(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】検眼装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20220804BHJP
【FI】
A61B3/10
(21)【出願番号】P 2017176928
(22)【出願日】2017-09-14
【審査請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 尚樹
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-063851(JP,A)
【文献】実開昭55-012230(JP,U)
【文献】特開2011-221189(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0328792(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00- 3/18
A61B 8/00- 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、前記ベース部の前方に位置する被検者に対面した状態でこのベース部に上下方向、左右方向及び前後方向にそれぞれ可動可能に支持され、かつ被検眼像を光学系を介して観察しつつ検査を行う測定ヘッドと、前記被検眼像と操作ボタンとを少なくとも提示可能なタッチパネル式の表示面を有するモニタ部とを有する検眼装置において、
前記左右方向及び前記前後方向にそれぞれ、略垂直方向を略上下方向というとき、
前記モニタ部は可撓性を有する材質で形成され、
さらに、前記検眼装置は、前記モニタ部の前記表示面を前記略上下方向に沿って支持しつつこのモニタ部を、前記測定ヘッドが可動可能な上下方向軸回りに可動可能に支持する支持部を有することを特徴とする検眼装置。
【請求項2】
前記支持部は前記測定ヘッドの頂部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の検眼装置。
【請求項3】
前記支持部は前記左右方向及び前記前後方向に4つの側面を有し、これら側面は前記略上下方向に沿って延び、前記モニタ部はこれら側面に沿って可動可能に支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の検眼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モニタ部の姿勢の自由度の向上を図ることが可能な検眼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者に対面して上下左右前後方向に可動されかつ被検眼像を光学系を介して観察しつつ検査を行う測定ヘッドと、これを操作するジョイスティックを有しかつ被検者の被検眼像をモニタ部に表示する操作・表示ユニットとをケーブル接続することにより、測定ヘッドに対する操作・表示ユニットの配置の自由度を向上させた構成の検眼装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、操作・表示ユニットとしてのコントローラ装置の本体部に対してモニタ部を回動可能の構成とした検眼装置も知られている。モニタ部の表示画面はタッチパネル画面とされ、タッチパネル画面には、操作ボタンと各種の画像情報とが表示される。
【0004】
タッチパネル画面は、モニタ部の水平軸回りの回動により、検者に対面する側と被検者に対面する側とに向けられ、検者に対面する側に向けられたときと被検者に対面する側とに向けられたときとで、そのタッチパネル画面に表示されている画像情報が上下左右に反転され、かつ、回転前のボタンの位置と回転後のボタンの位置とが見た目上同じとなるような位置に制御回路により制御される(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、使用者が自身の姿勢に合うようにモニタ部を容易に移動させることができる超音波診断装置のモニタ支持装置も知られている(例えば、特許文献3参照)。更に、測定ヘッドの後部側にモニタ部を略垂直状態から水平状態まで傾斜可能に保持する保持手段を設ける眼科装置も知られている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3676053号公報
【文献】特開2007-68583号公報
【文献】特開2007-37981号公報
