(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】抗菌性化合物としてのポリミキシン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07K 7/62 20060101AFI20220804BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20220804BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20220804BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220804BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
C07K7/62
A61K38/08
A61K38/12
A61P31/04
A61P43/00 121
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020101282
(22)【出願日】2020-06-10
(62)【分割の表示】P 2019049103の分割
【原出願日】2015-04-01
【審査請求日】2020-07-09
(32)【優先日】2014-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】501249191
【氏名又は名称】モナッシュ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジアン
(72)【発明者】
【氏名】ネイション,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルコフ,トニー
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ,ケイド ディー.
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-505858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/62
A61K 38/08
A61K 38/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IIa):
【化1】
〔式中、
R
1は、-C(O)C
6-12アリールを表し
、1以上のC
1-2アルキル、ハロ、またはトリハロC
1-2アルキルで置換されていてもよく;
R
3は、ロイシンであるアミノ酸の側鎖を表し;
R
4は、2-アミノ酪酸、または2-アミノイソ酪酸から選ばれるアミノ酸の側鎖を表し;
Xは、ジアミノ酪酸であるアミノ酸の側鎖の残基であり;
k、m、n、およびpはそれぞれ、1、または2から選ばれ;ならびに
qは1である〕の化合物、あるいは医薬として許容され得るその塩。
【請求項2】
式(IIa)の化合物が、式(IIb):
【化2】
〔式中、
R
1は、4-ビフェニルカルボキシル、4-トリフルオロメチルベンゾイル、4-エチルベンゾイル、3,4-ジクロロベンゾイル、4-クロロベンゾイル、3-クロロベンゾイル、ペンタフルオロベンゾイル、4-メチルベンゾイル、2,3-ジクロロベンゾイル、2,3-ジメチルベンゾイル、2,4-ジクロロベンゾイル、2,4-ジメチルベンゾイル、2-クロロ-4-メチルベンゾイル、2-クロロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-フルオロベンゾイル、3-メチルベンゾイル、3-トリフルオロメチルベンゾイル、3,4-ジメチルベンゾイル、3-フルオロ-4-メチルベンゾイル、4-クロロ-3-メチルベンゾイル、3-クロロ-4-メチルベンゾイル、4-クロロ-3-フルオロベンゾイル、3-フルオロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-クロロ-4-フルオロベンゾイル、4-メチル-3-トリフルオロメチルベンゾイル、3-メチル-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-メチル-5-トリフルオロメチルベンゾイル、3,5-ジメチルベンゾイル、3,5-ジクロロベンゾイル、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイル、3-フルオロ-5-トリフルオロメチルベンゾイル、3-クロロ-5-メチルベンゾイル、3-クロロ-5-フルオロベンゾイル、2,4,6-トリメチルベンゾイル、2,4,6-トリクロロベンゾイル、2-クロロ-4-フルオロベンゾイル、4-クロロ-2-フルオロベンゾイル、3,4,5-トリフルオロメチルベンゾイル、4-クロロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル、2-フルオロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-ビフェニルカルボキシル、4-クロロビフェニル-4-カルボキシル、4-クロロ-3-トリフルオロメチルベンゾイル、4-イソプロピルベンゾイル、4-クロロ-3-フルオロベンゾイル、3-クロロ-4-トリフルオロメチルベンゾイルから選ばれ;
R
3は、ロイシンであるアミノ酸の側鎖を表し;
R
4は、2-アミノ酪酸、または2-アミノイソ酪酸から選ばれるアミノ酸の側鎖を表し;
kは1、または2であり;ならびに
qは1である〕により表される、請求項1記載の化合物、あるいは医薬として許容され得るその塩。
【請求項3】
R
4は、2-アミノ酪酸の側鎖を表す、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
R
3は、D-ロイシンの側鎖を表し、
R
4は、2-アミノ酪酸の側鎖を表し;
R
1は、2,4-ジクロロベンゾイルであり;
kは、2であり;ならびに
qは、1である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
以下:
【表1】
【表2】
〔表中、
4-BPC=4-ビフェニルカルボキシル、2-MB=2-メチルベンゾイル、3-MB=3-メチルベンゾイル、4-MB=4-メチルベンゾイル、3-F-4-MB=3-フルオロ-4-メチルベンゾイル、4-C-3-MB=4-クロロ-3-メチルベンゾイル、3-C-4-MB=3-クロロ-4-メチルベンゾイル、3-C-5-MB=3-クロロ-5-メチルベンゾイル、3-TFMB=3-トリフルオロメチルベンゾイル、4-TFMB=4-トリフルオロメチルベンゾイル、2-C-4-TFMB=2-クロロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、4-C-3-TFMB=4-クロロ-3-トリフルオロメチルベンゾイル、3-C-4-TFMB=3-クロロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-F-4-TFMB=3-フルオロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-F-5-TFMB=3-フルオロ-5-トリフルオロメチルベンゾイル、4-M-3-TFMB=4-メチル3-トリフルオロメチルベンゾイル、3-M-4-TFMB=3-メチル-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-M-5-TFMB=3-メチル-5-トリフルオロメチルベンゾイル、2-F-4-TFMB=2-フルオロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、4-C-2-TFMB=4-クロロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル、3,5-BTFMB=3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイル、2,4,6-TMB=2,4,6-トリメチルベンゾイル、2,3-DMB=2,3-ジメチルベンゾイル、2,4-DMB=2,4-ジメチルベンゾイル、3,4-DMB=3,4-ジメチルベンゾイル、3,5-DMB=3,5-ジメチルベンゾイル、2-C-4-MB=2-クロロ-4-メチルベンゾイル、4-EB=4-エチルベンゾイル、4-IPB=4-イソプロピルベンゾイル、2-CB=2-クロロベンゾイル、3-CB=3-クロロベンゾイル、4-CB=4-クロロベンゾイル、2,3-DCB=2,3-ジクロロベンゾイル、2,4-DCB=2,4-ジクロロベンゾイル、3,4-DCB=3,4-ジクロロベンゾイル、3,5-DCB=3,5-ジクロロベンゾイル、2,4,6-TCB=2,4,6-トリクロロベンゾイル、2-FB=2-フルオロベンゾイル、3-FB=3-フルオロベンゾイル、2-C-4-FB=2-クロロ-4-フルオロベンゾイル、3-C-4-FB=3-クロロ-4-フルオロベンゾイル、3-C-5-FB=3-クロロ-5-フルオロベンゾイル、4-C-2-FB=4-クロロ-2-フルオロベンゾイル、4-C-3-FB=4-クロロ-3-フルオロベンゾイル、3-BPC=3-ビフェニルカルボキシル
、Abu=2-アミノ酪酸、Leu=ロイシン、およびDab=ジアミノ酪酸〕からなる群より選ばれる、請求項1記載の化合物、あるいは医薬として許容され得るその塩。
【請求項6】
治療有効量における、請求項1~5のいずれか一項に規定される1以上の化合物、または医薬として許容され得るその塩、および少なくとも1つの医薬として許容され得る担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項7】
治療有効量における、請求項1~5のいずれか一項記載の2以上の化合物、または医薬として許容され得るそれらの塩を含む、組み合わせ物。
【請求項8】
治療有効量における、請求項1~5のいずれか一項記載の2以上の化合物、または医薬として許容され得るその塩を含む、キット。
【請求項9】
グラム陰性細菌感染の予防または治療における使用のための、請求項1~5のいずれか一項記載の化合物。
【請求項10】
グラム陰性細菌感染が、多剤耐性(MDR)グラム陰性細菌感染である、請求項9記載の使用のための、請求項1~5のいずれか一項記載の化合物、または請求項7の組み合わせ物。
【請求項11】
化合物が、経口、静脈内、または筋肉内投与のためのものである、請求項9または10のいずれか一項記載の使用のための請求項1~5のいずれか一項記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、抗菌性化合物およびそれらの使用、特に、グラム陰性細菌感染、特に多剤耐性(MDR)病原体により引き起こされるもの等の細菌感染の治療に使用され得るペプチド性抗生物質に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
世界は、ほぼ全ての利用可能な抗生物質に耐性である細菌の出現からの膨大かつ高まる脅威に直面している。多剤耐性(MDR)グラム陽性細菌を標的とする少数の新しい抗生物質が過去20年において承認されているが、グラム陰性細菌の治療のための新規抗生物質の発見は著しく減少している。
【0003】
グラム陰性細菌の代表的な属は以下である:アシネトバクター(Acinetobacter);アクチノバシラス(Actinobacillus);バルトネラ(Bartonella);ボルデテラ(Bordetella);ブルセラ(Brucella);バークホルデリア(Burkholderia);カンピロバクター(Campylobacter);シアノバクテリア(Cyanobacteria);エンテロバクター(Enterobacter);エルウィニア(Erwinia);エシェリキア(Escherichia);フランシセラ(Francisella);ヘリコバクター(Helicobacter);ヘモフィラス(Hemophilus);クレブシエラ(Klebsiella);レジオネラ(Legionella);モラキセラ(Moraxella);モルガネラ(Morganella);ナイセリア(Neisseria);パスツレラ(Pasteurella);プロテウス(Proteus);プロヴィデンシア(Providencia);シュードモナス(Pseudomonas);サルモネラ(Salmonella);セラチア(Serratia);シゲラ(Shigella);ステノトロホモナス(Stenotrophomonas);トレポネマ(Treponema);ビブリオ(Vibrio);およびエルシニア(Yersinia)。
【0004】
米国感染症学会(IDSA)は、その最近の「Bad Bugs Need Drugs」キャンペーンにおいて、6つの最優先的な危険MDR微生物、いわゆる「スーパーバグ」の「対象リスト」に、緑膿菌(P.aeruginosa)、A.バウマンニ(baumannii)、および肺炎桿菌(K.pneumoniae)を挙げた。最近承認されたチゲサイクリン(tigecycline)は、アシネトバクター・バウマンニ(Acineobacter baumannii)を始めとする種々の臨床上重要なグラム陰性病原体に対して作用するが、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対しては効果的でないことが報告されている。世界中の多くの病院は、最後の砦の療法であるポリミキシンを除く全ての商業的に利用可能な抗生物質に耐性である緑膿菌、A.バウマンニ、または肺炎桿菌により引き起こされる感染の発生を経験している。
