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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/13 20060101AFI20220804BHJP
【FI】
A61B3/13
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018061692
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019170635
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】雜賀 誠
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-122539(JP,A)
【文献】特開昭60-145123(JP,A)
【文献】特開2013-048896(JP,A)
【文献】特開平06-277179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に向けて照明光を照射する照明系と、
前記被検眼による反射光を観察又は撮影する観察系と、
前記照明光の光量を検出する光量検出器と、を備え、
前記照明系は、前記被検眼と光学的に共役な位置に配置されて前記照明光の光束を部分的に遮光する遮光部材を有し、
前記光量検出器は、前記遮光部材に設けられると共に、前記被検眼と光学的に共役な位置での光量を検出する位置に設けられている
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
被検眼に向けて照明光を照射する照明系と、
前記被検眼による反射光を観察又は撮影する観察系と、
前記照明光の光量を検出する光量検出器と、
前記被検眼に治療光を照射するレーザ治療系と、
前記治療光及び前記照明光の合波位置であって、前記被検眼と光学的に共役な位置に配置され、前記治療光及び前記照明光の合波を複数の光に分離する光分離部材と、を備え、
前記光量検出器は、前記光分離部材の分離光路上であって、前記被検眼と光学的に共役な位置での光量を検出する位置に設けられている
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項3】
前記光量検出器は、前記照明光の光軸上の光量を検出する位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被検眼に照明光を照射する照明系と、被検眼を観察するための観察系とを備え、被検眼からの反射光量を検知することで、照明系の光源の光量調整を行う眼科装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-224036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の眼科装置では被検眼からの反射光量を検知しているが、この反射光量は被検眼の状態やセンサの精度、ばらつき等の影響により変動する。特に、眼断面、前眼部、眼底等観察する対象が異なると反射光量も大きく変化する。そのため、被検眼からの反射光量を検知することで、被検眼の実際の照明状態を精度よく把握して、照明光量を適切に制御することが難しかった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、被検眼の実際の照明状態を精度よく把握し、照明光量を適切に制御することができる眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の眼科装置は、被検眼に向けて照明光を照射すると共に被検眼と光学的に共役な位置に配置されて照明光の光束を部分的に遮光する遮光部材を有する照明系と、被検眼による反射光を観察又は撮影する観察系と、遮光部材に設けられると共に、被検眼と光学的に共役な位置での照明光の光量を検出する位置に設けられた光量検出器と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
このように構成された眼科装置では、光量検出器によって、被検眼と光学的に共役な位置での照明光の光量を検出することができ、被検眼の位置での照明状態によって得られる照明光量とほぼ同等の光量を検出することができる。よって、被検眼の実際の照明状態を精度よく把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の眼科装置の全体構成を示す側面図である。
図2】実施例1の眼科装置の光学系を示す説明図である。
図3】実施例1の眼科装置の視野絞り部を示す平面図である。
図4】実施例1の眼科装置の照明光制御部にて実行される照明光制御処理を示すフローチャートである。
