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  • 特許-織機の安全装置のチェック方法及び装置 図1
  • 特許-織機の安全装置のチェック方法及び装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】織機の安全装置のチェック方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   D03D 51/00 20060101AFI20220804BHJP
   D03D 51/18 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
D03D51/00 Z
D03D51/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017229171
(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公開番号】P2019099926
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-08-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】海田 学
(72)【発明者】
【氏名】志武 豊
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-164773(JP,U)
【文献】特開平05-215296(JP,A)
【文献】実開昭60-122389(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D29/00-51/46
F16P3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸方向に関し織前よりも前方の織前近傍の位置で織幅方向に関し織布を挟んで対向するように設けられた投光器及び受光器を含む安全装置であって前記受光器がその受光量に応じて発する受光信号のレベルを予め設定された閾値と比較すると共に前記受光信号のレベルが前記閾値を下回った場合に織機の運転を停止するための停止信号を発生する安全装置を備える織機において、
前記受光信号のレベルが前記閾値よりも低くなる程度に前記受光器の受光量が減少した状態を実現するための受光量減少手段を備えると共に、前記織機において行われる操作であってその操作の後に前記織機の停止状態が存在する操作を前記安全装置に対する動作チェックの契機として予め定めておき、
前記操作が行われることによる操作信号の発生に基づき、前記停止状態において前記動作チェックが行われるためのチェック期間に亘り前記受光量減少手段を作動させ、
前記受光量減少手段は、前記投光器をその投光量が零の状態とする又は前記受光信号のレベルが前記閾値よりも低くなる程度の投光量で投光する状態とすることで、前記受光器の受光量が減少した状態を実現し、
前記受光量が減少した状態で前記停止信号が発生していない場合に異常信号を発生する
ことを特徴とする織機の安全装置のチェック方法。
【請求項2】
前記操作は、織機の製織運転に関連して実行される織機操作である
ことを特徴とする請求項に記載の織機の安全装置のチェック方法。
【請求項3】
前記操作は、少なくとも織機の電源投入後の最初の起動時よりも前に行われる操作を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の織機の安全装置のチェック方法。
【請求項4】
経糸方向に関し織前よりも前方の織前近傍の位置で織幅方向に関し織布を挟んで対向するように設けられた投光器及び受光器を含む織機の安全装置であって前記受光器がその受光量に応じて発する受光信号のレベルを予め設定された閾値と比較すると共に前記受光信号のレベルが前記閾値を下回った場合に織機の運転を停止するための停止信号を発生する安全装置のためのチェック装置であって、
予め定められた前記織機において行われる操作であってその操作の後に前記織機の停止状態が存在する操作を契機として前記停止状態において前記安全装置に対する動作チェックが行われるようにすべく、前記操作が行われることによる操作信号の発生に基づいて指令信号を発生する指令手段と、
前記動作チェックのチェック期間を記憶する記憶器と、
前記受光信号のレベルが前記閾値よりも低くなる程度に前記受光器の受光量が減少した状態を実現する受光量減少手段であって前記操作信号の発生に基づいて作動する受光量減少手段と、
前記指令信号の発生に基づいて前記チェック期間において前記停止信号が発生していない場合に異常信号を発生する異常判別器とを含み、
前記受光量減少手段は、前記受光器の受光量が減少した状態を実現すべく、前記投光器をその投光量が零の状態とする又は前記受光信号のレベルが前記閾値よりも低くなる程度の投光量で投光する状態とする機能を有する投光制御手段である
ことを特徴とする織機の安全装置のチェック装置。
【請求項5】
前記操作は、織機の製織運転に関連して実行される織機操作である
ことを特徴とする請求項に記載の織機の安全装置のチェック装置。
【請求項6】
前記操作は、少なくとも織機の電源投入後の最初の起動時よりも前に行われる操作を含む
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の織機の安全装置のチェック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経糸方向に関し織前よりも前方の織前近傍の位置で織幅方向に関し織布を挟んで対向するように設けられた投光器及び受光器を含む安全装置であって前記受光器がその受光量に応じて発する受光信号のレベルを予め設定された閾値と比較すると共に前記受光信号のレベルが前記閾値を下回った場合に織機の運転を停止するための停止信号を発生する安全装置を備える織機に関する。
【背景技術】
【0002】
前記のような安全装置を織機に備えることが一般的に行われており、その安全装置の一例が特許文献1に開示されている。その一例について、安全装置は、経糸方向に関し織前よりも前方の織前近傍で織幅方向に関し織布を挟んで対向するように設けられた投光器及び受光器を含んでいる。そして、その安全装置は、その投受光器の間に異物が侵入するのに伴い、その異物の侵入を検知し、織機の運転を停止するための停止信号を発生するように構成されている。
【0003】
なお、前記のような投受光器を用いた異物の侵入の検知は、一般的には、受光器がその受光量に応じて発する受光信号のレベルを予め設定された閾値と比較するかたちで行われる。そして、その比較結果として、受光信号のレベルが閾値を下回った場合に、安全装置が前記のように停止信号を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平1-164773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、織機の安全装置について、製織中においてその動作が正常に行われることを保障する上で、織機の停止中等においてその動作に対するチェック(動作チェック)が行われることが望まれる。しかしながら、特許文献1にはそのように動作チェックを行うことは全く開示されておらず、従来においては、そのような動作チェックを行うこと(方法)や、その動作チェックを行う装置について全く提案されていなかった。
【0006】
以上のような実情を鑑み、本発明の目的は、前記のような安全装置を備える織機において、より確実に安全装置の動作を保障すべく、安全装置の動作チェックを行う方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記のような安全装置を備える織機を前提とする。そして、その織機において、本発明による安全装置のチェック方法は、前記受光信号のレベルが前記閾値よりも低くなる程度に前記受光量が減少した状態を実現するための受光量減少手段を備えると共に、前記織機において行われる操作であってその操作の後に前記織機の停止状態が存在する操作を前記安全装置に対する動作チェックの契機として予め定めておき、前記操作が行われることによる操作信号の発生に基づき、前記停止状態において前記動作チェックが行われるためのチェック期間に亘り前記受光量減少手段を作動させ、前記受光量減少手段が前記投光器をその投光量が零の状態とする又は前記受光信号のレベルが前記閾値よりも低くなる程度の投光量で投光する状態とすることで、前記受光器の受光量が減少した状態を実現し、前記受光量が減少した状態で前記停止信号が発生していない場合に異常信号を発生することを特徴とする。
【0008】
また、そのようなチェック方法を実現するための本発明による織機の安全装置のチェック装置は、予め定められた前記織機において行われる操作であってその操作の後に前記織機の停止状態が存在する操作を契機として前記停止状態において前記安全装置に対する動作チェックが行われるようにすべく、前記操作が行われることによる操作信号の発生に基づいて指令信号を発生する指令手段と、前記動作チェックのチェック期間を記憶する記憶器と、前記受光信号のレベルが前記閾値よりも低くなる程度に前記受光器の受光量が減少した状態を実現する受光量減少手段であって前記操作信号の発生に基づいて作動する受光量減少手段と、前記指令信号の発生に基づいて前記チェック期間において前記停止信号が発生していない場合に異常信号を発生する異常判別器とを含む。そして、前記受光量減少手段は、前記受光器の受光量が減少した状態を実現すべく、前記投光器をその投光量が零の状態とする又は前記受光信号のレベルが前記閾値よりも低くなる程度の投光量で投光する状態とする機能を有する投光制御手段であることを特徴とする。
