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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】ロック解除装置及び建具
(51)【国際特許分類】
   E05C 9/02 20060101AFI20220804BHJP
   E05C 17/24 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
E05C9/02
E05C17/24
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2016073012
(22)【出願日】2016-03-31
(65)【公開番号】P2017180044
(43)【公開日】2017-10-05
【審査請求日】2019-01-29
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(73)【特許権者】
【識別番号】000131511
【氏名又は名称】株式会社シブタニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊坂 友和
(72)【発明者】
【氏名】山田 圭介
【合議体】
【審判長】住田 秀弘
【審判官】有家 秀郎
【審判官】奈良田 新一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-256601(JP,A)
【文献】特開2017-115464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C17/00-17/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体の外部側に設けられ、前記枠体に対して上下方向及び水平方向に移動可能に設けられた外部ハンドルと、
前記枠体内に開閉可能に収められた障子と、
前記障子および前記枠体に連結されるとともに、前記障子の前記枠体に対する開口長を規制する開口規制アームと、
前記障子と前記枠体とを前記開口規制アームを介して係合した状態を保持するロック機構と、
前記枠体に設けられ、前記外部ハンドルと固定され、前記外部ハンドルの操作により前記枠体内の溝に沿って移動可能な連動バーを備え、前記ロック機構による前記障子と前記枠体との係合を解除するロック解除機構と、
を備え、
前記障子が閉じた状態の場合に、前記外部ハンドルの操作による前記連動バーの前記枠体内の溝に沿った動作に伴って、前記開口規制アームと前記障子との係合が解除され、
記開口規制アームによって前記障子の開口長が規制された小開口状態の場合に、前記外部ハンドルの操作による前記連動バーの前記枠体内の溝に沿った動作に伴って、前記開口規制アームと前記枠体との係合が解除されることを特徴とするロック解除装置。
【請求項2】
前記開口規制アームは、
長孔が形成され前記障子に設けられた規制ピンが前記長孔内に挿入されて連結されるアーム本体と、
前記アーム本体に回動可能に連結され、前記枠体に設けられる凸部と連結される取付片とを備え、
前記障子が閉じられて前記ロック機構により前記枠体と前記障子とが係合された施錠状態では、前記外部ハンドルの操作による前記ロック解除機構の動作に伴って、前記アーム本体と前記規制ピンとの係合が解除され、
前記開口規制アームで前記枠体に対する前記障子の開口長が規制されて前記障子が開けられた小開口状態では、前記外部ハンドルの操作による前記ロック解除機構の動作に伴って、前記取付片と前記凸部との係合が解除され
請求項に記載のロック解除装置。
【請求項3】
枠体と、
前記枠体内に開閉可能に収められた障子と、
請求項1または請求項2に記載のロック解除装置と、
を備えることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば縦辷り出し窓や開き窓等の開閉作動する障子を備えた建具のロック解除装置及び建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、障子が換気や排煙等のために所定角度だけ開くようにした開口部装置が知られている。ビル等の高層階で障子が開きすぎると危険であるため所定角度だけ開くように規制している。ところで、高層ビル等においては、火災時に消防隊が消火活動や救出活動を行うために、外部から建物内に進入するための非常用進入口が設けられている。上述した開口部装置が設けられた建具を非常用進入口とする場合、外部から障子を全開できるように屋外ハンドルが設けられている。
