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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】高圧水噴射装置および出隅ユニット
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20220804BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20220804BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
E04G23/02 Z
B08B3/02 F
E04G23/08 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018195444
(22)【出願日】2018-10-16
(65)【公開番号】P2020063587
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【弁理士】
【氏名又は名称】木森 有平
(72)【発明者】
【氏名】志水 勇介
(72)【発明者】
【氏名】狩野 佑弥
(72)【発明者】
【氏名】伊東 光一
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特許第5973877(JP,B2)
【文献】特開2005-105753(JP,A)
【文献】特開2013-116438(JP,A)
【文献】特開2004-025331(JP,A)
【文献】特開2001-062418(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0295864(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04G 23/08
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
はつり対象面に対して高圧水を噴射するノズルと、前記はつり対象面に対して開口部を有し前記ノズルが内部に配置されたケーシングを備えた高圧水噴射装置であって、前記高圧水噴射装置、壁面や床面の出隅の縁まで洗浄や不要物の除去を行う出隅ユニットを備え、前記出隅ユニットは、前記高圧水噴射装置の下面側に設けられた開口部の一部を遮蔽する被覆部と、前記はつり対象面と垂直な平面に沿うように配された当接部及び補助被覆部を有し、前記開口部と前記被覆部との間から漏れ出した廃液を前記出隅ユニット内に捉えることができ、前記出隅ユニットの前記被覆部が前記出隅から突出するとともに前記当接部及び補助被覆部が前記はつり対象面と垂直な平面に当接するように配され、前記高圧水噴射装置は前記ノズルからの高圧水により前記出隅の縁まで洗浄できることを特徴とする高圧水噴射装置。
【請求項2】
はつり対象面に対して高圧水を噴射するノズルと、前記はつり対象面に対して開口部を有し前記ノズルが内部に配置されたケーシングを備えた高圧水噴射装置であって、前記高圧水噴射装置、壁面や床面の出隅の縁まで洗浄や不要物の除去を行う出隅ユニットを備え、前記出隅ユニットは、前記高圧水噴射装置の下面側に設けられた開口部の一部を遮蔽する被覆部と、前記はつり対象面と垂直な平面に当接するように配された補助被覆部とを有し、前記開口部と前記被覆部との間から漏れ出した廃液を前記出隅ユニット内に捉えることができ、前記高圧水噴射装置は前記ノズルからの高圧水により前記出隅の縁まで洗浄できることを特徴とする高圧水噴射装置。
【請求項3】
前記補助被覆部は、ブラシまたは弾性ストッパー部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高圧水噴射装置。
【請求項4】
前記出隅ユニットは、前記被覆部と前記補助被覆部を構成する補助被覆部材の間において前記はつり対象面に垂直な平面に沿うように当接する当接部を有するか、又は、前記補助被覆部の先端から上方に立設して、前記はつり対象面に垂直な平面に沿うように当接する当接部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の高圧水噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高圧水を噴射することで床面や壁面等の出隅を洗浄する高圧水噴射装置および高圧噴射装置に取り付ける出隅ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から使用されている高圧水噴射装置は、ノズルヘッドから高圧水を噴射することでその圧力を利用し効率的に洗浄を行うウォータージェット機器であり、アスベストの除去や塗床材の剥離・撤去、外壁塗装・塗膜の除去、床面や壁面の洗浄等、幅広く用いられている。