【0009】
但し、ここで言う「操作」は、作業者によって行われるものには限られず、織機自体が行うものも含む。具体的には、その操作は、例えば、織機に電源を投入するための電源スイッチ(釦)の操作、織機を起動させるための運転釦の操作、織機の運転を停止させるための停止釦の操作、織機の寸動(正転、逆転)運転のための寸動正転釦、逆転釦の操作、及び製織不良が発生したことに伴って織機において自動的に実行される停止のための操作を含み、そのうちの各「釦操作」は作業者によって行われるものであるが、「自動的に実行される停止のための操作」は、織機が有する機能として織機自体が行うものである。また、その釦操作については、前記のような織機に一般的に備えられている釦の操作に限らず、前記の動作チェックのための専用の釦を設け、その専用釦が操作される場合も含む。
【0010】
また、以上のようなチェック方法及びチェック装置において、前記操作は、織機の製織運転に関連して実行される織機操作であっても良い。
【0011】
但し、ここで言う「織機操作」は、織機の運転を開始又は停止させるために行われる操作を指す。すなわち、その織機操作は、従来の織機(本発明によるチェック方法が実行されない/チェック装置を備えない織機)においても一般的に行われている操作であり、具体的には、前述の各「操作」のうちの「動作チェックのための専用釦の操作」を除く操作である。なお、前記で言う「織機の運転を開始させるために行われる操作」は、前述の各「操作」のうちの「電源釦の操作」、「運転釦の操作」、及び「寸動正転釦、逆転釦の操作」を含む。一方、前記「織機の運転を停止させるために行われる操作」は、前述の各「操作」のうちの「停止釦の操作」及び「織機において自動的に実行される操作」を含む。
【0012】
さらに、以上のようなチェック方法及びチェック装置において、前記操作に少なくとも織機の電源投入後の最初の起動時よりも前に行われる操作が含まれるようにしても良い。但し、ここで言う「起動時」は、運転釦が操作された時点ではなく、その後に実際に織機が動作を開始した時点を指す。また、「最初の起動時」は、製織中の織機の停止後における起動時(所謂「再起動時」)ではなく、織機への電源投入後における最初の運転釦操作に伴う前記「起動時」を指す。したがって、「織機の電源投入後の最初の起動時よりも前に行われる操作」は、織機に電源が投入された時点から前記「最初の起動時」までの期間におけるいずれかの時点で行われる操作である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記のような安全装置を備える織機において、より確実に安全装置の動作を保障すべくその安全装置の動作チェックが行われると共に、その動作チェックを単純な操作で且つ簡単な構成によって実現することができる。
【0014】
詳しくは、本発明によれば、前記操作が動作チェックの契機として予め定められており、その前記操作が行われることによって織機において安全装置の動作チェックが実行される。しかも、その前記操作は、作業者によって行われる単純な釦操作、あるいは織機自体にもともと備えられた機能に基づく操作であり、作業者に対し特別な負担をかけるものではないことから、そのような本発明によれば、その動作チェックが単純な操作によって実現されることとなる。
【0015】
加えて、本発明によれば、その動作チェックは、受光器の受光量が減少した状態(受光量減少状態)を生じさせること、及びその状態で発生するはずの停止信号が発生していない場合に異常信号を発生することのみで行われる。したがって、そのような本発明によれば、その動作チェックを実現する上で複雑且つ高価な構成を必要とせず、簡単な構成でその動作チェックを実現することができる。
【0016】
また、本発明によれば、前記受光量減少状態を生じさせることが、投光器をその投光量が零の状態とする又は受光信号のレベルが閾値よりも低くなる程度の投光量で投光する状態とすることによって実現される。したがって、そのような本発明によれば、それ以外の手段を用いて投光器の投光量を減少させることなく前記受光量減少状態を生じさせようとする場合と比べ、前記受光量減少状態をより簡単な構成によって実現することができる。
【0017】
さらに、織機の製織運転に関連して実行される織機操作を前記動作チェックの契機とする、すなわち、従来の織機においても一般的に行われている操作を契機に前記動作チェックが実行されるものとすれば、前記動作チェックを実行させるための専用の構成を織機に対し新たに設ける必要がないため、前記動作チェックをより簡単な構成で実現することができる。
【0018】
また、少なくとも織機の電源投入後の最初の起動時よりも前に行われる操作によって前記動作チェックが実行されるものとすれば、必ず前記動作チェックが行われた上で織機の製織運転が行われることとなるため、その製織運転は、常に安全装置の動作が保障された状態で行われることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施例に係るチェック装置を備える織機の概略図。
図2】本発明の一実施例に係るチェック装置を備える織機の前提装置を示すブロック図。
図3】本発明の一実施例に係るチェック装置を示すブロック図。
図4】本発明の一実施例における動作チェック時のタイミングチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図1~4に基づき、安全装置を備える織機における本発明のチェック装置の一実施例を説明する。
【0021】
図1に示すように、織機1は、その織機1に対し電源が投入された状態と電源が落とされた状態とに切り換えるための電源スイッチ(電源釦)B0を備えている。そして、その織機1は、その電源が落とされて停止している状態においてその電源釦B0が操作されることにより、その運転が可能な状態となる。但し、その電源釦B0が操作されても、織機1に製織運転を開始させるための運転釦B1が操作されるまでは、織機1は待機状態(運転が停止された状態)に置かれる。すなわち、織機1においては、その電源釦B0が操作されてから運転釦B1が操作されるまでの間に停止状態が存在する。
【0022】
また、織機1は、前記のような運転釦B1を備えている。そして、織機1においては、その運転釦B1が操作されることにより、製織運転が開始される。但し、その製織運転の開始について、運転釦B1が操作されると同時に(時間差が全く無く)開始される訳では無く、実際の織機1においては、運転釦B1の操作と織機1の動き始め(起動)との間に若干のタイムラグが存在する。すなわち、織機1においては、運転釦B1が操作されてから織機1が起動するまでの間に僅かではあるが停止状態が存在する。
【0023】
さらに、織機1は、製織中において作業者の操作で織機1を停止させるための停止釦B4を備えている。その停止釦B4が操作されることにより、織機1は停止状態とされる。また、織機1は、製織運転を停止している状態で、織機1(正確には、織機主軸MA)を寸動(正転・逆転)させる(織機1に寸動運転を行わせる)ための寸動正転釦B2及び逆転釦B3を備えている。その寸動運転は前記のように製織運転が停止されている状態で行われるものであるから、当然ながら、寸動正転釦B2、逆転釦B3が操作されて寸動運転が行われた後は、(運転釦B1が操作されるまでは)織機1は停止状態となっている。
【0024】
また、織機1は、製織条件の設定値等を入力設定するための入力設定器11を備えている。なお、本実施例では、その入力設定器11は、表示画面Dを備えると共に、その表示画面Dが所謂タッチパネルで構成されており、その表示画面Dをタッチ操作することで前記の設定値等の入力が行えるように構成されているものとする。その上で、前記した運転釦B1、停止釦B4、寸動正転釦B2、逆転釦B3も、その表示画面D上に表示され、その画面のタッチ操作により操作されるものとなっている。すなわち、運転釦B1、停止釦B4、寸動正転釦B2、逆転釦B3は、その入力設定器11に含まれている。そして、その入力設定器11は、織機1の運転を制御する織機制御装置12に対し接続されている。
【0025】
また、織機1においては、製織中に緯入れ不良や経糸切れ等の製織不良が発生した場合、停止操作が自動的に実行される。例えば、緯入れ不良が発生した場合、反給糸側に設けられた緯糸フィーラ13の出力信号S5に基づき、織機制御装置12が停止指令を発生する。また、経糸切れが発生した場合には、経糸切れ検知器(図示略)によりその経糸切れが検知され、経糸切れ検知器からその検知信号が出力されるのに伴い、織機制御装置12が停止指令を発生する。そして、その停止指令の発生に伴い、織機制御装置12は、織機主軸MAを回転駆動する主軸モータMの駆動を停止すると共に、織機主軸MAに対し制動を掛ける電磁ブレーキBKを作動させるといった織機1の停止操作(制動操作)を自動的に実行する。
【0026】
また、織機1は、前記の停止操作に伴い、停止指令が発生した時点から織機主軸MAの1回転分程度の惰性運転を経て、一時的な停止状態(第一次停止)となる。その後、織機1においては、待機位置として設定されたクランク角度(織機主軸MAの回転角度)、もしくは停止原因の補修が行われるクランク角度まで自動逆転される。
【0027】