図5A】実施例2の眼科装置の視野絞り部を示す説明図である。
図5B】実施例2の眼科装置の視野絞り部を示す平面図である。
図6】実施例3の眼科装置の光学系を示す説明図である。
図7】実施例2の眼科装置の変形例のスリット部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の眼科装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1~実施例3に基づいて説明する。
【0010】
(実施例1)
実施例1の眼科装置10の構成を、「全体構成」、「照明系の詳細構成」、「観察系の詳細構成」、「照明光制御処理の詳細構成」に分けて説明する。
【0011】
[全体構成]
図1に示す眼科装置10は、スリット光を用いて被検眼Eの角膜の光切片を切り取ることにより、角膜の断面の画像を取得する細隙灯顕微鏡である。
【0012】
実施例1の眼科装置10は、図1に示すように、顕微鏡本体11と、照明系12と、観察系13と、照明光制御部20と、を備えている。なお、この眼科装置10は、不図示の背景照明系を有している。背景照明系は、照明系12から照射されたスリット光の照射領域の周囲の領域を背景光で照明する。
【0013】
顕微鏡本体11は、テーブル1に設置され、照明系12、観察系13、背景照明ユニット20をそれぞれ支持する。顕微鏡本体11は、テーブル1の上面に固定された台座11aと、台座11aの上面に設けられた基台14と、基台14の上面に設けられた支持部15と、台座11aに支持された顎受け台16と、を有している。
【0014】
基台14は、台座11aに対し、移動機構部14aを介して被検眼Eから見て前後方向及び左右方向に移動可能に設置されている。基台14は、操作ハンドル14bを傾倒操作することで移動する。また、操作ハンドル14bを軸周りに回転操作することで、基台14の上面に設けられた支持部15が上下方向に移動する。
【0015】
支持部15は、台座15aと、第1支持アーム15bと、第2支持アーム15cと、を有している。
台座15aは、基台14の上面に設けられ、この台座15aから第1支持アーム15b及び第2支持アーム15cが起立している。ここで、第1支持アーム15b及び第2支持アーム15cは、同軸の垂直軸を中心にそれぞれ独立して回動可能になっている。
【0016】
第1支持アーム15bは、上部に照明系12を収容した照明系ハウジング12aが取り付けられ、照明系12を支持する。この第1支持アーム15bは、手動により回動させられる。第1支持アーム15bが回動することで、照明系ハウジング12aが被検眼Eの周囲を旋回する。これにより、被検眼Eに対するスリット光の照射方向が変更される。なお、第1支持アーム15bは、上下方向にも回動してよく、この場合では被検眼Eに対するスリット光の仰角や俯角が変更される。
【0017】
第2支持アーム15cは、上部に観察系13を収容した観察系ハウジング13aが取り付けられ、観察系13を支持する。この第2支持アーム15cは、手動により回動させられる。第2支持アーム15cが回動することで、観察系ハウジング13aが第1支持アーム15bの周囲を旋回する。これにより、被検眼Eに対する観察系13の観察方向が変更される。
【0018】
なお、第1支持アーム15b及び第2支持アーム15cは、電動により自動で回動する構成であってもよい。この場合、第1,第2支持アーム15b,15cを回動させる駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構が必要となる。アクチュエータは、例えばステッピングモータ(パルスモータ)が用いられる。また、伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオン等が用いられる。
【0019】
顎受け台16は、観察系ハウジング13aの前方に対峙する位置に配置されている。この顎受け台16には、被検者の顔を安定させるための顎受け部16a及び額当部16bが設けられている。この眼科装置10では、検者は、テーブル1に正対した被検者が顎受け部16a及び額当部16bに顔を接触した状態で被検眼Eの観察を行う。
【0020】
照明系12は、被検眼Eに向けてスリット光を照射する。照明系12は、照明系ハウジング12aに収容されている。スリット光の強度は、基台14に設けられた照明強度操作部14cを操作することで変更される。なお、「スリット光」とは、照射領域の一部を遮ることで照射領域が帯状に形成された光であり、被検眼Eの角膜や眼底を観察するための照明光である。
【0021】
さらに、照明系ハウジング12aの下方には、照明系12から照射されたスリット光を被検眼Eに向けて反射するミラー12bが配置されている。ミラー12bは、第1支持アーム15bに取り付けられている。なお、このミラー12bにより、背景光を被検眼Eに向けて反射することも可能である。
