(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】掴線器、および、作業工具の第1部材に揺動部材を取り付ける取付構造
(51)【国際特許分類】
H02G 1/04 20060101AFI20220804BHJP
F16B 2/18 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
H02G1/04
F16B2/18 F
(21)【出願番号】P 2020559806
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2019042993
(87)【国際公開番号】W WO2020121682
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2018231412
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】岩間 保
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/119149(WO,A1)
【文献】特開平09-189314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/04
F16B 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業工具の第1部材に揺動部材を取り付ける取付構造であって、
前記取付構造は、
第1貫通孔を有する前記第1部材と、
第2貫通孔を有する前記揺動部材と、
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔に挿通される軸部を有する第1ピン部材と、
前記第1部材および前記揺動部材が前記第1ピン部材から抜けるのを防止するとともに、前記揺動部材が受ける曲げ荷重または捩じり荷重の少なくとも一部を支持する補強部材と、
前記補強部材を前記第1ピン部材に固定する固定部材と
を具備し、
前記第1ピン部材の前記軸部の外周面には、嵌合溝が設けられ、
前記補強部材は、前記嵌合溝に挿入される挿入部と、前記嵌合溝外に突出する抜止部とを備え、
前記固定部材は、前記補強部材が前記第1ピン部材に嵌合された状態で、前記補強部材を前記第1ピン部材に固定する
取付構造。
【請求項2】
前記固定部材は、第2ピン部材であり、
前記軸部には、前記第2ピン部材の一部が挿入される第1穴部が形成され、
前記補強部材には、前記第2ピン部材の他の一部が挿入される第2穴部が形成されている
請求項1に記載の取付構造。
【請求項3】
前記軸部は、
前記嵌合溝よりも先端側に配置された先端部と、
前記嵌合溝よりも基端側に配置された基端部と、
前記先端部と前記基端部とを連結する連結部と
を備え、
前記第2ピン部材は、前記先端部と前記基端部とに跨るように配置される
請求項2に記載の取付構造。
【請求項4】
前記軸部の前記先端部と前記軸部の前記基端部とは、前記連結部および前記第2ピン部材によって連結されている
請求項3に記載の取付構造。
【請求項5】
前記第2ピン部材の中心軸は、前記第1ピン部材の中心軸に沿う一つの平面の一方側に配置され、
前記連結部の中心軸は、前記平面の他方側に配置されている
請求項4に記載の取付構造。
【請求項6】
前記揺動部材に揺動可能に接続されるレバー部材と、
前記揺動部材および前記レバー部材に挿通される第3ピン部材と
を更に具備し、
前記補強部材は、前記第1ピン部材と前記第3ピン部材とに跨って配置される
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の取付構造。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の取付構造を備えた掴線器。
【請求項8】
請求項6に記載の取付構造を備えた掴線器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掴線器、および、作業工具の第1部材に揺動部材を取り付ける取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電線等の線状体を把持可能な掴線器が知られている。掴線器は、例えば、電線に弛み部等を形成する目的で電線を引っ張る際に使用される。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、掴線器が開示されている。特許文献1に記載の掴線器では、固定掴持体部に設けられた線状体押さえ部と、作動部材に接続された可動掴持体部材に設けられた線状体保持部とによって電線等の線状体が把持される。