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  • 特許-電磁波吸収体及び電磁波吸収体付成形品 図1
  • 特許-電磁波吸収体及び電磁波吸収体付成形品 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】電磁波吸収体及び電磁波吸収体付成形品
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20220804BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20220804BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
H05K9/00 M
B32B9/00 A
B32B15/082 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017116297
(22)【出願日】2017-06-13
(65)【公開番号】P2019004005
(43)【公開日】2019-01-10
【審査請求日】2020-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】山形 一斗
(72)【発明者】
【氏名】待永 広宣
(72)【発明者】
【氏名】上田 恵梨
(72)【発明者】
【氏名】請井 博一
(72)【発明者】
【氏名】宇井 丈裕
【審査官】柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-114813(JP,A)
【文献】特開平08-307088(JP,A)
【文献】特開2000-059066(JP,A)
【文献】特開2000-215734(JP,A)
【文献】特開2001-210144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 7/025
B32B 9/00
B32B 15/082
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と、
前記誘電体層の一方の主面に配置された抵抗層と、
前記誘電体層の他方の主面に配置され、前記抵抗層のシート抵抗より低いシート抵抗を有する導電層と、を備え、
前記抵抗層は、200~600Ω/□のシート抵抗を有し、
前記抵抗層を40℃及び5重量%のNaOH水溶液に5分間浸す浸漬処理を行った場合に、前記浸漬処理前の前記抵抗層のシート抵抗と前記浸漬処理後の前記抵抗層のシート抵抗との差の絶対値が30Ω/□以下である、
電磁波吸収体。
【請求項2】
前記抵抗層は、酸化スズ、酸化チタン、及び酸化インジウムのいずれか1つを主成分として含む、請求項1に記載の電磁波吸収体。
【請求項3】
前記抵抗層は、前記主成分の金属元素以外の少なくとも1つの元素を有するドーパントをさらに含む、請求項2に記載の電磁波吸収体。
【請求項4】
前記抵抗層は、5×10‐4Ω・cm以上の比抵抗を有する、請求項1~3のいずれか
1項に記載の電磁波吸収体。
【請求項5】
前記抵抗層は、15~500nmの厚みを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の電磁波吸収体。
【請求項6】
前記抵抗層は、前記誘電体層に接している面と反対の面において高分子フィルムに積層されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の電磁波吸収体。
【請求項7】
前記誘電体層は、1~10の比誘電率を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の電磁波吸収体。
【請求項8】
前記誘電体層は、高分子材料でできている、請求項1~7のいずれか1項に記載の電磁波吸収体。
【請求項9】
前記導電層は、0.001~30Ω/□のシート抵抗を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の電磁波吸収体。
【請求項10】
前記導電層は、アルミニウム、アルミニウム合金、アルミニウム窒化物、銅、銅合金、銅窒化物、及び酸化インジウムスズの少なくとも1つでできている、請求項1~9のいずれか1項に記載の電磁波吸収体。
【請求項11】
成形品と、
前記成形品に取り付けられた請求項1~10のいずれか1項に記載の電磁波吸収体と、を備えた、
電磁波吸収体付成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波吸収体及び電磁波吸収体付成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、1~10mm程度の波長及び30~300GHzの周波数を有するミリ波や準ミリ波の領域の電磁波が情報通信媒体として利用されている。このような電磁波を衝突予防システムに利用することが検討されている。衝突予防システムは、例えば、車両において障害物を検知して自動でブレーキをかけ、又は、周辺車両の速度や車間距離を測定して自車の速度や車間距離を調節するシステムである。衝突予防システムが正常に動作するには、誤認防止のため、不要な電磁波をできるだけ受信しないようにすることが重要である。従って、不要な電磁波を吸収する電磁波吸収体を衝突予防システムに利用することが考えられる。
【0003】