なお、不良糸除去装置等の自動的に停止原因を補修する補修装置を備えていない織機1においては、織機1は、前記の待機位置として設定されたクランク角度で待機状態(第二次停止)とされる。すなわち、織機1は、そのクランク角度で停止状態とされる。また、前記補修装置を備えた織機1においては、その補修装置によって停止原因が補修された後、自動的に再起動に向けた操作が実行されて織機1が再起動される。そして、そのいずれの場合においても、前記の第一次停止の時点とそれに続く自動逆転が開始される時点との間に若干のタイムラグがあり、その第一次停止の時点から自動逆転が開始されるまでの間に織機1の停止状態が存在する。
【0028】
以上では、織機1の一般的な構成について説明したが、本発明が前提とする織機1は、更に、織前付近の領域に作業者の手指等の異物が侵入したことを検知すると共に、その検知に伴って織機1を停止させるための安全装置2を備えている。
【0029】
その安全装置2は、織機1の前後方向(経糸方向)に関し織前よりも前方の織前近傍の位置で、織機1の幅方向(織幅方向)に関し織布を挟んで対向するように設けられた投光器21及び受光器22(本実施例では1組)を備えている。
【0030】
その投光器21及び受光器22に関し、安全装置2は、それぞれに対し電力を供給するための電力供給部23を備えている。但し、その電力供給部23は、投光器21及び受光器22のそれぞれについて個別で、電力を供給する状態と電力を供給しない状態とに切り換え可能に構成されている。その上で、電力供給部23は、通常の状態では、電力を供給する状態に設定されており、織機1に電源が投入された状態では、投光器21及び受光器22のそれぞれに対し電力を供給するように構成されている。
【0031】
そして、投光器21は、その電力が供給された状態で常に投光状態となるように構成され、一方で、受光器22は、その投光器21から投光された光を受光すると共にその受光量に応じたレベルの受光信号S6を出力するように構成されている。
【0032】
また、安全装置2は、受光信号S6のレベルを予め設定された閾値と比較する比較器24を含んでいる。なお、その閾値は、比較器24において予め記憶されているものとする。さらに、その比較器24は、前記比較の結果として受光信号S6のレベルが前記閾値を下回った場合に、織機1の停止信号S7を発生して出力する機能を有している。
【0033】
このような安全装置2によれば、例えば、製織中において、作業者が手指を織前付近に接近させて投受光器22間の領域に手指が侵入した状態となった場合、その手指によって投光器21から投光されている光が遮られるため、それに伴って受光器22における受光量が減少する。それにより、受光器22が出力する受光信号S6のレベルが低下し、その結果として、受光信号S6のレベルと前記閾値とを比較している比較器24においては、受光信号S6のレベルが前記閾値を下回ったことが検知される。そして、比較器24は、その検知に伴い、織機1の停止信号S7を発生し、それを織機制御装置12に対し出力する。それに伴い、織機制御装置12が前述のような停止指令を発生して停止操作を実行し、織機1が停止状態とされる。すなわち、安全装置2が出力する停止信号S7に従って織機1が停止状態とされる。
【0034】
以上のような安全装置2を備えた織機1において、本発明は、より確実に安全装置2の動作を保障すべく安全装置2の動作チェックを行うためのチェック装置3であって、予め定められた織機1において行われる操作を契機としてその操作の後に存在する織機1の停止状態において前記動作チェックを行うチェック装置3を備える。なお、本実施例では、その動作チェックの契機となる前記操作について、織機1の製織運転に関連して実行される織機操作のうち、織機1の運転釦B1の操作が前記操作として設定されている場合を例として、本発明を説明する。
【0035】
また、本発明によるチェック装置3は、前述のように受光信号S6のレベルが前記閾値よりも低くなる程度に受光器22の受光量が減少した状態を実現するための受光量減少手段RMを含む。そして、本実施例では、その受光量減少手段RMは、投光器21が投光しない状態(受光量が零の状態)に切り換える手段、具体的には、電力が供給されている状態で投光する投光器21に対する電力の供給を停止する手段として構成されているものとする。そのようなチェック装置3の構成について、詳しくは以下の通りである。
【0036】
図3に示すように、チェック装置3は、前記動作チェックのための指令信号を発生する指令手段としての指令制御器31と、前記した受光量減少手段RMの一部として機能する投光制御器32と、安全装置2の異常を判別する異常判別器33とを含む。また、チェック装置3は、前記動作チェックが行われるチェック期間を記憶する記憶器34を含み、本実施例では、その記憶器34は指令制御器31に備えられている。さらに、本実施例では、チェック装置3は、安全装置2から出力される停止信号S7の出力先を切り換える切換器35を含む。その各構成要素について、詳しくは以下の通り。
【0037】
指令制御器31は、入力設定器11に対し接続されている。なお、その入力設定器11は、前述のように運転釦B1を含んでおり、その運転釦B1が操作されるのに伴い、製織運転を開始するための信号である運転信号S1を発生する。その上で、その運転信号S1は、運転釦B1の操作に応じた操作信号として織機制御装置12に対し出力される。織機制御装置12は、その運転信号S1が入力されるのに伴い、織機1を起動するための制御を実行する。それにより、織機1においては、前記のように製織運転が開始される。
【0038】
また、その運転信号S1は、指令制御器31に対しても出力されている。なお、指令制御器31は、本実施例では、その運転信号S1が入力されるのに伴い、記憶器34に記憶された前記チェック期間に亘って指令信号S8を発生するように構成されている。但し、その前記チェック期間は、時間により設定されており、その設定された時間(設定時間)が予め記憶器34に記憶されている。また、その設定時間は、前述の運転釦B1が操作されてから織機1が実際に起動するまでの間に存在する停止状態の時間よりも短い時間に設定されている。因みに、その停止状態の時間は200ms程度であり、その設定時間は、例えば50msに設定される。
【0039】
さらに、指令制御器31は、入力設定器11に加え、投光制御器32、異常判別器33及び切換器35に対しても接続されている。より詳しくは、指令制御器31は、その入力端において入力設定器11に対し接続されると共に、その出力端において投光制御器32、異常判別器33及び切換器35に対し接続されている。そして、前記のように指令制御器31において発生された指令信号S8は、その投光制御器32、異常判別器33及び切換器35に対して出力され、投光制御器32、異常判別器33及び切換器35に入力されている。
【0040】
投光制御器32は、安全装置2における電力供給部23に対し接続されている。そして、投光制御器32は、指令制御器31から指令信号S8が入力されるのに伴って切換信号S9を発生すると共に、その指令信号S8が入力されている間(前記設定時間)に亘ってその切換信号S9を電力供給部23に対し出力するように構成されている。
【0041】
なお、電力供給部23は、その切換信号S9が入力されるのに伴い、投光器21に対する電力供給に関し、前記した通常の状態である電力を供給する状態から電力を供給しない状態(電力供給を停止した状態)へ切り換わると共に、その切換信号S9が入力されている間に亘ってその電力を供給しない状態を維持するように構成されている。
【0042】
異常判別器33は、その入力端において前記のように指令制御器31に対し接続されると共に、他の入力端において安全装置2における比較器24に対しても接続されている。
【0043】
但し、本実施例では、その比較器24の出力端にチェック装置3における切換器35が接続されており、前記した比較器24からの織機制御装置12に対する停止信号S7の出力は、この切換器35を介して行われる。すなわち、安全装置2(比較器24)と織機制御装置12との間には、チェック装置3における切換器35が介装されている。その上で、チェック装置3においては、異常判別器33は、その切換器35の出力端に接続されている。したがって、前記の比較器24と異常判別器33との接続は、切換器35を介して行われている。
【0044】
切換器35は、前述のように指令制御器31に対しても接続され、指令制御器31が指令信号S8を発生するのに伴い、前記設定時間に亘ってその指令信号S8が入力されるように設けられている。その上で、切換器35は、比較器24から停止信号S7が出力された場合において、指令信号S8が入力されていない状態では、その停止信号S7を織機制御装置12へ向けて伝送し、一方で、指令信号S8が入力されている状態では、その停止信号S7を異常判別器33へ向けて伝送するように構成されている。
【0045】
したがって、指令制御器31が指令信号S8を発生している状態において比較器24から停止信号S7が出力された場合には、異常判別器33は、前記のように指令信号S8が入力されると共に、停止信号S7が入力される状態となる。
【0046】
その上で、異常判別器33は、指令信号S8が入力されている状態において停止信号S7が入力されない場合に異常信号S10を発生するように構成されている。なお、異常判別器33は、その出力端において織機制御装置12に対し接続されている。そして、異常判別器33において発生された異常信号S10は、織機制御装置12に対し出力される。
【0047】
以上のような各構成要素から成るチェック装置3によれば、前記のような安全装置2を備えた織機1において、運転釦B1が操作されるのに伴って前記動作チェックが行われる。詳しくは、以下の通り。
【0048】