例えば特許文献1に記載された建具では、通常時は障子の開放角度が規制され、非常時には、外部開放装置の屋外ハンドルの操作に連動する連動部により屋外から鍵装置が解錠される構成を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-71043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の建具では、錠装置、内部ハンドル、外部開放装置が障子に設けられているため、障子の構成が複雑となり、障子の施工が煩雑であった。
また、外部ハンドルの操作時に、障子の解錠操作と、開放角度規制装置の解除操作とを行う必要があり、非常時の操作が煩雑であった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、障子を簡易な構造にして建具の施工性を向上させることができ、且つロック解除時の操作性に優れるロック解除装置及び建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るロック解除装置は、枠体の外部側に設けられ、前記枠体に対して上下方向及び水平方向に移動可能に設けられた外部ハンドルと、前記枠体内に開閉可能に収められた障子と、前記障子および前記枠体に連結されるとともに、前記障子の前記枠体に対する開口長を規制する開口規制アームと、前記障子と前記枠体とを前記開口規制アームを介して係合した状態を保持するロック機構と、前記枠体に設けられ、前記外部ハンドルと固定され、前記外部ハンドルの操作により前記枠体内の溝に沿って移動可能な連動バーを備え、前記ロック機構による前記障子と前記枠体との係合を解除するロック解除機構と、を備え、前記障子が閉じた状態の場合に、前記外部ハンドルの操作による前記連動バーの前記枠体内の溝に沿った動作に伴って、前記開口規制アームと前記障子との係合が解除され、前記開口規制アームによって前記障子の開口長が規制された小開口状態の場合に、前記外部ハンドルの操作による前記連動バーの前記枠体内の溝に沿った動作に伴って、前記開口規制アームと前記枠体との係合が解除されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、障子と枠体との係合を解除するロック解除機構及びその操作部である外部ハンドルが枠体に設けられているため、ロック解除装置の機構を全て障子に設ける従来の建具に比べて、障子を簡易な構造にすることができる。その結果、障子の組立が容易となり、建具の施工性を向上させることができる。
【0009】
本発明によれば、ロック解除機構の作動部として連動バー及び外部ハンドルを枠体側に設けているため障子を簡易な構造にすることができる。また、外部ハンドルの操作に連動して枠体に対して移動する連動バーを備え、ロック機構による障子側ロック部材と枠側ロック部材との係合状態が、連動バーの枠体に沿った移動により解除可能であり、外部ハンドルの操作により連動バーを動かす簡易な操作によりロック解除機構を構成できる。
【0010】
本発明に係るロック解除装置において、前記障子と前記枠体とに連結されるとともに、前記障子の前記枠体に対する開口長を規制する開口規制アームを備え、前記ロック機構は、前記開口規制アームを介して前記障子側ロック部材と前記枠側ロック部材とが係合されて前記枠体と前記障子とを係合し、前記ロック解除機構は、前記外部ハンドルの操作による前記連動バーの動作に伴って、前記開口規制アームと前記障子側ロック部材または前記枠側ロック部材との係合が解除可能に構成されていてもよい。
【0011】
本発明によれば、障子の開口長を規制する開口規制アームを介して障子と枠体とが連結され、外部ハンドルの操作によって開口規制アームと障子側ロック部材または枠側ロック部材との係合が解除可能に構成されている。また、連動バーの操作により開口規制アームと障子側ロック部材と枠側ロック部材との係合が解除できる。この結果、障子が閉じた状態で施錠されていても、外部ハンドルの操作により開錠可能である。また、開口規制アームを手動で外す必要が無いので、障子が閉じた状態から、開口規制アームとの係合が解除されて開口長の規制を解除する操作までを外部ハンドルの操作のみで行うことができる。
【0013】