電磁波吸収体には、電磁波吸収の原理により様々なタイプがある。例えば、電磁波反射層と、λ/4(λは吸収対象とする電磁波の波長)の厚みを有する誘電体層と、抵抗薄膜層とを設けた電磁波吸収体(「λ/4型電磁波吸収体」ということがある)は、材料が比較的安価であり、設計が容易であるので、低コストで作製できる。例えば、特許文献1には、λ/4型電磁波吸収体として、入射角度の広い領域にわたって機能するという特性を発揮する電磁波吸収体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-198179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1において、電磁波吸収体の使用環境に特有の耐久性(例えば、耐薬品性)については具体的に検討されていない。
【0006】
そこで、本発明は、良好な耐薬品性を発揮するために有利な抵抗層を備えた電磁波吸収体を提供する。また、本発明は、このような電磁波吸収体を備えた電磁波吸収体付成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
誘電体層と、
前記誘電体層の一方の主面に配置された抵抗層と、
前記誘電体層の他方の主面に配置され、前記抵抗層のシート抵抗より低いシート抵抗を有する導電層と、を備え、
前記抵抗層は、200~600Ω/□のシート抵抗を有し、
前記抵抗層を5重量%のNaOH水溶液に5分間浸す浸漬処理を行った場合に、前記浸漬処理前の前記抵抗層のシート抵抗と前記浸漬処理後の前記抵抗層のシート抵抗との差の絶対値が100Ω/□未満である、
電磁波吸収体を提供する。
【0008】
また、本発明は、
成形品と、
前記成形品に取り付けられた上記の電磁波吸収体と、を備えた、
電磁波吸収体付成形品を提供する。
【発明の効果】
【0009】
上記の電磁波吸収体において抵抗層が良好な耐薬品性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の電磁波吸収体の一例を示す断面図である。
図2図2は、本発明の電磁波吸収体付成形品の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、下記の説明は、本発明を例示的に説明するものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるわけではない。
【0012】
本発明者らは、衝突防止システムへの電磁波吸収体の利用を検討する過程において、以下の課題を新たに見出した。例えば、電磁波吸収体が衝突防止システムに用いられる場合、電磁波吸収体は、自動車等の車両に配置される。車両のメンテナンスのために洗剤などの薬品が使用されることがある。例えば、アルカリ性の溶液が車両の洗浄に使用されることがある。このため、車両に配置された電磁波吸収体は、車両の洗浄時にこのような薬品に触れる可能性が高い。特に、λ/4型電磁波吸収体における抵抗層は、電磁波吸収体の表面近くに位置するので、このような薬品の影響を受けやすい。このため、電磁波吸収体の抵抗層が良好な耐薬品性を有していれば、高付加価値のλ/4型電磁波吸収体を提供できる。
【0013】
そこで、本発明者らは、試行錯誤を何度も重ねて、抵抗層に良好な耐薬品性をもたらすことができる材料を特定した。このような新たな知見に基づいて、本発明者らは、本発明に係る電磁波吸収体を案出した。なお、本発明者らは、フラットパネルディスプレイ及び太陽電池などの技術分野において使用されているITOを用いてλ/4型電磁波吸収体の抵抗層に良好な耐薬品性をもたらすことができるか否か検討した。検討の結果、このようなITOによって良好な耐薬品性を抵抗層にもたらすことは難しいことが分かった。
【0014】
図1に示す通り、電磁波吸収体1は、誘電体層10と、抵抗層20と、導電層30とを備えている。抵抗層20は、誘電体層10の一方の主面に配置されている。導電層30は、誘電体層10の他方の主面に配置され、抵抗層20のシート抵抗より低いシート抵抗を有する。抵抗層20は、200~600Ω/□のシート抵抗を有する。電磁波吸収体1において、抵抗層20を5重量%のNaOH水溶液に5分間浸す浸漬処理を行った場合に、浸漬処理前の抵抗層20のシート抵抗と浸漬処理後の抵抗層20のシート抵抗との差の絶対値が100Ω/□未満である。これにより、抵抗層20がアルカリ性の洗剤等の薬品に触れても抵抗層20のシート抵抗が変化しにくく、電磁波吸収体1が薬品に触れた後でも所望の電磁波吸収特性を保つことができる。このように、抵抗層20が良好な耐薬品性を有し、ひいては電磁波吸収体1が良好な耐薬品性を有する。
【0015】
電磁波吸収体1は、λ/4型電磁波吸収体である。λ/4型電磁波吸収体において、吸収対象とする波長(λO)の電磁波が入射すると、抵抗層20の表面での反射(表面反射)による電磁波と、導電層30における反射(裏面反射)による電磁波とが干渉するように設計される。なお、λ/4型電磁波吸収体においては、下記の式(1)に示す通り、誘電体層10の厚み(t)及び誘電体層10の比誘電率(εr)によって吸収対象の電磁波の波長(λO)が決定される。すなわち、誘電体層10の材料及び厚みを適宜調節することにより、吸収対象の波長の電磁波を設定できる。式(1)においてsqrt(εr)は、比誘電率(εr)の平方根を意味する。
λO=4t×sqrt(εr) 式(1)
【0016】
