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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20220804BHJP
【FI】
F16K31/04 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018199620
(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公開番号】P2020067123
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】特許業務法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】志水 亮介
(72)【発明者】
【氏名】三宮 崇
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-196810(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107620824(CN,A)
【文献】特開2010-254168(JP,A)
【文献】特開2004-169857(JP,A)
【文献】特開2018-071560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁部を有するボディと、モータユニットとを組み付けて構成される電動弁であって、
前記モータユニットは、モールド樹脂に被覆されたステータを含むステータユニットと、前記ステータの内方に配置されるロータとを含み、
前記ボディは、前記ステータユニットを固定するためのねじが螺合可能なねじ孔を有し、
前記ステータユニットは、
前記ロータの軸線を中心とする仮想円上に連続的又は間欠的に設けられて前記ねじ孔と対向し、前記ねじを挿通可能な挿通孔と、
前記挿通孔の開口部に沿って設けられ、前記ねじの頭部を係止可能な座面と、
を有 し、
前記ねじが締結されない状態において、前記ステータユニットが前記ボディに組み付けられたまま前記軸線を中心に回転可能であり、
前記挿通孔が前記ステータユニットの側面に沿って形成されている ことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記挿通孔が、前記ねじを挿通させた状態で相対位置可変となるスリットであることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動弁に関し、特にモータユニットとボディとを組み付けて構成される電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、圧縮機、凝縮器、膨張装置、蒸発器等を冷凍サイクルに配置して構成される。冷凍サイクルには、膨張装置としての膨張弁など、冷媒の流れを制御するために各種制御弁が設けられている。近年の電気自動車等の普及に伴い、駆動部としてモータを備える電動弁が広く採用されつつある。
【0003】
電動弁は、弁部を内蔵するボディと、モータユニットとを組み付けて構成される。モータユニットは、ステータユニットの内方にロータを配置して構成される。このような電動弁として、ステータユニットとボディとを接続板を介して接続するものがある(例えば特許文献1)。ステータユニットは、樹脂製の本体にステータを内包して構成され、その本体の側部にコネクタが一体に設けられる。接続板が予めステータユニットに溶着され、その接続板をボディに対してねじ接合することにより、ステータユニットとボディとが固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第107620824号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような電動弁は、溶着用の孔が複数設けられた特殊形状の接続板が必要となる点でコストが嵩む。また、電動弁の量産に溶着工程が設けられるところ、その溶着条件の管理が必要となる点で煩雑となる。このような問題は、車両の冷凍サイクルに限らず種々の用途に用いられる電動弁について生じ得る。
【0006】
本発明の目的の一つは、ステータユニットがボディに固定される電動弁において、両者の組み付けを簡易に実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、電動弁である。この電動弁は、弁部を有するボディと、モータユニットとを組み付けて構成される。モータユニットは、モールド樹脂に被覆されたステータを含むステータユニットと、ステータの内方に配置されるロータを含む。ボディは、ステータユニットを固定するためのねじが螺合可能なねじ孔を有する。ステータユニットは、ロータの軸線を中心とする仮想円上に連続的又は間欠的に設けられてねじ孔と対向し、ねじを挿通可能な挿通孔と、挿通孔の開口部に沿って設けられ、ねじの頭部を係止可能な座面を有する。
