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特許7117050化粧板及びこれを用いる家具、並びに、化粧板の製造方法及び家具の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】化粧板及びこれを用いる家具、並びに、化粧板の製造方法及び家具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20220804BHJP
   A47B 96/20 20060101ALI20220804BHJP
   A47B 97/00 20060101ALI20220804BHJP
   B32B 21/10 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
H05K9/00 F
A47B96/20 C
A47B97/00 M
B32B21/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022004472
(22)【出願日】2022-01-14
【審査請求日】2022-04-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503186618
【氏名又は名称】株式会社レジナ
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】土田 直樹
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-168195(JP,U)
【文献】特開2018-094865(JP,A)
【文献】特開平11-074679(JP,A)
【文献】特開2012-164773(JP,A)
【文献】実開昭60-088598(JP,U)
【文献】実開昭60-178128(JP,U)
【文献】特開平3-035596(JP,A)
【文献】特開2015-021313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 21/10
A47B 96/20
A47B 97/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、前記芯材上に配置される導電性不織布シートと、前記導電性不織布シート上に配置される中材と、前記中材上に形成される表面材と、を有する化粧板を備える家具 であって、
前記導電性不織布シートは、基礎繊維の周囲にダイジェナイトが被膜として形成されたものであり、
前記化粧板には孔が形成され、
前記孔には、配線用差込接続器が嵌め合わされており、
前記孔の内周に、前記芯材と前記中材の間にある前記導電性不織布シートに電気的に接続し、かつ、前記配線用差込接続器側面を囲う導電性不織布シートを備え、更に、
前記芯材と前記中材の間にある前記導電性不織布シートに電気的に接続されるアース用コネクタを備える家具。
【請求項2】
前記化粧板を複数組み合わせることで構成された請求項1記載の家具。
【請求項3】
前記複数の化粧板のそれぞれの導電性不織布シートは、金具により接続されてなる請求項2記載の家具。
【請求項4】
芯材と、前記芯材上に配置される導電性不織布シートと、前記導電性不織布シート上に配置される中材と、前記中材上に形成される表面材と、を有する化粧板を複数組み合わせるステップ、
複数の前記化粧板の前記導電性不織布シート同士を導電性のネジ部材により接続するステップと、を有する家具の製造方法 であって、
前記導電性不織布シートは、基礎繊維の周囲にダイジェナイトが被膜として形成されたものであり、
前記化粧板には孔が形成され、
前記孔には、配線用差込接続器が嵌め合わされており、
前記孔の内周に、前記芯材と前記中材の間にある前記導電性不織布シートに電気的に接続し、かつ、前記配線用差込接続器側面を囲う導電性不織布シートを備え、更に、
前記芯材と前記中材の間にある前記導電性不織布シートに電気的に接続されるアース用コネクタを備える家具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板及びこれを用いる家具、並びに、化粧板の製造方法及び家具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭の電気機器等から発生する極低周波電磁波による心身への悪影響(頭痛・吐き気・いらいら等)が問題視されている。例えば、電磁波防止エプロンを着用してアースがとられていないパソコンを使用している者の電磁波測定を行ったところ、約150V/mの電場を受けていたという事実が報告されている。そして、その者の中には、ひどい肩こり、頭痛やかすみ目、花粉症、鼻炎などのアレルギーに悩んでいる者が多くいることが、例えば下記非特許文献1に報告されている。
【0003】