このような高圧水噴射装置において、高圧水により剥離されたアスベストや塗装材、使用済みの廃液を回収するためにノズルヘッドの周囲にブラシ等のカバーを取り付け、カバー内に吸込み口を設けて除去した塗装材や廃液等をバキュームポンプ等により吸引回収する機能が開発されている。最近では、出隅や入隅等、壁のコーナー部においても廃液等を吸引することが可能で、コーナー部のアスベストの除去や洗浄等が可能となってきた。
【0003】
特許文献1は、高圧水噴射装置および出隅部研削方法に関する発明であって、研削対象面に対して高圧水を噴射する噴射ノズルと、前記噴射ノズルを囲うスカート部と、前記スカート部の前記研削対象面側に配設されて前記スカート部の開口部分の一部を遮蔽する遮蔽プレートと、前記遮蔽プレートの表面に立設されたガイドプレートとを備える高圧水噴射装置が開示され、ガイドプレートを他方の面に当接させた状態で、噴射ノズルにより前記一方の面に対して高圧水を噴射し、出隅を備えた研削対象物に対して簡易に研削作業を行うことができることが記載されている。
【0004】
特許文献2は、ウォータージェットノズルの壁面当接用アタッチメントに関する発明であって、所定の開口面(21)をもった殻体状を成し、ウォータージェットのノズル(8)を外側から内側空間に着脱可能に保持する取付口(22)と、外部吸引手段を接続する吸引ポート(23)と、を有するフレーム(2)と、該フレームの開口面(21)の周縁(21a)に当接面側に向かって植設した植毛帯(3)とから構成される壁面当接用アタッチメントが開示され、さらに、出隅に使用することを考慮し、フレーム(61、71)の開口面(62、72)を相交わる2平面の境目を含んで2平面同時に当接し得る形状とした実施例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5973877号公報
【文献】特開2005-105753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
壁面や床面の出隅を高圧水噴射装置により洗浄、除去等を行う場合、以下(1)、(2)、(3)、(4)の4つの課題が存在する。
(1)壁面や床面のコーナー部の縁部分に対する洗浄および除去
壁面や床面のコーナー部に関しては、コーナー部周辺だけでなくコーナー部の縁まで高圧水を噴射して洗浄等したいという要望がある。コーナー部の縁に高圧水を噴射することができない場合は、ブラシや除去器具等を使用して別途手作業で縁の清掃等を行う必要がある。
(2)除去した塗装材や廃液等の漏れ防止
壁面や床面のコーナー部から高圧水噴射装置が突き出た状態で高圧水を噴射した場合、高圧水噴射装置の下部から除去した塗装材や廃液等が漏れ出し周囲に飛散してしまう。よって壁面や床面のコーナー部に対して高圧水噴射装置を使用する場合、確実に廃液等が外部に漏れないようにする必要がある。
(3)高圧水噴射装置のコーナー部での操作性の向上
壁面や床面のコーナー部に対して高圧水噴射装置を使用する場合であっても、スムーズに高圧水噴射装置を操作することができることが重要である。
(4)アタッチメントの取付方法の簡易化
高圧水噴射装置に別の部品(アタッチメント)を取り付けることで壁面や床面の出隅を洗浄する場合は、簡単かつ短時間にアタッチメントの取り付けおよび取り外しを可能とする必要があり、さらにアタッチメントのサイズを最小限とする等、アタッチメント不使用時の保管の際に場所をとらないように考慮する必要がある。
【0007】
しかしながら特許文献1の高圧水噴射装置においては、遮蔽プレートによってスカート部の開口部分の一部を遮蔽しガイドプレートを他方の壁面に当接させた状態で作業するものであるため、作業する際にガイドプレートと壁面との間に摩擦が生じてしまい、高圧水噴射装置をスムーズに動かし難いという問題が発生する。またスカート部の開口部分を1枚の遮蔽プレートにより塞いでいるため、操作時に遮蔽プレートとスカート部の開口部分の隙間から廃液等が漏れ出してしまい、廃液等が外部に漏れ出してしまう恐れがある。
さらに特許文献2の壁面当接用アタッチメントに関しては形状が殻体状であり、出隅用としては2平面同時に当接する形状となっているためアタッチメントが大型化し、アタッチメントを使用しない場合の保管場所を別途確保する必要がある。
【0008】
そこで本発明の目的は、壁面や床面のコーナー部(出隅)の縁まで高圧水を噴射して洗浄や不要物の除去を行うことが可能で、さらに廃液等が外部に漏れ出すことを確実に防止することが可能な高圧水噴射装置および出隅ユニットを提供することにある。