特許文献1には、略三角形状の作動部材と、フック等を引っ掛ける引張り穴が設けられたレバー部材とを、レバー部材回動軸を介して回動可能に連結することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に、掴線器は、工事中の架設された電線の張力を保持するとき、掴線器を構成する部品に過大な力がかかる。本発明の目的は、作業工具の第1部材に揺動部材を取り付ける取付構造であって、揺動部材に作用する高荷重に耐え得る取付構造、および、当該取付構造を備えた掴線器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示す、掴線器、および、作業工具の第1部材に揺動部材を取り付ける取付構造に関する。
【0007】
(1)作業工具の第1部材に揺動部材を取り付ける取付構造であって、
前記取付構造は、
第1貫通孔を有する前記第1部材と、
第2貫通孔を有する前記揺動部材と、
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔に挿通される軸部を有する第1ピン部材と、
前記第1部材および前記揺動部材が前記第1ピン部材から抜けるのを防止するとともに、前記揺動部材が受ける曲げ荷重または捩じり荷重の少なくとも一部を支持する補強部材と、
前記補強部材を前記第1ピン部材に固定する固定部材と
を具備し、
前記第1ピン部材の前記軸部の外周面には、嵌合溝が設けられ、
前記補強部材は、前記嵌合溝に挿入される挿入部と、前記嵌合溝外に突出する抜止部とを備え、
前記固定部材は、前記補強部材が前記第1ピン部材に嵌合された状態で、前記補強部材を前記第1ピン部材に固定する
取付構造。
(2)前記固定部材は、第2ピン部材であり、
前記軸部には、前記第2ピン部材の一部が挿入される第1穴部が形成され、
前記補強部材には、前記第2ピン部材の他の一部が挿入される第2穴部が形成されている
上記(1)に記載の取付構造。
(3)前記軸部は、
前記嵌合溝よりも先端側に配置された先端部と、
前記嵌合溝よりも基端側に配置された基端部と、
前記先端部と前記基端部とを連結する連結部と
を備え、
前記第2ピン部材は、前記先端部と前記基端部とに跨るように配置される
上記(2)に記載の取付構造。
(4)前記軸部の前記先端部と前記軸部の前記基端部とは、前記連結部および前記第2ピン部材によって連結されている
上記(3)に記載の取付構造。
(5)前記第2ピン部材の中心軸は、前記第1ピン部材の中心軸に沿う一つの平面の一方側に配置され、
前記連結部の中心軸は、前記平面の他方側に配置されている
上記(4)に記載の取付構造。
(6)前記揺動部材に揺動可能に接続されるレバー部材と、
前記揺動部材および前記レバー部材に挿通される第3ピン部材と
を更に具備し、
前記補強部材は、前記第1ピン部材と前記第3ピン部材とに跨って配置される
上記(1)乃至(5)のいずれか一つに記載の取付構造。
(7)上記(1)乃至(6)のいずれか一つに記載の取付構造を備えた掴線器。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、作業工具の第1部材に揺動部材を取り付ける取付構造であって、揺動部材に作用する高荷重に耐え得る取付構造、および、当該取付構造を備えた掴線器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態における掴線器の概略2面図である。
【
図2】
図2は、揺動部材に作用する曲げ荷重および捩じり荷重について説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、第1ピン部材の中心軸AX1、第2ピン部材の中心軸AX3、および、連結部の中心軸AX4の配置関係を模式的に示す概略2面図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態における掴線器の概略2面図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態における掴線器の概略2面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施形態における掴線器1、および、作業工具の第1部材に揺動部材20を取り付ける取付構造について、詳しく説明する。なお、本明細書において、同種の機能を有する部材には、同一または類似の符号が付されている。そして、同一または類似の符号の付された部材について、繰り返しとなる説明が省略される場合がある。
【0011】
以下の説明において、「作業工具」が掴線器1であり、「作業工具の第1部材」が掴線器本体10である場合の例について説明する。しかし、「作業工具」は、掴線器1以外の工具(例えば、先端部に開閉機構を備えたやっとこ、または、切断工具等)であってもよく、また、「作業工具の第1部材」は、掴線器本体10以外の部材であってもよい。この場合、以下の説明において、掴線器は、「作業工具」に読み替えられ、掴線器本体は、「作業工具の第1部材」に読み替えられる。
