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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20220804BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220804BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220804BHJP
   H01M 10/66 20140101ALI20220804BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 M
H01M10/613
H01M10/66
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018010171
(22)【出願日】2018-01-25
(65)【公開番号】P2019129236
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】井上 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】玉置 充宏
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-012955(JP,A)
【文献】特開2005-064382(JP,A)
【文献】特開2014-053649(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0030717(US,A1)
【文献】特開2016-009856(JP,A)
【文献】特開2016-076644(JP,A)
【文献】特開2001-127478(JP,A)
【文献】米国特許第06230791(US,B1)
【文献】特開2000-171615(JP,A)
【文献】特開2004-111783(JP,A)
【文献】特開平10-154772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
H01M 10/613
H01M 10/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象となる電子部品に接触するように設置され、集熱用冷媒通路を有する、1枚または2枚以上の複数枚のアルミニウム合金板と、
前記アルミニウム合金板の少なくとも一部分が介挿された第1スリットが設けられた第1支持板と、前記第1支持板が係合された第1容器と、を有し、前記集熱用冷媒通路へ冷媒を分配するための第1マニホールド部と、
前記アルミニウム合金板の他の少なくとも一部分が介挿された第2スリットが設けられた第2支持板と、前記第2支持板が係合された第2容器と、を有し、前記集熱用冷媒通路からの冷媒を集液するための第2マニホールド部と
を備える冷却装置。
【請求項2】
アルミニウム合金板と、前記第1支持板および前記第2支持板の少なくとも一方が、プラスチックを含んでなる接合部を介して接合されていることを特徴とする請求項に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記アルミニウム合金板表面の、少なくとも前記接合部の接合面に、JIS B 0601に準じて測定した十点平均粗さRzが1μm以上である微細凹凸形状が形成されていることを特徴とする請求項に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第1マニホールド部および前記第2マニホールド部の少なくとも一方が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、ABS系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリーレンエーテル系樹脂およびポリアリーレンスルフィド系樹脂から選ばれる一種以上の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記集熱用冷媒通路が、アルミニウム合金板内部の板面方向を貫通するように、1本ないし2本以上の複数本設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置、具体的にはCPU(Central Processing Unit)等の電子部品および電池パックの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器では従来から熱対策が非常に重要視されている。例えば家電製品の高性能化、携帯機器を始めとする電子機器類の小型化・高密度実装化、あるいはマイクロプロセッサ類の高速化に伴い、電子デバイス部品1つあたりの消費電力は著しく増大しており、それに応じて発熱量が大きく増した結果、デバイスの劣化、ひいては製品の性能劣化につながることがあるので効率来な冷却システムが重要となっている。