また本発明の目的は、高圧水噴射装置本体に出隅ユニットを取り付けた場合であってもスムーズに出隅周辺を移動可能な高圧水噴射装置および出隅ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、はつり対象面に対して高圧水を噴射するノズルと、前記はつり対象面に対して開口部を有し前記ノズルが内部に配置されたケーシングと、出隅ユニットを備えた高圧水噴射装置であって、前記出隅ユニットは、前記開口部の一部を遮蔽する被覆部と、前記被覆部の両端に設けられた補助ローラを有し、前記ケーシングに連結されていることを特徴とする。
また本発明は、高圧水噴射装置に取り付けられる出隅ユニットであって、前記出隅ユニットは、前記高圧水噴射装置に取り付けるための取付部と、前記高圧水噴射装置の開口部を一部遮蔽する被覆部と、前記被覆部の両端に設けられた補助ローラを有することを特徴とする。
本発明によれば、高圧水噴射装置の開口部(ケーシングの開口部)が出隅ユニットの被覆部により一部遮蔽されているため、高圧水噴射装置を出隅に使用した場合であっても使用済みの廃液や除去後の屑は高圧水噴射装置のケーシング内部に捉えられ、高圧水噴射装置の下部から廃液等が漏れ出して周囲に飛散するという事態を防止することが可能となる。
また本発明の出隅ユニットには前記被覆部の両端に補助ローラが設けられており、補助ローラがはつり対象面と垂直な平面に当接し高圧水噴射装置の移動に伴って回転するため、はつり対象面と垂直な平面に出隅ユニットが接触して出隅ユニットと平面との間に摩擦が生じ高圧水噴射装置を動かし難い場合であっても、補助ローラの回転により高圧水噴射装置をスムーズに移動させることが可能となる。
【0010】
本発明の高圧水噴射装置は、前記ケーシングの前記開口部の先端にブラシを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、ケーシングの開口部の先端にブラシが設けられているため、高圧水噴射装置をはつり対象面に使用する場合、はつり対象面が凹凸形状であってもブラシの柔軟性によって変形して水密性を保ち、ノズルから噴射される水の飛散を防止することが可能となる。
【0011】
本発明の高圧水噴射装置は、前記ケーシングの外側面に複数のローラを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、ケーシングの外側面に設けられた複数のローラにより高圧水噴射装置をスムーズに移動することが可能となる。
【0012】
本発明の出隅ユニットは、前記開口部と前記被覆部との間から漏れ出した廃液を前記出隅ユニット内に捉えるための補助被覆部を有することを特徴とする。
本発明の補助被覆部は、被覆部材の背面下部に設けられ、弾性部材で形成された補助被覆部材を含み、高圧水噴射装置を出隅のはつり対象面に当接した場合に補助被覆部材の先端がはつり対象面と垂直な平面に当接するように設けられている。
本発明によれば、高圧水噴射装置の開口部と被覆部との境界部分から使用済みの廃液等が漏れ出した場合であっても、補助被覆部材により出隅ユニット内に排液等を捉えることが可能であり、廃液等の外部への飛散を二重に防止することが可能である。
【0013】
本発明の出隅ユニットは、前記補助被覆部がブラシまたは弾性ストッパー部材であることを特徴とする。
本発明によれば、補助被覆部がブラシまたは弾性ストッパー部材等の弾性部材であるため、はつり対象面に垂直な平面が凹凸形状であっても補助被覆部材の柔軟性によって変形して水密性を保ち、廃液等の外部への飛散を二重に防止することが可能である。
【0014】
本発明の出隅ユニットは、前記高圧水噴射装置に着脱可能であることを特徴とする。
本発明によれば、出隅ユニットが高圧水噴射装置に着脱自在に取り付けられるため、高圧水噴射装置を出隅に使用しない場合でも簡単に取り外し保管することができる。
【発明の効果】
【0015】
発明によれば、高圧水噴射装置の開口部が出隅ユニットの被覆部により一部遮蔽されているため、高圧水噴射装置を出隅に使用した場合であっても使用済みの廃液や除去後の屑は高圧水噴射装置のケーシング内部に捉えられ、高圧水噴射装置の下部から廃液等が漏れ出して周囲に飛散するという事態を防止することが可能となる。また万が一、高圧水噴射装置の開口部と被覆部との境界部分から使用済みの廃液等が漏れ出した場合であっても、補助被覆部材により出隅ユニット内に排液等を捉えることが可能であり、廃液等の外部への飛散を二重に防止することが可能である。