先ず、織機1の電源が落とされた状態において織機1の電源釦B0が操作されるのに伴い、安全装置2は、電力供給部23が投光器21及び受光器22のそれぞれに対し電力を供給する状態となる。したがって、その状態では、投光器21から所定の光量の光が投光されると共に、受光器22からはその受光量に応じたレベルの受光信号S6が比較器24に対し出力される。
【0049】
その上で、前述の待機状態において入力設定器11における運転釦B1が操作されると、入力設定器11から織機制御装置12及び指令制御器31に対し運転信号S1(図4(a))が出力される。その運転信号S1が入力されるのに伴い、指令制御器31は、投光制御器32、異常判別器33、及び切換器35に対し前記設定時間に亘って指令信号S8(図4(b))を出力する。なお、その前記設定時間は、前述のように、運転釦B1が操作されてから織機1が実際に起動するまでの間に存在する停止状態の時間よりも短い時間である。
【0050】
そして、投光制御器32においては、その指令信号S8が入力されるのに伴い、指令信号S8が入力されている間に亘って切換信号S9(図4(c))を電力供給部23に対し出力することが行われる。その切換信号S9が入力されるのに伴い、電力供給部23は、投光器21に対し電力を供給しない状態に切り換えられる。また、その電力を供給しない状態は、切換信号S9が入力されている間に亘って維持される。それにより、投光器21が投光しない状態となり、それに伴い、受光器22における受光量が零の状態(受光量が減少した状態)となる。
【0051】
その上で、安全装置2が正常に動作する場合には、前記のように受光量が零の状態となる結果として、受光器22から出力される受光信号S6のレベルが零となり、比較器24における前記比較において受光信号S6のレベルが前記閾値を下回ることとなる。したがって、安全装置2が正常に動作する状態であれば、比較器24から停止信号S7が出力される。
【0052】
因みに、その停止信号S7は、前記動作チェック時においては、比較器24における前記比較の結果として受光信号S6のレベルが前記閾値を下回ったと判断された時点で出力が開始され、前記設定時間の終了時点までその出力が継続される。したがって、前記のように指令信号S8の発生(運転釦B1の操作)に伴って投光器21が投光しない状態(受光量が零の状態)とされる場合には、その停止信号S7は、前記設定時間に亘って出力される(図4(d))。
【0053】
なお、前記のように指令信号S8が切換器35にも入力されていることから、前述のように、比較器24から出力された停止信号S7は、その切換器35を経由して異常判別器33に対し伝送される。また、前記のように指令信号S8は異常判別器33にも入力されており、異常判別器33は、前記のように受光量が零の状態とされる場合において停止信号S7が出力される前記設定時間に亘り、その指令信号S8が入力された状態となっている。
【0054】
したがって、前記のように比較器24から停止信号S7が出力されると、異常判別器33は、その停止信号S7と指令信号S8とが同時に入力された状態となる。ところで、異常判別器33は、前述のように、指令信号S8が入力されている状態において停止信号S7が入力されない場合に異常信号S10を発生するように構成されている。言い換えれば、異常判別器33は、指令信号S8が入力されている状態において停止信号S7が入力されている場合には、その異常信号S10を発生しないように構成されている。したがって、前記のように停止信号S7と指令信号S8とが入力された状態では、異常判別器33において異常信号S10自体が発生しないことから、織機制御装置12に対する異常信号S10の出力は行われない。
【0055】
その後、前記設定時間が経過した時点で、指令制御器31が指令信号S8の出力を停止し、それに伴い、電力供給部23が投光器21に対し電力を供給する状態に戻されて投光器21が投光する状態となる。そして、前記設定時間中に異常信号S10が発生しないことで、運転釦B1の操作に伴って織機1がその操作後の停止状態となる時間の経過後に、織機1が起動して製織運転が開始される。
【0056】
一方で、受光器22や比較器24の故障により安全装置2が正常に動作しない場合、前記のように受光量が零の状態となっても、比較器24からの停止信号S7の出力が行われないこととなる。その場合、異常判別器33は、前記のように指令信号S8が入力されている状態において、停止信号S7が入力されない状態となる。その結果として、異常判別器33から織機制御装置12に対し異常信号S10が出力される(図4(e))。
【0057】
織機制御装置12は、その異常信号S10が入力されるのに伴い、運転信号S1の入力に伴って実行される織機1を起動するための前記制御が禁止された状態となる。それにより、織機1は、製織運転を開始せず、前記の待機状態に維持されたままとなる。すなわち、運転釦B1が操作されたにもかかわらず、織機1が起動されないこととなる。
【0058】
なお、そのように織機1が起動されない場合において、安全装置2が正常に動作しないこと(安全装置2の動作不良)がその原因である場合には、そのことを作業者が把握できるようにされていることが好ましい。そこで、例えば、図3に示すように異常判別器33がその出力端において入力設定器11に接続されると共に、異常信号S10が入力設定器11に対しても出力されるような構成とし、異常信号S10が入力設定器11に入力されるのに伴い、安全装置2の動作不良に関する情報がその表示画面D上に表示されるようにする、といったことが考えられる。また、それに加えて(あるいは、それに代えて)、異常信号S10が織機制御装置12に入力されるのに伴い、織機制御装置12に接続された表示灯(図示略)における所定の色のランプが点灯するようにしても良い。
【0059】
以上のように、本実施例では、前記動作チェック時における受光信号S6のレベルが前記閾値よりも低くなる程度に受光器22の受光量が減少した状態を、投光器21が投光しない状態とすることで実現している。そして、その投光器21が投光しない状態が、投光制御器32及び電力供給部23の機能によって為されている。したがって、本実施例では、その投光制御器32と電力供給部23との組み合わせが、本発明で言う「受光量減少手段」RMに相当する。すなわち、本実施例のチェック装置3は、安全装置2の一部(電力供給部23)もそのチェック装置3の一部(受光量減少手段RMの一部)として機能する構成となっている。
【0060】
また、その投光制御器32と電力供給部23との組み合わせ(受光量減少手段RM)は、前記動作チェック時において前記のように投光器21が投光しない状態とするための構成となっており、そのように投光器21をその投光量が零の状態とすることで受光量減少手段RMとしての機能(前記のように受光量が減少した状態を実現すること)を果たす構成となっている。したがって、本実施例では、その受光量減少手段RMは、投光器をその投光量が零の状態とする又は受光信号のレベルが前記閾値よりも低くなる程度の投光量で投光する状態とする投光制御手段となっている。
【0061】
なお、本発明は、以上で説明した実施例に限定されるものではなく、以下(1)~(13)のように変形させた態様でも実施することができる。
【0062】
(1)前記実施例では、織機1の運転釦B1の操作が前記動作チェックの契機として設定されている。因みに、運転釦B1は、織機1への電源投入後において織機1を最初に起動させるためや、その起動後(製織中)に織機1が停止した後において織機1を再起動させるために操作される。但し、製織中の織機1の停止は、織機1や製織等に異常が起きたときに発生するものであり、製織が安定して(順調に)行われている状態では発生しない。すなわち、その製織中の織機停止は、必ずしも起こり得るものではない。したがって、前記再起動のための運転釦B1の操作は、織機1において必ず行われるとは言い切れない操作である。一方で、前記のように織機1を最初に起動させるために行われる運転釦B1の操作は、当然ながら織機1において必ず行われる。
【0063】
このように、運転釦B1の操作は、織機1を最初に起動させる際にその実際の起動よりも前に必ず行われる操作であることから、前記実施例のように織機1の運転釦B1の操作を前記動作チェックの契機として設定する場合には、その最初の起動時よりも前に前記動作チェックが行われることとなる。したがって、前記実施例では、少なくとも前記最初の起動時よりも前において行われる操作(運転釦B1の操作)が、前記動作チェックの契機として設定される操作(以下、「契機操作」と言う。)となっている。
【0064】
そして、前記実施例の場合には、そのチェック装置3は、前記最初の起動時よりも前のみではなく、製織中に織機1が停止した場合においても、その再起動毎に前記動作チェックが行われるように構成されている。すなわち、前記実施例では、運転釦B1の操作が無条件に契機操作として設定されている。
【0065】
これに対し、本発明は、ある操作(前記実施例:運転釦B1の操作)が契機操作として設定される場合において、その操作の全てにおいて前記動作チェックが行われるように構成(実施)されるのには限らず、ある特定の場合におけるその操作においてのみ前記動作チェックが行われるように構成(実施)されても良い。例えば、前記実施例のように運転釦B1の操作が契機操作として設定される場合において、その運転釦B1の操作毎に前記動作チェックが行われるのに代えて、前記最初の起動時における運転釦B1の操作に伴ってのみ前記動作チェックが行われるようにチェック装置3が構成されていても良い。
【0066】
