(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】鉄系構造物の腐食検知システム
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20220804BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20220804BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
G01N17/00
G01N21/27 B
G01N21/88 J
(21)【出願番号】P 2019112510
(22)【出願日】2019-06-18
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000213770
【氏名又は名称】朝日エティック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 聡
(72)【発明者】
【氏名】島本 裕已
(72)【発明者】
【氏名】グエン ドゥック クアン
(72)【発明者】
【氏名】原田 誠
(72)【発明者】
【氏名】樋口 知以
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/033242(WO,A1)
【文献】特開平04-128637(JP,A)
【文献】特表2016-528714(JP,A)
【文献】特開2012-207948(JP,A)
【文献】特開平04-072551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
G01N 21/27
G01N 21/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄系構造物から反射する光に含まれる赤色、緑色及び青色の照度をそれぞれ検出して出力する反射光RGBセンサと、
前記反射光RGBセンサから出力された赤色、緑色及び青色の照度の経時変化に基づいて前記鉄系構造物の腐食状態を判定する判定部と、を備えることを特徴とする鉄系構造物の腐食検知システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記反射光RGBセンサから出力された赤色の照度により緑色及び青色の照度を正規化し、正規化された緑色の照度及び正規化された青色の照度の少なくとも何れかの経時変化に基づいて前記鉄系構造物の腐食状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の鉄系構造物の腐食検知システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記正規化された緑色の照度および前記正規化された青色の照度の少なくとも何れかの大きさが、所定の閾値を下回った後、所定期間経過後に前記所定の閾値を上回ったとき、前記鉄系構造物に腐食が生じたと判定することを特徴とする請求項2に記載の鉄系構造物の腐食検知システム。
【請求項4】
前記鉄系構造物に入射する光に含まれる赤色、緑色及び青色の照度をそれぞれ検出して出力する入射光RGBセンサをさらに備え、
前記判定部は、前記正規化された緑色の照度および前記正規化された青色の照度を、前記入射光RGBセンサから出力された赤色、緑色及び青色の照度に基づいて補正することを特徴とする請求項2または3に記載の鉄系構造物の腐食検知システム。
【請求項5】
前記鉄系構造物は、照明機器を内部に備えた内照式構造物または照明機器を外部に備えた外照式構造物であり、
前記鉄系構造物に入射する光は、前記照明機器から照射される光であり、
前記反射光RGBセンサは、前記鉄系構造物から反射する前記照明機器の光に含まれる赤色、緑色及び青色の照度をそれぞれ検出して出力することを特徴とする請求項1から4の何れか1つに記載の鉄系構造物の腐食検知システム。
【請求項6】
前記反射光RGBセンサによって照度を検出するときのみに前記鉄系構造物に光を照射する光源をさらに備え、
前記反射光RGBセンサは、前記鉄系構造物から反射する前記光源の光に含まれる赤色、緑色及び青色の照度をそれぞれ検出して出力することを特徴とする請求項1から4の何れか1つに記載の鉄系構造物の腐食検知システム。
【請求項7】
前記鉄系構造物に入射する光は、自然光であり、
前記反射光RGBセンサは、前記鉄系構造物から反射する前記自然光に含まれる赤色、緑色及び青色の照度をそれぞれ検出して出力することを特徴とする請求項1から4の何れか1つに記載の鉄系構造物の腐食検知システム。
【請求項8】
前記判定部は、特定の季節に前記反射光RGBセンサから出力された赤色、緑色及び青色の照度の経時変化に基づいて前記鉄系構造物の腐食状態を判定することを特徴とする請求項1から7の何れか1つに記載の鉄系構造物の腐食検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄系構造物の腐食検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、撮像装置により撮影された画像に基づいて鉄系構造物の腐食状態を判定するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の腐食状態判定システムでは、精度良く腐食状態の判定を行うために、解像度が高い画像を撮影可能な撮像装置が必要になるとともに、画素数が大きい画像に対して多くの処理を施すために、処理能力の高い処理装置が必要となる。このように撮像装置により撮影された画像を用いて腐食状態の判定を行うシステムは、システムが複雑化するとともに高価となるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、鉄系構造物の腐食状態を判定するシステムの構成を簡素化し、鉄系構造物の腐食状態を判定するためのコストを低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、鉄系構造物の腐食検知システムが、鉄系構造物から反射する光に含まれる赤色、緑色及び青色の照度をそれぞれ検出して出力する反射光RGBセンサと、反射光RGBセンサから出力された赤色、緑色及び青色の照度の経時変化に基づいて鉄系構造物の腐食状態を判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鉄系構造物の腐食状態を判定するシステムの構成を簡素化し、鉄系構造物の腐食状態を判定するためのコストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る腐食検知システムが適用される鉄系構造物の正面図である。
【
図2】
図1のA-A線に沿う断面を上部から見た図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る腐食検知システムの構成図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る腐食検知システムの検出部の構造を示す模式図である。
【
図5】腐食の進行によって検出照度がどのように変化するのかを説明するための図である。
【
図6】光源の変化によって照度がどのように変化するのかを説明するための図である。
【
