(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】機能性複合樹脂部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/02 20060101AFI20220804BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20220804BHJP
D06M 11/83 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
B32B5/02 Z
B32B5/28 Z
D06M11/83
(21)【出願番号】P 2019086798
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】591131213
【氏名又は名称】秋田化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 耕一
(72)【発明者】
【氏名】西野 智路
(72)【発明者】
【氏名】野中 利瀬弘
(72)【発明者】
【氏名】内藤 公喜
(72)【発明者】
【氏名】丹野 恭行
【審査官】弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-179243(JP,A)
【文献】特開平05-237965(JP,A)
【文献】特開昭61-117136(JP,A)
【文献】特開2000-059089(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069025(WO,A1)
【文献】特開平1-132876(JP,A)
【文献】特開2003-328266(JP,A)
【文献】特表2005-512311(JP,A)
【文献】特開2011-69030(JP,A)
【文献】特開2018-74001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D06M 11/00-11/84
D03D 1/00-27/18
B29C 70/00-70/88
H01L 41/00-41/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材繊維と、当該基材繊維の表面を
全体的に被覆する機能性素材薄膜と、を有する機能性繊維の織物により構成されている機能性複合シートと、
前記機能性複合シートに重ね合わせられているプリプレグシートと、を備え、
前記プリプレグシートを構成する樹脂の一部が、前記機能性複合シートを構成する前記機能性繊維の隙間に入り込んで
おり、
前記機能性素材薄膜が、セラミックスバリスタ薄膜、導電性薄膜およびこれを被覆する電気絶縁性薄膜、グラフェン薄膜およびこれに積層された固体電解質薄膜、または、セラミックス圧電体薄膜により構成されている
機能性複合樹脂部材。
【請求項2】
基材繊維と、当該基材繊維の表面を
全体的に被覆する機能性素材薄膜と、を有する機能性繊維の織物により構成されている機能性複合シートを作製する工程と、
前記機能性複合シートにプリプレグシートを重ね合わせる工程と、
前記機能性複合シートおよび前記プリプレグシートを重ね合わせ方向に加圧しながら加熱することにより、前記プリプレグシートを構成する樹脂の一部を、前記機能性複合シートを構成する前記機能性繊維の隙間に入り込ませる工程と、を含
み、
前記機能性素材薄膜が、セラミックスバリスタ薄膜、導電性薄膜およびこれを被覆する電気絶縁性薄膜、グラフェン薄膜およびこれに積層された固体電解質薄膜、または、セラミックス圧電体薄膜により構成されている
機能性複合樹脂部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気伝導性などの機能性が付与された機能性複合樹脂部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シート状の複数のプリプレグ(PG)が樹脂層を介して積み重ねられることにより構成されているFRP(Fiber Reinforced Plastics:基材繊維強化プラスチック)の部材に電気伝導性または熱伝導性などの機能性を付与するため、機能性微粒子を表層または中間層を構成する当該樹脂層に分散させることが提案されている(特許文献1~5参照)。引用文献1には、3次元基材繊維強化樹脂複合体に関する発明で、同複合体に導電性を付与するため、生地の端部に相当する耳糸が面内方向糸より導電性の高い導電材料で構成されていることが記載されている。引用文献2には、プリプレグに関して、導電性粒子を含ませることで、優れた耐衝撃性と導電性を兼ね備える技術が記載されている。引用文献3には、プリプレグに関して、無機/有機材料の核が導電性物質で被覆された粒子を含ませることで、優れた耐衝撃性と導電性を兼ね備える技術が記載されている。引用文献4には、高分子樹脂中に分散した導電性粒子を含ませて、標準的な複合材料と比べ、ほとんど重量増加させない技術が記載されている。引用文献5には、小さな抵抗率を持つCFRPを製造するため、その表面に金属製フォイルや金属製メッシュを設置させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-301838号公報