本発明によれば、障子の開口長を規制する開口規制アームを備える場合に、障子が閉じられてロック機構により枠体と障子とが係合された状態で外部ハンドルを操作することによって、開口規制アームと障子との係合が解除できる。この結果、障子を開ける前に、外部ハンドルで開口規制アームと障子との係合が解除できるので、障子を開口させた後に、再度開口規制アームの係合を解除する操作が不要となり、簡易且つ円滑に障子を開口することができる。したがって、非常時に外部から障子を開口する際の操作性に優れる。
【0014】
本発明に係るロック解除装置は、前記開口規制アームには、前記障子側ロック部材との係止部と、前記係止部の一部において前記連動バーの動作方向に対して傾斜する傾斜部とが設けられ、前記外部ハンドルの操作による前記連動バーの動作に伴って前記障子側ロック部材が前記傾斜部にガイドされて、前記障子側ロック部材と前記係止部との係止が解除されてもよい。
【0015】
本発明によれば、連動バーの移動に伴って、障子側ロック部材が傾斜部にガイドされて障子側ロック部材と係止部との係止が解除されるので、簡単な操作で円滑に開口規制アームと障子側ロック部材とのロックが解除できる。
【0016】
本発明に係るロック解除装置は、前記開口規制アームで前記枠体に対する前記障子の開口長が規制されて前記障子が開けられた状態で、前記外部ハンドルの操作による前記連動バーの動作に伴って、前記開口規制アームと前記枠体との係合が解除されてもよい。
【0017】
本発明によれば、開口規制アームで枠体に対する障子の開口長が規制されて障子が開けられている場合に、外部ハンドルを操作することによって、開口規制アームと枠体との係合が解除できる。また、開口規制アームと障子との係合が簡単な操作により容易に解除できる。
【0018】
本発明に係るロック解除装置において、前記開口規制アームは、長孔が形成され前記障子に設けられた規制ピンが前記長孔内に挿入されて連結されるアーム本体と、前記アーム本体に回動可能に連結され、前記枠体に設けられる凸部と連結される取付片とを備え、前記障子が閉じられて前記ロック機構により前記枠体と前記障子とが係合された施錠状態では、前記外部ハンドルの操作による前記ロック解除機構の動作に伴って、前記アーム本体と前記規制ピンとの係合が解除され、前記開口規制アームで前記枠体に対する前記障子の開口長が規制されて前記障子が開けられた小開口状態では、前記外部ハンドルの操作による前記ロック解除機構の動作に伴って、前記取付片と前記凸部との係合が解除されてもよい。
【0019】
本発明によれば、外部ハンドルを用いて、施錠状態の障子を開ける操作と、小開口状態の障子の規制を解除する操作とが同様の操作により行うことができる。
【0020】
本発明に係る建具は、枠体と、前記枠体内に開閉可能に収められた障子と、上記ロック解除装置と、を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、枠体と障子とのロック解除機構及び操作部である外部ハンドルが枠体に設けられているので、障子のロック解除装置の機構を全て障子に設ける従来の建具に比べて、障子を簡易な構造にできる。その結果、障子の組立が容易となり、建具の施工性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るロック解除装置及び建具は、障子のロック解除装置の機構を全て障子に設ける従来の建具に比べて、障子を簡易な構造にできる。その結果、障子の組立が容易となり、建具の施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る縦辷り出し窓の要部縦断面図である。
図2図1に示す縦辷り出し窓の要部水平断面図である。
図3】枠体の外部ハンドル部分の水平断面図である。
図4】ロック機構及びロック解除機構を示す模式図であり、(a)は、枠体を見込み面側から見た模式図であり、(b)は障子を見込み面側から見た模式図である。
図5】閉鎖位置と開放位置における縦框と小開口規制アームとを示す模式図であり、(a)は、縦框を見込み面側から見た模式図であり、(b)は、(a)の縦框と対向する面側の小開口規制アームを示す模式図である。
図6】小開口規制アームと枠体とを示す模式図であり、(a)は枠体の見込方向から見た図であり、(b)は枠体の見付け方向から見た図である。
図7】ロック解除機構による解錠時の態様を示す図であり、(a)は施錠時の状態を示し、(b)は外部ハンドル牽引段階を示し、(c)は外部ハンドル引き上げ段階を示し、(d)は連動バー固定段階を示す模式図である。
図8】ロック解除機構による小開口規制アームの解除時の態様を示す図であり、(a)は小開口規制状態を示し、(b)は外部ハンドル引き上げ段階を示し、(c)は小開口規制アームの解除段階を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態による建具の一例として縦辷り出し窓について添付図面により説明する。
