(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】糖尿病網膜症を予防または治療するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/48 20060101AFI20220804BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220804BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220804BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220804BHJP
C12N 15/57 20060101ALN20220804BHJP
C12N 9/68 20060101ALN20220804BHJP
【FI】
A61K38/48 100
A61P3/10
A61P27/02
A61K45/00
C12N15/57
C12N9/68 ZNA
(21)【出願番号】P 2019214655
(22)【出願日】2019-11-27
(62)【分割の表示】P 2018550637の分割
【原出願日】2016-12-16
【審査請求日】2019-11-27
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2015/097946
(32)【優先日】2015-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518217305
【氏名又は名称】タレンゲン インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TALENGEN INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】李 季男
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-525798(JP,A)
【文献】特表2007-533327(JP,A)
【文献】米国特許第06733750(US,B1)
【文献】特表2006-518708(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1451746(CN,A)
【文献】Diabetologia,2004年,Vol.47, No.1,p.124-131
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に有効量投与されるGlu-プラスミノゲンまたは
配列2と90%以上の配列同一性を有するGlu-プラスミノゲンバリアントを含み、プラスミノゲン活性化酵素を含まない、被験者の糖尿病によって引き起こされる網膜病変の予防及び/または治療剤。
【請求項2】
前記網膜病変は糖尿病によって引き起こされる網膜新生血管の形成、網膜炎症、網膜萎縮、網膜細胞アポトーシス、または網膜組織構造損傷を含むことを特徴とする、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
前記Glu-プラスミノゲンまたは
配列2と90%以上の配列同一性を有するGlu-プラスミノゲンバリアントは、全身または局所にて投与されることを特徴とする、請求項1~2のいずれかに記載の剤。
【請求項4】
前記Glu-プラスミノゲンまたは
配列2と90%以上の配列同一性を有するGlu-プラスミノゲンバリアントは一種類または複数種類の他の薬物と組み合わせて投与でき、前記他の薬物は抗糖尿病薬、抗心脳血管疾患薬、抗血栓薬、血圧降下薬、高脂血症治療薬、抗感染薬及びその他の併発する疾患を治療するための通常の薬物であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の剤。
【請求項5】
有効用量のGlu-プラスミノゲンまたは
配列2と90%以上の配列同一性を有するGlu-プラスミノゲンバリアントを含有する容器、及び被験者の糖尿病によって引き起こされる網膜病変の予防及び/または治療における製品の投与を指導するプロトコルを含み、プラスミノゲン活性化酵素を含まないことを特徴とする、被験者の糖尿病によって引き起こされる網膜病変を予防及び/または治療するための製品。
【請求項6】
さらに一種類または複数種類の他の薬物の容器を含む、請求項5に記載の製品。
【請求項7】
前記他の薬物は抗糖尿病薬、抗心脳血管疾患薬、抗血栓薬、血圧降下薬、高脂血症治療薬、抗感染薬物及びその他の併発疾患を治療するための通常の薬物であることを特徴とする、請求項6に記載の製品。
【請求項8】
前記プロトコルはさらに前記Glu-プラスミノゲンまたは
配列2と90%以上の配列同一性を有するGlu-プラスミノゲンバリアントは前記他の薬物を投与する前、投与と同時、または後に投与できることを説明するものであることを特徴とする、請求項6または7に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスミノゲンの糖尿病によって引き起こされる内臓臓器及び血管の組織細胞損傷、神経、網膜組織の細胞損傷の抑制おける用途に係り、これとともにプラスミノゲンの糖尿病によって引き起こされる網膜病変を予防または治療することにおける用途に係り、さらには糖尿病によって引き起こされる異なるタイプの網膜病変に対してまったく新しい予防及び/または治療ストラテジーを提供する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は一連の複数の遺伝及び環境要素の共同作用によってもたらされるインスリン分泌の減少またはインスリン作用欠陥によって引き起こされる、体内の糖、タンパク質、脂肪、水及び電化質の代謝混乱が生じる内分泌、代謝症候群である。それは慢性の血糖水準上昇を特徴とし、長く続いた場合は目、腎臓、肝臓などの臓器の慢性合併症をもたらす。糖尿病自身及びその合併症は人類の健康を大きく脅かし、糖尿病及びその合併症の治療は世界的な重大な公共衛生問題となっている。
【0003】
糖尿病網膜症は最もよく見られる糖尿病性眼疾患であり、視力の減退または失明をもたらす。統計によれば、50%の糖尿病患者は病程10年前後で該病変が現れ、15年以上では80%に達する。糖尿病の病状がひどく、年齢が大きいほど、発病の確率が高い。
【0004】
プラスミンはプラスミノゲン活性化系(PA系)の重要な成分である。それは広スペクトルのプロテアーゼであり、細胞外マトリックス(ECM)の幾つかの成分を加水分解することができ、これらの成分はフィブリン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン及びプロテオグリカンを含む(非特許文献1)。また、プラスミンは一部のプロマトリックスメタロプロテアーゼ(pro-MMP)を活性化させて活性のあるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)にすることができる。そのためプラスミンは細胞外タンパク加水分解作用の一つの重要な上流調節因子である(非特許文献2,3)。プラスミンはプラスミノゲンが二種類の生理性のPA:組織型プラスミノゲン活性化剤(tPA)またはウロキナーゼプラスミノゲン活性化剤(uPA)をタンパク質加水分解することで形成されるものである。プラスミノゲンは血漿及びその他の体液中における相対レベルが比較的高く、従来的にはPA系の調節は主にPAの合成及び活性レベルよって実現されると考えられている。PA系成分の合成は異なる要素によって厳格的な調節を受け、これらの要素は例えばホルモン、成長因子及びサイトカインである。また、この他に、プラスミンとPAの特定の生理的阻害剤を含む。プラスミンの主な阻害剤はα2-抗プラスミン(α2-antiplasmin)である。一部の細胞表面には直接加水分解する活性のあるuPA特異性細胞表面受容体(uPAR)(非特許文献4,5)がある。
【0005】
プラスミノゲン(plasminogen,plg)は単一鎖の糖タンパク質であり、分子量は約92kDaである(非特許文献6,7)。プラスミノゲンは主に肝臓で合成され、大量に細胞外液中に存在する。血漿中のプラスミノゲンの含有量は約2μMである。そのためプラスミノゲンは組織と体液中のタンパク質加水分解活性の巨大な潜在的ソースである(非特許文献8,9)。プラスミノゲンには二種類の分子形式が存在する:グルタミン酸-プラスミノゲン(Glu-plasminogen)及びリシン-プラスミノゲン(Lys-plasminogen)である。天然的に分泌され及び断裂していない形のプラスミノゲンは一つのアミノ基末端(N-末端)を有するグルタミン酸であり、そのためグルタミン酸-プラスミノゲンと呼ばれる。しかし、プラスミンが存在する場合、グルタミン酸-プラスミノゲンはLys76-Lys77において加水分解されてリシン-プラスミノゲンとなる。グルタミン酸-プラスミノゲンと比較した場合、リシン-プラス
ミノゲンとフィブリンはより高い親和力を有し、さらにより高い速度でPAsによって活性化されることができる。この二つの形式のプラスミノゲンのArg560-Val561ペプチド結合はuPAまたはtPAによって切断され、これによりジスルフィド結合によって接続された二重鎖プロテアーゼプラスミンが形成される(非特許文献10)。プラスミノゲンのアミノ基末端は五つの同由来トリサイクルを含み、即ちいわゆるkringleであり、カルボキシル末端部分はプロテアーゼドメインを含む。一部のkringleはプラスミノゲンとフィブリン及びその阻害剤α2-APの特異性相互作用を介在するリシン結合部位を有する。最新的に、38kDaのプラスミノゲンはフラグメントであり、kringle1-4を含み、血管生成の効果的な阻害剤である。このフラグメントはアンギオスタチンと命名され、いくつかのプロテアーゼがプラスミノゲンを加水分解することによって生成される。
【0006】
プラスミンの主な基質はフィブリンであり、フィブリンの溶解は病理性血栓の形成を予防するキーポイントである(非特許文献11)。プラスミンはさらにECMの幾つかの成分に対する基質特異性を有し、これらはラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカン及びゼラチンを含み、これはプラスミンがECM再建において重要な作用を有することを示している(非特許文献7,12,13)。間接的に、プラスミンはさらにいくつかのプロテアーゼ前駆体を活性プロテアーゼに変換することによりECMのその他の成分を分解し、MMP-1、MMP-2、MMP-3及びMMP-9を含む。そのため、以下のように提唱する人がいる。プラスミンは細胞外タンパク加水分解の一つの重要な上流調節因子である(非特許文献14)。また、プラスミンはいくつかの潜在的な形の成長因子を活性化させる能力を有する(非特許文献15,16,17)。体外において、プラスミンはさらに補体系の成分を加水分解させて走化性の補体フラグメントを放出することができる。
【0007】
従来の治療方法では主に基礎治療を含み、即ち血糖を制御した上でさらに定期的に眼部検査及び眼部疾患に対して補助的治療を行う。我々は、自発性糖尿病マウスを研究対象として意外にも以下について見出した。プラスミノゲン及び/またはプラスミンは内臓臓器、血管、神経及び網膜の損傷を抑えることにおいて、及び糖尿病性網膜病変を予防または治療する面において優れた治療効果を有し、且つ安全性が高い。そのため、プラスミノゲンは網膜病変を含む糖尿病合併症を治療する新しいストラテジーとなることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Alexander CM and Werb,Z.(1991).Extracellular matrix degradation.In Cell Biology of Extracellular Matrix,Hay ED,ed.(New York:Plenum Press),pp.255-302
【文献】Werb,Z.,Mainardi,C.L.,Vater,C.A.,and Harris,E.D.,Jr.(1977).Endogenous activiation of latent collagenase by rheumatoid synovial cells.Evidence for a role of plasminogen activator.N.Engl.J.Med.296,1017-1023.
【文献】He,C.S.,Wilhelm,S.M.,Pentland,A.P.,Marmer,B.L.,Grant,G.A.,Eisen,A.Z.,and Goldberg,G.I.(1989).Tissue cooperation in a proteolytic cascade activating human interstitial collagenase.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 86,2632-2636
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【文献】Zhang M,Takahashi K,Alicot EM,Vorup-Jensen T,Kessler B,et al.(2006)Activation of the lectin pathway by natural IgM in a model of ischemia/reperfusion injury.J Immunol 177:4727-4734.
【文献】Kim SJ,Gershov D,Ma X,Brot N,Elkon KB(2002)I-PLA2 Activation during Apoptosis Promotes the Exposure of Membrane Lysophosphatidylcholine Leading to Binding by Natural Immunoglobulin M Antibodies and Complement Activation.The Journal of Experimental Medicine196:655-665.