λ/4型電磁波吸収体において、抵抗層のシート抵抗が空気の特性インピーダンス(約377Ω/□)に近いほど、良好な電磁波吸収特性が得られやすい。このため、抵抗層20が薬品に触れても抵抗層20のシート抵抗が変化しにくいことは、電磁波吸収体1が薬品に触れた後でも所望の電磁波吸収特性を保つうえで極めて重要である。
【0017】
抵抗層20は、例えば、酸化スズ、酸化チタン、及び酸化インジウムのいずれか1つを主成分として含んでいる。なお、本明細書において、「主成分」とは、重量基準で最も多く含まれる成分を意味する。
【0018】
抵抗層20は、酸化スズ、酸化チタン、及び酸化インジウムのいずれか1つを主成分として含む場合、酸化スズ、酸化チタン、及び酸化インジウムのいずれか1つのみを含んでいてもよい。また、抵抗層20は、酸化スズ、酸化チタン、及び酸化インジウムのいずれか1つを主成分として含む場合、主成分の金属元素以外の少なくとも1つの元素を有するドーパントをさらに含んでいてもよい。これにより、抵抗層20を形成する材料の比抵抗を望ましい範囲に調節しやすい。なお、抵抗層20を形成する材料の比抵抗を望ましい範囲に調節することにより、所望のシート抵抗を抵抗層20にもたらすための抵抗層20の厚みが望ましい範囲に収まり、抵抗層20の耐薬品性及び抵抗層20の容易性を両立できる。
【0019】
上記のドーパントに含まれる元素は、例えば、スズ、ケイ素、マグネシウム、チタン、窒素、フッ素、アンチモン、及びニオブからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素である。
【0020】
抵抗層20の主成分が酸化スズである場合、ドーパントに含まれる元素は、例えば、フッ素又はアンチモンである。抵抗層20の主成分が酸化チタンである場合、ドーパントに含まれる元素は、例えば、ニオブである。抵抗層20の主成分が酸化インジウムである場合、ドーパントに含まれる元素は、例えば、スズ、ケイ素、マグネシウム、チタン、又は窒素である。これにより、抵抗層20を形成する材料の比抵抗を望ましい範囲により調節しやすい。
【0021】
上記の通り、抵抗層20は、200~600Ω/□のシート抵抗を有する。これにより、抵抗層20のシート抵抗が空気の特性インピーダンスに近く、電磁波吸収体1が良好な電磁波吸収性能を発揮できる。例えば、ミリ波レーダ又は準ミリ波レーダにおいて汎用される波長の電磁波を選択的に吸収しやすくなる。例えば、電磁波吸収体1は、ミリ波レーダに用いられる50~100GHz、特に60~90GHzの周波数の電磁波を効果的に減衰させることができる。
【0022】
抵抗層20は、望ましくは、260~500Ω/□のシート抵抗を有する。これにより、電磁波吸収体1がより確実に良好な電磁波吸収性能を発揮できる。
【0023】
抵抗層20は、例えば、5×10-4Ω・cm以上の比抵抗を有する。これにより、抵抗層20が所定値(例えば、15nm)以上の厚みを有していても、抵抗層20が所望のシート抵抗を有する。その結果、抵抗層20が良好な耐薬品性を有する。
【0024】
抵抗層20は、例えば、100×10‐4Ω・cm以下の比抵抗を有する。この場合、所望のシート抵抗をもたらすための抵抗層20の厚みを所定値(例えば、500nm)以下に調節でき、抵抗層20を形成するために必要な時間を短くできる。抵抗層20の比抵抗は、望ましくは、50×10‐4Ω・cm以下であり、より望ましくは30×10‐4Ω・cm以下である。
【0025】
抵抗層20は、例えば、15~500nmの厚みを有する。これにより、抵抗層20が良好な耐薬品性を有しつつ、抵抗層20を形成するのに必要な時間を短くできる。抵抗層20は、望ましくは15~200nmの厚みを有する。
【0026】
抵抗層20が酸化インジウムのみを含んでいる場合、又は、抵抗層20が酸化インジウムを主成分として含みつつ13重量%未満の酸化スズを含有しているITOである場合、抵抗層20は、望ましくは多結晶構造を有する。これにより、抵抗層20が、比較的小さい厚みを有していても良好な耐薬品性を有する。抵抗層20が、5重量%以上かつ13重量%未満の酸化スズを含有しているITOである場合、抵抗層20は、望ましくは、ケイ素、マグネシウム、チタン、又は窒素であるドーパントをさらに含んでいる。これにより、抵抗層20が多結晶構造を有していても、抵抗層20の比抵抗が5×10-4Ω・cm以上になりやすい。抵抗層20が酸化インジウムを主成分として含みつつ25重量%以上の酸化スズを含有しているITOである場合、抵抗層20は典型的には非晶質構造を有する。この場合、ITOの非晶質構造は極めて安定であり、抵抗層20がこのようなITOでできていると、抵抗層20が良好な耐薬品性を有する。
【0027】
抵抗層20は、例えば、抵抗層20の材料に応じて、DCマグネトロンスパッタリング等のスパッタリング、真空蒸着法、イオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等の物理気相成長法、熱CVD法等の化学気相成長法、又はスプレー熱分解法によって形成できる。
【0028】
抵抗層20が、多結晶構造を有するITOである場合、スパッタリングによって形成された非晶質構造の膜に加熱処理(アニール処理)を行って多結晶構造を有する抵抗層20を形成してもよい。なお、成膜温度などのスパッタリングの条件を調節することにより、スパッタリングの後に加熱処理を行うことなく多結晶構造を有するITOでできた抵抗層20を形成することも可能である。