図1に本実施形態に係る縦辷り出し窓1の縦断面図を示す。図2に縦辷り出し窓1の水平断面図を示す。図1及び図2に示す縦辷り出し窓1は、躯体の開口部に取り付けられる枠体7と、枠体7内に、開閉可能に収められた障子9とを備える。
本実施形態に係る縦辷り出し窓1は障子の開放位置を所定角度の小開口に制限する小開口制限機構、ロック機構、及びロック解除機構を備えている。この縦辷り出し窓1は、例えばアルミニウム合金等の金属部材と樹脂部材の複合建具からなっているが、金属部材製の建具や樹脂部材製の建具でもよい。
【0025】
枠体7は、それぞれアルミニウム合金及び合成樹脂からなる上枠3及び下枠4と左右の縦枠5、6とが四角形枠状に形成されている。
枠体7の上枠3は屋外側(図1における左側)に設けた金属上枠3aと屋内側(図1における右側)に設けた樹脂上枠3bとが互いに係合されている。下枠4は屋外側に設けた金属下枠4aと屋内側に設けた樹脂下枠4bとが互いに係合されている。金属上枠3a及び金属下枠4aはアルミニウム合金からなる。
【0026】
戸先側(図2において左側)に設けた縦枠5は屋外側(図2において上側)に設けた金属縦枠5aと屋内側(図2において下側)に設けた樹脂縦枠5bとが互いに係合されている。吊元側(図2において右側)に設けた縦枠6は屋外側に設けた金属縦枠6aと屋内側に設けた樹脂縦枠6bとが互いに係合されている。金属縦枠5a、6aはアルミニウム合金からなる。
【0027】
戸先側の縦枠5の見込方向の略中央部には、断面略U字形状の縦溝5cが上下方向に延びて形成されている。縦溝5cには、断面略U字形状の連動バー51が対向して縦溝5c内を摺動可能に配置されている。連動バー51の下部には、枠体7の屋外側の下部から屋外に向かって突出する外部ハンドル2が固定されている。
【0028】
外部ハンドル2は、図1及び図2に示すように平面視略L字形状の平板状の部材であり、操作本体2aと、連動バー51にビスBで固定される接続部材2bと、2本の調整ピン21,21とを備える。
図3は、枠体7の外部ハンドル2部分の水平断面図である。図4は、ロック機構及びロック解除機構を示す模式図であり、図4(a)は、枠体を見込み面側から見た模式図であり、図4(b)は障子を見込み面側から見た模式図である。図3及び図4に示すように、縦溝5cの屋外側に隣接して、金属縦枠5aにアジャスタ55が設けられている。アジャスタ55には、平面視E字形状の調整溝55aが形成されている。外部ハンドル2の操作本体2aにおけるアジャスタ55と対向する面には、上下方向に並ぶ2本の調整ピン21,21がアジャスタ55側に突出して固定されている。各調整ピン21,21はスライド可能に調整溝55a内に挿入されている。調整溝55aには、上下方向における2本の調整ピン21,21の間に、補助ピン55bがスライド可能に挿入されている。2本の調整ピン21,21と補助ピン55bとの間にはバネ55cが設けられている。外部ハンドル2とアジャスタ55とによる機構は後述する。
【0029】
障子9は、枠体7内に開閉可能に納められている。障子9は、それぞれアルミニウム合金と樹脂からなる上框10及び下框11と左右の縦框12,13とが略四角形枠状に形成された框体14を有している。框体14の内部にはパネルとして例えば二層ガラス等の複層ガラスからなるガラスパネル15が納められている。障子9の吊元は枠体7の見付け方向の一端部である縦枠6近傍に設けられ、その軸線は上下方向に延びて上枠3と下枠4に支持されている。
【0030】
枠体7に納められた障子9の框体14はそれぞれ屋外側に設けたアルミニウム合金からなる金属上框17及び金属下框18と左右の金属縦框19,19とで四角形の枠状に形成されている。
【0031】
戸先側(図2において左側)の金属縦框19には、断面略U字形状のパネル嵌合溝19aが形成されている。パネル嵌合溝19aの屋内側(図2において下側)にはハンドル受け部19bが形成されている。このハンドル受け部19bの見込み面19baにはグレモン錠の内ハンドル30が取り付けられている。ハンドル受け部19bには見込み面19baを除いて屋内側見付け面を覆う樹脂縦框27が係合されている。
【0032】
図2に示す金属縦框19において、屋内側に設けたハンドル受け部19bの見込み面19ba側に上下方向に延びる略四角形筒状をなす中空ホロー部32と中空枠部33とが配列されている。