また、EV(Electric Vehicle)、HEV(Hybrid Electric Vehicle)などの動力源としての二次電池の分野では高出力大容量に対応するため電池モジュールを接続した電池パックが使用されている。このような高出力大容量の二次電池は充放電過程において多量の熱を発生し、この熱によって単位電池の劣化を引き起こすため電池パック内に内蔵されている電池セルまたは電池モジュールの冷却システムが必要である。さらには、EV,HEVに必要なインバーター、モーター、DC/DCコンバーターやそれらを制御するECU(Engine Control Unit)等がモジュール化されることにより、熱がこもりやすくなり、これらのモジュール部品(パワーモジュール部品)にも冷却システムが必要となっている。
【0003】
そこで、こうした電気・電子機器や電池パックにおいては通常、部品モジュールレベルや完成品レベルでそれぞれ放熱対策がなされてきた。
ここに放熱対策とは、熱源(高温領域)から、外界の熱源から隔離された低温領域へ熱エネルギーを輸送して放出するために、熱伝導、対流および熱放射などの各伝熱手段を組み合わせた最適手段を設計することをいう。従来は簡便で放熱効率が高い対流に頼った放熱対策が一般的であり、例えば半導体装置に使用される各種モジュールにおいては、半導体素子(LSI(Large Scale Integration)、パワーIC(Integrated Circuit)等)の上面に放熱フィンを設置し、半導体素子より発せられる熱を、放熱フィンの対流作用により外部環境に放出する試みがなされてきたが冷却効率の点において不十分な場合が散見されるようになってきた。また冷却ファンによって強制冷却する方法も広く採用されているが、冷却効率をより高めるためには騒音も付随して大きくなるという問題点があった。
【0004】
上述したような問題点を解決する方法として、近年では、液冷方式の冷却装置の採用が普及しつつある。この液冷方式の冷却装置は、水等の冷却媒体を循環させる液通路を内蔵する金属製板状、いわゆるコールドプレートを電子部品や電池パックに接触させ、前記液通路内に通液した冷却液体によって、電子部品から発生した熱を、機器外部に設けられた放熱側ヒートシンクに搬送することで、電子部品を冷却するものである(例えば、特許文献1参照)。
この液冷方式の冷却装置であれば、冷却ファンに比べて小型化が容易であり、十分な冷却効率を得ることができるが、コールドプレートと冷却媒体を流通させるための液循環システムを接続・組立てるために、フラックスろう付け(NB法)やフラックスレスろう付け(VB法)作業が必須となり組立作業が煩雑になるという問題点があった。さらに、これまでの冷却装置は基本的には略9割以上の材料が金属から形成されているため、特にバッテリー等の自動車用途部品に冷却装置を応用する場合は軽量性の点で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-261480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記課題を解決するために行われたものであって、電子部品や電池パックの冷却効率を改善でき、軽量化・小型化を容易に実現できる冷却装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の主旨は以下のとおりである。
[1]
冷却対象となる電子部品に接触するように設置され、集熱用冷媒通路を有する、1枚または2枚以上の複数枚のアルミニウム合金板と、
前記アルミニウム合金板の少なくとも一部分が介挿された第1スリットが設けられた第1支持板と、前記第1支持板が係合された第1容器と、を有し、前記集熱用冷媒通路へ冷媒を分配するための第1マニホールド部と、
前記アルミニウム合金板の他の少なくとも一部分が介挿された第2スリットが設けられた第2支持板と、前記第2支持板が係合された第2容器と、を有し、前記集熱用冷媒通路からの冷媒を集液するための第2マニホールド部と
を備える冷却装置。

アルミニウム合金板と、前記第1支持板および前記第2支持板の少なくとも一方が、プラスチックを含んでなる接合部を介して接合されている前記[1]に記載の冷却装置。

前記アルミニウム合金板表面の、少なくとも前記接合部の接合面に、JIS B 0601に準じて測定した十点平均粗さRzが1μm以上である微細凹凸形状が形成されている前記[]に記載の冷却装置。
[4]
前記第1マニホールド部および前記第2マニホールド部が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、ABS系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリーレンエーテル系樹脂およびポリアリーレンスルフィド系樹脂から選ばれる一種以上の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から構成されている前記[1]~[3]のいずれかに記載の冷却装置。

前記集熱用冷媒通路が、アルミニウム合金板内部の板面方向を貫通するように、1本ないし2本以上の複数本設けられている前記[1]~[4]のいずれかに記載の冷却装置。
【発明の効果】
【0008】
軽量で冷却効率の良い冷却装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る冷却装置の一例を示した斜視図である。
図2】本実施形態に係る冷却装置を構成部品別に表示した分解斜視図である。
図3】アルミニウム合金板の(a)断面をy軸方向から眺めた断面図である。