なお、その場合、前記動作チェックの頻度が少なくなるが、その点については特に問題とはならない。何故なら、前述のように従来の織機においては本発明のようなチェック装置が備えられていないことから明らかなように、安全装置の故障は頻繁に発生するものではなく、むしろ、故障が発生する可能性は低いものである。したがって、本発明はより確実に安全装置の動作を保障するためのものであるが、前記のような事情を考慮すると、その前記動作チェックの頻度は少なくても問題は無いと言えるからである。
【0067】
但し、前記のようにその操作毎ではなく特定の場合における操作においてのみ前記動作チェックが行われるようにしようとすると、そのための専用の構成やプログラム等が必要となるため、装置構成をより簡単にするという観点においては、契機操作として設定された操作に対し無条件で前記動作チェックが行われるようにチェック装置3が構成(設定)されているのが好ましい。
【0068】
また、前記のように運転釦B1の操作を契機操作として設定する場合であって、特定の場合におけるその操作において前記動作チェックが行われるようにする場合において、その特定の操作は、前記最初の起動時における運転釦B1の操作のみには限らない。例えば、その織機1において製織される織物が変更される場合や経糸の消尽に伴う経糸ビームの交換が行われる場合では織機1は停止されるため、その場合も運転釦B1の操作は必ず行われる。そのような(製織中に予想外に発生する織機1の停止に伴う運転釦B1の操作を除く)予め想定される運転釦B1の操作についても、前記動作チェックが行われるように本発明を構成(実施)しても良い。
【0069】
(2)織機1において必ず行われる操作としては、前記した最初の起動時における運転釦B1の操作の前に行われる電源釦B0の操作がある。すなわち、織機1は、常に電源が投入された状態に置かれるのではなく、製織の生産スケジュール等に応じて電源が落とされた状態とされる。そして、その織機1において再び製織を行う場合には、当然ながら先ず最初に電源を投入する操作(電源釦B0の操作)が行われる。
【0070】
そこで、前記した運転釦B1の操作に代えて、その電源釦B0の操作を契機操作として設定する(電源釦B0の操作に応じて前記動作チェックが行われるようにチェック装置3が構成される)ようにしても良い。なお、その場合には、その電源釦B0が操作されてから運転釦B1が操作されるまでの織機1が待機状態(停止状態)となっている間の電源釦B0の操作直後において、前記動作チェックが行われる。そして、その場合にも、前記最初の起動時よりも前に前記動作チェックが行われることとなる。
【0071】
なお、そのように電源釦B0の操作を契機操作として前記動作チェックが行われるようにするにあたっては、例えば、前記実施例のように指令手段としての指令制御器31が設けられた構成において、電源釦B0が操作されたことを示す操作信号が入力設定器11から指令制御器31に対し出力されるように入力設定器11がその電源釦B0の操作に応じて前記操作信号を発生するようにしたり、あるいは、電源釦B0の操作に伴って前記操作信号を発生して指令制御器31に対し出力する信号発生器を新たに設けたりする、といった構成を採用すれば良い。
【0072】
(3)以上では、織機1において製織運転を行う上で必ず行われることが予め分かっている釦操作(運転釦B1、電源釦B0の操作)を契機操作とする例について述べたが、本発明においては、作業者によって行われる釦操作を契機操作とする場合であっても、その釦操作は、前記のようなものに限らず、製織中において織機1が停止した場合に行われる釦操作(寸動正転釦B2、逆転釦B3の操作)であっても良い。すなわち、寸動正転釦B2あるいは逆転釦B3の操作に応じて前記動作チェックが行われるようにチェック装置3が構成されるようにしても良い。
【0073】
なお、前述のように、寸動正転釦B2、逆転釦B3は織機1が停止している状態で操作される釦であり、その釦が操作されることで行われる寸動運転(寸動正転、逆転)の後では、運転釦B1が操作されるまでの間において織機1は停止状態となっている。また、その寸動運転は、寸動正転釦B2、逆転釦B3が操作されてから若干のタイムラグを置いて開始される。すなわち、織機1において寸動運転を行う場合には、その寸動運転の完了後だけでなく、寸動正転釦B2、逆転釦B3の操作後から実際に寸動運転が開始されるまでの間においても織機1の停止状態が存在する。
【0074】
そこで、寸動正転釦B2、逆転釦B3の操作を契機操作として設定する場合には、それに伴う寸動運転の前及び後のいずれかの織機1の停止状態において前記動作チェックが行われるようにすれば良い。
【0075】
そして、そのように寸動正転釦B2、逆転釦B3の操作を契機操作とする場合には、寸動正転釦B2、逆転釦B3の操作が行われるのに伴って入力設定器11から織機制御装置12に対し出力される操作信号としての寸動正転信号S2、逆転信号S3が、前記実施例で説明した指令手段としての指令制御器31に対しても出力されるような構成とすれば良い。
【0076】
その上で、例えば寸動正転釦B2、逆転釦B3を操作(表示画面Dにおけるタッチ操作)し続けることでその操作されている間に亘って寸動運転が実行される織機1、すなわち、寸動正転釦B2、逆転釦B3が操作されている間に亘って前記の操作信号が出力されてその操作信号が出力されている間において継続的に寸動運転が行われる織機1においては、その操作信号の入力が開始された時点、もしくは操作信号の入力が終了した時点で、前記実施例のように指令信号S8を出力するように指令制御器31を構成すれば良い。そして、操作信号の入力開始時点で指令信号S8が出力される場合には、前記した寸動運転の前の停止状態において前記動作チェックが行われる。また、操作信号の入力終了時点で指令信号S8が出力される場合には、前記した寸動運転の後の停止状態において前記動作チェックが行われる。
【0077】
なお、前述のように、寸動運転(寸動正転釦B2、逆転釦B3の操作)は製織中に織機1が停止した際に行われるものであり、再起動のための運転釦B1の操作と同様に、例えば1回の製織(経糸ビームの交換、機替え等までの製織)において必ずしも起こり得るものでは無い。しかし、その1回の製織よりも長い期間で考えた場合、その織機1で製織を行っていく上では、停止が一度も発生しないということは現実的には有り得ず、前記した操作とは違い予め分かってはいないものの、発生することが十分に考えられる。したがって、寸動正転釦B2、逆転釦B3の操作を契機操作として設定する場合であっても、頻度は少ないものの、その織機1において前記動作チェックが行われることとなる。そして、その頻度が少ないことについて特に問題とならないことは、前述した通りである。
【0078】
(4)以上では、織機1が停止している状態で行われる釦操作(運転釦B1、電源釦B0、寸動正転釦B2、逆転釦B3の操作)を契機操作とする例について述べた。しかし、本発明では、作業者によって行われる釦操作を契機操作として設定する場合において、その釦操作は、そのように織機1が停止した状態で行われる釦操作に限らず、製織中において行われる停止釦B4の操作であっても良い。すなわち、停止釦B4の操作に応じて前記動作チェックが行われるようにチェック装置3が構成されるようにしても良い。
【0079】
なお、その停止釦B4の操作が行われると、それに伴って入力設定器11から織機制御装置12に対しその操作が行われることによる運転停止信号S4が出力される。そして、その運転停止信号S4が入力されることに伴い、織機制御装置12は、前述のような停止指令を発生して停止操作を実行する。
【0080】
但し、織機1は、その停止指令が発生した時点で直ぐに停止状態となる訳ではなく、前述のように、停止指令が発生した時点から織機主軸MAの1回転分程度の惰性運転を経て第一次停止の状態となる。また、停止原因を自動的に補修する装置が備えられていない織機1においては、その第一次停止後、織機1は、予め設定されたクランク角度まで自動逆転されて待機状態(第二次停止の状態)となる。また、第一次停止の状態から自動逆転が開始されるまでの間にも若干のタイムラグがあり、その第一次停止となった時点から自動逆転が開始されるまでの間に若干の織機1の停止状態が存在する。
【0081】
そこで、停止釦B4の操作を契機操作とする場合には、その第一次停止後(自動逆転開始前)の停止状態もしくは前記の第二次停止後の待機状態において前記動作チェックが行われるようにすれば良い。但し、前記のように、織機制御装置12における停止指令は停止釦B4の操作(運転停止信号S4の発生)に伴って発生するが、織機1は、その停止指令が発生した後の前記の惰性運転後、及び自動逆転後に停止状態となる。したがって、停止釦B4の操作を契機操作とする場合、指令手段としての指令制御器31からの指令信号S8の出力は、停止釦B4が操作された時点ではなく、前記の惰性運転後もしくは自動逆転後に行われる必要がある。
【0082】
よって、例えば、前記実施例のように指令制御器31が操作信号(この例の場合は、停止釦B4が操作されたことを示す信号であり、以下では、「停止操作信号」と言う。)の入力に伴って指令信号S8を出力するように構成されている場合には、運転停止信号S4が入力されるのに応じて停止操作信号を指令制御器31に対し出力するように織機制御装置12を構成し、その上で、その出力が、前記した第一次停止後の停止状態もしくは第二次停止後の待機状態において行われるようにすれば良い。
【0083】