【文献】特許第4587741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された眼科装置は、測定ヘッドとこれを操作する操作・表示ユニットとが別体の構成であるので、測定ヘッドに対するモニタ部の配置の自由度は向上するものの、別々に持ち運ばなければならず、不便である。また、省スペース化を図り難く、被験者がいる側から操作するのも不便である。
【0008】
例えば、被検者によっては、開瞼状態の悪い人がおり、このような被検者に対しては、検者が、被検者に寄り添って開瞼の手伝いを行っているが、被検者のいる側からはモニタ部の表示画面は見えず、測定効率の低下等を招いている。
【0009】
そこで、特許文献2に開示された技術を用いて、モニタ部と測定ヘッドとの一体化を図り、被検者に対面する側と検者に対面する側とにモニタ部の表示画面を向けることのできる構成とすることが考えられる。
【0010】
このような構成とすると、検者に対面する側と被検者に対面する側とに表示画面を向けることができて、持ち運びが便利であり、かつ、省スペース化を図ることもできるが、測定ヘッドに対するモニタ部の姿勢が制限され、測定ヘッドとモニタ部とが別体であることによる自由度が減少する。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、測定ヘッドとこれを操作するモニタ部との一体化を図った場合でも、姿勢変更作業の効率化を図りつつ、測定ヘッドに対するモニタ部の姿勢の自由度の向上を図ることができる検眼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の検眼装置は、ベース部と、ベース部の前方に位置する被検者に対面した状態でこのベース部に上下方向、左右方向及び前後方向にそれぞれ可動可能に支持され、かつ被検眼像を光学系を介して観察しつつ検査を行う測定ヘッドと、被検眼像と操作ボタンとを少なくとも提示可能なタッチパネル式の表示面を有するモニタ部とを有する検眼装置において、左右方向及び前後方向にそれぞれ、略垂直方向を略上下方向というとき、モニタ部は可撓性を有する材質で形成され、さらに、検眼装置は、モニタ部の表示面を略上下方向に沿って支持しつつこのモニタ部を、測定ヘッドが可動可能な上下方向軸回りに可動可能に支持する支持部を有することを特徴とする。
【0013】
ここで、支持部は測定ヘッドの頂部に設けられている構成とすることができる。
【0014】
また、支持部が左右方向及び前後方向に4つの側面を有し、これら側面が略上下方向に沿って延び、モニタ部がこれら側面に沿って可動可能に支持されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
このように構成された本発明の検眼装置では、左右方向及び前後方向にそれぞれ、略垂直方向を略上下方向というとき、モニタ部が可撓性を有する材質で形成され、さらに、検眼装置が、モニタ部の表示面を略上下方向に沿って支持しつつこのモニタ部を、測定ヘッドが可動可能な上下方向軸回りに可動可能に支持する支持部を有する。
【0016】
このようにすることで、モニタ部の表示面を検者に対面する側から被検者に対面する側への姿勢変更作業を容易に行うことができる。従って、測定ヘッドとこれを操作するモニタ部との一体化を図った場合でも、姿勢変更作業の効率化を図りつつ、測定ヘッドに対するモニタ部の姿勢の自由度の向上を図ることができる。
【0017】
ここで、支持部が測定ヘッドの頂部に設けられているので、モニタ部の視認性をさらに向上させることができ、これにより、測定ヘッドとこれを操作するモニタ部との一体化を図った場合でも、姿勢変更作業の効率化を図りつつ、測定ヘッドに対するモニタ部の姿勢の自由度の向上をさらに図ることができる。
【0018】
また、支持部が左右方向及び前後方向に4つの側面を有し、これら側面が略上下方向に沿って延び、モニタ部がこれら側面に沿って可動可能に支持されているので、モニタ部の視認性をより向上させることができ、これにより、測定ヘッドとこれを操作するモニタ部との一体化を図った場合でも、姿勢変更作業の効率化を図りつつ、測定ヘッドに対するモニタ部の姿勢の自由度の向上をより図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施の形態である検眼装置を示す正面図である。
【
図2】本実施の形態である検眼装置を示す側面図である。
【
図3】本実施の形態である検眼装置を示す背面図である。
【
図4】本実施の形態である検眼装置を示す斜視図である。
【
図5】本実施の形態である検眼装置のモニタ部及び支持部を示す斜視図である。
【
図6】本実施の形態である検眼装置のモニタ部及び支持部を示す一部破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~
