(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】水中ブルドーザー
(51)【国際特許分類】
B63B 35/00 20200101AFI20220804BHJP
B63C 11/00 20060101ALI20220804BHJP
E02F 5/00 20060101ALI20220804BHJP
E02F 3/76 20060101ALI20220804BHJP
B63B 21/50 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
B63B35/00 D
B63C11/00 D
E02F5/00 B
E02F3/76 H
B63B21/50 B
(21)【出願番号】P 2020157854
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2020-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】596109273
【氏名又は名称】株式会社高知丸高
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】高野 広茂
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2017/159692(JP,A1)
【文献】特許第3806761(JP,B2)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0035521(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0072163(KR,A)
【文献】特許第3043331(JP,B1)
【文献】Toshihisa Naruse,"Development of Bottom-Reliant Type Underwater Robots”,Journal of Robotics and Mechatronics,Vol.26,No.3,Fuji Technology Press Ltd.,2014年03月11日,p.279-286,ISSN:1883-8049(Online),0915-3942(Print)
【文献】飯塚尚史ら,“水陸両用ブルドーザによる災害復旧工事事例報告”,建設機械施工,Vol.65,No.9,日本,日本建設機械施工協会,2013年,p.46-52
【文献】成瀬 俊久,沢野 利幸,“海底走行式水中作業ロボット”,作業船,日本,日本作業船協会,1988年01月30日,No.175,pp.18-25,ISSN 0287-590X
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/00
B63C 11/00
E02F 5/00
E02F 3/76
B63B 21/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロート台船と、
前方に排土板を備える下部走行装置と、
前記フロート台船と前記下部走行装置とを連結する
複数のガイドピラーと、
前記フロート台船上に配設された運転室と、
前記フロート台船の略中央部に配設されたガイドピラー挿通口と、
を含んで成り、
複数の
前記ガイドピラー
同士を連結または分離することによって
、前記フロート台船と前記下部走行装置との間の寸法を調節可能としたことを特徴とする水中ブルドーザー。
【請求項2】
前記ガイドピラーが角筒状をなし、
前記ガイドピラーの一対の側壁外面に、該側壁外面の長手方向に沿ってラックを備え、
前記ガイドピラー挿通口の周縁部に、前記ラックに噛合するピニオンギアを備える一対のモータが相対して配設されていることを特徴とする請求項1に記載の水中ブルドーザー。
【請求項3】
前記フロート台船上に、前記ガイドピラーの吊り上げ装置が配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水中ブルドーザー。
【請求項4】
前記フロート台船が、水中における推進装置を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の水中ブルドーザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浚渫作業に好適な水中ブルドーザーに関し、特に水深が変化する水域における浚渫作業に好適な水中ブルドーザーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浚渫作業においては浚渫船と呼ばれる作業船が使用され、例えば、グラブバケットを備えるグラブ浚渫船、バックホーを備えるバックホー浚渫船などが挙げられる。また、本願出願人は、バックホーなどの重機を搭載可能な自航式重機搭載作業船を開示している(特許文献1参照。)。特許文献1に開示した自航式重機搭載作業船は、船首から船尾にかけて並列された複数の船体構成部材を連結してなる船体と、前記船体を推進させるための船体推進機とを備え、前記船体には、該船体の上面及び船首側が開放されてなる重機搭載用凹部が設けられており、前記複数の船体構成部材のそれぞれは、隣接する船体構成部材同士を分離可能に連結するための連結機構を備えており、前記船体の底面から喫水線までの距離が、重機搭載時に座礁することなく水上を走行できる深さであることを特徴とする。
【0003】
特許文献1に開示した自航式重機搭載作業船によると、バックホーなどの重機を重機搭載用凹部に搭載して水面上の廃材が浮遊している場所まで行き、この重機を使用して廃材を回収したり、解体工事等の作業を行ったりすることができる。また、重機搭載用凹部は船首側が開放面となっていることにより、船首を地上に近接させて係留し、重機が地上と船体上を往来することが可能となる。更に、船体の底面から喫水線までの距離が重機搭載時に座礁することなく水上を走行できる深さであることにより、水深の浅い水面上に浮遊する、或いは水中の廃材でも回収することが可能となる。
【0004】
