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特許7117109ポリアミック酸、ポリイミドフィルム、及びポリイミドフィルムの製造方法
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  • 特許-ポリアミック酸、ポリイミドフィルム、及びポリイミドフィルムの製造方法 図1
  • 特許-ポリアミック酸、ポリイミドフィルム、及びポリイミドフィルムの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】ポリアミック酸、ポリイミドフィルム、及びポリイミドフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20220804BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
C08G73/10
C08J5/18 CFG
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018013848
(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公開番号】P2018127608
(43)【公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2017-0018866
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】513311848
【氏名又は名称】慶熙大學校産學協力團
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】崔 千 基
(72)【発明者】
【氏名】白 尚 鉉
(72)【発明者】
【氏名】金 スルギ
(72)【発明者】
【氏名】李 將 柱
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-266868(JP,A)
【文献】特開2016-222797(JP,A)
【文献】国際公開第2013/121917(WO,A1)
【文献】Se Jin Kwon,Preparationand Characterization of Transparent Polyimide/Silica Composite Films by a Sol-Gel Reaction,Molecular Crystals and Liquid Crystals,2013年,Vol. 584,pp. 9-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73/00-73/26
C08J5/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二無水物化合物と、
第1ジアミン化合物と、
第2ジアミン化合物と、の重合生成物であって、
前記二無水物化合物は、3、3’、4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、
前記第1ジアミン化合物は、2、2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジンであり、
前記第2ジアミン化合物は、3、5-ジアミノ安息香酸であり、
前記第1ジアミン化合物及び前記第2ジアミン化合物の合計と、前記二無水物化合物のモル比は、1:1であり、
前記第1ジアミン化合物及び前記第2ジアミン化合物のモル比は、0.5:0.5乃至0.9:0.1であるポリアミック酸。
【請求項2】
前記ポリアミック酸は、下記の化学式3で表示される反複単位を含む請求項1に記載のポリアミック酸。
【化3】

前記化学式3で、X及びYは、各々独立的に1以上の整数である。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかのポリアミック酸から由来された反複単位を含むポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記ポリイミドフィルムは、光透過度が95%以上であり、黄色化度が1以上10以下である請求項3に記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記ポリイミドフィルムは、光透過度が95%以上であり、熱膨張係数が10ppm/℃以上20ppm/℃以下であり、ガラス遷移温度が300℃以上420℃以下である請求項3に記載のポリイミドフィルム。
【請求項6】
熱膨張係数が10ppm/℃以上20ppm/℃以下であり、
ガラス遷移温度は300℃以上420℃以下であり、
熱分解温度は400℃以上500℃以下であり、
前記熱分解温度は、ポリイミドフィルムの重量減少比率が1%に到達する時点の温度である請求項4に記載のポリイミドフィルム。
【請求項7】
ポリイミドの反複単位は下記の化学式4で表示される請求項3に記載のポリイミドフィルム。
【化4】
前記化学式4でA及びBは各々独立的に1以上の整数である。
【請求項8】
請求項1または2に記載のポリアミック酸を製造する段階と、
前記ポリアミック酸を基板上に提供してポリアミック酸層を形成する段階と、
前記ポリアミック酸層を熱処理する段階と、
を含むポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記ポリアミック酸層を熱処理する段階は、
第1温度で熱処理する第1熱処理段階と、
前記第1温度より高い第2温度で熱処理する第2熱処理段階と、を含み、
前記第1温度は250℃以上300℃未満であり、前記第2温度は300℃以上550℃以下である請求項8のポリイミドフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミック酸、これを利用して形成されたポリイミドフィルム、及びその製造方法に係る。より詳細には、良好な光学特性と耐熱性とを有するポリイミドフィルムを具現するためのポリアミック酸、このようなポリアミック酸を利用して製造されたポリイミドフィルム、及びポリイミドフィルムの製造方法に係る。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド(Polyimide)は、耐熱性と耐化学性とが優れ、また優れた機械的物性を示す高分子材料として多様な産業分野で利用されている。特に、ポリイミドは液晶表示装置の配向材料、絶縁材料、又は柔軟性基板の材料として開発されて表示装置で多様に適用されている。
【0003】
また、最近フレキシブル表示装置、携帯用表示装置等でガラス基板を代替する用途としてポリイミドフィルムを使用するためにポリイミドフィルムの光学特性及び耐熱性を改善するための開発が進行されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国特許第10-1646283号公報
【文献】米国特許公開第2017/0096530号明細書
【文献】韓国特許公開第10-2016-0002386号公報
【文献】韓国特許公開第10-2016-0105378号公報
【文献】韓国特許公開第10-2015-0095980号公報
【文献】韓国特許公開第10-2007-0102053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高い透明度の光学特性を維持し、寸法安定性と耐熱性とが高いポリイミドを得るための、ポリアミック酸、及びこのようなポリアミック酸を利用して形成されたポリイミドフィルム、及びポリイミドフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態は、(i)二無水物(ジアンヒドリド dianhydride、特にはテトラカルボン酸二無水物)化合物と、(ii)下記の化学式1で表示される第1ジアミン化合物と、(iii)前記第1ジアミン化合物とは異なる第2ジアミン化合物との、重合生成物であるポリアミック酸を提供する。
【0007】
【化1】
【0008】
前記化学式1において、R1及びR2は、各々独立に、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、又は、置換又は非置換された炭素数1以上20以下のアルキル基であり、n1及びn2は、各々独立に0以上4以下の整数である。