図2に示すように、中空枠部33は金属縦框19の断面略U字形状の枠部19cに断面略U字形状のスライドバー31が対向するように配置されている。スライドバー31は、枠部19cに対して摺動可能に設けられている。図5(a)に示すように、スライドバー31の内ハンドル30に対向する位置には断面略U字形状のスライダー34が嵌合されて中空に構成されている。スライダー34については後述する。
【0033】
内ハンドル30は支軸37を中心に上下方向に回動可能である。図5(a)に示すように、ハンドル受け部19bの見込み面19baには内ハンドル30の回動を許容する開口部38が形成されている。開口部38は断面ラッパ状に形成されており、内ハンドル30は開口部38の範囲で回動可能である。
内ハンドル30に形成された先端部30cは、中空ホロー部32から枠部19cに形成した挿通穴部19dを通って中空枠部33内に突出している。
【0034】
スライダー34は枠部19c内をスライドバー31と一体に摺動可能であり、その上下方向の中央部には、内ハンドル30の先端部30cを受け入れる凹部を形成した連動突部34aが突出形成されている。そのため、内ハンドル30を回動させると先端部30cで係合する連動突部34aを介してスライダー34がスライドバー31と一体に連動して上下動する。
また、中空枠部33内には内ハンドル30で解錠操作するグレモン錠の連動棒(図示せず)が挿通され、この連動棒にスライダー34及び枠部19cを封止する一対の気密ピースを連結して一体化してもよい。
【0035】
金属縦框19のスライダー34の上方には、規制ピン(障子側ロック部材)43が設置されている。規制ピン43は、後述する小開口規制アーム(開口規制アーム)42の開閉カム溝45に摺動可能に嵌合して障子9の閉鎖位置と開放位置を規制する規制部材である。
【0036】
小開口規制アーム42は、障子9の開放角度を規制する開口部材であり、アーム本体46と、取付片47とを備える。図6に小開口規制アーム42と枠体7とを示す模式図を示す。図6(a)は小開口規制アーム42を枠体の見込方向から見た図であり、図6(b)は小開口規制アーム42を枠体7の見付け方向から見た図である。図4図6(a)及び図6(b)に示すように、縦溝5cには、縦溝5cの見込み面から上下方向に並んで突出する2つの凸部(枠側ロック部材)5d,5dが設けられている。凸部5d,5dは連動バー51に上下方向に延びて形成された2つのスリット51a,51aから突出して、後述する取付片47の係止溝47c,47cに係止されている。
【0037】
取付片47は、図6(a)及び図6(b)に示すように、平面視略L字形状の係止溝47c,47cが上下方向に2本並んで形成されている。2つの係止溝47c,47cは、略同一形状で形成されており、上下方向に延びる上下溝部47d,47dと、上下溝部47d,47dの下端から屋外側(図6(b)において左側)に水平方向に曲折して、取付片47の端部に開口する水平溝部47e,47eとからなる。取付片47には、略平板状の部材の上下端部が水平方向に曲折して係止壁47a,47bが形成されている。
【0038】
連動バー51には、2つの突起(枠側ロック部材)57,57が上下方向に並んで設けられている。2つの突起57,57は、取付片47を上下方向から挟むように取付片47の係止壁47a,47bに当接している。
【0039】
図4から図6に示すように、取付片47には回転軸44が設けられている。回転軸44には、アーム本体46が回動可能に支持されている。
回転軸44とアーム本体46とには小開口規制アーム42を図5(b)に実線で示す垂直位置に付勢するばね41が取り付けられている。
アーム本体46には規制ピン43を嵌合させる開閉カム溝(係止部)45が形成されている。開閉カム溝45は例えば略Z字型に形成されており、規制ピン43が上側の拡幅溝45a内に位置する場合には障子9は閉鎖位置にあり、下端の終端溝部45bに位置する場合には障子9は所定の小開口位置にある。
拡幅溝45aの下部には、上方に向かうにつれて連動バー51側に近付くように傾斜する傾斜部45cが形成されている。
【0040】
ロック機構は、小開口規制アーム42を介して障子側ロック部材である規制ピン43と枠側ロック部材である凸部5d,5d及び突起57,57とが係合されることで、枠体7と障子9とを係合している。図5(b)に二点鎖線で示すように、障子9が小開口位置に開口した状態で規制ピン43が終端溝部45bにおける最奥部に位置すると障子9は小開口状態に保持される。小開口状態で小開口規制アーム42は一点鎖線で示すように斜めに保持されるため、規制ピン43が最奥部から開閉カム溝45の終端溝部45b内を移動したりすることなく保持される。内ハンドル30を動かしたり強風等が障子9に吹き付けたりしたとしてもずれたり回動したりすることはない。