【0005】
ポリミキシンは、60年よりも前に発見されたペプチドのクラスに属する。それらは、パエニバチルス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)における2次代謝経路由来の非リボソーム性生合成酵素により産生される。臨床的に利用可能な2つのポリミキシンであるコリスチン(ポリミキシンE)およびポリミキシンBが存在する。ポリミキシンBおよびコリスチンの商業的調製物は、発酵により得られる密接に関連したペプチドの混合物である(非特許文献1および2)。ポリミキシンB調製物中に見出される2つの主要な成分は、すなわち、ポリミキシンB1およびB2であるのに対し、コリスチンの商業的調製物は、コリスチンAおよびBに分類される2つの主要な成分を含有する。これらのポリミキシンBおよびコリスチンの成分の構造を、以下に示す。
【0006】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Orwa,J.A.,et al.(2001) J.Chromatography A.912,369-373
【文献】Govaerts,C.,et al.(2002) J.Chromatography A.976,65-78
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポリミキシンは、全ての他の利用可能な抗生物質が作用しない患者における抗生物質の最後の砦のクラスとして現在使用されている。所定のグラム陰性細菌感染の治療におけるポリミキシンの効力にかかわらず、コリスチン(その不活性プロドラッグであるコリスチン・メタンスルホネートとして)およびポリミキシンBの非経口投与は、患者のうち60%にまで潜在的に腎毒性であり、このことは、MDRグラム陰性感染の治療のためにより慣用的にそれらを使用することを制限している。さらに、腎毒性は現在利用可能なポリミキシンの主要な用量律速因子であることから、ポリミキシンの最適未満の投薬は、ポリミキシン耐性の出現を促進し得る。したがって、臨床的に利用可能なポリミキシンと同様である、またはそれよりも良好な効力を奏するが、腎毒性の副作用を有しない新規ポリミキシン化合物を開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
所定のポリミキシンアナログが、ポリミキシンBまたはコリスチンに対して低減した腎毒性の副作用を有する一方で、グラム陰性細菌、特に、MDRグラム陰性細菌に対してそれらの効力を保持または改善することが今や見出された。
【0010】
したがって、一つの局面では、本発明は、式(I)または式(II)の1以上の化合物あるいは医薬として許容され得るその塩を治療有効量においてそれを必要とする被験体に投与することを含む、多剤耐性(MDR)グラム陰性細菌感染の予防または治療方法を提供する。
【0011】
【0012】
〔式中、
R1は、-C(O)C1-22アルキル、-C(O)C2-22アルケニル、-C(O)C5-12アリール、-C(O)C1-22アルキルC5-12アリール、-C(O)C1-22アルキルC3-12シクロアルキル、-C(O)C5-10アリールC2-22アルケニル、-C(O)C4-12シクロアルキル、-C(O)C3-12シクロアルキルC1-22アルキル、-C(O)C3-12シクロアルキルC2-22アルケニル、-C(S)C1-22アルキル、-C(S)C2-22アルケニル、-C(S)C5-10アリール、-C(S)C1-22アルキルC5-12アリール、-C(S)C1-22アルキルC3-12シクロアルキル、-C(S)C4-12シクロアルキル、-C(S)C5-10アリールC1-22アルキル、-C(S)C5-10アリールC2-22アルケニル、-C(S)C3-12シクロアルキルC1-22アルキル、-C(S)C3-12シクロアルキルC2-22アルケニル、-C(NH)C1-22アルキル、-C(NH)C2-22アルケニル、-C(NH)C5-10アリール、-C(NH)C1-22アルキルC5-12アリール、-C(NH)C1-22アルキルC3-12シクロアルキル、-C(NH)C4-12シクロアルキル、-C(NH)C5-10アリールC1-22アルキル、-C(NH)C5-10アリールC2-22アルケニル、-C(NH)C3-12シクロアルキルC1-22アルキル、-C(NH)C3-12シクロアルキルC2-22アルケニル、-S(O)2C1-22アルキル、-S(O)2C2-22アルケニル、-S(O)2C5-10アリール、-S(O)2C4-12シクロアルキル、-S(O)2C5-10アリールC1-22アルキル、-S(O)2C5-10アリールC2-22アルケニル、-S(O)2C3-12シクロアルキルC1-22アルキル、および-S(O)2C3-12シクロアルキルC2-22アルケニルから選ばれ、各々は、1以上のC1-2アルキル、ハロ、またはトリハロC1-2アルキルで置換されていてもよく;
R2は、セリン、またはスレオニンから選択されるアミノ酸の側鎖を表し;
R3は、ロイシン、フェニルアラニン、ノルロイシン、ノルバリン、またはt-ブチルグリシンから選ばれるアミノ酸の側鎖を表し;
R4は、アラニン、スレオニン、セリン、バリン、t-ブチルグリシン、2-アミノ酪酸、または2-アミノイソ酪酸から選ばれるアミノ酸の側鎖を表し;
Xは、ジアミノ酪酸、ジアミノプロピオン酸、リジン、またはオルニチンから選ばれるアミノ酸の側鎖の残基であり;ならびに
k、m、n、およびpはそれぞれ、1、2、または3から選ばれる〕;あるいは式(II):
【0013】
【0014】
〔式中、
R1、R3、R4、X、k、m、nおよびpは、式(I)について前記に規定されるとおりであり;ならびに
qは、1、2、または3である〕
【0015】
別の局面では、本発明は、多剤耐性(MDR)グラム陰性細菌感染の予防または治療のための医薬の製造における、本明細書中以降に記載されるような式(I)および/または式(II)の1以上の化合物、あるいは医薬として許容され得るその塩の使用を提供する。
【0016】
別の局面では、本発明は、多剤耐性(MDR)グラム陰性細菌感染の予防または治療における使用のための、本明細書中以降に記載されるような式(I)および/または式(II)の1以上の化合物、あるいは医薬として許容され得るその塩を提供する。
【0017】
別の局面では、本発明は、式(Ia)の化合物、あるいは医薬として許容され得るその塩を提供する。
【0018】
【0019】
〔式中、
R1は、-C(O)C1-22アルキル、-C(O)C2-22アルケニル、-C(O)C5-12アリール、-C(O)C1-22アルキルC5-12アリール、-C(O)C1-22アルキルC3-12シクロアルキル、-C(O)C5-10アリールC2-22アルケニル、-C(O)C4-12シクロアルキル、-C(O)C3-12シクロアルキルC1-22アルキル、-C(O)C3-12シクロアルキルC2-22アルケニル、-C(S)C1-22アルキル、-C(S)C2-22アルケニル、-C(S)C5-10アリール、-C(S)C1-22アルキルC5-12アリール、-C(S)C1-22アルキルC3-12シクロアルキル、-C(S)C4-12シクロアルキル、-C(S)C5-10アリールC1-22アルキル、-C(S)C5-10アリールC2-22アルケニル、-C(S)C3-12シクロアルキルC1-22アルキル、-C(S)C3-12シクロアルキルC2-22アルケニル、-C(NH)C1-22アルキル、-C(NH)C2-22アルケニル、-C(NH)C5-10アリール、-C(NH)C1-22アルキルC5-12アリール、-C(NH)C1-22アルキルC3-12シクロアルキル、-C(NH)C4-12シクロアルキル、-C(NH)C5-10アリールC1-22アルキル、-C(NH)C5-10アリールC2-22アルケニル、-C(NH)C3-12シクロアルキルC1-22アルキル、-C(NH)C3-12シクロアルキルC2-22アルケニル、-S(O)2C1-22アルキル、-S(O)2C2-22アルケニル、-S(O)2C5-10アリール、-S(O)2C4-12シクロアルキル、-S(O)2C5-10アリールC1-22アルキル、-S(O)2C5-10アリールC2-22アルケニル、-S(O)2C3-12シクロアルキルC1-22アルキル、および-S(O)2C3-12シクロアルキルC2-22アルケニルから選ばれ、各々は、1以上のC1-2アルキル、ハロ、またはトリハロC1-2アルキルで置換されていてもよく;
R2は、セリン、またはスレオニンから選択されるアミノ酸の側鎖を表し;
R3は、ロイシン、フェニルアラニン、ノルロイシン、ノルバリン、またはt-ブチルグリシンから選ばれるアミノ酸の側鎖を表し;
R4は、アラニン、スレオニン、セリン、バリン、t-ブチルグリシン、2-アミノ酪酸、または2-アミノイソ酪酸から選ばれるアミノ酸の側鎖を表し;
Xは、ジアミノ酪酸、ジアミノプロピオン酸、リジン、またはオルニチンから選ばれるアミノ酸の側鎖の残基であり;ならびに
k、m、n、およびpはそれぞれ、1、2、または3から選ばれる〕
(ただし、R3がロイシンまたはフェニルアラニンの側鎖残基であるとき、R4は、スレオニンの側鎖残基であり、k、m、nおよびpは、2であり、R1は、S-6-メチルオクタノイル、または6-メチルヘプタノイルではない)
【0020】
さらなる局面では、本発明は、式(IIa)の化合物、あるいは医薬として許容され得るその塩を提供する。
【0021】
【0022】
〔式中、
R1は、-C(O)C1-22アルキル、-C(O)C2-22アルケニル、-C(O)C5-12アリール、-C(O)C1-22アルキルC5-12アリール、-C(O)C1-22アルキルC3-12シクロアルキル、-C(O)C5-10アリールC2-22アルケニル、-C(O)C4-12シクロアルキル、-C(O)C3-12シクロアルキルC1-22アルキル、-C(O)C3-12シクロアルキルC2-22アルケニル、-C(S)C1-22アルキル、-C(S)C2-22アルケニル、-C(S)C5-10アリール、-C(S)C1-22アルキルC5-12アリール、-C(S)C1-22アルキルC3-12シクロアルキル、-C(S)C4-12シクロアルキル、-C(S)C5-10アリールC1-22アルキル、-C(S)C5-10アリールC2-22アルケニル、-C(S)C3-12シクロアルキルC1-22アルキル、-C(S)C3-12シクロアルキルC2-22アルケニル、-C(NH)C1-22アルキル、-C(NH)C2-22アルケニル、-C(NH)C5-10アリール、-C(NH)C1-22アルキルC5-12アリール、-C(NH)C1-22アルキルC3-12シクロアルキル、-C(NH)C4-12シクロアルキル、-C(NH)C5-10アリールC1-22アルキル、-C(NH)C5-10アリールC2-22アルケニル、-C(NH)C3-12シクロアルキルC1-22アルキル、-C(NH)C3-12シクロアルキルC2-22アルケニル、-S(O)2C1-22アルキル、-S(O)2C2-22アルケニル、-S(O)2C5-10アリール、-S(O)2C4-12シクロアルキル、-S(O)2C5-10アリールC1-22アルキル、-S(O)2C5-10アリールC2-22アルケニル、-S(O)2C3-12シクロアルキルC1-22アルキル、および-S(O)2C3-12シクロアルキルC2-22アルケニルから選ばれ、各々は、1以上のC1-2アルキル、ハロ、またはトリハロC1-2アルキルで置換されていてもよく;
R3は、ロイシン、フェニルアラニン、ノルロイシン、ノルバリン、またはt-ブチルグリシンから選ばれるアミノ酸の側鎖を表し;
R4は、アラニン、スレオニン、セリン、バリン、t-ブチルグリシン、2-アミノ酪酸、または2-アミノイソ酪酸から選ばれるアミノ酸の側鎖を表し;
Xは、ジアミノ酪酸、ジアミノプロピオン酸、リジン、またはオルニチンから選ばれるアミノ酸の側鎖の残基であり;ならびに
k、m、n、pおよびqはそれぞれ、1、2、または3から選ばれる〕
(ただし、R3がロイシンの側鎖残基であるとき、R4は、スレオニンの側鎖残基であり、かつk、m、n、p、およびqは2であり、R1は、S-6-メチルオクタノイル、または6-メチルヘプタノイルではない)
【0023】
別の局面では、本発明は、治療有効量における、本明細書中以降に記載されるような1以上の化合物、あるいは医薬として許容され得るその塩、ならびに医薬として許容され得る少なくとも1つの担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0024】
別の局面では、本発明は、本明細書中以降に記載されるような式(Ia)および/または(IIa)の1以上の化合物、あるいは医薬として許容され得るその塩を治療有効量においてそれを必要とする被験体に投与する工程を含む、グラム陰性細菌感染の予防または治療方法を提供する。
【0025】
別の局面では、本発明は、グラム陰性細菌感染の予防または治療のための医薬の製造における、本明細書中以降に記載されるような式(Ia)および/または(IIa)の1以上の化合物、あるいは医薬として許容され得るその塩の使用を提供する。
【0026】
別の局面では、本発明は、グラム陰性細菌感染の予防または治療における使用のための、本明細書中以降に記載されるような式(Ia)および/または(IIa)の1以上の化合物、あるいは医薬として許容され得るその塩を提供する。