さらに、最近では早稲田大学人間科学学術院の辻内琢也准教授の研究室において、「交流電場が与えるからだへの影響に関する研究」が始まっており、電磁波によって自律神経系が影響を受けていることを示唆する実験データが、下記非特許文献2、3によって公表されている。
【0004】
一般に電磁波とは、電界と磁界が互いに垂直な方向に振動しながら空間や物質中を伝わっていく現象又はその振動電磁界のことをいい、電界(電場)と磁界(磁場)の合成波(電気と磁気エネルギーの波)という意味である。ここで、本明細書において、電界と電場、磁界と磁場は、ほぼ同じ意味で使用することとし、電界(電場)とは電気の影響が及ぶ範囲、磁界(磁場)とは磁気の影響が及ぶ範囲を意味する。
【0005】
磁場は電気機器等に電流が流れることにより生じる。したがって、電気機器等の電源スイッチを切った状態では磁場は生じない。これに対し、電場は電圧がかかるだけで生じる。すなわち、電気機器等の電源スイッチを切った状態であっても、コンセントにプラグが差し込まれているだけで、電場は生じてしまう。
【0006】
したがって、電場の発生を抑制し、電磁波の影響による前述したような心身への悪影響から逃れるためには、電気機器等の電源プラグをコンセントから抜くか、電気機器等にアースをとることが重要である。電気機器等の使用中は電源プラグをコンセントから抜くことはできないため、電磁波の影響を抑制する最も現実的で効果的な方法は、電気機器等にアースをとることである。電気機器等にアースをとることで、電気機器等の電位を下げることができる。具体的には、電位は高い方から低い方へ伝搬する性質があるため、電気機器等の電位を下げることによって、近辺にいる者に伝搬しにくくすることができる。
【0007】
前述したような家庭の電気機器等から発生する極低周波電磁波による心身への悪影響を減らすため、各国では電磁波に関するガイドラインを設けて、電気機器等から発生する電磁波を抑制するように呼びかけている。特にスウェーデン労働組合協会が設けているガイドライン(TCO規制)は、世界で最も厳しい基準を定めており、スウェーデンの電磁波に対する関心の高さが伺える。一方、日本の業界団体が設けているガイドラインでは、磁場に関する基準は前述のスウェーデンのガイドラインと変わらないものの、電場に対する基準は、スウェーデンのガイドラインに比べて、100Vでは5倍、200Vでは25倍もの電場を許容しており、対応の遅れ、関心の低さを如実に物語っている。
【0008】
前述したような電気機器等から発生する極低周波電磁波について、本発明者は、電気機器等の機器内部においてアースラインに繋がっている側を単相2線式の電源ラインのコールドライン、すなわち、接地されている電源ラインと連結することによって、電気機器等を接地させた状態、すなわち、アースをとったことと同一の状態とすることに成功し、この原理を応用して極低周波電磁波の発生を抑制するUSB(Universal Serial Bus)(登録商標)対応電場除去器を開発した(下記特許文献1参照)。
【0009】
これによって、既存のノートパソコンやホットカーペット等の電気機器においてもこの装置を設置することにより、電気機器から発生する極低周波電磁波をきわめて低いレベルに抑えることが出来るため、各方面からその普及が期待されている(下記特許文献2参照)。
【0010】
これまで、住宅内における極低周波電磁波については、その発生源が住宅内におかれた電気機器から発生されるものが主要因であるとか、住宅の上空に張設された高電圧送電線から発生されるものが主要因であるなど、さまざまなことが言われていたが、はっきりとしたことが解明されず、個々の発生源に対する対策を立てるに留まっていた。例えば、住宅の外部からの電磁波を遮蔽する技術については、特許文献3、4のようなものが提案されている。
【0011】
また、本発明者は、住宅内における極低周波電磁波の伝搬を抑制する住宅の施工方法を特許として取得している(下記特許文献5参照)。
【0012】
また、本発明者は、住宅内における屋内配線からの電磁波伝搬を抑制することのできる屋内塗装材について特許として取得している(下記特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許第4972713号公報
【文献】特許第5037741号公報
【文献】特開平10-169253号公報
【文献】特開平11-200646号公報
【文献】特許第5358036号公報
【文献】特許第6121603号公報
【非特許文献】
【0014】
【文献】土田直樹著「オールアース時代がやってくる」、ホノカ社、2005年10月30日、p.29-30
【文献】土田直樹著「アース革命」、ホノカ社、2011年8月30日、p.210-213
【文献】前田未加子「電磁場の生体影響-医療人類学的研究の試み-」、早稲田大学人類科学学術院医療人類学研究室ホームページ、[平成23年11月1日検索]、インターネット<URL:http://www.waseda.jp/sem-tsujiuchi/Master2009-3ElectroMF.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記技術を用いても、屋内の電気機器を確実に接地させた状態にするにはまだ改善の余地がある。特に、勉強机やテーブル、ベッド等の家具では、近年、電気機器を使いやすくする観点から、配線用差込接続器、いわゆるコンセントを埋め込んだものが一般的となっており、さらに近年ではUSB用のソケットを備えた配線用差込接続器さえ登場してきている。