【文献】特開2010-280904号公報
【文献】特開2011-219766号公報
【文献】特開2011-168792号公報
【文献】国際公開公報WO2013/146229
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、機能性微粒子を樹脂層に充填させることは困難であるため、機能性複合樹脂部材に所望の機能を付与することは困難である。また、たとえ当該所望の機能に鑑みて十分な量の機能性微粒子を樹脂層に充填することができたとしても機能性複合樹脂部材の強度が過度に低下する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、強度低下を回避しながらも所望の機能の実現の容易を図りうる機能性複合樹脂部材およびその製造方法を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様の機能性複合樹脂部材の製造方法は、基材繊維と、当該基材繊維の表面を被覆する機能性素材薄膜と、を有する機能性繊維の織物により構成されている機能性複合シートを作製する工程と、前記機能性複合シートにプリプレグシートを重ね合わせる工程と、前記機能性複合シートおよび前記プリプレグシートを重ね合わせ方向に加圧しながら加熱することにより、前記プリプレグシートを構成する樹脂の一部を、前記機能性複合シートを構成する前記機能性繊維の隙間に入り込ませる工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
当該方法にしたがって製造される本発明の第1態様の機能性複合樹脂部材は、基材繊維と、当該基材繊維の表面を被覆する機能性素材薄膜と、を有する機能性繊維の織物により構成されている機能性複合シートと、前記機能性複合シートに重ね合わせられているプリプレグシートと、を備え、前記プリプレグシートを構成する樹脂の一部が、前記機能性複合シートを構成する前記機能性繊維の隙間に入り込んでいることを特徴とする。
【0008】
本発明の第1態様としての機能性複合樹脂部材によれば、プリプレグシートを構成する樹脂に対して機能性素材の微粒子を充填する必要はなく、機能性複合シートとしての織物を構成する基材繊維の表面を覆う当該機能性素材薄膜の物性に由来する所望の機能が容易に実現されうる。
【0009】
本発明の第1態様の機能性複合樹脂部材の製造方法において、前記機能性複合シートを作製する工程が、前記機能性繊維を織ることにより前記織物を作製する工程を含むことが好ましい。
【0010】
当該方法にしたがって製造される機能性複合樹脂部材は、前記基材繊維と、当該基材繊維の表面を全体的に被覆する前記機能性素材薄膜と、を有する前記機能性繊維の織物により前記機能性複合シートが構成されている。
【0011】
当該構成の機能性複合樹脂部材によれば、基材繊維の表面が部分的に機能性素材薄膜に覆われている場合よりも、所望の機能がより顕著に実現されうる。
【0012】
本発明の第1態様の機能性複合樹脂部材の製造方法において、前記基材繊維と、当該基材繊維の表面を全体的に被覆する、複数の異なる機能性素材薄膜が積層された多層構造の前記機能性素材薄膜と、を有する前記機能性繊維を織ることにより前記織物を作製する工程を含むことが好ましい。
【0013】
当該方法にしたがって製造される機能性複合樹脂部材は、前記基材繊維と、当該基材繊維の表面を全体的に被覆する、複数の異なる機能性素材薄膜が積層された多層構造の前記機能性素材薄膜と、を有する前記機能性繊維の織物により前記機能性複合シートが構成されている。
【0014】
当該構成の機能性複合樹脂部材によれば、基材繊維の表面を全体的に覆っている多層構造の薄膜を構成する複数の機能性素材の組み合わせのバリエーションに由来する機能のバリエーションの拡張が図られる。
【0015】
本発明の第1態様の機能性複合樹脂部材の製造方法において、前記機能性複合シートを作製する工程が、前記機能性素材薄膜としての第1機能性素材薄膜により表面が全体的に覆われた前記基材繊維としての経糸と、前記第1機能性素材薄膜とは異なる前記機能性素材薄膜としての第2機能性素材薄膜により表面が全体的に覆われた前記基材繊維としての緯糸と、を織ることにより前記織物を作製する工程を含むことが好ましい。
【0016】
当該方法にしたがって製造される機能性複合樹脂部材は、前記機能性素材薄膜としての第1機能性素材薄膜により表面が全体的に覆われた前記基材繊維としての経糸と、前記第1機能性素材薄膜とは異なる前記機能性素材薄膜としての第2機能性素材薄膜により表面が全体的に覆われた前記基材繊維としての緯糸と、の織物により前記機能性複合シートが構成されている。