【0027】
本発明のこれらの及び他の局面は、以下の詳細な説明を添付の実施例および特許請求の範囲と関連付けて読むことで、当業者により明白となるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
グラム陰性細菌におけるポリミキシンの初期細胞標的は、外膜(OM)のリポポリ多糖(LPS)成分である。LPS標的は、全てではないにしろ、殆どのグラム陰性細菌にわたり一般的に保存されていると考えられる。
【0029】
一般に、LPSは、3つのドメイン(脂質A、および種々のポリ多糖の反復単位から構成される可変性O抗原に結合している、保存された内部コア2-ケト-3-デオキシオクタン酸)から構成される。脂質Aのコンセンサス構造は、1-および4’-位でリン酸化されているβ-1’-6-連結D-グルコサミンジサッカリドからなる。緑膿菌由来の脂質Aの構造の例を、以下に示す。
【0030】
【0031】
脂質Aは、通常、6つのアシル鎖を含有する。4つのβ-ヒドロキシアシル鎖(通常、C10~C14の長さ)は、グルコサミン糖に直接付着している一方で、第2のアシル鎖はしばしば、2つの鎖の各々にあるβ-ヒドロキシ基に付着している。脂質Aは、脂肪アシル鎖の緊密なパッキングとの疎水性アンカーとして作用して、外膜構造全体の安定化に役立っている。
【0032】
外膜におけるカチオン性ポリミキシンペプチド(特に、荷電したα,γ-ジアミノ酪酸(Dab)残基)とLPSの脂質A成分との間の初期の極性相互作用の存在により、脂質Aの負に荷電したリン酸基から二価カチオン(Ca2+およびMg2+)が置換されると考えられている。この初期の相互作用に、外膜を横切る取込み、および細胞質膜との相互作用が続く。
【0033】
ポリミキシンBおよびコリスチン(ポリミキシンE)は、1950年代において、抗生物質としての臨床用途にまず利用可能になった。その後まもなく、腎毒性の副作用についての懸念のため、それらの用途は支持を失った。コリスチンについてのこれらの観察された腎毒性の副作用は、1980~2000年の期間において、ペプチドが抗生物質として殆ど使用されないという結果を生じた。より最近では、全ての他の抗生物質が効果的でないことが見出された患者において、主に必要性に起因して、最後の砦の抗生物質としての用途が、再び見出された。さらに、腎毒性は現在のポリミキシンについての主要な用量律速因子であることから、改善された腎毒性プロフィールを有する化合物は、感染をより効果的に治療し、かつポリミキシン耐性の出現を抑制するために、より高い用量が投与されることを可能にする。
【0034】
驚くべきことに、本発明の化合物は、ポリミキシンBまたはコリスチンに対して改善された腎毒性プロフィールを示しつつ、グラム陰性細菌に対して効果的であることが今や見出された。本発明者らは、ポリミキシン構造内の3つの鍵となる位置にある所定のアミノ酸残基が、特定のN-末端脂肪アシル基との組み合わせにおいて、化合物の抗菌効力を維持または改善しつつ、化合物の腎毒性レベルを有意に低減できることを発見した。
【0035】
本明細書では、当業者に周知である多くの用語が使用される。それでもなお、明確の目的のため、多くの用語が定義される。
【0036】
本明細書中で使用される場合、単独または化合物の文言中のいずれかで使用される、用語「アルキル」は、直鎖または分岐のアルキルを示す。好ましくは、アルキル基は、直鎖のアルキル基である。「C1-22」等の接頭語は、アルキル基内の炭素原子数(この場合、1~22)を示すために用いられる。直鎖または分岐のアルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、5-メチルヘプチル、5-メチルヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、およびドコシル(C22)が挙げられる。
【0037】
本明細書中で用いられる場合、単独または化合物の文言中のいずれかで使用される、用語「アルケニル」は、先に規定したようなエチレン性のモノ、ジ、またはポリ不飽和アルキル基を含む、少なくとも1つの炭素間二重結合を含有する直鎖または分岐の炭化水素残基を示す。好ましくは、アルケニル基は、直鎖のアルケニル基である。「C2-22」等の接頭語は、アルケニル基内の炭素原子数(この場合、2~22)を示すために用いられる。アルケニルの例としては、ビニル、アリル、1-メチルビニル、ブテニル、iso-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ペンテニル、1-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1-ヘプテニル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、1-デセニル、3-デセニル、1,3-ブタジエニル、1,4-ペンタジエニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、および5-ドコセニル(C22)が挙げられる。
【0038】
本明細書中で用いられる場合、単独または化合物の文言中で使用される、用語「シクロアルキル」は、環状アルキル基を示す。「C3-12」等の接頭語は、アルキル基の環状部分内の炭素原子数(この場合、3~12)を示すために用いられる。環状アルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクトオクチル、シクロノニル、シクロデシル、およびシクロドデシル等のモノまたはポリ環状アルキル基が挙げられる。
【0039】
本明細書中で用いられる場合、用語「アリール」は、芳香族炭化水素環系の任意の単一または多核性の共役または融合残基を示す。「C6-16」等の接頭語は、アリール基の環状部分内の炭素原子数(この場合、6~16)を示すために用いられる。アリールの例としては、フェニル(単一の核)、ナフチル(融合した多核)、ビフェニル(共役した多核)、およびテトラヒドロナフチル(融合した多核)が挙げられる。
【0040】
本明細書中で使用される用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードをいう。
【0041】
本明細書中で用いられる場合、アミノ酸の「側鎖」に対する参照は、当該分野におけるその標準的な意味として解釈する。アミノ酸の側鎖の例を、以下に示す。
【0042】
【0043】
本明細書中で用いられる場合、天然に生じないアミノ酸は、アミノおよびカルボキシル官能基の双方を有する任意の化合物、その誘導体、または天然に生じるアミノ酸の誘導体を含む。これらのアミノ酸は、それらのアミノおよびカルボキシル基を介した結合を介してペプチド鎖の部分を形成する。あるいは、これらの誘導体は、他の天然に生じるアミノ酸または天然に生じないアミノ酸と結合して、非ペプチジル連結を形成してもよい。
【0044】
上記に示した負に荷電した側鎖に加えて、多くの側鎖もまたプロトン化され、それ故、リジンの側鎖のように正に荷電されることが理解されるであろう。本発明は、これらのプロトン化された側鎖も同様に、その範囲内にあることを意図する。
【0045】
本発明の化合物は、1以上の立体異性体(例、ジアステレオマー)において存在してもよいことが理解されるであろう。本発明は、単離(例えば、エナンチオマー単離における)、または組み合わせ(ラセミ混合物およびジアステレオマー混合物を含む)のいずれかにおけるこれらの立体異性体の全てを、その範囲内に含む。本発明は、LおよびD体から独立して選ばれるアミノ酸の使用を含む、LおよびD体の双方におけるアミノ酸の使用を意図する。例えば、ペプチドが2つのDab残基を含む場合、各Dab残基は、同じ又は逆の絶対立体化学を有していてもよい。特に指定しない限り、アミノ酸は、L-立体配置におけるものであると解釈される。
【0046】
したがって、本発明はまた、アミノ酸残基の非対称中心の点について、例えば、約95%~97%等の約90% deを超える、または99% deを超える、実質的に純粋な立体異性体における化合物、およびラセミ混合物を含むそれらの混合物に関する。
【0047】
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、ならびに一般式(Ia)および(IIa)を参照すると、1以上の以下の好ましい実施形態は、以下を適用する。
【0048】
a)R1は、-C(O)C1-22アルキル、-C(O)C2-22アルケニル、-C(O)C5-12アリール、-C(O)C1-22アルキルC5-12アリール、-C(O)C1-22アルキルC3-12シクロアルキル、-C(O)C5-10アリールC2-22アルケニル、-C(O)C4-12シクロアルキル、-C(O)C3-12シクロアルキルC1-22アルキル、-C(O)C3-12シクロアルキルC2-22アルケニル、-C(S)C1-22アルキル、-C(S)C2-22アルケニル、-C(S)C5-10アリール、-C(S)C1-22アルキルC5-12アリール、-C(S)C1-22アルキルC3-12シクロアルキル、-C(S)C4-12シクロアルキル、-C(S)C5-10アリールC1-22アルキル、-C(S)C5-10アリールC2-22アルケニル、-C(S)C3-12シクロアルキルC1-22アルキル、-C(S)C3-12シクロアルキルC2-22アルケニル、-C(NH)C1-22アルキル、-C(NH)C2-22アルケニル、-C(NH)C5-10アリール、-C(NH)C1-22アルキルC5-12アリール、-C(NH)C1-22アルキルC3-12シクロアルキル、-C(NH)C4-12シクロアルキル、-C(NH)C5-10アリールC1-22アルキル、-C(NH)C5-10アリールC2-22アルケニル、-C(NH)C3-12シクロアルキルC1-22アルキル、-C(NH)C3-12シクロアルキルC2-22アルケニル、-S(O)2C1-22アルキル、-S(O)2C2-22アルケニル、-S(O)2C5-10アリール、-S(O)2C4-12シクロアルキル、-S(O)2C5-10アリールC1-22アルキル、-S(O)2C5-10アリールC2-22アルケニル、-S(O)2C3-12シクロアルキルC1-22アルキル、および-S(O)2C3-12シクロアルキルC2-22アルケニルから選ばれ、各々は、1以上のC1-2アルキル、ハロ、またはトリハロC1-2アルキルで置換されていてもよい。
【0049】
b)R1は、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ドデカノイル、S,R-6-メチルオクタノイル(ラセミ混合物)、R-6-メチルオクタノイル、7-メチルオクタノイル、S-5-メチルヘプタノイル、R-5-メチルヘプタノイル、S,R-5-メチルヘプタノイル(ラセミ混合物)、4-ビフェニルカルボキシル、4-トリフルオロメチルベンゾイル、4-エチルベンゾイル、3,4-ジクロロベンゾイル、4-クロロベンゾイル、3-クロロベンゾイル、ペンタフルオロベンゾイル、4-メチルベンゾイル、4-エチルフェニルアセチル、フェニルアセチル、4-メチルフェニルアセチル、4-トリフルオロメチルフェニルアセチル、ペンタフルオロフェニルアセチル、3,4-ジクロロフェニルアセチル、4-クロロフェニルアセチル、3-クロロフェニルアセチル、2-クロロベンゾイル、2-フルオロベンゾイル、2-メチルベンゾイル、2-クロロフェニルアセチル、2-メチルフェニルアセチル、2-フルオロフェニルアセチル、2,3-ジクロロベンゾイル、2,3-ジメチルベンゾイル、2,4-ジクロロフェニルアセチル、2,4-ジクロロベンゾイル、2,4-ジメチルベンゾイル、2-クロロ-4-メチルベンゾイル、2-クロロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-フルオロベンゾイル、3-メチルベンゾイル、3-トリフルオロメチルベンゾイル、3,4-ジメチルベンゾイル、3-フルオロ-4-メチルベンゾイル、4-クロロ-3-メチルベンゾイル、3,4-ジメチルフェニルアセチル、3-クロロ-4-メチルベンゾイル、4-クロロ-3-フルオロベンゾイル、3-フルオロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-クロロ-4-フルオロベンゾイル、4-メチル-3-トリフルオロメチルベンゾイル、3-メチル-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-メチル-5-トリフルオロメチルベンゾイル、3,5-ジメチルベンゾイル、3,5-ジクロロベンゾイル、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイル、3-フルオロ-5-トリフルオロメチルベンゾイル、3-クロロ-5-メチルベンゾイル、3-クロロ-5-フルオロベンゾイル、ベンゾイル、2,4,6-トリメチルベンゾイル、2,4,6-トリクロロベンゾイル、2-クロロ-4-フルオロベンゾイル、4-クロロ-2-フルオロベンゾイル、3,4,5-トリフルオロメチルベンゾイル、4-クロロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル、2-フルオロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-ビフェニルカルボキシル、4-クロロ-ビフェニル-4-カルボキシル、3-フェニルプロポニル、4-フェニルブタノイル、2,4-ジクロロフェニルスルホニル、4-クロロ-3-トリフルオロメチルベンゾイル、4-イソプロピルベンゾイル、4-クロロ-3-フルオロベンゾイル、3-クロロ-4-トリフルオロメチルベンゾイルから選ばれる。
