切り出し台20は、ホルマリン等の揮発性薬剤に浸して固定(細胞組織形態が変化するのを防止)した検体臓器を適切な大きさに切り出す際に用いられる。流し台30は、付着した揮発性薬剤を洗浄する際に用いられる。
【0044】
プッシュプルユニットを用いた一連の動作について説明する。切り出し台20において、検体が収納されている容器を開封し、検体を取り出す。検体を取り出す際に、道具に揮発性薬剤が付着した場合には、流し台30にて道具を洗浄する。また、流し台30にて揮発性薬剤が付着している検体を洗浄する。
【0045】
切り出し台20において、検体を適切な大きさに切り出す。検体を切り出す際の揮発性薬剤が付着した道具を流し台30にて洗浄する。切り出し台20において、残りの検体を容器の戻し密封する。一連の作業後、流し台30にて手を洗浄する。
【0046】
このように、切り出し台20での動作と流し台30との動作を一連として行なうことができる。
【0047】
~プッシュ機構(給気機構)~
給気機構10は切り出し台20および流し台30の上方に設けられ、吸気機構21および吸気機構31に向けて給気する。
【0048】
図3は給気機構10の断面図である。給気機構10は、給気ファン11と、給気ボックス12と、接続ダクト13と、整流機構14,15とから構成される。
【0049】
給気ファン11は室内の気体を取り込む。給気ファン11は上部にパンチングメタルを備えるファンボックスに囲まれている。
【0050】
給気ボックス12は、切り出し台20および流し台30とを跨ぐ方向に長手方向を有する。
【0051】
接続ダクト13は給気ファン11と給気ボックス12一端開口部を接続する。上下方向に主軸を有する。
【0052】
整流機構14は、接続ダクト13と給気ボックス12との間に設けられる。整流機構14は、末端が同一位置となるように、かつ、先端が上方からから下方に行くほど遠くなるように並列に配設される複数の整流板から形成される。つまり、上方の整流板は短く、下方の整流板は長い。これにより、整流機構14は、給気ファン11からの下方流を一様な水平流に整流する。
【0053】
整流機構15は、給気ボックス12内に設けられる。整流機構15は、下端が同一高さとなるように、かつ、上端が一端部開口部から遠方に行くほど高くなるように並列に配設される複数の整流板から形成される。つまり、近方の整流板は短く、遠方の整流板は長い。これにより、整流機構15は、整流機構14からの水平流を一様な下方流に整流する。
【0054】
給気ボックス12底部にはパンチングメタルが設けられている。パンチングメタルの給気孔より、一様な給気がされる。
【0055】
ところで、本実施形態では、切り出し台20と流し台30とが一体となる様に併設されているため、給気機構が長手方向に長くなる。したがって、一様な給気をすることが重要である。
【0056】
なお、給気ボックス中央に給気ファンが連続すると、中央に気流が集中しやすく、端部に気流を誘導しにくい。これに対し本実施形態では、上記構成により一様な給気を実現できる。
【0057】
図4は給気機構10の変形例である。切り出し台20と流し台30との併設により、給気ボックス12の長手方向長さが長くなる。
【0058】
図示左右両端に給気ファン11が設けられ、整流機構15は、下端が同一高さとなるように、かつ、上端が端部開口部から中央に行くほど高くなるように並列に配設される複数の整流板から形成される。つまり、端部側の整流板は短く、中央側の整流板は長い。
【0059】
これにより変形例ではさらに一様な給気を実現できる。
【0060】
~プル機構~
プル機構はプッシュ機構と対応して設けられる。すなわち、プル機構はプッシュ機構からの給気とともに有害な気体を吸引して排気する。
【0061】
図5はプル機構の平面図である。吸気機構21は切り出し台20に設けられている。吸気機構31は流し台30に設けられている。
【0062】
切り出し台20と流し台30とが一体となる様に併設され、吸気機構21,31は連動してプル機構を構成する。
【0063】
~切り出し台~
切り出し台20は、ホルマリン等の揮発性薬剤に浸して固定した検体臓器を適切な大きさに切り出す際に用いられる。切り出し台20は吸気機構21を有し、揮発性薬剤により発生する有害な気体を吸気する。
【0064】
図6は吸気機構21の内部を示す斜視図である。
図7は吸気機構21の詳細を示す斜視図である。
図8は吸気機構21の詳細を示す断面図である。
【0065】
切り出し台20は、中央にフラットな作業面22を有する。なお、フラットな作業面22は作業性が高い。吸気機構21は、作業面22と同じ高さから低い位置に、作業面22を囲むように平面視環状に形成されている。
【0066】