【0029】
図1に示す通り、抵抗層20は、例えば、誘電体層10に接している面と反対の面において高分子フィルム25に積層されている。高分子フィルム25は、抵抗層20の支持体として機能する。高分子フィルム25は、例えばスパッタリングによって抵抗層20を製造する場合に、成膜時又はその後のアニール処理時の加熱に耐えうる耐熱性を有し、平滑な表面を提供する材料でできていることが望ましい。加えて、高分子フィルム25は、抵抗層20を覆うように配置されているので、高分子フィルム25が高い耐薬品性を有していれば、電磁波吸収体1も高い耐薬品性を有する。このため、高分子フィルム25の材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、又はシクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の芳香族ポリエーテルケトン、芳香族ポリアミド(アラミド)、又はポリイミドである。良好な耐薬品性と、寸法安定性と、コストとのバランスの観点から、抵抗層20の支持体の材料は望ましくはPETである。
【0030】
高分子フィルム25の厚みは、例えば10~150μmであり、望ましくは20~100μmであり、より望ましくは30~80μmの厚みを有する。これにより、高分子フィルム25の曲げ剛性が低く、かつ、高分子フィルム25に抵抗層20を形成する場合において皺の発生又は変形を抑制できる。
【0031】
誘電体層10は、例えば、1~10の比誘電率を有する。これにより、電磁波吸収体1は広帯域幅(例えば、50~100GHzの周波数帯域に含まれる2GHz以上の帯域幅)において良好な電磁波吸収性能を発揮できる。誘電体層10の比誘電率は、例えば、空洞共振器摂動法によって測定できる。
【0032】
誘電体層10は、単一の層であってもよいし、複数の層の積層体であってもよい。誘電体層10が複数の層の積層体である場合、誘電体層10の比誘電率は、各層の比誘電率を測定し、得られた各層の比誘電率に誘電体層10の全体の厚みに対する各層の厚みの割合を乗じ、これらを加算することにより算出できる。
【0033】
誘電体層10は、特に制限されないが、例えば、高分子材料でできている。例えば、誘電体層10の高分子材料は、アクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、アクリルウレタン樹脂、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、及びエポキシ樹脂等の合成樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)、又は、ポリイソプレンゴム、ポリスチレン・ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、及びシリコーンゴム等の合成ゴムである。これらは単独で又は2種以上を組み合せて誘電体層10の高分子材料として使用される。
【0034】
誘電体層10は、場合によっては発泡体であってもよい。この場合、誘電体層10の比誘電率が低くなりやすい。加えて、誘電体層10を軽量化できる。発泡体は、例えば、オレフィン系発泡体又はポリエステル系発泡体である。
【0035】
誘電体層10の厚みは、例えば50~2000μmであり、望ましくは100~1000μmである。これにより、高い寸法精度と低コストとを両立させやすい。
【0036】
導電層30は、電磁波吸収体1において吸収対象である電磁波を電磁波吸収体の裏面近傍で反射させる。導電層30のシート抵抗は、例えば、0.001~30Ω/□のシート抵抗を有する。これにより、電磁波吸収体1が所望の電磁波吸収性能を発揮しやすい。例えば、ミリ波レーダに用いられる50~100GHz、特に60~90GHzの周波数の電磁波を効果的に減衰させることができる。
【0037】
導電層30の材料は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、アルミニウム窒化物、銅、銅合金、銅窒化物、及び酸化インジウムスズの少なくとも1つを含む。これにより、電磁波吸収体1が所望の電磁波吸収性能を発揮しやすい。導電層30がITOを含む場合、導電層30は、酸化スズの含有量が5~15重量%のITOであることが望ましい。
【0038】
図1に示す通り、導電層30は、高分子フィルム35に積層されていてもよい。高分子フィルム35は、導電層30を支持する支持体として機能する。この場合、高分子フィルム35の材料は、高分子フィルム25の材料として例示した材料であってもよいし、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ウレタンアクリル樹脂、二軸延伸ポリプロピレン(CPP)、又は塩化ビニリデン樹脂であってもよい。高分子フィルム35は、場合によっては省略可能である。
【0039】
抵抗層20及び導電層30のいずれかの層の誘電体層10を向いている主面には、所定のコーティングが施されていてもよい。これにより、誘電体層10に含まれる成分が抵抗層20又は導電層30に拡散して抵抗層20又は導電層30の特性に影響が及ぶことを防止できる。このようなコーティングの材料は、例えば、SiO2等の酸化ケイ素、窒化ケイ素、Al23等の酸化アルミニウム、窒化アルミニウム(AlN)、Nb25等の酸化ニオブ、チタン酸ストロンチウム(STO)、又は酸化アルミニウム亜鉛(AZO)である。中でも、コーティングの材料がAlN又はAZOであると、抵抗層20又は導電層30の耐久性を有利に高めることができる。