【0009】
前記第2ジアミン化合物は下記の化学式2で表示される。
【0010】
【化2】
【0011】
前記化学式2において、Arは置換又は非置換されたフェニル基であり、mは1以上4以下の整数である。
【0012】
前記第2ジアミン化合物は下記の化学式2-1で表示される。
【0013】
【化2-1】
【0014】
前記化学式1で、前記n1及びn2は、各々独立に1以上の整数であり、前記R1及びR2は、各々独立に、1つ以上のフッ素(弗素)原子で置換された炭素数1以上20以下のアルキル基である。
【0015】
前記化学式1は下記の化学式1ー1で表示される。
【0016】
【化1-1】
【0017】
前記化学式1-1において、R1、R2、n1、及びn2は請求項1で定義したことと同一である。
【0018】
前記化学式1は下記の化学式1-2で表示される。
【0019】
【化1-2】
【0020】
前記第1ジアミン化合物及び前記第2ジアミン化合物の合計と、前記二無水物化合物とのモル比は1:0.9乃至1:1.1である。
【0021】
前記第1ジアミン化合物と前記第2ジアミン化合物とのモル比は、0.01:0.99乃至0.99:0.01である。
【0022】
前記二無水物化合物は、4、4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3、3’、4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、シクロブタン-1、2、3、4-テトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物からなる群から選択された少なくともいずれか1つを含むことができる。
【0023】
前記二無水物化合物は3、3’、4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、前記第1ジアミン化合物は2、2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジンであり、前記第2ジアミン化合物は3、5-ジアミノ安息香酸である。
【0024】
一実施形態のポリアミック酸は、下記の化学式3で表示される反複単位を含むことができる。
【0025】
【化3】
【0026】
前記化学式3で、X及びYは、各々独立に1以上の整数である。
【0027】
他の実施形態は、上述した一実施形態のポリアミック酸から由来された反複単位を含むポリイミドフィルムを提供する。
【0028】
前記ポリイミドフィルムの熱膨張係数は10ppm/℃以上20ppm/℃以下である。
【0029】
前記ポリイミドフィルムのガラス遷移温度は300℃以上420℃以下である。
【0030】
前記ポリイミドフィルムの熱分解温度は400℃以上500℃以下であり、前記熱分解温度は、前記ポリイミドフィルムの重量減少比率が1%に到達する時点の温度である。
【0031】
前記ポリイミドフィルムの光透過度は95%以上である。
【0032】
前記ポリイミドフィルムの黄色化度は1以上10以下である。
【0033】
前記ポリイミドフィルムの光透過度は95%以上であり、熱膨張係数は10ppm/℃以上20ppm/℃以下であり、ガラス遷移温度は300℃以上420℃以下である。
【0034】
一実施形態のポリイミドフィルムは、下記の化学式4で表示される前記反複単位を含むことができる。
【0035】
【化4】
【0036】
前記化学式4でA及びBは、各々独立に1以上の整数である。
【0037】
他の実施形態は、二無水物化合物及び2種以上のジアミン化合物を重合反応させて上述した一実施形態のポリアミック酸を製造する段階と、前記ポリアミック酸を基板上に提供してポリアミック酸層を形成する段階と、前記ポリアミック酸層を熱処理する段階と、を含むポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
【0038】
前記ポリアミック酸を製造する段階は-10℃以上80℃以下で遂行されうる。
【0039】
前記ポリアミック酸層を熱処理する段階は250℃以上550℃以下で遂行される高温熱処理段階を含むことができる。
【0040】
前記ポリアミック酸層を熱処理する段階は、前記高温熱処理段階の後に、冷却段階をさらに含むことができる。
【0041】
前記ポリアミック酸層を熱処理する段階は、第1温度で熱処理する第1熱処理段階と、前記第1温度より高い第2温度で熱処理する第2熱処理段階と、を含むことができる。
【0042】
前記第1温度は250℃以上300℃未満であり、前記第2温度は300℃以上550℃以下である。
【0043】
前記ポリアミック酸層を熱処理する段階は真空状態で遂行されうる。
【発明の効果】
【0044】
一実施形態のポリアミック酸は、異なる2種のジアミン化合物を含んで良好な光学特性及び高い耐熱性を有するポリイミドフィルム材料を提供することができる。
【0045】
一実施形態のポリイミドフィルムは、異なる2種のジアミン化合物を含んで形成されたポリアミック酸を利用して、良好な光学特性及び耐熱性を有することができる。
【0046】
一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法は、異なる2種のジアミン化合物を含んで形成されたポリアミック酸を利用し、高温熱処理工程を利用することで、良好な光学特性及び耐熱性を有するポリイミドフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法を示したフローチャートである。
図2】一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるので、特定な実施形態を図面に例示し、本文で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定な開示形態に対して限定しようとすることではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むこととして理解されるべきである。
【0049】
各図面を説明しながら、類似な参照符号を類似な構成要素に対して使用した。添付された図面において、構造物の寸法は本発明の明確性のために実際より拡大して図示したものである。第1、第2等の用語は多様な構成要素を説明するために使用されるが、前記構成要素は前記用語によって限定されてはならない。前記用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しなく、第1構成要素は第2構成要素と称され、類似に第2構成要素も第1構成要素と称されることができる。単数の表現は文脈の上に明確に異なりに表現しない限り、複数の表現を含む。
【0050】
本出願で、“含む”等の用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、又はこれらを組合したことが存在することを表現しようするものであり、1つ又はその以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品、又はこれらを組合したものの存在又は付加可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。また、層、膜、領域、板等の部分が他の部分の“上に”あるとする場合、これは、他の部分の“直ちに上に”ある場合のみでなく、その中間にその他の部分がある場合も含む。
【0051】
以下では一実施形態のポリアミック酸に対して説明する。
【0052】
一実施形態のポリアミック酸は二無水物化合物及び2種以上のジアミン化合物を含んで形成される。一実施形態のポリアミック酸は、二無水物化合物、下記の化学式1で表示される第1ジアミン化合物、及び、第1ジアミン化合物とは別の第2ジアミン化合物を重合させる反応によって生成される重合生成物である。
【0053】
第1ジアミン化合物は下記の化学式1で表示される。
【0054】
【化1】
【0055】
前記化学式1で、R1及びR2は、各々独立に水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換又は非置換された炭素数1以上20以下のアルキル基である。また、n1及びn2は各々独立に0以上4以下の整数である。