【0017】
当該構成の機能性複合樹脂部材によれば、経糸の表面を全体的に覆っている第1機能性素材薄膜を構成する一または複数の機能性素材により構成されている第1の機能性素材群、および、緯糸の表面を全体的に覆っている第2機能性素材薄膜を構成する一または複数の機能性素材により構成されている第2の機能性素材群の組み合わせのバリエーションに由来する機能のバリエーションの拡張が図られる。
【0018】
本発明の第2態様の機能性複合樹脂部材の製造方法は、空孔の一部に機能性素材が充填されている多孔質シートにより構成されている機能性複合シートを作製する工程と、前記機能性複合シートにプリプレグシートを重ね合わせる工程と、前記機能性複合シートおよび前記プリプレグシートを重ね合わせ方向に加圧しながら加熱することにより、前記プリプレグシートを構成する樹脂の一部を、前記機能性複合シートを構成する前記多孔質シートの前記空孔に入り込ませる工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
当該方法にしたがって製造される本発明の第2態様の機能性複合樹脂部材は、空孔の一部に機能性素材が充填されている多孔質シートにより構成されている機能性複合シートと、前記機能性複合シートに重ね合わせられているプリプレグシートと、を備え、前記プリプレグシートを構成する樹脂の一部が、前記機能性複合シートを構成する前記多孔質シートの前記空孔に入り込んでいることを特徴とする。
【0020】
本発明の第2態様としての機能性複合樹脂部材によれば、プリプレグシートを構成する樹脂に対して機能性素材の微粒子を充填する必要はなく、機能性複合シートを構成する多孔質シートの空孔に充填されている当該機能性素材薄膜の物性に由来する所望の機能が容易に実現されうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態としての機能性複合樹脂部材の構成に関する説明図。
【
図3A】ニッケル薄膜が表面に形成されたポリエチレン基材(機能性複合樹脂部材)のSEM画像。
【
図3B】第1の拡大率のニッケル薄膜のSEM画像。
【
図3C】第2の拡大率のニッケル薄膜のSEM画像。
【
図4B】ポリプロピレン(PP)メッシュがプリプレグ(PG)相の最表面層に配置されて160℃でFRP成形された試料の断面写真。
【
図4C】ポリプロピレン(PP)メッシュがプリプレグ(PG)相の最表面層に配置されて180℃でFRP成形された試料の断面写真。
【
図5】二重薄膜により被覆された基材繊維の一実施形態に関する説明図。
【
図7】メッシュ基材の表裏に電極が配置された全固体型スーパキャパシタの概念的な説明図。
【
図8】本発明の一実施形態としての機能性複合樹脂部材の製造方法に関する説明図。
【
図9】本発明の機能性複合樹脂部材の適用状況に関する説明図。
【
図10】パラジウムフリーの無電解銅めっきにおける表面組織の均一化に関する説明図。
【
図11】開放反応器および閉鎖反応器を用いて作製された銅薄膜のSEM画像。
【
図12】銅基板の前処理および置換銀めっき処理のフローチャート。
【
図13】置換銀めっき薄膜のXRD測定結果に関する説明図。
【
図14】銅基板の上に形成された置換銀めっき薄膜の表面SEM画像。
【
図15】銅イオン含有溶液から銅基板の上に形成された置換銀めっき薄膜表面のSEM画像。
【
図16】閉鎖反応器を用いて作製された銅シード層(Step1 20min)、銅薄膜(Step1+Step2 20min)およびガラス基板のXRD測定結果に関する説明図。
【
図18】Agおよび/またはCuの薄膜形成過程における基板のSEM画像。
【
図19】機能性複合樹脂部材の通電時の温度計算結果に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(構成)
図1に示されている本発明の一実施形態としての機能性複合樹脂部材は、機能性複合樹脂部材1と、機能性複合樹脂部材1を挟むように当該機能性複合樹脂部材1に重ね合わせられている一対のプリプレグシート2と、を備えている。機能性複合樹脂部材1が最表層を構成するように、一または複数の機能性複合樹脂部材1と、一または複数のプリプレグシート2と、が積み重ねられていてもよい。
【0023】
機能性複合樹脂部材は、全体的に柔軟なシートのように巻き込みまたは折り曲げなどの変形が容易に成形されていてもよい。これにより、衣服または装飾品など、人の身体に装着される製品の少なくとも一部が当該機能性複合樹脂部材により構成されうる。
【0024】
機能性複合樹脂部材1は、
図2に示されているように、基材繊維11の表面が全体的にまたは部分的に機能性素材薄膜12により覆われている機能性繊維10の織物により構成されている。基材繊維11は、例えば、ポリエステル、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの熱可塑性高分子の単基材繊維、基材繊維束または基材繊維撚線により構成されている。そのほか、基材繊維11は、炭素基材繊維またはガラス基材繊維であってもよい。機能性素材は、Ni、CuまたはAgなどの金属のほか、当該金属の酸化物、窒化物またはフッ化物などであってもよい。表1には、機能性複合樹脂部材に対して付与される機能および機能性素材の関係がまとめて示されている。