【0050】
c)R1は、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ドデカノイル、S,R-6-メチルオクタノイル(ラセミ混合物)、R-6-メチルオクタノイル、7-メチルオクタノイル、S-5-メチルヘプタノイル、R-5-メチルヘプタノイル、S,R-5-メチルヘプタノイル(ラセミ混合物)、4-ビフェニルカルボキシル、4-トリフルオロメチルベンゾイル、4-エチルベンゾイル、3,4-ジクロロベンゾイル、4-クロロベンゾイル、3-クロロベンゾイル、ペンタフルオロベンゾイル、4-メチルベンゾイル、4-エチルフェニルアセチル、フェニルアセチル、4-メチルフェニルアセチル、4-トリフルオロメチルフェニルアセチル、ペンタフルオロフェニルアセチル、3,4-ジクロロフェニルアセチル、4-クロロフェニルアセチル、3-クロロフェニルアセチル、2-クロロベンゾイル、2-フルオロベンゾイル、2-メチルベンゾイル、2-クロロフェニルアセチル、2-フルオロフェニルアセチル、2-メチルフェニルアセチル、2,3-ジクロロベンゾイル、2,3-ジメチルベンゾイル、2,4-ジクロロフェニルアセチル、2,4-ジクロロベンゾイル、2,4-ジメチルベンゾイル、2-クロロ-4-メチルベンゾイル、2-クロロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-フルオロベンゾイル、3-メチルベンゾイル、3-トリフルオロメチルベンゾイル、3,4-ジメチルベンゾイル、3-フルオロ-4-メチルベンゾイル、4-クロロ-3-メチルベンゾイル、3,4-ジメチルフェニルアセチル、3-クロロ-4-メチルベンゾイル、4-クロロ-3-フルオロベンゾイル、3-フルオロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-クロロ-4-フルオロベンゾイル、4-メチル-3-トリフルオロメチルベンゾイル、3-メチル-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-メチル-5-トリフルオロメチルベンゾイル、3,5-ジメチルベンゾイル、3,5-ジクロロベンゾイル、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイル、3-フルオロ-5-トリフルオロメチルベンゾイル、3-クロロ-5-メチルベンゾイル、3-クロロ-5-フルオロベンゾイル、2,4,6-トリメチルベンゾイル、2,4,6-トリクロロベンゾイル、2-クロロ-4-フルオロベンゾイル、4-クロロ-2-フルオロベンゾイル、3,4,5-トリフルオロメチルベンゾイル、4-クロロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル、2-フルオロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-ビフェニルカルボキシル、4-クロロ-ビフェニル-4-カルボキシル、3-フェニルプロポニル、4-フェニルブタノイル、2,4-ジクロロフェニルスルホニル、4-クロロ-3-トリフルオロメチルベンゾイル、4-イソプロピルベンゾイル、4-クロロ-3-フルオロベンゾイル、3-クロロ-4-トリフルオロメチルベンゾイルから選ばれる。
【0051】
d)R1は、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ドデカノイル、S,R-6-メチルオクタノイル(ラセミ混合物)、R-6-メチルオクタノイル、7-メチルオクタノイル、S-5-メチルヘプタノイル、R-5-メチルヘプタノイル、S,R-5-メチルヘプタノイル(ラセミ混合物)、4-ビフェニルカルボキシル、4-トリフルオロメチルベンゾイル、4-エチルベンゾイル、3,4-ジクロロベンゾイル、4-クロロベンゾイル、3-クロロベンゾイル、ペンタフルオロベンゾイル、4-メチルベンゾイル、4-エチルフェニルアセチル、フェニルアセチル、4-メチルフェニルアセチル、4-トリフルオロメチルフェニルアセチル、ペンタフルオロフェニルアセチル、3,4-ジクロロフェニルアセチル、4-クロロフェニルアセチル、および3-クロロフェニルアセチルから選ばれる。
【0052】
e)R2は、セリン、またはスレオニンから選択されるアミノ酸の側鎖を表す。
【0053】
f)R3は、ロイシン、フェニルアラニン、ノルロイシン、ノルバリン、またはt-ブチルグリシンから選ばれるアミノ酸の側鎖を表す。
【0054】
g)R4は、アラニン、スレオニン、セリン、バリン、t-ブチルグリシン、2-アミノ酪酸、または2-アミノイソ酪酸から選ばれるアミノ酸の側鎖を表す。
【0055】
h)R4は、アラニン、スレオニン、セリン、2-アミノ酪酸、または2-アミノイソ酪酸から選ばれるアミノ酸の側鎖を表す。
【0056】
i)Xは、ジアミノ酪酸、ジアミノプロピオン酸、リジン、またはオルニチンから選ばれるアミノ酸の側鎖の残基である。
【0057】
j)Xは、ジアミノ酪酸の側鎖の残基である。
【0058】
k)m、n、およびpは各々、2である。
【0059】
好ましい実施形態では、Xは、ジアミノ酪酸の側鎖残基であり、かつ、m、n、およびpは、2である。
【0060】
したがって、さらなる実施形態では、本発明は、式(1b)により表される式(Ia)の化合物、または医薬として許容され得るその塩を提供する。
【0061】
【0062】
〔式中、
R1は、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ドデカノイル、S,R-6-メチルオクタノイル(ラセミ混合物)、R-6-メチルオクタノイル、7-メチルオクタノイル、S-5-メチルヘプタノイル、R-5-メチルヘプタノイル、S,R-5-メチルヘプタノイル(ラセミ混合物)、4-ビフェニルカルボキシル、4-トリフルオロメチルベンゾイル、4-エチルベンゾイル、3,4-ジクロロベンゾイル、4-クロロベンゾイル、3-クロロベンゾイル、ペンタフルオロベンゾイル、4-メチルベンゾイル、4-エチルフェニルアセチル、フェニルアセチル、4-メチルフェニルアセチル、4-トリフルオロメチルフェニルアセチル、ペンタフルオロフェニルアセチル、3,4-ジクロロフェニルアセチル、4-クロロフェニルアセチル、3-クロロフェニルアセチル、2-クロロベンゾイル、2-フルオロベンゾイル、2-メチルベンゾイル、2-クロロフェニルアセチル、2-フルオロフェニルアセチル、2-メチルフェニルアセチル、2,3-ジクロロベンゾイル、2,3-ジメチルベンゾイル、2,4-ジクロロフェニルアセチル、2,4-ジクロロベンゾイル、2,4-ジメチルベンゾイル、2-クロロ-4-メチルベンゾイル、2-クロロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-フルオロベンゾイル、3-メチルベンゾイル、3-トリフルオロメチルベンゾイル、3,4-ジメチルベンゾイル、3-フルオロ-4-メチルベンゾイル、4-クロロ-3-メチルベンゾイル、3,4-ジメチルフェニルアセチル、3-クロロ-4-メチルベンゾイル、4-クロロ-3-フルオロベンゾイル、3-フルオロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-クロロ-4-フルオロベンゾイル、4-メチル-3-トリフルオロメチルベンゾイル、3-メチル-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-メチル-5-トリフルオロメチルベンゾイル、3,5-ジメチルベンゾイル、3,5-ジクロロベンゾイル、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイル、3-フルオロ-5-トリフルオロメチルベンゾイル、3-クロロ-5-メチルベンゾイル、3-クロロ-5-フルオロベンゾイル、2,4,6-トリメチルベンゾイル、2,4,6-トリクロロベンゾイル、2-クロロ-4-フルオロベンゾイル、4-クロロ-2-フルオロベンゾイル、3,4,5-トリフルオロメチルベンゾイル、4-クロロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル、2-フルオロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-ビフェニルカルボキシル、4-クロロ-ビフェニル-4-カルボキシル、3-フェニルプロポニル、4-フェニルブタノイル、2,4-ジクロロフェニルスルホニル、4-クロロ-3-トリフルオロメチルベンゾイル、4-イソプロピルベンゾイル、4-クロロ-3-フルオロベンゾイル、3-クロロ-4-トリフルオロメチルベンゾイルから選ばれ;
R2は、セリン、またはスレオニンから選択されるアミノ酸の側鎖を表し;
R3は、ロイシン、フェニルアラニン、ノルロイシン、ノルバリン、またはt-ブチルグリシンから選ばれるアミノ酸の側鎖を表し;
R4は、アラニン、スレオニン、セリン、バリン、t-ブチルグリシン、2-アミノ酪酸、または2-アミノイソ酪酸から選ばれるアミノ酸の側鎖を表し;ならびに
kは、1、2、または3である〕
【0063】
さらなる実施形態では、本発明は、式(IIb)により表される式(IIa)の化合物、または医薬として許容され得るその塩を提供する。
【0064】
【0065】
〔式中、
R1は、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ドデカノイル、S,R-6-メチルオクタノイル(ラセミ混合物)、R-6-メチルオクタノイル、7-メチルオクタノイル、S-5-メチルヘプタノイル、R-5-メチルヘプタノイル、S,R-5-メチルヘプタノイル(ラセミ混合物)、4-ビフェニルカルボキシル、4-トリフルオロメチルベンゾイル、4-エチルベンゾイル、3,4-ジクロロベンゾイル、4-クロロベンゾイル、3-クロロベンゾイル、ペンタフルオロベンゾイル、4-メチルベンゾイル、4-エチルフェニルアセチル、フェニルアセチル、4-メチルフェニルアセチル、4-トリフルオロメチルフェニルアセチル、ペンタフルオロフェニルアセチル、3,4-ジクロロフェニルアセチル、4-クロロフェニルアセチル、3-クロロフェニルアセチル、2-クロロベンゾイル、2-フルオロベンゾイル、2-メチルベンゾイル、2-クロロフェニルアセチル、2-フルオロフェニルアセチル、2-メチルフェニルアセチル、2,3-ジクロロベンゾイル、2,3-ジメチルベンゾイル、2,4-ジクロロフェニルアセチル、2,4-ジクロロベンゾイル、2,4-ジメチルベンゾイル、2-クロロ-4-メチルベンゾイル、2-クロロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-フルオロベンゾイル、3-メチルベンゾイル、3-トリフルオロメチルベンゾイル、3,4-ジメチルベンゾイル、3-フルオロ-4-メチルベンゾイル、4-クロロ-3-メチルベンゾイル、3,4-ジメチルフェニルアセチル、3-クロロ-4-メチルベンゾイル、4-クロロ-3-フルオロベンゾイル、3-フルオロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-クロロ-4-フルオロベンゾイル、4-メチル-3-トリフルオロメチルベンゾイル、3-メチル-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-メチル-5-トリフルオロメチルベンゾイル、3,5-ジメチルベンゾイル、3,5-ジクロロベンゾイル、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイル、3-フルオロ-5-トリフルオロメチルベンゾイル、3-クロロ-5-メチルベンゾイル、3-クロロ-5-フルオロベンゾイル、2,4,6-トリメチルベンゾイル、2,4,6-トリクロロベンゾイル、2-クロロ-4-フルオロベンゾイル、4-クロロ-2-フルオロベンゾイル、3,4,5-トリフルオロメチルベンゾイル、4-クロロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル、2-フルオロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-ビフェニルカルボキシル、4-クロロ-ビフェニル-4-カルボキシル、3-フェニルプロポニル、4-フェニルブタノイル、2,4-ジクロロフェニルスルホニル、4-クロロ-3-トリフルオロメチルベンゾイル、4-イソプロピルベンゾイル、4-クロロ-3-フルオロベンゾイル、3-クロロ-4-トリフルオロメチルベンゾイルから選ばれ;
R3は、ロイシン、フェニルアラニン、ノルロイシン、ノルバリン、またはt-ブチルグリシンから選ばれるアミノ酸の側鎖を表し;
R4は、アラニン、スレオニン、セリン、バリン、t-ブチルグリシン、2-アミノ酪酸、または2-アミノイソ酪酸から選ばれるアミノ酸の側鎖を表し;ならびに
kおよびqはそれぞれ、1、2、または3から選ばれる〕
【0066】
別の実施形態では、式(Ia)の化合物は、表1に列挙されるそれらの化合物から選ばれる。
【0067】
【0068】