【0040】
図1に示す通り、電磁波吸収体1は、例えば、粘着層40と、セパレータ50とをさらに備えている。粘着層40は、導電層30の外側に配置されている。セパレータ50は、粘着層40に接して配置されている。セパレータ50を剥がして粘着層40を露出させ、粘着層40を成形品等の物品に押し付けることにより、電磁波吸収体1を物品に容易に取り付けることができる。また、電磁波吸収体1を物品に取り付ける前に粘着層40をセパレータ50によって保護できる。
【0041】
粘着層40は、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、及びウレタン系粘着剤等の粘着剤を含む。
【0042】
図2に示す通り、電磁波吸収体1を用いて、例えば、電磁波吸収体付成形品100を製造できる。電磁波吸収体付成形品100は、成形品70と、成形品70に取り付けられた電磁波吸収体1とを備えている。成形品70は、例えば、バンパーなどの自動車部品である。
【0043】
電磁波吸収体1の製造方法の一例を説明する。高分子フィルム25にスパッタリング等の成膜方法により抵抗層20を形成する。また、高分子フィルム35に導電層30が形成された積層体を準備する。
【0044】
次に、導電層30の一方の主面に、所定の厚みに成形された誘電体層10を形成する樹脂組成物を載せる。その後、誘電体層10を形成する樹脂組成物に、抵抗層20の一方の主面を重ねる。必要に応じて、樹脂組成物を硬化させる。これにより、電磁波吸収体1を製造できる。この方法によれば、誘電体層10の厚みの制御が容易であるので、吸収対象とする波長の電磁波を効果的に吸収できるように電磁波吸収体1を製造できる。また、抵抗層20および導電層30を別々に形成するので、電磁波吸収体1の製造に要する時間が短く、電磁波吸収体1の製造コストが低い。なお、誘電体層10と導電層30又は抵抗層20とをくっつけるために接着剤又は粘着剤を用いてもよい。
【実施例
【0045】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。まず、各実施例及び各比較例に係る抵抗層の特性の測定方法及びサンプルの評価方法について説明する。
【0046】
[X線回折]
各実施例及び各比較例において、X線回折装置(リガク社製、製品名:RINT2200)を用いて、X線反射率法により抵抗層の厚みを測定した。また、X線回折装置を用いて、抵抗層に対するX線回折パターンを得た。X線としてはCuKα線を用いた。得られたX線回折パターンから抵抗層が多結晶構造であるか非晶質構造であるか確認した。結果を表1に示す。
【0047】
[シート抵抗]
非接触式抵抗測定装置(ナプソン社製、製品名:NC-80MAP)を用いて、日本工業規格(JIS)Z 2316に準拠して、渦電流測定法によって各実施例及び各比較例の薬品浸漬処理されていない抵抗層のシート抵抗を測定した。結果を表1に示す。また、薬品浸漬処理された抵抗層についても同様にシート抵抗を測定した。
【0048】
[比抵抗]
各実施例及び各比較例において、上記のように測定した抵抗層の厚みと、上記のように測定した薬品浸漬処理されていない抵抗層のシート抵抗から、両者の積を求めることにより、比抵抗を決定した。結果を表1に示す。
【0049】
[比誘電率]
ネットワークアナライザー(アジレント・テクノロジー社製、製品名:N5230C)及び空洞共振器(関東電子応用開発社製 空洞共振器CP531)を用いて、実施例及び比較例における誘電体層の10GHzにおける比誘電率を空洞共振器摂動法によって測定した。
【0050】
[電磁波吸収特性]
JIS R 1679に準拠して、各実施例及び各比較例に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)の表面に対し、76GHzのミリ波を垂直に入射させた場合の反射減衰量を測定した。結果を表1に示す。また、下記の指標に従って、各実施例及び各比較例について総合評価を行った。結果を表1に示す。
a:サンプルA及びサンプルBの両方において反射減衰量が20dB以上である。
b:サンプルA及びサンプルBのいずれか又はサンプルA及びサンプルBの両方において反射減衰量が10dB以上20dB未満である。
x:サンプルA及びサンプルBのいずれか又はサンプルA及びサンプルBの両方において反射減衰量が10dB未満である。
【0051】
<実施例1>
38μmの厚みを有するPETフィルム(三菱ケミカル社製、ダイアホイル)の上に、In23からなるターゲット材を用いて、DCマグネトロンスパッタ法により、非晶質のIn23からなる膜を形成し、その膜を大気中で150℃の温度で3時間加熱処理してIn23を結晶化させた。このようにして、実施例1に係る抵抗層を形成した。実施例1に係る抵抗層の厚み、シート抵抗、及び比抵抗を表1に示す。2.6の比誘電率を有するアクリル樹脂を560μmの厚みに押し出し成形して、実施例1に係る誘電体層を作製した。また、実施例1に係る導電層として、0.002Ω/□のシート抵抗を有するアルミニウム箔を準備した。実施例1に係る誘電体層の一方の主面に薬品浸漬処理されていない実施例1に係る抵抗層が接触するように実施例1に係る抵抗層を貼り付けた。また、実施例1に係る誘電体層の他方の主面に実施例1に係る導電層を接触させて貼り付けた。このようにして、実施例1に係るサンプルAを作製した。