【0025】
【0026】
例えば、ポリエステル、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの熱可塑性高分子の単基材繊維、基材繊維束、基材繊維撚線、クロス材、メッシュ基材またはポーラス材等の疎水性表面が触媒活性化処理等によって親水化処理された上で、均一なニッケル、銀または銅等の薄膜が形成される。
図3Aには、機能性素材としてのニッケルの薄膜により被覆されている、ポリエチレン基材繊維のメッシュ織物により構成されている機能性複合樹脂部材1のSEM画像が示されている。メッシュ織物は、機能性繊維10により構成されている経糸101および緯糸102が織られることにより構成されている。
図3Bおよび
図3Cには、ニッケル薄膜の表面および断面SEM画像が示されている。
【0027】
プリプレグシート2は、ガラスクロスまたは炭素基材繊維のような基材繊維状補強材に、硬化剤または着剤材などの添加物が混合されたエポキシなどの熱硬化性樹脂を均等に含浸させ、加熱または乾燥して得られる半硬化状態の強化プラスチック成形材料である。プリプレグシート2を構成する樹脂20の一部が、機能性複合樹脂部材1を構成する機能性繊維10の隙間に入り込んでいる(
図1参照)。
【0028】
図4には、機能性複合樹脂部材の断面のSEM画像が示されている。
図4から、一対のプリプレグシート2の間で、機能性複合樹脂部材1を構成する複数の機能性繊維10(破線丸で囲まれている領域の中に存在する)の間隙に、当該一対のプリプレグシート2を構成する樹脂20の一部が入り込んでいることがわかる。
【0029】
ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の融点がFRP材の耐熱性を損なうことはない。また、樹脂相中に固定されたこれらの高分子材の融解-凝固挙動には可逆性があり、FRP材に熱吸収性能が付与される。
【0030】
図4Bには、ポリプロピレン(PP)メッシュがプリプレグ(PG)相の最表面層に配置されて160℃でFRP成形された試料の断面写真が示されている。
図4Cには、ポリプロピレン(PP)メッシュがプリプレグ(PG)相の最表面層に配置されて180℃でFRP成形された試料の断面写真が示されている。PP相の融解温度は154℃であり、その凝固温度は120℃である。FRP成形に際して、硬化した樹脂相においてPP相が融解した後、凝固することにより形状が維持されていることがわかる。
【0031】
図5に示されているように、第1機能性素材薄膜121および第2機能性素材薄膜122により構成される二重構造の機能性素材薄膜12により、基材繊維11の表面が全体的にまたは部分的に覆われることにより機能性繊維10が構成されていてもよい。
【0032】
単基材繊維等軟質基材繊維にめっきなどによってニッケル薄膜が形成され、さらにその表面層が熱処理および/または化学改質により絶縁体薄膜として形成された基材繊維素材をクロス状またはメッシュ状に織られることにより、2次元に集積された電気回路構造およびセンシング機能が実現されうる。
【0033】
図6Aには、
図5に示されているように、二重構造の機能性素材薄膜12により、基材繊維11の表面が全体的に覆われた状態の機能性繊維10の、平織構造の織物により構成されているシート状の機能性複合樹脂部材1が示されている。第1機能性素材薄膜121は、Ni、CuまたはAgなどの金属等、電気伝導性を有する素材からなる。第2機能性素材薄膜122は、当該金属の酸化物など、電気絶縁性を有する素材からなる。機能性繊維10の両端部には端子14が取り付けられている。これにより、機能性複合樹脂部材1の経糸および緯糸のそれぞれを電力伝送線または信号伝送線とする、集積された電子回路としての機能が機能性複合樹脂部材に対して付与される(Wire-mesh Sensors:A review of uncertainty in miltiphase flows relative to other measurement technics, G.Tompkins, et.al, Nuclear Engineering and Design 337 (2018) 205-220 (Elsevier)参照)。
【0034】
導電性めっき薄膜および絶縁被覆した単基材繊維等が織られたクロス素材としての機能性複合材料により、2次元に集積された電子回路が形成され、これがFRP成形の中間層または最表面層に用いられ、場所を特定可能なセンシング機能を機能性複合樹脂部材1にもたせることができる。
【0035】