図7】腐食の進行によって正規化照度がどのように変化するのかを説明するための図である。
【
図8】正規化照度の年次変化を示したグラフである。
【
図9】正規化照度の季節毎の変化を示したグラフである。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る腐食検知システムが適用される鉄系構造物の正面図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る腐食検知システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1~3を参照して、本発明の第1実施形態に係る鉄系構造物の腐食検知システム100について説明する。
【0011】
鉄系構造物の腐食検知システム100は、屋外に設置される看板等の鉄系構造物に錆等の腐食が生じたか否かを検知するシステムである。以下では、腐食検知システム100が、照明機器を内部に備えた内照式構造物である内照式看板10に適用される場合について説明する。
図1は、内照式看板10の正面図であり、
図2は、
図1のA-A線に沿う断面を上部から見た図であり、
図3は、腐食検知システム100の構成図である。
【0012】
腐食検知システム100は、内照式看板10内に設置され内照式看板10の鉄系構造部の反射光の照度を検出する検出部30と、検出部30により検出された照度が送られる監視部50と、を備え、内照式看板10の鉄系構造部の腐食状態を検出する。
【0013】
腐食検知システム100が適用される内照式看板10は、
図1に示すように、宣伝や広告、店舗名等の情報が表示される表示部11と、表示部11の下方を支持する鉄系構造部としての支持枠12と、表示部11と支持枠12とによって囲まれる内部空間内に設けられる照明機器13と、支持枠12に一端が結合される鉄系構造部としての支柱14と、を有する。内照式看板10は、支柱14の他端が設置面である地面や建築物の壁面に締結されることにより、支柱14を介して支持される。
【0014】
表示部11は、光透過性を有するプラスチック、例えばアクリルやポリカーボネイト等の樹脂系板材によって形成される一対の面板11aと、面板11aを保持するアルミ合金製のフレーム枠11bと、により構成される。面板11aの表面には、色彩を有する文字や図形が施される。
【0015】
表示部11は、図示しないボルト等の締結部材を介してフレーム枠11bが支持枠12に締結されることにより固定される。なお、フレーム枠11bは、アルミ合金等の金属製に限定されず、プラスチック製であってもよいし、金属とプラスチックとを組み合わせて構成されていてもよい。
【0016】
支持枠12は、鉄製の板状部材であり、支持枠12の略中央には、鉄製の管状部材である支柱14の一端が溶接等によって接合される。これら鉄系構造部である支持枠12及び支柱14の表面には、錆の発生を抑制するために、白色の塗装が施されている。なお、支持枠12及び支柱14の表面に施される塗装の色は白色に限定されず、例えば銀色であってもよい。
【0017】
照明機器13は、図示しない電源部から供給される電力によって発光するLED(Light Emitting Diode)である。照明機器13は、図示しない支持部材を介して支持枠12により支持され、内照式看板10の内部空間の略中央に配置される。照明機器13により内照式看板10の内部から面板11aを照明することによって面板11aに施された文字や図形を夜間でも見えやすくさせることができる。なお、照明機器13は、LEDに限定されず、蛍光灯であってもよい。また、照明機器13は、内照式看板10の内部において1カ所だけではなく、分散して配置されていてもよい。
【0018】
支持枠12上には、内照式看板10の鉄系構造部の反射光の照度を検出する検出部30が設置される。以下では、検出部30が、鉄系構造部である支持枠12と支柱14とのうち、支柱14の反射光の照度を検出するように構成されている場合について説明する。
【0019】
検出部30は、鉄系構造部である支柱14から反射する光に含まれる赤色、緑色及び青色の照度をそれぞれ検出して出力する反射光RGBセンサとしての第1RGBセンサ31と、鉄系構造部である支柱14に入射する光に含まれる赤色、緑色及び青色の照度をそれぞれ検出して出力する入射光RGBセンサとしての第2RGBセンサ32と、第1RGBセンサ31及び第2RGBセンサ32で検出された検出値を監視部50へ送信する送信部34と、第1RGBセンサ31及び第2RGBセンサ32の起動や送信部34の作動を制御する制御部33と、制御部33に電力を供給するバッテリ35と、を有する。
【0020】
第1RGBセンサ31及び第2RGBセンサ32は、赤色、緑色及び青色の図示しないカラーフィルタと、カラーフィルタを透過した光を受光するフォトダイオード等の図示しない受光素子と、を有し、受光した光に含まれる赤色周辺の波長の光の照度、緑色周辺の波長の光の照度及び青色周辺の波長の光の照度の3つの照度に応じた電気信号を出力するカラーセンサである。
【0021】
第1RGBセンサ31及び第2RGBセンサ32は、約400nmから540nmの波長を青色周辺の光として、約480nmから600nmの波長を緑色周辺の光として、約590nmから720nmの波長を赤色周辺の光として、検出する。なお、各色の波長の範囲は、例示であり、上記範囲に限定されるものではない。
【0022】
ここで、
図4を参照し、第1RGBセンサ31及び第2RGBセンサ32の配置について説明する。
図4は、支持枠12上に載置された検出部30の内部構造を示す模式図である。なお、第1RGBセンサ31及び第2RGBセンサ32以外に検出部30内に配置される制御部33等については省略して示している。
【0023】
図4に示すように、第1RGBセンサ31及び第2RGBセンサ32は、それぞれの受光面31a,32aが共に上方に向けられた状態において、ケーシング30a内に設けられた単一の基板36に実装される。なお、図示しないが、基板36には制御部33及び送信部34も実装されており、また、ケーシング30a内にはバッテリ35も配置されている。
【0024】
ケーシング30aの第2RGBセンサ32の受光面32aと対向する部分には、受光面32aに入射する光を取り込むために、透明なアクリル製の採光窓38が設けられる。また、受光面32aと採光窓38との間には、円錐台状に形成された反射板38aが設けられる。反射板38aは、採光窓38を透過した光を集光するために、反射率の高い表面を有する。なお、反射板38aの形状は円錐台状に限定されず、採光窓38を透過した光を受光面32aへと集光可能であればどのような形状であってもよく、例えば、多角錐台状であってもよいし、採光窓38から受光面32aに向かって外側へ凸状に湾曲した曲面を有していてもよい。また、反射板38aの表面は、可視光全域の波長を均等に反射する白色や銀色等の無彩色であることが好ましい。
【0025】
このように、ケーシング30aに採光窓38及び反射板38aが設けられることによって、第2RGBセンサ32は、支柱14に光を照射する光源である照明機器13から支柱14へ向けて照射される光に含まれる赤色、緑色及び青色の各色の照度を検出することが可能である。
【0026】
一方、第1RGBセンサ31の受光面31aは、第2RGBセンサ32の受光面32aと同じ方向を向いていることから、このままでは錆の発生の有無を監視すべき支柱14から反射する光を検出することができない。