【0012】
(第1の実施形態)
図1乃至
図4を参照して、第1の実施形態における掴線器1Aについて説明する。
図1は、第1の実施形態における掴線器1Aの概略2面図である。
図1の右側には、掴線器1Aの概略正面図が記載され、
図1の左側には、掴線器1Aの概略側面図が記載されている。
図2は、揺動部材20に作用する曲げ荷重および捩じり荷重について説明するための模式図である。
図3は、
図1のA-A矢視断面図である。
図4は、第1ピン部材50の中心軸(AX1)、第2ピン部材70pの中心軸AX3、および、連結部513の中心軸AX4の配置関係を模式的に示す概略2面図である。
図4の右側には断面図が記載され、
図4の左側には、正面図が記載されている。
【0013】
第1の実施形態における掴線器1Aは、掴線器本体10と、揺動部材20と、第1ピン部材50と、補強部材60と、固定部材70とを具備する。掴線器1Aは、レバー部材40を備えていてもよい。
【0014】
掴線器本体10(作業工具の第1部材)は、1つの部材によって構成されていてもよいし、複数の部材を組み合わせることによって構成されていてもよい。掴線器本体10には、第1ピン部材50の軸部51が挿通される第1貫通孔10hが設けられている。
【0015】
揺動部材20は、掴線器本体10に揺動可能に接続されている。そして、揺動部材20は、第1揺動軸AX1まわりに、掴線器本体10に対して揺動可能である。揺動部材20には、第1ピン部材50の軸部51が挿通される第2貫通孔20hが設けられている。
【0016】
レバー部材40は、揺動部材20に揺動可能に接続されている。そして、レバー部材40は、第2揺動軸AX2まわりに、揺動部材20に対して揺動可能である。
【0017】
第1ピン部材50は、掴線器本体10(より具体的には、第1貫通孔10h)および揺動部材20(より具体的には第2貫通孔20h)に挿通される軸部51を有する。当該軸部51は、第1揺動軸AX1に沿って延在する。
【0018】
図1に示されるように、レバー部材40が第1方向(より具体的には、電線Wの延在する方向と略平行な方向)に引っ張られると、レバー部材40に接続された揺動部材20は、第1揺動軸AX1まわりを揺動する。当該揺動部材20の揺動に伴い、第2把持片31が第1把持片11に近づく方向に移動し、その結果、電線Wが、第1把持片11および第2把持片31によっては把持される。
【0019】
図1に記載の例において、レバー部材40が第1方向に引っ張られると、揺動部材20には引っ張り荷重に加えて、曲げ荷重(例えば、
図2の軸線T1まわりの曲げ荷重)および/または捩じり荷重(例えば、
図2の軸線T2まわりの捩じり荷重)が作用する。当該曲げ荷重または捩じり荷重が大きくとなると、揺動部材20が損傷または破壊されるおそれがある。
【0020】
そこで、第1の実施形態における掴線器1Aは、揺動部材20が受ける曲げ荷重または捩じり荷重の少なくとも一部を支持する補強部材60(
図1を参照。)と、補強部材60を第1ピン部材50に固定する固定部材70とを備える。揺動部材20が曲げ変形および/または捩じり変形すると、揺動部材20は、直接的または間接的に、補強部材60を第1揺動軸AX1に沿う方向に押圧する。補強部材60は、当該押圧に対して、揺動部材20に、直接的または間接的に反力を付与する。こうして、揺動部材20が受ける曲げ荷重または捩じり荷重の少なくとも一部が、補強部材60によって支持される。
【0021】
また、補強部材60は、掴線器本体10および揺動部材20が第1ピン部材50から抜けるのを防止する抜止部材としても機能する。
【0022】
補強部材60が、抜止部材として機能するメカニズムについて説明する。
図3に示されるように、第1ピン部材50の軸部51の外周面51sには、補強部材60の挿入部61を受け入れる嵌合溝510が設けられている。また、補強部材60は、当該嵌合溝510に挿入される挿入部61に加えて、嵌合溝510外に突出する抜止部62を備える。抜止部62は、掴線器本体10および/または揺動部材20に、直接的または間接的に接触することにより、掴線器本体10および/または揺動部材20が第1ピン部材50から脱落するのを防止するストッパとして機能する。
図3に記載の例では、掴線器本体10および揺動部材20は、第1ピン部材50の頭部52と、第1ピン部材50に固定された補強部材60とによって挟まれているため、掴線器本体10および/または揺動部材20が第1ピン部材50から脱落することがない。
【0023】