図4図1の冷却装置におけるアルミニウム合金板とマニホールド部の支持板との接合部分を、x軸方向から眺めた模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の本実施形態に係る冷却装置10は、冷却対象となる発熱電子部品や電池パックに当接または近接するように設置される。この冷却装置10は1本以上の集熱用冷媒通路3を有する、1枚または2枚以上の複数枚のアルミニウム合金板1と、このアルミニウム合金板1に接合・固定化され、前記集熱用冷媒通路3へ冷媒を分配するためのマニホールド部2(第1マニホールド部)と、同様にアルミニウム合金板1に接合・固定化され、前記集熱用冷媒通路3からの冷媒を集液するためのマニホールド部2’(第2マニホールド部)と、を備えている。当該冷却装置10は、連結部(図示せず)と必要に応じて設置される冷媒循環用ポンプを経由して、前記アルミニウム合金板1で吸収した熱を外部に放出するための放熱部(図示せず)に連結している。
【0011】
以下、本発明の本実施形態に係る冷却装置10について、図面を参照して説明する。
図1図4は本実施形態に係る冷却装置10を示す図であって、図1は冷却装置10の全体斜視図、図2は分解斜視図、図3図1のアルミニウム合金板1の集熱用冷媒通路3を横断(図1における断面線(a))する断面図である。また、図4は、冷却装置10におけるアルミニウム合金板1と冷媒溜め部分(マニホールド部2または2’)を構成する支持板4との接合部分を示す図である。
【0012】
アルミニウム合金板1は、アルミニウム又はアルミニウム合金からからなるアルミニウム板材である。アルミニウム合金としては、JIS H4000に規定された合金番号1050、1100、2014、2024、3003、4003、5052、6063、7075等の板、および鋳造物のAC1A、AC1B、AC2A、AC3A、AC4A、AC4B、AC4C、AC5A、AC8等を好ましい例として挙げることができる。本実施形態に係る冷却装置10では、アルミニウム合金板1が、冷却対象となる発熱体(図示せず)に当接するように配置されるので、アルミニウム合金板1としては熱伝導率が高いものを使用することが好ましい。アルミニウム合金板1の形状は、通常は略均一な厚みを有し、長方形乃至正方形の形状をもつものが用いられるが、冷却装置10に当接ないし近接する発熱部品の形状に応じて、曲面形状をもつものであってもよい。またアルミニウム合金板1の厚みは、特定の部位が他の部位に比べて厚くなっていてもよい。
【0013】
本実施形態の冷却装置10を構成するアルミニウム合金板1の枚数は特に限定されないが、発熱量、冷却効率および循環に必要な電気エネルギーとのバランスで決定される。通常は1~10枚、好ましくは2~5枚程度が使用される。各アルミニウム合金板1内部に板面方向(図1に示す例では、y軸方向)に貫通する集熱用冷媒通路3の本数は、前記したアルミニウム合金板1の枚数の場合と同様に、発熱体の発熱量、冷却効率および循環に必要な電気エネルギーとのバランスで決定される。集熱用冷媒通路3はアルミニウム合金板1の一つの側面から、対向する他の側面に貫通していればよく、集熱用冷媒通路3は1本であってもよいし、2本以上の複数本であってもよい。2本以上の複数が設けられている場合はその板内での集熱用冷媒通路3の相互配置は特に制限されないが、通常は相互に平行関係となるように配置される。
図3は、アルミニウム合金板1の(a)断面を図1のy軸方向から眺めた集熱用冷媒通路3の断面図である。集熱用冷媒通路3である貫通孔の断面形状は、略楕円形であってもよいし、略半円形であってもよいし、角形であってもよいし、略円形であってもよい。このような断面形状は、熱接触面積全体を優先するのか、特定方向の熱接触面積を優先するのか、吸熱面の均一性を優先するのか等によって当業者の知見に基づいて任意に決定される事項である。
【0014】
アルミニウム合金板1内部に板面方向に集熱用冷媒通路3が貫通した多穴合金コールドプレートの製造法は特に限定されず、例えば特開2002-261480号公報に開示されているような、液通路を形成するアルミニウム合金管を一対のアルミニウム合金板で挟み込んで全体に板状に形成する方法などを挙げることができる。ここでアルミニウム合金間を接着固定化する際には、フラックスろう付けやフラックスレスろう付けが行われていてもよい。
【0015】
本実施形態の冷却装置10を構成する1枚または2枚以上のアルミニウム合金板1は、マニホールド部2または2’を構成する、スリット7付きの支持板4に固定化されている。すなわち、アルミニウム合金板1の両端は、支持板4のスリット7に介挿されると同時に、アルミニウム合金板1とスリット7の隙間がプラスチックによって接合または接着されて封止される。この際、アルミニウム合金板1の端部はスリット7から突説した構造であってもよいし、スリット7に内設していてもよいし、同一面を形成していてもよい。図4は、アルミニウム合金板1の一方の端部が、スリット7(図2)から突設し、アルミニウム合金板1の一方の端部がプラスチック含有の接合部8を介してマニホールド部2または2’と接合・一体化している模式図を示したものである。
【0016】
本実施形態においては、図4に示すように、前記アルミニウム合金板1表面の、少なくとも前記プラスチックを含んでなる接合部8との接合面には、JIS B 0601に準じて測定した十点平均粗さRzが1μm以上、好ましくは1μm以上1mm以下、より好ましく3μm以上100μm以下である微細凹凸形状9が形成されていることが好ましい。