具体的には、織機制御装置12において停止指令が発生してから第一次停止となるまでの時間(惰性運転時間)は、そのときの製織における織機1の回転数や織機1の構成等によって予め把握することが可能である。また、自動逆転が開始されてから第二次停止となるまでの時間(自動逆転時間)も、逆転時の織機1の回転数及び逆転量から把握可能である。さらに、その惰性運転時間及び自動逆転時間に基づき(前記のタイムラグを考慮することも含む)、織機制御装置12において停止指令が発生してから第二次停止となるまでの時間(待機状態に達するまでの時間(待機到達時間))を把握することも可能である。
【0084】
そこで、第一次停止後の停止状態において前記動作チェックが行われるようにする場合には、前記の惰性運転時間を予め織機制御装置12に記憶させておき、運転停止信号S4が入力されてからその惰性運転時間後に停止操作信号を出力するように織機制御装置12を構成すれば良い。また、第二次停止後の待機状態において前記動作チェックが行われるようにする場合には、前記の待機到達時間を予め織機制御装置12に記憶させておき、運転停止信号S4が入力されてからその待機到達時間後に停止操作信号を出力するように織機制御装置12を構成すれば良い。
【0085】
また、前記のように停止操作信号の入力に伴って指令信号S8を出力するように指令制御器31が構成されているのに代えて、停止操作信号が入力された時点から予め設定された時間(惰性運転時間、待機到達時間)の経過後に指令信号S8を出力するように指令制御器31が構成されていても良い。したがって、その場合には、その時間は、前記のように織機制御装置12に記憶されるのに代えて、指令制御器31に記憶されることとなる。すなわち、指令制御器31は、そのような時間が記憶可能となるように構成される。さらに、その場合には、前記のように織機制御装置12が停止操作信号を出力する構成に代えて、入力設定器11から出力される運転停止信号S4が停止操作信号として指令制御器31に入力される構成とする。
【0086】
その上で、第一次停止後の停止状態において前記動作チェックが行われるようにする場合には、前記の惰性運転時間を予め指令制御器31に記憶させておき、停止操作信号が入力されてからその惰性運転時間後に指令信号S8を出力するように指令制御器31を構成すれば良い。また、第二次停止後の待機状態において前記動作チェックが行われるようにする場合には、前記の待機到達時間を予め指令制御器31に記憶させておき、停止操作信号が入力されてからその待機到達時間後に指令信号S8を出力するように指令制御器31を構成すれば良い。
【0087】
(5)前記(4)では、製織中に実行される織機1の停止操作について、作業者による釦操作によってその停止操作が行われる場合について述べた。一方で、織機1においては、製織中に緯入れ不良や経糸切れ等の製織不良が発生した場合にも、その停止操作が実行される。そして、その停止操作は、緯糸や経糸等の状態を検知する検知器からの検知信号に基づいて製織不良が発生したと判別された場合に発生する信号(製織不良信号)に従って実行される。
【0088】
そこで、織機1の停止操作に関連させて前記動作チェックを行う場合において、前記のように停止釦B4の操作による停止操作信号の発生に伴って(停止釦B4の操作を契機操作として)前記動作チェックが行われるのに代えて、前記の製織不良信号の発生に伴って前記動作チェックが行われるようにチェック装置3が構成されるようにしても良い。
【0089】
また、その場合は、織機1において行われる前記の製織不良が発生したことを判別する操作(もしくは、それに伴って製織不良信号を発生する操作)が契機操作となる。なお、その契機操作は、停止釦B4の操作とは異なり、織機1において自動的に行われる。このように、本発明では、契機操作は、作業者によって行われる釦操作に限らず、織機1において自動的に行われる操作であっても良い。
【0090】
因みに、前記の検知器について、緯入れされた緯糸の状態は、前述の緯糸フィーラ13によって検知される。また、経糸の状態(経糸切れの発生の有無)は、前述の経糸切れ検知器(例えば、ドロッパ装置)によって検知される。そして、それらの検知器から出力される検知信号に基づき、例えば織機制御装置12に含まれる各製織不良に対応した判別器が、製織不良の発生の有無を判別し、製織不良が発生したと判別された場合に製織不良信号を発生する。
【0091】
また、その製織不良の発生に伴う停止操作においても、前記した停止釦B4の操作の場合と同様に、織機1は、その停止指令の発生後、前記惰性運転を経て前記の第一次停止の状態となり、さらにその第一次停止後に自動逆転を開始する。なお、製織不良が発生した状態を補修する作業が作業者による手動で行われる織機1においては、織機1は、前記の自動逆転の開始後、停止釦B4の操作の場合と同様に、予め設定された待機位置(クランク角度)まで自動逆転され、待機状態(第二次停止の状態)とされる。
【0092】
そこで、その場合には、停止釦B4の操作を契機操作とする場合と同様に、その第一次停止後(自動逆転開始前)の停止状態もしくは前記の第二次停止後の待機状態において前記動作チェックが行われるようにすれば良い。また、その場合において、契機となる製織不良信号が織機制御装置12において発生する場合には、織機制御装置12からその契機操作が実行されたことを示す操作信号が指令手段としての指令制御器31に対し出力される。その上で、停止釦B4の操作の場合と同様に、その操作信号の出力が停止指令の発生から前記した惰性運転時間後もしくは待機到達時間後に行われるか、もしくは、その出力が停止指令の発生に伴って行われると共にその操作信号の入力に伴う指令制御器31からの指令信号S8の出力が前記した惰性運転時間後もしくは待機到達時間後に行われるようにすれば良い。
【0093】
また、織機1によっては、緯入れ不良が発生した場合において、その緯入れ不良が発生した状態を自動的に補修する所謂不良糸除去装置を備えたものがある。そして、その不良糸除去装置を備えた織機1では、前記した第一次停止後の自動逆転において、前記した第二次停止のクランク角度での停止は行われず、その補修作業が行われるクランク角度(一般的には、緯入れ不良が発生した織機1サイクルにおけるクランク角度180°)まで織機1が自動逆転される。そこで、その場合には、第一次停止後(自動逆転開始前)の停止状態において前記動作チェックが行われるようにすれば良い。また、不良糸除去装置による補修作業が行われている間に前記動作チェックが行われるようにしても良い。
【0094】
(6)前記(4)、(5)では、織機1の停止操作に関し、それが停止釦B4の操作による手動で、あるいは製織不良の発生に伴って自動で行われる場合について述べたが、いずれの場合にも、織機制御装置12において停止指令が発生する。また、織機1の停止操作は、前記のような停止釦B4の操作や製織不良の発生以外においても行われる場合があり、その場合にも、織機制御装置12において停止指令が発生する。
【0095】
そこで、その織機1の停止操作が何によって発生したかにかかわらず、織機制御装置12において停止指令が発生したことを契機として、すなわち、織機制御装置12による停止指令の発生を契機操作として、前記動作チェックが行われるようにチェック装置3が構成されるようにしても良い。そして、その場合にも、前記(4)、(5)と同様に、第一次停止後(自動逆転開始前)の停止状態もしくは前記の第二次停止後の待機状態において前記動作チェックが行われるようにすれば良い。
【0096】
さらに、織機1の停止操作においては、第一次停止後、前記した待機位置もしくは製織不良を補修するクランク角度まで織機1が自動逆転される。そして、その自動逆転のために、織機制御装置12において逆転指令が発生する。そこで、その逆転指令が発生したことを契機として、すなわち、織機制御装置12による逆転指令の発生を契機操作として、前記動作チェックが行われるようにチェック装置3が構成されるようにしても良い。
【0097】
なお、その場合は、前記実施例のように指令手段としての指令制御器31が設けられた構成において、第一次停止後(自動逆転開始前)の停止状態において前記動作チェックを行うべくその逆転指令の発生に伴ってその契機操作が実行されたことを示す操作信号を織機制御装置12が指令制御器31に対し出力するか、あるいは、第二次停止後の待機状態において前記動作チェックを行うべくその逆転指令が発生した時点から前記した自動逆転時間後に織機制御装置12がその操作信号を指令制御器31に対し出力するようにすれば良い。
【0098】
(7)以上では、織機1の製織運転に関連して実行される織機1操作を契機操作とする例について述べたが、本発明は、そのような織機操作に伴って前記動作チェックが行われる実施形態には限定されない。
【0099】
具体的には、本発明は、織機1に対し設けられた前記動作チェックを実行させるための専用の釦(専用釦)が操作されることによって前記動作チェックが実行されるように実施(構成)することも可能である。その場合は、その専用釦の操作が契機操作となり、その契機操作の実行に伴い、その専用釦が操作されたことを示す操作信号が指令手段としての指令制御器31に対し入力される。
【0100】
なお、その専用釦は、例えば、運転釦B1等と同様に入力設定器11の表示画面D上に表示されるようにすれば良い。そして、運転釦B1の操作を契機操作とする場合と同様にして、その専用釦の操作に伴って前記動作チェックが行われるようにチェック装置3を構成すれば良い。但し、本発明においては、織機1の停止状態において前記動作チェックが行われることから、その専用釦の操作(それに伴う前記動作チェック)は、運転釦B1が操作される前の織機1の待機状態において行われる。
【0101】