【0056】
化学式1でR1及びR2は、互いに同一であるか、又は互いに異なりうる。また、n1及びn2は互いに同一であるか、又は互いに異なりうる。
【0057】
例えば、化学式1で表示される第1ジアミン化合物でn1及びn2は、各々独立に1以上の整数である。n1及びn2は、1以上の同一の整数である。また、n1及びn2は、1以上の互いに異なる整数である。具体的に、n1及びn2は全て1である。n1及びn2の中でいずれか1つが0であり、残る1つは1以上の整数である。
【0058】
一方、n1及びn2が各々独立に2以上の整数である場合、複数のR1は互いに同一であるか、又は互いに異なり、複数のR2は互いに同一であるか、又は互いに異なる。
【0059】
一実施形態において、n1及びn2が各々独立に1以上の整数であるとき、化学式1で表示される第1ジアミン化合物のR1及びR2は、各々独立に1つ以上の弗素原子で置換された炭素数1以上20以下のアルキル基でありうる。また、n1が2以上の整数である場合、少なくとも1つのR1は、1つ以上のフッ素(弗素)原子で置換された炭素数1以上20以下のアルキル基でありうるのであり、2つ以上の複数のR1が、全て1つ以上のフッ素原子で置換された炭素数1以上20以下のアルキル基であることもありうる。また、n2が2以上の整数である場合、少なくとも1つのR2は、1つ以上のフッ素原子で置換された炭素数1以上20以下のアルキル基でありうるのであり、2つ以上の複数のR2は全て1つ以上のフッ素原子で置換された炭素数1以上20以下のアルキル基であることもありうる。
【0060】
1及びR2は、各々独立に水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、又は非置換された炭素数1以上20以下のアルキル基、又は置換された炭素数1以上20以下のアルキル基である。例えば、R1及びR2は各々独立的に少なくとも1つの弗素原子で置換された炭素数1以上20以下のアルキル基である。具体的に、R1及びR2は*-CF3、*-CF2CF3、*-CH2CF3、*-CH2CF2CF3、又は*-CF2CF2CF3である。しかし、実施形態が提示された具体例に限定されることではない。
【0061】
例えば、一実施形態のポリアミック酸を形成する化学式1で表示される第1ジアミン化合物はn1及びn2が全て1でありうるのであり、R1及びR2は全てトリフルオロメチル基でありうる。一実施形態のポリアミック酸は、化学式1で表示される第1ジアミン化合物でR1及びR2の中で少なくとも1つを、少なくとも1つのフッ素原子で置換した炭素数1以上20以下のアルキル基とすることで、耐熱性を改善することができる。
【0062】
一方、化学式1に対する説明と以後説明する本明細書の化学式に対する説明で、“置換又は非置換された”は重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトリル基、ニトロ基、アミノ基、シリル基、ホウ素基、ホスフィンオキシド基、アルキル基、アルケニル基、フルオレニル基、アリール(aryl)基及びヘテロ環基からなされた群から選択される1つ以上の置換基で置換又は非置換されたことを意味する。また、例示された置換基の各々は置換又は非置換されたものであってもよい。例えば、ビフェニル基はアリール(aryl)基として解釈されてもよく、フェニル基で置換されたフェニル基として解釈されてもよい。
【0063】
本明細書で、ハロゲン原子の例としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ化物原子がある。
【0064】
また、アルキル基は、直鎖、分岐鎖、又は環形でありうる。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、2-エチルブチル基、3、3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、1-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ブチルヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-t-ブチルシクロヘキシル基、n-ペンチル基、1-メチルヘプチル基、2、2-ジメチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、2-ブチルヘプチル基、n-オクチル基、t-オクチル基、2-エチルオクチル基、2-ブチルオクチル基、2-ヘキシルオクチル基、3、7-ジメチルオクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、アダマンチル基、2-エチルデシル基、2-ブチルデシル基、2-ヘキシルデシル基、2-オクチルデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、2-エチルドデシル基、2-ブチルドデシル基、2-ヘキシルドデシル基、2-オクチルドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、2-エチルヘキサデシル基、2-ブチルヘキサデシル基、2-ヘキシルヘキサデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル、n-ノナデシル基、n-イコシル基、2-エチルイコシル基、2-ブチルイコシル基、2-ヘキシルイコシル基、2-オクチルイコシル基、n-ヘンイコシル基、n-ドコシル基、n-トリコシル基、n-テトラコシル基、n-ペンタコシル基、n-ヘキサコシル基、n-ヘプタコシル基、n-オクタコシル基、n-ノナコシル基、及びn-トリアコンチル基等を挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書で、-*は連結される位置を意味する。
【0066】
前記化学式1で表示された第1ジアミン化合物は下記の化学式1-1で表示されうる。
【0067】
【化1-1】
【0068】
前記化学式1-1で、R1、R2、n1、及びn2は前記化学式1で説明した内容と同一な内容が適用される。
【0069】
前記化学式1-1で第1ジアミン化合物は2つのアミン基(*-NH2)がビフェニル(biphenyl)のパラ(para)位置に各々結合されたものである。即ち、一実施形態の第1ジアミン化合物はベンジジン(benzidine)化合物である。
【0070】
また、化学式1-1でn1及びn2は各々独立的に1以上の整数であり、R1及びR2は、各々独立に1つ以上のフッ素原子で置換された炭素数1以上20以下のアルキル基でありうる。例えば、化学式1-1で、n1及びn2は全て1であり、R1及びR2は全てトリフルオロメチル基でありうる。
【0071】
具体的に、化学式1で表示される第1ジアミン化合物は下記の化学式1-2で表示されうる。
【0072】
【化1-2】
【0073】
また、より具体的に、第1ジアミン化合物は下記の化学式1-3で表示されるジアミン化合物でありうる。
【0074】
【化1-3】
【0075】
例えば、一実施形態で第1ジアミン化合物は、2、2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(2、2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine、TFMB)である。
【0076】
一実施形態のポリアミック酸は上述した前記化学式1で表示される第1ジアミン化合物以外に、第1ジアミン化合物とは異なるジアミン化合物を少なくとも1つさらに含むようにして2種以上のジアミン化合物と1種以上の二無水物化合物を重合反応させて形成された重合体である。即ち、一実施形態のポリアミック酸は、第1ジアミン化合物、及び第1ジアミン化合物と異なる第2ジアミン化合物をさらに含んだ2種のジアミン化合物と、1種以上の二無水物化合物とを重合反応させて製造される。
【0077】
一実施形態のポリアミック酸を形成する2種以上のジアミン化合物で、第2ジアミン化合物は下記の化学式2で表示されうる。
【0078】
【化2】
【0079】