【0027】
このため、ケーシング30aには、支柱14から反射する光を取り込むために、支柱14と対向する部分に透明なアクリル製の採光窓37が設けられ、さらに、ケーシング30aには、採光窓37を透過した光を第1RGBセンサ31の受光面31aに向けて反射させる反射板37aが設けられる。反射板37aは、採光窓37を透過した光を受光面31aへと反射させるために、反射率の高い表面を有する。反射板38aの表面は、可視光全域の波長を均等に反射する白色や銀色等の無彩色であることが好ましい。なお、反射板37aの表面は、平面状に形成されていてもよいし、曲面状に形成されていてもよい。
【0028】
このように、ケーシング30aに採光窓37及び反射板37aが設けられることによって、第1RGBセンサ31は、照明機器13から支柱14に向けて照射された光のうち、支柱14の表面14aから反射する反射光に含まれる赤色、緑色及び青色の各色の照度を検出することが可能である。
【0029】
なお、上記構成に代えて、第1RGBセンサ31を第2RGBセンサ32とは別の基板に実装し、第1RGBセンサ31の受光面31aが支柱14に対向するように第1RGBセンサ31を配置し、反射板37aを介することなく、反射光を第1RGBセンサ31に直接受光させてもよい。
【0030】
ただし、上述のように、第1RGBセンサ31及び第2RGBセンサ32を、それぞれの受光面31a,32aが同じ方向を向くように同一の基板36に実装した場合の方が、基板36の数が減るとともに、2つのRGBセンサ31,32を同時に実装させることが可能となることから、製造コストを低減させることができる。
【0031】
送信部34は、第1RGBセンサ31及び第2RGBセンサ32で検出された検出値を監視部50へ送信可能な無線データ通信器であり、具体的には、例えば、電力消費量が小さいSIGFOX(登録商標)である。なお、送信部34としては、SIGFOXに限定されず、通信事業者の基地局91と、インターネット回線である通信ネットワーク90と、を介して監視部50へデータを送信可能な無線通信機器であればどのような規格のものであってもよく、例えば、3G(3rd Generation)やLTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)であってもよいが、消費電力低減の観点からはSIGFOXを用いることが好ましい。また、送信部34は、通信ネットワーク90と有線接続される有線通信器であってもよい。
【0032】
制御部33は、第1RGBセンサ31及び第2RGBセンサ32の起動と、これらによって照度の検出が行われる時刻や検出間隔と、を制御する。また、制御部33は、送信部34の起動と、送信部34によってデータが送信される時刻や送信間隔と、を制御する。なお、制御部33は、第1RGBセンサ31及び第2RGBセンサ32の検出値を一時的に保存可能なメモリを有していてもよい。
【0033】
バッテリ35は、第1RGBセンサ31、第2RGBセンサ32、制御部33及び送信部34で消費される電力を供給可能な蓄電池である。バッテリ35は、太陽光や照明機器13の光エネルギに基づいて電力を発生させる光発電装置を有していてもよい。また、第1RGBセンサ31、第2RGBセンサ32、制御部33及び送信部34で消費される電力は、照明機器13へ供給される電力とともに外部から供給されるものであってもよく、この場合、バッテリ35を廃止することができる。
【0034】
なお、送信部34及びバッテリ35は、内照式看板10の内部に配置される必要はなく、メンテナンスの観点からは、例えば、支柱14の下方に設けられたボックス内に配置されていてもよい。
【0035】
次に、監視部50について説明する。
【0036】
監視部50は、複数の鉄系構造物において錆等の腐食が生じているか否かを監視する監視センタであり、送信部34を介して送信されたデータを受信する受信部52と、受信部52で受信されたデータが保存されるデータベース51と、データベース51に保存されたデータに基づいて後述の判定基準値Tを設定し、判定基準値Tとデータベース51に保存されたデータとを比較し鉄系構造物である内照式看板10に錆が生じているか否かを判定する判定部53と、判定部53の判定結果を報知する報知部54と、を有する。
【0037】
具体的には、監視部50は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)等を備えたコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。ROMに格納されたプログラムに従ってCPUやRAM等を動作させることによって内照式看板10に錆が生じているか否かが判定される。
【0038】
上述の判定部53や報知部54は、監視部50の各機能を仮想的なユニットとして示したものであり、物理的に存在することを意味するものではない。例えば、判定部53で行われる判定基準値Tの設定や判定基準値Tとの比較は、主にCPUにより行われ、判定結果や判定基準値Tの記憶は、RAMやROMにより行われる。また、受信部52はI/Oインターフェースに相当し、データベース51はROMに格納され、報知部54はモニタ等の表示装置に相当する。なお、監視部50は、クラウドサーバ等のサーバであってもよく、この場合、サーバ上のアプリケーションによって判定部53で行われる判定基準値Tの設定や判定基準値Tとの比較が実行され、判定結果をサーバ上で共有することが可能となる。
【0039】
ここで、
図5を参照し、支柱14から反射する反射光を受光する第1RGBセンサ31により検出される各色の照度が、支柱14に生じた錆の程度によってどのように変化するのかについて説明する。
図5には、内照式看板10が設置されたとき、支柱14に軽度の錆が生じたとき、支柱14に中度の錆が生じたとき、支柱14に重度の錆が生じたとき、に第1RGBセンサ31により検出される各色の照度の傾向が示されている。
【0040】
内照式看板10が設置されたときは、支柱14の表面は白色(塗装色)である。このため、支柱14から反射する光に含まれる赤(R)、緑(G)及び青(B)の各色の照度を検出する第1RGBセンサ31の出力は、赤(R)、緑(G)及び青(B)の各色ともに比較的大きな値となる。
【0041】
支柱14に軽度の錆、具体的には、鉄系構造物に生じる初期の錆である黄色や赤色の比較的明るい色の錆が生じた場合、第1RGBセンサ31の出力は、赤(R)成分の照度はあまり変化しない一方、緑(G)成分及び青(B)成分の照度は大幅に減衰し低くなる。
【0042】
支柱14の錆が進行し、中度の錆、具体的には、赤茶色や褐色の比較的暗い色の錆となった場合、第1RGBセンサ31の出力は、緑(G)成分及び青(B)成分が若干低くなるとともに、赤(R)成分の照度が大幅に減衰し低くなる。
【0043】
支柱14の錆がさらに進行し、重度の錆、具体的には、黒色の錆となった場合、第1RGBセンサ31の出力は、赤(R)成分、緑(G)成分及び青(B)成分のすべての照度がさらに低下する。
【0044】
このように、支柱14に生じた錆の程度によって第1RGBセンサ31から出力される赤(R)成分、緑(G)成分及び青(B)成分の照度が変化することから、第1RGBセンサ31の出力値に基づいて支柱14に錆が生じたか否かや錆の程度を判定することが可能と考えられる。
【0045】