【0008】
この態様によると、ステータユニットとボディとをねじ止めにより直接接続できる。別途の接続板が不要となるため、部品点数を削減できる。また、溶着が不要となり、ステータユニットとボディとの組み付けを簡易に実現できる。
【0009】
本発明の別の態様も電動弁である。この電動弁は、弁部を有するボディと、モータユニットとを組み付けて構成される。モータユニットは、ステータを含むステータユニットと、ステータの内方に配置されるロータを含む。ボディは、ステータユニットを固定するためのねじが螺合可能なねじ孔を有する。ステータユニットは、ロータの軸線を中心とする仮想円に沿って連続的に延びてねじ孔と対向し、ねじを相対位置可変に挿通するスリットと、スリットの開口部に沿って設けられ、ねじの頭部を係止可能な座面を有する。
【0010】
この態様によると、ねじを挿通するスリットの位置を連続的に調整でき、ボディに対するステータユニットの取付角度を任意に設定できる。このため、ステータユニットとボディとの組み付けを簡易に実現できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ステータユニットとボディとの組み付けを簡易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る電動弁を表す正面図である。
図2】電動弁を表す断面図である。
図3】ステータおよびその周辺の構成を表す図である。
図4】ステータユニットとボディとの固定構造を表す図である。
図5】ボディに対するステータユニットの取付自由度を表す図である。
図6】変形例に係る電動弁の構成を表す横断面図である。
図7】第2実施形態に係る電動弁を表す正面図である。
図8】電動弁を表す断面図である。
図9】ステータユニットとボディとの取付構造を表す説明図である。
図10】ボディに対するステータユニットの取付自由度を表す図である。
図11】変形例に係る電動弁の主要部を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る電動弁を表す正面図である。
電動弁1は、図示しない自動車用空調装置の冷凍サイクルに適用される。この冷凍サイクルには、循環する冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮された冷媒を絞り膨張させて霧状に送出する膨張弁、霧状の冷媒を蒸発させてその蒸発潜熱により車室内の空気を冷却する蒸発器等が設けられている。電動弁1は、その冷凍サイクルの膨張弁として機能する。
【0015】
電動弁1は、弁本体2とモータユニット3とを組み付けて構成される。弁本体2は、弁部を収容したボディ5を有する。モータユニット3は、後述のステータユニット78を含み、そのステータユニット78の下部がボディ5の上部に嵌合し、ねじ150により固定されている。モータユニット3は、ボディ5の上端開口部を閉止している。
【0016】
図2は、電動弁を表す断面図である。
ボディ5は、第1ボディ6と第2ボディ8とを軸線方向に組み付けて構成される。第2ボディ8の下半部が、第1ボディ6の上半部に組み付けられている。第1ボディ6はアルミニウム合金からなり、第2ボディ8は銅合金からなる。なお、変形例においては、第2ボディ8をステンレス鋼(以下「SUS」と表記する)にて構成してもよい。
【0017】
第1ボディ6は角柱状をなし、その一側面上部に導入ポート10が設けられ、反対側面下部に導出ポート12が設けられている。導入ポート10と導出ポート12とをつなぐ通路に弁部が配置される。上流側(凝縮器側)からの冷媒が導入ポート10を介してボディ5に導入され、弁部へ導かれる。弁部にて絞り膨張された冷媒は、導出ポート12を介して下流側(蒸発器側)へ導出される。
【0018】
第1ボディ6の中央には上下方向の接続通路14が形成され、その上流側通路16が導入ポート10に連通し、下流側通路18が導出ポート12に連通している。第1ボディ6には、段付円孔状の取付孔20が形成されている。取付孔20は、上方に向けて段階的に拡径している。接続通路14は、取付孔20の一部を構成する。取付孔20における下流側通路18のやや上方位置に雌ねじ22が形成されている。
【0019】