【0022】
観察系13は、被検眼Eによる反射光を観察及び撮影する。ここで、「反射光」には、被検眼Eで反射されたスリット光や背景光だけでなく、例えば被検眼Eやその周辺からの散乱光などの各種の光が含まれる。実施例1では、これら各種の光を含めて「反射光」と呼ぶ。観察系13は、観察系ハウジング13aに収容されている。観察系ハウジング13aの終端には、接眼部13bが設けられている。検者は、接眼部13bを覗き込むことで被検眼Eを肉眼で観察する。また、観察系ハウジング13aの側面には、観察倍率を変更するための観察倍率操作ノブ13cが配置されている。
【0023】
さらに、観察系ハウジング13aには、被検眼Eを撮影するための撮像装置13dが取り外し可能に接続されている。撮像装置13dは、撮像素子13eを有している。撮像素子13eは、光を検出して電気信号(画像信号)を出力する光電変換素子である。画像信号は、眼科装置10に接続されたパソコン等の外部制御機器(不図示)に適宜入力される。撮像素子13eとしては、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが用いられる。
【0024】
照明光制御部20は、照明系12のメイン光源121の光度を制御する。照明光制御部20は、CPU(Central Processing Unit)を有する制御回路21と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等からなる記憶部22と、を備えている。
【0025】
制御回路21は、必要な情報を取得し、眼科装置10の照明系12に対して適宜制御指令を出力する。一方、記憶部22には、制御プログラムが予め記憶されている。照明光制御部20からの制御指令は、この制御プログラムとハードウェアとが協働することで実現される。なお、照明光制御部20は、基台14に内蔵されている。
【0026】
[照明系の詳細構成]
照明系12は、図2に示すように、メイン光源121と、リレーレンズ122と、照明絞り123と、コンデンサレンズ124と、光束制御部128と、結像レンズ127と、を有している。なお、符号O1は、照明系12の光軸(照明光軸)を示す。
【0027】
メイン光源121は、被検眼Eの角膜や眼底を観察するためのスリット光の光源である。このメイン光源121は、少なくとも可視光を出力する可視光源を有しており、例えば、定常光を出力する光源(ハロゲンランプ、LED(Light Emitting Diode)等)と、フラッシュ光を出力する光源(キセノンランプ、LED等)の双方を用いてもよい。また、照明系12に複数の光源を設けてもよく、複数の単色光源を別々に設けてもよい。メイン光源121は、照明光制御部20からの制御指令に基づいて印加電力の大きさが制御され、光度が変更される。
【0028】
照明絞り123は、透光部のサイズが変更可能となっており、被照明部の照度を調整する。
【0029】
光束制御部128は、メイン光源121から照射された照明光の照明光束S(図3参照)が通過する開口部128aの面積を制御し、照明光の照射領域の一部を適宜遮ることで、照射領域が帯状に制限されたスリット光を形成する。ここで、光束制御部128は、被検眼Eと光学的に共役な位置に配置された遮光部材129と、被検眼Eと光学的に共役な位置での照明光の光量(明るさ)を検出する光量検出器130と、を有している。
【0030】
遮光部材129は、スリット部125と、視野絞り部126とから構成されている。また、「被検眼Eと光学的に共役な位置」とは、被検眼Eと共役関係になる位置を意味する。なお、「被検眼Eと光学的に共役な位置」は、被検眼Eと完全に共役関係になる位置でなくてもよく、共役関係の位置から照明光軸O1方向に若干(照明光量の差異が無視できる程度)ずれていてもよい。
【0031】
スリット部125は、照明光軸O1を挟んで対向して配置された一対のスリット刃125a,125bを有している。この一対のスリット刃125a,125bは、照明光軸O1を挟んで互いに近接又は離間移動する。一対のスリット刃125a,125bの間隔(スリット間隔)を変更することにより、照明光束S(図3参照)を遮る面積が変化し、スリット光の幅が変更される。一対のスリット刃125a,125bの間隔は、手動操作により任意に調整可能としてもよいし、電動により変更可能にしてもよい。
【0032】
視野絞り部126は、スリット部125と結像レンズ127との間であって、スリット部125に近接して配置された円板状のターレットである。視野絞り部126は、図3に示すように、照明光軸O1に対して直交する遮光面126aを有し、回転中心126αを中心にして照明光軸O1に直交する方向に回転する。視野絞り部126には、遮光面126aを貫通する複数の開口126b~126fが形成され、この複数の開口により、照明光束Sを部分的に遮光する。なお、複数の開口126b~126fは、互いに大きさや形状が異なっている。