しかしながら、第1RGBセンサ31によって検出される照度は、
図6に示されるように、支柱14に照射される光の強度によって当然に変化する。なお、
図6は、支柱14に錆が生じていない状態において、第1RGBセンサ31によって検出される各色成分の照度の傾向を示すものであり、実線は支柱14に光を照射する光源が正常である場合を示し、破線は支柱14に光を照射する光源に異常がある場合を示している。
【0046】
例えば、照明機器13の表面に汚れが付着したり、照明機器13の照明部分が劣化したりすることで支柱14に照射される光の照度が低下した場合、
図6において破線で示されるように、第1RGBセンサ31によって検出される反射光の照度も全体的に低下することになる。特に、支柱14に光を照射する光源が照明機器13ではなく自然光である場合は、天候によって支柱14に照射される光の照度が変化するため、第1RGBセンサ31によって検出される反射光の照度の変化も顕著となる。
【0047】
したがって、第1RGBセンサ31によって検出される赤(R)成分、緑(G)成分及び青(B)成分のそれぞれの照度の経時変化に基づいて支柱14に錆が生じたか否かを判定した場合、誤った判定が行われるおそれがある。
【0048】
このような誤判定を防止するために、腐食検知システム100では、第1RGBセンサ31から出力された赤(R)成分の照度により緑(G)成分及び青(B)成分の照度をそれぞれ正規化し、正規化された緑(G)成分の照度及び正規化された青色(B)成分の照度に基づいて支柱14に錆が生じたか否かを判定している。
【0049】
具体的には、赤(R)成分の照度により緑(G)成分の照度を除することにより、緑色の正規化照度として、赤(R)成分の照度に対する緑(G)成分の照度の比率である緑色照度比(G/R)を算出するとともに、赤(R)成分の照度により青(B)成分の照度を除することにより、青色の正規化照度として、赤(R)成分の照度に対する青(B)成分の照度の比率である青色照度比(B/R)を算出する。
【0050】
照明機器13の照度が変化した場合、第1RGBセンサ31で検出される各色の照度の絶対値は変化するが、検出された各色の照度同士を比較して得られる比率はさほど変化しないことから、緑(G)成分の照度及び青色(B)成分の照度を赤(R)成分の照度を基準としてそれぞれ正規化することによって求められた緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)は、光源の照度変化の影響が抑えられた値となる。
【0051】
次に、
図7を参照し、緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)が、支柱14に生じた錆の程度によってどのように変化するのかについて説明する。
図7には、内照式看板10が設置されたとき、支柱14に軽度の錆が生じたとき、支柱14に中度の錆が生じたとき、支柱14に重度の錆が生じたとき、の緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)の傾向が示されている。
【0052】
支柱14に軽度の錆が生じた場合、上述のように、赤(R)成分の照度はあまり変化しない一方、緑(G)成分及び青(B)成分の照度は大幅に低くなる。このため、赤(R)成分の照度により正規化された緑(G)成分の照度である緑色照度比(G/R)と、赤(R)成分の照度により正規化された青(B)成分の照度である青色照度比(B/R)とは、内照式看板10が設置されたときと比較して大幅に低下する。
【0053】
支柱14の錆が中度の錆となった場合、上述のように、緑(G)成分及び青(B)成分と同様に、赤(R)成分の照度も低くなる。このように赤(R)成分の照度が低下したことで、緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)は、支柱14に軽度の錆が生じたときの照度比を上回る値となる。
【0054】
そして、支柱14の錆が重度の錆となった場合、上述のように、赤(R)成分、緑(G)成分及び青(B)成分のすべての照度が低下し、各成分の照度の比率は、内照式看板10が設置されたときと同じような比率となる。このため、緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)は、内照式看板10が設置されたときの値に近づき、支柱14に中度の錆が生じたときよりも大きな値となる。
【0055】
続いて、このような緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)の変化傾向を利用して行われる腐食検知システム100による腐食の判定について、
図8を参照して説明する。
図8は、緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)の年次推移を示すグラフである。
【0056】
腐食検知システム100は、内照式看板10が設置されると、緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)を取得し、内照式看板10の鉄系構造部に腐食が生じていないときの照度比として保存する。
【0057】
具体的には、日没後に照明機器13が点灯し、第1RGBセンサ31において、自然光の影響を受けることなく、支柱14から反射した照明機器13の光を受光することが可能な時刻になると、制御部33は、第1RGBセンサ31を起動させ、第1RGBセンサ31により検出された赤(R)成分、緑(G)成分及び青(B)成分の照度を取得する。
【0058】
赤(R)成分、緑(G)成分及び青(B)成分の照度を取得されると、制御部33は、送信部34を起動させて、取得されたデータを監視部50へと送信する。
【0059】
監視部50は、受信部52により受信されたデータを、内照式看板10の設置位置情報や所有者情報と関連付けてデータベース51に保存する。判定部53は、データベース51に保存された緑(G)成分の照度及び青色(B)成分の照度を赤(R)成分の照度により正規化することによって緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)を算出する。さらに、判定部53は、算出された照度比毎に、腐食の判定に用いられる閾値としての判定基準値Tを設定する。
【0060】
判定部53は、内照式看板10が設置された時、すなわち、内照式看板10の鉄系構造部がまだ腐食していない状態で取得された緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)を基準照度比として、基準照度比の所定の割合の値を判定基準値Tとして設定する。所定の割合は、実験的に求められる値であり、判定基準値Tが、鉄系構造部に軽度の錆が生じた際に得られる照度比と、鉄系構造部に中度の錆が生じた際に得られる照度比と、の間の値となるような割合に設定される。なお、判定基準値Tは、予め実験的に設定された値であってもよい。
【0061】
内照式看板10が設置された時のデータの送信が完了して以降、制御部33は、所定の期間毎に、同じ条件下で第1RGBセンサ31によって赤(R)成分、緑(G)成分及び青(B)成分の照度を検出し、監視部50へと送信する。所定の期間は、例えば、1ヵ月、半年、1年など任意の期間に設定される。なお、腐食が比較的早い海辺の地域では、所定の期間を短い期間に設定することが好ましい。また、設置から5年までは1年毎、6年から8年までは半年毎、9年以降は1ヵ月毎といったように、設置からある程度の期間が経過した場合は、検出間隔を徐々に短くしていってもよい。