【発明の概要】
【0009】
一方において、本発明は被験者の糖尿病によって引き起こされる内臓臓器の組織細胞損傷を修復する方法に係り、前記被験者にプラスミノゲンまたはプラスミンを投与することを含む。一方において、本発明はさらにプラスミノゲンまたはプラスミンを被験者の糖尿病によって引き起こされる内臓臓器の細胞損傷を修復させることに用いる用途に係り、上記被験者にプラスミノゲンまたはプラスミンを投与することを含む。一つの実施形態において、前記内臓臓器は肝臓、心臓、腎臓を含む。これとともに、本発明はさらに被験者の糖尿病によって引き起こされる神経及び網膜組織損傷を修復する方法、及びプラスミノゲンまたはプラスミンを被験者の糖尿病によって引き起こされる神経及び網膜組織損傷の修復における用途に係り、被験者に対してプラスミノゲンまたはプラスミンを投与することを含む。
【0010】
本発明はさらに糖尿病によって引き起こされる網膜病変を予防及び/または治療する方法に係り、及びプラスミノゲンまたはプラスミンの糖尿病によって引き起こされる網膜病変の予防及び/または治療に用いる用途に係り、前記被験者に対してプラスミノゲンまたはプラスミンを投与することを含む。
【0011】
一つの実施形態において、前記網膜病変は糖尿病によって引き起こされる網膜新生血管の形成、網膜炎症、網膜萎縮、網膜細胞アポトーシス、網膜組織損傷、網膜血管損傷を含む。一つの実施形態において、前記フィブリンプラスミンは配列2、6、8、10または12と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、さらに依然としてプラスミン活性を有するものである。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンはプラスミノゲン活性フラグメントを有し、さらに依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンはGlu-プラスミノゲン、Lys-プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、マイクロプラスミノゲン、δ-プラスミノゲンまたはそれらの任意の組み合わせから選択されるものである。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは、体表、静脈内、筋肉内、皮下、吸入、椎管内、直腸投与、局所注射による投与、及び/または角膜における遺伝子銃による局所投与、結膜下注射、前房内注射、点眼剤による角膜上投与、側頭縁から前室への注射、基質内注射、電気パルスと組み合わせた角膜投与、角膜内注射、網膜下注射、硝子体内注射及び眼内注射により全身または局所にて投与される。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは一種類または複数種類の他の薬物、前記他の薬物は抗糖尿病薬、抗心脳血管疾患薬、抗血栓薬、抗高血圧薬、高脂血症治療薬、抗感染薬及びその他の併発疾患を治療するための通常の薬物と組み合わせて投与できる。
【0012】
一つの実施形態において、前記被験者は哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
【0013】
一つの実施形態において、前記糖尿病によって引き起こされる網膜病変は糖尿病による微小血管病変によってもたらされるものである。
【0014】
一つの実施形態において、前記被験者のプラスミンまたはプラスミノゲンは低下してい
る。具体的には、前記低下は先天的、継発的、及び/または局所的なものである。
【0015】
一つの実施形態において、プラスミノゲンと配列2、6、8、10または12は少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有する。一つの実施形態において、プラスミノゲンは配列2、6、8、10または12に基づいて、1-100、1-90、1-80、1-70、1-60、1-50、1-45、1-40、1-35、1-30、1-25、1-20、1-15、1-10、1-5、1-4、1-3、1-2、1個のアミノ酸を追加、削除及び/または置換したもので、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはプラスミノゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはGlu-プラスミノゲン、Lys-プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、マイクロプラスミノゲン、δ-プラスミノゲンまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。一つの実施形態において、プラスミノゲンは以下から選ばれる保存的(conservative)な置換バリアントである:Glu-プラスミノゲン、Lys-プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、δ-プラスミノゲンまたはマイクロプラスミノゲン。一つの実施形態において、プラスミノゲンはヒト天然プラスミノゲンであり、例えば配列2が示すプラスミノゲンのオルソログであり、例えば、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するプラスミノゲンのオルソログであり、例えばゴリラ、アカゲザル、マウス、ウシ、ウマ、イヌに由来するプラスミノゲンのオルソログである。もっとも好ましくは、本発明のプラスミノゲンのアミノ酸配列は配列2、6、8、10または12に示される通りである。
【0016】
前記プラスミノゲンは単独で投与でき、さらにその他の薬物と組み合わせて投与でき、さらに網膜病変の薬物予防及び/または治療以外のその他の療法、例えばレーザー治療などと、組み合わせて投与できる。
【0017】
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは適切なポリペプチド担体または安定剤と組み合わせて投与される。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは毎日0.0001-2000mg/kg、0.001-800mg/kg、0.01-600mg/kg、0.1-400mg/kg、1-200mg/kg、1-100mg/kg、10-100mg/kg(体重一キロあたりで計算)または0.0001-2000mg/cm2、0.001-800mg/cm2、0.01-600mg/cm2、0.1-400mg/cm2、1-200mg/cm2、1-100mg/cm2、10-100mg/cm2(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量を投与し、好ましくは少なくとも一回繰り返し、好ましくは毎日投与する。局所投与の場合、前記用量はさらに状況に応じて調整することができる。
【0018】
もう一方で、本発明はプラスミノゲンまたはプラスミンの被験者の糖尿病によって引き起こされる内臓臓器及びその血管組織損傷を修復するための薬物、製品、薬物キット中における用途に係る。一つの実施形態において、前記内臓臓器は肝臓、心臓及び腎臓を含む。これとともに、本発明はプラスミノゲンまたはプラスミンの被験者の糖尿病によって引き起こされる神経及び網膜組織損傷を修復するための薬物、製品、薬物キット中における用途に係る。本発明はさらにプラスミノゲンまたはプラスミンの被験者の糖尿病によって引き起こされる網膜病変を予防及び/または治療するための薬物、製品、薬物キット中における用途に係る。一つの実施形態において、前記網膜病変は網膜新生血管の形成、網膜炎症、網膜萎縮、網膜細胞アポトーシス、網膜組織構造損傷、網膜血管アポトーシスを含む。
【0019】
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは配列2、6、8、10または12と少
なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有する。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンはプラスミノゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンはGlu-プラスミノゲン、Lys-プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、マイクロプラスミノゲン、δ-プラスミノゲンまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは、体表、静脈内、筋肉内、皮下、吸入、椎管内または直腸投与、局所注射による投与、及び/または角膜における遺伝子銃による局所投与、結膜下注射、前房内注射、点眼剤による角膜上投与、側頭縁から前室への注射、基質内注射、電気パルスと組み合わせた角膜投与、角膜内注射、網膜下注射、硝子体内注射及び眼内注射により全身または局所にて投与される。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは一種類または複数種類の他の薬物、前記他の薬物は抗糖尿病薬、抗心脳血管疾患薬、抗血栓薬、抗高血圧薬、高脂血症治療薬、抗感染薬物及びその他の併発疾患を治療するための通常の薬物と組み合わせて投与できる。
【0020】
一つの実施形態において、前記被験者は哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
【0021】
一つの実施形態において、前記糖尿病によって引き起こされる網膜病変は糖尿病による微小血管病変によってもたらされるものである。
【0022】
一つの実施形態において、前記被験者のプラスミンまたはプラスミノゲンは低下する。具体的には、前記低下は先天的、継発的、及び/または局所的なものである。
【0023】
一つの実施形態において、プラスミノゲンは配列2、6、8、10または12と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有する。一つの実施形態において、プラスミノゲンは配列2、6、8、10または12に基づいて、1-100、1-90、1-80、1-70、1-60、1-50、1-45、1-40、1-35、1-30、1-25、1-20、1-15、1-10、1-5、1-4、1-3、1-2、1個のアミノ酸を追加、削除及び/または置換したもので、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはプラスミノゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはGlu-プラスミノゲン、Lys-プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、マイクロプラスミノゲン、δ-プラスミノゲンまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。一つの実施形態において、プラスミノゲンは以下から選ばれる保存的な置換バリアントである:Glu-プラスミノゲン、Lys-プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、δ-プラスミノゲンまたはマイクロプラスミノゲン。一つの実施形態において、プラスミノゲンはヒト天然プラスミノゲンであり、例えば配列2が示すプラスミノゲンのオルソログであり、例えば、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するプラスミノゲンのオルソログであり、例えばゴリラ、アカゲザル、マウス、ウシ、ウマ、イヌに由来するプラスミノゲンのオルソログである。もっとも好ましくは、本発明のプラスミノゲンのアミノ酸配列は配列2、6、8、10または12に示される通りである。
【0024】
前記プラスミノゲンは単独で投与することもでき、また他の薬物と組み合わせても投与できる。さらに網膜病変の薬物による予防及び/治療以外の他の療法、例えばレーザー治療などと組み合わせて投与できる。
【0025】
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは適切なポリペプチド担体または安定剤と組み合わせて投与する。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは毎日0.00
01-2000mg/kg、0.001-800mg/kg、0.01-600mg/kg、0.1-400mg/kg、1-200mg/kg、1-100mg/kg、10-100mg/kg(体重一キロあたりで計算)または0.0001-2000mg/cm2、0.001-800mg/cm2、0.01-600mg/cm2、0.1-400mg/cm2、1-200mg/cm2、1-100mg/cm2、10-100mg/cm2(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量で投与し、好ましくは少なくとも一回繰り返し、好ましくは毎日投与する。局所投与の場合、前記用量はさらに状況に応じてさらに調整できる。
【0026】
もう一方で、本発明は被験者の糖尿病によって引き起こされる内臓臓器及びその血管組織損傷を修復するプラスミノゲンまたはプラスミン、及び被験者の糖尿病によって引き起こされる内臓臓器及びその血管組織損傷を修復するためのプラスミノゲンまたはプラスミンを含有する薬物組成物、または該組成物を含有する製品また薬物キットに係る。一つの実施形態において、前記内臓臓器は肝臓、心臓及び腎臓を含む。これと共に、本発明は被験者の糖尿病によって引き起こされる神経及び網膜組織損傷を修復するためのプラスミノゲンまたはプラスミン、及び被験者の糖尿病によって引き起こされる神経及び網膜組織損傷を修復するためのプラスミノゲンまたはプラスミンを含有する薬物組成物、または該組成物を含有する製品、薬物キットに係る。本発明はさらに被験者の糖尿病によって引き起こされる網膜病変を予防及び/または治療するためのプラスミノゲンまたはプラスミン、及び被験者の糖尿病によって引き起こされる網膜病変を予防及び/または治療するためのプラスミノゲンまたはプラスミンを含有する薬物組成物、及び該組成物を含有する製品または薬物キットに係る。一つの実施形態において、前記網膜病変は網膜新生血管の形成、網膜炎症、網膜萎縮、網膜細胞アポトーシス、網膜組織構造損傷、網膜血管アポトーシスを含む。
【0027】