図3に示されるように、固定部材70は、補強部材60が第1ピン部材50に嵌合された状態で、補強部材60を第1ピン部材50に固定する。固定部材70によって、補強部材60が第1ピン部材50に固定されているため、補強部材60が、意図せずして、第1ピン部材50から脱落することがない。
【0024】
図3を参照して、固定部材70、第1ピン部材50、および、補強部材60の構造の一例についてより具体的に説明する。
【0025】
固定部材70は、第2ピン部材70pである。第2ピン部材70pの一部は、軸部51に設けられた第1穴部51hに挿入され、第2ピン部材70pの他の一部は、補強部材60に設けられた第2穴部60hに挿入されている。第2ピン部材70pが、第1穴部51hおよび第2穴部60hに挿入されることにより、補強部材60が第1揺動軸AX1に垂直な方向に移動することが防止され、補強部材60が第1ピン部材50から脱落することが防止される。なお、
図3に記載の例では、第1穴部51hの中心軸は、第1揺動軸AX1と平行であり、第2穴部60hの中心軸は、第1揺動軸AX1と平行である。
【0026】
図3に記載の例では、軸部51は、先端部511と、基端部512と、連結部513とを備える。先端部511は、軸部51のうち嵌合溝510よりも先端側に配置された部分であり、基端部512は、軸部51のうち嵌合溝510よりも基端側に配置された部分である。また、連結部513は、先端部511と基端部512とを連結する部分である。連結部513は、嵌合溝510の存在により、先端部511および基端部512と比較して、断面積(第1揺動軸AX1に垂直な面における断面積)が小さい。
【0027】
図3に記載の例では、軸部51に形成された第1穴部51hは、先端部511に形成された先端側穴部511hと、基端部512に形成された基端側穴部512hとを含む。なお、先端側穴部511hと、基端側穴部512hとは、互いに同軸な穴部である。
【0028】
第2ピン部材70pは、先端部511(より具体的には、先端側穴部511h)と基端部512(より具体的には、基端側穴部512h)とに跨るように配置され、かつ、補強部材60の第2穴部60hを貫通するように配置されている。この場合、先端部511および基端部512の両方によって支持された第2ピン部材70pによって、補強部材60の移動(第1揺動軸AX1に垂直な方向への移動)が制限される。よって、補強部材60が第1揺動軸AX1に垂直な方向に移動することがより確実に防止され、補強部材60が第1ピン部材50から脱落することがより確実に防止される。
【0029】
また、
図3に記載の例では、軸部51の先端部511と軸部51の基端部512とは、連結部513および第2ピン部材70pの両方によって連結されている。このため、軸部51の先端部511に作用する荷重(より具体的には、第1揺動軸AX1に沿う方向の荷重(矢印Bによって示される荷重))は、連結部513および第2ピン部材70pを介して軸部51の基端部512に伝達される。よって、軸部51の先端部511に相対的に大きな荷重が作用した場合であっても、先端部511の変形および損傷が抑制される。例えば、揺動部材20に曲げ荷重または捩じれ荷重が作用すると、先端部511は、補強部材60によって、基端部512から離れる方向に押圧される。しかし、
図3に記載の例では、先端部511に作用する荷重は、連結部513および第2ピン部材70pを介して軸部51の基端部512に伝達されるため、先端部511が大きく変形することはない。
【0030】
図4に記載の例では、第2ピン部材70pの中心軸AX3は、第1ピン部材50の中心軸(AX1)から偏心して配置され、連結部513の中心軸AX4(連結部513の断面積中心をとおる軸)は、第1ピン部材50の中心軸(AX1)から偏心して配置されている。より具体的には、中心軸AX3は、第1ピン部材50の中心軸(AX1)に沿う一つの平面PLの一方側に配置され、連結部513の中心軸AX4は、平面PLの他方側に配置されている。このため、軸部51の先端部511に作用する荷重は、連結部513および第2ピン部材70pを介して、軸部51の基端部512にバランスよく伝達される。なお、先端部511に作用する荷重をバランスよく基端部512に伝達させる観点から、第1ピン部材50の中心軸(AX1)は、第2ピン部材70pの中心軸AX3と連結部513の中心軸AX4とを結ぶ線分上に配置されていることが好ましい。
【0031】
次に、固定部材70(より具体的には、第2ピン部材70p)を第1ピン部材50に固定する機構について説明する。
【0032】
図3に記載の例では、固定部材70(より具体的には、第2ピン部材70p)の外周面には、雄ネジ70tが形成されている。当該雄ネジ70tが、軸部51の第1穴部51h(例えば、先端側穴部511hまたは基端側穴部512h)に形成された雌ネジ51tに螺合することにより、固定部材70が、第1ピン部材50に固定される。なお、