a)R2、R3、R4およびXについて、これらの欄中に示されるアミノ酸は、これらの位置での側鎖および立体化学を示す;Dodec=ドデカノイル、4-BPC=4-ビフェニルカルボキシル、PA=フェニルアセチル、3-TFMB=3-トリフルオロメチルベンゾイル、Dab=ジアミノ酪酸、Nle=ノルロイシン、Abu=2-アミノ酪酸、Phe=フェニルアラニン、Thr=スレオニン、Ala=アラニン、Ser=セリン、Val=バリン。D-は、D-アミノ酸を示す。
【0069】
別の実施形態では、式(IIa)の化合物は、表2に列挙されるそれらの化合物から選ばれる。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
a)R3、R4およびXについて、これらの欄中に示されるアミノ酸は、これらの位置での側鎖および立体化学を示す;Dodec=ドデカノイル、4-BPC=4-ビフェニルカルボキシル、PA=フェニルアセチル、6-MH=6-メチルヘプタノイル、4-TFMPA=4-トリフルオロメチルフェニルアセチル、2-MB=2-メチルベンゾイル、3-MB=3-メチルベンゾイル、4-MB=4-メチルベンゾイル、3-F-4-MB=3-フルオロ-4-メチルベンゾイル、4-C-3-MB=4-クロロ-3-メチルベンゾイル、3-C-4-MB=3-クロロ-4-メチルベンゾイル、3-C-5-MB=3-クロロ-5-メチルベンゾイル、2-FPA=2-フルオロフェニルアセチル、3-TFMB=3-トリフルオロメチルベンゾイル、4-TFMB=4-トリフルオロメチルベンゾイル、2-C-4-TFMB=2-クロロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、4-C-3-TFMB=4-クロロ-3-トリフルオロメチルベンゾイル、3-C-4-TFMB=3-クロロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-F-4-TFMB=3-フルオロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-F-5-TFMB=3-フルオロ-5-トリフルオロメチルベンゾイル、4-M-3-TFMB=4-メチル-3-トリフルオロメチルベンゾイル、3-M-4-TFMB=3-メチル-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-M-5-TFMB=3-メチル-5-トリフルオロメチルベンゾイル、2-F-4-TFMB=2-フルオロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3,4,5-TFMB=3,4,5-トリフルオロメチルベンゾイル、4-C-2-TFMB=4-クロロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル、3,5-BTFMB=3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイル、2,4,6-TMB=2,4,6-トリメチルベンゾイル、2,3-DMB=2,3-ジメチルベンゾイル、2,4-DMB=2,4-ジメチルベンゾイル、3,4-DMB=3,4-ジメチルベンゾイル、3,5-DMB=3,5-ジメチルベンゾイル、2-C-4-MB=2-クロロ-4-メチルベンゾイル、4-EB=4-エチルベンゾイル、4-IPB=4-イソプロピルベンゾイル、2,4-DCPA=2,4-ジクロロフェニルアセチル、3,4-DCPA=3,4-ジクロロフェニルアセチル、2-CPA=2-クロロフェニルアセチル、3-CPA=3-クロロフェニルアセチル、4-CPA=4-クロロフェニルアセチル、2-CB=2-クロロベンゾイル、3-CB=3-クロロベンゾイル、4-CB=4-クロロベンゾイル、2,3-DCB=2,3-ジクロロベンゾイル、2,4-DCB=2,4-ジクロロベンゾイル、3,4-DCB=3,4-ジクロロベンゾイル、3,5-DCB=3,5-ジクロロベンゾイル、2,4,6-TCB=2,4,6-トリクロロベンゾイル、2-FB=2-フルオロベンゾイル、3-FB=3-フルオロベンゾイル、2-C-4-FB=2-クロロ-4-フルオロベンゾイル、3-C-4-FB=3-クロロ-4-フルオロベンゾイル、3-C-5-FB=3-クロロ-5-フルオロベンゾイル、4-C-2-FB=4-クロロ-2-フルオロベンゾイル、4-C-3-FB=4-クロロ-3-フルオロベンゾイル、2-MPA=2-メチルフェニルアセチル、4-MPA=4-メチルフェニルアセチル、3,4-DMPA=3,4-ジメチルフェニルアセチル、(S,R)-6-MO=(S,R)-6-メチルオクタノイル、3-BPC=3-ビフェニルカルボキシル、4-Cl-BP-4-C=4-クロロ-ビフェニル-4-カルボキシル、3-PP=3-フェニルプロポニル、4-PB=4-フェニルブタノイル、2,4-DCPS=2,4-ジクロロフェニルスルホニル、Dab=ジアミノ酪酸、Tle=t-ブチルグリシン、Aib=アミノイソ酪酸、Abu=2-アミノ酪酸、Phe=フェニルアラニン、Thr=スレオニン、Ala=アラニン、Ser=セリン、Val=バリン、Nva=norバリン、Nle=ノルロイシン。D-は、D-アミノ酸を示す。
【0076】
別の好ましい実施形態では、本明細書中に規定されるような式(I)および/または式(II)の1以上の化合物を治療有効量において投与することを含む、MDRグラム陰性細菌感染の予防または治療方法が提供される。
【0077】
したがって、さらなる好ましい実施形態では、MDRグラム陰性細菌感染の予防または治療における使用のための、本明細書中に規定されるような式(I)および/または(II)の1以上の化合物が提供される。
【0078】
多剤耐性であるグラム陰性細菌について、細菌は、3以上の抗菌カテゴリーにおける少なくとも1つの薬剤に対して非感受性であろうことが理解されるであろう。2以下の抗菌カテゴリーを除く全ての抗菌カテゴリーにおける少なくとも1つの薬剤に非感受性であるグラム陰性細菌は、広範に、または極端には、薬剤耐性(XDR)として分類されている。全ての抗菌カテゴリーにおける全ての薬剤に非感受性であるグラム陰性細菌は、「汎薬物(pandrug)耐性」(PDR)として分類される。(Magiorakos, A. P. et al. (2011) European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases, Clin Microbiol Infect, 18, 268-281)。表3は、抗菌カテゴリーの各々の範囲内にある抗菌剤の一覧表を提供する。
【0079】
【0080】
それを必要とする被験体においてグラム陰性細菌感染を治療するために、本明細書中に記載されるような式(I)の1以上の化合物、または本明細書中に記載されるような式(II)の1以上の化合物を被験体に投与することが有益であり得ることが理解されるであろう。一実施形態では、グラム陰性細菌の治療は、式(I)の化合物をそれを必要とする被験体に投与することを含むであろうことが想定される。また、グラム陰性細菌感染の治療は、式(II)の化合物をそれを必要とする被験体に投与することを含むであろうことが想定される。
【0081】
現在の臨床用途におけるポリミキシンアナログに関連する腎毒性の副作用を最小にし、かつ、広範なスペクトルのグラム陰性細菌に対する化合物の効力を維持または改善するために、本発明の2以上の化合物の組み合わせをそれを必要とする被験体に投与することが有益であり得ることが理解されるであろう。一実施形態では、グラム陰性細菌感染の治療は、式(I)の2以上の化合物をそれを必要とする被験体に投与することを含むであろうことが想定される。また、グラム陰性細菌感染の治療は、式(II)の2以上の化合物をそれを必要とする被験体に投与することを含むであろうことが想定される。他の実施形態では、グラム陰性細菌感染の治療は、式(I)の1以上の化合物を式(II)の1以上の化合物と共にそれを必要とする被験体に投与することを含むであろうことが想定される。さらなる実施形態では、グラム陰性細菌感染の治療は、天然に生じるポリミキシンアナログであるポリミキシンD1/D2の一方または双方をそれを必要とする被験体に投与することを含むであろうことが想定される(それぞれ化合物150および151)。別の実施形態では、グラム陰性細菌感染の治療は、天然に生じるポリミキシンアナログであるポリミキシンM1/M2の一方または双方をそれを必要とする被験体に投与することを含むであろうことが想定される(それぞれ化合物152および153)。
【0082】
好ましい実施形態では、グラム陰性細菌感染の予防または治療のための医薬の製造における、本明細書中の先に規定されるような式(Ia)および/または(IIa)の1以上の化合物の使用が提供される。
【0083】
さらに好ましい実施形態では、グラム陰性細菌感染の予防または治療における使用のための、本明細書中の先に規定されるような式(Ia)および/または(IIa)の1以上の化合物が提供される。
【0084】
ポリミキシンDおよびMは、ポリミキシンBおよびコリスチンの様に、発酵から得られる密接に関連したペプチドの混合物である(表4)。しかしながら、ポリミキシンBおよびコリスチンとは異なり、発酵から得られるポリミキシンDおよびM混合物の成分は、良く特徴付けられていない。現在までに、ポリミキシンD調製物中で同定された成分は、ポリミキシンD1およびD2である一方で、ポリミキシンMについては、成分は、ポリミキシンM1およびM2である(Kimura,Y.,et al.(1981),J.Chromatography,206,563-572;Orwa,J.A.,et al.(2001) J.Chromatography A.912,369-373;Govaerts,C.,et al.(2002)J.Chromatography A.976,65-78)。それらの把握されている腎毒性の副作用のために、ポリミキシンDおよびM混合物、またはそれの個々の成分は、グラム陰性細菌感染、特に、MDRグラム陰性細菌感染の臨床的な治療における用途を見出されていない(Bryer,M.S., et al.(1949)Ann.N.Y.Acad.Sci.,51,935-943;Brownlee,G.,et.Al.(1949)Ann.N.Y.Acad.Sci.,51,952-957;Filippos’yan,S.T.Antibiotiki,(1969)14,5,459-463)。
【0085】
【0086】
しかしながら、本発明者らは、個々の成分ポリミキシンD1/D2およびポリミキシンM1/M2に関連して把握されている腎毒性が不当であることを見出した。理論に拘束されることを望まないが、これは、初期の毒性試験が、化学的な組成および純度の観点から良く特徴付けされていなかったポリミキシンD混合物およびポリミキシンM混合物のサンプルに対して行われたものであり、全有機合成により得られた個々の成分の純粋なサンプル、または発酵産物を広範に精製することにより得られる純粋なサンプルに対して行われたものではなかったという事実に起因し得ると考えられる(Bell.P.H.およびBone J.F.,(1949)Ann.N.Y.Acad.Sci.,51,897-908;Bryer,M.S.,et al.(1949)Ann.N.Y.Acad.Sci.,51,935-943;Brownlee,G.,et.Al.(1949)Ann.N.Y.Acad.Sci.,51,952-957)。本発明者らは、個々の成分であるポリミキシンD2およびポリミキシンM2の純粋な単離物が試験されたインビボ腎毒性モデルにおいて如何なる有意な腎毒性も示さなかったことを発見した。個々の成分であるポリミキシンD1およびポリミキシンM1の純粋な単離物は、幾らかの腎毒性を示したが、臨床的に利用可能なポリミキシンBおよびコリスチンと比較して改善された腎毒性プロフィールを有する。
【0087】
ポリミキシンコアの3番目、6番目および7番目の位置でのアミノ酸残基の所定の組み合わせは、N末端の脂肪アシル基の選択と共に、化合物の抗菌効力を維持または改善しつつ、ポリミキシンBまたはコリスチンに対する得られた化合物の腎毒性を低減できることが今や見出された。理論により拘束されることを望まないが、より低疎水性の残基による、ポリミキシン化合物中の6番目および7番目の残基の一方または双方の置換は、腎毒性レベルを低減できると考えられる。また、3番目の位置の所定のアミノ酸残基および所定のN末端の脂肪アシル基の選択は、化合物のコンホメーション全体に対してこれらの基が有する効果に起因して、得られた化合物の腎毒性を低減すると考えられる。コンホメーションにおける変化は、腎毒性を引き起こす生理学的事象を誘発する分子標的との鍵となる相互作用を生じる化合物の能力と干渉すると考えられる。
【0088】
一般に、本発明の化合物を調製するための技術は、当該分野で周知である。例えば、以下を参照のこと:
a)Alewood,P.;Alewood,D.;Miranda,L.;Love,S.;Meutermans,W.;Wilson,D.(1997)Meth.Enzymol.,289,14-28;
b)Merrifield,R.B.(1964)J.Am.Chem.Soc.,85,2149;
c)Bodanzsky,「Principles of Peptide Synthesis」,第2版,Springer-Verlag(1993);および
d)Houghten,(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,5131.