【0062】
このように腐食検知システム100において取得された緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)は、支柱14に生じた錆の程度に応じて、例えば、
図8に示すように推移する。
【0063】
図8には、1年毎に第1RGBセンサ31によって赤(R)成分、緑(G)成分及び青(B)成分の照度を検出し、検出されたデータから算出された緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)の何れか一方の照度比と、その判定基準値Tが示されている。
【0064】
図8に示される例では、設置時から3年目まではほとんど変化がなく、照度比は、判定基準値Tよりも値が大きいことから、判定部53は、内照式看板10において腐食は生じていないと判定する。
【0065】
そして、4年目、5年目には、軽度の錆が生じたことによって照度比は、判定基準値Tよりも小さくなる。判定部53は、判定基準値Tよりも小さい照度比が検出された4年目に内照式看板10において腐食が生じたと判定する。
【0066】
判定部53により腐食が生じたと判定されると、報知部54により、腐食が生じた内照式看板10の設置位置や設置年数、外観といった諸情報がモニタ等を介して報知される。報知内容に基づき腐食が生じた内照式看板10を作業者がメンテナンスすることによって、腐食に気付かれることなく内照式看板10が放置され続けてしまうことを防止することができる。また、腐食判定に関する情報やメンテナンスの進捗状況はデータベース51に保存され、内照式看板10の所有者や管理者がデータベース51にアクセスすることによって閲覧可能な状態とされる。
【0067】
ここで、照度比が判定基準値Tを下回った場合、内照式看板10において生じた錆の程度は軽度であると推定されることから、報知部54による報知は、注意喚起を促す程度のものであってもよい。この場合、判定部53は、判定基準値Tよりも大きい照度比が検出されたとき(6年目)に、内照式看板10においてメンテナンスが必要な腐食が生じたと判定し、報知部54によって腐食状況を報知させる。
【0068】
このように判定基準値Tを下回る照度比が検出されてから、所定期間経過後に、判定基準値Tを上回る照度比が検出されたときに、腐食が生じたと判定することによって内照式看板10における腐食の発生を精度よく判定することができる。
【0069】
なお、所定期間とは、錆の程度が軽度な状態から中度の状態となるまでの一般的な期間である。この期間が経過するよりも前に判定基準値Tを上回る照度比が検出された場合は、第1RGBセンサ31の測定誤差に起因する可能性が高いことから、判定部53は、錆の程度はまだ軽度な状態であると判定する。なお、内照式看板10が腐食の進行が比較的早い地域に設置されている場合は、上記所定期間を設けなくともよい。
【0070】
上述の判定部53による判定は、緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)の何れか一方の照度比と、その判定基準値Tとの比較により行われてもよいし、緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)の両方の値が上述の条件を満たしたか否かによって行われてもよい。なお、緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)の両方の値を用いて判定することによって腐食の発生をより精度よく判定することが可能である。
【0071】
上記判定に基づき内照式看板10の改修等が行われると、再び、内照式看板10が設置されたときと同様にして第1RGBセンサ31によって初期値が検出される。なお、6年目以降も内照式看板10が放置され続けた場合には、
図8に示すように、黒錆が生じることによって、照度比は、判定基準値Tをさらに上回ることになる。
【0072】
ここで、上述のように、腐食検知システム100では、支柱14に光を照射する照明機器13の照度が変化した場合の影響を抑制するために、第1RGBセンサ31により検出された緑(G)成分の照度及び青色(B)成分の照度を赤(R)成分の照度を基準として正規化している。
【0073】
しかしながら、照明機器13の表面に汚れが付着したり、照明機器13の照明部分が劣化したりすることで照明機器13の照度が変化した場合、照明機器13から照射される光に含まれる各色の照度の比率は多少なりとも変化するおそれがある。
【0074】
このように、照射される光に含まれる各色の照度の比率が変化してしまうと、反射される光に含まれる各色の照度を検出する第1RGBセンサ31の出力から得られた緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)の大きさも、それに応じて変化してしまう。
【0075】
つまり、照射される光に含まれる各色の照度の比率が変化すると、支柱14に生じた錆の程度が同じであっても第1RGBセンサ31の出力から得られる緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)の大きさが変わってしまうため、誤った判定が行われるおそれがある。
【0076】
そこで腐食検知システム100では、照明機器13から照射される光に含まれる各色の照度を検出する第2RGBセンサ32の出力値を用いて、照明機器13から照射される光に含まれる各色の照度の比率の変化を補償している。
【0077】
第2RGBセンサ32は、上述のように、照明機器13が照射する光を受けるように設置され、照明機器13から支柱14へ向けて照射される光に含まれる赤色、緑色及び青色の各色の照度を検出することが可能である。
【0078】
このため、第2RGBセンサ32により検出された赤(R2)成分の照度に対する緑(G2)成分の照度の比率である第2緑色照度比(G2/R2)と、赤(R2)成分の照度に対する青(B2)成分の照度の比率である第2青色照度比(B2/R2)とは、支柱14へ向けて照射される光に含まれる各色の照度の比率が変化した場合、その変化に応じて大きさが変化することになる。
【0079】
赤成分と緑成分との比率を示す第2緑色照度比(G2/R2)の逆数を第1RGBセンサ31の出力から得られた緑色照度比(G/R)に乗じることによって、照明機器13から照射される光に含まれる各色の照度の比率の変化が補償された緑色補償照度比(Gc/Rc)が得られる。
【0080】
同様に、赤成分と青成分との比率を示す第2青色照度比(B2/R2)の逆数を第1RGBセンサ31の出力から得られた青色照度比(B/R)に乗じることによって、照明機器13から照射される光に含まれる各色の照度の比率の変化が補償された青色補償照度比(Bc/Rc)が得られる。
【0081】
このようにして得られた緑色補償照度比(Gc/Rc)及び青色補償照度比(Bc/Rc)は、照明機器13から照射される光に含まれる各色の照度の比率が変化したとしても、支柱14に生じた錆の程度が同じであれば同じ値となる。つまり、第2RGBセンサ32の出力から得られた第2緑色照度比(G2/R2)の逆数及び第2青色照度比(B2/R2)の逆数は、照明機器13から照射される光に含まれる各色の照度の比率の変化を補償するための補正係数となる。