第2ボディ8は、その外径および内径が下方に向けて段階的に縮径する段付円筒状をなし、その下半部が取付孔20に挿通される態様で第1ボディ6に組み付けられている。第2ボディ8の上半部は、取付孔20の上方に突出している。第2ボディ8の下部外周面には、第1ボディ6の雌ねじ22と螺合可能な雄ねじ24が形成されている。第2ボディ8における雄ねじ24のやや上方の外周面には、環状のシール収容部26が形成され、シールリング28が嵌着されている。第2ボディ8の上部外周面にも環状のシール収容部30が形成され、シールリング32が嵌着されている。第2ボディ8におけるシール収容部26,30間には、半径方向外向きに突出するフランジ部34が設けられている。
【0020】
第2ボディ8の下部には、弁座形成部材35が同軸状に組み付けられている。弁座形成部材35は有底円筒状をなし、その上部が第2ボディ8の下部に同軸状に圧入されている。弁座形成部材35の下部外周面には環状のシール収容部36が形成され、シールリング38が嵌着されている。弁座形成部材35は、そのシールリング38の位置において第1ボディ6に組み付けられている。
【0021】
弁座形成部材35の底部を軸線方向に貫通するように弁孔40が設けられ、その弁孔40の開口端に弁座42が形成されている。弁座形成部材35の側部におけるシール収容部36のやや上方には、内外を連通させる連通孔44が設けられている。第2ボディ8および弁座形成部材35の内方に弁室45が形成されている。弁室45は、連通孔44を介して上流側通路16と連通している。
【0022】
第2ボディ8は、第1ボディ6の上方から取付孔20に嵌合させるようにして取り付けられる。このとき、雄ねじ24が雌ねじ22に螺合しつつ第2ボディ8が第1ボディ6へ組み付けられる。また、弁座形成部材35の下端部が取付孔20(接続通路14)に嵌合する。フランジ部34が第1ボディ6の上面に係止されることで、第2ボディ8が第1ボディ6に締結される。第1ボディ6と第2ボディ8との嵌合部にシールリング28が介装され、第1ボディ6と弁座形成部材35との間にシールリング38が介装される。前者により、冷媒の外部漏れが防止される。また後者により、第1ボディ6と弁座形成部材35とのクリアランスを介した冷媒の漏れ(弁部を迂回した冷媒の漏れ)が防止される。
【0023】
第2ボディ8の内方には、モータユニット3のロータ60から延びる作動ロッド46が挿通されている。作動ロッド46は、弁室45を貫通する。作動ロッド46は、非磁性金属からなる棒材を切削加工して得られ、その下部にニードル状の弁体48が一体に設けられている。弁体48が弁室45側から弁座42に着脱することにより弁部を開閉する。
【0024】
第2ボディ8の上部中央には、ガイド部材50が立設されている。ガイド部材50は、非磁性金属からなる管材を段付円筒状に切削加工して得られ、その軸線方向中央部の外周面に雄ねじ52が形成されている。ガイド部材50の下端部が大径となっており、その大径部54が第2ボディ8の上部中央に同軸状に固定されている。ガイド部材50は、その内周面により作動ロッド46を軸線方向に摺動可能に支持する一方、その外周面によりロータ60の回転軸62を回転摺動可能に支持する。
【0025】
作動ロッド46における弁体48のやや上方にばね受け49が設けられ、ガイド部材50の底部にもばね受け56が設けられている。ばね受け49,56間に、弁体48を閉弁方向に付勢するスプリング58(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0026】
一方、モータユニット3は、ロータ60とステータ64とを含む三相ステッピングモータとして構成されている。モータユニット3は、有底円筒状のキャン66を有し、そのキャン66の内方にロータ60を配置し、外方にステータ64を配置して構成されている。キャン66は、弁体48およびその駆動機構が配置される空間を覆うとともにロータ60を内包する有底円筒状の部材であり、冷媒の圧力が作用する内方の圧力空間(内部空間)と作用しない外方の非圧力空間(外部空間)とを画定する。キャン66は、非磁性金属からなり、その下端開口部が第2ボディ8の上端開口部に外挿され溶接されることで、第2ボディ8に同軸状に固定されている。キャン66と第2ボディ8とに囲まれた空間が、上記圧力空間を形成している。
【0027】
ステータ64は、積層コア70の内周部に複数の突極72を等間隔に配置して構成される。積層コア70は、円板状のコアが軸線方向に積層されて構成される。各突極72には、コイル73(電磁コイル)が巻回されたボビン74が組み付けられている。これらコイル73およびボビン74により「コイルユニット75」が構成される。本実施形態では、三相電流を供給するための3つのコイルユニット75が、積層コア70の中心軸に対して120度ごとに設けられている。