図6Bには、メッシュ基材にセンシタイザ―・アクチベーション処理あるいはめっき処理の直前にエタノールなどの有機溶媒に浸漬するという条件で第1機能性素材薄膜121としてめっき薄膜が形成され、織物を構成する経糸101および緯糸102の交差点で経糸101および緯糸102が第2機能性素材122としての絶縁層により相互に絶縁されるような機能性素材薄膜12が形成されている機能性複合樹脂部材1の拡大写真が示されている。この方法により、基材繊維11が第1機能性素材薄膜121としての電気伝導相および第2機能性素材薄膜122としての絶縁相により順に被覆されたうえで、当該基材繊維11が織られるプロセスが省略されても、電気回路の構造/センシング機能が実現される。
【0036】
図7には、機能性部材1としての全固体型スーパキャパシタを構成する機能性繊維10の構成が示されている。機能性繊維10は、基材繊維11が、第1機能性素材薄膜121としてのグラフェン(多孔質電極)と、第2機能性素材薄膜122としての固体電解質(例えば、PVP-NaI)と、により順に被覆されることにより構成されている。基材繊維11は、軟質素材であっても硬質素材であってもよい。第2機能性素材薄膜122の外表面には、相互に対向する一対の電極層124が形成されている。FRP材のPG相間に挿入される高分子メッシュ基材にスーパキャパシタ機能が埋め込まれるため、メッシュ基材を構成する基材繊維11が固体電解質(第2機能性素材薄膜122)で覆われ、メッシュ基材の表面および裏面のそれぞれに電極層124が形成されている。この機能性繊維10を構成要素として、メッシュ基材の表裏に電気二重層コンデンサが形成される(Self-assembly of graphene aerogel on copper wire for wearable fibershaped supercapacitors, A.Lamberti, et al., Carbon 105 (2016) 649-654(Elsevier)参照)。全固体スーパキャパシタでは、固体電解質およびポーラス電極の界面の面積が大きくされることで、エネルギー密度およびパワー密度の向上が図られる。
【0037】
第1機能性素材薄膜121が、BaTiO3またはPbTiO3などのセラミックス等、圧電体からなる場合、機能性複合樹脂部材1に外力が作用した領域が、電圧変化が検知された一または複数の経糸および一または複数の緯糸のそれぞれの位置により特定される、感圧センサとしての機能が機能性複合樹脂部材に対して付与される。
【0038】
(製造方法)
熱可塑性高分子の基材繊維、炭素基材繊維またはガラス基材繊維の織物の疎水性表面が触媒活性化処理されることにより、当該表面が親水化処理される。例えば、樹脂(疎水性基材)からなる基材繊維11がSn/Pdによって触媒活性化処理および親水化処理される。自己触媒による無電解めっきまたは電気めっき法により機能性素材薄膜12が形成される場合、樹脂からなる基材繊維11の表面を親水化処理するため、キトサンまたはでんぷん等の金属イオンの吸着能を有する高分子相がコーティングされてもよい。さらに、パラジウムイオン、ニッケルイオン、銀イオンまたは銅イオン等で高分子鎖が架橋された後、還元剤にてこれらの金属イオンから触媒核が当該樹脂からなる基材繊維11の表面に形成されてもよい。
【0039】
その上で、湿式法(めっき法、ゾル-ゲル法等の化学的・電気化学的表面改質等)または乾式法(スパッタ法、分子線エピタキシー法の、化学的・物理的薄膜形成法)により、織物を構成する基材繊維11の表面の少なくとも一部が機能性素材薄膜12により覆われる(
図2および
図5参照)。これにより、機能性複合樹脂部材1が作製される。
【0040】
そのほか、基材繊維11そのものの疎水性表面が触媒活性化処理されることにより、当該表面が親水化処理された上で、湿式法または乾式法により、その表面が全体的に機能性素材薄膜12により覆われている機能性繊維10が作製されてもよい。そして、当該機能性繊維10が、織機により織られることにより機能性複合樹脂部材1が作製されてもよい。
【0041】
続いて、機能性複合樹脂部材1およびプリプレグシート2が重ね合わせられて積層体が得られる。これにより、例えば、
図8に示されているように、第1のプリプレグシート2、機能性複合樹脂部材1および第2のプリプレグシート2が順に重ね合わせられるまたは積層される。そして、機能性複合樹脂部材1およびプリプレグシート2の積層体が、当該積層方向に加圧されながら加熱処理される。
【0042】
その結果、プリプレグシート2を構成する樹脂の一部が溶融し、機能性複合樹脂部材1を構成する機能性繊維10の間隙に入り込む。その後、当該積層体が冷却されることにより、
図1に示されている機能性複合樹脂部材が作製される。