さらに本発明よれば、はつり対象面と垂直な平面に出隅ユニットが接触して出隅ユニットと平面との間に摩擦が生じ高圧水噴射装置を動かし難い場合であっても、ケーシングの外側面に設けられた複数のローラと出隅ユニットに設けられた補助ローラにより高圧水噴射装置をスムーズに移動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る高圧水噴射装置100を示す正面模式図である。
図2】上記実施形態に係る高圧水噴射装置100を示す側面模式図である。
図3】上記実施形態に係る高圧水噴射装置100の出隅ユニット10を示す斜視図である。
図4】上記実施形態に係る高圧水噴射装置100の高圧水噴射装置本体1を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る高圧水噴射装置100を示す正面模式図であり、図2は、上記実施形態に係る高圧水噴射装置100を示す側面模式図である。図3は、上記実施形態に係る高圧水噴射装置100の出隅ユニット10を示す斜視図であり、図4は、上記実施形態に係る高圧水噴射装置100の高圧水噴射装置本体1を示す断面模式図である。
本発明の高圧水噴射装置100は、壁面や床面の出隅に高圧水を噴射してその衝撃力により洗浄および塗床材や外壁塗装の除去を行い、使用済みの廃液および除去後の屑を吸引排出するものであり、高圧水噴射装置本体1と出隅ユニット10から構成される。高圧噴射装置100を作業員が手に持ち、壁面や床面等の出隅に沿って移動させることで、出隅部分の洗浄等を行う。
【0019】
高圧水噴射装置本体1は、高圧水を噴射するノズル2と、ノズル2が内部に配置される円筒形のケーシング3と、ケーシング3の外側面に設けられた複数のローラ31,31・・・と、ケーシング3の開口部の先端に設けられたリング状のブラシ32と、処理後の廃水やアスベスト片等を吸引するための吸込口4と、ケーシング3の上面に取り付けられたハンドル5から構成される。
【0020】
ノズル2は、高圧水をはつり対象面M1に向けて噴射するものであり、ケーシング3内の中心部に取り付けられ、ホース取付口21に接続されたホースから送られた水をノズル2から噴射する。ノズル2の形状、数、配置等は適宜選択可能である。
【0021】
ケーシング3は、ノズル2の周りを囲むことにより廃液等が高圧水噴射装置本体1の側面から漏れ出し周囲に飛散することを防止するための保護部材であり、円筒形であって、ノズル2が中心部に配置されており、はつり対象面M1側が開口している。ケーシング3の外側面には複数のローラ31,31,・・・が設けられ、ケーシング3の開口部33の先端にはブラシ32が取り付けられる。
【0022】
ローラ31,31・・・は、高圧水噴射装置100のスムーズな移動を補助するための滑動部材であり、球状に形成され、ケーシング3の外側面より突出して複数設けられる。ローラ31,31・・・は、水平方向(はつり対象面M1と平行な方向)に回転自在に支持されており、高圧水噴射装置100をはつり対象面M1に当接し移動させるとローラ31,31・・・もはつり対象面M1に当接し、高圧水噴射装置100の移動に伴ってローラ31,31・・・が回転する。本実施形態においては、ケーシング3の外側面に6つのローラ31,31・・・が設けられているが、ローラ31,31・・・の数、配置等は適宜選択可能である。
【0023】
ブラシ32は、ケーシング3の開口先端部分に設けられた弾性部材であり、高圧水噴射装置100を使用する際に、はつり対象面M1と接触する部分である。高圧水噴射装置100を使用する場合、ブラシ32を介してはつり対象面M1と当接するため、はつり対象面M1が凹凸形状であってもブラシ32の柔軟性によって変形して水密性を保ち、ノズル2より噴射される水の飛散を防止する。
【0024】
吸込口4は、使用済みの廃液や除去後の屑を吸引するための吸い込み口であり、ケーシング3の上部に開口して設けられている。ホースを介してバキュームポンプ等の吸引手段(図示なし)を接続することで、ケーシング3の内部にある廃液等を吸込口4から外部へ排出する。
【0025】
ハンドル5は、作業者が握って高圧水噴射装置100を移動させるための操作部であり、本実施形態では作業者が両手で持ちやすいようにU字状に形成され、ケーシング3の上部に取り付けられている。
【0026】
高圧水噴射装置本体1は、上部と下部によって構成されて互いの端面で連結され、下部が旋回可能とすることも可能である。
【0027】
図3は、上記実施形態に係る高圧水噴射装置100の出隅ユニット10を示す斜視図である。
出隅ユニット10は、ケーシング3に着脱自在に取り付けることが可能な出隅用の外付け部材であり、ケーシング3に取り付けるための取付部11と、ケーシング3の開口部33を一部遮蔽する略長方形状の被覆部12と、被覆部12の他端部122から下方に伸長した当接部15と、被覆部12の下部に取り付けられた補助被覆部13と、被覆部12の両端に設けられた補助ローラ14,14から構成される。