【0082】
したがって、腐食検知システム100による腐食の判定において、判定基準値Tと比較される値として、緑色補償照度比(Gc/Rc)及び青色補償照度比(Bc/Rc)を用いることによって、内照式看板10における腐食の発生をさらに精度よく判定することができる。
【0083】
上述の腐食検知システム100において、第1RGBセンサ31によって照度を検出する時期については、支柱14に光を照射する照明機器13の照度が季節によらず一定であることからすると1年中いつでもよいと考えられる。
【0084】
しかしながら、屋外に設置される内照式看板10では、内部に水分が溜まり、夏場には苔や藻といった緑色系の植物が発生することがある。このため、上述の緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)は、例えば
図9に示すように、夏場に上昇する一方、冬場に下降する傾向を示す。
【0085】
このため、第1RGBセンサ31によって照度を検出する時期は、特定の季節、例えば、苔や藻の影響が少ない冬場や、苔や藻の影響が平均的である春や秋とすることが好ましい。
【0086】
また、屋外に設置される内照式看板10では、夏場は光に集まる小さな虫が図示しない排水孔等を通って内部に侵入することから、虫の影響によって緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)が変動するおそれがある。このような理由からも第1RGBセンサ31によって照度を検出する時期は、夏以外の特定の季節とすることが好ましい。
【0087】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0088】
上記第1実施形態に係る腐食検知システム100では、鉄系構造物である支持枠12や支柱14から反射する光に含まれる赤色、緑色及び青色の照度をそれぞれ検出する第1RGBセンサ31から出力された照度の経時変化に基づいて支持枠12や支柱14に錆が生じたか否かが判定される。このように鉄系構造物に錆が生じたか否かの判定は、撮像装置により撮影された高画素画像を処理することにより行われるのではなく、構成が簡素であり安価なRGBセンサの出力値に基づいて行われる。このため、高価な撮像装置が不要になるとともに高画素画像を処理する高い処理能力を有する処理装置も不要となる。この結果、鉄系構造物の腐食状態を判定する腐食検知システム100の構成が簡素化され、鉄系構造物の腐食状態を判定するためのコストを低減させることができる。
【0089】
また、鉄系構造物に錆が生じたか否かの判定に撮像装置が用いられる場合、レンズに汚れ等が付着すると、撮影された画像の一部が欠損することになるため、正確な解析を行うことが難しくなる。一方、上記第1実施形態に係る腐食検知システム100のように、鉄系構造物に錆が生じたか否かの判定にRGBセンサが用いられる場合、RGBセンサの受光面に汚れ等が付着したとしても全体的な照度が減衰するだけであり、各色成分の照度の比率はほとんど変化しない。このため、鉄系構造物における腐食の発生を精度よく判定することができる。
【0090】
次に、上記第1実施形態の変形例について説明する。
【0091】
上記第1実施形態では、第1RGBセンサ31が支柱14から反射する光の照度を検出することによって、腐食検知システム100により支柱14の腐食状態が判定されている。これに代えて、腐食検知システム100は、鉄系構造部である支持枠12の腐食状態や支持枠12と支柱14の接合部の腐食状態を判定するものであってもよい。この場合、第1RGBセンサ31は、支持枠12または支持枠12と支柱14の接合部から反射する光を受光可能なように設置される。
【0092】
また、上記第1実施形態では、検出部30には第1RGBセンサ31が1つだけ設けられている。これに代えて、第1RGBセンサ31は検出部30に複数設けられていてもよい。この場合、例えば、その一部を支柱14の各部から反射する光を受けるように配置し、残りを支持枠12の各部から反射する光を受けるように配置することによって、腐食検知システム100は、支柱14の複数箇所及び支持枠12の複数箇所における腐食状態を判定することが可能となる。なお、第1RGBセンサ31を複数設けることに代えて、検出部30を複数設けてもよい。
【0093】
また、上記第1実施形態では、腐食の有無の判定を行う判定部53等は、鉄系構造物である内照式看板10からは離れた部分に設けられている。これに代えて、判定部53等は、検出部30とともに内照式看板10の内部に設けられていてもよい。この場合、判定部53で判定された結果のみが送信部34を介して監視センタまたは鉄系構造物の所有者や管理者へと送信される。
【0094】
また、上記第1実施形態では、腐食検知システム100は、照明機器13を内部に備えた内照式構造物である内照式看板10に適用される。腐食検知システム100が適用される鉄系構造物としては、内照式看板10に限定されず、照明機器を外部に備えた外照式構造物である外照式看板であってもよい。この場合も上記第1実施形態と同様に、外照式看板の鉄系構造部における腐食の発生を精度よく判定することができる。また、この場合、第2RGBセンサ32の受光面32aは、外部に設けられた照明機器に向けられる。
【0095】
また、上記第1実施形態では、鉄系構造部である支柱14及び支持枠12に光を照射する光源は、照明機器13である。これに代えて、鉄系構造部に光を照射する光源は、自然光、すなわち太陽光であってもよい。この場合も上記第1実施形態と同様に、鉄系構造部における腐食の発生を精度よく判定することができる。また、この場合、第2RGBセンサ32の受光面32aは、太陽光が入射するように鉛直方向において略上方に向けられる。
【0096】
ここで、鉄系構造部に光を照射する光源が自然光である場合、天候や季節、時間によって照度及び光に含まれる各色の照度の比率が変化する。このため、第1RGBセンサ31により照度を検出する季節としては、比較的照度が大きい夏至頃に行うことが好ましいが、苔や藻の影響が考えられる場合や年に二回検出する必要がある場合には、春分及び秋分頃に行うことが好ましい。また、昼間と夕方とでは、太陽光に含まれる各色の照度の比率が変化するため、第1RGBセンサ31により照度を検出する時間としては、昼12時頃とすることが好ましい。
【0097】
なお、上述のように、上記第1実施形態に係る腐食検知システム100では、第2RGBセンサ32の出力値を利用し、鉄系構造部に照射される光に含まれる各色の照度の比率の変化が補償された値に基づいて腐食の発生の有無を判定している。このため、特に鉄系構造部に光を照射する光源が自然光である場合には、第1RGBセンサ31により照度が検出される時刻や季節、天候に関わらず、鉄系構造部における腐食の発生を精度よく判定することが可能である。
【0098】
また、鉄系構造部に光を照射する光源として自然光が利用される場合、腐食検知システム100が適用される鉄系構造物としては、内照式看板10に限定されず、屋外に配置され腐食のおそれがある鉄系構造物であればどのようなものであってもよく、例えば、照明機器を備えていない看板であってもよいし、照明機器を外部に備えた外照式構造物である外照式看板であってもよい。
【0099】
<第2実施形態>
次に、