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは配列2、6、8、10または12と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有する。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンはプラスミノゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンはGlu-プラスミノゲン、Lys-プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、マイクロプラスミノゲン、δ-プラスミノゲンまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは体表、静脈内、筋肉内、皮下、吸入、椎管内または直腸投与、局所注射による使用、及び/または角膜における遺伝子銃による局所投与、結膜下注射、前房内注射、点眼剤による角膜上投与、側頭縁から前室内への注射、基質内注射、電気パルスと組み合わせた角膜投与、角膜内注射、網膜下注射、硝子体内注射及び眼内注射によりに全身または局所にて投与される。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは一種類または複数種類の他の薬物と、前記他の薬物は抗糖尿病薬、抗心脳血管疾患薬、抗血栓薬、抗高血圧薬、高脂血症治療薬、抗感染薬物及びその他の併発疾患を治療するための通常の薬物と組み合わせて投与できる。
【0028】
一つの実施形態において、前記被験者は哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
【0029】
一つの実施形態において、前記糖尿病によって引き起こされる網膜病変は糖尿病による微小血管障害によってもたらされるものである。
【0030】
一つの実施形態において、前記被験者プラスミンまたはプラスミノゲンは低下している。具体的には、前記低下は先天的、継発的、及び/または局所的なものである。
【0031】
一つの実施形態において、プラスミノゲンは配列2、6、8、10または12は少なく
とも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有する。一つの実施形態において、プラスミノゲンは配列2、6、8、10または12に基づいて、1-100、1-90、1-80、1-70、1-60、1-50、1-45、1-40、1-35、1-30、1-25、1-20、1-15、1-10、1-5、1-4、1-3、1-2、1個のアミノ酸を追加、削除及び/または置換したもので、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはプラスミノゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはGlu-プラスミノゲン、Lys-プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、マイクロプラスミノゲン、δ-プラスミノゲンまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。一つの実施形態において、プラスミノゲンは以下から選ばれる保存的な置換バリアントである:Glu-プラスミノゲン、Lys-プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、δ-プラスミノゲンまたはマイクロプラスミノゲン。一つの実施形態において、プラスミノゲンはヒト天然プラスミノゲンであり、例えば配列2が示すプラスミノゲンのオルソログであり、例えば、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するプラスミノゲンのオルソログであり、例えばゴリラ、アカゲザル、マウス、ウシ、ウマ、イヌに由来するプラスミノゲンのオルソログである。もっとも好ましくは、本発明のプラスミノゲンのアミノ酸配列は配列2、6、8、10または12に示される通りである。
【0032】
前記プラスミノゲンは単独で投与でき、または他の薬物と組み合わせて投与できる。さらに網膜病変の薬物による予防及び/治療以外の他の療法、例えばレーザー治療などと組み合わせて投与できる。
【0033】
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは適切なポリペプチド担体または安定剤と組み合わせて投与する。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは毎日0.0001-2000mg/kg、0.001-800mg/kg、0.01-600mg/kg、0.1-400mg/kg、1-200mg/kg、1-100mg/kg、10-100mg/kg(体重一キロあたりで計算)または0.0001-2000mg/cm2、0.001-800mg/cm2、0.01-600mg/cm2、0.1-400mg/cm2、1-200mg/cm2、1-100mg/cm2、10-100mg/cm2(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量で投与し、好ましくは少なくとも一回繰り返し、好ましくは毎日投与する。局所投与の場合、前記用量はさらに状況に応じてさらに調整することができる。
【0034】
一つの実施形態において、前記製品または薬物キットは有効用量のプラスミノゲン/プラスミンを含有する容器を含む。好ましくは、該製品または薬物キットはさらに一種類または複数種類の他の薬物を含有する容器を含む。該製品または薬物キットはさらに使用プロトコル(使用説明書)を含むことができ、該プロトコルは前記プラスミノゲンまたはプラスミンが糖尿病によって引き起こされる内臓臓器及びその血管組織損傷、神経または網膜組織損傷、または前記網膜症の予防及び/または治療に用いることができることを説明するものであり、さらには以下のように説明できる。即ち、前記プラスミノゲンまたはプラスミンはその他の薬物を投与する前、投与と同時、及び/または後に投与することができる。
【0035】
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは適切なポリペプチド担体または安定剤と組み合わせて投与する。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは毎日0.0001-2000mg/kg、0.001-800mg/kg、0.01-600mg/kg、0.1-400mg/kg、1-200mg/kg、1-100mg/kg、10-100mg/kg(体重一キロあたりで計算)または0.0001-2000mg/cm
2、0.001-800mg/cm2、0.01-600mg/cm2、0.1-400mg/cm2、1-200mg/cm2、1-100mg/cm2、10-100mg/cm2(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量で投与し、好ましくは少なくとも一回繰り返し、好ましくは毎日投与する。局所投与の場合、前記用量はさらに状況に応じてさらに調整することができる。
【0036】
もう一方で、本発明はプラスミノゲンの被験者の糖尿病性眼部微小血管障害を予防及び/または治療するための薬物、製品または薬物キットの製造における用途に係る。本発明はさらに新しい糖尿病性眼部微小血管障害を予防及び/または治療する方法に係り、または前記被験者の糖尿病性眼球微小血管障害を予防及び/治療することにおけるプラスミノゲンまたはプラスミンの用途に係り、前記被験者にプラスミノゲンまたはプラスミンを投与することを含む。本発明はもう一方において被験者の糖尿病性眼部微小血管障害を予防及び/治療するためのプラスミノゲンまたはプラスミン、被験者の糖尿病性眼部微小血管障害を予防及び/また治療するためのプラスミノゲンまたはプラスミンを含有する薬物組成物、または被験者の糖尿病性微小血管障害の予防及び/治療に用いる、プラスミノゲンまたはプラスミンを含有する製品または薬物キットに係る。
【0037】
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンと配列2、6、8、10または12は少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有する。一つの実施形態において、プラスミノゲンは配列2、6、8、10または12に基づいて、1-100、1-90、1-80、1-70、1-60、1-50、1-45、1-40、1-35、1-30、1-25、1-20、1-15、1-10、1-5、1-4、1-3、1-2、1個のアミノ酸を追加、削除及び/または置換したもので、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはプラスミノゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然としてプラスミノゲン活性を有するタンパク質である。一つの実施形態において、プラスミノゲンはGlu-プラスミノゲン、Lys-プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、マイクロプラスミノゲン、δ-プラスミノゲンまたはそれらの任意の組み合わせから選ばれるものである。一つの実施形態において、プラスミノゲンは以下から選ばれる保存的な置換バリアントである:Glu-プラスミノゲン、Lys-プラスミノゲン、ミニプラスミノゲン、δ-プラスミノゲンまたはマイクロプラスミノゲン。一つの実施形態において、プラスミノゲンはヒト天然プラスミノゲンであり、例えば配列2が示すプラスミノゲンのオルソログであり、例えば、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するプラスミノゲンのオルソログであり、例えばゴリラ、アカゲザル、マウス、ウシ、ウマ、イヌに由来するプラスミノゲンのオルソログである。もっとも好ましくは、本発明のプラスミノゲンのアミノ酸配列は配列2、6、8、10または12に示される通りである。
【0038】
前記の糖尿病性眼部微小血管障害の予防及び治療は網膜無細胞毛細血管の形成、網膜萎縮病変の改善、網膜炎症の修復、及び/または網膜細胞及び血管細胞のアポトーシスを抑制することを含む。
【0039】
一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは適切なポリペプチド担体または安定剤と組み合わせて投与される。一つの実施形態において、前記プラスミノゲンは毎日0.0001-2000mg/kg、0.001-800mg/kg、0.01-600mg/kg、0.1-400mg/kg、1-200mg/kg、1-100mg/kg、10-100mg/kg(体重一キロあたりで計算)または0.0001-2000mg/cm2、0.001-800mg/cm2、0.01-600mg/cm2、0.1-400mg/cm2、1-200mg/cm2、1-100mg/cm2、10-100mg/cm2(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量で投与し、好ましくは少な
くとも一回繰り返し、好ましくは毎日投与する。局所投与の場合、前記用量はさらに状況に応じてさらに調整することができる。
【0040】
一方において、本発明はプラスミノゲンまたはプラスミンの、被験者の糖尿病によってもたらされる生体組織及び内臓臓器の損傷(ダメージ)を予防及び/または治療するための薬物、製品、薬物キットの製造における用途に係る。一つの実施形態において、前記組織及び内臓臓器の損傷(ダメージ)は大脳、心臓、肝臓、肺臓、腎臓、神経、網膜、皮膚、胃腸管の損傷(ダメージ)を含む。一方において、本発明はプラスミノゲンの被験者の糖尿病合併症を予防及び/または治療するための薬物、製品、薬物キットにおける用途に係る。一つの実施形態において、前記糖尿病合併症は糖尿病によって引き起こされる糖尿病性大脳病変、糖尿病性心臓病変、糖尿病性肝臓病変、糖尿病性腎臓病変、糖尿病性肺臓病変、糖尿病性神経病変、糖尿病網膜症、糖尿病性皮膚病変である。
【0041】
一方において、本発明は製薬方法に係り、プラスミノゲンまたはプラスミンと薬学的に許容し得る担体から、被験者の糖尿病によってもたらされる生体組織及び内臓臓器の損傷(ダメージ)を予防及び/または治療するための薬物、製品、薬物キットに製造することを含む。一つの実施形態において、前記組織及び内臓臓器の損傷(ダメージ)は大脳、心臓、肝臓、肺臓、腎臓、神経、網膜、皮膚、胃腸管の損傷(ダメージ)を含む。一方において、本発明は製薬方法に係り、プラスミノゲンまたはプラスミンの薬学的に許容し得る担体を、被験者の糖尿病合併症を予防及び/または治療するための薬物、製品、薬物キットに製造することを含む。一つの実施形態において、前記糖尿病合併症は糖尿病によって引き起こされる糖尿病性大脳病変、糖尿病性心臓病変、糖尿病性肝臓病変、糖尿病性腎臓病変、糖尿病性肺臓病変、糖尿病性神経病変、糖尿病網膜症、糖尿病性皮膚病変である。
【0042】
一方において、本発明は被験者の糖尿病によってもたらされる生体組織及び内臓臓器の損傷(ダメージ)を予防及び/または治療するためのプラスミノゲンまたはプラスミン、プラスミノゲンまたはプラスミンを含有する薬物組成物、製品、薬物キットに係るものである。一つの実施形態において、前記組織及び内臓臓器の損傷(ダメージ)は大脳、心臓、肝臓、腎臓、肺臓、神経、網膜、胃腸管、皮膚の損傷(ダメージ)を含む。一方において、本発明は被験者の糖尿病合併症を予防及び/または治療するプラスミノゲン、プラスミノゲンを含有する薬物組成物、製品または薬物ボックスに係る。一つの実施形態において、前記糖尿病合併症は糖尿病によって引き起こされる糖尿病性大脳病変、糖尿病性心臓病変、糖尿病性肝臓病変、糖尿病性肺臓病変、糖尿病性腎臓病変、糖尿病性神経病変、糖尿病網膜症、糖尿病性皮膚病変である。
【0043】
一方において、本発明は被験者の糖尿病によってもたらさる生体組織及び内臓臓器損傷(ダメージ)を予防及び/または治療する方法に係り、被験者にプラスミノゲンまたはプラスミン、プラスミノゲンまたはプラスミンを含有する薬物組成物、製品、薬物キットを投与することを含む。本発明はさらにプラスミノゲンまたはプラスミン、プラスミノゲンまたはプラスミンを含有する薬物組成物、製品、薬物キットの被験者の糖尿病によってもたらされる生体組織及び内臓臓器損傷(ダメージ)を予防及び/または治療する用途に係るものである。一つの実施形態において、前記組織及び内臓臓器の損傷(ダメージ)は大脳、心臓、肝臓、肺臓、腎臓、神経、網膜、胃腸管、皮膚に対する損傷(ダメージ)を含む。一方において、本発明は被験者の糖尿病合併症を予防及び/または治療する方法に係り、被験者にプラスミノゲンまたはプラスミン、プラスミノゲンまたはプラスミンを含有する薬物組成物、製品または薬物キットを投与することを含む。本発明はさらにプラスミノゲンまたはプラスミン、プラスミノゲンまたはプラスミンを含有する薬物組成物、製品または薬物キットの、被験者の糖尿病合併症を予防及び/治療することにおける用途を含む。一つの実施形態において、前記糖尿病合併症は糖尿病によって引き起こされた糖尿病性大脳病変、糖尿病性心臓病変、糖尿病性肝臓病変、糖尿病性肺臓病変、糖尿病性腎臓病
変、糖尿病性神経病変、糖尿病網膜症、糖尿病性皮膚病変である。
【0044】
一つの実施形態において、前記被験者のプラスミンまたはプラスミノゲンは低下している。具体的には、前記低下は先天的、継発的、及び/または局所的なものである。
【0045】