【0017】
上記十点平均粗さRzを有する微細凹凸形状9を形成する方法としては、NaOH等の無機塩基水溶液および/またはHCl、HNO等の無機酸水溶液にアルミニウム合金部材を浸漬する方法;陽極酸化法によりアルミニウム合金部材を処理する方法;機械的切削、例えばダイヤモンド砥粒研削またはブラスト加工によって作製した凹凸を有する金型パンチをプレスすることにより金属表面に凹凸を形成する方法や、サンドブラスト、ローレット加工、レーザー加工により金属表面に凹凸形状を作成する方法;国際公開第2009/31632号パンフレットに開示されているような、水和ヒドラジン、アンモニア、および水溶性アミン化合物から選ばれる1種以上の水溶液に第2の金属材料を浸漬する方法等が挙げられる。前記微細凹凸形状9は、アルミニウム合金板1の、少なくともプラスチックとの接合面に形成されていれば十分である。
【0018】
本実施形態における接合部8を構成するプラスチックとは、熱可塑性樹脂組成物と熱可塑性樹脂組成物に大別され、熱可塑性樹脂組成物は、後述する、マニホールド部2または2’を構成する熱可塑性樹脂組成物に同義である。
【0019】
本実施形態に係るプラスチックとしての熱可塑性樹脂組成物は樹脂成分としての熱可塑性樹脂と必要に応じて充填剤とからなる。
熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、極性基含有ポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂等のポリメタクリル系樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂等のポリアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール-ポリ塩化ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、無水マレイン酸-スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等の芳香族ポリエーテルケトン、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アイオノマー、アミノポリアクリルアミド樹脂、イソブチレン無水マレイン酸コポリマー、ABS、ACS、AES、AS、ASA、MBS、エチレン-塩化ビニルコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニルグラフトポリマー、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ノルボルネン樹脂、フッ素プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フッ素化エチレンポリプロピレン樹脂、PFA、ポリクロロフルオロエチレン樹脂、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリパラメチルスチレン樹脂、ポリアリルアミン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、オリゴエステルアクリレート、キシレン樹脂、マレイン酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリグルタミン酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0020】
これらの中でも、熱可塑性樹脂としては、アルミニウム合金板1と支持板4との接合強度向上効果がより効果的に得ることができるという観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアリーレンエーテル系樹脂およびポリアリーレンスルフィド系樹脂から選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
【0021】
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物においては、接合部8の機械的特性改良の視点や線膨張係数差調整などの視点から任意成分と充填剤を併用できる。充填材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、炭素粒子、粘土、タルク、シリカ、ミネラル、セルロース繊維からなる群から一種または二種以上を選ぶことができる。これらのうち、好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、ミネラルから選択される一種または二種以上である。また、アルミナ、フォルステライト、マイカ、窒化アルミナ、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどに代表される放熱性フィラーを用いることもできる。これらの充填材の形状は特に限定されず、繊維状、粒子状、板状等どのような形状であってもよいが、アルミニウム合金板1の表面に形成された微細凹凸形状9の凹部に侵入できる程度の大きさを含む充填剤を使用することが好ましい。