(8)以上では、前記動作チェックの契機操作として設定し得る複数の操作のそれぞれについて、その操作に応じて前記動作チェックが行われる例を説明した。その上で、本発明は、そのいずれかの操作(1種類の操作)のみに応じて前記動作チェックが行われる実施形態には限定されず、2種類、もしくはそれ以上の操作のそれぞれに応じて前記動作チェックが行われるように実施(構成)することも可能である。その場合は、その前記動作チェックを行うための2種類以上の操作のそれぞれが、前記動作チェックを行うための契機操作となる。
【0102】
但し、前記動作チェックの契機操作として設定し得る複数の操作について、例えば、電源釦B0の操作と運転釦B1の操作とは異なる種類の操作である。しかし、それらの操作は、操作の間隔が短く且つその間に製織運転が行われない操作であり、織機1の最初の起動時よりも前に行われる一連の操作である。そのため、その2種類の一連の操作を契機操作として設定する、すなわち、電源釦B0の操作及び運転釦B1の操作のそれぞれに応じて前記動作チェックが行われるようにすることは、技術的に考えてあまり有効ではない。同様に、製織中に織機1の停止操作が行われた際の、運転停止信号S4や製織不良信号が発生される操作からその停止に伴う織機1の再起動のための運転釦B1の操作までの一連の複数の操作についても、その一連の操作のうちの複数種類の操作を契機操作として設定することは、技術的に考えてあまり有効ではない。
【0103】
そこで、前記のように2種類以上の契機操作に応じて前記動作チェックが行われるようにする場合においては、例えば、前記の織機1の最初の起動時よりも前に行われる一連の操作のうちのいずれか1つの操作(所定の起動前操作)、及び製織中の織機1の停止操作に伴う一連の操作のうちの(再起動のための)運転釦B1の操作を除くいずれか1つの操作(所定の停止時操作)の2種類の操作を、契機操作として設定することが一例として考えられる。すなわち、チェック装置3を、前記所定の起動前操作及び前記所定の停止時操作に応じて前記動作チェックが行われるように構成しても良い。
【0104】
なお、織機1の停止操作に伴う一連の操作について、その停止操作のきっかけである(起因となる)前記した停止釦B4の操作と製織不良信号を発生する操作とは異なる種類の操作である。したがって、前記所定の起動前操作を契機操作とした上で、その停止操作のきっかけである操作(起因操作)を契機操作として織機1の停止操作毎にそれに伴って前記動作チェックが行われるようにする場合には、契機操作の種類は3種類となる。
【0105】
また、その2種類の起因操作のうちの一方のみを契機操作として設定し、織機1の最初の起動後については、手動でもしくは自動的に織機1が停止された場合にのみ、前記動作チェックが行われるようにしても良い。さらには、2種類以上の契機操作に応じて前記動作チェックが行われるようにする場合において、その2種類の起因操作のみで前記動作チェックが行われる、すなわち、織機1の最初の起動時よりも前では前記動作チェックが行われず、その起動後において織機1の停止操作が発生する毎にその起因操作に伴って前記動作チェックが行われるようにしても良い。
【0106】
また、2種類以上の契機操作に応じて前記動作チェックが行われるようにする場合について、前記所定の起動前操作及び前記所定の停止時操作のうちの一方のみを契機操作として設定すると共に、前述のように専用釦を設けた上でその専用釦の操作を契機操作として設定する(専用釦の操作に応じて前記動作チェックが行われるようにチェック装置3を構成する)ようにしても良い。
【0107】
但し、その場合において、前記所定の起動前操作が契機操作として設定されている場合には、織機1の最初の起動時よりも前にその専用釦を操作しても、技術的に考えてあまり有効ではない。したがって、その場合には、その専用釦は、製織中の織機1の停止操作に伴って発生する織機1の待機状態において操作されるものとして設けられる。同様に、前記所定の停止時操作が契機操作として設定されている場合には、専用釦は、織機1の最初の起動時よりも前の織機1の待機状態において操作されるものとして設けられる。
【0108】
(9)前記実施例は、織機1に電源が投入されている状態においては投光器21及び受光器22に対し常に電力が供給される織機1を前提としている。言い換えれば、前記実施例は、織機1に電源が投入されるのに伴って投光器21及び受光器22に対する電力の供給が開始される(投光器21が投光を開始すると共に受光器22が受光可能な状態となる)織機1を前提としている。
【0109】
しかし、本発明が前提とする織機1は、前記のような織機1には限らず、例えば、織機1に電源が投入されても投光器21及び受光器22に対する電力の供給が開始されず、最初の起動のための運転釦B1の操作が行われて初めて投光器21及び受光器22に電力の供給が開始される織機1であっても良い。なお、その織機1の場合、前記実施例のように運転釦B1が入力設定器11に含まれている例では、その運転釦B1の操作に伴って発生する運転信号S1が、入力設定器11から電力供給部23に対し出力される。そして、電力供給部23は、その最初の運転信号S1の入力に伴い、投光器21及び受光器22に対する電力の供給を開始するように構成される。
【0110】
そして、そのような織機1においても、織機1を最初に起動させるための運転釦B1の操作を契機として前記動作チェックを実行させることは可能である。詳しくは、運転釦B1の操作を契機操作とする場合において、前記実施例では、その運転釦B1の操作に伴って投光器21に対する電力の供給が一時的に停止されるものとしている。それに対し、この例では、織機1を最初に起動させるためのその運転釦B1の操作が行われる時点では投光器21に対する電力の供給は行われていない状態となっているため、その運転釦B1が操作されても前記動作チェックに要する時間だけその状態が維持される(電力の供給開始がその時間だけ遅らされる)ようにすれば、前記実施例と同様に前記動作チェックを行うことが可能となる。
【0111】
具体的には、前記実施例の構成を前提とした場合について述べると、前記実施例における投光制御器32が省略された構成とした上で、電力供給部23が、前記の運転信号S1が入力された時点に対し投光器21への電力供給を開始する時点を遅延させる遅延回路を備える構成とする。また、遅延回路は、前記実施例で説明した前記設定時間だけ前記の電力供給を遅らせるように構成される。
【0112】
その構成によれば、運転信号S1(運転釦B1が操作されたことを示す操作信号)の発生に伴い、受光器22が受光可能な状態になっているにもかかわらず前記チェック期間に相当する前記設定時間に亘り投光器21が投光しない状態が発生する。そして、前記実施例と同様に前記動作チェックが実行される。
【0113】
なお、この例の場合、電力供給部23における遅延回路が、受光量減少手段RMに相当する。すなわち、この例の場合も、前記実施例と同様に、安全装置2の一部(電力供給部23の一部)が、チェック装置3の一部(受光量減少手段RM)として機能する。
【0114】
(10)受光器22における受光量が減少した状態を実現する手段に関し、前記実施例等では、投光器21による投光量が零の状態とすることで、その受光量の減少(受光量が零の状態)を実現している。その上で、前記実施例等では、投光器21に対し電力が供給されていない状態とすることで、その受光量が零の状態が実現される。
【0115】
しかし、前記のように受光量が減少した状態を実現するべく投光量が零の状態とする手段は、前記のような構成に限らず、例えば、投光する状態と投光しない状態とを切り換える機能を投光器21自体に持たせることでも実現可能である。
【0116】
より詳しくは、電力供給部23は、一般的な織機と同様に、織機1に電源が投入されている状態では常に電力を供給し続けるものとする。その上で、投光器21については、それ自体にその投光状態(前記の投光する状態及び投光しない状態)の切り換えを可能とする機能が備えられた構成のものを採用する。さらに、その投光状態の切り換えについては、契機操作に伴って発生する切り換えのための信号(例えば前記実施例で説明した投光制御器32からの切換信号S9)に基づいて行われるものとする。それにより、前記チェック期間に亘り投光量が零の状態(受光量が減少した状態)を実現することができる。
【0117】
なお、この例の場合は、その投光器21における前記切り換えのために機能する部分と前記した切り換えのための信号を発生する手段との組み合わせが受光量減少手段RMに相当する。すなわち、その場合も、前記実施例等と同様に、安全装置2の一部(投光器21の一部)が、チェック装置3の一部(受光量減少手段RMの一部)として機能する。
【0118】
また、受光量が零の状態を実現する上で、その手段は、前記した投光量が零の状態とする手段には限らない。例えば、安全装置2自体の構成は従来のままとした上で、投受光器間に光を遮る遮光手段を設けることでも、受光量が零の状態を実現することは可能である。
【0119】
具体的には、その遮光手段を、光を遮るための遮光板と、その遮光板を変位させる駆動装置とで構成されたものとする。その上で、その遮光手段を投受光器間に配置すると共に、光を遮る遮光位置と光から離間した退避位置との間で遮光板を変位(例えば揺動)駆動することで、光が遮られて受光器22における受光量が零となる状態を実現することができる。なお、その遮光板の駆動は、契機操作に伴って発生する切り換えのための信号(例えば、前記実施例で説明した投光制御器32からの切換信号S9)に基づき、前記チェック期間に亘って遮光板が前記遮光位置に位置すると共にその期間以外では遮光板が前記退避位置に位置するように行われれば良い。
【0120】