【0043】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では、織物により機能性複合樹脂部材1が構成されていたが、他の実施形態として多孔質シートにより機能性複合樹脂部材1が構成されていてもよい。この場合、プリプレグシート2を構成する樹脂20の一部が、機能性複合樹脂部材1を構成する前記多孔質シートの空孔に入り込んでいる。多孔質シートとしては例えば、パンチングメタル、金網等の金属系素材からなるもの、ポーラスアルミナまたはポーラスシリコンのような2次元・3次元のポーラス構造体からなる素材、セルロース、PTFEまたはPVDF等のフィルターメンブランまたは不織布等のポーラスを有する素材に、各種めっき法にて金属薄膜を形成したものなどが用いられる。当該他の実施形態の機能性複合樹脂部材も、前記実施形態と同様に作製される。
【0044】
(FRP成形およびFRTP成形に関して)
(1)熱可塑性メッシュ基材をプリプレグ(PG)の中間層、最表面層に配置して成形する方法は、メッシュ基材の融解温度>樹脂の硬化温度であれば、既存のほとんどすべてのFRP(基材繊維強化熱硬化性樹脂)成形法を適用できる。
【0045】
(2)この方法は、金属等でコーティングしたメッシュ基材では、メッシュ基材の融解温度が樹脂の硬化温度より低温であってもよい。なぜなら、メッシュ基材をコーティングしているチューブ形状の金属層がその形状を維持するからである。
【0046】
(3)同じ理由で、金属等でコーティングしたメッシュ基材では、FRTP(基材繊維強化熱可塑性樹脂)成形にも適用できる。
【0047】
(4)耐熱温度が熱可塑性樹脂の融解温度よりも高温であるシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂のメッシュ基材(熱硬化成形後の素材)が用いられた場合、金属コーティングなしでもFRTP(基材繊維強化熱可塑性樹脂)成形が適用できる。
【0048】
(5)金属コーティングしたメッシュ基材の熱可塑性樹脂の融点が、強化用の熱可塑性樹脂の融点よりも高い場合にも、FRTP(基材繊維強化熱可塑性樹脂)成形が適用できる。
【0049】
(メッシュ基材等ポーラスシートの使用によって発現する機能性の適用例)
(1)FRP基材およびFRTP基材のそれぞれの軽量化および強度向上が図られる。中間層、最表面層に用いるメッシュ基材の重量については、線径100μm、基材繊維間隔200μmのメッシュ基材に厚み5μmの金属めっき薄膜を形成した場合、210g/m2の重量増である。
【0050】
(2)メッシュ基材を構成する基材繊維11と、当該基材繊維11を少なくとも部分的に被覆する機能性素材薄膜12と、当該メッシュ基材に接合されたFRP基材およびFRTP基材と、を有する機能性複合樹脂部材1は、航空機および自動車等の鋼板にかわる構造体として、耐雷、電磁波吸収、耐摩耗、蓄電、センサ機能材、電気回路および/または集積回路等の機能を有する。また、機能性複合樹脂部材1は、ロケット、ロボットまたはドローン等の構造体として、耐雷、電磁波吸収、耐水および/または耐摩耗等の機能を有する。ただし、構造体としての耐雷の意味は、素材としての耐雷であり、雷撃によるエネルギーは、地絡または再放電などの別の技術によって散逸させる必要がある。
【0051】
機能性複合樹脂部材1は、風力発電用ブレイド(GFRP)材の表面層のシート材として、電気伝導性、熱伝導性、耐雷性、捕雷正、耐摩耗性、センサ機能材および電気回路等の機能を有する。ブレイド材は、GFRP、接着剤および絶縁塗料が、表面層を覆っているので、捕雷性能はなく、むしろレセプタが捕雷するように誘導しているが、シート材でブレイドの表面を覆ってレセプタと接続することで、ブレイド表面層全体で捕雷できる。
【0052】
(3)2層をコーティングした単基材繊維の織物の機能性
第1機能性素材薄膜121が電気伝導層(電気回路)により構成され、第1機能性素材薄膜122がエネルギー変換機能を有する層により構成されていてもよい。第2機能性素材薄膜122が磁歪材により構成されていてもよい。第2機能性素材薄膜122によって発生した電場に基づき、ひずみが生じた位置を特定するためのセンサ機能が機能性複合樹脂部材1に付与されうる。電気信号が2軸に印加されることにより、位置を特定して、センサの反効果(制御)機能を発現できる。
【0053】
これらのセンサ機能が例えば自動車の車体(CFRP)に埋め込まれた場合、
図9に示されているような状況で有用な機能として、温度(室温/体温)センサ機能、空気濃度センサ機能および/または車体応力センサ機能(乗り心地)などのセンサ機能、車体構成要素および/またはモータなどの車両構成要素の劣化センサ機能、温度センサ機能、歪センサ機能
が実現されうる。また、乗車する人のウエアラブルに適用すれば、自動車の情報と人間の情報の接続が可能になる。
【0054】
(パラジウムフリーの無電解銅めっきにおける表面組織の均一化)
基板の表面が触媒活性化処理されたうえでPd核が形成されてから銅の成長をさせるが、無電解銅めっき法の通常の方法によれば、表2に示されている条件にしたがって、Pd核の形成なしに2段階のプロセスで直接銅を成長させる(
図10参照)。
【0055】
【0056】