図10~12を参照して、本発明の第2実施形態に係る腐食検知システム200について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。
図10は、内照式看板10の正面図であり、
図11は、
図10のB-B線に沿う断面を示す断面図であり、
図12は、腐食検知システム200の構成図である。
【0100】
腐食検知システム200の基本的な構成は、第1実施形態に係る腐食検知システム100と同様である。腐食検知システム200は、鉄系構造部に光を照射する光源としてLED照明132を備えている点で腐食検知システム100と相違する。
【0101】
腐食検知システム200は、内照式看板10内に設置され内照式看板10の鉄系構造部の反射光の照度を検出する検出部130と、検出部130により検出された照度が送られる監視部50と、を備える。
【0102】
腐食検知システム200が適用される内照式看板10の構造は、上記第1実施形態に係る腐食検知システム100が適用される内照式看板10と同じであるため、その説明を省略する。
【0103】
内照式看板10の支持枠12上には、内照式看板10の鉄系構造部の反射光の照度を検出する検出部130が設置される。以下では、検出部130が、鉄系構造部である支持枠12と支柱14とのうち、支柱14の反射光の照度を検出するように構成されている場合について説明する。
【0104】
検出部130は、鉄系構造部である支柱14から反射する光に含まれる赤色、緑色及び青色の照度をそれぞれ検出して出力する反射光RGBセンサとしての第1RGBセンサ131と、鉄系構造部である支柱14に光を照射するLED照明132と、第1RGBセンサ131で検出された検出値を監視部50へ送信する送信部134と、第1RGBセンサ131の起動やLED照明132の点灯、送信部134の作動を制御する制御部133と、制御部133に電力を供給するバッテリ135と、を有する。なお、送信部134及びバッテリ135は、上記第1実施形態の送信部34及びバッテリ35と同様の機能及び構成を有する。
【0105】
第1RGBセンサ131は、上記第1実施形態の第1RGBセンサ31と同様に、受光した光に含まれる赤色周辺の波長の光の照度、緑色周辺の波長の光の照度及び青色周辺の波長の光の照度の3つの照度に応じた電気信号を出力するカラーセンサである。第1RGBセンサ131は、図示しない受光面が支柱14と対向するように設置される。
【0106】
LED照明132は、第1RGBセンサ131の受光面が対向する支柱14に向かって光を照射する光源であり、赤色、緑色及び青色においてほぼ均一な分光分布を有する白色LEDである。LED照明132は、第1RGBセンサ131によって照度の検出が行われるときのみ点灯される。なお、鉄系構造部に光を照射する光源としてはLED照明132に限定されず、他の形式の照明機器であってもよい。
【0107】
制御部133は、第1RGBセンサ131の起動と、第1RGBセンサ131によって照度の検出が行われる時刻や検出間隔と、を制御する。また、制御部133は、送信部134の起動と、送信部134によってデータが送信される時刻や送信間隔と、を制御する。さらに制御部133は、第1RGBセンサ131によって照度が検出される際にLED照明132が点灯するように、LED照明132のオンオフを制御する。
【0108】
監視部50は、上記第1実施形態の監視部50と同じ機能及び構成を有するものであるため、その説明を省略する。
【0109】
上記構成の腐食検知システム200では、上記第1実施形態に係る腐食検知システム100と同様に、第1RGBセンサ131の出力から算出された緑色照度比(G/R)及び青色照度比(B/R)に基づいて、支持枠12または支柱14に錆が生じたか否かの判定が行われる。
【0110】
以上の第2実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0111】
上記第2実施形態に係る腐食検知システム200では、上記第1実施形態に係る腐食検知システム100と同様に、鉄系構造物である支持枠12や支柱14から反射する光に含まれる赤色、緑色及び青色の照度をそれぞれ検出する第1RGBセンサ131から出力された照度の経時変化に基づいて支持枠12や支柱14に錆が生じたか否かが判定される。このように鉄系構造物に錆が生じたか否かの判定は、撮像装置により撮影された高画素画像を処理することにより行われるのではなく、構成が簡素であり安価なRGBセンサの出力値に基づいて行われる。このため、高価な撮像装置が不要になるとともに高画素画像を処理する高い処理能力を有する処理装置も不要となる。この結果、鉄系構造物の腐食状態を判定する腐食検知システム200の構成が簡素化され、鉄系構造物の腐食状態を判定するためのコストを低減させることができる。
【0112】
また、上記第2実施形態に係る腐食検知システム200では、鉄系構造部に光を照射する光源としてLED照明132が設けられる。このように専用の光源を設けることで、第1RGBセンサ131が受光する支持枠12または支柱14からの反射光を安定させることが可能となり、結果として支持枠12または支柱14における腐食の発生を精度よく判定することができる。
【0113】
次に、上記第2実施形態の変形例について説明する。
【0114】
上記第2実施形態では、腐食検知システム200は、照明機器13を内部に備えた内照式構造物である内照式看板10に適用される。腐食検知システム200が適用される鉄系構造物としては、内照式看板10に限定されず、屋外に配置され腐食のおそれがある鉄系構造物であればどのようなものであってもよく、例えば、照明機器を外部に備えた外照式構造物である外照式看板であってもよいし、照明機器を備えていない看板であってもよい。照明機器を備えていない鉄系構造物であっても上記構成の腐食検知システム200の検出部130を設けることによって、鉄系構造部における腐食の発生を精度よく判定することができる。
【0115】
また、上記第2実施形態では、第1RGBセンサ131が支柱14から反射する光の照度を検出することによって、腐食検知システム200により支柱14の腐食状態が判定されている。これに代えて、腐食検知システム200は、鉄系構造部である支持枠12の腐食状態や支持枠12と支柱14の接合部の腐食状態を判定するものであってもよい。この場合、第1RGBセンサ131は、支持枠12または支持枠12と支柱14の接合部から反射する光を受光可能なように設置される。
【0116】
また、上記第2実施形態では、検出部130には第1RGBセンサ131とLED照明132とが1組だけ設けられている。これに代えて、第1RGBセンサ131とLED照明132とは検出部130に複数組設けられていてもよい。この場合、例えば、その一部を支柱14の各部に光を照射するとともに反射する光を受けるように配置し、残りを支持枠12の各部に光を照射するとともに反射する光を受けるように配置することによって、腐食検知システム200は、支柱14の複数箇所及び支持枠12の複数箇所における腐食状態を判定することが可能となる。なお、第1RGBセンサ131とLED照明132とを複数組設けることに代えて、検出部130を複数設けてもよい。
【0117】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0118】