【0016】
これら配線用差込接続器は電気配線に接続されており、この電気配線から電気機器に電力が供給されており、特に、配線用差込接続器に電気機器が接続されていない状態でも電気配線からの電力によって家具表面が帯電し、高い電場が維持されてしまっているという課題がある。
【0017】
そこで、本発明は、上記課題を鑑み、配線用差込接続器が埋め込まれた家具であっても十分に電場を抑制可能な化粧板及びこれを用いる家具、並びに、化粧板の製造方法及び家具の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る化粧板は、芯材と、芯材上に配置される導電性不織布シートと、導電性不織布シート上に配置される中材と、中材上に形成される表面材と、を有するものである。
【0019】
また、本観点において、限定されるわけでは無いが、芯材と中材は、導電性不織布シートに接着剤を含侵させて接合したものであることが好ましい。
【0020】
また、本観点において、限定されるわけでは無いが、中材の厚さは、1mm以上10mm以下の範囲にあることが好ましい。
【0021】
また、本発明の他の一観点に係る家具は、芯材と、芯材上に配置される導電性不織布シートと、導電性不織布シート上に配置される中材と、中材上に形成される表面材と、を有する化粧板を備えるものである。
【0022】
また、本観点において、限定されるわけでは無いが、化粧板を複数組み合わせることで構成されたものであることが好ましい。
【0023】
また、本観点において、限定されるわけでは無いが、複数の化粧板のそれぞれの導電性不織布シートは、金具により接続されていることが好ましい。
【0024】
また、本観点において、限定されるわけでは無いが、化粧板には孔が形成され、孔には、配線用差込接続器を嵌め合わされる孔が形成されていることが好ましい。
【0025】
また、本観点において、限定されるわけでは無いが、孔の内周に、配線用差込接続器側面を囲う導電性不織布シートを備えることが好ましい。
【0026】
また、本発明の他の一観点に係る化粧板の製造方法は、芯材上に、接着剤を含侵させた導電性不織布シートを配置するステップ、導電性不織布シートを芯材と中材により挟み込むステップ、を有するものである。
【0027】
また、本発明の他の一観点に係る家具の製造方法は、芯材と、芯材上に配置される導電性不織布シートと、導電性不織布シート上に配置される中材と、中材上に形成される表面材と、を有する化粧板を複数組み合わせるステップ、複数の化粧板の導電性不織布シート同士を導電性のネジ部材により接続するステップと、を有するものである。
【発明の効果】
【0028】
以上、本発明により、配線用差込接続器が埋め込まれた家具であっても電磁波のシールドが可能な化粧板及びこれを用いる家具、並びに、化粧板の製造方法及び家具の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態に係る化粧板の概略を示す図である。
図2】実施形態に係る化粧板の一断面の概略を示す図である。
図3】実施形態に係る家具の概略を示す図である。
図4】実施形態に係る家具の一部断面を示す図である。
図5】実施形態に係る家具の配線用差込接続器近傍の一部断面拡大図である。
図6】実施形態に係る家具の配線用差込接続器近傍の一部分解図である。
図7】実施形態に係る家具のアース用コネクタ近傍の概略を示す図である。
図8】実施形態に係る机の実際の写真図である。
図9】実施形態に係る電位測定の際の測定位置を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、また以下に示す実施形態、実施例において記載される具体的な例示についても適宜変更及び調整が可能であり、これらに限定されるものではない。
【0031】
図1は、本実施形態に係る化粧板(以下「本化粧板」という。)1の概略を示す図であり、図2は、本化粧板の一断面の概略図である。
【0032】
本図で示すように、本化粧板1は、芯材2と、芯材2上に配置される導電性不織布シート3と、導電性不織布シート3上に配置される中材4と、中材4上に形成される表面材5と、を有するものである。
【0033】
上記の構成により、本化粧板1は、電磁波のシールドが可能な化粧板となる。具体的には、この化粧板を家具に用い、この家具の化粧板上に電場を発生させるいわゆるパソコンやコンセント等の電気機械器具を設置しても、表面における帯電を防止し、電場の発生を抑えることが可能となる。
【0034】
本化粧板1において、芯材2は、本化粧板1における基礎となる材料である。芯材2の材質については適宜調整可能であり限定されないが、木材を用いるものであることが好ましい。