【0033】
光量検出器130は、光を電気に変換する計測用デバイス(フォトディテクタ)であり、光電効果を利用した光電子増倍管(フォトマル)や、光照射による電気抵抗変化を利用した光電導素子、光起電力型のフォトダイオード等から構成されている。光量検出器130は、被検眼Eと光学的に共役な位置に配置された遮光部材129のうち、視野絞り部126の遮光面126aに設けられている。
【0034】
また、実施例1の光量検出器130は、図3に示すように、遮光面126aに設定された仮想円126β上に配置され、開口126eと開口126fとの間に位置している。これにより、この光量検出器130は、視野絞り部126が回転中心126αを中心として回転することで、受光部130aを照明光軸O1に一致させることができる。そして、受光部130aが照明光軸O1に一致したとき、光量検出器130は、メイン光源121からの照明光を照明光軸O1上で直接受光して光量を検出する。光量検出器130によって検出された照明光の光量情報は、照明光制御部20に入力される。
【0035】
[観察系の詳細構成]
観察系13は、左右一対の光学系を備えている。左右の光学系はほぼ同様の構成を有する。検者は、この左右の光学系により被検眼Eを双眼で観察することができる。観察系13の各光学系は、図2に示すように、対物レンズ131と、変倍光学系132と、絞り133と、ビームスプリッタ134と、結像レンズ135と、プリズムユニット136と、接眼レンズ137と、を有している。なお、図2には、観察系13の左右の光学系の一方のみが示されている。また、ビームスプリッタ134は、左右の光学系の一方又は双方に設けられる。さらに、符号O2は、観察系13の光軸(観察光軸)を示す。
【0036】
接眼レンズ137は、接眼部13b内に設けられている。符号Pは、結像レンズ135により観察部位の像が結像する位置を示している。検者は、接眼レンズ137を介してこの像を観察する。符号Ecは被検眼Eの角膜を、符号Epは虹彩を、符号Erは眼底をそれぞれ示している。符号Eoは検者眼を示している。
【0037】
変倍光学系132は、被検眼Eの接眼レンズ137による観察像や撮影画像の倍率(画角)を変更する。変倍光学系132は、観察光軸O2に対して選択的に挿入可能な複数の変倍レンズ群からなる。各変倍レンズ群は、複数(図2では2枚)の変倍レンズ132a,132bを有し、それぞれ異なる倍率を付与する。各変倍レンズ群のうち、観察光軸O2上に配置された変倍レンズ群が変倍光学系132として用いられる。そして、倍率の変更、すなわち観察光軸O2上に配置される変倍レンズ群の切り替えは、観察倍率操作ノブ13cを操作することにより行われる。また、図示しないスイッチ等を用いて、電動で倍率の変更(変倍レンズ群の切り替え)を行ってもよい。
【0038】
ビームスプリッタ134は、観察光軸O2に沿って進む光を二分割する。ビームスプリッタ134を透過した光は、結像レンズ135、プリズムユニット136及び接眼レンズ137を介して検者眼Eoに導かれる。プリズムユニット136は、2つの光学素子136a,136bを有し、像を反転すると共に検者の眼幅に合わせて左右の観察光軸O2の幅を変更する。
【0039】
また、ビームスプリッタ134により反射された光は、結像レンズ138及びミラー139を介して、撮像装置13dの撮像素子13eに導かれる。撮像素子13eは、この反射光を検出して画像信号を生成する。
【0040】
[照明光制御処理の詳細構成]
図4は、実施例1の眼科装置10にて実行される照明光制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、図4の各ステップについて説明する。
【0041】
ステップS1では、照明光制御部20において、照明系12のメイン光源121が点灯操作されているか否かを判断する。YES(メイン光源点灯)の場合にはステップS2へ進む。NO(メイン光源消灯)の場合にはステップS1を繰り返す。
【0042】
ステップS2では、ステップS1でのメイン光源点灯との判断に続き、光量検出器130によって、被検眼Eと光学的に共役な位置での照明光の光量を検出し、ステップS3へ進む。
ここで、光量の検出は、視野絞り部126を回転させ、光量検出器130の受光部130aを照明光軸O1に一致させた状態で行う。これにより、光量検出器130は、照明光軸O1上の光量を直接検出する。また、光量検出器130によって検出された照明光の光量情報は、照明光制御部20へ入力される。
【0043】