【0052】
実施例1に係る抵抗層が形成されたPETフィルムを5重量%のNaOH水溶液に5分間浸漬させて薬品浸漬処理を行い、その後風乾させて薬品浸漬処理がされた抵抗層を作製した。薬品浸漬処理におけるNaOH水溶液の温度は40℃に調節した。薬品浸漬処理されていない実施例1に係る抵抗層の代わりに、薬品浸漬処理がされた抵抗層を用いた以外は、サンプルAと同様にして、実施例1に係るサンプルBを作製した。
【0053】
<実施例2及び3>
抵抗層の厚み及び抵抗層のシート抵抗が表1に示す値になるようにスパッタリングの条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、In23からなる実施例2及び3に係る抵抗層を形成した。実施例2及び3に係る抵抗層の形成において、スパッタリングにより得られた非晶質のIn23からなる膜を実施例1と同様の条件で加熱処理して結晶化させた。実施例1に係る抵抗層の代わりに実施例2又は3に係る抵抗層を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2及び3に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0054】
<実施例4>
ITOをターゲット材として用い、抵抗層の厚み及び抵抗層のシート抵抗が表1に示す値になるように、スパッタリングの条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、2.5重量%の酸化スズを含むITOでできた実施例4に係る抵抗層を形成した。実施例4に係る抵抗層の形成において、スパッタリングにより得られた非晶質のITOの膜を実施例1と同様の条件で加熱処理して結晶化させた。実施例1に係る抵抗層の代わりに実施例4に係る抵抗層を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0055】
<実施例5>
ITOをターゲット材として用い、抵抗層の厚み及び抵抗層のシート抵抗が表1に示す値になるように、スパッタリングの条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、3.3重量%の酸化スズを含むITOでできた実施例5に係る抵抗層を形成した。実施例5に係る抵抗層の形成において、スパッタリングにより得られた非晶質のITOの膜を実施例1と同様の条件で加熱処理して結晶化させた。実施例1に係る抵抗層の代わりに実施例5に係る抵抗層を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0056】
<実施例6>
In23、SnO2、及びSiO2を含むターゲット材を用い、抵抗層の厚み及び抵抗層のシート抵抗が表1に示す値になるように、スパッタリングの条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、In23に加えて、7.5重量%のSnO2及び2.5重量%のSiO2を含む材料でできた実施例6に係る抵抗層を形成した。実施例6に係る抵抗層の形成において、スパッタリングにより得られた非晶質の膜を実施例1と同様の条件で加熱処理して結晶化させた。実施例1に係る抵抗層の代わりに実施例6に係る抵抗層を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例6に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0057】
<実施例7>
In23、SnO2、及びMgOを含むターゲット材を用い、抵抗層の厚み及び抵抗層のシート抵抗が表1に示す値になるように、スパッタリングの条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、In23に加えて、7.5重量%のSnO2及び2.5重量%のMgOを含む材料でできた実施例7に係る抵抗層を形成した。実施例7に係る抵抗層の形成において、スパッタリングにより得られた非晶質の膜を実施例1と同様の条件で加熱処理して結晶化させた。実施例1に係る抵抗層の代わりに実施例7に係る抵抗層を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例7に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0058】
<実施例8>
In23、SnO2、及びTiO2を含むターゲット材を用い、抵抗層の厚み及び抵抗層のシート抵抗が表1に示す値になるように、スパッタリングの条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、In23に加えて、7.5重量%のSnO2及び2.5重量%のTiO2を含む材料でできた実施例8に係る抵抗層を形成した。実施例8に係る抵抗層の形成において、スパッタリングにより得られた非晶質の膜を実施例1と同様の条件で加熱処理して結晶化させた。実施例1に係る抵抗層の代わりに実施例8に係る抵抗層を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例8に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0059】
<実施例9>