前記化学式2で、Arは置換又は非置換されたフェニル基であり、mは1以上4以下の整数でありうる。化学式2で表示される第2ジアミン化合物で、Arは、フェニル基、又はフェニル基で置換されたフェニル基である。例えば、Arはフェニル基又はビフェニル基である。
【0080】
一実施形態で第2ジアミン化合物は少なくとも1つのカルボキシル基(carboxyl group)を有する。
【0081】
一方、一実施形態のポリアミック酸で化学式2で表示される第2ジアミン化合物は熱処理を通じた熱イミド化の過程で分子間の相互作用を妨害してチェーン間の距離を広げて電荷移動錯体(charge transfer complex)の形成を抑制する。また、第2ジアミン化合物は重合反応において架橋(cross linker)の役割をする。例えば、第2ジアミン化合物は重合反応で形成されたポリアミック酸単位体の間を互いに連結する架橋剤の役割をして重合生成物である一実施形態のポリアミック酸のネットワーク形成を増加させることによって最終的に製造されるポリイミドフィルムの機械的物性を改善し、耐熱性を増加させることができる。
【0082】
前記化学式2で表示される第2ジアミン化合物は下記の化学式2-1で表示される。
【0083】
【化2-1】
【0084】
一方、化学式2-1で表示される第2ジアミン化合物で2つのアミン基(*-NH2)はオルソ(ortho)、又はメタ(meta)位置に各々結合される。例えば、第2ジアミン化合物は3、5-ジアミノ安息香酸、3、4-ジアミノ安息香酸、2、3-ジアミノ安息香酸、又は2、6-ジアミノ安息香酸であるが、実施形態がこれに限定されることではない。
【0085】
また、より具体的に第2ジアミン化合物は下記の化学式2-2で表示される。
【0086】
【化2-2】
【0087】
一実施形態のポリアミック酸を形成する二無水物化合物は4、4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4、4’-(Hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、6FDA)、3、3’、4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3、3’、4、4’-Biphenyltetracarboxylic dianhydride、BPDA)、シクロブタン-1、2、3、4-テトラカルボン酸二無水物(Cyclobutane-1、2、3、4-tetracarboxylic dianhydride、CBDA)、及びピロメリット二無水物(Pyromellitic dianhydride、PMDA)からなされた群から選択された少なくともいずれか1つを含む。例えば、一実施形態で二無水物化合物は6FDA、BPDA、CBDA、又はPMDAの中から選択されるいずれか1つであるか、又はこれらから選択される2種以上を含む。
【0088】
一実施形態のポリアミック酸は6FDA、BPDA、CBDA、又はPMDAの中でいずれか1つの二無水物化合物、化学式1で表示される第1ジアミン化合物、及び化学式2で表示される第2ジアミン化合物の重合反応によって形成された重合生成物である。例えば、一実施形態のポリアミック酸は3、3’、4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2、2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)、及び3、5-ジアミノ安息香酸(DABA)の重合生成物である。
【0089】
一実施形態のポリアミック酸は二無水物化合物と、第1ジアミン化合物及び第2ジアミン化合物の合計のモル比が1:0.9乃至1:1.1になるように反応させて形成されたものである。即ち、第1ジアミン化合物及び第2ジアミン化合物を含む2種以上のジアミン化合物は二無水物化合物1モルを基準に0.9乃至1.1の比率に含まれる。例えば、二無水物化合物と、第1ジアミン化合物及び第2ジアミン化合物を含む2種以上のジアミン化合物を1:1のモル比で反応させて一実施形態のポリアミック酸を形成する。
【0090】
また、一実施形態で第1ジアミン化合物と第2ジアミン化合物は0.01:0.99乃至0.99:0.01のモル比に含まれうる。例えば、第1ジアミン化合物と第2ジアミン化合物は0.5:0.5乃至0.9:0.1のモル比で反応されうる。具体的に、第1ジアミン化合物と第2ジアミン化合物とは、0.6:0.4乃至0.8:0.2のモル比で反応されうる。また、第1ジアミン化合物と第2ジアミン化合物との合計と、二無水物化合物とは、1:0.9乃至1:1.1のモル比となるようにして反応がなされる。
【0091】
また、具体例で、第1ジアミン化合物と第2ジアミン化合物とは0.75:0.25のモル比で反応される。この具体例で、第1ジアミン化合物及び第2ジアミン化合物の合計と、二無水物化合物とは1:0.9乃至1:1.1のモル比を有する。
【0092】
一方、一実施形態のポリアミック酸は、下記の化学式3で表示されるポリアミック酸単位体を含む。
【0093】
【化3】
【0094】
前記化学式3でX及びYは、各々独立に1以上の整数である。また、前記化学式3で表示されるポリアミック酸単位体を含む一実施形態のポリアミック酸の数平均分子量(Mn)は10、000以上1、000、000以下である。
【0095】
一実施形態のポリアミック酸は二無水物化合物及び2種以上の異なるジアミン化合物を含んで反応させた重合体であって、化学式1で表示される第1ジアミン化合物と第1ジアミン化合物と異なる第2ジアミン化合物を同時に含むことによって耐熱性が優れ、高い透過度と低い黄色化度(yellow index)の良好な光学特性を有するポリイミドを製造するポリイミド前駆体を具現することができる。
【0096】
即ち、一実施形態のポリアミック酸は二無水物化合物、化学式1で表示される第1ジアミン化合物、及び化学式2で表示される第2ジアミン化合物で重合されたものであって、このような一実施形態のポリアミック酸から耐熱性と光特性とを同時に満足するポリイミドフィルムを製造することができる。
【0097】
一実施形態のポリイミドフィルムは上述した一実施形態のポリアミック酸から由来された反複単位を含むことができる。一実施形態のポリイミドフィルムは上述した一実施形態のポリアミック酸をイミド化して得られた反複単位を含んで形成されることができる。
【0098】
一実施形態のポリイミドフィルムは、二無水物化合物、化学式1で表示される第1ジアミン化合物を含む2種以上のジアミン化合物を重合反応させて得られたポリアミック酸から由来されるものであってもよい。即ち、一実施形態のポリイミドフィルムは、二無水物化合物、上述した化学式1で表示される第1ジアミン化合物、及び、上述した化学式2で表示された第2ジアミン化合物の重合生成物であるポリアミック酸から由来された反複単位を含んで形成されるものであってもよい。
【0099】
以下、図面を参照して上述した本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムを製造する一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法に対して説明する。
【0100】
図1及び図2は各々一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法を示したフローチャートである。図1を参照すれば、一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法は二無水物化合物及び2種以上のジアミン化合物を重合反応させてポリアミック酸を製造する段階(S100)、ポリアミック酸を基板上に提供してポリアミック酸層を形成する段階(S200)、及びポリアミック酸層を熱処理する段階(S300)を含む。
【0101】
二無水物化合物及び2種以上のジアミン化合物を重合反応させてポリアミック酸を製造する段階(S100)で、上述した一実施形態のポリアミック酸が製造される。製造されたポリアミック酸は、二無水物化合物及び2種以上のジアミン化合物を重合反応させて得られたポリアミック酸共重合体である。ポリアミック酸を製造する段階(S100)で、二無水物化合物、上述した化学式1で表示される第1ジアミン化合物、及び第1ジアミン化合物と異なる第2ジアミン化合物が有機溶媒に提供され、有機溶媒内で重合反応を遂行してポリアミック酸が形成される。