【0028】
ステータ64は、樹脂製のケース76と一体に設けられている。すなわち、ケース76は、耐食性を有する樹脂材の射出成形により得られる。ステータ64は、その射出成形(「インサート成形」又は「モールド成形」ともいう)によるモールド樹脂によって被覆されている。以下、ステータ64とケース76とのモールド成形品を「ステータユニット78」とも称する。ステータユニット78は、中空構造を有し、キャン66を同軸状に挿通しつつボディ5に組み付けられる。
【0029】
第1ボディ6の上面には、円ボス状の嵌合部130が突設されている。嵌合部130は、第2ボディ8と同軸状に設けられ、複数のねじ孔132が径方向に貫通するように設けられている。一方、ケース76の下部には円筒状の嵌合部140が設けられ、さらにその外側に円弧状の接続部142が同心状に設けられている。嵌合部140が第2ボディ8の上半部に外挿されるように嵌合している。接続部142の側壁に沿って円弧状のスリット144が設けられている。スリット144は、ねじ150(図1参照)の挿通孔として機能する。ねじ孔132にねじ150を螺合させて締結することにより、ステータユニット78とボディ5とが固定されている。ねじ150は、第2ボディ8の軸線(ロータ60の軸線L)と直角方向に締結される。
【0030】
ロータ60は、回転軸62に組み付けられた円筒状のロータコア102と、ロータコア102の外周に沿って設けられたマグネット104を備える。ロータコア102は、回転軸62に組み付けられている。マグネット104は、その円周方向に複数極に磁化(着磁)されている。
【0031】
回転軸62は、有底円筒状の円筒軸であり、その開口端を下にしてガイド部材50に外挿されている。回転軸62の下部内周面に雌ねじ108が形成され、ガイド部材50の雄ねじ52と噛合している。このような構成により、ロータ60の回転によりねじ送り機構が機能し、ロータ60が軸線方向に移動(昇降)する。
【0032】
作動ロッド46の上部が縮径され、その縮径部110が回転軸62の底部112を貫通している。縮径部110の先端部には環状のストッパ114が固定されている。一方、縮径部110の基端と底部112との間には、作動ロッド46を下方(つまり閉弁方向)に付勢するスプリング116が介装されている。このような構成により、開弁時には、ストッパ114が底部112に係止される態様で作動ロッド46がロータ60と一体変位する。一方、閉弁時には、弁体48が弁座42から受ける反力によりスプリング116が押し縮められる。このときのスプリング116の弾性変形により、その反力で弁体48を弁座42に押し付けることができ、弁体48の着座性能(弁閉性能)を高めることができる。
【0033】
モータユニット3は、キャン66の外側に回路基板118を有する。回路基板118は、ケース76の内方に固定されている。本実施形態では、回路基板118の下面に制御部や通信部として機能する各種回路が実装されている。具体的には、モータを駆動するための駆動回路、駆動回路に制御信号を出力する制御回路(マイクロコンピュータ)、制御回路が外部装置と通信するための通信回路、各回路およびモータ(コイル)に電力を供給するための電源回路等が実装されている。ケース76の上端は、蓋体77により閉止されている。ケース76における蓋体77の下方の空間に回路基板118が配設されている。
【0034】
ボビン74からはコイル73につながる一対の端子が延出し、回路基板118に接続されている。回路基板118からは電源端子、グランド端子および通信端子(これらを総称して「接続端子81」ともいう)が延出し、それぞれケース76の側壁を貫通して外部に引き出されている。ケース76の側部にコネクタ部79が一体に設けられ、そのコネクタ部79の内方に接続端子81が配置されている。
【0035】
図3は、ステータ64およびその周辺の構成を表す図である。(A)は図2のB-B矢視断面に対応し、ステータユニット78の断面図である。(B)はステータ64のみ(樹脂モールド前の状態)を表す図である。なお、図3(A)には参考のため、キャン66およびロータ60を示している(二点鎖線参照)。
【0036】
モータユニット3が三相のモータであるため、図3(A)に示すように、ロータ60の軸線Lの周りに等間隔でコイルユニット75が設けられている。ロータ60の軸線Lは、ステータ64の軸線と一致する。図3(B)にも示すように、積層コア70の内周部に軸線Lに対して120度の間隔でスロット120a~120c(これらを特に区別しないときは「スロット120」と総称する)が設けられている。各スロット120には、その中央から半径方向内向きに突出する突極122a~122c(「突極122」と総称する)が形成され、それぞれU相コイル73a、V相コイル73b、W相コイル73c(「コイル73」と総称する)が組み付けられている。互いに隣接するスロット120の間にも、横断面U字状のスリット124が形成され、磁路の最適化が図られている。