図4は、それぞれ本実施の形態である検眼装置を示す正面図、側面図、背面図及び斜視図である。なお、本明細書を通じて各図に記すようにX軸、Y軸及びZ軸を取り、
図1における左右方向(X軸正方向が右方向、負方向が左方向)、前後方向(Y軸正方向が後方向、負方向が前方向)及び上下方向(Z軸正方向が上方向、Z軸負方向が下方向)を基準として明細書中の説明を行う。
【0021】
これら図において、本実施の形態である検眼装置1は、ベース部2と測定ヘッド3とを有する。ベース部2の前方には顎受け部4が設けられ、この顎受け部4の上部には、この顎受け部4と一体に形成された額当て5が設けられている。本実施の形態である検眼装置1の被検者は、検眼装置1の前方に設けられた椅子等に座った状態で検眼装置1と対峙し、顎受け部4に顎を置き、額当て5に額を当てた状態で検査を受ける。
【0022】
測定ヘッド3の内部には、
図2に破線で示すように、公知の観察・撮影用の光学系6が設けられている。この光学系6により、被検者の前眼部、被検眼の角膜、眼底等が観察・撮影可能である。
【0023】
ベース部2には、
図2に破線で示すように、測定ヘッド3を駆動する公知の駆動機構・駆動回路8が設けられている。駆動機構・駆動回路8の駆動部には、例えば、図示を略すステッピングモータが用いられる。
【0024】
測定ヘッド3は、後述するモニタ部を操作することにより、駆動機構・駆動回路8によりベース部2に対して上下方向、左右方向及び前後方向に駆動される。これにより、測定ヘッド3はベース部2に上下方向、左右方向及び前後方向にそれぞれ可動可能に支持されている。
【0025】
測定ヘッド3の頂部9には、支持部11により支持されたモニタ部10が設けられている。
【0026】
図5及び
図6は、本実施の形態である検眼装置のモニタ部及び支持部を示す斜視図及び一部破断斜視図である。
【0027】
支持部11は中空の箱状に形成され、左右方向及び前後方向にそれぞれ、略垂直方向(上下方向)に延びる4つの側面11aを有する。
図6に詳細を示すように、支持部11は、これら側面11aに沿って設けられた可撓性を有する薄板状のプラスチック板等からなる可動板11bを有する。
【0028】
支持部11はまた、側面11aの表面に沿って水平方向(前後方向及び左右方向)に延びる一対のガイド部材11cを有する。このガイド部材11cは、これも
図6に詳細を示すように、可動板11bの上下端部が収納可能な溝11dを有し、この溝11d内に可動板11bの上下端部が収納されることで、可動板11bが水平方向に摺動可能に支持されている。そして、この可動板11bにモニタ部10が固定されている。
【0029】
モニタ部10は可撓性を有する材質で形成されている。より詳細には、
図6に示すように、モニタ部10は、表示面10aに表示画面を表示可能な略矩形状の平面ディスプレイ部10bと、このディスプレイ部10bの縁部を支持するベゼル部10cとを有する。
【0030】
平面ディスプレイ部10bは、例えば薄板状のプラスチック基板上に各種半導体回路及び表示部が形成されることで、全体として可撓性を有するように形成されている。平面ディスプレイ部10bの形式に特段限定はなく、いわゆる液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネセンスディスプレイ等、既知のディスプレイが好適に適用可能である。
【0031】
また、ベゼル部10cも同様に薄板状のプラスチック板等から形成され、同様に可撓性を有するように形成されている。従って、本実施の形態であるモニタ部10は、全体として可撓性を有するように形成されている。
【0032】
そして、ベゼル部10cの外周部が可動板11bに固定され、これにより、モニタ部10の表示面10aが支持部11の可動板11bに略上下方向に沿って支持され、かつ、支持部11の側面11aに沿って垂直軸回りに可動可能に支持される。
【0033】
なお、図示を省略したが、モニタ部10の裏面には、モニタ部10の表示面10aに、光学系6による被検者の被検眼像及び操作ボタン(いずれも図示略)を表示する表示画面を生成するための表示信号を生成し、また、表示面10aへの検者のタッチ操作を検出するための制御回路ユニットが設けられている。この制御回路ユニットは測定ヘッド3の光学系6等と接続されている。
【0034】