【0041】
障子8には内ハンドル30の操作により障子9の施錠を行う障子側ロック機構と、解錠を行う障子側ロック解除機構とを備える。障子側ロック機構及び障子側ロック解除機構は、以下の構成を備える。図5(a)に示すように、戸先側におけるスライダー34と規制ピン43の間には、中空ホロー部32の長手方向に直交する方向に進退可能な作動部材48が中空ホロー部32に設置されている。作動部材48は規制ピン43の近傍に位置する。この作動部材48の側部には作動ピン49が突出している。作動部材48は枠部19cとスライドバー31に形成された開口を通して中空枠部33の外側に突出可能である。
【0042】
作動部材48の側部には解除プレート50が昇降可能に取り付けられ、この解除プレート50に形成した斜め方向の摺動ガイド溝50aには作動ピン49が摺動可能に嵌合している。しかも、解除プレート50には弾性部材としてコイルばね52が取り付けられていて解除プレート50を上方位置に付勢している。
【0043】
解除プレート50には操作レバー50bが形成され、操作レバー50bはハンドル受け部19bの見込み面19baに形成された不図示の開口溝内から突出して手動で上下動可能に構成されている。操作レバー50bは摺動ガイド溝50aと作動ピン49とによって、開口溝の上端位置で作動部材48を後退位置に保持している。開口溝の下端位置で作動部材48を小開口規制アーム42の下部と干渉する位置に突出させる。
【0044】
また、開口溝の上端位置にある操作レバー50bは、上方位置に回動させた内ハンドル30の近傍に位置している。そのため、操作者は片手で内ハンドル30を把持しながら操作レバー50bを上端位置から下端位置まで押し下げ可能である。操作レバー50bが開口溝の下端位置にあると作動部材48は前方に突出してその先端テーパ部48aが小開口位置でロックされた小開口規制アーム42の下端部をわずかに押動する。これによって、規制ピン43は開閉カム溝45の終端溝部45bの最奥部から離れてロック位置を外れる。この状態で障子9を閉鎖作動することができる。
これら作動部材48、操作レバー50b、小開口規制アーム42等は障子側ロック解除装置を構成する。
【0045】
内ハンドル30の降下位置で障子9が閉鎖位置にあり、図5(a)に示す内ハンドル30の上方位置で障子9が開放可能位置にある。内ハンドル30を降下位置から上昇位置に回動させると、内ハンドル30の先端部30cが下方に回動して先端部30cに係合するスライダー34がスライドバー31と一体に下方に移動する。
【0046】
内ハンドル30が下方位置にある場合、スライドバー31は上方位置(基準位置)にある。また、内ハンドル30を図5(a)に示す上方位置に回動させると、スライドバー31は下方位置に降下する。
【0047】
図4(b)及び図5(a)に示すように、規制ピン43はハンドル受け部19bの見込み面19baに露出している。規制ピン43は開閉カム溝45を外れた位置からコイルばね(不図示)の付勢力で前方に突出して開閉カム溝45に挿入される。規制ピン43を開閉カム溝45に再度挿入させるには障子9を所定角度の小開口位置に戻すか、あるいは障子9を閉鎖位置に戻すことが好ましい。
【0048】
本実施形態に係る縦辷り出し窓1は上述の構成を備えており、次にその作用を説明する。障子9を閉鎖させた施錠状態で内ハンドル30は下方に位置しており、スライドバー31は上方位置(基準位置)にある。この状態で小開口規制アーム42は図5(b)に実線で示す閉鎖位置に垂下している。
【0049】
図7は、ロック解除機構による解錠時の態様を示す図である。
図7を用いて施錠状態時における外部ハンドル2の操作による小開口規制アーム42の施錠か解除される態様について説明する。なお、2つの凸部5d,5dは連動バー51に覆われているが、図7では説明のため実線で示している。
【0050】
図7(a)は施錠状態の外部ハンドル2と小開口規制アーム42との関係を示す図である。縦辷り出し窓1が施錠状態のときに障子9を開口する場合、操作者は、外部ハンドル2の操作本体2aを屋外方向(図7(a)に示す矢印A1方向)に引く。すると、図7(b)に示すように、操作本体2aが接続部材2bに対して矢印A1方向に相対移動し、2本の調整ピン21,21が調整溝55a内を水平方向に移動する。このとき、補助ピン55bは、操作本体2aに形成された長穴2c内を水平方向に相対移動して、2本の調整ピン21,21と補助ピン55bとが調整溝55a内で上下方向に一列に並ぶ。