【0089】
合成ポリミキシン型化合物に特に関連性があるものは、以下である:Sharma,S.K.,et al.(1999)J.Pept.Res.53,501-506;Kline,T.,Holub,D.,Therrien,J.et al.(2001)J.Pept.Res.57,175-187;de Visser,P.C.,et al.(1999)J.Pept.Res.61,298-306;Sukura,N., et al.(2004)Bull.Chem.Soc.Jpn.77,1915-1924;およびVaara,M.,Fox,J.,Loidl,G.,Siikanen,O.et al.(2008)Antimicrob.Agents Chemother.52(9),3229-3236。これらの文献の内容全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0090】
既知の固相または液相技術(例えば、固相へのNまたはC末端のカップリング(典型的には、樹脂)、続いて線状ペプチドの段階的合成)は、本発明の化合物の合成に使用されてもよい。直交性(orthogonal)保護基戦略を使用して、選択的脱保護および環化を容易にすることにより、化合物の環状ヘプタペプチドコアを形成してもよい。側鎖を含む、アミノ酸残基の保護のための保護基化学は、当該分野において周知であり、例えば、Theodora W. Greene and Peter G. M. Wuts, Protecting Groups in Organic Synthesis (第3版,John Wiley & Sons,Inc,1999)(この内容全体は参照により本明細書中に援用される)中に見出され得る。
【0091】
一般戦略として、本発明の化合物の合成は、4つの段階において実施されてもよい。第1の段階では、アミノ酸は、化合物中への組込みのために保護されてもよい(例、Fmoc-イソロイシンとしてのイソロイシンの保護)。第2に、環化に必要とされる官能基のみを選択的に露出する部分的に保護された線状ペプチドは、固相技術を用いて合成されてもよい。第3に、環化反応は、保護された環状リポペプチドを製造するために溶液中で行われてもよい。第4に、残存する側鎖の保護基は、化合物を提供するために脱保護されてもよい。
【0092】
本発明の化合物が精製を必要とする場合、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および逆相HPLC等のクロマトグラフィー技術が、使用されてもよい。ペプチドは、質量分析および/または他の適切な方法により特徴付けられてもよい。
【0093】
化合物が(例えば、生理学的pHにて)プロトン化または脱プロトン化され得る1以上の官能基を含む場合、化合物は、医薬として許容され得る塩として調製および/または単離されてもよい。化合物は、所定のpHにて両性イオン性であってもよいことが理解されるであろう。本明細書中で使用される場合、表現「医薬として許容され得る塩」とは、所定の化合物の塩であって、塩が医薬としての投与のために適切であるものをいう。このような塩は、例えば、酸またはアミノ酸をそれぞれアミンまたはカルボン酸基と反応させることにより、形成されてもよい。
【0094】
医薬として許容され得る酸付加塩は、無機および有機酸から調製されてもよい。無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。有機酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイヒ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。
【0095】
医薬として許容され得る塩基付加塩は、無機および有機塩基から調製されてもよい。無機塩基に由来する対応する対イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、およびマグネシウム塩が挙げられる。有機塩基としては、一級、二級および三級アミン、天然に生じる置換アミンを含む置換アミン、ならびに環状アミンが挙げられ、これらのアミンには、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラブミン(hydrabamine)、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N-アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、およびN-エチルピペリジンが挙げられる。
【0096】
酸/塩基付加塩は、対応する遊離酸/塩基形態よりも、水性溶媒中で、より可溶性である傾向がある。
【0097】
本発明の化合物は、結晶形態において、または溶媒和物(例、水和物)としてであってもよく、双方の形態が本発明の範囲内であることが意図される。用語「溶媒和物」は、溶質(本発明では、本発明のペプチド)および溶媒により化学両論的に形成される変動性の複合体である。このような溶媒は、溶質の生物学的活性と干渉しないはずである。溶媒は、例として、水、エタノールまたは酢酸であってもよい。溶媒化の方法は、当該分野内において一般的に知られている。
【0098】
本発明の化合物は、プロドラッグの形態であってもよい。用語「プロドラッグ」は、その最も広い意味で使用され、本発明のペプチドにインビボで変換されるそれらの誘導体を包含する。このような誘導体は、当該分野における当業者に容易に想起されるものであり、例えば、遊離ヒドロキシ基がエステル誘導体に変換されるか、または環窒素原子がN-オキシドに変換される化合物が挙げられる。エステル誘導体の例としては、アルキルエステル(例えば、酢酸エステル、乳酸エステル、グルタミン)、リン酸エステル、およびアミノ酸から形成されるもの(例えば、バリン)が挙げられる。本発明の化合物のプロドラッグである任意の化合物は、本発明の範囲および精神内にある。本発明の適切なプロドラッグの調製のための従来手法は、「Design of Prodrugs」 H.Bundgaard編,Elsevier,1985(その内容全体は、参照により本明細書中に援用される)等の書籍に記載されている。
【0099】
本発明はまた、治療有効量における、本明細書中の先に規定されるような化合物、または医薬として許容され得るその塩、および医薬として許容され得る少なくとも1つの担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0100】
用語「組成物」は、活性成分(他の担体を伴う、または伴わない)が担体により覆われているカプセルを生じる、担体として封入性材料を伴う活性成分の処方物を含むことが意図される。
【0101】
本明細書中の先に記載されるような化合物、または医薬として許容され得るその塩は、被験体に投与される唯一の活性成分であってもよいものの、化合物との他の活性成分の投与は、本発明の範囲内にある。1以上の実施形態では、本発明の2以上の化合物の組み合わせは、被験体に投与されるであろうことが想定される。化合物はまた、1以上のさらなる治療剤と組み合わせて投与されることが想定される。本組み合わせは、本明細書中の先に記載されるような化合物を他の活性成分と分離的、逐次的、または同時に投与することを可能にし得る。本組み合わせは、医薬組成物の形態において提供されてもよい。
【0102】
本明細書中で使用される場合、用語「組み合わせ」とは、上記で規定されるような組み合わせパートナーが従属的もしくは独立的に投薬され得るか、あるいは区別される量の組み合わせパートナーでの異なる固定された組み合わせの使用(すなわち、同時に、または異なる時点)による組成物またはキットをいう。次いで、組み合わせパートナーは、例えば、同時に投与されるか、または経時的に調整される(すなわち、キットの任意の部分について、等しい、または異なる時間間隔による異なる時点である)。本組み合わせにおいて投与されるべき組み合わせパートナーの総量の比率は、例えば、治療されるべき患者の亜集団の要求、または異なる要求が患者の年齢、性別、体重などに起因し得る単一患者の要求に対処するために、変動され得る。
【0103】
当業者により容易に理解されるように、投与の経路、および医薬として許容され得る担体の性質は、治療されるべき状態および哺乳動物の性質に依存するであろう。特定の担体または送達系の選択、ならびに投与の経路は、当業者により容易に決定され得る。活性化合物を含有する任意の処方物の調製では、化合物の活性がプロセス中で破壊されないこと、および化合物が破壊されることなくその作用部位に到達できることを保証するように配慮されるべきである。幾つかの状況では、例えば、マイクロカプセル化等の当該分野で既知である手段により化合物を保護することが必要であり得る。同様に、選択される投与の経路は、化合物がその作用部位に到達するようにされるべきである。
【0104】
当業者は、従来のアプローチを用いて、本発明の化合物について適切な処方を容易に決定し得る。好ましいpH範囲および適切な賦形剤(例えば、抗酸化剤)の特定は、当該分野において慣用的である。緩衝系は、所望の範囲のpH値を提供するために慣用的に使用されており、カルボン酸緩衝液、例えば、酢酸、クエン酸、乳酸、およびコハク酸が挙げられる。種々の抗酸化剤が、このような処方に利用可能であり、BHTまたはビタミンE等のフェノール性化合物、メチオニンまたは亜硫酸塩等の還元剤、およびEDTAの金属キレート剤が挙げられる。
【0105】
本明細書中の先に記載されるような化合物、または医薬として許容され得るその塩は、非経口投薬形態において調製されてもよい。このような形態としては、例えば、静脈内、くも膜下腔内、および脳内または硬膜外送達が挙げられる。注射用途のために適切である医薬形態としては、滅菌注射溶液または分散液、および滅菌注射溶液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。それらは、製造および保存の条件下で安定であるべきであり、還元または酸化、および細菌または真菌等の微生物の汚染作用に対して保存されてもよい。
【0106】
注射溶液または分散液のための溶媒または分散媒体は、活性化合物のための従来の溶媒または担体系のいずれを含有していてもよく、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、および植物油を含有していてもよい。適切な流動性は、例えば、レシチン等の被覆の使用により、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。微生物の作用の予防は、必要に応じて、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどを含有させることにより、もたらすことができる。多くの場合、薬剤(例えば、糖または塩化ナトリウム)を含めることにより、オスモル濃度を調整することが好ましいであろう。好ましくは、注射のための処方物は、血液と等張であろう。注射用組成物の吸収の延長は、吸収遅延剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、およびゼラチン)の組成物中での使用により、もたらすことができる。注射用途に適切な医薬形態は、静脈内、筋肉内、脳内、くも膜下腔内、硬膜外の注射および注入を含む任意の適切な経路により送達されてもよい。
【0107】
滅菌注射溶液は、必要量における本発明の化合物を、上記で列挙された成分等の種々の他の成分と共に適切な溶媒中に組み込み、必要に応じて、続いて濾過滅菌することにより調製される。一般に、分散液は、種々の滅菌活性成分を、塩基性分散媒体、および上記で列挙された成分のうち必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことにより調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合には、調製の好ましい方法は、活性成分および任意のさらなる所望の成分の溶液を予め滅菌したものの真空乾燥または凍結乾燥である。
【0108】
他の医薬形態としては、本発明の経口および経腸処方物が挙げられ、この処方物では、
活性化合物が不活性な希釈剤と共に、もしくは吸収可能である食用担体と共に処方されていてもよく、またはそれが硬殻性もしくは軟殻性ゼラチンカプセル中に封入されていてもよく、またはそれが圧縮されて錠剤とされてもよく、またはそれが飲食物の食品と共に直接的に取り込まれていてもよい。経口治療投与について、活性化合物は、賦形剤と共に取り込まれてもよく、摂取可能な錠剤、バッカルまたは舌下錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハース等の形態において使用されてもよい。このような治療に有用な組成物の活性化合物の量は、適切な投薬量が得られるであろうものである。
【0109】