図3に記載の例では、固定部材70(より具体的には、第2ピン部材70p)が、螺合によって、第1ピン部材50に固定されているが、固定部材70の第1ピン部材50への固定は、螺合以外の手段(例えば、溶接、ろう付け、嵌合等)によって実行されてもよい。
【0033】
図3に記載の例では、第2ピン部材70pの先端部70eが、軸部51の基端部512に達している。また、
図3に記載の例では、第2ピン部材70pの先端部70eに雄ネジ70tが形成され、当該雄ネジ70tが、基端側穴部512hに形成された雌ネジ51tに螺合されている。代替的に、第2ピン部材70pの先端部70eは、基端部512に達することなく補強部材60の第2穴部60h内に位置していてもよい。この場合、第2ピン部材70pに形成された雄ネジ70tは、第2穴部60hに設けられた雌ネジ60tおよび/または先端側穴部511hに形成された雌ネジに螺合されてもよい。
【0034】
なお、第2ピン部材70pが、溶接、ろう付け、嵌合等によって、第1ピン部材50に固定される場合には、雄ネジ70t、雌ネジ(60t、51t)は、省略されてもよい。
【0035】
(第2の実施形態)
図5を参照して、第2の実施形態における掴線器1Bについて説明する。
図5は、第2の実施形態における掴線器1Bの概略2面図である。
図5の右側には、掴線器1Bの概略正面図が記載され、
図5の左側には、掴線器1Bの概略側面図が記載されている。
【0036】
第2の実施形態における掴線器1Bは、補強部材60が、第1ピン部材50と、第2揺動軸AX2に沿って配置される第3ピン部材80とに跨って配置されている点で、第1の実施形態における掴線器1Aとは異なる。また、
図5に記載の例では、側面図(
図5の左側の図)において、補強部材60が、掴線器本体10および揺動部材20のうちの揺動部材20側に配置されている。その他の点では、第2の実施形態における掴線器1Bは、第1の実施形態における掴線器1Aと同様である。
【0037】
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第2の実施形態において明示的に説明されなかったとしても、第2の実施形態において、第1の実施形態で説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。
【0038】
第2の実施形態における掴線器1Bは、揺動部材20に揺動可能に接続されるレバー部材40と、揺動部材20およびレバー部材40に挿通される第3ピン部材80とを備える。そして、補強部材60は、第1ピン部材50と第3ピン部材80とに跨って配置される。また、
図5に記載の例では、補強部材60に第1ピン部材50の軸部51が挿入され、補強部材60に第3ピン部材80の軸部が挿入されている。なお、補強部材60と第3ピン部材80との間の連結機構としては、任意の機構を採用可能である。例えば、補強部材60の孔部に第3ピン部材80が挿入され、その後、第3ピン部材80の先端部が加締められることにより、補強部材60と第3ピン部材80とが連結されてもよい。代替的に、補強部材60の孔部に第3ピン部材80が挿入され、その後、第3ピン部材80の先端部にナットが螺合されることにより、補強部材60と第3ピン部材80とが連結されてもよい。この場合、第3ピン部材80の先端部には、ナットに螺合する雄ネジ部が設けられる。更に代替的に、補強部材60と第3ピン部材80との間の連結機構として、補強部材60と第1ピン部材50との間の連結機構と同様の機構が採用されてもよい。
【0039】
第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。また、第2の実施形態では、補強部材60が、第1ピン部材50と第3ピン部材80とに跨って配置される。このため、第2の実施形態の補強部材60による揺動部材20の補強効果は、第1の実施形態の補強部材60による揺動部材20の補強効果よりも大きい。
【0040】
(実施形態における掴線器1の各構成要素)
図6乃至
図8を参照して、第1の実施形態(または、第2の実施形態)における掴線器1の各構成要素の一例について説明する。
図6は、第1の実施形態における掴線器1Aの概略2面図である。
図7は、第1ピン部材50の概略3面図である。
図8は、補強部材60の概略3面図である。なお、以下の説明において、第1把持片11から第2把持片31に向かう方向を「下方」と呼ぶ。また、第1把持片11と第2把持片31との間の間隔が小さくなるようにレバー部材40が引っ張られる方向を「後方」または「第1方向」と呼ぶ。
【0041】
(掴線器本体10)