【0051】
次に、操作者は、外部ハンドル2の操作本体2aを上方向(図7(c)に矢印A2で示す方向)に持ち上げる。すると、2本の調整ピン21,21及び補助ピン55bが調整溝55a内を上方向に移動する。操作本体2aは、接続部材2bに対して水平方向に相対移動可能且つ上下方向に移動不能に連結されているので、接続部材2bが固定された連動バー51が上方に移動する。連動バー51の上方移動により、2つの突起57,57に挟まれた取付片47が上方に移動する。取付片47の上方移動に追従して、アーム本体46が上方に移動する。このとき、規制ピン43は、傾斜部45cに当接する。規制ピン43は、不図示のバネにより連動バー51方向に付勢されているので、傾斜部45cに当接した規制ピン43は、該バネが圧縮されて、規制ピン43が障子9側(図6(a)において右側)に移動し、図7(c)に示すように、規制ピン43と開閉カム溝45の拡幅溝45aから外れて、小開口規制アーム42と障子9との係合が解除される。また、凸部5d,5dは縦溝5cに固定されて連動バー51のスリット51a,51a内に配置されているので、連動バー51の上方移動により取付片47が上方に移動し、凸部5d,5dが上下溝部47d,47dの下端に当接する。
【0052】
次に、操作者が、外部ハンドル2の操作本体2aから手を離すと、2本の調整ピン21,21と補助ピン55bとの間に設けられているバネ55cの付勢力により、2本の調整ピン21,21が調整溝55a内を屋内側に水平方向に移動し、略E字形状の調整溝55aの水平方向に延びる溝部の上側2つの溝に係止される。この状態で、障子9を引くと障子9が開口する。小開口規制アーム42と障子9との係合が解除されているので、操作者が障子9を屋外側に引く操作により、操作者が進入可能な程度に十分に障子9を開けることができる。なお、このとき、凸部5d,5dが上下溝部47d,47dの下端に当接しているが、障子9とアーム本体46との係合が解除されているので、小開口規制アーム42は、取付片47が突起57,57で挟持された状態で、枠体7に保持される。
【0053】
次に、小開口状態の障子9を開ける操作について説明する。
まず、内ハンドル30で障子9を小開口状態とする操作を説明する。施錠状態から、図5(a)に示すように、障子9を開放させるために内ハンドル30を上方に回動させる。
すると、内ハンドル30の連動棒は上枠3及び下枠4から後退し、先端部30cに押されてスライダー34が下方に連動させられ、スライドバー31と一体に下方位置に移動する。これによって、スライドバー31は下方位置で固定保持され、内ハンドル30も図5(a)に示す上方位置に固定保持される。
【0054】
障子9を開放作動させると、障子9に設けた規制ピン43で開閉カム溝45に沿って摺動しながら小開口規制アーム42を押して回転軸44周りに回動させて障子9を小開口位置まで開放作動させる。図8(a)に示すように、小開口位置で規制ピン43は開閉カム溝45の下方の終端溝部45bでロックされる。この小開口位置で障子9は保持され、閉鎖方向に戻ることはできず、小開口状態が保たれる。
【0055】
図8(a)に示す小開口状態から、外部ハンドル2で小開口状態を解除して障子9を大きく開放する場合、外部ハンドル2の操作手順は図7を用いて説明した施錠状態におけるロック解除操作と同様である。つまり、図7(a)~(d)の下部に示すように、外部ハンドル2を操作して連動バー51を上方に上げてこの状態を保持する。規制ピン43が終端溝部45bでロックされた状態で、外部ハンドル2を操作して連動バー51を上方に移動させると、図8(b)に示すように、取付片47が上方に移動し、凸部5d,5dが上下溝部47d,47dの下端に当接する。この状態で、障子9を屋外側に引くと、規制ピン43が終端溝部45bでロックされた状態が保持されながら小開口規制アーム42が屋外側に牽引される。取付片47の2つの係止溝47c,47cは屋内側の端部に開口しているので、取付片47は屋外方向(図8(c)に矢印B1で示す方向)に移動して係止溝47c,47cとの係合が解除される。この結果、小開口規制アーム42は、枠体7との係合が解除され、規制ピン43が終端溝部45bに係止され、障子9に係止された状態が保持される。この結果、操作者が進入可能な程度に十分に障子9を開けることができる。
【0056】