【0037】
マグネット104は、キャン66を介して突極122a~122cと対向する。本実施形態では図3(A)に示すように、マグネット104が10極に磁化されているが、その極数については適宜設定できる。
【0038】
図4は、図1のA-A矢視断面を示し、ステータユニット78とボディ5との固定構造を表す図である。(A)はねじを取り付ける前の状態を示し、(B)はねじが締結された状態を示す。図5は、ボディ5に対するステータユニット78の取付自由度を表す図である。(A)~(C)は、それぞれステータユニット78の取付態様を例示している。
【0039】
図4(A)に示すように、ボディ5の嵌合部130は円筒状をなしている。一方、ステータユニット78(ケース76)の嵌合部140も円筒状をなし、その外側に円弧状の接続部142が同軸状に設けられている。嵌合部140と接続部142との間隙に嵌合部130を位置させるように、ケース76とボディ5とが同軸状に組み付けられる。ボディ5とケース76との径方向の当接面が、軸線Lを中心とした曲面を有する。このため、ねじ150が締結されない状態では、ステータユニット78をボディ5に組み付けたまま軸線Lを中心に回転させることができる。
【0040】
ボディ5の嵌合部130には、軸線Lを中心として90度ごとにねじ孔132が設けられている。一方、ケース76の接続部142には、その側壁に沿ってスリット144が設けられている。スリット144は、ボディ5の軸線Lを中心とする仮想円VC上に連続的に設けられている。本実施形態では、軸線Lを中心とした約180度の角度範囲に設けられている。スリット144は、嵌合部140の径方向にねじ孔132と対向配置されている。接続部142の外周面におけるスリット144の周辺が、ねじ150の頭部を係止可能な座面145を形成している。すなわち、座面145がスリット144の開口部に沿って設けられている。
【0041】
図4(B)に示すように、ねじ孔132にねじ150を螺合させて締結することにより、ステータユニット78とボディ5とが固定される。図示の例では、固定に用いるねじ150を2本としているが、3本としてもよいし、1本としてもよい。ねじ150をねじ孔132に螺合した状態であっても、締結されていない状態(緩められた状態)であれば、ボディ5に対するステータユニット78の取付角度を任意に変更できる。すなわち、図5(A)~(C)に示すように、コネクタ部79の向きを任意の方向に設定できる。設定位置にてねじ150を締結することで、ボディ5に対するステータユニット78の位置を固定できる。
【0042】
図2に戻り、以上のように構成された電動弁1は、モータユニット3の駆動制御によってその弁開度を調整可能な電動膨張弁として機能する。すなわち、図示しない外部装置からの指令に基づき、制御回路は、目標開度を実現するための制御量(モータの駆動ステップ数)を設定し、これを実現するための駆動信号(駆動パルス)を駆動回路に出力する。駆動回路は、各コイル73に設定されたタイミングで三相の駆動電流(駆動パルス)を供給する。それにより、ロータ60が高分解能にて回転する。このとき、弁体48が弁座42から離間した開弁状態であれば、スプリング116の付勢力によりストッパ114が回転軸62に当接し、作動ロッド46ひいては弁体48が、ロータ60と一体に動作する。
【0043】
ロータ60は、ガイド部材50との間のねじ送り機構により上下方向に動作する。つまり、弁体48が弁部の開閉方向に並進し、弁部の開度が設定開度に調整される。このねじ送り機構は、ロータ60の軸線周りの回転運動を作動ロッド46の軸線方向の並進運動(直進運動)に変換し、弁体48を弁部の開閉方向に駆動する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、ステータユニット78とボディ5とをねじ止めにより直接接続できる。別途の接続板が不要となるため、部品点数を削減できる。また、溶着が不要となり、ステータユニット78とボディ5との組み付けを簡易に実現できる。また、電動弁1の組み立てに際して、ねじ150を挿通するスリット144の位置を調整することで、ボディ5に対するケース76の取付角度を任意に設定できる。このため、ステータユニット78とボディ5との組み付け自由度が向上する。電動弁1の車両への搭載仕様によってコネクタ部79の向きが異なる場合にも容易に対応できる。