【0028】
取付部11は、ケーシング3に着脱自在に取り付けるための部材であり、一端は被覆部12に取り付けられ他端はケーシング3に取り付けられる。取付部11は、被覆部12から上方に立設し、ケーシング3の外側面上部にネジ等の固着手段111により取り付けられる。本実施形態においては、取付部11が断面L字形状をなし、被覆部12の一端部121から上方に立設し、略90度の角度でケーシング3側に折り曲げられてケーシング3の外側面上部に取り付けられている。
固着手段111はネジに限らず、高圧水噴射装置本体1と出隅ユニット10を着脱可能な部材であれば種類は問わない。
【0029】
被覆部12は、ケーシング3の開口部33を一部遮蔽して廃液等が外部に漏れ出すことを防ぐ板状部材である。被覆部12の一端部121は取付部11の下端に取り付けられ、取付部11の下端からケーシング3の開口部33を被覆するようにケーシング3の中心部へ伸長して取り付けられている。被覆部12は、略長方形状で、ケーシング3の直径程度の長さがあり、ケーシング3の外側面から開口部33の約6分の1を被覆する大きさとなっている。高圧水噴射装置100を壁面または床面の出隅に使用した場合、被覆部12がはつり対象面M1から突出したケーシング3の開口部33を被覆するように形成されているため、高圧水噴射装置100を出隅に使用しても廃液等が周囲に飛散することを防ぐことが可能となる。
【0030】
当接部15は、高圧水噴射装置100の水密性を高めるための部材であり、平面M2(出隅を形成する2平面のうち、はつり対象面M1に垂直な平面)に沿うように被覆部12と補助被覆部材132の間に取り付けられている。本実施形態においては、当接部15は被覆部12の他端部122(ケーシング3の中心側の端部)から下方に伸張して設けられているが、補助被覆部材132の先端1321から上方に立設して設けられていてもよいし、補助取付部材131からケーシング3の中心方向に伸長してL字状に取り付けられていてもよい。高圧水噴射装置100を出隅に使用した場合、ケーシング3の中心部に向けて伸長した被覆部12がケーシング3の開口部33を被覆し、さらに当接部15が平面M2に沿うように当接するため、ケーシング3の開口部33と被覆部12との境界部分や補助被覆部材132と平面M2の境界部分から廃液等が外部に漏れ出すことを防ぐことが可能となる。
当接部15の形状は、板状(図3)であってもよいし、平面M2に沿って所定間隔を空けて設けられた正方形状や球状の部材であってもよい。例えば、当接部15を平面M2に沿うように配置された複数のローラとすることで、水密性を高める効果と平面M2の滑動部材としての効果の両方を得ることができる。
被覆部12や補助被覆部13により水密性が充分確保できる場合は、当接部15はなくともよい。
【0031】
補助被覆部13は、水密性をさらに高めるために設けられた部材であり、補助取付部材131と、補助被覆部材132から構成される。
【0032】
補助取付部材131は、補助被覆部材132を出隅の平面M2に当接させるための取付部材であり、一端部1311が被覆部12の背面であってかつ取付部11の下端に取り付けられ、取付部11の下端(被覆部12の背面)から下方に伸長した長尺状の板状部材に形成される。他端部1312には補助被覆部材132が取り付けられている。
【0033】
補助被覆部材132は、ケーシング3の開口部33と被覆部12との境界部分から外部に漏れ出した廃液等を出隅ユニット10内部に捉えて外部に漏れ出すことを防ぐ補助部材であり、ブラシやゴム製のストッパー等の弾性ストッパー部材で形成される。補助被覆部材132は、被覆部12の背面下方に位置し、補助取付部材131の他端部1312にケーシング3の中心方向に伸長して取り付けられ、高圧水噴射装置100を出隅のはつり対象面M1に当接した場合に、補助被覆部材132の先端1321が平面M2に当接するように設けられる。補助被覆部材132が弾性部材で形成されているため、平面M2が凹凸形状であっても補助被覆部材132の柔軟性によって変形して水密性を保ち、廃液等の飛散を二重に防止している。
【0034】
補助ローラ14,14は、被覆部12の両端に配置された滑動部材であり、高圧水噴射装置100の平面M2上でのスムーズな移動を補助する。補助ローラ14,14は球状に形成され、補助取付部材131の左右端1313,1314から突出してケーシング3の中心方向に向かって取り付けられている。補助ローラ14,14は、平面M2と平行な方向に回転自在に支持されており、高圧水噴射装置100を出隅のはつり対象面M1に当接し移動させると、補助ローラ14,14が平面M2に当接し、高圧水噴射装置100の移動に伴って補助ローラ14,14が回転する。本実施形態においては、補助ローラ14,14は、補助取付部材131の左右端1313,1314に取り付けられ被覆部12の両端に配置されていたが、補助ローラ14,14の数、配置等は適宜選択可能である。