In23及びSnO2を含むターゲット材及び窒素ガスを含む反応ガスを用い、抵抗層の厚み及び抵抗層のシート抵抗が表1に示す値になるように、スパッタリングの条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、In23に加えて、7.5重量%のSnO2及び3原子%の窒素を含む材料でできた実施例9に係る抵抗層を形成した。実施例9に係る抵抗層の形成において、スパッタリングにより得られた非晶質の膜を実施例1と同様の条件で加熱処理して結晶化させた。実施例1に係る抵抗層の代わりに実施例9に係る抵抗層を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例9に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0060】
<実施例10>
In23、SnO2、及びSiO2を含むターゲット材を用い、抵抗層の厚み及び抵抗層のシート抵抗が表1に示す値になるように、スパッタリングの条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、In23に加えて、10重量%のSnO2及び5重量%のSiO2を含む材料でできた実施例10に係る抵抗層を形成した。実施例10に係る抵抗層の形成において、スパッタリングにより得られた非晶質の膜を実施例1と同様の条件で加熱処理して結晶化させた。実施例1に係る抵抗層の代わりに実施例10に係る抵抗層を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例10に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0061】
<実施例11>
38μmの厚みを有するPETフィルム(三菱ケミカル社製、ダイアホイル)の上に、ITOをターゲット材として用い、DCマグネトロンスパッタリング法により、30重量%のSnO2を含む非晶質構造のITOでできた実施例11に係る抵抗層を形成した。実施例11に係る抵抗層の形成においてスパッタリング後の加熱処理は行わなかった。2.5の比誘電率を有するアクリル樹脂を560μmの厚みに押し出し成形して、実施例11に係る誘電体層を作製した。実施例1に係る抵抗層及び実施例1に係る誘電体層の代わりに、実施例11に係る抵抗層及び実施例11に係る誘電体層をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、実施例11に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0062】
<実施例12>
ITOをターゲット材として用い、抵抗層の厚み及び抵抗層のシート抵抗が表1に示す値になるように、スパッタリングの条件を変更した以外は、実施例11と同様にして、50重量%の酸化スズを含む非晶質構造のITOでできた実施例12に係る抵抗層を形成した。実施例11に係る抵抗層の代わりに実施例12に係る抵抗層を用いた以外は、実施例11と同様にして、実施例12に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0063】
<実施例13>
38μmの厚みを有するPETフィルム(三菱ケミカル社製、ダイアホイル)の上に、DCマグネトロンスパッタ法によって、10重量%の酸化スズを含む非晶質のITOでできた膜を形成し、その膜を大気中で150℃の温度で3時間加熱処理して結晶化させた。このようにして、実施例13に係る導電層を形成した。実施例13に係る導電層の厚みは120nmであった。実施例13に係る導電層のシート抵抗は20Ω/□であった。実施例1に係る導電層の代わりに実施例13に係る導電層を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例13に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0064】
<実施例14>
50μmの厚みを有するポリイミドフィルム(宇部興産社製、ユーピレックス)の上に、SnO2をターゲット材として用いて、RFマグネトロンスパッタ法(基板温度:室温)により、SnO2からなる膜を形成した。この膜を300℃で1時間加熱処理(アニール処理)して結晶化させた。このようにして、SnO2からなる実施例14に係る抵抗層を形成した。実施例11に係る抵抗層の代わりに実施例14に係る抵抗層を用いた以外は、実施例11と同様にして、実施例11に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0065】
<実施例15>
50μmの厚みを有するポリイミドフィルム(宇部興産社製、ユーピレックス)の上に、SnF2粉末とSnO2粉末との混合物をターゲット材として用いて、RFマグネトロンスパッタ法(基板温度:200℃)により、フッ素ドープ酸化スズ(フッ素含有量:5原子%)でできた実施例15に係る抵抗層を形成した。実施例11に係る抵抗層の代わりに実施例15に係る抵抗層を用いた以外は、実施例11と同様にして、実施例15に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0066】
<実施例16>