また、自航および自走が可能で、且つ海象条件および気象条件に関係なく排土工事を進捗可能な自航自走式水中ブルドーザーが開示されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載された水中ブルドーザーは、潜水船に、航行用の推進装置と、海底走行用のクローラ装置と、排土装置とを装備し、これら各装置を潜水船に搭載したリサイクルディーゼルエンジンにより駆動すべく構成したことを特徴としている。
【0005】
このように構成された特許文献2に係る自航自走式水中ブルドーザーによると、海中で動力を独自に発生させるリサイクルディーゼルエンジンを搭載することから、排土装置による排土作業を、海象条件や気象条件に関係なく、しかも自由な方向で且つ広範囲にわたって行うことができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-101104号公報
【文献】実公昭56-9007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示した自航式重機搭載作業船によると、バックホーなどの重機を桁下に配置することができるため、桁下の浚渫や掘削作業を比較的容易に行うことができる。しかしながら、汽水域では潮汐によって、また河川や湖沼では降雨による増水などによって水深が変化するため、特に水深が深くなった場合にはバックホーのバケットが水底に届かなくなり、浚渫作業ができなくなる場合がある。
【0008】
その一方で、水深が深くても水底に届くように予め大型のバックホーを搭載すると、桁下の作業空間が十分に確保できない場合には桁下に重機を配置することができず、桁下の浚渫作業ができないこととなる。
【0009】
また、特許文献2に開示された自航自走式水中ブルドーザーによると、水深に関係なく浚渫作業ができるものと思料する。しかしながら、水中を自走するための耐圧カプセルや水密性を備えた機関制御室などが必要となるため、構造が複雑になるとともに製造コストも非常に掛かるものと思料する。
【0010】
そこで本願発明者は、上記の問題点に鑑み、水深が深い水域や、水深が変化する水域においても、水深に応じた浚渫作業を容易に実施することが可能な水中ブルドーザーを提供するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に至ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明の水中ブルドーザーは、フロート台船と、前方に排土板を備える下部走行装置と、前記フロート台船と前記下部走行装置とを連結する1乃至複数のガイドピラーと、前記フロート台船上に配設された運転室と、前記フロート台船の略中央部に配設されたガイドピラー挿通口と、を含んで成り、前記ガイドピラーの着脱および昇降によって前記フロート台船と前記下部走行装置との間の寸法を調節可能としたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の水中ブルドーザーにおいて、前記ガイドピラーが角筒状をなし、前記ガイドピラーの一対の側壁外面に、該側壁外面の長手方向に沿ってラックを備え、前記ガイドピラー挿通口の周縁部に、前記ラックに噛合するピニオンギアを備える一対のモータが相対して配設されていることを特徴とする。
【0013】
更に、本発明の水中ブルドーザーにおいて、前記フロート台船上に、前記ガイドピラーの吊り上げ装置が配設されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の水中ブルドーザーにおいて、前記フロート台船が、水中における推進装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水中ブルドーザーによると、ガイドピラーの着脱によってフロート台船と下部走行装置との間の寸法を調節することが容易にできるため、水深が深い水域や、水深が変化する水域においても、水深に応じた浚渫作業を容易に実施することができる。特に、汽水域では潮汐によって水深が経時変化するが、本発明の水中ブルドーザーによると、水深の経時変化に対応しつつ、浚渫作業を継続することができる。
【0016】
また、本発明の水中ブルドーザーにおいて、ガイドピラーが角筒状をなし、当該ガイドピラーの一対の側壁外面に、当該側壁外面の長手方向に沿ってラックを備え、ガイドピラー挿通口の周縁部に、ラックに噛合するピニオンギアを備える一対のモータが相対して配設されていることによって、本発明に係るガイドピラーをラックアンドピニオンで容易に昇降させることができるため、フロート台船と下部走行装置との間の寸法を容易に調節することができる。
【0017】
更に、本発明の水中ブルドーザーにおいて、フロート台船上にガイドピラーの吊り上げ装置が配設されていることによって、ガイドピラーの挿通作業時や運搬作業時における省力化を図ることができる。
【0018】
また、本発明の水中ブルドーザーにおいて、フロート台船が、水中における推進装置を備えることによって、水深が一段と深く、下部走行装置が水底に届かない水域や、浚渫作業が不要な水域などを容易に移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る水中ブルドーザーの全体構成を示す側面図である。
【
図2】
図1に示した水中ブルドーザーの正面図である。
【
図3】
図1に示した水中ブルドーザーの平面図である。
【
図4】
図1に示した水中ブルドーザーにおいて、フロート台船と下部走行装置との間の寸法を最小にした態様を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の水中ブルドーザーの実施形態について、図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明の一実施形態に係る水中ブルドーザー10の全体構成を示す側面図、
図2は、本実施形態の水中ブルドーザー10の正面図、
図3は、本実施形態の水中ブルドーザー10の平面図である。
【0021】
これら