【0102】
ポリアミック酸を製造する段階(S100)で、有機溶媒は、N、N-ジメチルアセトアミド(N、N-Dimethyl acetamide)(DMAc)、ジメチルホルムアミド(Dimethylformamide)(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone)(NMP)、m-クレゾール(m-cresol)、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran)(THF)、又はクロロホルム(Chloroform)であるか、又はこれらの混合溶媒でありうる。例えば、有機溶媒は、N、N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、又はこの2つの溶媒の混合溶媒が使用されうる。しかし、ポリアミック酸を製造する段階(S100)で使用された有機溶媒は、提示された溶媒の種類に限定されることはなく、二無水物化合物及びジアミン化合物を溶解できる有機溶媒であれば、制限無しに使用されうる。
【0103】
ポリアミック酸を製造する段階(S100)で、有機溶媒に二無水物化合物と2種以上のジアミン化合物とは、1:0.9乃至1:1.1のモル比で混合されて重合反応されうる。また、2種以上のジアミン化合物は、上述した化学式1で表示される第1ジアミン化合物と、上述した化学式2で表示される第2ジアミン化合物とを含む。ここで、第1ジアミン化合物と第2ジアミン化合物とは、0.01:0.99乃至0.99:0.01のモル比で混合されて重合反応される。具体的に第1ジアミン化合物と第2ジアミン化合物とは、0.5:0.5乃至0.9:0.1のモル比で混合されて重合反応される。例えば、二無水物化合物と2種以上のジアミン化合物とは1:1のモル比で混合され、2種以上のジアミン化合物における第1ジアミン化合物と第2ジアミン化合物とは0.5:0.5乃至0.9:0.1のモル比で混合されるようにして、イミド化反応によってポリアミック酸が製造される。
【0104】
ポリアミック酸を製造する段階(S100)は、2種以上のジアミン化合物を有機溶媒に先ず溶解させてジアミン化合物溶液を製造する段階を含む。ここで、ジアミン化合物溶液とは、二無水物化合物が混合されていない状態を示すものである。また、ポリアミック酸を製造する段階(S100)は、ジアミン化合物溶液と別に、有機溶媒に二無水物化合物を溶解させて、二無水物化合物溶液を製造する段階を含むことができる。
【0105】
即ち、一実施形態のポリイミドフィルムを製造する段階において、2種以上のジアミン化合物は、まず、前記提示されたモル比で有機溶媒内で混合されてジアミン化合物溶液として製造され、またこれと別に二無水物化合物は、有機溶媒に溶解されて二無水物化合物溶液として製造されるうる。以後、ジアミン化合物溶液と二無水物化合物溶液とを、ジアミン化合物と二無水物化合物とが1:0.9乃至1:1.1のモル比になように混合して、重合反応が生じるようにすることによってポリアミック酸を製造することができる。
【0106】
また、これと異なり、二無水物化合物、第1ジアミン化合物、及び第2ジアミン化合物は、前記提示されたモル比で1つの段階で混合されて重合反応を発生させてポリアミック酸を製造することができる。
【0107】
ポリアミック酸を製造する段階(S100)は非活性気体雰囲気下で遂行される。例えば、ポリアミック酸を製造する段階(S100)は窒素気体雰囲気下で遂行される。
【0108】
ポリアミック酸を製造する段階(S100)は-10℃乃至80℃の温度で遂行される。一実施形態でポリアミック酸を製造する段階(S100)は、-10℃乃至80℃の温度で、10分乃至24時間の間に遂行される。
【0109】
重合反応によって製造された重合生成物であるポリアミック酸は、有機溶媒内に5wt%乃至80wt%で含まれる。例えば、製造されたポリアミック酸は、固形分で有機溶媒内に10wt%乃至50wt%で含まれる。
【0110】
例えば、重合反応によって製造されたポリアミック酸は、下記の化学式3で表示される反複単位を有する。
【0111】
【化3】
【0112】
前記化学式3でX及びYは、各々独立に1以上の整数である。また、前記化学式3で表示されるポリアミック酸単位体を含む、一実施形態のポリアミック酸の数平均分子量(Mn)は、10、000以上1、000、000以下である。
【0113】
図1に図示された、一実施形態のポリイミドフィルムを製造する方法は、ポリアミック酸を製造する段階(S100)の後に製造されたポリアミック酸を基板上に提供してポリアミック酸層を形成する段階(S200)を含む。
【0114】
製造されたポリアミック酸はフィルム形成のために支持体である基板上に提供される。一方、製造されたポリアミック酸を基板上に提供する塗布方法は、いずれか1つに限定されなく、製造されたポリアミック酸でフィルム層を形成するために基板にポリアミック酸を均一に提供することができる方法であれば、制限無しで使用されることができる。例えば、製造されたポリアミック酸はコーティング方法によって基板上に提供されることができる。
【0115】
ポリアミック酸が提供される基板はポリイミドフィルムを形成するための支持体の役割をすることができることであれば、制限無しに使用されうる。例えば、基板はガラス基板、金属材料の基板、又は高分子材料の基板であり、基板の表面はポリアミック酸が均一にコーティングされるようにするための平滑度を有する。
【0116】
基板上に提供されたポリアミック酸は有機溶媒と共に提供される。したがって、基板上にポリアミック酸を提供した後、有機溶媒を乾燥する段階が遂行される。基板上に提供されたポリアミック酸を乾燥する段階は、30℃乃至140℃の温度で10分乃至180分間遂行される。例えば、ポリアミック酸コーティングの後に40℃乃至80℃の温度で30分乃至120分間、乾燥段階が遂行される。
【0117】
乾燥の後、形成されたポリアミック酸層は5μm以上150μmの厚さを有するコーティング層である。例えば、乾燥の後、形成されたポリアミック酸層は10μm以上100μmの厚さを有する。
【0118】
ポリアミック酸を基板上に提供してポリアミック酸層を形成する段階(S200)の次に、ポリアミック酸層を熱処理する段階(S300)が遂行される。ポリアミック酸層を熱処理する段階(S300)は提供されたポリアミック酸に、熱を提供して、熱的イミド化法によってポリアミック酸を反応させてポリイミド層を形成する段階である。
【0119】
ポリアミック酸層を熱処理する段階(S300)は、250℃以上550℃以下で遂行される高温熱処理段階を含む。例えば、ポリアミック酸層を熱処理する段階(S300)は300℃以上500℃以下で遂行される。
【0120】
高温熱処理する段階が250℃以上で遂行される場合、250℃未満でポリアミック酸の熱処理が遂行される場合に比べて、ポリアミック酸のイミド化程度が向上され、また形成されたポリイミドの熱履歴が改善されうる。一方、ポリアミック酸層を熱処理する段階(S300)が550℃より高い温度で遂行される場合、ポリアミック酸層の熱分解現象が発生すうるのであり、ポリアミック酸がイミド化して形成されたフィルムでも黄色化度が高くなる問題が発生しうる。
【0121】
また、ポリアミック酸層を熱処理する段階(S300)は、250℃以上550℃以下の高温条件で5分以上180分以下の時間の間遂行される。例えば、ポリアミック酸層を熱処理する段階(S300)は5分以上120分以下、具体的に30分以上120分以下の時間の間遂行される。熱処理時間が5分より短い場合、ポリアミック酸層のイミド化が十分になされない可能性があり、熱処理時間が180分より長い場合、ポリアミック酸層及びポリアミック酸層をイミド化して形成されたフィルムに熱分解がなされて、最終的に製造されたポリイミドフィルムの機械的物性が低下し、黄色化度が高くなる可能性ある。
【0122】
例えば、ポリアミック酸層を熱処理する段階(S300)は300℃の温度で30分以上120分以下で遂行される。しかし、実施形態がこれに限定されることはなく、ポリアミック酸層を熱処理する段階(S300)での熱処理温度が300℃より増加されれば、熱処理時間は30分より短くなる。
【0123】