50μmの厚みを有するポリイミドフィルム(宇部興産社製、ダイアホイル)の上に、Sn-Sb合金をターゲット材として用い、反応性ガスとして酸素ガスを用いて、反応性MF-ACマグネトロンスパッタ法(電源の周波数:200kHz、基板温度:200℃)アンチモンドープ酸化スズ(アンチモン含有量:4原子%)でできた実施例16に係る抵抗層を形成した。実施例11に係る抵抗層の代わりに実施例16に係る抵抗層を用いた以外は、実施例11と同様にして、実施例16に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0067】
<実施例17>
50μmの厚みを有するポリイミドフィルム(宇部興産社製、ダイアホイル)の上に、Nb含有TiO2をターゲット材に用いて、RFマグネトロンスパッタ法(基板温度:室温)により、ニオブドープ酸化チタン(ニオブ含有量:8原子%)でできた実施例17に係る抵抗層を形成した。実施例11に係る抵抗層の代わりに実施例17に係る抵抗層を用いた以外は、実施例11と同様にして、実施例17に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0068】
<比較例1>
38μmの厚みを有するPETフィルム(三菱ケミカル社製、ダイアホイル)の上に、ZnO及びGa23を含むターゲット材を用い、DCマグネトロンスパッタ法により、抵抗層の厚み及び抵抗層のシート抵抗が表1に示す値になるように、スパッタリングの条件を調節して、ZnOを主成分としつつ、3重量%のGa23を含む多結晶構造の材料でできた比較例1に係る抵抗層を形成した。なお、比較例1に係る抵抗層の形成において、スパッタリングの後に加熱処理は行わなかった。実施例1に係る抵抗層の代わりに比較例1に係る抵抗層を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0069】
<比較例2>
38μmの厚みを有するPETフィルム(三菱ケミカル社製、ダイアホイル)の上に、ITOをターゲット材として用い、DCマグネトロンスパッタ法により、抵抗層の厚み及び抵抗層のシート抵抗が表1に示す値になるようにスパッタリングの条件を調節して、10重量%の酸化スズを含む非晶質のITOでできた比較例2に係る抵抗層を形成した。実施例1に係る抵抗層の代わりに比較例2に係る抵抗層を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0070】
<比較例3>
ITOをターゲット材として用い、抵抗層の厚み及び抵抗層のシート抵抗が表1に示す値になるようにスパッタリングの条件を変更した以外は、比較例2と同様にして、7.5重量%の酸化スズを含む非晶質のITOでできた比較例3に係る抵抗層を形成した。実施例1に係る抵抗層の代わりに比較例3に係る抵抗層を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0071】
<比較例4>
ITOをターゲット材として用い、抵抗層の厚み及び抵抗層のシート抵抗が表1に示す値になるように、スパッタリングの条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、2.5重量%の酸化スズを含むITOでできた比較例4に係る抵抗層を形成した。比較例4に係る抵抗層の形成において、スパッタリングにより得られた非晶質のITOの膜を実施例1と同様の条件で加熱処理して結晶化させた。実施例1に係る抵抗層の代わりに比較例4に係る抵抗層を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例4に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0072】
<比較例5>
ITOをターゲット材として用い、抵抗層の厚み及び抵抗層のシート抵抗が表1に示す値になるように、スパッタリングの条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、7.5重量%の酸化スズを含むITOでできた比較例5に係る抵抗層を形成した。比較例5に係る抵抗層の形成において、スパッタリングにより得られた非晶質のITOの膜を実施例1と同様の条件で加熱処理して結晶化させた。実施例1に係る抵抗層の代わりに比較例5に係る抵抗層を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例5に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0073】
<比較例6>
ZnO及びAl23を含むターゲット材を用い、抵抗層の厚み及び抵抗層のシート抵抗が表1に示す値になるように、スパッタリングの条件を変更した以外は、比較例1と同様にして、ZnOを主成分としつつ、3重量%のAl23を含む多結晶構造の材料でできた比較例6に係る抵抗層を形成した。なお、比較例6に係る抵抗層の形成において、スパッタリングの後に加熱処理は行わなかった。実施例1に係る抵抗層の代わりに比較例6に係る抵抗層を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例6に係るサンプルA(薬品浸漬処理なし)及びサンプルB(薬品浸漬処理あり)を作製した。
【0074】
表1に示す通り、抵抗層が所定の材料でできていると、良好な耐薬品性を発揮できることが示唆された。
【0075】
【表1】
【符号の説明】
【0076】
1 電磁波吸収体
10 誘電体層
20 抵抗層
25 高分子フィルム
30 導電層
70 成形品
100 電磁波吸収体付成形品
図1
図2