図11には、開放反応器および閉鎖反応器を用いて作製された銅薄膜のSEM画像が示されている。工程1(Step1)および工程2プロセス(Step2)における浸漬時間を20minとした。開放反応器では銅薄膜の粒径は1μmオーダーの塊状の結晶粒が低密度に凝集したような組織が得られた。閉鎖反応器の銅薄膜の表面形状は平たんな緻密な組織として得られた。これらの結果はXRDプロファイルの結果(開放反応器⇒結晶質、閉鎖反応器⇒アモルファスライク、微細結晶)と対応する。
【0057】
(置換銀めっきの銅イオン含有による銀単一相の獲得と表面組織の均一化)
図12には、銅基板の前処理および置換銀めっき処理のフローチャートが示されている。2種の金属においてイオン化傾向の大きい方が金属イオンとなり、大きいほうが金属として基板上に析出する。この原理から、銅基板上に銀が析出する。めっき浴はイオン交換水中に硝酸銀溶液を滴下する方法のほか、銅イオン溶液含有溶液中に硝酸銀溶液を滴下する方法が採用されてもよい。閉鎖反応器が用いられて作製した
銅イオン非含有溶液として0.015Mの硝酸銀が含有された溶液100mLおよび30mMの銅イオンが含有された溶液が銅基板に滴下されることにより、当該基板の上に置換銀めっき薄膜が形成された。
図13に示されている、当該置換銀めっき薄膜のXRD測定結果により、銅イオン含有溶液から形成された薄膜が銀単相により構成されていることが確認された。銅イオンが含有されていない溶液から形成された薄膜のXRD測定結果により、銀以外に特定できない結晶相(銀銅の合金であると推察される。)のピークがあることが確認された。
【0058】
銅基板の上に形成された置換銀めっき薄膜の表面SEM画像により、当該薄膜の組織が粒状粒子組織および樹枝状組織に大別されることが確認された(
図14参照)。置換めっきにおける樹脂状組織の形成は一般的に知られた現象である。これに対して、銅イオン含有溶液から銅基板の上に形成された置換銀めっき薄膜表面のSEM画像により、当該薄膜の組織として樹脂状組織が存在せず、当該薄膜の組織が、鎖状組織が成長している組織と、鎖状組織および粒状組織が混在している組織とに大別されていることが確認された(
図15参照)。
【0059】
図16には、閉鎖反応器を用いて作製された銅シード層(Step1 20min)、銅薄膜(Step1+Step2 20min)およびガラス基板のXRD測定結果が示されている。当該XRD測定結果に基づき、銅のシード層および銅薄膜がともにアモルファス様の微細結晶相であることが確認された。
【0060】
Step2において浴槽のヒドラジン(還元剤)が充分に除去されたうえで、銀置換めっきが施されることにより銀薄膜が形成された。
図17に示されている当該銀薄膜のXRD測定結果により、基板の銅のアモルファス様の相が残存し、銀が単相で形成されていることが確認された。
【0061】
(Ag/Cu/glassのSEM像)
図18には、Agおよび/またはCuの薄膜形成過程における基板のSEM画像が示されている。置換反応時間が10[min]以下である場合、Agの微粒子のサイズが2種類あり、小さい微粒子の核発生が優先的となる反応時間が20[min]以下である場合、小さい微粒子で表面が均一に被覆されているが、反応時間が30[min]以上である場合、置換めっき特有ともいえる樹脂状組織が面内に沿って成長していることが確認された。XRDの測定結果から、これらの組織は、銀単相によって構成されているものと推察される。
【0062】
(遮音材としての機能)
金属ハニカムメッシュの遮音性能をFEMで予測した遮音性能に関して、ハニカムのサイズ:2.7[mm]、ブリッジ幅:2.0[mm]、厚み:0.5/1.0[mm]で、鉛、亜鉛、アルミ等、金属シートと同等の4[kHz]以下の低周波の遮音性能があることが報告されている(Driving point mobility and sound insulation of structured sheet metal, A.S.Henke, et al., Applied Acoustics 136 (2018) 113-122 (Elsevier)参照)。このため、アラミドハニカムメッシュ等に金属薄膜をコーティングした素材をFRP基材またはFRTP基材の最表面層に接合された場合、軽量化が図られた遮音素材になり得る。自動車の社室内の音の周波数は1[kHz]以下とされている。
【0063】
(メッシュ基材の耐雷性能について(計算))
雷撃によって生じた電荷が雷電流パルスとして電気伝導性物質を伝播する際に発生する総発熱量(積分ジュール熱)は、雷電流パルスを模した雷サージ波形のピーク値Im、波頭長t1および波尾長t2に基づき、関係式Im2{t1/3+0.721(t2-t1)}にしたがって近似的に計算される。
【0064】
PPからなる基材繊維11が織られて構成されているメッシュ(織物)の表面にNiからなる機能性素材薄膜12が形成された機能性複合材料1に、Im=10kA、t1=10μsおよびt2=350μsにより定義される雷サージ波形の電流が流れた場合の当該機能性複合材料1の発熱量について計算する。