そして、この例の場合は、その遮光手段がチェック装置3に含まれると共に、遮光手段と前記した切り換えのための信号を発生する手段との組み合わせが受光量減少手段RMに相当することとなる。因みに、遮光手段は、その取り付け等を考慮し、投光器21又は受光器22の近傍に配置されるのが好ましいが、可能であれば織幅方向に関し織布の存在範囲内に設けられても良い。
【0121】
また、安全装置2自体の構成は従来のままとした上での受光量が零の状態を実現する手段は、前記のような遮光手段に限らず、投光器21と受光器22との対向状態を、その通常の対向する状態から対向しない状態に切り換える手段(対向状態切換手段)とすることも可能である。
【0122】
具体的には、その対向状態切換手段は、例えば、アクチュエータを駆動源として投光器21もしくは受光器22を回動可能に支持する回動装置を含むものとすれば良い。その上で、契機操作に伴って発生する切り換えのための信号(例えば、前記実施例で説明した投光制御器32からの切換信号S9)に基づき、前記対向状態を前記チェック期間に亘って投受光器が対向しない状態とすると共にその期間以外では投受光器が対向する状態とするように、前記の回動装置におけるアクチュエータの駆動を制御すれば良い。
【0123】
そして、この例の場合は、その対向状態切換手段がチェック装置3に含まれると共に、その対向状態切換手段と前記した切り換えのための信号を発生する手段との組み合わせが受光量減少手段RMに相当することとなる。
【0124】
(11)本発明における受光量が減少した状態を実現する手段(受光量減少手段RM)は、以上で説明したような受光量が零の状態とする手段には限らない。すなわち、その受光量減少手段RMは、受光信号S6のレベルが閾値よりも低くなる程度に受光量が減少した状態を実現する手段であれば良い。
【0125】
なお、そのように受光量が減少した状態は、例えば、投光器21による投光量が減少した状態とする、すなわち、受光信号S6のレベルが閾値よりも低くなる程度の投光量で投光する状態とすることで実現することができる。
【0126】
具体的には、複数の投光素子を備えた投光器21において、その一部の投光素子を投光しない状態に切り換えることがその一例として考えられる。但し、その切り換え後にも投光し続ける投光素子の数は、当然ながら、その光を受光器22が全て受光したときの受光信号S6のレベルが閾値よりも低くなる程度の数に設定される。なお、その一部の投光素子の切り換えは、前述した投光器21自体を投光する状態と投光しない状態とに切り換える手法と同様の手法で、前記した切り換えのための信号に基づいて行われるようにすれば良い。
【0127】
そして、この例の場合も、前述した例と同様に、投光器21における前記切り換えのために機能する部分と前記した切り換えのための信号を発生する手段との組み合わせが受光量減少手段RMに相当する。
【0128】
また、前記のように投光量が減少した状態とする手段に限らず、前述した遮光手段によっても、前記のような程度に受光量が減少した状態とすることが可能である。具体的には、その遮光手段において、前記遮光位置を、投光器21から投光される光の一部のみが遮られるような位置に設定すれば良い。但し、その前記遮光位置は、遮光板によって遮られない光が受光器22で受光されたときの受光信号S6のレベルが閾値よりも低くなるような位置に設定される。
【0129】
さらには、前述した対向状態切換手段によっても、前記のような程度に受光量が減少した状態とすることが可能である。具体的には、その対向状態切換手段において、投光器21と受光器22との対向状態を、前述のように(完全に)対向しない状態ではなく、一部が対向した状態に切り換えが行われるようにすれば良い。但し、その一部が対向した状態は、その状態で受光器22が受光したときの受光信号S6のレベルが閾値よりも低くなる程度の対向状態である。
【0130】
(12)以上で説明した例では、指令手段としての指令制御器31が、契機操作に応じて発生する操作信号の入力に応じて定まる前記動作チェックの開始時点から、前記チェック期間(前記設定時間)に亘って指令信号S8を出力するように構成されている。そして、そのために、指令制御器31は記憶器34を備えている。
【0131】
しかし、本発明における指令手段は、前記した指令制御器31のように前記開始時点から前記設定時間に亘って指令信号S8を出力し続けるように構成されたものには限られない。すなわち、指令信号S8は、その指令信号S8が入力される異常判別器33等の作動を開始させる(作動状態を切り換える)きっかけのみとなるような信号であればよく、指令手段は、そのような指令信号S8を出力するように構成されていても良い。なお、その場合、指令手段は、前記の指令制御器31のように記憶器34を備えていなくても良い。
【0132】
但し、前記実施例の場合で言うと、指令信号S8が入力される異常判別器33、投光制御器32、切換器35(以下、「異常判別器等」とも言う。)について、異常判別器33は、その指令信号S8が入力されている間に亘って異常を判別する状態となり、投光制御器32は、その指令信号S8が入力されている間に亘って切換信号S9を出力する状態となる。また、切換器35は、その入力されている間に亘って停止信号S7の伝送先を切り換えた状態となる。すなわち、いずれも指令信号S8が入力された時点から前記設定時間に亘ってその作動状態をそれ以前の状態から切り換えるものとなっている。したがって、前記のように指令信号S8がその作動状態の切り換えのきっかけのみとなる信号である場合でも、前記設定時間が設定された記憶器34が必要となる。
【0133】
そこで、その場合には、指令手段から独立した記憶器34を設け、その記憶器34に異常判別器等を接続すれば良い。その上で、異常判別器等を、指令信号S8が入力されたことに伴い、その記憶器34に記憶された前記設定時間に亘って前記のように作動状態が切り換えられた状態となるように構成すれば良い。
【0134】
また、記憶器34について、前記では、指令手段から独立した(単一の)記憶器34を設け、その記憶器34に対し異常判別器等がそれぞれ接続される、すなわち、異常判別器等に共通の記憶器34が設けられる構成としたが、それに代えて、異常判別器等のそれぞれが記憶器34を備えていても良い。
【0135】
また、指令信号S8について、前記のように異常判別器等の作動状態を切り換えるきっかけのみの信号である場合には、その信号は操作信号で代替することが可能である。そして、そのように指令信号S8を操作信号で代替する場合には、前記実施例における指令制御器31のような専用の指令手段は省略でき、前述のように操作信号を発生する入力設定器11や織機制御装置12が指令手段としての機能を有することとなる。すなわち、本発明における指令手段は、織機1における既存の装置にその機能を持たせて構成されたものであっても良い。
【0136】
(13)以上で説明した例は、チェック装置3が切換器35を備え、安全装置2(比較器24)から出力される停止信号S7の伝送先がその切換器35によって切り換えられる構成となっている。すなわち、チェック装置3においては、異常判別器33が切換器35を介して安全装置2(比較器24)と接続されており、安全装置2から出力された停止信号S7が前記チェック期間では切換器35を介して異常判別器33に対し出力されるように構成されている。
【0137】
しかし、本発明におけるチェック装置3は、前記のような切換器35を備えるように構成されたものには限らず、異常判別器33が直接的に安全装置2(比較器24)に接続されるように構成されていても良い。
【0138】
なお、その場合、切換器35が省略されることとなるが、そのように切換器35を省略した場合、安全装置2から出力された停止信号S7は、織機制御装置12及び異常判別器33に対し入力されることとなる。但し、前記チェック期間において発生する停止信号S7は、チェック装置3によって意図的につくり出された受光量が減少した状態に基づくものであるため、織機制御装置12がその前記チェック期間中の停止信号S7の影響を受けるのは適当では無い。
【0139】
そこで、前記のように切換器35を省略する場合には、例えば、指令制御器31から出力された指令信号S8が織機制御装置12に対しても出力されるように織機1の制御系を構成し、その上で、指令信号S8が入力されてからの前記設定時間に亘り停止信号S7の入力を無効とするように織機制御装置12を構成すれば良い。言い換えれば、一例として織機1の制御系及び織機制御装置12をそのように構成することにより、チェック装置3において前記実施例で用いられている切換器35を省略することが可能となる。
【0140】
因みに、異常判別器33は、前述のように指令信号S8の入力に基づいて前記動作チェックを行うように構成されているため、前記チェック期間以外における停止信号S7の発生状態によって前記した異常信号S10を発生することはない。
【0141】
また、本発明は、以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0142】
1 織機
11 入力設定器
12 織機制御装置
13 緯糸フィーラ
2 安全装置
21 投光器
22 受光器
23 電力供給部
24 比較器
3 チェック装置
31 指令制御器
32 投光制御器
33 異常判別器
34 記憶器
35 切換器
B0 電源釦
B1 運転釦
B2 寸動正転釦
B3 逆転釦
B4 停止釦
BK 電磁ブレーキ
D 表示画面
M 主軸モータ
MA 織機主軸
RM 受光量減少手段
S1 運転信号
S2 寸動正転信号
S3 逆転信号
S4 運転停止信号
S5 緯糸フィーラの出力信号
S6 受光信号
S7 停止信号
S8 指令信号
S9 切換信号
S10 異常信号
図1
図2
図3
図4