本発明は本発明の実施形態どうしの技術的特徴のすべての組み合わせを明確にカバーし、且つこれらの組み合わせ後の技術構成は本出願で明確に開示され、前記技術構成が単独且つ明確に開示されているのと一緒である。また、本発明はさらに各実施形態及び要素のすべてのサブの組み合わせをカバーし、さらに本明細書中において開示され、それぞれのサブの組み合わせが単独且つ明確に本明細書中において開示されているのと一緒である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】24~25週齢の糖尿病マウスに対してプラスミノゲンを31日間連続的に投与した後の体重変化を示したものである。結果はプラスミノゲンが動物体重に対して影響が大きくないことを示している。
【
図2】24~25週齢の糖尿病マウスに対してプラスミノゲンを31日間連続的に投与した後の網膜のHE観察結果を示したものである。
【
図3】24~25週齢の糖尿病マウスに対してプラスミノゲンを31日間連続的に投与した後の網膜PAS染色の観察結果を示したものである。
【
図4】24~25週齢の糖尿病マウスに対してプラスミノゲンを31日間連続的に投与した後の網膜VEGF免疫染色結果を示したものである。
【
図5】24~25週齢の糖尿病マウスに対してプラスミノゲンを15日間連続的に投与した後の血清中D-二量体の含有量の測定結果を示したものである。
【
図6】24~25週齢の糖尿病マウスに対してプラスミノゲンを31日間連続的に投与した後の網膜Bcl-2免疫染色結果を示したものである。
【
図7】24~25週齢の糖尿病マウスに対してプラスミノゲンを31日間連続的に投与した後の血清心筋トロポニンI濃度の測定結果を示したものである。
【
図8】24~25週齢の糖尿病マウスに対してプラスミノゲンを31日間連続的に投与した後の腎臓Bcl-2免疫染色の観察結果を示したものである。
【
図9】24~25週齢の糖尿病マウスに対してプラスミノゲンを31日間連続的に投与した後の腎臓フィブリン免疫染色の観察結果を示したものである。
【
図10】24~25週齢の糖尿病マウスに対してPBS(A)またはプラスミノゲン(B)を31日間連続的に投与した後の血清ALT測定結果を示したものである。
【
図11】24~25週齢のdb/dbマウスに対してプラスミノゲンを31日間連続的に投与した後の肝臓フィブリン免疫染色の観察結果を示したものである。
【
図12】24~25週齢のdb/dbマウスに対してプラスミノゲンを投与した後の0、4、7、11、16日目に行った機械的接触に誘発される疼痛に対する応答能力の測定結果を示したものである。
【
図13】24~25週齢のdb/dbマウスに対してプラスミノゲンを投与した後の0、4、7、11、16日目に行った冷刺激に対する感知能力の測定結果を示したものである。
【
図14】24~25週齢の糖尿病後期の神経損傷マウスに対してプラスミノゲンを15日間投与した後の坐骨神経フィブリン免疫組織染色の観察結果を示したものである。
【
図15】24~25週齢のdb/dbマウスに対してプラスミノゲンを31日間投与した後の腎臓IgM免疫染色の観察結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
1、定義
「糖尿病」は遺伝的要素、免疫機能の乱れ、微生物感染及びその毒素、フリーラジカル毒素、精神要素などの各種病気誘発因子が生体に作用することによってもたらされる、イ
ンスリン減退、インスリン抵抗などによって引き起こされる糖、タンパク質、脂肪、水及び電解質等の一連の代謝の乱れが生じる症候群であり、臨床的には高血糖を主な特徴とする。
【0048】
「糖尿病合併症」は糖尿病プロセスにおける血糖のコントロール不良によってもたらされる身体のその他の臓器または組織のダメージまたは機能障害であり、肝臓、腎臓、心臓、網膜、神経系のダメージまたは機能障害等を含む。世界保健機関(WHO)の統計によれば、糖尿病合併症は100種類以上あり、現在における合併症が最も多い疾患である。
【0049】
「糖尿病性微小血管障害」とは糖尿病患者の生体の各臓器または組織の微小循環において異なる程度の異常がもたらす微小血管障害である。微小血管障害が形成するプロセスは概ね以下である:微小循環の機能性改変、内皮損傷、基膜の厚み増大、血液粘度の上昇、赤血球の凝集、血小板の粘着及び凝集、最終的には微小血栓形成及び/または微小血管閉塞をもたらす。「糖尿病性眼部微小血管障害」とは、糖尿病によってもたらされる眼部微小血管障害を言う。
【0050】
前記「糖尿病性微小血管障害」は組織または臓器の局所血管損傷、血流不順、細胞の酸素欠乏、血液凝塊の形成、血栓及び炎症をもたらし、さらには周辺の組織及び臓器の機能に影響し、これにより「糖尿病合併症」をもたらし、このため、本発明の請求項の技術構成における「糖尿病性微小血管障害」及び「糖尿病合併症」という用語に言及した場合、いずれも糖尿病によって引き起こされる血栓形成をカバーするものである。
【0051】
「糖尿病性網膜病変」は糖尿病によって引き起こされる網膜組織学及び機能変化の病変であり、主に糖尿病によって引き起こされる微小血管の病変によってもたらされるものである。糖尿病性網膜病変は最もよく見られる糖尿病性眼病であり、よく視力の減退または失明をもたらすことがある。統計によれば、50%の糖尿病患者は病程10年前後で該病変が現れ、15年以上では80%に達する。糖尿病の病状がひどく、年齢が大きいほど、発病の確率が高い。
【0052】
「プラスミン」は血液中に存在する非常に重要な酵素であり、フィブリン凝塊をフィブリン分解生成物及びD-二量体に加水分解できる。
【0053】
「プラスミノゲン」はプラスミンの酵素前駆体の形であり、swiss prot中の配列に基づいて、シグナルペプチドを含有する天然ヒト由来プラスミノゲンのアミノ酸配列(配列4)は計算によれば810個のアミノ酸からなり、分子量は約92kDであり、主に肝臓において合成され且つ血液中で循環できる糖タンパク質であり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列3に示される通りである。フルサイズのプラスミノゲンは七つのドメインを含む:C末端に位置するセリンプロテアーゼドメイン、N末端に位置するPan Apple(PAp)ドメイン及び5つのKringleドメイン(Kringle1-5)を含む。swiss prot中の配列を参照すれば、そのシグナルペプチドは残基Met1-Gly19を含み、Papは残基Glu20-Val98を含み、Kringle1は残基Cys103-Cys181を含み、Kringle2は残基Glu184-Cys262を含み、Kringle3は残基Cys275-Cys352を含み、Kringle4は残基Cys377-Cys454を含み、Kringle5は残基Cys481-Cys560を含む。NCBIデータによれば、セリンプロテアーゼドメインは残基Val581-Arg804を含む。
【0054】
Glu-プラスミノゲンは天然のフルサイズのプラスミノゲンであり、791個のアミノ酸からなる(19個のアミノ酸からなるシグナルペプチドを含まない)、該配列をコードするcDNA配列は配列1に示される通りであり、そのアミノ酸配列は配列2に示され
る通りである。体内において、さらにGlu-プラスミノゲンの第76-77位のアミノ酸の位置で加水分解することにより形成されたLys-プラスミノゲンが存在し、例えば配列6に示されるものであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列5が示す通りである。Δ-プラスミノゲン(δ-plasminogen)はフルサイズのプラスミノゲンにKringle2-Kringle5構造の欠損が生じているフラグメントであり、Kringle1及びセリンプロテアーゼドメインのみしか含有せず(非特許文献18,19)、δ-プラスミノゲンのアミノ酸配列(配列8)を報告している文献があり(非特許文献19)、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は例えば配列7に示す通りである。ミニプラスミノゲン(Mini-plasminogen)はKringle5及びセリンプロテアーゼドメインからなり、残基Val443-Asn791(シグナルペプチドGlu-プラスミノゲン配列を含まないGlu残基を開始アミノ酸とする)について文献が報告しており(非特許文献20)、そのアミノ酸配列は配列10に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列9が示す通りである。しかしマイクロプラスミノゲン(Micro-plasminogen)はセリンプロテアーゼドメインのみ含有し、そのアミノ酸配列は残基Ala543-Asn791(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノゲン配列のGlu残基は開始アミノ酸である)と文献が報告し(非特許文献21)、特許文献CN102154253Aはそれが残基Lys531-Asn791を含むと開示し(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノゲン配列のGlu残基を開始アミノ酸とする)、本特許の配列は特許文献CN102154253Aを参照でき、そのアミノ酸配列は配列12に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列11に示される通りである。
【0055】
本発明の「プラスミン」と「フィブリンプラスミン」、「繊維タンパクプラスミン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。「プラスミノゲン」と「フィブリンプラスミノゲン」、「繊維タンパクプラスミノゲン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。
【0056】
循環プロセスにおいて、プラスミノゲンは閉鎖した非活性コンフォメーションであるが、血栓または細胞表面に結合した際、プラスミノゲン活性化剤(plasminogen
activator,PA)の介在下において、開放性のコンフォメーションを有する活性プラスミンとなる。活性を有するプラスミンはさらにフィブリン凝塊をフィブリン加水分解生成物及びD-二量体に加水分解して、これにより血栓を溶解させる。そのうちプラスミノゲンのPapドメインはプラスミノゲンを非活性閉鎖コンフォメーションに維持する重要な決定クラスターであり、しかしKRドメインは受容体及び基質上のリシン残基と結合できるものである。プラスミノゲン活性化剤としての酵素は、既に複数種類知られ、以下を含む:組織プラスミノゲン活性化剤(tPA)、ウロキナーゼプラスミノゲン活性化剤(uPA)、カリクレイン及び凝結因子XII(ハーゲマン因子)などである。
【0057】
「プラスミノゲン活性フラグメント」とはプラスミノゲンのタンパク質において、基質中のターゲット配列と結合してタンパク質加水分解機能を発揮できる活性フラグメントである。本発明はプラスミノゲンの技術構成に係り、プラスミノゲン活性フラグメントでプラスミノゲンの代替とする技術構成を含む。本発明に記載のプラスミノゲン活性フラグメントはプラスミノゲンのセリンプロテアーゼドメインを含むタンパク質であり、好ましくは、本発明に記載のプラスミノゲン活性フラグメントは配列14、配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性のアミノ酸配列を含有するタンパク質を含むものである。そのため、本発明に記載のプラスミノゲンは該プラスミノゲン活性フラグメントを含み、且つ依然として該プラスミノゲン活性を有するタンパク質を含む。
【0058】
現在、血液中のプラスミノゲン及びその活性測定方法は以下を含む:組織フィブリンプ
ラスミノゲン活性化剤の活性に対する測定(t-PAA)、血漿組織プラスミノゲン活性化剤抗原に対する測定(t-PAAg)、血漿組織プラスミノゲン活性に対する測定(plgA)、血漿組織プラスミノゲン抗原に対する測定(plgAg)、血漿組織プラスミノゲン活性化剤の阻害物活性に対する測定、血漿組織プラスミノゲン活性化剤の阻害物抗原に対する測定、血漿プラスミン-抗プラスミン複合物に対する測定(PAP)。最もよく見られる測定方法は発色基質法である:測定対象の血漿中にストレプトキナーゼ(SK)と発光基質を添加し、測定対象の血漿中のPLGはSKの作用下においてPLMとなり、後者は発光基質に作用し、その後に分光光度計で測定し、吸光度の増加はプラスミノゲンの活性と正比例関係となる。この他にも免疫化学法、ゲル電気泳動法、免疫比濁法、放射免疫拡散法などを用いて血液中のフィブリンプラスミノゲン活性に対して測定を行う。
【0059】
「オルソロジー(orthology)」とは異なる種どうしのオルソログ(ortholog)であり、タンパク質の相同物もDNAの相同物も含む。それは具体的に異なる種どうしの同じ祖先の遺伝子から進化して得られるタンパク質または遺伝子を言う。本発明のプラスミノゲンはヒト天然プラスミノゲンを含み、さらには異なる種に由来する、プラスミノゲン活性を有するプラスミノゲン直系同源物または直系同系物である。
【0060】
「保存的置換バリアント」とはそのうちの一つの指定されたアミノ酸残基が改変されたがタンパク質または酵素の全体のコンフォメーション及び機能を変えないものであり、これは類似の特性(例えば酸性、アルカリ性、疎水性など)のアミノ酸でペアレントタンパク質中のアミノ酸配列中のアミノ酸を置換するものを含むがこれらに限られない。類似の性質を有するアミノ酸は知られている通りである。例えば、アルギニン、ヒスチジン及びリシンは親水性のアルカリ性アミノ酸であり且つ互いに置き換えることができる。同じように、イソロイシンは疎水アミノ酸であり、ロイシン、メチオニンまたはバリンによって置換されることができる。そのため、機能の類似する二つのタンパク質またはアミノ酸配列の類似性は異なる可能性もある。例えば、MEGALIGNアルゴリズムに基づいて70%~99%の類似性(同一性)を有する。「保存的置換バリアント(変異体)」はさらにBLASTまたはFASTAアルゴリズムに基づいて60%以上のアミノ酸同一性を有するポリペプチドまたは酵素を含み、75%以上に達すればさらによく、最も好ましくは85%以上に達し、さらには90%以上に達するのが最も好ましく、さらに天然またはペアレントタンパク質または酵素と比較して同じまたは基本的に類似する性質または機能を有する。
【0061】
「分離された」プラスミノゲンとは天然環境から分離及び/または回収されたプラスミノゲンタンパク質である。いくつかの実施形態において、前記プラスミノゲンは(1)90%を超える、95%を超える、または98%を超える純度(重量で計算した場合)になるまで精製され、例えばLowry法によって決まるもので、例えば99%(重量で計算した場合)を超えるまで精製される、(2)少なくともスピニングカップ配列分析装置によりN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基が得られる程度になる精製される、または(3)同質性になるまで精製される。該同質性はクマシーブリリアントブルーまたは銀染色により還元性または非還元性条件下のドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルアミノゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって決まるものである。分離されたプラスミノゲンはバイオエンジニアリング技術により組み換え細胞から製造することができ、さらに少なくとも一つの精製ステップで分離されたプラスミノゲンを含む。