錠剤、トローチ、ピル、カプセル等はまた、本明細書以降に列挙されるような成分を含有していてもよい:ゴム、アカシア、コーンスターチ、またはゼラチン等の結合剤;リン酸二カルシウム等の賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;およびスクロース、ラクトース、またはサッカリン等の甘味剤、あるいはペパーミント、ウインターグリーン油、またはサクランボ矯味矯臭剤等の矯味矯臭剤が添加されてもよい。投薬単位形態がカプセルである場合、それは、上記の型の材料に加えて、液体担体を含有していてもよい。種々の他の材料は、被覆として、またはそれ以外では、投薬単位の物理形態を修飾するために存在していてもよい。例えば、錠剤、ピル、またはカプセルは、シェラック、糖、またはその双方で被覆されていてもよい。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、色素、およびサクランボまたはオレンジ矯味矯臭剤等の矯味矯臭剤を含有していてもよい。勿論、任意の投薬単位形態の調製に使用される任意の材料は、医薬として純粋であり、かつ、採用される量において実質的に非毒性であるべきである。また、本発明の化合物は、徐放性調製物および処方物中に組み込まれてもよく、このような調製物および処方物としては、腸の特定領域への活性ペプチドの特定送達を可能にするものが挙げられる。
【0110】
液体処方物はまた、胃または食道チューブを介して、経腸的に投与されてもよい。経腸処方物は、乳化基剤または水溶性基剤等の適切な基剤を混合することにより坐剤の形態において調製されてもよい。本発明の化合物を局所的、鼻腔内、膣内、眼内等に投与することもまた可能であるが、必ずしも必要ない。
【0111】
本発明の化合物は、二酸化炭素気体、ジクロロジフルオロメタン、窒素、プロパン、または他の適切な気体、あるいは気体の組み合わせ等の噴霧剤を含有する、加圧したディスペンサーまたは容器からのエアロゾルスプレーの形態における吸入により投与されてもよい。化合物はまた、噴霧器を用いて投与されてもよい。
【0112】
改善された腎毒性プロフィールを有する本発明の化合物は、化合物が経腸的または非経口的に、例えば、経口的、静脈内、または筋肉内に投与される場合、特に有用である。
【0113】
医薬として許容され得るビヒクルおよび/または希釈剤としては、任意かつ全ての溶媒、分散媒体、被覆、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤等が挙げられる。医薬として活性な物質のためのこのような媒体および剤の使用は、当該分野において周知である。任意の従来の媒体または剤が活性成分と不適合性である場合を除き、治療組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性成分もまた、組成物中へと組み込むことができる。
【0114】
投与の容易および投薬量の均一性のため、組成物を投薬単位形態に処方することも特に有利である。本明細書中で使用される場合、投薬単位形態とは、治療されるべき哺乳動物被験体のための単一投薬として適している物理的に個別の単位をいう;各単位は、必要とされる医薬として許容され得るビヒクルに関連して所望の治療効果を生じるように算出された所定の量の活性材料を含有する。本発明の新規な投薬単位形態についての詳細は、(a)活性材料の独特な特徴、および達成されるべき特定の治療効果、ならびに(b)本明細書中で詳細に開示されるような身体上の健康が損なわれている疾患状態を有する、生きている被験体における疾患の治療のために活性材料を構成する当該分野に固有の制限により決定され、そして直接的に依存する。
【0115】
上述したように、主たる活性成分は、投薬単位形態において、適切な医薬として許容され得るビヒクルと共に、治療有効量において簡便かつ効果的な投与のために構成されてもよい。単位投薬形態は、例えば、0.25μg~約2000mgの範囲にある量において、主たる活性化合物を含有する。割合で表すと、活性化合物は、約0.25μg~約2000mg/mLの担体中に存在していてもよい。補助的な活性成分を含有する組成物の場合、投薬量は、当該成分の投与の通常の用量および様式を参照することにより決定される。
【0116】
本明細書中で使用される場合、用語「有効量」とは、所望の投薬レジメにしたがい投与される場合、所望の治療活性を提供する化合物量をいう。投薬は、一度に、または分もしくは時間の間隔にて、あるいはこれらの期間のいずれか一部にわたって連続的になされてもよい。適切な投薬量は、1回の投薬あたり約0.1ng/体重1kg~1g/体重1kgの範囲内にあってもよい。典型的な投薬量は、1回の投薬あたり1μg~1g/体重1kgであり、例えば、1回の投薬あたり1mg~1g/体重1kgである。一実施形態では、投薬量は、1回の投薬あたり1mg~500mg/体重1kgの範囲内であってもよい。別の実施形態では、投薬量は、1回の投薬あたり1mg~250mg/体重1kgであってもよい。さらに別の実施形態では、投薬量は、1回の投薬あたり1mg~100mg/体重1kgであってもよく、例えば、1回の投薬あたり50mg/体重までの量である。
【0117】
本明細書中で使用される場合、用語「治療(treatment)」および「治療(treating)」は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける状態または疾患の任意の治療を包含するものであり、(i)細菌感染を阻害すること(例、その増殖を停止させること);(ii)感染を緩和すること(例、感染の重篤度における低下を引き起こすこと);または(iii)感染により引き起こされる状態(例、感染の症状)を緩和することを含む。本明細書中で使用される場合、用語「予防(prevention)」および「予防(preventing)」は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける状態または疾患の予防(prevention)または予防(prophylaxis)を包含するものであり、感染し易いかもしれないが、感染していると未だ診断されていない被験体において細菌感染が生じることを予防することを含む。
【0118】
幾つかの実施形態では、グラム陰性細菌感染は、1以上の属:アシネトバクター(Acinetobacter);アクチノバシラス(Actinobacillus);バルトネラ(Bartonella);ボルデテラ(Bordetella);ブルセラ(Brucella);バークホルデリア(Burkholderia);カンピロバクター(Campylobacter);シアノバクテリア(Cyanobacteria);エンテロバクター(Enterobacter);エルウィニア(Erwinia);エシェリキア(Escherichia);フランシセラ(Francisella);ヘリコバクター(Helicobacter);ヘモフィラス(Hemophilus);クレブシエラ(Klebsiella);レジオネラ(Legionella);モラキセラ(Moraxella);モルガネラ(Morganella);ナイセリア(Neisseria);パスツレラ(Pasteurella);プロテウス(Proteus);プロヴィデンシア(Providencia);シュードモナス(Pseudomonas);サルモネラ(Salmonella);セラチア(Serratia);シゲラ(Shigella);ステノトロホモナス(Stenotrophomonas);トレポネマ(Treponema);ビブリオ(Vibrio);およびエルシニア(Yersinia)から選ばれる1以上の種により引き起こされてもよい。種の特定の例は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、大腸菌(Escherichia coli)、およびサルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)である。
【0119】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照して、今や記載されるであろう。
【実施例】
【0120】
実施例1:一般式(I)および(II)の化合物の調製方法
以下の例は、本発明の代表であり、本発明の例示的な化合物の詳細な調製方法を提供する。
【0121】
【0122】
保護された線状ペプチド(残基1~10およびN末端キャップ)の合成は、標準的なFmoc固相ペプチド化学を用いて、Protein Technologies Prelude自動化ペプチド合成機で行った。
【0123】
具体的には、Fmoc-Thr(tBu)-OH(0.1mmolスケール)を予め充填したTCP-樹脂を用いて、合成に着手した。Fmoc-アミノ酸のカップリングを、デフォルトの機器プロトコル(DMF中における3モル当量(樹脂充填に対する)のFmocアミノ酸およびHCTUを、6モル当量のDIPEAを用いてインサイチュで活性化)を用いて行った。これを、室温で50分間行った。Fmoc脱保護を、デフォルトの機器プロトコル(ジメチルホルムアミド(1×5分,1×10分)中における20%ピペリジンを室温にて)を用いて行った。樹脂をDMFで洗浄し、次いでDMF中において3%ヒドラジンで処理して(4×15分)、ivDde基を除去した。
【0124】
保護された線状ペプチドを、DCM中の10~20%ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)で樹脂を処理することにより(1×30分,1×5分)、樹脂から切り出した。得られた溶液を、真空中で濃縮し、得られた残渣(保護された粗線状ペプチド)をDMF(10mL)中に溶解させ、それにDPPA(0.3mmol,0.65mL,樹脂の充填に対して3当量)およびDIPEA(0.6mmol,104μL、樹脂の充填に対して6モル当量)を添加した。この溶液を室温で一晩撹拌した。次いで、反応溶液を真空下で一晩濃縮した。得られた残渣を2.5% EDT,5% TIPSのTFA溶液中に採り、室温で2時間撹拌した。この溶液に、40mLのジエチルエーテルを添加した。得られた沈殿物を遠心分離により回収し、ジエチルエーテル(40mL)で2回よりも多く洗浄し、次いで、ドラフト(fume food)中で風乾させて、白色固体として粗環状ペプチドを得た。得られた固体を、Mili-Q水(5mL)中に採り、Vari-Pure IPE SAXカラムを用いて脱塩した。
【0125】
粗環状ペプチドを、Phenomenex Axiaカラム(Luna C8(2),50×21.3mm ID)を用いて、光ダイオードアレイ検出器(214nm)を備えたAgilent 1200 クォータナリポンプシステムに対する逆相HPLC(RP-HPLC)により精製した。60分にわたる0.1%水性TFA中での60%アセトニトリルの勾配を、5mL/分の流速で採用した。回収した画分を、電気スプレーイオン化源および単一の四重極質量分析機に直接連結された光ダイオードアレイ検出器(214nm)を組み込んでいる島津2020 LCMSシステムを用いて解析した。Phenomenexカラム(Luna C8(2),100×2.0mm ID)を採用して、0.2mL/分の流速にて10分にわたり、0.05%水性TFA中の80%アセトニトリルの勾配で溶出させて、RP-HPLCを行った。質量スペクトルを、200~2,000m/zの走査範囲でポジティブイオンモードにおいて取得した。合わせた画分を2日間凍結乾燥させて、42.9mgの収率において白色TFA塩として化合物1を得た。214nmにてRP-HPLCにより見積もったところ、純度は99.7%であった。ESI-MS解析:m/z(モノアイソトピック):[M+2H]2+ 566.15により、化合物が、正しい分子量(1130.2)を有することが確認された。
【0126】
この代表的な合成が、本明細書中に記載される広範な化合物の合成に適用されてもよいことが理解されるであろう。例えば、代表的な合成は、本明細書中に記載されるような、ならびに以下の表5および6に列挙される化合物2~153の合成に適用されてもよい。
【0127】
【0128】
【0129】
a)R2、R3、R4、およびXについて、これらの欄に示されるアミノ酸は、これらの位置での側鎖および立体化学を示す;Dodec=ドデカノイル、3-TFMB=3-トリフルオロメチルベンゾイル、(S)-6-MO=(S)-6-メチルオクタノイル、6-MH=6-メチルヘプタノイル、Dab=ジアミノ酪酸、Phe=フェニルアラニン、Thr=スレオニン、Ala=アラニン、Ser=セリン、Val=バリン、Nle=ノルロイシン、Abu=2-アミノ酪酸、D-は、D-アミノ酸を示す。
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