図6に記載の例では、掴線器本体10は、第1把持片11と、レバー部材案内部15とを備える。第1把持片11は、電線Wに上方から接する部分であり、第1把持片11の下方部分には、例えば、電線Wの一部を受け入れるための凹溝11gが設けられる。当該凹溝11gの延在方向は、電線Wの延在方向と一致する。
【0042】
レバー部材案内部15は、掴線器本体10の後方部分に設けられる。
図6に記載の例では、レバー部材案内部15の上下方向位置は、第1揺動軸AX1の上下方向位置と略一致しており、レバー部材案内部15は、第1揺動軸AX1の後方側(第1方向側)に配置されている。
図6に記載の例では、レバー部材案内部15は、第1把持片11から下方かつ後方に向かって延在している。
【0043】
レバー部材案内部15は、レバー部材40をガイドするガイド壁を備える。ガイド壁は、例えば、レバー部材40の中間部分43が挿通される貫通孔15hを規定する壁である。レバー部材案内部15は、レバー部材40の位置を規制することにより、レバー部材40が横方向(
図6の紙面に垂直な方向)に過剰に位置ずれすることを抑制し、その結果、レバー部材40と揺動部材20との間の連結部分に過剰な荷重が作用することを抑制する。
【0044】
掴線器本体10には、掴線器本体10と揺動部材20とを揺動可能に連結する第1ピン部材50を挿通するための第1貫通孔10hが設けられている。当該第1貫通孔10hは、例えば、掴線器本体10の前方部分(換言すれば、第1方向とは反対側の部分)の下方部分に設けられている。
【0045】
(揺動部材20)
揺動部材20は、例えば、第1揺動軸AX1に垂直な方向に延在する板状の部材である。揺動部材20は、例えば、正面視で、上方から下方に向かうにつれて幅が狭くなる先細り形状を有する。より具体的には、
図6に記載の例では、揺動部材20は、正面視で、略三角形形状を有する。なお、揺動部材20の形状は、
図6に記載の形状に限定されない。揺動部材20の形状としては、掴線器本体10に揺動可能に連結可能であり、かつ、レバー部材40に揺動可能に連結可能である限りにおいて、任意の形状を採用可能である。
【0046】
揺動部材20には、第1ピン部材50を挿通するための第2貫通孔20hが設けられている。当該第2貫通孔20hは、例えば、揺動部材20の前方部分(換言すれば、第1方向とは反対側の部分)の上端部に設けられている。第2貫通孔20hの中心軸(換言すれば、第1ピン部材50の中心軸)は、第1揺動軸AX1と一致する。
【0047】
揺動部材20には、第3ピン部材80を挿通するための第3貫通孔26hが設けられている。当該第3貫通孔26hは、例えば、揺動部材20の下端部に設けられている。第3貫通孔26hの中心軸(換言すれば、第3ピン部材80の中心軸)は、第2揺動軸AX2と一致する。
【0048】
図6に記載の例では、揺動部材20に、第4ピン部材90を挿通するための第4貫通孔28hが設けられている。なお、第4ピン部材90は、揺動部材20と第2把持片31とを揺動可能に連結するピン部材である。第4貫通孔28hは、例えば、揺動部材20の後方部分(換言すれば、第1方向側の部分)の上端部に設けられている。第4貫通孔28hの中心軸(換言すれば、第4ピン部材90の中心軸)は、第3揺動軸AX5と一致する。なお、
図6に記載の例では、第2貫通孔20hが略三角形状の揺動部材20の一つの頂点部分に配置され、第3貫通孔26hが略三角形状の揺動部材20の他の頂点部分に配置され、第4貫通孔28hが略三角形状の揺動部材20の更に他の頂点部分に配置されている。
【0049】
(第2把持片31)
第2把持片31は、揺動部材20によって、第3揺動軸AX5まわりを揺動可能に支持される。第2把持片31は、電線Wに下方から接する部材であり、第2把持片31の上方部分には、例えば、電線Wの一部を受け入れるための凹溝31gが設けられる。当該凹溝31gの延在方向は、電線Wの延在方向と一致する。第2把持片31は、第1把持片11の下方に配置され、電線Wは、第1把持片11および第2把持片31によって上下から把持される。
【0050】
第2把持片31には、第4ピン部材90を挿通するための貫通孔が設けられている。
【0051】
(レバー部材40)
レバー部材40は、揺動部材20に揺動可能に接続される第1端部41と、自由端部である第2端部42とを備える。レバー部材40は、揺動部材20との間の連結部分から(換言すれば、第2揺動軸AX2から)、上方かつ後方に向かって延在する細長い部材である。
図6に記載の例では、レバー部材40は、円弧形状を有し、当該円弧形状の凸面44aが円弧形状の凹面44bの上方に位置している。
【0052】
レバー部材40の第2端部42には、線材または棒材等の引っ張り部材を装着するための装着部42dが設けられている。
図6に記載の例では、当該装着部42dは、貫通孔42hを備えたリング部である。レバー部材40の第1端部41には、第3ピン部材80が挿通される貫通孔(レバー部材貫通孔41h)が設けられている。