【0035】
被覆部12または補助被覆部13ははつり対象面M1と平行な方向または平面M2と平行な方向にスライド可能とすることもできる。例えば、被覆部12または補助被覆部13と取付部11の取付構造において、取付部11を基準として被覆部12または補助被覆部13を相対的にスライドできる構造を採用する。このような構造を採用すれば、高圧噴射処理装置100を出隅に使用した際にケーシング3の開口部33と被覆部12との境界部分が広く廃液等が外部に漏れやすい場合にはつり対象面M1と平行な方向かつケーシング3の中心部の方向へ被覆部12または補助被覆部13を移動させ、開口部33と被覆部12との境界部分を狭くすることが可能となり、かつ当接部15や補助被覆部材132の当接状態を調整することができる。また平面M2に大きな凹凸が存在し、当接部15や補助被覆部材132が平面M2にうまく当接しない場合は、平面M2と平行な方向に被覆部12や補助被覆部13を移動させることで、平面M2と適切に当接する位置を選択することができる。
【0036】
(高圧水噴射装置100の使用方法)
本発明の実施形態に係る高圧水噴射装置100の使用方法に関して以下説明を行う。
作業者が床面および壁面の出隅部分の洗浄等を行う場合、まず高圧水噴射装置本体1に出隅ユニット10を取り付ける取付作業を行う(S101)。取付工程においては、高圧水噴射装置本体1のケーシング3の開口部33を出隅ユニット10の被覆部12で覆うようにケーシング3の外側面から出隅ユニット10を挿入し、出隅ユニット10の取付部11をケーシング3の外側面上部に固着手段111により取り付ける。本実施形態においては、出隅ユニット10の取付部11と被覆部12の間に高圧水噴射装置本体1のケーシング3を挿入して取り付けを行う。
次に、作業者が床面および壁面の出隅部分のはつり対象面M1にケーシング3の開口側に設けられたブラシ32を当接させ、出隅部分の平面M2に当接部15および補助被覆部材132を当接させる(S102)。
そして、作業者がハンドル5に設けられた高圧水を噴射するためのスイッチ(図示なし)を投入することで、ノズル2から高圧水がはつり対象面M1に向けて噴射される(S103)。
噴射された高圧水ははつり対象面M1を洗浄する。またはつり対象面M1の塗床材、外壁塗装の除去やアスベストの除去を行う(S104)。ケーシング3の開口部33がはつり対象面M1、出隅ユニット10の被覆部12および当接部15により被覆されているため、使用済みの廃液や除去後の屑はケーシング3内部に捉えられ、吸引手段(図示なし)により吸込口4から外部へ排出される。またケーシング3の開口部33と被覆部12との境界部分から使用済みの廃液等が漏れ出した場合は、補助被覆部材132により補助被覆部材132と被覆部12との間に捉えられて、吸引手段(図示なし)により吸込口4から外部へ排出される。
また、作業者はハンドル5を握りながら高圧水噴射装置100を出隅に沿って動かし、出隅全体の洗浄等を行う(S105)。高圧水噴射装置100を移動させると、はつり対象面M1をケーシング3の外側面に設けられたローラ31,31・・・が回転し、平面M2を補助ローラ14,14が回転し、高圧水噴射装置100の移動を補助する。
【0037】
このように、本発明の高圧水噴射装置100によれば、壁面や床面の出隅の縁まで高圧水を噴射して洗浄や不要物の除去を行うことが可能であり、さらに出隅ユニット10に搭載された二重の水密機構によって廃液等が外部に漏れ出すことを確実に防止することが可能となる。
また、はつり対象面M1と平面M2両方に当接するローラ31および補助ローラ14により、操作が難しい高圧水噴射装置100であってもスムーズに移動させることが可能となる。
そして、出隅ユニット10がコンパクトでかつ高圧水噴射装置本体1から簡単に着脱可能であるため、高圧水噴射装置本体1を出隅に使用しない場合でも簡単に取り外し保管することができる。
【0038】
以上、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
100 高圧水噴射装置、
1 高圧水噴射装置本体、
2 ノズル、
21 ホース取付口、
3 ケーシング、
31 ローラ、
32 ブラシ、
4 吸込口、
5 ハンドル、
10 出隅ユニット、
11 取付部、
111 固着手段、
12 被覆部、
13 補助被覆部、
132 補助被覆部材、
14 補助ローラ、
15 当接部、
M1 はつり対象面、
M2 平面(はつり対象面と垂直な平面)


図1
図2
図3
図4