【0045】
[変形例]
図6は、変形例に係る電動弁の構成を表す横断面図であり、図4(B)に対応する。
第1実施形態では図4に示したように、ねじ150の挿通孔としてスリット144を例示した。本変形例では、接続部142(ケース176)の側面に沿って複数の挿通孔160が間欠的に(所定間隔をあけて)設けられている。挿通孔160は円孔からなり、軸線Lを中心とする仮想円VC上に45度おきに設けられている。このような構成によれば、ボディ5に対するステータユニット178の取付角度を45度間隔で変更できる。
【0046】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態に係る電動弁を表す正面図である。
電動弁201は、弁本体202とモータユニット203とを組み付けて構成される。弁本体202は、第1実施形態のボディ5よりも大きなボディ205を有する。ボディ205の上面周縁部に複数のねじ孔132が設けられている。一方、ステータユニット278は、ケース276の下端部に半径方向外向きに延出するフランジ部242を有する。フランジ部242には、複数のねじ孔132との対向部を跨ぐようにスリット244が設けられている。ねじ孔132にねじ150を螺合させて締結することにより、ステータユニット278とボディ205とが固定される。ねじ150は、ボディ205の軸線と平行に締結される。
【0047】
図8は、電動弁201を表す断面図である。
ケース276の下端部に第2ボディ8の上半部を挿通するようにして、ステータユニット278がボディ205に組み付けられている。ケース276と第2ボディ8とは、同軸状に組み付けられる。ねじ150が締結されない状態では、ステータユニット278をボディ5に組み付けたままロータ60の軸線Lを中心に回転させることができる。
【0048】
図9は、ステータユニット278とボディ205との取付構造を表す説明図である。(A)は図7のB-B矢視断面図であり、(B)はステータユニットの平面図である。図10は、ボディ205に対するステータユニット278の取付自由度を表す図である。(A)~(C)は、それぞれステータユニット278の取付態様を例示している。
【0049】
図9(A)に示すように、ボディ205(第1ボディ206)の上面には、軸線Lを中心とする仮想円VC1上に45度ごとにねじ孔132が設けられている。一方、図9(B)に示すように、ケース276のフランジ部242には、軸線Lを中心とする仮想円VC2に沿ってスリット244が設けられている。スリット244は、本実施形態では、軸線Lを中心とした約180度の角度範囲に設けられている。スリット244は、複数のねじ孔132と対向配置される。フランジ部242の上面におけるスリット244の周辺が、ねじ150の頭部を係止可能な座面245を形成している。すなわち、座面245がスリット244の開口部に沿って設けられている。
【0050】
複数のねじ孔132のいずれかにねじ150(図7参照)を螺合させて締結することにより、ステータユニット278とボディ205とが固定される。本実施形態では、この締結に2つのねじ150が用いられる。ねじ150をねじ孔132に螺合した状態であっても、締結されていない状態(緩められた状態)であれば、ボディ205に対するステータユニット278の取付角度を任意に変更できる。すなわち、図10(A)~(C)に示すように、コネクタ部79の向きを任意の方向に設定できる。設定位置にてねじ150を締結することで、ボディ205に対するステータユニット278の位置を固定できる。
【0051】
本実施形態においても、ステータユニット278とボディ205とをねじ止めにより直接接続でき、両者の組み付けを簡易に実現できる。また、電動弁201の組み立てに際して、ねじ150を挿通するスリット244の位置を調整することで、ボディ205に対するケース276の取付角度を任意に設定できる。このため、ステータユニット278とボディ205との組み付け自由度が向上する。
【0052】
[変形例]
図11は、変形例に係る電動弁の主要部を表す図であり、図9(B)に対応する。
第2実施形態では図9(B)に示したように、ねじ150の挿通孔としてスリット244を例示した。本変形例では、フランジ部242の周縁部に沿って複数の挿通孔160が間欠的に(所定間隔をあけて)設けられている。挿通孔160は、軸線Lを中心とする仮想円VC2上に45度おきに設けられている。このような構成によれば、ボディ205に対するステータユニット279の取付角度を45度間隔で変更できる。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0054】