【0053】
(第1ピン部材50)
図7を参照して第1ピン部材50の一例について説明する。第1ピン部材50は、頭部52と、軸部51とを備える。頭部52の外径は、軸部51の外径よりも大きい。頭部52の外形形状は、側面視で(換言すれば、軸部51の中心軸に沿う方向に見て)、多角形形状(例えば、六角形形状、八角形形状)であってもよく、円形形状であってもよい。
【0054】
軸部51は、先端部511と、基端部512と、連結部513とを備える。連結部513の外周面513sと、先端部511の基端側端面511sと、基端部512の先端側端面512sとによって、嵌合溝510が構成される。当該嵌合溝510は、連結部513を底部とするC字形状溝、または、環状溝である。当該嵌合溝510には、補強部材60が嵌合される。なお、嵌合溝510に嵌合された補強部材60の主面の延在方向は、第1ピン部材50の延在方向と垂直である。
【0055】
軸部51の先端には、軸部51の先端面51eから頭部52に向かう方向に第1穴部51hが設けられている。当該第1穴部51hに、固定部材70が挿入されることにより、補強部材60が、固定部材70を介して、第1ピン部材50の軸部51に固定される。
【0056】
(補強部材60)
図8を参照して補強部材60の一例について説明する。補強部材60は、例えば、板状の部材であり、補強部材60は、例えば、金属製である。補強部材60の厚さは、8mm程度(0.1mm以上20mm以下)である。
【0057】
図8に記載の例では、補強部材60の外形形状は、補強部材60の主面に垂直な方向からみて、凹溝65部分が切り欠かれた円板形状を有する。ただし、補強部材60の外形形状は、凹溝65部分が切り欠かれた円板形状に限定されない。
【0058】
補強部材60は、第1ピン部材50の連結部513が挿入される凹溝65を備える。凹溝65の形状は、例えば、連結部513の形状と相補的な形状である。
図8に記載の例では、凹溝65は、底面65bと、2つの内側面65sとによって構成されている。なお、
図8に記載の例では、2つの内側面65sは互いに平行である(換言すれば、凹溝65の幅は、底面65bに向かうにつれて変化しない)。
【0059】
補強部材60は、固定部材70が挿入される穴部(第2穴部60h)を備える。
図8に記載の例では、当該穴部(第2穴部60h)は、補強部材60の第1主面から第2主面に至る貫通穴部である。当該穴部(第2穴部60h)に、固定部材70が挿入されることにより、補強部材60が、固定部材70を介して、第1ピン部材50の軸部51に固定される。
【0060】
本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態は適宜変形または変更され得ることが明らかである。また、各実施形態で用いられる任意の構成要素を、他の実施形態に組み合わせることが可能であり、また、各実施形態において任意の構成要素を省略することも可能である。
【0061】
例えば、各実施形態において、補強部材60は、掴線器本体10および揺動部材20のうちの掴線器本体10側に配置されてもよいし、揺動部材20側に配置されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の掴線器、および、作業工具の第1部材に揺動部材を取り付ける取付構造を用いると、揺動部材に作用する荷重が相対的に高荷重であっても、掴線器、および、取付構造が損傷しない。したがって、掴線器等の作業工具を用いて作業を行う業者、および、掴線器等の作業工具を製造する製造業者にとって有用である。
【符号の説明】
【0063】
1、1A、1B…掴線器、10…掴線器本体、10h…第1貫通孔、11…第1把持片、11g…凹溝、15…レバー部材案内部、15h…貫通孔、20…揺動部材、20h…第2貫通孔、26h…第3貫通孔、28h…第4貫通孔、31…第2把持片、31g…凹溝、40…レバー部材、41…第1端部、41h…レバー部材貫通孔、42…第2端部、42d…装着部、42h…貫通孔、43…中間部分、44a…凸面、44b…凹面、50…第1ピン部材、51…軸部、51e…先端面、51h…第1穴部、51s…外周面、51t…雌ネジ、52…頭部、60…補強部材、60h…第2穴部、60t…雌ネジ、61…挿入部、62…抜止部、65…凹溝、65b…底面、65s…内側面、70…固定部材、70e…先端部、70p…第2ピン部材、70t…雄ネジ、80…第3ピン部材、90…第4ピン部材、90h…第4貫通孔、510…嵌合溝、511…先端部、511h…先端側穴部、511s…基端側端面、512…基端部、512h…基端側穴部、512s…先端側端面、513…連結部、513s…外周面、AX1…第1揺動軸、AX2…第2揺動軸、AX3…中心軸、AX4…中心軸、AX5…第3揺動軸、W…電線