【0022】
なお、熱可塑性樹脂組成物が充填材を含む場合、その含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上100質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上90質量部以下であり、特に好ましくは10質量部以上80質量部以下である。
【0023】
本実施形態に係るプラスチックとして熱硬化性樹脂組成物を用いることも可能である。熱硬化性樹脂組成物とは、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物である。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、オキセタン樹脂、マレイミド樹脂、ユリア(尿素)樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂などが用いられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、耐熱性、加工性、機械的特性、接着性および防錆性等の視点から、フェノール樹脂、エポキシ樹脂および不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選択される1以上を含む熱硬化性樹脂組成物が好適に用いられる。熱硬化性樹脂組成物に占める熱硬化性樹脂の含有量は、樹脂組成物全体を100質量部としたとき、好ましくは15質量部以上60質量部以下であり、より好ましくは25質量部以上50質量部以下である。
【0024】
フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂;メチロール型レゾール樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油などで溶融した油溶融レゾールフェノール樹脂などのレゾール型フェノール樹脂;アリールアルキレン型フェノール樹脂などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも入手容易性、安価およびロール混練による作業性が良好などの理由からノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
【0025】
上記フェノール樹脂において、ノボラック型フェノール樹脂を用いる場合は、通常、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを使用する。ヘキサメチレンテトラミンは、特に限定されないが、ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して、10質量部以上25質量部以下使用することが好ましく、13質量部以上20質量部以下使用することがより好ましい。ヘキサメチレンテトラミンの使用量が上記下限値以上であると、成形時の硬化時間を短縮することができる。また、ヘキサメチレンテトラミンの使用量が上記上限値以下であると、成形品の外観を向上させることができる。
【0026】
熱硬化性樹脂組成物は充填剤を含んでいてもよく、接合部8の機械的強度を向上させる観点から充填材を含むことが好ましい。充填材の種類および含有量は、前記熱可塑性樹脂組成物における充填剤にまったく同様である。充填材を含有させることにより、熱硬化性樹脂組成物の作業性を向上させつつ、得られる接合部8の機械的強度をより一層向上させることができる。また、充填材の種類や含有量を調整することにより、得られる接合部8の線膨張係数を調整することも可能となる。
【0027】
本実施形態に係る接合部8を介してスリット7にアルミニウム合金板1を固定する方法は特に限定されないが、例えば前記プラスチックをアルミニウム合金板1の接合部8形成予定面に付着させて、いったん帯巻き状のプラスチック帯を形成させたのちに、次いで該プラスチック帯をスリット内に突設して固定化する方法を好ましい例として挙げることができる。
前記プラスチック付着方法としては、プラスチックが熱硬化性樹脂組成物の場合では、該樹脂組成物を溶剤に溶解又は分散させた樹脂ワニスを調製し、その樹脂ワニスを接合部8形成予定面に塗布コーティング、スプレー塗装、ディップ塗装、刷毛塗り、ローラ塗り等の方法によって塗布したのち後に熱硬化、光効果する方法を好ましい例として挙げることができる。一方、プラスチックが熱可塑性樹脂組成物の場合は射出成型法が好ましい。具体的には、具体的には、アルミニウム合金板1を射出成形金型のキャビティ部にインサートし、熱可塑性樹脂組成物を金型に射出する射出成形法により製造する方法である。より具体的には、以下の(i)~(iii)の工程を含む方法が好ましい。
(i)熱可塑性樹脂組成物を調製する工程
(ii)接合部8形成予定面に微細凹凸形状9を付与したアルミニウム合金板1を射出成形用の金型内に設置する工程
(iii)熱可塑性樹脂組成物を、アルミニウム合金板1上の接合部8形成予定面と接するように、上記金型内に射出成形し、接合部8を形成する工程
【0028】