図1~
図3に示すように、本実施形態の水中ブルドーザー10は、少なくともフロート台船11と、前方に排土板12を備える下部走行装置13と、フロート台船11と下部走行装置13とを連結する1乃至複数のガイドピラー20と、フロート台船11上に配設された運転室15と、フロート台船11の略中央部に配設されたガイドピラー挿通口16と、を含んで構成されている。
【0022】
本実施形態の水中ブルドーザー10に係る下部走行装置13は、一般的なブルドーザーやバックホーに適用されているクローラ方式の走行装置であって、下部走行装置13の前方には排土板12を備える。この下部走行装置13によって陸上は勿論であるが、水中においても水底を自走することができる。なお、本実施形態に係る下部走行装置13の後方にはレーキ19を備えるが、本発明の水中ブルドーザーに係る下部走行装置においては、レーキを備える構成に限定されるものではない。
【0023】
本実施形態の水中ブルドーザー10に係るフロート台船11上には、運転室15が配設されている。運転室15からの指令によって、下部走行装置13の操縦、排土板12およびレーキ19の操作を行うことができるように構成されている。本実施形態の水中ブルドーザー10に係る運転室15は、水域を自走する際もフロート台船11上に位置するため、従来の水中ブルドーザーに係る運転室に要求されるような高い水密性や耐圧性は不要であり、陸上で使用される一般的なブルドーザーやバックホーの運転室が適用できる。なお、運転室15はフロート台船11上に固定された態様であってもよいが、フロート台船11上において旋回可能に設置されていることが好ましい。
【0024】
そして、本実施形態の水中ブルドーザー10は、フロート台船11と下部走行装置13とを連結する1乃至複数のガイドピラー20を備える。
図3に示すように、本実施形態の水中ブルドーザー10に係るガイドピラー20は角筒状をなし、フロート台船11の略中央部に配設されたガイドピラー挿通口16に挿通された状態で、フロート台船11と下部走行装置13とを連結している。
【0025】
より具体的には、本実施形態に係る角筒状をなすガイドピラー20は、このガイドピラー20が備える一対の側壁21外面に、この側壁21外面の長手方向に沿ってラック23、23を備えている(
図2参照)。
【0026】
一方、本実施形態に係るフロート台船11の略中央部に配設されたガイドピラー挿通口16は、ガイドピラー20の平面視形状に合わせた矩形状をなし、ガイドピラー挿通口16の四隅には、ガイドピラー挿通口16に挿通されるガイドピラー20をガイドするためのガイドローラー24が配設されている。
【0027】
そして、フロート台船11上におけるガイドピラー挿通口16の周縁部には、ガイドピラー20が備えるラック23に噛合するピニオンギア17を備える一対のモータ18、18が相対して配設されている。従って、ガイドピラー挿通口16の上方からガイドピラー20を挿入すると、ガイドピラー20が備えるラック23、23が、ガイドピラー挿通口16の周縁部に相対して配設されたモータ18、18が備えるピニオンギア17、17にそれぞれ噛合することとなる。この状態でモータ18、18を駆動すると、ラックアンドピニオンによってガイドピラー20を上下方向に移動させることができる。
【0028】
以上の構成を備える本実施形態の水中ブルドーザー10によると、ガイドピラー挿通口16に挿通されたガイドピラー20をラックアンドピニオンで上下方向に移動させることによって、ガイドピラー20で連結されたフロート台船11と下部走行装置13との間の寸法を容易に調節することができる。そして、複数のガイドピラー20を連結することによって、フロート台船11と下部走行装置13との間の寸法を大きくすることも容易にできる。従って、水深が深い水域では、ガイドピラー20を順次連結していくことによって、下部走行装置13で自走しながら水底の浚渫作業を容易に行うことができる。なお、本実施形態では上下のガイドピラー20、20をボルトとナットで締結しているが、ガイドピラー20同士の連結態様は特に限定されない。
【0029】
また、モータ18、18を駆動することでラックアンドピニオンによりガイドピラー20を昇降移動させることができるため、汽水域など水深が経時変化する水域では、ガイドピラー20を昇降移動させてフロート台船11と下部走行装置13との間の寸法を調節することによって、水深の経時変化に対応しつつ、浚渫作業を継続することができる。
【0030】
以上、本発明の一実施形態に係る水中ブルドーザー10の主要な構成について詳述したが、更に、上記の実施形態に係る水中ブルドーザー10においては、フロート台船11上に、ガイドピラー20の吊り上げ装置30が配設されている。吊り上げ装置30を配設することによって、ガイドピラー挿通口16へのガイドピラー20の挿通作業時や運搬作業時における省力化を図ることができる。
【0031】
以上、本発明の水中ブルドーザーの実施形態について詳述したが、本発明の技術的思想を実質的に限定するものと解してはならない。本発明の一実施形態に係る水中ブルドーザー10は、複数のガイドピラー20を連結することによって水深が深い水域においても下部走行装置13で水底を自走することが可能である。しかし、本発明の水中ブルドーザーにおいて、水中における推進装置、例えばスクリューなどを別途設置しておくことによって、水深が一段と深く、下部走行装置13が水底に届かない水域や、浚渫作業が不要な水域などを移動することができる。
【0032】
また、本発明の水中ブルドーザーに係るガイドピラーは角筒状に限定されず、例えば円筒状であってもよく、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で、当業者の創意と工夫により、適宜に改良、変更又は追加をしながら実施できる。
【符号の説明】
【0033】
10:水中ブルドーザー
11:フロート台船
12:排土板
13:下部走行装置
15:運転室
16:ガイドピラー挿通口
17:ピニオンギア
18:モータ
19:レーキ
20:ガイドピラー
23:ラック
24:ガイドローラー
30:吊り上げ装置