R3、R4、およびXについては、これらの欄に示されるアミノ酸は、これらの位置での側鎖および立体化学を示す;Dodec=ドデカノイル、4-BPC=4-ビフェニルカルボキシル、PA=フェニルアセチル、6-MH=6-メチルヘプタノイル、4-TFMPA=4-トリフルオロメチルフェニルアセチル、2-MB=2-メチルベンゾイル、3-MB=3-メチルベンゾイル、4-MB=4-メチルベンゾイル、3-F-4-MB=3-フルオロ-4-メチルベンゾイル、4-C-3-MB=4-クロロ-3-メチルベンゾイル、3-C-4-MB=3-クロロ-4-メチルベンゾイル、3-C-5-MB=3-クロロ-5-メチルベンゾイル、2-FPA=2-フルオロフェニルアセチル、3-TFMB=3-トリフルオロメチルベンゾイル、4-TFMB=4-トリフルオロメチルベンゾイル、2-C-4-TFMB=2-クロロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、4-C-3-TFMB=4-クロロ-3-トリフルオロメチルベンゾイル、3-C-4-TFMB=3-クロロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-F-4-TFMB=3-フルオロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-F-5-TFMB=3-フルオロ-5-トリフルオロメチルベンゾイル、4-M-3-TFMB=4-メチル-3-トリフルオロメチルベンゾイル、3-M-4-TFMB=3-メチル-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3-M-5-TFMB=3-メチル-5-トリフルオロメチルベンゾイル、2-F-4-TFMB=2-フルオロ-4-トリフルオロメチルベンゾイル、3,4,5-TFMB=3,4,5-トリフルオロメチルベンゾイル、4-C-2-TFMB=4-クロロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル、3,5-BTFMB=3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイル、2,4,6-TMB=2,4,6-トリメチルベンゾイル、2,3-DMB=2,3-ジメチルベンゾイル、2,4-DMB=2,4-ジメチルベンゾイル、3,4-DMB=3,4-ジメチルベンゾイル、3,5-DMB=3,5-ジメチルベンゾイル、2-C-4-MB=2-クロロ-4-メチルベンゾイル、4-EB=4-エチルベンゾイル、4-IPB=4-イソプロピルベンゾイル、2,4-DCPA=2,4-ジクロロフェニルアセチル、3,4-DCPA=3,4-ジクロロフェニルアセチル、2-CPA=2-クロロフェニルアセチル、3-CPA=3-クロロフェニルアセチル、4-CPA=4-クロロフェニルアセチル、2-CB=2-クロロベンゾイル、3-CB=3-クロロベンゾイル、4-CB=4-クロロベンゾイル、2,3-DCB=2,3-ジクロロベンゾイル、2,4-DCB=2,4-ジクロロベンゾイル、3,4-DCB=3,4-ジクロロベンゾイル、3,5-DCB=3,5-ジクロロベンゾイル、2,4,6-TCB=2,4,6-トリクロロベンゾイル、2-FB=2-フルオロベンゾイル、3-FB=3-フルオロベンゾイル、2-C-4-FB=2-クロロ-4-フルオロベンゾイル、3-C-4-FB=3-クロロ-4-フルオロベンゾイル、3-C-5-FB=3-クロロ-5-フルオロベンゾイル、4-C-2-FB=4-クロロ-2-フルオロベンゾイル、4-C-3-FB=4-クロロ-3-フルオロベンゾイル、2-MPA=2-メチルフェニルアセチル、4-MPA=4-メチルフェニルアセチル、3,4-DMPA=3,4-ジメチルフェニルアセチル、(S,R)-6-MO=(S,R)-6-メチルオクタノイル、(S)-6-MO=(S)-6-メチルオクタノイル、3-BPC=3-ビフェニルカルボキシル、4-Cl-BP-4-C=4-クロロ-ビフェニル-4-カルボキシル、3-PP=3-フェニルプロポニル、4-PB=4-フェニルブタノイル、2,4-DCPS=2,4-ジクロロフェニルスルホニル、Dab=ジアミノ酪酸、Tle=t-ブチルグリシン、Aib=アミノイソ酪酸、Abu=2-アミノ酪酸、Phe=フェニルアラニン、Thr=スレオニン、Ala=アラニン、Ser=セリン、Val=バリン、Nva=ノルバリン、Nle=ノルロイシン、Orn=オルニチン、D-は、D-アミノ酸を示す。
【0141】
実施例2.最小阻害濃度(MIC)の測定
リポペプチド(トリフルオロ酢酸塩,TFA)のMICを、Clinical and Laboratory Standards Institute標準(Clinical and Laboratory Standards Institute.Performance standards for antimicrobial susceptibility testing;eighteenth informational supplement M100-S18.Wayne,PA,2008)にしたがって、カチオン調整Mueller-Hintonブロス(CAMHB)(Oxoid Australia,Thebarton,SA,Australia)におけるブロス微量希釈により決定した。ポリミキシンB(サルフェート)を、コントロールとして採用した。グラム陰性細菌として、(1)緑膿菌(3種のポリミキシン感受性単離株);(2)アクチノバクター・バウマンニ(3種のポリミキシン感受性単離株);(3)肺炎桿菌(2種のポリミキシン感受性単離株);(4)エンテロバクター・クロアカ(3種のポリミキシン感受性単離株)について、化合物1~153、および1:1の組み合わせの化合物1および20に対して試験した。結果を表7に示す。
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
上記データから明らかであるように、例示した化合物は、1以上の上記グラム陰性細菌単離株に対して同等または改善した抗菌効力を有する。
【0148】
実施例3.マウス血液感染モデルにおけるインビボ効力
緑膿菌ATCC 27853、アクチノバクター・バウマンニATCC 19606、および肺炎桿菌FADDI-KP032を、栄養寒天プレート上で継代した。各細菌株の1つのコロニーを、10mL CAMHB中に分散させ、一晩インキュベートした。2日目に、各一晩培養物のアリコート(0.2mL)を20mL CAMHB中に分散させ、log相増殖細菌培養物の生産のために1.5~2.5時間インキュベートした。初期log相増殖懸濁液中の細菌を遠心分離(3,220gで10分間)により濃縮し、マウスへの接種のため滅菌0.9%生理食塩水中に再懸濁させた。生理食塩水中の細菌細胞濃度(コロニー形成単位[CFU]/mL)を、600nmでの懸濁液の光学密度(OD)を決定することにより評価し、栄養寒天プレート上に懸濁液を蒔くことにより確認した。スイスマウス(22~28g)において、接種前-4日目(150mg/kg)および-1日目(100mg/kg)に2用量のシクロホスファミドを腹腔内に注射することにより、好中球を減少させた。50μLの初期log相細菌懸濁液(108~109 CFR/mL)を静脈内に注射することにより、血流感染を達成した。各細菌懸濁液の厳密な注射容量を、細菌懸濁液および各単離株の所望の接種物のOD値に基づいて算出した。
【0149】
コリスチン、ポリミキシンB、または化合物の投与のための溶液を、滅菌0.9%生理食塩水において1mL当たり1mg(遊離塩基(base))の濃度にて調製した。接種2時間後、処置群におけるマウスに、4μL/g体重(BW)(すなわち、遊離塩基4mg/kg BW)にて上記溶液の一つを静脈内に注射した一方で、同容量の生理食塩水をコントロールマウスに注射した。抗菌薬または生理食塩水(コントロール)の投与0時間後または4時間後に、過剰用量のイソフルランの吸入により動物を安楽死させた。各動物の胸部および前脚の皮膚を、70%エタノールおよびベタジン(Betadine)(登録商標)で徹底的に浄化した。ヘパリン(5,000IU/mL)でリンスした1mLシリンジを用いて、心穿刺を介して血液を回収し、滅菌0.9%生理食塩水中で連続的に希釈し、スパイラル・プレーター(plater)を用いて栄養寒天プレート上に蒔いた。
【0150】
寒天プレートを、37℃で一晩インキュベートした。プレート上の細菌コロニーを計数し、血液のCFU/mLを算出した。各マウスにおける血液のlog10 CFU/mLを算出した。細菌に対する化合物のインビボ活性を、4時間目での処置マウスとコントロールマウスとの間のlog10 CFU/mL値の差異(Δlog=log10(処置)CFU/mL-log10(コントロール)CFU/mL)として算出した。得られた結果を、表8に示す。
【0151】
細菌負荷における4時間目の減少(Δlog)≧2を示す任意の化合物を、この初期のスクリーニングモデルにおいて良好なインビボ効力を有するものとみなす。以下の表から明らかであるように、本発明の化合物は、臨床的に利用可能なポリミキシンBに比較して、同等または改善されたインビボ抗菌効力を有する(対応する実験で使用されたポリミキシンBコントロールについての細菌負荷の低減を、本化合物についての細菌負荷における減少に隣接した括弧中に示す)。
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
実施例4.マウスモデルにおける腎毒性
PMBサルフェート(バッチ20120204)およびコリスチンサルフェート(バッチ20120719)は、Betapharma(Shanghai Co.,Ltd,中国)により供給された。化合物の生理食塩水ストック溶液(5mg塩基/mL)を、使用前に4℃で保存した。マウスに、一日において2時間毎に12mg塩基/kgの薬物/化合物を6用量にて皮下投与した。最終用量の約20時間後に、マウスを、過剰用量のイソフルランの吸入により安楽死させた。血液サンプリングの直後に、各マウスの右腎臓を即座に回収し、5mLプラスチックチューブにおける10%ホルマリン中に別々に配置し、そして、左腎臓を予め秤量した14mLプラスチックチューブ中に置き、再度秤量し、ホモジナイゼーション、ならびにポリミキシンおよびコリスチンの解析まで-20℃で保存した。凍結した腎臓サンプルを融解し、2mLのMilli-Q水中でホモジナイズし、-20℃冷凍庫中で保存した。次いで、ホルマリンで固定した腎臓を、組織学的な検査のため、オーストラリア・フェノミクス・ネットワーク-組織病理学・臓器病理学(Australian Phenomics Network-Histopathology and Organ Pathology)(メルボルン大学,パークビル,VIC,オーストラリア)に送付した。サンプルを、処置群について把握していない病理学者により検査した。
【0156】
病変を以下のとおり格付けした:尿細管の拡張を伴う軽度な急性の尿細管損傷,著名な(prominent)核、および少数の弱々しい尿細管円柱(pale tubular cast)(グレード1);尿細管上皮細胞の壊死を伴う重篤な急性の尿細管損傷および多数の尿細管円柱(グレード2);乳頭状の壊死を伴う、または伴わない尿細管および糸球体の急性の皮質の壊死/梗塞(グレード3)。グレードに以下のスコアを与えた:グレード1=1、グレード2=4、およびグレード3=10。罹患腎臓切片の百分率は、以下のとおりスコア付けした:<1%=0、1から<5%=1、5から<10%=2、10から<20%=3、20から<30%=4、30から<40%=5、および>40%=6。全体の腎臓組織学スコアを、百分率スコアおよびグレードスコアの積として算出した。次いで、これらのスコアを、腎臓組織学的変化について0~+5のスケールに対する半定量的スコアとして表した。これらのスコアを以下のとおり割り当てた:SQS 0=如何なる有意な変化もなし(全体スコア,<1);SQS +1=軽度な損傷(全体スコア,1から<15);SQS +2=軽度から中度の損傷(全体スコア,15から<30);SQS +3=中度の損傷(全体スコア,30から<45);SQS +4=中度から重篤な損傷(全体スコア,45から<60);およびSQS +5=重篤な損傷(全体スコア,>60)(Yousef,J.,Chen,G.,Hill,P.,Nation,R.,Li,J.,2011,Antimicrobial Agents And Chemotherapy [P],vol 55,issue 9,American Society for Microbiology,USA,pp.4044-4049)。
【0157】
得られた結果を、表9に示す。≦+1.0の腎臓組織学スコアを有する任意の化合物を、このモデルにおいて低腎毒性を有するものとみなす。
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
上記データから観察できるように、コリスチンおよびポリミキシンBは、このモデルにおいて重篤な腎毒性を示す。一方、本発明の化合物は、如何なる有意な腎毒性も示さなかった。
【0162】
本明細書、およびそれに続く特許請求の範囲を通じて、文脈がそれに反することを要求しない限り、文言「含む(comprise)」、および「含む(comprises)」または「含む(comprising)」等の活用形は、言及した整数または整数群の包含を暗示するが、任意の他の整数または整数群の排除を暗示しないことが理解されるであろう。
【0163】
任意の先行刊行物(もしくはそれに由来する情報)に対する、または既知である任意の事項に対する本明細書中の参照は、その先行刊行物(もしくはそれに由来する情報)、または既知の事項が本明細書が関連する試みの分野における一般的な技術常識の一部を構成することの承認もしくは認証または如何なる形態の示唆でもなく、そしてそのように解釈されるべきでない。