【0062】
用語の「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は本明細書において互いに置き換えて使用でき、いかなる長さのアミノ酸の重合体をも指し、遺伝的にコードされた及び非遺伝的にコードされたアミノ酸、化学的または生化学的に修飾されまたは派生したアミノ酸、及び修飾されたペプチド主鎖を有するポリペプチドを含む。該用語は融合タンパク質を含み、異種性アミノ酸配列を有する融合タンパク質を含むがこれに限られず、異
種性と同種性由来のリーダー配列(N端メチオニン残基を有するか有しない)を含む融合物;等々である。
【0063】
参照ペプチド配列の「アミノ酸配列同一性パーセンテージ(%)」の定義は、必要な時にギャップを導入することで最大のパーセンテージ配列の同一性を実現した後、如何なる保存的な置換も配列同一性の一部として見なさない場合、候補配列中における参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基のパーセンテージである。パーセンテージのアミノ酸配列の同一性を測定することを目的とした比較は本分野の技術範囲における複数種類の方式によって実現でき、例えば公衆が入手できるコンピュータソフトウエア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアによって実現できる。当業者は引用配列の適切なパラメータを決めることができ、比較対象の配列のフルサイズを比較することで最大比較の要求を実現するための如何なるアルゴリズムも含む。しかし、本発明の目的のために、アミノ酸配列の同一性パーセンテージは配列比較コンピュータソフトウエアALIGN-2により得られるものである。
【0064】
ALIGN-2を用いることによりアミノ酸配列を比較する場合、アミノ酸配列Aと所定のアミノ酸配列Bのアミノ酸配列同一性%(または所定のアミノ酸配列Bのあるアミノ酸配列と同一性を有する所定のアミノ酸配列Aの占める%)は以下のように計算される:
分数X/Y×100
【0065】
そのうちXは配列比較プログラムALIGN-2において該プログラムのA及びBの比較において同一でマッチングすると評価したアミノ酸残基の数であり、且つそのうちYはBにおけるアミノ酸残基の総数である。以下のように理解するべきである:アミノ酸配列Aの長さとアミノ酸配列Bの長さが等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列の同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは異なる。明確に説明した場合を除き、本文中において使用するすべてのアミノ酸配列同一性値%は前記の段落に記載の通りであり、ALIGN-2コンピュータプログラムによって得られるものである。
【0066】
本文において使用されているように、用語の「治療」及び「処理」は期待される薬理及び/または生理的効果が得られることを言う。前記効果は疾患またはその症状を完全または一部予防すること、及び/または疾患及び/またはその症状を一部または完全に治癒するものとすることができる。さらに以下を含む:(a)疾病が被験者の体内で発生することを予防し、前記被験者は疾患の要因を持っているが、該疾患を有すると診断されていない状況である;(b)疾患を抑制し、その形成を阻害する;及び(c)疾患及び/またはその症状を減軽し、即ち疾患及び/またはその症状を減退させる。
【0067】
用語の「個体」、「被験者」及び「患者」は本明細書中において互いに置き換えて使用でき、哺乳動物を指し、ネズミ(ラット、マウス)、ヒト以外の霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを含むがこれらに限られない。
【0068】
「治療上有効量」または「有効量」とは、哺乳動物またはその他の被験者に投与され、疾患の治療に用いられる際に疾患の前記予防及び/または治療を実現するプラスミノゲンの量である。「治療上有効量」は使用するプラスミノゲン、治療しようとする被験者の疾患及び/または症状の重症度及び年齢、体重などに従って変化するものである。
【0069】
2、本発明のプラスミノゲンの製造
プラスミノゲンは自然界から分離及び精製され、さらに治療の用途に用いられるものであり、さらには標準的な化学ペプチド合成技術によって合成することができる。化学的手
法によりポリペプチドを合成する際、液相または固相で合成を行うことができる。固相ポリペプチド合成(SPPS)(配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に附着させ、順番に配列中の残りのアミノ酸を添加する)はプラスミノゲンの化学的合成に適したものである。各種形式のSPPS、例えばFmoc及びBocは、プラスミノゲンの合成に用いることができる。固相合成に用いられる技術は以下に記載されている:Barany及びSolid-Phase Peptide Synthesis;3-284ページ、The
Peptides:Analysis,Synthesis,Biology.第二巻:Special Methods in Peptide Synthesis,Part A.,Merrifield,tら J.Am.Chem.Soc.,85:2149-2156(1963);Stewartら,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.Pierce Chem.Co.,Rockford,Ill.(1984);及びGanesan A.2006Mini Rev.Med Chem.6:3-10及びCamarero JAら 2005Protein Pept Lett.12:723-8。簡単に言えば、その上にペプチド鎖の機能性ユニットにより不溶性の多孔ビーズを処理する。カップリング/脱保護の繰り返し循環後に、附着した固相の遊離N末端アミンと単一のN保護を受けているアミノ酸ユニットをカップリングさせる。それから、該ユニットを脱保護し、他のアミノ酸と接続する新しいN末端アミンを露出させる。ペプチドを固相上に固定したままにし、それからそれを切除する。
【0070】
標準的な組み換え方法により本発明のプラスミノゲンを生産する。例えば、プラスミノゲンをコードする核酸を発現ベクター中に挿入し、それと発現ベクター中の制御配列を操作可能に連結させる。発現制御配列はプロモーター(例えば天然に関連されているプロモーター、または異種由来のプロモーター)、シグナル配列、エンハンサー素子及び転写終了配列を含むが、これらに限られない。発現の制御はベクター中の真核プロモーター系とすることができ、前記ベクターは真核宿主細胞(例えばCOSまたはCHO細胞)を形質転換またはトランスフェクションさせる。一旦ベクターを適切な宿主に導入すれば、ヌクレオチド配列の高レベル発現及びプラスミノゲンの収集及び精製の条件下において宿主を維持できる。
【0071】
適切な発現ベクターは通常宿主体内において附加体または宿主染色体DNAの整合部分として複製される。通常、発現ベクターは選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性またはネオマイシン耐性)を含み、外部由来に期待のDNA配列によって形質転換されたそれらの細胞に対して測定を行うことに有用である。
【0072】
大腸菌(Escherichia coli)はクローンするターゲット抗体をコードするポリヌクレオチドの原核宿主細胞の例である。その他の使用に適した微生物宿主は桿菌を含み、例えばバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びその他の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えばサルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、及び各種シュードモナス属(Pseudomonas)種である。これらの原核宿主において、発現ベクターを生成でき、通常は宿主細胞と許容する発現制御配列(例えば複製開始点)を含むものである。また、多くの公知のプロモーターが存在し、例えば乳糖プロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、β-ラクタマーゼプロモーター系、またはファージλ由来のプロモーター系である。プロモーターは通常発現を制御し、遺伝子配列を操縦する場合、さらにリボソームの結合位置配列を有し、転写及び翻訳を起動させてもよい。
【0073】
その他の微生物、例えば酵母も発現に用いることができる。酵母(例えば出芽酵母(S.cerevisiae))及びピキア(Pichia)が適した酵母宿主細胞の例であ
り、そのうちの適切な担体は必要に応じて発現制御配列(例えばプロモーター)、複製開始点、終止配列など含む。典型的なプロモーターは3-ホスホグリセリン酸キナーゼ及びその他の糖分解酵素を含む。誘導型酵母はエタノール脱水素酵素、イソ細胞色素C、及び麦芽糖とガラクトースの利用のための酵素のプロモーターによって起動される。
【0074】
微生物以外に、哺乳動物細胞(例えば体外細胞培養物中において培養された哺乳動物細胞)も本発明のプラスミノゲンの発現に用いることができる(例えばターゲット抗-Tau抗体をコードするポリヌクレオチド)。Winnacker,From Genes to Clones,VCH Publishers,N.Y.,N.Y.(1987)参照。適した哺乳動物宿主細胞はCHO細胞系、各種Cos細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、及び形質転換されたB細胞またはハイブリドーマである。これらの細胞に用いられる発現ベクターは発現制御配列、例えば複製開始点、プロモーター、及びエンハンサー(Queenら,Immunol.Rev.89:49(1986))、及び必要とされる加工情報位置、例えばリボソームの結合位置、RNAの切断位置、ポリアデノシン酸化位置、及び転写終止子配列を含むことができる。適切な発現制御配列の例はウサギ免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウィルス、サイトメガロウイルスなどの派生のプロモーターである。Coら、J.Immunol.148:1149(1992)を参照すること。
【0075】
一旦合成(化学または組み換え方式)されれば、本分野の標準的な手順、例えば硫酸アンモニウム沈殿、アフィニテイカラム、カラムクロマトグラフィー、高速液相クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル電気泳動などにより本発明に記載のプラスミノゲンを精製することができる。該プラスミノゲンは基本的に純粋なものであり、例えば少なくとも約80%から85%の純度で、少なくとも約85%~90%の純度で、少なくとも約90%~95%の純度で、または98%~99%の純度またはさらに純度が高いものであり、例えば汚染物を含まず、前記汚染物は例えば細胞砕片、ターゲット抗体以外の大分子などである。
【0076】
3、薬物配合剤
必要とする純度のプラスミノゲンと選択可能な薬用担体、賦形剤、または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版,Osol,A.ed.(1980))を混合して凍結乾燥製剤または水溶液を形成して治療用の配合剤を得る。許容可能な担体、賦形剤、安定剤は所要の用量及び濃度下において被験者に対して毒性がなく、さらに例えばリン酸塩、クエン酸塩及びその他の有機酸などの緩衝剤を含む。抗酸化剤はアスコルビン酸和メチオニンを含む;防腐剤(例えばベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド水和物;塩化ヘキサメチレンジアミン;塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブタノールまたはベンジルエタノール;アルキルパラヒドロキシ安息香酸エステル、例えばメチルまたはプロピルのパラヒドロキシ安息香酸エステル;ピロカテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンチルエタノール;m-クレゾール);低分子量ポリペプチド(少なくとも10個の残基を有するもの);タンパク質例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性重合体、例えばポリゼニールピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンである;単糖、二糖及びその他の炭水化物はブドウ糖、マンノース、またはデキストリンを含む;キレート剤は例えばEDTAである;糖類は例えばショ糖、マンニトール、フコースまたはソルビトールである;塩形成イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えば亜鉛-タンパク複合体);及び/または非イオン界面活性剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)である。好ましくは凍結乾燥された抗-VEGF抗体配合剤であり、WO 97/04801に記載されているとおりであり、本明細書において参考とされるものである。
【0077】
本発明の配合剤は治療を必要とする具体的な症状の必要とする一種類以上の活性化合物を含有してもよく、好ましくは活性が相補的で互いに副作用を有しないものである。例えば、血圧降下薬、抗不整脈薬、糖尿病治療薬等である。
【0078】
本発明のプラスミノゲンは例えば凝集技術または界面重合によって作られるマイクロカプセル中に被包されることができ、例えば、膠質薬物輸送系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン剤、ナノ粒子及びナノカプセル)中に入れまたはエマルジョン状液中のヒドロキシメチルセルロースまたはゲルーマイクロカプセル及びポリ―(メタアクリル酸メチル)マイクロカプセル中に入れることができる。これらの技術は以下に開示されている。Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)。
【0079】
体内に投与することに用いられる本発明のプラスミノゲンは必ず無菌である必要がある。これは凍結乾燥及び再度配合する前または後に除菌ろ過膜でろ過することで容易に実現できる。
【0080】