吸気機構21は、環状溝23と連結筒24と風箱25と囲い箱26と溝蓋27とから構成されている。
【0067】
環状溝23は作業面22を囲むように平面視環状に掘り下げられて形成されている。
【0068】
連結筒24は環状溝23に沿って複数設けられる。連結筒24は、環状溝23底面を貫通し、風箱25と連結している。
【0069】
切り出し台20の躯体は二重構造になっており、内部空間が風箱25として機能する。風箱25は排気機構50に連続する。
【0070】
囲い箱26は、連結筒24の頭部を囲うように被せられ、環状溝23底面に配置される。囲い箱26の側面にはパンチングメタルにより吸引孔が設けられている。ただし、囲い箱26の天面には吸引孔はない。
【0071】
溝蓋27は環状溝23形状に対応した形状により、環状溝23に嵌められ、環状溝23を塞ぐ。複数の部位に分割されている。溝蓋27の天面にはパンチングメタルにより吸引孔が設けられている。
【0072】
図9は切り出し台側における気流の概略断面図である。
【0073】
作業面22で発生した有害な気体は、溝蓋27の吸引孔を介して吸引され、さらに、囲い箱26の吸引孔を介して吸引される。このとき、溝蓋27の吸引孔での下方流は、囲い箱26の吸引孔での水平流に整流される。
【0074】
さらに、囲い箱26内において、連結筒24を介して吸引され、風箱25に導かれる。このとき、囲い箱26の吸引孔での水平流は、連結筒24での下方流に整流される。
【0075】
風箱25内の気体は、排気機構50を介して外部に排気される。
【0076】
吸気機構21によれば、上記構成により整流をおこない、一様な吸気を実現できる。
【0077】
ところで、囲い箱26側面と溝蓋27側面の間には水平方向に隙間が形成される。一方で囲い箱26側面の吸引孔は、側面下部には設けられていない。その結果、当該隙間は排水路として機能する。つまり、環状溝23に沿って排水路が形成されている。
【0078】
切り出し台20は流し台30と一体となる様に併設されているため、水分が溝蓋27の吸引孔を介して混入するおそれもある。また、誤って揮発性薬剤をこぼすおそれもある。
【0079】
混入した水分等は排水路を介して排水部28に集められ、連結管を介して流し台30に排水される。
【0080】
なお、切り出し台20の外縁にはスロープ29が設けられており、流し台30から水分が混入したり、誤って揮発性薬剤をこぼしたりした場合でも、水分等が切り出し台20の外縁からこぼれることがない。
【0081】
~流し台~
流し台30は、付着した揮発性薬剤(例えばホルマリン)を洗浄する際に用いられる。流し台30は吸気機構31を有し、揮発性薬剤により発生する有害な気体を吸気する。
【0082】
【0083】
流し台30は、基本構成として、4つのシンク壁面32と底面から形成されるシンク空間33と、底面中央に形成される排水部34とを備える。さらに、シンク空間33より上部に混合栓を備える。混合栓から給水された水は、ほぼ全てが、排水部34より排水される。排水部34に栓をすることでシンク空間33に水を溜めることもできる。
【0084】
4つのシンク壁面32のうち、混合栓が設けられていない3つのシンク壁面32において、吸気機構31が壁面上部に沿って形成される。
【0085】
吸気機構31は、開口35、デミスタ36、風箱37、水受38、開口39とからとから構成されている。
【0086】
壁面上部には大きな開口35と小さな開口39が設けられている。開口35は壁面上辺に沿って設けられている。開口39は開口35の下方に設けられている。
【0087】
デミスタ36は開口35に対向してシンク壁面32内に設けられている。デミスタ36はシート状のワイヤーメッシュを積層し、サポートフレームにより一体化したものである。
【0088】
シンク壁面32および底面は二重構造になっており、内部空間が風箱37として機能する。風箱37は排気機構50に連続する。
【0089】
水受38はデミスタ36の下方に、かつ、開口39に対向してシンク壁面32内に設けられている。水受38および開口39は排水戻り路を形成する。
【0090】
付着したホルマリン等を洗浄する際に、流し台30を用いる。その際に、ホルマリンからホルムアルデヒドが揮発するおそれがある。なお、ホルムアルデヒドの比重は空気より若干重い。そのため、ホルムアルデヒドはシンク33底部から徐々に拡散する。直ちに病理検査室内に拡散するおそれは少ない。
【0091】
図11は切り出し台側における気流の概略断面図である。
【0092】
シンク空間33で発生した有害な気体は、開口35およびデミスタ36を介して吸引され、風箱37に導かれる。より詳細には、混合栓が設けられているシンク壁面の対面にあるシンク壁面での吸気は下方流となりシンク底面を通過する。左右にあるシンク壁面での吸気は向きが替えられた略水平流となる。風箱37内の気体は、排気機構50を介して外部に排気される。