また、モニタ部10及び図略の制御回路ユニットへの電源及び制御信号供給のために、測定ヘッド3の光学系6等と制御回路ユニットとの間には図略の電源線及び信号線が接続されている。この電源線及び信号線は、例えば支持部11の側面11aの一部に孔を設け、あるいは、側面11aの前後面または左右面を切り欠き、この孔または切欠部を通して制御回路ユニットに接続されればよい。さらに好ましくは、電源線及び信号線を、モニタ部10の垂直軸回りの可動によっても接続状態を保てる程度の長さにし、より好ましくは、これら電源線等をカール状に形成すればよい。
【0035】
このように構成された本実施の形態である検眼装置1では、モニタ部10が可撓性を有する材質で形成され、さらに、検眼装置が、モニタ部10の表示面10aを略上下方向に沿って支持しつつこのモニタ部10を垂直軸回りに可動可能に支持する支持部11を有する。
【0036】
このようにすることで、モニタ部10の表示面10aを検者に対面する側から被検者に対面する側への姿勢変更作業を容易に行うことができる。従って、測定ヘッド3とこれを操作するモニタ部10との一体化を図った場合でも、姿勢変更作業の効率化を図りつつ、測定ヘッド3に対するモニタ部10の姿勢の自由度の向上を図ることができる。
【0037】
加えて、本実施の形態である検眼装置1によれば、
図1に示すように、被検者から見て測定ヘッド3の前側にモニタ部10の表示面10aを向けた場合、検者が被検者側に立って被検者に対して種々の介助動作をしつつ、モニタ部10の表示面10aを視認することができ、測定効率の向上を図ることができる。
【0038】
また、
図3に示すように、被検者から見て測定ヘッド3の後側にモニタ部10の表示面10aを向けた場合、検者が被検者と向き合った状態で測定を行うことができ、さらに、
図2に示すように、被検者から見て測定ヘッド3の左右のいずれかの側(図示例では右側)にモニタ部10の表示面10aを向けた場合、検者が被検者の状態を確認しつつ測定作業を行うことができる。このように、本実施の形態である検眼装置1によれば、多様な形態において測定作業を行うことができ、姿勢変更作業の効率化を図りつつ、測定ヘッド3に対するモニタ部10の姿勢の自由度の向上を図ることができる。
【0039】
ここで、支持部11が測定ヘッド3の頂部9に設けられているので、モニタ部10の視認性をさらに向上させることができ、これにより、測定ヘッド3とこれを操作するモニタ部10との一体化を図った場合でも、姿勢変更作業の効率化を図りつつ、測定ヘッド3に対するモニタ部10の姿勢の自由度の向上をさらに図ることができる。
【0040】
また、支持部11が左右方向及び前後方向に4つの側面11aを有し、これら側面11aが略上下方向に沿って延び、モニタ部10がこれら側面11aに沿って可動可能に支持されているので、モニタ部10の視認性をより向上させることができ、これにより、測定ヘッド3とこれを操作するモニタ部10との一体化を図った場合でも、姿勢変更作業の効率化を図りつつ、測定ヘッド3に対するモニタ部10の姿勢の自由度の向上をより図ることができる。
【0041】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0042】
一例として、上述した本実施の形態では、支持部11を外形箱状に形成したが、モニタ部10が大きく湾曲して視認性が悪くならない程度の曲率であれば、例えば支持部11を円筒状あるいは楕円筒状に形成してもよい。また、モニタ部10を支持する構造も本実施の形態のそれに限定されず、周知の構造が好適に適用可能である。
【0043】
また、上述した本実施の形態では、測定ヘッド3の頂部9にモニタ部10及び支持部11を設けたが、モニタ部10を設ける箇所は測定ヘッド3と別体である必要はなく、測定ヘッド3に支持部11を設け、この支持部11によりモニタ部10を支持してもよい。但し、測定ヘッド3の前部は光学系6による被検眼の測定のためにモニタ部10を移動することができないので、支持部11は、測定ヘッド3の前部を除いた垂直軸回りに可動可能にモニタ部10を支持すればよい。
【0044】
さらに、上述した本実施の形態では、支持部11はその側面11aの全周にわたってモニタ部10を垂直軸回りに可動可能に支持していたが、支持部11はその側面11aの全周にわたってモニタ部10を支持しなくともよく、例えば垂直軸回りに270°(つまり側面11aの3/4)だけ可動可能に支持してもよい。この場合、支持部11自体が残りの角度(例えば90°)だけ測定ヘッド3に対して回動可能に構成されていれば、全体としてモニタ部10が測定ヘッド3に対して全周にわたって可動可能となって好ましい。
【符号の説明】
【0045】
1 検眼装置
2 ベース部
3 測定ヘッド
6 光学系
9 頂部
10 モニタ部
10a 表示面
10b 平面ディスプレイ部
10c ベゼル部
11 支持部
11a 側面
11b 可動板
11c ガイド部材
11d 溝