本発明のプラスミノゲンは緩衝製剤を調製できる。緩衝製剤の適切な実例は一定の形状を有し且つ糖タンパクを含む固体の疎水性重合体の半透過基質を含み、例えば膜またはマイクロカプセルである。緩衝基質の実例はポリエステル、水性ゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタアクリル酸エステル)(Langerら,J.Biomed.Mater.Res.,15:167-277(1981);Langer,Chem.Tech.,12:98-105(1982))またはポリ(ビニールエタノール)、ポリラクチド(米国特許3773919,EP 58,481)、L-グルタミン酸とγメチル-L-グルタミン酸の共重合体(Sidman,ら,Biopolymers 22:547(1983)),分解できないエチレン-ビニルアセテート(ethylene-vinyl acetate)(Langer,ら,出所は前記と同じ)、または分解可能な乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体、例えばLupron DepotTM(乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体及びリュープロレリン(leuprolide)酢酸エステルからなる注射可能なミクロスフェア体)、及びポリD-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。重合体、例えばエチレン-酢酸エチル及び乳酸-ヒドロキシ酢酸は、持続的に100日間以上分子を放出することができ、しかしいくつかの水性ゲルがタンパク質を放出する時間は比較的短い。関連のメカニズムに応じてタンパク質を安定化させる合理的なストラテジーにより設計できる。例えば、凝集のメカニズムが硫化ジスルフィド結合の交換によって分子間S-S結合を形成するであれば、メルカプト基残基を修飾することにより、酸性溶液中から凍結乾燥させ、湿度を制御し、適切な添加剤を用いて、及び特定の重合体基質組成物を開発することで安定化を実現する。
【0081】
4、投与及び用量
異なる方式、例えば静脈内、腹膜内、皮下、頭蓋骨内、髄腔内、動脈内(例えば頸動脈)、筋肉内、鼻内、体表または皮内投与または脊髄または脳内輸送により本発明の薬物組成物の投与を実現できる。エアロゾル製剤例えば鼻噴霧製剤は活性剤を含有する精製した水性またはその他の溶液及び防腐剤と等張剤を含有する。眼内に投与する場合はこのような製剤を眼結膜と許容し得るpH及び等張状態に調整する必要がある。
【0082】
胃腸外での投与に用いられる製造物は無菌水性または非水性溶液、懸濁液及び乳剤を含む。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体は水、エタノール性/水性溶液、乳剤または懸濁液を含み、食塩水及び緩衝媒介を含む
。胃腸外媒介物は塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、または固定油である。静脈内媒介物は液体及び栄養補充物、電気分解補充物などを含む。されには防腐剤及びその他の添加剤、例えば抗微生物製剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなども存在してもよい。
【0083】
医療関係者は各種臨床的要素により用量の案を決めることができる。例えば医学分野で公知のように、任意の患者の用量は複数の要素によって決められ、これらの要素は患者の体型、体表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与回数及び経路、全体の健康度、及び同時に投与するその他の薬物を含む。本発明が含有するプラスミノゲンの薬物組成物の用量の範囲は例えば被験者体重に対して毎日約0.0001~2000mg/kgであり、または約0.001~500mg/kg(例えば0.02mg/kg,0.25mg/kg,0.5mg/kg,0.75mg/kg,10mg/kg,50mg/kgなど)である。例えば、用量は1mg/kg体重または50mg/kg体重または1-50mg/kgの範囲とすることができ、または少なくとも1mg/kgである。この例示性の範囲より高いまたは低い用量もカバーされ、特に前記の要素を考慮した場合である。前記範囲中の中間用量も本発明の範囲内に含まれるものである。被験者は毎日、隔日、毎週または経験分析によって決められた任意のスケジュール表に従ってこのような用量を投与できる。例示的な用量の日程表は連続数日1-10mg/kg投与することである。本発明の薬物の投与過程において糖尿病網膜症及びその関連疾患の治療効果及び安全性はリアルタイムに評価、定期的に評価すべきである。
【0084】
5、治療効力及び治療安全性
本発明の一つの実施形態はプラスミノゲン/プラスミンを用いて被験者を治療した後、治療効力及び治療安全性に対して判断を行うことに係る。そのうち前記治療効力を判断する方法は以下を含むが、これらに限られない:1)被験者の視力の矯正、本発明中のプラスミノゲンを用いて被験者に対して治療を行った後、患者の視力が回復また改善されることが予期される。例えば、患者の視力、立体視覚、コントラスト感受度、暗さへの適応、色覚及び視野が回復または改善されることが予期される;2)電気生理学的検査:例えば網膜電図、眼電図、視覚誘発電位などを含む;3)眼底検査:直接、間接的な眼底鏡検査、三面鏡下における細隙灯検査、眼底蛍光血管造影、OCTなどを含む;4)視神経検査、被験者の神経病変、眼外筋麻痺、調節障害及び視神経萎縮などの検査を含み、被験者が本発明のプラスミノゲン治療を受けた後、視神経機能が修復または改善されることが予期される;5)屈折異常、血糖の上昇は房水の浸透圧低下を引き起こし、房水が硝子体内に浸透し、硝子体の屈折度が変化して近視となり、血糖が低下する際に房水の浸透圧が上昇し、硝子体内の水分が外に浸透し、相対的な遠視を形成し、被験者は本発明のプラスミノゲン治療を受けた後に、視神経機能が回復または改善されることが予期される;6)眼圧検査、被験者は本発明のプラスミノゲン治療を受けた後に眼圧が正常に回復または改善され、例えば10~21mmHg間になることが予期される。また、本発明はさらにプラスミノゲンを用いて被験者に対して治療を行う過程中及び過程後において、薬物の不良反応に対してモニタリング及び評価を行うことに係る。
【0085】
6、製品または薬物キット
本発明の一つの実施形態は製品または薬物キットに係るものであり、糖尿病によって引き起こされる網膜病変及びその関連疾患の治療に用いられる本発明のプラスミノゲンを含有する。前記製品は好ましくは一つの容器、ラベルまたはパンフレットを含む。適切な容器はボトル、小瓶、注射器などである。容器は各種材料例えばガラスまたはプラスチックから作られることができる。前記容器は組成物を含有し、前記組成物は本発明の疾患または症状を有効に治療し且つ無菌の入口を有する(例えば前記容器は静脈輸液用パックまたは小瓶であり、皮下注射針によって貫通される栓を含む)。前記組成物中の少なくとも一種類の活性化剤がプラスミノゲン/プラスミンである。前記容器上にあるまたは添付され
ているラベルは前記組成物を本発明の前記糖尿病によって引き起こされる網膜病変及びその関連疾患の治療に用いられると説明するものである。前記製品はさらに薬用緩衝液を含有する第二容器を含み、前記薬用緩衝液は例えばリン酸塩緩衝の食塩水、リンガー溶液及びブドウ糖溶液である。さらには商業及び使用者の角度から見ると必要とされるその他の物質、即ちその他の緩衝液、希釈剤、濾過物、針及び注射器を含むことができる。また、前記製品は使用説明を有するパンフレットを含み、これは例えば前記組成物の使用者にプラスミノゲン組成物及び疾患の治療に伴うその他の薬物を患者に投与することを指示するものである。
【0086】
<実施例>
1、実験動物
C57BLKS由来のdb/db糖尿病マウスを使用し、C57BLKS由来のdb/+ヘテロ接合体マウスを健常コントロール(対照)とし、それは南京生物医薬研究所から購入されたものである。db/dbマウスの10周齢以上で血糖レベルが15mMより高いマウスを実験に用いて、対照グループとしては同齢の血糖レベルが7.8mM未満のdb/+ヘテロ接合体マウスを使用する。動物は中国国家基準に満たす実験動物使用環境に適合した環境で飼育されたものである。
【0087】
2、実験の設計:
選出されたマウスをランダムに2つのグループに分け、即ちdb/dbモデルグループ(モデルグループ)及びdb/dbプラスミノゲン治療グループ(治療グループ)とする。選出されたdb/dbマウスは24-25週齢に網膜病変が生じ、それから尾部からの静脈注射方式によりプラスミノゲンを投与し、投与量は約2mg/0.2mL/匹/日であり、実験周期は31日間であり、プラスミノゲンを投与する当日を実験の1日目と記録する。プラスミノゲンを投与する前日と実験後の毎週においてすべてのグループの動物に対して関連の測定を行う。
【0088】
3、網膜血管準備及びそのPAS染色及び無細胞毛細血管のカウント:
文献(非特許文献22~24)の報道を参照して、網膜血管を準備する。具体的なステップは以下である:マウスの眼球を摘出してからすぐに4%パラホルムアルデヒドPBS緩衝液中で終夜固定させる。眼球から網膜を分離させた後に室温条件下において水で終夜洗い流し、それから37℃条件下において3%パンクレアチン(Invitrogen,Grand Island,NY)で2-3h消化する。組織を純水中に移し、解剖顕微鏡下において周囲附着組織上から網膜血管を分離させ、きれいなスライドガラス上に固定させ、自然に充分に乾燥させてからPAS溶液中で染色し、水で洗い流してから脱水して封入を行う。製造された網膜血管を顕微鏡下で観察する。PAS染色密度はImage-Pro Plus 6.0ソフトウエアを用いて分析が行われる。
【0089】
網膜中部の4~6視野中の無細胞毛細血管数をランダムにカウントする。細胞核がなく、毛細血管壁しかない毛細血管を無細胞毛細血管と言う(非特許文献25)。データは10mm2あたりの無細胞毛細血管数で示される。
【0090】
4、網膜のパラフィン切片のHE染色:
マウスの眼球を摘出してから4%パラホルムアルデヒドPBS緩衝液中で24-48時間固定させ、固定した後の眼球はエタノールで段階的に脱水してからキシレンで透明にしてからパラフィンで包埋させる。それからパラフィン切片に対してHE染色を行い、顕微鏡下で網膜病変を観察する。
【0091】
5、網膜VEGF、bcl-2、F4/80、フィブリン免疫組織染色(非特許文献22、26)
眼球に対して通常パラフィン切片を作り、脱パラフィンして再水和させてから、切片に対して高温修復を15min行う。過酸化水素水で15分間インキュベーションする。10%の正常ヒツジ血清液(Vectorlaboratories,Inc.,USA)を用いて1時間封止を行い、一次抗体を4℃で終夜インキュベーションし、TBSで洗い流し、二次抗体を滴加し、室温で1時間インキュベーションし、顕色させる。ヘマトキシリンで再度染色させ、段階的に透明になるまで脱水してから封入を行い、観察に備える。各眼球に対して2枚の構造が完全な網膜切片を取り、それぞれの切片に対してランダムに5つの視野を選択し、Image-Pro Plus 6.0画像処理ソフトウエアで各グループの染色エリアの平均光学密度値を分析する。
【実施例1】
【0092】
実施例1はプラスミノゲンの糖尿病マウスの体重に対する影響に関するものである。
【0093】
24-25週齢のdb/dbオスマウス20匹を取り、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループとプラスミノゲン投与グループで、各グループ10匹である。実験開始当日を0日目として体重計測してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与してさらに1日目と記録し、31日間連続的に投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾部静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与対照グループに対して同じ体積のPBSを投与する。0、4、7、11、16、21、26、31日目にそれぞれ体重を測定する。
【0094】
結果が示すように、プラスミノゲン投与グループと溶媒PBS投与対照グループは0、4、7、11、16、21、26、31日目に顕著な体重の差異が見られない(
図1)。これはプラスミノゲンが動物の体重に対して影響が大きくないことを示している。
【実施例2】
【0095】
実施例2はプラスミノゲンの糖尿病マウス網膜に対する保護作用に関するものである。
【0096】
24-25週齢のdb/dbオスマウス20匹を取り、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各グループ10匹である。実験開始当日を0日目として体重計測してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して1日目と記録し、31日間連続的に投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾部静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与グループに対して同じ体積のPBSを投与する。32日目にマウスを殺処分して左側眼球を取り、4%パラホルムアルデヒド中で24時間固定する。固定後の眼球をエタノールで段階的に脱水させて及びキシレンで透明にしてからパラフィンで包埋させる。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせてさらに再水和させてからヘマトキシリン及びエオジンで染色させ(HE染色)、1%塩酸エタノールで分化させ、アンモニア水で安定化させ、さらにエタノールで段階的に脱水させて封入し、顕微鏡下において400倍下にて切片に対して観察を行う。
【0097】
糖尿病性網膜病変において網膜に萎縮が生じ、網膜の外網状層(outer plexiform layer,OPL)、外顆粒層(outer nuclear layer,ONL)、視細胞層(感光層,photoreceptor layer,PL)及び網膜全体が薄くなってしまう(非特許文献27)。そのため、以上四つの厚みパラメータを用いて網膜の損傷状況の判断を行うことができる。
結果が示すように、溶媒PBS投与比較グループのマウスの網膜内は、各層構造が嵩高く、細胞の配列が不規則で、網膜神経節細胞及び内顆粒層細胞の配列が乱れ、網膜色素上皮細胞が増殖している(
図2A);プラスミノゲン投与グループは溶媒PBS投与対照グ
ループを比較した場合、網膜内の各層細胞の配列が規則的で、且つ網膜OPL、ONL、PLの厚み及び全体の厚みにおいて、前者が後者より厚いことが観察されている(
図2B)。これはプラスミノゲンを注射することで糖尿病マウスの網膜損傷の損傷を促進できることを示している。
【実施例3】
【0098】
実施例3はプラスミノゲンの糖尿病末期マウスの網膜損傷に対する改善に関するものである。
【0099】