このようにして形成されたプラスチック帯をスリット7に固定化する方法としては、例えば接着剤を用いて固定化する方法方や、プラスチック帯をスリット7内に仮り固定した状態で接合部8形成予定部をプラスチックの軟化温度以上に局所加熱して熱融着方法を好ましい例として例示できる。ここで用いられる接着剤としては特に限定されるものではなく、市販の接着剤、例えば2液常温硬化樹脂系、熱硬化性樹脂系、ホットメルト系、エラストマー系、熱可塑性樹脂系およびエマルジョン系接着剤を制限なく使用することができる。
本実施形態の冷却装置10において、冷却装置10が高い強度を必要としない場合は、前記のプラスチック帯を形成させることなく、アルミニウム合金板1とスリット7を直接接合してもよい。この直接接合においては、前記した市販接着剤や、機械的嵌合方式を適宜選択して接合できる。
【0029】
本実施形態に係るマニホールド部2または2’は、冷媒を集熱用冷媒通路3へ分配するための一時貯留槽および集熱用冷媒通路3からの回収冷媒を集液するための一時貯留槽としての機能をもつ。以下、マニホールド部2についてのみ説明し、同様な機能を持つマニホールド部2’に説明については省略する。マニホールド部2は、スリット7を備えた支持板4と、一面が開放されている枡状の容器からなり、容器の一面には冷媒注入口5を備えている。冷媒注入口5には、冷媒用接続部6が接続されている。冷媒用接続部6及び冷媒注入口5を介して冷媒をマニホールド部2に注入することができる。マニホールド部2’は、冷媒排出口5’を備えている。冷媒排出口5’には、冷媒用接続部6が接続されている。冷媒用接続部6及び冷媒排出口5’を介して冷媒をマニホールド部2’から排出することができる。支持板4と枡状容器との係合手段は特に限定されず、例えばネジ止めなどの機械的係合手段、接着剤を用いる化学的係合手段を例示することができる。
【0030】
マニホールド部2または2’を構成する枡状容器と支持板4としては、接合部8を形成する前記熱可塑性樹脂組成物と前記熱硬化性樹脂が同様に使用できる。作業性、経済性の視点からは、熱可塑性樹脂組成物を使用することが好ましい。熱可塑性樹脂組成物の中でも、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、ABS系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリーレンエーテル系樹脂およびポリアリーレンスルフィド系樹脂から選ばれる一種以上の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から構成されていることが好ましく、さらに強度や冷媒による耐薬品性を重視する場合は、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアリーレンエーテル系樹脂およびポリアリーレンスルフィド系樹脂から選ばれる一種以上の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から構成されていることがより好ましい。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 冷却対象となる電子部品に接触するように設置され、集熱用冷媒通路を有する、1枚または2枚以上の複数枚のアルミニウム合金板と、
前記集熱用冷媒通路へ冷媒を分配するための第1マニホールド部と、
前記集熱用冷媒通路からの冷媒を集液するための第2マニホールド部と
からなる冷却装置。
2. 前記集熱用冷媒通路が、アルミニウム合金板内部の板面方向を貫通するように、1本ないし2本以上の複数本設けられていることを特徴とする1.に記載の冷却装置。
3. アルミニウム合金板と、前記第1マニホールド部または前記第2マニホールド部とが、プラスチックを含んでなる接合部を介して接合されていることを特徴とする1.または2.に記載の冷却装置。
4. 前記第1マニホールド部または前記第2マニホールド部が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、ABS系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリーレンエーテル系樹脂およびポリアリーレンスルフィド系樹脂から選ばれる一種以上の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から構成されていることを特徴とする1.~3.のいずれか一つに記載の冷却装置。
5. 前記アルミニウム合金板表面の、少なくとも前記接合部の接合面に、JIS B 0601に準じて測定した十点平均粗さRzが1μm以上である微細凹凸形状が形成されていることを特徴とする3.に記載の冷却装置。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の冷却装置によれば、熱が発生する電子部品あるいはリチウムイオン二次電池に代表される電池モジュールや電池パックを効率よく冷却ないしは放熱することができるので、例えばパソコンCPUや電池パック或いはEV,HEV用パワーモジュール部品の冷却に適用して、広く活用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 アルミニウム合金板
2 マニホールド部(注入側)
2’ マニホールド部(排出側)
3 集熱用冷媒通路
4 支持板
5 冷媒注入口
5’ 冷媒排出口
6 冷媒用接続部
7 スリット
8 接合部
9 微細凹凸形状
10 冷却装置
図1
図2
図3
図4