一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法では、250℃以上550℃以下の高温条件でポリアミック酸層を熱処理する段階(S300)を遂行することによって、ポリアミック酸のイミド化程度を向上させ、これにしたがって最終的に製造されたポリイミドフィルムのガラス遷移温度(Tg)と熱分解温度(Td)とを高めて耐熱性を改善し、熱膨張係数(CTE)を下げて寸法安定性を向上させることができる。また、250℃以上550℃以下でポリアミック酸層を熱処理する段階(S300)を遂行することによって製造された、ポリイミドフィルムの黄色化度を下げて、光学特性を改善することができる。
【0124】
一方、ポリアミック酸層を熱処理する段階(S300)は真空状態で遂行される。即ち、ポリアミック酸層を熱処理する段階(S300)は、250℃以上550℃以下の温度条件の真空状態で遂行される。この時、真空状態は類似真空状態である。
【0125】
ポリアミック酸層を熱処理する段階(S300)は一定温度範囲内の等温条件で遂行される。また、これと異なりポリアミック酸層を熱処理する段階(S300)は250℃以上550℃以下の温度範囲内の複数の温度条件で各々熱処理される複数の熱処理段階で遂行される。
【0126】
また、図1に図示された一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法では、熱処理されたポリアミック酸層を冷却する段階(S400、図2)が図示されないが、一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法では、ポリアミック酸層を熱処理する段階(S300)の後に熱処理されたポリアミック酸層を冷却する段階(S400、図2)をさらに含む。
【0127】
一方、基板上に形成された一実施形態のポリイミドフィルムは支持体である基板を除去した後、表示装置の支持基板、又は情報電子素材の透明基板等として使用されうる。また、これと異なり、ポリイミドフィルムは、提供された基板と一体に表示装置の支持基板等として使用されてもよい。
【0128】
図2は一実施形態のポリイミドフィルムを製造する方法を概略的に示したフローチャートであって、図1に図示された一実施形態のポリイミドフィルムを製造する方法と比較してポリアミック酸層を熱処理する段階において差異がある。
【0129】
図2に図示された一実施形態のポリイミドフィルムを製造する方法では、ポリアミック酸を基板上に提供してポリアミック酸層を形成する段階(S200)の後に、ポリアミック酸層を第1温度に熱処理する段階(S310)、及び、ポリアミック酸層を第2温度に熱処理する段階(S320)をこの順で含む。
【0130】
図2に図示された一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法で、二無水物化合物及び2種以上のジアミン化合物を重合反応させてポリアミック酸を製造する段階(S100)、及びポリアミック酸を基板上に提供してポリアミック酸層を形成する段階(S200)は、上述した図1に図示された一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法で説明した内容と同一の内容が適用される。
【0131】
図2に図示された一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法において、ポリアミック酸層を第1温度にて熱処理する段階(S310)は、形成されたポリアミック酸層を第1温度で熱処理する第1熱処理段階であり、ポリアミック酸層を第2温度にて熱処理する段階(S320)は、第1熱処理段階の後に、ポリアミック酸層を第1温度より高い第2温度で熱処理する第2熱処理段階である。第1温度は、250℃以上300℃未満、より好ましくは260℃以上280℃未満でありうるのであり、第2温度は、300℃以上550℃以下、より好ましくは330℃以上500℃以下、さらに好ましくは350℃以上450℃以下、例えば370℃以上430℃以下でありうる。
【0132】
図2に図示された一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法を参照すれば、ポリアミック酸層を基板上に形成した後に、高温熱処理段階は2段階以上に進行される。即ち、ポリアミック酸層を熱処理する段階は熱処理温度条件が異なる少なくとも2段階以上の熱処理段階を含む。一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法はポリアミック酸層を熱処理する段階を2以上の段階に遂行することによってポリアミック酸のイミド化程度を向上させてポリイミドフィルムの機械的物性を改善させることができ、耐熱性及び光学特性が優れたポリイミドフィルムを得ることができる。
【0133】
図2で、熱処理されたポリアミック酸層(イミド化されたフィルム)を冷却する段階(S400)は、高温熱処理の後に、常温(Room temperature;例えば15~25℃)にまで、イミド化されたフィルムを冷却させる段階でありうる。また、この段階(S400)は、高温熱処理の後に常温より低い低温状態(例えば15℃未満または10℃未満)にイミド化されたフィルムを冷却させる段階でありうる。
【0134】
一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法ではポリアミック酸層を冷却する段階(S400)での冷却速度調節にしたがって製造されたポリイミドフィルムを形成するポリイミド高分子チェーンの配列を制御することができるので、ポリイミドフィルムの耐熱特性及び光特性を改善することができる。例えば、熱処理されたポリアミック酸層が徐々に冷却されるようにチャンバー内で熱処理されたポリアミック酸層を冷却する段階(S400)を遂行することによって高分子チェーンのパッキング(packing)程度を高めて機械的物性及び耐熱特性が改善されたポリイミドフィルムを製造することができる。
【0135】
図1乃至図2の一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法に使用されたポリアミック酸は上述した一実施形態のポリアミック酸である。二無水物化合物及び2種以上のジアミン化合物を重合反応させて製造されたポリアミック酸で、二無水物化合物は4、4’-(4、4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4、4’-(Hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、6FDA)、3、3’、4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3、3’、4、4’-Biphenyltetracarboxylic dianhydride、BPDA)、シクロブタン-1、2、3、4-テトラカルボン酸二無水物(Cyclobutane-1、2、3、4-tetracarboxylic dianhydride、CBDA)、及びピロメリット二無水物(Pyromellitic dianhydride、PMDA)からなされた群から選択された少なくともいずれか1つを含む。
【0136】
また、2種以上のジアミン化合物は下記の化学式1で表示される第1ジアミン化合物、及び下記の化学式2で表示される第2ジアミン化合物を含む。
【0137】
【化1】
【0138】
前記化学式1で、R1及びR2は各々独立に水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換又は非置換された炭素数1以上20以下のアルキル基である。また、n1及びn2は各々独立的に0以上4以下の整数である。
【0139】
【化2】
【0140】
前記化学式2で、Arは置換又は非置換されたフェニル基であり、mは1以上4以下の整数である。
【0141】
一方、二無水物化合物、第1ジアミン化合物、第2ジアミン化合物、及びこれらの重合反応によって生成された一実施形態のポリアミック酸に対しては上述した一実施形態のポリアミック酸に対する説明でと同一な内容が適用されることができる。上述した一実施形態のポリアミック酸は図1乃至図2を参照して説明した一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法で二無水物化合物及び2種以上のジアミン化合物を重合反応させて製造されたポリアミック酸に該当する。