24-25週齢のdb/dbオスマウス20匹を取り、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループとプラスミノゲン投与グループで、各グループ10匹ずつである。実験開始当日を0日目として体重計測してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して且つ1日目と記録し、31日間連続的に投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾部静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与グループに対して同じ体積のPBSを投与する。32日目にマウスを殺処分して左側眼球を取り、パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行う。固定後の眼球から網膜を剥離した後、1mL 3%パンクレアチン(Solarbio)のEPチューブ中に入れ、振動テーブルにおいて37℃で2~3h振動消化させる。網膜に軟化、脱落の現象が現れてからていねいに網膜を蒸留水の入ったEPチューブ中に移し、振動テーブルにおいて37℃で2~3h振動させ、網膜上の余分な組織を脱落させる。優しく網膜を処理し、血管層のみが残るようにしてからスライド上にサンプルを広げて載せ、自然乾燥させる。網膜をSchiff氏液で染色させ(PAS染色)、1%塩酸エタノールで分化させ、アンモニア水で安定化させ、さらにエタノールで段階的に脱水させてキシレンで透明にしてから封入を行い、顕微鏡下で400倍にて観察を行う。
【0100】
関連の研究が示すように、糖尿病は網膜の病変を引き起こし、網膜血管内皮細胞の増殖、周細胞の損失及び無細胞血管の形成をもたらす(非特許文献28,28)。
【0101】
実験結果から分かるように、プラスミノゲン投与グループ(
図3B)と比較して、溶媒PBS投与対照グループ(
図3A)のdb/dbマウス網膜毛細血管の管径の太さが不均一で、血管の管壁が厚くなり深く染色され、血管内皮細胞(Δ)が増殖し、周細胞(↓)が明らかに減少している。これに対してプラスミノゲン投与グループは病理的に明らかに減軽されている;定量分析により、プラスミノゲン投与グループと溶媒PBS投与対照グループを比較した場合、無細胞血管の長さ(
図3C)が顕著に低下し、且つ統計学的分析結果から顕著な差異があると示されている。これはプラスミノゲンが糖尿病後期のマウス網膜損傷の修復を顕著に促進できることを示している。
【実施例4】
【0102】
実施例4はプラスミノゲンの糖尿病マウスの網膜損傷の修復促進に関するものである。
【0103】
24-25週齢のdb/dbオスマウス20匹を取り、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループとプラスミノゲン投与グループで、各グループ10匹ずつである。実験開始当日を0日目として体重計測してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して且つ1日目と記録し、31日間連続的に投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾部静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与グループに対して同じ体積のPBSを投与する。32日目に眼球を取り4%パラホルムアルデヒド中において24時間固定させる。固定後の眼球をエタノールで段階的に脱水させ及びキシレンで透明にした後にパラフィンで包埋させる。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせて再水
和した後にさらに1回水洗いする。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、2回水洗いし、毎回5分間である。10%の正常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間封止する;時間になった後に、ヒツジ血清液を廃棄し、PAPマーカーで組織を囲む。ウサギ抗マウスVEGF抗体(Abcam)4℃で終夜インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で顕色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複再染色して、流水で5分間流す。透明になるよう段階的に脱水してから封止させ、顕微鏡下で400倍にて切片を観察する。
【0104】
VEGFは血管内皮増殖因子であり、生体の血管が損傷している状況下においてその発現が高くなる(非特許文献30,31)。そのため、VEGFの発現は血管損傷の状況を示すことができる。
【0105】
結果は以下を示している。溶媒PBS投与対照グループ(
図4A)の網膜各層中のVEGFの発現は顕著にプラスミノゲン投与グループ(
図4B)より高く、これはプラスミノゲンの注射が網膜VEGFの発現を抑制し、糖尿病マウスの網膜損傷の修復を促進できることを示している。
【実施例5】
【0106】
実施例5はプラスミノゲンの糖尿病によってもたらされる網膜微小血栓の溶解促進に関するものである。
【0107】
24-25週齢のdb/dbオスマウス10匹を取り、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループとプラスミノゲン投与グループで、各グループ5匹ずつである。実験開始当日を0日目として体重計測してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して且つ1日目と記録し、15日間連続的に投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾部静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与グループに対して同じ体積のPBSを投与する。最終回の投薬から24時間後に眼球を摘出して採血し、全血を静置した後に血清を用いて血液中のD-二量体の含有量(D-dimer)を測定する。
【0108】
結果は以下を示している。投薬15日後に、血清中のD-二量体の含有量が顕著に上昇し(
図5)、これはプラスミノゲンを投与した後に、糖尿病によってもたらされる網膜微小血栓が顕著に溶解していることを示している。
【実施例6】
【0109】
実施例6はプラスミノゲンの糖尿病マウスの網膜細胞アポトーシス阻害タンパク質の発現の促進に関するものである。
【0110】
24-25週齢のdb/dbオスマウス20匹を取り、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループとプラスミノゲン投与グループで、各グループ10匹ずつである。実験開始当日を0日目として体重計測してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して且つ1日目と記録し、31日間連続的に投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾部静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与グループに対して同じ体積のPBSを投与する。32日目に眼球を取り4%パラホルムアルデヒド中において24時間固定させる。固定した後の眼球をエタノールで段階的に脱水させ及びキシレンで透明にした後にパラフィンで包埋させる。組織切片の厚みは5μmで、切片を脱パラフィンさせて再水
和させた後にさらに1回水洗いする。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、2回水洗いし、毎回5分間である。10%の正常ヒツジ血清液で1時間封止する;それからヒツジ血清液を廃棄し、PAPマーカーで組織を囲む。ウサギ抗マウスBcl-2抗体(Abcam)4℃で終夜インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で顕色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒再染色して、流水で5分間流す。透明になるよう段階的に脱水してから封止させ、顕微鏡下で400倍にて切片を観察する。
【0111】
Bcl-2は細胞アポトーシス阻害タンパクであり、アポトーシス刺激因子の作用下において発現が減少するように制御される(非特許文献32,33)。結果は以下を示している。溶媒PBS投与対照グループ(
図6A)の網膜中におけるBcl-2の発現は顕著にプラスミノゲン投与グループ(
図6B)より低い。これはプラスミノゲンが、糖尿病マウスの網膜細胞アポトーシス阻害分子Bcl-2の発現を促進させ、これにより網膜細胞のアポトーシスを抑制できることを示している。
【実施例7】
【0112】
実施例7はプラスミノゲンの糖尿病末期の心筋損傷の修復の促進に関するものである。
【0113】
24-25週齢のdb/dbオスマウス28匹を取り、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループ12匹、プラスミノゲン投与グループ16匹である。実験開始当日を0日目として体重測定してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して且つ1日目と記録し、連続的に31日間投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾部静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与対照グループに対して同じ体積のPBSを投与する。32日目に眼球を摘出して採血を行い、3500r/minにて15-20分間遠心させ、さらに上澄みを取って心肌トロポニンIの濃度測定を行う。
【0114】
心筋トロポニンI(cardiac troponin,CTNI)は心筋損傷の重要なマーカーであり、その血清濃度は心筋損傷の程度を反映できる(非特許文献34)。結果は以下を示している。プラスミノゲン投与グループの心筋トロポニンIの濃度は明らかに溶媒PBS対照グループより低く、且つ極めて顕著な統計学差異を有する(
図7)。これはプラスミノゲンが顕著に糖尿病後期のマウスの心筋損傷の修復を顕著に促進できることを示している。
【実施例8】
【0115】
実施例8はプラスミノゲンの糖尿病末期マウスの腎臓アポトーシス阻害因子Bcl-2の発現促進に関するものである。
【0116】
24-25週齢のdb/dbオスマウス20匹を取り、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループとプラスミノゲン投与グループで、各グループ10匹ずつである。実験開始当日を0日目として体重計測してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与してさらに1日目と記録し、31日間連続的に投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾部静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与グループに対して同じ体積のPBSを投与する。32日目にマウスを殺処分して腎臓を取り10%中性ホルマリン固定液中において24時間固定させる。固定後の腎臓をエタノールで段階的に脱水させ及びキシレンで透明にした後にパラフィンで包埋させる。組織切片の厚みは5μmで、切片を脱パラフィンさせて再水和した後にさらに1回水洗いする。3%過酸化水素水で15分間イン
キュベーションし、2回水洗いし、毎回5分間である。10%の正常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間封止する;時間になってから、ヒツジ血清液を廃棄し、PAPマーカーで組織を囲む。ウサギ抗マウスBcl-2抗体(Abcam)4℃で終夜インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で顕色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒再染色して、流水で5分間流す。透明になるよう段階的に脱水してから封止させ、顕微鏡下で200倍下において切片を観察する。
【0117】
Bcl-2は細胞アポトーシス阻害タンパクであり、アポトーシス刺激因子の作用下において発現が減少するように制御される(非特許文献32,33)。Bcl-2の免疫組織染色の結果は以下を示している。プラスミノゲン投与グループ(
図8B)の腎細管上皮細胞の陽性発現着色は明らかに溶媒PBS投与対照グループ(
図8A)より色が深く、且つ前者の着色範囲がより広い。定量分析の結果は観察結果と一致し、且つ顕著な差異を有する(
図8C参照)。これはプラスミノゲンが、糖尿病マウスの腎臓細胞アポトーシス阻害分子Bcl-2の発現を促進させ、これにより糖尿病マウスの腎臓細胞のアポトーシスを抑制できることを示している。
【実施例9】
【0118】
実施例9はプラスミノゲンの糖尿病末期マウス腎臓フィブリン加水分解の促進に関するものである。
【0119】
24-25週齢のdb/dbオスマウス20匹を取り、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループとプラスミノゲン投与グループで、各グループ10匹である。実験開始当日を0日目として体重計測してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与してさらに1日目と記録し、31日間連続的に投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾部静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与グループに対して同じ体積のPBSを投与する。32日目にマウスを殺処分して腎臓を取り10%中性ホルマリン固定液中において24時間固定する。固定後の腎臓をエタノールで段階的に脱水させ及びキシレンで透明にした後にパラフィンで包埋させる。組織切片の厚みは5μmで、切片を脱パラフィンさせて再水和した後にさらに1回水洗いする。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、2回水洗いし、毎回5分間である。10%の正常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間封止する;時間になってから、ヒツジ血清液を廃棄し、PAPマーカーで組織を囲む。ウサギ抗マウスフィブリン(フィブリノーゲン)抗体(Abcam)4℃で終夜インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で顕色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒再染色して、流水で5分間流す。透明になるよう段階的に脱水してさせてから封止を行い、顕微鏡下で200倍下にて切片を観察する。
【0120】