上記実施形態および変形例では、ステータユニットとボディとを締結するねじの挿通孔として、軸線を中心とする180度範囲で連続するスリットや、間欠的に配置される複数の円孔を例示した。変形例においては、スリットの設定角度を45度、60度、90度等に設定するなど、適宜変更してよい。スリットと円孔とを混在させてもよい。また、挿通孔の形状についてはこれらに限らず、四角孔や六角孔等の多角形状を採用してもよい。
【0055】
上記実施形態では、ボディとケースを同軸状に嵌合させ、両者の当接面を軸線を中心とした曲面とした。嵌合部の横断面を同心円状とすることにより、ねじが締結されない状態において、ステータユニットがボディに組み付けられたまま軸線を中心に回転できるようにした。変形例においては、嵌合部の横断面を多角形状としてもよい。その場合、ボディに対するステータユニットの組付角度(コネクタ部の向き)に制約はできるが、接続板等を別途設けなくとも両者の組み付けを簡易に実現できる。
【0056】
上記実施形態では、ステータユニットのケースをモールド樹脂にて形成したが、モールド成形を伴わない樹脂ケースとしてもよい、あるいは、金属製のケースとしてもよい。
【0057】
上記実施形態では述べなかったが、ねじを締結する際に座金を設けてもよい。その場合も、特許文献1に記載の接続板のように特殊な部品を伴わないため、コスト低減を実現できる。
【0058】
上記実施形態では述べなかったが、ステータユニットとボディとの間に接続部材を設け、その接続部材にスリットを設けることで、両者の相対位置を任意に変更できるようにしてもよい。例えば、図9(B)におけるフランジ部242と代替可能な接続板を設けてもよい。接続板は金属板からなるものでもよく、円弧状のスリット244が設けられる。その接続板をケース(ケース276においてフランジ部242をなくしたもの)に固定することで、フランジ部242と代替できる。このような構成によれば、ケースそのものの形状を簡素にでき、その製造が容易となる。
【0059】
各実施形態では、モータユニットとして、PM型ステッピングモータを採用したが、ハイブリッド型ステッピングモータを採用してもよい。また、上記実施形態では、モータユニットを三相モータとしたが、二相,四相、五相などその他のモータとしてもよい。ステータにおける電磁コイルの数も3つや6つに限らず、モータの相数に合わせて適宜設定してよい。
【0060】
各実施形態では、上記電動弁を、1つの導入ポートに対して1つの導出ポートを有する二方弁として構成する例を示した。変形例においては、1つの導入ポートに対して2つの導出ポートを有する三方弁、あるいは2つの導入ポートに対して2つの導出ポートを有する四方弁として構成することもできる。
【0061】
各実施形態の電動弁は、冷媒として代替フロン(HFC-134a)など使用する冷凍サイクルに好適に適用されるが、二酸化炭素のように作動圧力が高い冷媒を用いる冷凍サイクルに適用することも可能である。その場合には、冷凍サイクルに凝縮器に代わってガスクーラなどの外部熱交換器が配置される。
【0062】
各実施形態では、上記電動弁を膨張弁として構成したが、膨張機能を有しない開閉弁や流量制御弁として構成してもよい。
【0063】
各実施形態では、上記電動弁を自動車用空調装置の冷凍サイクルに適用する例を示したが、車両用に限らず電動膨張弁を搭載する空調装置に適用可能である。また、冷媒以外の流体の流れを制御する電動弁として構成することもできる。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 電動弁、2 弁本体、3 モータユニット、5 ボディ、10 導入ポート、12 導出ポート、40 弁孔、46 作動ロッド、48 弁体、60 ロータ、64 ステータ、70 積層コア、73 コイル、76 ケース、78 ステータユニット、79 コネクタ部、130 嵌合部、132 ねじ孔、140 嵌合部、142 接続部、144 スリット、144 挿通孔、145 座面、150 ねじ、160 挿通孔、201 電動弁、202 弁本体、203 モータユニット、205 ボディ、242 フランジ部、244 スリット、245 座面、276 ケース、278 ステータユニット、279 ステータユニット、L 軸線、VC 仮想円、VC1 仮想円、VC2 仮想円。
図1
図2
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図7
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図9
図10
図11