【0035】
芯材2の構造としても特に限定されず、天然無垢材、集成材、薄板を積層して接合した合板、木材等の植物繊維を押し固めた中密度繊維板(MDF:Medium-density Fiberboard)、格子状、中空又は六角形の中空の枠材、更には、格子状、中空上の枠材を一対の板で挟み込んだフラッシュ構造板、六角形の中空の枠材を一対の薄板で挟んだハニカムコア材等であってもよく、その構造は限定されない。
【0036】
また、芯材2の厚さについては適宜調整可能であり限定されないが、例えば1cm以上10cm以下であることが好ましく、より好ましくは5cm以下程度である。
【0037】
また、芯材2の面積についても適宜調整可能であり限定されない。家具に用いる場合一般的な大きさであればよく、例えば縦及び横の長さはいずれも50cm以上200cm以下であれば取り扱いが容易な範囲となる。
【0038】
また、本化粧板1において、導電性不織布シート3は、上記芯材2上に配置されるものであって、文字通り、導電性を備えた不織布シートである。導電性の不織布にすることにより、電場を除去することができる程度の導電性を付与することができるとともに、接着剤等の含侵を効率的に行い芯材2と中材4とを効果的に接合することができる。
【0039】
導電性不織布シート3は、導電性繊維を用いて不織布に仕上げられていることが好ましい。ここで「導電性繊維」とは、基礎繊維の周囲に導電性物質が皮膜として形成されたものであり、「基礎繊維」とは、導電性物質を皮膜として保持することができる基材となる繊維であって、例えば天然繊維や化学繊維を例示することができる。なお化学繊維を用いる場合、アクリル繊維やナイロン繊維を好適に用いることができるがこれに限定されない。またこの場合において、基礎繊維の周囲に皮膜として形成される導電性物質としては、限定されるわけではないが、ダイジェナイト(Cu)であることが好ましい。ダイジェナイトは導電性を備えて基礎繊維を強固に被覆することができる。
【0040】
導電性不織布シート3の厚さとしては、十分に本化粧板2の表面の電場を抑制することができる限りにおいて限定されるわけでは無いが、可能な限り薄いことが好ましい。厚さとしては、1mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。導電性不織布シート3は、中材4と芯材2を圧着させる際、押しつぶされることでより薄くなる。また、導電性不織布シート3を用いることで後述のように接着剤が含侵され、より接着を高める層としての機能を果たすことができるようになる。
【0041】
導電性不織布シート3の広さは、上記芯材2と同じ面積にしておくことが好ましい。同じ面積にすることで、芯材2と中材4とを漏れなく確実に圧着することが可能となる。
【0042】
また、本化粧板1において、中材4は、上記の通り導電性不織布シート3上に配置されるものであり、導電性不織布シート3の表面を覆い、化粧板としての表面を整えるための基礎となるものである。
【0043】
中材4としても、上記芯材2と同様であり、特に限定されるわけでは無いが、天然無垢材、集成材、薄板を積層して接合した合板、木材等の植物繊維を押し固めた中密度繊維板(MDF:Medium-density Fiberboard)等であってもよく、その構造は限定されない。また、中材4の場合、必ずしも厚い必要はないため、樹脂等の板によって構成されていてもよい。
【0044】
中材4の厚さは、本化粧板1の表面における電場を抑制することができる限りにおいて限定されるわけでは無いが、1mm以上10mm以下であることが好ましく、より好ましくは5mm程度である。本化粧板1では、中材4を設けても、導電性不織布シート3による電場抑制が可能となる。
【0045】
また、中材4の広さについては、上記芯材2と同じにしておくことが板材として好ましい。
【0046】
また、本化粧板1において、限定されるわけでは無いが、上記の通り、芯材2と中材4は、導電性不織布シート3に接着剤を含侵させて接合したものであることが好ましい。接着剤を導電性不織布シート3に含侵させつつ芯材2と中材4を接合することが可能となり、化粧板の製造工程に大きな変更を加えることなく製造ができるようになっている。
【0047】
また、本化粧板1では、中板4の表面に表面材5が形成されている。表面材5を形成することにより、表面を消費者の好みに合わせて調整することが可能となるとともに、耐水性、耐摩耗性等の性能を付与することが可能となる。ただし、場合によっては表面材5については敢えて設けないこととしてもよい。
【0048】
このように表面材5の材質としては特に制限されず、例えば、フェノール樹脂やメラミン樹脂等を印刷紙に含ませたものであってもよく、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィンシートを中板4の表面に張り付けたものであってもよい。
【0049】