フィブリノーゲンはフィブリンの前駆体であり、組織に損傷が存在する状況下において、生体の損傷に対する刺激応答反応として、フィブリノーゲンは加水分解されてフィブリンとなる(非特許文献35~37)。そのためフィブリンレベルを損傷の程度の一つの指標とすることができる。
【0121】
結果は以下を示している。プラスミノゲン投与グループ(
図9B)と溶媒PBS投与対照グループ(
図9A)を比較した場合、プラスミノゲン投与グループのマウスの陽性着色
が浅い。これはプラスミノゲンを注射することで糖尿病マウスの沈着フィブリンを減少させることができ、プラスミノゲンは糖尿病マウスの腎臓損傷に対して修復作用を有することを示している。
【実施例10】
【0122】
実施例10はプラスミノゲンの糖尿病マウスの肝臓損傷の修復促進に関するものである。
【0123】
25-28週齢のdb/dbオスマウス9匹を取り、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループ3匹、プラスミノゲン投与グループ6匹である。実験開始当日を0日目として体重測定してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して且つ1日目と記録し、連続的に31日間投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾部静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与グループに対して同じ体積のPBSを投与する。プラスミノゲンを31日間投与した後に眼球を摘出して全血を採取し、血清が析出してから4℃、3500r/minにて10分間遠心させ、上澄み液を取って測定を行う。本実験はグルタミン酸ピルビン酸アミノ基転移酵素測定薬物キット(南京建成生物工程研究所、品番C009-2)を使用して、ライトマン-フランケル法(Reitman-Frankel)を用いて血清中のグルタミン酸ピルビン酸アミノ基転移酵素(ALT)の含有量を測定する。
【0124】
グルタミン酸ピルビン酸アミノ基転移酵素は肝臓の健康状態を示す重要な指標であり(非特許文献38、39)、グルタミン酸ピルビン酸アミノ基転移酵素の正常参考値の範囲は9~50U/Lである。測定結果は以下を示している。溶媒PBS投与対照グループの血清中のALTの含有量は明らかに正常な生理的数値より高く、プラスミノゲン投与グループは既に体内の正常レベルに戻り、且つプラスミノゲン投与グループは溶媒PBS投与対照グループより顕著に低く、且つ統計学的差異を有する(
図10)。これは糖尿病末期モデルマウスにおいて、プラスミノゲンを注射することでより効果的に肝損傷を修復できることを示している。
【実施例11】
【0125】
実施例11はプラスミノゲンの糖尿病末期マウス肝臓組織の炎症修復の促進に関するものである。
【0126】
24-25週齢のdb/dbオスマウス10匹を取り、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループとプラスミノゲン投与グループで、各グループ5匹ずつである。実験開始当日を0日目として体重計測してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して且つ1日目と記録し、31日間連続的に投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾部静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与グループに対して同じ体積のPBSを投与する。プラスミノゲンの31日間投与した後にマウスを殺処分して解剖して肝臓を取り10%中性ホルマリン固定液中において24時間固定させる。固定後の肝臓組織をエタノールで段階的に脱水させ及びキシレンで透明化した後にパラフィンで包埋処理を行う。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせさらに再水和してから一回水洗いする。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、水で2回洗い、毎回5分間である。10%の健常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間封止する;時間になった後に、ヒツジ血清を遠心により廃棄し、PAPマーカーで組織を囲む。F4/80のウサギポリグローナル抗体(Abcam)4℃で終夜インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TB
Sで2回洗う。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で顕色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒再染色して、流水で5分間洗い流す。透明になるよう段階的に脱水してから封止させ、切片を顕微鏡下で400倍にて観察する。
【0127】
F4/80はマクロファージマーカーであって、炎症反応の程度及び段階を示すことができる。その結果は以下を示している。プラスミノゲン投与グループ(
図11B)と溶媒PBS投与対照グループ(
図11A)を比較した場合、プラスミノゲン投与グループのマウスのF4/80陽性レベルは明らかに低下し、これはプラスミノゲンを投与した後肝臓組織の炎症が減軽されていることを示している。
図11CはF4/80免疫組織陽性発現数の定量分析の結果であり、プラスミノゲン投与グループのF4/80の発現量が顕著に減少され、且つ統計学的差異を有し、プラスミノゲンは糖尿病マウスの肝臓の炎症を減軽させられることを示している。
【実施例12】
【0128】
実施例12はプラスミノゲンの糖尿病後期神経損傷マウスの機械的触刺激によって誘発される疼痛の応答能力修復の促進に関するものである。
【0129】
24~25週齢のdb/dbオスマウスを10匹取り、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各グループ5匹ずつである。実験開始当日を0日目として体重測定してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して且つ1日目と記録し、連続的に15日間投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾部静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与グループに対して同じ体積のPBSを投与する。プラスミノゲン投与後の0、4、7、11、16日目にVon-Freyファイバー(Stoelting,USA)を用いて動物の機械性損傷に関する感受度を測定する。2.0gの力を開始力として、まずその左足を測定する。5回の刺激中に2回の足を引っ込める反応があれば陽性で、陽性であれば、1ランク小さい力でその右足に対して刺激を行う;陰性であれば、1ランク大きい力でその右足を刺激し、このように左右足を交互に刺激し、刺激の間隔は5分間であり、全部で6回刺激し、それからS.R.Chaplan et al.(1994)(非特許文献40)で紹介した方法によりその50%足の引っ込めが生じる閾値を計算する。
【0130】
研究により、溶媒PBS投与対照グループと比較して、プラスミノゲン投与グループの糖尿病マウスの機械的触刺激によって誘発される疼痛に対する反応の均一性が向上し、且つ16日目測定した際に溶媒PBS投与対照グループと比較して極めて顕著な差異が見られている(
図12)。これはプラスミノゲンが神経損傷末期の糖尿病マウスの機械的触刺激による痛み(mechanical allodynia)に対する応答能力が修復されていることを示している。
【実施例13】
【0131】
実施例13はプラスミノゲンの糖尿病後期の神経損傷マウスの冷刺激感知に対する修復に関するものである。
【0132】
24~25週齢のdb/dbオスマウスを10匹取り、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各5匹である。実験開始当日を0日目として体重測定してグループ分けを行ってから生理実験を始め、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して且つ1日目と記録し、連続的に15日間投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾部静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与対照グループに対して同
じ体積のPBSを投与する。投薬後の0、4、7、11、16日目に針注射器で一滴のアセトン液滴を押し出してさらにdb/dbマウスの足裏に接触させ、それが足裏全体を覆うようにする。左足から始め、3分間間隔で交互にその左右足を刺激し、全部で10回刺激し、その足を引っ込める反応の回数を統計する。反応パーセンテージ=足を引っ込めた回数/刺激回数×100のパーセンテージである。
【0133】
実験結果は以下を示している。0及び4日目に、プラスミノゲン投与グループ及び溶媒PBS投与対照グループはアセトン刺激に対して顕著な差異がなく、7日目から顕著な差異が観察され、16日目に極めて顕著な差異が観察され、P値<0.0001である(
図13)。これは投薬15日後に、糖尿病マウスがほぼ完全に冷刺激に対する反応を回復したことを示し、プラスミノゲンが糖尿病後期マウスの神経の冷刺激に対する応答能力を極めて顕著に修復したことを示している。
【実施例14】
【0134】
実施例14はプラスミノゲンが糖尿病後期の神経損傷マウスの神経組織のフィブリンレベルを減少させることに関するものである。
【0135】
24~25週齢のdb/dbオスマウスを10匹取り、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各5匹である。実験開始当日を0日目として体重測定してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して且つ1日目と記録し、連続的に15日間投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日に応じて尾部静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与対照グループに対して同じ体積のPBSを投与する。16日目にマウスを殺処分して坐骨神経を取り10%中性ホルマリン固定液中において24時間固定する。固定後の坐骨神経をエタノールで段階的に脱水させ及びキシレンで透明にした後にパラフィンで包埋させる。組織切片の厚みは5μmで、切片を脱パラフィンさせて再水和した後にさらに1回水洗いし、それからPAPマーカーで組織を囲む。3%TBSで希釈した過酸化水素水で15分間インキュベーションし、3回水洗いする。10%の正常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間封止し、余分な血清を除去する。ウサギ抗マウスフィブリン(フィブリノーゲン)抗体(Abcam)4℃で終夜インキュベーションし、TBSで3回洗う。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TBSで3回洗う。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で顕色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒再染色して、流水で5分間洗い流す。透明になるよう段階的に脱水してから封止を行い、顕微鏡下で400倍下にて切片を観察する。
【0136】
フィブリノーゲンはフィブリンの前駆体であり、組織に損傷が存在する状況下において、生体の損傷に対する刺激応答反応として、フィブリノーゲンは加水分解されてフィブリンとなり、そのためフィブリンレベルを損傷の程度の一つの指標とすることができる(非特許文献35~37)。フィブリンは組織損傷後に血栓を形成する主な成分であり、そのため、フィブリンレベルを血栓の一つの指標とすることができる。
【0137】
研究により、溶媒PBS投与対照グループ(
図14A)と比較した場合、プラスミノゲン投与グループ(
図14B)のマウスの坐骨神経フィブリンのレベルが低下している。これは、プラスミノゲンはフィブリンレベルを低下させる機能を有し、損傷がある程度修復されていることを示している。また、プラスミノゲンは神経組織周囲の血栓の溶解を促進できることを示している。
【実施例15】
【0138】
実施例15はプラスミノゲンの糖尿病末期マウスの腎臓損傷の減軽に関するものである。
【0139】
24~25週齢のdb/dbオスマウスを8匹取り、ランダムに二つのグループに分け、溶媒PBS投与対照グループ及びプラスミノゲン投与グループで、各グループ4匹ずつである。実験開始当日を0日目として体重測定してグループ分けを行い、実験2日目からプラスミノゲンまたはPBSを投与して且つ1日目と記録し、連続的に31日間投与する。プラスミノゲン投与グループのマウスに対して2mg/0.2mL/匹/日にて尾静脈からプラスミノゲンを注射し、溶媒PBS投与対照グループに対して同じ体積のPBSを投与する。32日目に生理的指標を測定してから、マウスを殺処分して肝臓組織を取り10%中性ホルマリン固定液中において24時間固定させる。固定した後の肝臓組織をエタノールで段階的に脱水させ及びキシレンで透明にした後にパラフィンで包埋させる。組織切片の厚みは5μmで、切片を脱パラフィンさせて再水和した後にさらに1回水洗いする。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、2回水洗いし、毎回5分間である。ヤギ抗マウスIgM(HRP)抗体(Abcam)室温で1時間インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間である。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で顕色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒再染色して、流水で5分間洗い流す。透明になるよう段階的に脱水してから封止させ、顕微鏡下で400倍下にて切片を観察する。
【0140】
IgM抗体はアポトーシス及び壊死した細胞を除去する過程において重要な役割を果たし、細胞のアポトーシス及び壊死細胞が多ければ多いほど、局所IgM抗体のレベルがより高い(非特許文献41~43)。そのため、局所IgM抗体レベルは組織器官の損傷状況を反映することができる。
【0141】
結果は以下を示している。プラスミノゲン投与グループ(
図15B)のマウス腎糸球体IgMの陽性着色は溶媒PBS投与対照グループより浅く(
図15A)、且つ範囲も対照グループより小さく、統計分析の結果と観察結果は一致している(
図15C)。これはプラスミノゲンを注射した後の腎糸球体の損傷が明らかに改善され、プラスミノゲンは糖尿病マウスの生体損傷に対して顕著な保護及び修復機能を有することを反映している。
【配列表】