本実施形態による縦辷り出し窓1によれば、障子9と枠体7との係合を解除するロック解除機構及び外部ハンドル2が枠体7に設けられているため、ロック解除装置の機構を全て障子に設ける従来の建具に比べて、障子9を簡易な構造にすることができる。その結果、障子9の組立が容易となり、縦辷り出し窓1の施工性を向上させることができる。
【0057】
本実施形態による縦辷り出し窓1によれば、ロック解除機構の作動部として連動バー51及び外部ハンドル2を枠体7側に設けているため障子9を簡易な構造にすることができる。また、ロック機構による規制ピン43の係合状態が、外部ハンドル2の操作に連動する連動バー51の枠体7に沿った移動により解除可能であり、外部ハンドル2の操作により連動バー51を動かす簡易な操作によりロック解除機構を構成できる。また、連動バー51が枠体7内の有するスペースに設けられるので、枠体7側にロック解除機構を備えても、枠体7の寸法を大きくする必要がない。
【0058】
本実施形態による縦辷り出し窓1によれば、外部ハンドル2の操作によって小開口規制アーム42と規制ピン43または突起57,57及び凸部5d,5dとの係合が解除できる。したがって、障子9が閉じた状態で施錠されていても、外部ハンドル2の操作により開錠可能である。
【0059】
本実施形態による縦辷り出し窓1によれば、障子9の開口長を規制する小開口規制アーム42を介して障子9と枠体7とが連結され、外部ハンドル2の操作によって小開口規制アーム42と規制ピン43または突起57,57及び凸部5d,5dとの係合が解除可能に構成されている。また、連動バー51の操作により小開口規制アーム42と規制ピン43または突起57,57及び凸部5d,5dとの係合が解除できる。この結果、障子9が閉じた状態で施錠されていても、外部ハンドル2の操作により開錠可能である。また、小開口規制アーム42を手動で外す必要が無いので、障子9が閉じた状態から、小開口規制アーム42との係合が解除されて開口長の規制を解除する操作までを外部ハンドル2の操作のみで行うことができる。
この結果、障子9を開ける前に、外部ハンドル2で小開口規制アーム42と障子9との係合が解除できるので、障子9を開口させた後に、再度小開口規制アーム42の係合を解除する操作が不要となり、簡易且つ円滑に障子9を開口することができる。したがって、非常時に外部から障子9を開口する際の操作性に優れる。
【0060】
本実施形態による縦辷り出し窓1によれば、連動バー51の移動に伴って、規制ピン43が傾斜部45cにガイドされて規制ピン43と開閉カム溝45との係止が解除されるので、外部ハンドル2の簡単な操作で円滑に小開口規制アーム42と規制ピン43との係合が解除できる。
【0061】
本実施形態による縦辷り出し窓1によれば、障子9の開口長を規制する小開口規制アーム42を備え、小開口規制アーム42で枠体7に対する障子9の開口長が規制されて障子9が開けられている場合に、外部ハンドル2を操作することによって小開口規制アーム42と枠体7との係合が解除できる。この結果、簡単な操作により障子9を開口することができる。また、小開口規制アーム42と障子9との係合が簡単な操作により容易に解除できる。
【0062】
本実施形態による縦辷り出し窓1によれば、外部ハンドル2を用いて施錠状態の障子9を開ける操作と、小開口状態の障子9の規制を解除する操作とが同様の操作により行うことができる。
【0063】
本実施形態による縦辷り出し窓1によれば、小開口規制アーム42がアーム本体46と取付片47とを備え、障子9の開閉状態に応じて、外部ハンドル2で取付片47と凸部5d,5dとの係合あるいはアーム本体46と規制ピン43との係合が解除可能に構成されているので、簡易且つ円滑に障子9を開口することができる。
【0064】
例えば、上述した各実施形態では縦辷り出し窓1について説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、横辷り出し窓等の各種の建具のロック解除装置に本発明を適用してもよい。なお、本発明による縦辷り出し窓1等の建具はビル用に限らず一般住宅用の建具等にも採用できる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 縦辷り出し窓(建具)
2 外部ハンドル
5d 凸部(枠側ロック部材)
7 枠体
9 障子
42 小開口規制アーム(開口規制アーム)
43 規制ピン(障子側ロック部材)
45 開閉カム溝(長孔)
47 取付片
46 アーム本体
51 連動バー(ロック解除機構)
57,57 突起(枠側ロック部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8