表面材5の厚さとしては特に限定されないが、強度よりも表面の化粧として用いる観点から、3mm以下であることが好ましく、より好ましくは1mm以下である。
【0050】
また、後述するが、本化粧板1には孔が形成され、孔には、配線用差込接続器ECを嵌め合わされる孔が形成されていることが好ましい。このようにすることで配線用差込接続器ECと導電性不織布シート3との接続が可能となり、本化粧板1の表面における電場抑制をすることが可能となる。この場合のイメージを図5に示しておく。またこの配線用差込接続器ECは、一般的な家庭用の交流電源に接続するための交流電源端子を挿入する孔(交流電源端子用孔)だけでなく、USB用のソケットを設けたものであることが好ましい。近年、交流電源だけでなくUSBによる充電も用いられるようになっており、後述の記載のように、今回の確認によってUSBによる充電では高い電場を発生させてしまうことが確認される一方、本実施形態に係る家具(以下「本家具」という。)Fの構成によると十分な電場抑制を達成できることが確認できる。
【0051】
また、この場合において、限定されるわけでは無いが、孔の内周に、配線用差込接続器EC側面を囲う導電性不織布シート3を備えることが好ましい。この場合にイメージを図6に示しておく。このようにすることで、配線用差込接続器ECと導電性不織布シート3を接触させやすくし、配線用差込接続器ECの帯電防止をより効率的に行うことができる。
【0052】
また、本化粧板1は、上記の構造を備えるものであり、様々な用途に応用が可能であり、例えば家具として用いることができる。家具としては、限定されるわけでは無いが、机、テーブル、ベッド等であることが好ましい。特に机の場合は学習机や、オフィスデスク等を例示することができる。
【0053】
図3は、本化粧板1を用いた家具の一例として、机として用いた場合の一例を示す。本家具Fは、本化粧板1を用いたものであり、本家具Fは、本化粧板1を複数組み合わせることで構成されたものであることが好ましい。
【0054】
また、本家具Fにおいて、限定されるわけでは無いが、複数の化粧板のそれぞれの導電性不織布シート3は、ネジ等の接続具により接続されており、この接続具は金属等の導電性を備えていることが好ましい。図4に、本家具Fの接続部分の断面の一例について示す。接続具に導電性のものを用いることで、化粧板1同士の導電性不織布シート3を電気的に接続可能とし、家具表面において発生する電場を抑制することが可能となるといった効果がある。
【0055】
また、本家具Fにおいて、限定されるわけでは無いが、化粧板1には孔が形成され、孔には、配線用差込接続器ECを嵌め合わされる孔が形成されていることが好ましい。この場合の部分断面図と分解図をそれぞれ図5図6に示しておく。
【0056】
また、家具Fにおいて、限定されるわけでは無いが、孔の内周に、配線用差込接続器EC側面を囲う導電性不織布シート3を備えることが好ましい。これにより、このようにすることで、配線用差込接続器ECと導電性不織布シート3を接触させやすくし、配線用差込接続器ECの帯電防止をより効率的に行うことができる。
【0057】
また、本家具Fでは、家具の表面の電場を抑制するため、導電性不織布シート3に接続されたアース部材を備えていることが好ましい。このアース部材を用いてアースさせることで、家具の表面に貯まる電荷を除去することが可能となる。
【0058】
また、本家具Fにおいて、限定されるわけでは無いが、上記の配線用差込接続器ECとは別に、更に、本家具Fに、アースをとるためのアース用コネクタを備えていることが好ましい。この場合のイメージを図7に示す。なおこのアース用コネクタは上記の導電性不織布シート3に接続されていることが好ましい。これにより確実にアースをとることが可能となる。なお、このコネクタの形状については限定されるわけでは無いが、USB端子用のコネクタであることがUSBアース装置を差し込むことが可能となるため好ましい。
【0059】
ここで、本化粧板1の製造方法について説明する。本化粧板1の製造方法(S1)は、上記の構成を備える合板を製造することができる限りにおいて限定されるわけでは無いが、(S1-1)芯材2上に、接着剤を含侵させた導電性不織布シートを配置するステップ、(S1-2)導電性不織布シートを芯材2と合板により挟み込むステップ、を有するものである。これにより、上記本化粧板1を製造することが可能となる。
【0060】
また、本家具Fの製造方法(S2)は、上記の記載から明らかなように、本化粧板1と他の合板、好ましくは本化粧板1を複数用いて組み合わせることで製造されるものであるが、具体的には、(S2-1)芯材2と、芯材2上に配置される導電性不織布シートと、導電性不織布シート上に配置される合板と、合板上に形成される表面材と、を有する化粧板を複数組み合わせるステップ、(S2-2)複数の化粧板の導電性不織布シート同士を導電性のネジ部材により接続するステップと、を有するものである。これにより本家具Fは製造が可能となる。
【0061】