【0065】
機能性複合材料1が、厚さ100[μm]のPPメッシュおよびその両面のそれぞれに厚さ5[μm]のNi薄膜が形成されて構成されている場合、Niの体積抵抗率が6.2×10-8[Ω・m]であるため、機能性複合材料1の厚さ方向の抵抗値は、6.2×10-3[Ω]と計算される。したがって、この場合、機能性複合材料1の発熱量は、2.45×107[J/Ω]×6.2×10-3[Ω]=1.5×105[J]と計算される。
【0066】
機能性複合材料1に流れる電流が、10[kA]の大きさで期間350[mμs]の矩形波で近似される場合の電力の最大値は、I2R=1.0×1010×0.3(メッシュ基材の抵抗値)=0.3×1010[W]となる。機能性複合材料1の発熱量は、I2Rt=1×106[J](~1.5×105[J])となる。
【0067】
円筒形金属層のジュール熱(定常状態における)による温度変化が計算された。
【0068】
メッシュ基材は、PPをニッケル薄膜が覆っているため、ジュール熱が発生し、実際はPP材が熱を吸収して融解するかもしれないが、この際の熱吸収は無視する。メッシュ基材の等方的な電気伝導性により、例えば、雷撃により発生した電荷がメッシュ全体でジュール熱を発生するという定常状態を仮定して計算する。
【0069】
円筒形金属層のジュール熱(定常状態における)による温度変化が計算された。円筒形金属層の中心軸線から径方向に距離rにおける当該金属層の温度Tは、当該円筒の内径r1および外径r2、ならびに、円筒内側面T1および円筒外側面の温度T2に基づき、関係式(01)にしたがって算定される。
【0070】
T=T2+(T1-T2)ln(r/r2)/ln(r1/r2) ‥(01)。
【0071】
円筒形金属層の内側面の表面積A1および円筒外側面の表面積A2に基づき、当該金属層の相乗平均表面積Aavは関係式(02)にしたがって算定される。
【0072】
Aav=(A2-A1)/ln(A2/A1) ‥(02)。
【0073】
A1=2×100×10-6×π×(10×103)であり、かつ、A2=2×105×10-6×π×(10×103)である場合、Aav=2×5×10-6×π×(10×103)/ln(105/100)となる。発熱量Qは関係式(03)にしたがって算定される。
【0074】
Q=Aavk(T2-T1)/(r2-r1) ‥(03)。
【0075】
方程式0.3×1010[W]=2[m2]×90[W/mK]×(T1-20)/(5×10-6)が解かれると、T1=103[℃]と計算される。
【0076】
図19に示されている計算結果が示すように、円筒の外側の側面を20℃に強制冷却すると、機能性薄膜12(めっき)の厚み方向の温度上昇は円筒の内部ほど高いがせいぜい100℃程度であり、耐高電流(=耐ジュール発熱)性がある。実際には、1m四方のメッシュ基材での捕雷を想定すれば、同機能性は、原理的には、メッシュ基材の面積に比例するため、1000Cの雷撃に対しても充分な耐雷機能が発現する。
また、複数のレセプタ(例えばグランドに接続された銅製ボルト)へ電荷を誘導すれば、電流パルスは時間差をもって個々のレセプタに到達するため、レセプタを介して集積された電荷は、銅製ダウンコンダクタの熱融解等を回避できる。
【0077】
従来性ブレイド材は、GFRP材を複層エポキシ又はフェノール樹脂系の接着剤にて接着し、表面層を絶縁性、耐候性の塗料を塗布している構造である。これは、捕雷をレセプタに誘導するためである。提案するブレイド材は、金属メッキめっきしたメッシュ基材を最表面のGFクロス材上に接着する方法である。このため、従来材と同様の平滑性が得られるため、発電効率に影響がほとんどない。また、メンテナンスの施工作業の範疇で、取り付けることができるため、定期メンテナンス時にも取付が可能である。
【0078】
ただし、この方法では、最表面層がニッケルめっき薄膜であり、これ自体は耐候性はあるが、メッシュ基材であるため、接着剤、ガラスクロスを通してブレイド内部へ雨等の水分の侵入を防ぐことができない。このため、表面層をポリアニリン等の導電性/耐候性溶剤で被覆する必要がある。ポリアニリンの電気伝導率は0.1~300[Scm-1]であるが、Ag微粒子がドープされたポリアニリンの電気伝導率は2200[Scm-1]である例が知られている。導電性物質をめっきしたメッシュ基材のマトリックスであるポリアニリンマトリックスに含有するAg微粒子の濃度を調整することでマトリックスの電気伝導性を制御でき、これによりメッシュ基材自体が有する電気伝導性能(電荷の等方的な伝播通路の確保とこれによる電荷の分散およびこれにより生じるレセプタ到達までの時間差の効果を確保)を損なうことなく、雷撃による熱流束の吸収による表面組織の破壊/切断等を顕著に防ぐ効果が得られる。
【符号の説明】
【0079】
1‥機能性複合樹脂部材、2‥プリプレグシート、10‥機能性繊維、11‥基材繊維、12‥機能性素材薄膜、20‥樹脂、121‥第1機能性素材薄膜、122‥第2機能性素材薄膜、124‥電極層。