【0142】
上述した一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法で製造された一実施形態のポリイミドフィルムは良好な光特性と優れた耐熱性を同時に有することができる。
【0143】
一実施形態のポリイミドフィルムは上述した一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法によって製造される。また、一実施形態のポリイミドフィルムは上述した一実施形態のポリアミック酸から由来された反複単位を含む。
【0144】
例えば、上述したポリアミック酸から由来されたポリイミドの反複単位は下記の化学式4で表示される。
【0145】
【化4】
【0146】
前記化学式4でA及びBは各々独立的に1以上の整数である。また、前記化学式4で表示されるポリイミドの反複単位を含む一実施形態のポリイミドの数平均分子量(Mn)は10、000以上1、000、000以下である。
【0147】
一実施形態のポリイミドフィルムは熱膨張係数が10ppm/℃以上20ppm/℃以下である。ポリイミドフィルムは10ppm/℃以上20ppm/℃以下の熱膨張係数を有するので、高温条件でも寸法安定性を有することができる。
【0148】
また、一実施形態のポリイミドフィルムのガラス遷移温度は300℃以上420℃以下である。一方、一実施形態のポリイミドフィルムの熱分解温度は400℃以上500℃以下である。ここで、熱分解温度は、ポリイミドフィルムの重量減少比率が1%に到達する時点の温度を示したものである。即ち、加熱される以前の最初ポリイミドフィルムの重量を基準に、加熱以後におけるポリイミドフィルムの重量が1%だけ減少した瞬間の温度が、ポリイミドフィルムの熱分解温度である。
【0149】
一実施形態のポリイミドフィルムは、300℃以上420℃以下の高いガラス遷移温度と、400℃以上500℃以下の高い熱分解温度特性とを有するので、高温条件で高い安定性と信頼性とを有することができる。
【0150】
一方、一実施形態のポリイミドフィルムの光透過度は95%以上であり、黄色化度は1以上10以下である。ここで、ポリイミドフィルムの光透過度は、可視光線領域での光透過度を示す。例えば、ポリイミドフィルムの光透過度は、550nmでの光透過度を示す。また、本明細書で光透過度は、ガラス基板の透過度を100%とするときの相対的な透過度を示す。即ち、ポリイミドフィルムの光透過度は、ガラス基板の透過度を基準とした相対的な透過度である。
【0151】
一実施形態のポリイミドフィルムは、95%以上の高い光透過度と1以上10以下の低い黄色化度特徴とを有するので、透明性が要求される光学フィルム、又は表示装置の基板等の用途として使用されることができる。
【0152】
一実施形態のポリイミドフィルムは95%以上の光透過度を有し、同時に熱膨張係数が10ppm/℃以上20ppm/℃以下である。また、一実施形態のポリイミドフィルムは95%以上の光透過度を有し、同時に熱膨張係数が10ppm/℃以上20ppm/℃以下であり、ガラス遷移温度は300℃以上420℃以下である。
【0153】
一方、一実施形態のポリイミドフィルムは95%以上の光透過度と1以上10以下の黄色化度とを有し、同時にガラス遷移温度は300℃以上420℃以下である。
【0154】
一実施形態のポリイミドフィルムは二無水物化合物及び2種のジアミン化合物の重合反応物である一実施形態のポリアミック酸から形成されて高い耐熱性と優れた光学特性を同時に有することができる。
【0155】
一実施形態のポリイミドフィルムは高い光透過度と低い黄色化度とを有し、また高いガラス遷移温度及び高い熱分解温度を有することによって優れた光学特性と耐熱性及び機械的強度を要求する表示装置の基板等の用途として使用されることができる。また、一実施形態のポリイミドフィルムは寸法安定性と良好な機械的物性とを有する高分子フィルムでフレキシブル表示装置等の支持基板等の用途として使用されることができる。
【0156】
即ち、一実施形態のポリイミドフィルムは二無水物化合物及び2種のジアミン化合物の組合から重合されて形成されたポリアミック酸を利用して製造されたものであって、高い耐熱性及び高い光特性でよって高温工程を必要とする表示装置の透明基板の材料として使用されることができる。
【0157】
以下では、実施例及び比較例を参照しながら、本発明の一実施形態に係るポリアミック酸、及び一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法を利用して製造された一実施形態のポリイミドフィルムに対して具体的に説明する。また、以下に示す実施例は本発明の理解を助けるための一例示であり、本発明の範囲がこれに限定されることではない。
【実施例
【0158】
1.ポリアミック酸の製造
一実施形態のポリアミック酸は二無水物化合物と、第1ジアミン化合物及び第2ジアミン化合物とを含む2種のジアミン化合物とのモル(mole)比率を1:1で維持し、溶液上で縮合重合方法に下記のような段階を経て製造された。
【0159】
この際、二無水物化合物としては、3、3’、4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を使用し、第1ジアミン化合物としては2、2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)、第2ジアミン化合物としては3、5-ジアミノ安息香酸(DABA)を使用した。
【0160】
実施例に使用された二無水物化合物、第1ジアミン化合物、及び第2ジアミン化合物の混合モル比率は表1に示した。即ち、第1ジアミン化合物と第2ジアミン化合物を含むジアミン化合物と二無水物化合物とは1:1のモル比で混合され、第1ジアミン化合物と第2ジアミン化合物とは、0.5:0.5乃至0.9:0.1の範囲でモル比を変更して混合された。
【表1】
【0161】
先ず、フラスコに窒素(99.99%)を100ml/minで10分間注入してフラスコの内部を窒素充填状態に作った。以後、フラスコに、0.2μm以上の粒子を分離する分離膜フィルターが含まれた窒素注入器を装着して20ml/minで窒素を入れることによって、ポリアミック酸の重合反応の最中にも、フラスコの内部が窒素充填状態に維持されるようにした。
【0162】
有機溶媒として純度95%のN、N-ジメチルアセトアミド(DMAc)(徳山薬品(DUKSAN PURE CHEMICALS CO., LTD.)、韓国)をフラスコに一定量を注入し、ここに第1ジアミン化合物と第2ジアミン化合物とを表1に示したモル比で混合して2M(molarity、モル濃度)濃度のジアミン化合物溶液を製造した。以後、製造された溶液を5分乃至20分間、常温(25℃)の窒素雰囲気下で放置することで、ジアミン化合物を完全に溶解させてジアミン化合物溶液を製造した。
【0163】
また、別のフラスコにDMAcを入れ、3、3’、4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を入れて、2M濃度の溶液を製造した。以後、製造された溶液を5分乃至20分間常温(25℃)の窒素雰囲気下で放置して二無水物化合物を完全に溶解させて二無水物化合物溶液を製造した。
【0164】
以後、二無水物化合物溶液をジアミン化合物溶液が収まれているフラスコに入れ、ポリアミック酸固形分が20wt%になるようにDMAc追加した後、常温(25℃)乃至低温(-10℃)の窒素雰囲気下で22時間の間に60rpm乃至100rpmの速度に攪拌して重合反応通じてポリアミック酸重合体溶液を製造した。ポリアミック酸重合体溶液はポリアミック酸重合体を20wt%の固形分に含んだものであって、溶液の粘度は5000±300cpsになるように合成条件を制御した。
【0165】
2.ポリイミドフィルムの製造
上述した方法に製造されたポリアミック酸をガラス基板に提供した。この時、ガラス基板はソーダ石灰ガラス(soda-lime glass、MATSUNAMI、日本国)又はホウケイ酸ガラス(borosilicate、MATSUNAMI、日本国)を使用した。ガラス基板の表面から異物質又は不純物を除去するために、超音波洗浄器(Ultrasonicator)を利用して、ガラス基板を、アセトン(acetone)内で10分間、次いで、イソプロパノール(IPA)内で約10分間、超音波洗浄した。次に、ガラス基板を17MΩ以上の超純水(DI-water)で、30分間、十分に洗浄を繰り返した後、120℃の対流式乾燥炉で60分間乾燥させた。