【0093】
吸気機構31によれば、上記構成による整流により、一様な吸気を実現できる。
【0094】
ところで、混合栓から給水された水のほとんどは、排水部34より排水されるが、水の一部がミスト状となって吸気と共に吸引される。
【0095】
このとき吸気はデミスタ36のメッシュワイヤに衝突する。ミスト状の水は、線の濡性と毛細管現象とにより、メッシュワイヤに拘束され、集合・成長し、やがて適当な大きさになった水滴は重力の作用により気流に抗して落下する。落下した水は排水戻り路38,39を介してシンク壁面32を伝わり排水部34より排水される。
【0096】
~検証試験~
切り出し台20の天面と流し台30のシンク33開放面とは、同じ高さにある。吸気機構21は、切り出し台20の天面から低い位置に、作業面22を囲むように平面視環状に形成されている。吸気機構31は、シンク壁面32上部に沿って形成される。その結果、吸気機構21の吸気面と吸気機構31の吸気面はほぼ同じ位置となる。
【0097】
図12は、給気面と捕捉面と吸気面との関係を示す図である。法令において、プッシュプルユニットの給気面と吸気面とを設定した場合、給気面と吸気面とを7対3に分ける位置を捕捉面と仮定している。その結果、吸気機構21の捕捉面と吸気機構31の捕捉面とは同じ高さにある。
【0098】
ところで、吸気機構21は平面視環状に形成されており、作業面22に相当する中央部には吸引能力はない。また、吸気機構31はシンク壁面32に形成されており、シンク中央における吸引能力は弱い。さらに、切り出し台20と流し台30との間も吸引能力がない。したがって、厳密には、吸気面での流速は一様ではない。
【0099】
これに対し、本実施形態では、給気面での一様性を向上させ、かつ、吸気機構21端部と吸気機構31端部との長手方向間隔は300mm以下とすることにより、捕捉面での一様性を確実にしている。つまり、吸気機構21の捕捉面における平均流速と吸気機構31の捕捉面における平均の流速とは、同等である。
【0100】
図13は、検証試験における捕捉面での流速分布である。
【0101】
給気面は1040mm×260mmである。捕捉面(および吸気面)は1280mm×500mmである。給気面から吸気面までの高さは1000mmである。給気は約10度の角度で拡散すると仮定した。
【0102】
設定給気量は571m3/Hrとした。切り出し台側の設定吸気量は621m3/Hrとし、流し台側の設定吸気量は531m3/Hrとした。すなわち、設定合計吸気量は1152m3/Hrとした。
【0103】
「プッシュプル型換気装置の性能及び構造上の要件等」に係る法令に基づいて、捕捉面4×4に等分割し、その中心風速を測定した。
【0104】
AA”風速は0.36m/sec、BB”風速は0.38m/secであり、判定基準0.3m/sec以上であった。
【0105】
最少風速/平均風速は、0.64(=0.22/0.34)であり、判定基準0.5以上であった。
【0106】
最大風速/平均風速は、1.32(=0.45/0.34)であり、判定基準1.5以下であった。
【0107】
以上の様に、法令で定める捕捉気流の一様性を実現できた。
【0108】
設定給気量は571m3/Hrに対し、実測給気量は522m3/Hrであった。設定合計吸気量は1152m3/Hrに対し、実測合計吸気量は974m3/Hrであった。
【0109】
実測吸気量/実測給気量は1.87であり、判定基準1.3以上20以下を満たした。
【0110】
~変形例~
上記切り出し台20および流し台30は、プッシュプルユニットの一構成として発明したものである。したがって、プッシュプルユニットの一構成として使用すると、相乗効果を期待できる。
【0111】
一方で、切り出し台20の吸気機構21は一様な吸気を実現できるため、切り出し台20を単独で使用してもよい。同様に、流し台30の吸気機構31は一様な吸気を実現できるため、流し台30を単独で使用してもよい。
【符号の説明】
【0112】
10 給気機構(プッシュ機構)
11 給気ファン
12 給気ボックス
13 接続ダクト
14 整流機構
15 整流機構
20 切り出し台
21 吸気機構(プル機構)
22 作業面
23 環状溝
24 連結筒
25 風箱
26 囲い箱
27 溝蓋
28 排水部
29 スロープ
30 流し台
31 吸気機構(プル機構)
32 シンク壁面
33 シンク空間
34 排水部
35 開口(大)
36 デミスタ
37 風箱
38 水受
39 開口(小)
40 側壁
50 排気機構