腐食検知システム100,200は、鉄系構造物である支持枠12や支柱14から反射する光に含まれる赤色、緑色及び青色の照度をそれぞれ検出して出力する第1RGBセンサ31,131と、第1RGBセンサ31,131から出力された赤色、緑色及び青色の照度の経時変化に基づいて鉄系構造物の腐食状態を判定する判定部53と、を備える。
【0119】
この構成では、鉄系構造物である支持枠12や支柱14から反射する光に含まれる赤色、緑色及び青色の照度をそれぞれ検出する第1RGBセンサ31,131から出力された照度の経時変化に基づいて支持枠12や支柱14に錆が生じたか否かが判定される。このように鉄系構造物に錆が生じたか否かの判定は、撮像装置により撮影された高画素画像を処理することにより行われるのではなく、構成が簡素であり安価なRGBセンサの出力値に基づいて行われる。このため、高価な撮像装置が不要になるとともに、高画素画像を処理する高い処理能力を有する処理装置も不要となる。この結果、鉄系構造物の腐食状態を判定する腐食検知システム100,200の構成が簡素化され、鉄系構造物の腐食状態を判定するためのコストを低減させることができる。
【0120】
また、判定部53は、第1RGBセンサ31,131から出力された赤色の照度により緑色及び青色の照度を正規化し、正規化された緑色の照度及び正規化された青色の照度の少なくとも何れかの経時変化に基づいて鉄系構造物の腐食状態を判定する。
【0121】
この構成では、赤色の照度により正規化された緑色の照度及び赤色の照度により正規化された青色の照度の少なくとも何れかの経時変化に基づいて鉄系構造物の腐食状態が判定される。ここで、鉄系構造物に照射される光の照度が変化した場合、第1RGBセンサ31,131で検出される各色の照度の絶対値は変化するが、検出された各色の照度同士を比較して得られる比率はさほど変化しない。つまり、赤色の照度により正規化された緑色の照度や赤色の照度により正規化された青色の照度は、光源の照度変化の影響が抑えられた値となる。このため、第1RGBセンサ31,131の出力値をそのまま腐食状態の判定に用いるのではなく、正規化された緑色の照度や正規化された青色の照度を腐食状態の判定に用いることで、鉄系構造部における腐食の発生を精度よく判定することができる。
【0122】
また、判定部53は、正規化された緑色の照度および正規化された青色の照度の少なくとも何れかの大きさが、判定基準値Tを下回った後、所定期間経過後に判定基準値Tを上回ったとき、鉄系構造物に腐食が生じたと判定する。
【0123】
この構成では、正規化された緑色の照度および正規化された青色の照度の少なくとも何れかの大きさが、判定基準値Tを下回った後、所定期間経過後に判定基準値Tを上回ったときに鉄系構造物に腐食が生じたと判定する。このように、正規化された照度が判定基準値Tを下回った際に鉄系構造物に腐食が生じたと安易に判定するのではなく、錆の進行に応じて変化する正規化された照度の変化傾向を利用し、正規化された照度が、判定基準値Tを一旦下回った後、判定基準値Tを上回ったときに鉄系構造物に腐食が生じたと判定することによって、鉄系構造部における腐食の発生を精度よく判定することができる。
【0124】
また、腐食検知システム100は、鉄系構造物に入射する光に含まれる赤色、緑色及び青色の照度をそれぞれ検出して出力する第2RGBセンサ32をさらに備え、判定部53は、正規化された緑色の照度および正規化された青色の照度を、第2RGBセンサ32から出力された赤色、緑色及び青色の照度に基づいて補正する。
【0125】
この構成では、正規化された緑色の照度および正規化された青色の照度が、第2RGBセンサ32から出力された赤色、緑色及び青色の照度に基づいて補正される。このように、鉄系構造物に照射される光に含まれる各色の照度を検出する第2RGBセンサ32の出力値を用いて、正規化された緑色の照度および正規化された青色の照度を補正することによって、鉄系構造物に照射される光に含まれる各色の照度の比率の変化が補償される。この結果、判定基準値Tと比較される値として、補償された正規化照度を用いることによって、鉄系構造物における腐食の発生をさらに精度よく判定することができる。
【0126】
また、鉄系構造物は、照明機器13を内部に備えた内照式看板10または照明機器を外部に備えた外照式看板であり、鉄系構造物に入射する光は、照明機器13から照射される光であり、第1RGBセンサ31は、鉄系構造物から反射する照明機器13の光に含まれる赤色、緑色及び青色の照度をそれぞれ検出して出力する。
【0127】
この構成では、鉄系構造物に光を照射する光源として内照式看板10または外照式看板の照明機器13が利用される。このように、比較的安定した光を照射する照明機器13を光源として利用することによって、鉄系構造物から反射する光、すなわち、第1RGBセンサ31が受光する光を安定させることが可能となる。この結果、鉄系構造部における腐食の発生を精度よく判定することができる。
【0128】
また、腐食検知システム200は、第1RGBセンサ131によって照度を検出するときのみに鉄系構造物に光を照射するLED照明132をさらに備え、第1RGBセンサ131は、鉄系構造物から反射するLED照明132の光に含まれる赤色、緑色及び青色の照度をそれぞれ検出して出力する。
【0129】
この構成では、鉄系構造物に光を照射する光源としてLED照明132が設けられる。このように専用の光源を設けることで、鉄系構造物から反射する光、すなわち、第1RGBセンサ131が受光する光を安定させることが可能となる。この結果、鉄系構造物における腐食の発生を精度よく判定することができる。また、専用の光源を設けることで、照明機器を備えていない鉄系構造物における腐食の発生も判定することができる。
【0130】
また、鉄系構造物に入射する光は、自然光であり、第1RGBセンサ31は、鉄系構造物から反射する自然光に含まれる赤色、緑色及び青色の照度をそれぞれ検出して出力する。
【0131】
この構成では、鉄系構造物に光を照射する光源として自然光、すなわち、太陽光が利用される。このため、照明機器が消灯している間に鉄系構造物における腐食の発生も判定することができるとともに、照明機器を備えていない鉄系構造物における腐食の発生も判定することができる。
【0132】
また、判定部53は、特定の季節に第1RGBセンサ31,131から出力された赤色、緑色及び青色の照度の経時変化に基づいて鉄系構造物の腐食状態を判定する。
【0133】
この構成では、特定の季節に第1RGBセンサ31,131から出力された照度の経時変化に基づいて鉄系構造物の腐食状態が判定される。上述のように、内照式看板10では、夏場に苔等が発生するおそれがあり、また、鉄系構造物に光を照射する光源として自然光が利用される場合、季節によって光に含まれる各色の照度の比率が変化する。このため、第1RGBセンサ31,131により照度を検出する季節を特定しておくことにより、鉄系構造部における腐食の発生を精度よく判定することができる。
【0134】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0135】
100,200 腐食検知システム
10 内照式看板(鉄系構造物、内照式構造物)
12 支持枠(鉄系構造部)
13 照明機器
14 支柱(鉄系構造部)
30,130 検出部
31,131 第1RGBセンサ(反射光RGBセンサ)
32 第2RGBセンサ(入射光RGBセンサ)
53 判定部
132 LED照明(光源)