【0166】
洗浄して乾燥されたガラス基板上に、前記方法で製造されたポリアミック酸溶液を一定量塗布し、スピンコーター(spin-coater)又はスリット-ダイコーター(slit-diecoater)を利用して薄膜化した。ポリアミック酸溶液のコーティング層については、ホットプレート(hot plate)を利用して、50℃で60分間の加熱により事前乾燥し、以後70℃で120分間の加熱により追加乾燥して有機溶媒を除去することによって、ポリアミック酸層として形成された。有機溶媒を乾燥した後のポリアミック酸層は表面分析器(surface profiler)(Dektak 150、Veeco、USA)を利用して厚さを測定したのであり、測定されたポリアミック酸層の厚さは約18±2μmであった。
【0167】
ポリアミック酸層が形成されたガラス基板を、本件発明者により設計された反応器に投入してポリアミック酸層を熱処理した。熱処理の際、用いた反応器内は、真空状態に維持された。
【0168】
ポリアミック酸層の熱処理は2段階に進行された。1次熱処理段階では反応器の内部を270℃まで、分当たり4℃ずつ昇温させた後、270℃で120分間、等温状態に維持した。次に、最終温度である400℃まで、分当たり5℃ずつ反応器を昇温させた後、400℃で約60分間、等温状態に維持することで、第2熱処理段階を遂行した。
【0169】
熱処理段階を遂行してポリアミック酸層を熱イミド化することによって、ポリイミドフィルムを製造した。
【0170】
3.ポリイミドフィルムの特性評価
上述したポリアミック酸の製造及びポリイミドフィルムの製造により得られた一実施形態のポリイミドフィルムについて、光特性及び耐熱特性を評価した。一方、比較例は、ジアミン化合物を1種のみを使用したことを除くと、上述した一実施形態のポリイミドフィルムを製造する方法と同一の方法でポリイミドフィルムを製造したものである。
【0171】
比較例1では、ジアミン化合物として2、2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)のみを使用したのであり、比較例2では、ジアミン化合物として3、5-ジアミノ安息香酸(DABA)のみを使用した。
【0172】
光特性の評価のために、色度及び輝度測定装置(MCPD-3000、OSTKA、JAPAN)を利用して、550nm波長での光透過度(total transmittance)を測定し、ASTMD1925方法で黄色化度(Yellow Index;Y.I.)を測定した。光透過度の評価には、ガラス基板の透過度を基準とした相対的な透過度を用いた。即ち、表2の光透過度には、ガラス基板の透過度を100%とするときの、ポリイミドフィルムの相対的な透過度を示した。
【0173】
耐熱特性の評価のためには、TA instrument社のTMA(Q400)を利用して、ガラス転移温度(Tg)及び熱膨張係数(CTE)を測定した。上述した方法で製造したポリイミドフィルムを、2mm×16mmのサイズでサンプリングして、窒素環境下で0.03Nの荷重で固定させて安定化させた後、サンプリングされたポリイミドフィルムの長さの変化を測定した。熱膨張係数は、長さ方向、即ち平面上でのサンプリングされたポリイミドフィルムの膨脹程度を測定することで、評価した。湿気やほこりといった要因の影響を最小化するために、150℃まで10℃/minの速度で、サンプリングされたポリイミドフィルムを加熱し、40℃まで自然冷却させる段階を進行した後、再び500℃まで10℃/minで加熱する段階を進行してから、最終的にデータを取った。熱膨張係数は50℃から250℃までの温度範囲で測定した。
【0174】
TA instrument社のTGA(Q600)を利用して温度による質量減少を測定して、熱分解温度(Td)を測定した。試料の重さは4mg(±0.2mg)とした。熱分解温度測定もまた、熱膨張係数の測定方法及びTMAと同様に、窒素環境下で2段階の熱処理を行った後に、最終的なデータを取った。先ず、20℃/minで250℃まで昇温させた後、150℃まで自然冷却する1段階の熱処理の後に、同一速度で700℃まで昇温させる2段階の熱処理を遂行した。熱安定性は、熱分解よって質量が減少する温度である熱分解温度で評価した。表2で、Td、1%は、熱分解よって1%の質量が減少する温度であり、Td、0.5%は熱分解よって0.5%の質量が減少する温度を示した。ここで、100%の質量は、1段階の熱処理進行の後の200℃での質量でもって基準とした。
【0175】
【表2】
【0176】
表2の結果を参照すれば、実施例1乃至実施例5のポリイミドフィルムは、比較例1及び比較例2のポリイミドフィルムと比較して、高い光透過度及び低い黄色化度を示すことが分かる。即ち、2種以上のジアミン化合物を含んで形成された実施例のポリイミドフィルムは、1種のジアミン化合物を含んで形成された比較例のポリイミドフィルムに比べて、優れた光特性を示すことを確認することができる。
【0177】
一方、実施例1乃至実施例5のポリイミドフィルムは、比較例1及び比較例2のポリイミドフィルムと比較して、低い熱膨張係数を示すことが分かる。即ち、2種以上のジアミン化合物を含んで形成された実施例のポリイミドフィルムは、1種のジアミン化合物のみを含んで形成された比較例のポリイミドフィルムに比べて、低い熱膨張係数を有するので、高い寸法安定性を有するのでありうる。
【0178】
ドフィルムと比較して、高い熱分解温度Td、1%を示すことが分かる。即ち、2種のジアミン化合物を含んで形成された実施例のポリイミドフィルムの場合、ジアミン化合物として3、5-ジアミノ安息香酸(DABA)のみを使用する場合に比べて、耐熱性が改善されたことを確認することができる。
【0179】
また、実施例1乃至実施例5のポリイミドフィルムは、比較例1のポリイミドフィルムと比較して、光透過度及び黄色化度が著しく改善されたことが分かる。即ち、2種のジアミン化合物を含んで形成された実施例のポリイミドフィルムの場合、ジアミン化合物として2、2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)のみを使用した比較例1の場合に比べて、光特性が顕著に改善されたことを確認することができる。
【0180】
一実施形態のポリアミック酸、及びこれを利用して製造された一実施形態のポリイミドフィルムは、高いガラス転移温度と高い熱分解温度を有し、低い熱膨張係数を有するので、耐熱性が改善されたポリイミドフィルムを具現することができる。また、一実施形態のポリアミック酸、及びこれを利用して製造された一実施形態のポリイミドフィルムは、良好な耐熱特性を有し、同時に高い光透過度と低い黄色化度値を有するので、優れた光特性を有するポリイミドフィルムを具現することができる。
【0181】
即ち、一実施形態のポリアミック酸は2種の異なるジアミン化合物を含んで重合されたものであって、高い耐熱性及び優れた光特性を有するポリイミドフィルム製造に使用されうる。また、一実施形態のポリイミドフィルムの製造方法で製造された、一実施形態のポリイミドフィルムは、2種の異なるジアミン化合物を含んで重合されたポリアミック酸を利用し、また製造されたポリアミック酸を高温熱処理条件でイミド化することで、耐熱性が高いものでありながらも良好な光特性を有するポリイミドフィルムを具現することができる。
【0182】
以上では本発明の望ましい実施形態を参照して説明したが、該当技術分野の熟練された当業者又は該当技術分野に通常の知識を有する者であれば、後述される特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び技術領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更させることを理解させることができる。
【0183】
したがって、本発明の技術的範囲は明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されることではなく、特許請求の範囲によって定まれなければならない。
図1
図2