以上、本実施形態によって、配線用差込接続器が埋め込まれた家具であっても電磁波のシールドが可能な化粧板及びこれを用いる家具、並びに、化粧板の製造方法及び家具の製造方法を提供することができる。
【実施例
【0062】
ここで、上記実施形態に係る化粧板について、実際に作製しその効果を確認した。以下具体的に説明する。
【0063】
まず、芯材として、厚さ30mm、縦550mm、横1200mmのフラッシュ構造材を準備した。なお、側板及び背板として、縦横の大きさを異ならせたフラッシュ構造材も準備した。
【0064】
また、中材として、厚さ4mm、縦横は上記芯材と同じ大きさのベニヤ板を準備した。
【0065】
一方、導電性不織布シートとして、厚さ0.3mmのスパンボンド(日本蚕毛株式会社製、導電性を持つ交絡糸状織の繊維)を上記芯材及び中材と同じ大きさに切断したものを準備した。
【0066】
そして、上記芯材、中材、導電性不織布シートを十分に接着させたあと、その表面に表面材として、厚さ0.5mmのプリント紙を貼付し、化粧板として完成させた。
【0067】
そして、上記化粧板を上記の通り複数製造し、机として組み合わせて完成させた。この写真図を図8に示す。なお、この机の高さは730mmとしている。
【0068】
さらに、本化粧板に、縦40mm×横125mmの配線用差込接続器用の孔を形成し、この孔に配線用差込接続器を配置した。なお、この配線用差込接続器周囲には、上記図6で示すように、導電性不織布シートを巻き付け、合板内における導電性不織布シートと接続できるようにした。
【0069】
一方、比較例として、導電性不織布シートを設けない以外は同じ条件、寸法にて作成した合板(以下「比較合板」という。)を製造した。
【0070】
上記それぞれ作成した合板に対し、配線用差込接続器を、USB端子及び交流電源端子を備える家庭用電源(交流:100V、50Hz)に接続し、その複数箇所において表面の電位を測定した。この測定位置の関係を図9に示す。
【0071】
まず、本机にアースを取らず、そのままの状態で机表面の電場を測定した。この結果を下記表1に示す。
【表1】
【0072】
上記の結果、そのままの状態では平均160V/mの電場を確認した。
【0073】
一方、机に対しアースを接続し、上記と同様机表面の電場を測定したところ、平均0.55V/mまで電場を抑制することができるのを確認した。この結果を下記表2に示す。
すなわち、本机は、表面が導電性でないにもかかわらず、内部に導電性不織布シートを配置することで十分な電場抑制を確保できていることを確認した。
【表2】
【0074】
一方、交流電源端子によりスマートフォンの充電を行った際の電場抑制について確認を行った。この結果を下記表3に示す。
【表3】
【0075】
本結果によると、コンセント充電を行っている場合、机表面の電場は375V/mと高い値を示している一方、アースをとった本机の場合、1.9V/m程度まで大きく減少させていることを確認した。
【0076】
またここで、USB端子によりスマートフォンの充電を行った際の電場抑制について確認を行った。この結果を下記表4に示す。なお、USB充電においては、USB充電に用いていない他のUSB端子からUSBアース(レジナ製、プラグインアースを用いて4本の信号線をカットしたUSB端子によるアース)についても行った。
【表4】
【0077】
本結果によると、USB端子を用いて充電を行っている場合、机表面の電場は493V/mと高い値を示している一方、アースをとった本机の場合、51V/m程度まで大きく減少させていることを確認した。なお、USBアースを用いた場合は0.8V/mであり、本机はUSBアースを加えることでさらに効果的に電場を抑制できていることを確認した。
【0078】
以上、本実施例により、本化粧板及び本家具による効果を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、化粧板、これを用いた家具、更にはこれらの製造方法として産業上の利用可能性がある。


【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、配線用差込接続器が埋め込まれた家具であっても十分に電場を抑制可能な化粧板及びこれを用いる家具や化粧板の製造方法及び家具の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一観点に係る化粧板1は、芯材2と、芯材上に配置される導電性不織布シート3と、導電性不織布シート上に配置される中材4と、中材上に形成される表面材5を有する。本発明の他の一観点に係る化粧板の製造方法は、芯材上に接着剤を含侵させた導電性不織布シートを配置するステップと、導電性不織布シートを芯材と中材により挟み込むステップを有し、また本発明の他の一観点に係る家具の製造方法は、複数の前記化粧板の導電性不織布シート同士を導電性のネジ部材により接続するステップを有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9