ステップS3では、ステップS2での光量の検出に続き、照明光制御部20において、光量検出器130から入力された光量情報に基づいて、被検眼Eの位置での照明光量(実光量)を推定し、ステップS4へ進む。
【0044】
ステップS4では、ステップS3での実光量の推定に続き、このステップS3にて推定した実光量と、予め設定した目標光量とのと差異を求め、この差異が所定の閾値以下となるようにメイン光源121の光度を制御する制御指令を出力し、リターンへ進む。
ここで、メイン光源121の光度は、照明光制御部20によってメイン光源121への印加電力の大きさを制御することで制御される。
【0045】
実施例1の眼科装置10の作用を、「照明光の光量検出作用」と、「照明光の光量モニタ作用」に分けて説明する。
【0046】
[照明光の光量検出作用]
実施例1の眼科装置10では、光量検出器130を照明系12の視野絞り部126の遮光面126aに設けている。ここで、視野絞り部126は、被検眼Eと光学的に共役な位置に配置されている。そのため、光量検出器130を視野絞り部126に設けたことで、この光量検出器130は、被検眼Eと光学的に共役な位置での照明光の光量(明るさ)を検出する位置に設けられることになる。
【0047】
一方、被検眼Eと光学的に共役な位置における照明状態は、被検眼Eの位置での照明状態とほぼ同等の状態になる。また、被検眼Eと光学的に共役ではない位置における照明状態は、被検眼Eの位置での照明状態とは異なる状態になる。
ここで、「照明状態」とは、その位置(例えば、被検眼Eと光学的に共役な位置や、被検眼Eの位置など)における照度、光量、光線方向、光束の収束状況等を含む。
【0048】
実施例1の眼科装置10では、光量検出器130が、被検眼Eと光学的に共役な位置での光量を検出する位置に設けられていることで、被検眼Eと光学的に共役な位置における照明光の光量を検出することができる。よって、被検眼Eの位置での照明光量と同等の光量を検出することができ、検出した光量に基づいて被検眼Eの実際の照明状態を精度よく把握することができる。
【0049】
なお、実施例1の光量検出器130は、視野絞り部126を回転させ、光量検出器130の受光部130aを照明光軸O1に一致させたときに実行可能である。そのため、この光量検出器130は、照明光の光量を常時検出するものではなく、例えば、工場で眼科装置10を製造したときや、メイン光源121を交換したとき、眼科装置10のユーザーが被検眼Eの位置での照明光量のチェックをしたいときなど、必要に応じて光量を検出する。そのため、検眼中に光量ロスが生じることがなく、被検眼Eの観察に影響を与えることを防止できる。
【0050】
しかも、この実施例1の光量検出器130は、遮光面126aに設定された仮想円126β上に配置されている。そのため、視野絞り部126が回転中心126αを中心として回転することで、受光部130aが照明光軸O1に一致する。すなわち、この光量検出器130が設けられた位置は照明光軸O1上となり、この照明光軸O1上の照明光の光量を検出する位置になる。これにより、光量検出器130は、照明光軸O1上の照明光の光量を検出することができる。
【0051】
ここで、照明光軸O1から外れた位置で光量を測定した場合では、メイン光源121の配向分布の影響を受け、光量検出器130の設置位置によって検出光量にばらつきが生じることになる。特に、メイン光源121がLEDの場合では、配向角度によって光量に大きな差が生じる。また、メイン光源121の配向分布は個体差があり、ばらつきを有している。そのため、照明光軸O1から外れた位置では、被検眼Eの位置での照明光量と同等の光量を正確に検出することが難しい。
【0052】
これに対し、実施例1では、光量検出器130が照明光軸O1上の照明光の光量を検出することができるので、メイン光源121の配光特性に拘らず、被検眼Eの位置での照明光量と同等の光量を適切に検出することができる。この結果、被検眼Eの照明状態をさらに精度よく把握することができる。
【0053】
[照明光の光量モニタ作用]
実施例1の眼科装置10では、照明光制御処理を実行する。すなわち、照明光制御部20は、図4のフローチャートに示すステップS1の処理を行い、メイン光源121の点灯操作の有無を判断する。照明光制御部20において、メイン光源121が点灯操作されていると判断したときには、図4のフローチャートに示すステップS2の処理を行う。つまり、光量検出器130は、被検眼Eと光学的に共役な位置での照明光の光量を検出し、この照明光の光量情報を照明光制御部20へ入力する。
【0054】
そして、図4のフローチャートに示すステップS3、ステップS4の処理を順に行う。つまり、照明光制御部20は、光量検出器130から入力された光量情報に基づいて、被検眼Eの位置での照明光量(実光量)を推定する。そして、この照明光制御部20は、推定した実光量と予め設定した目標光量との差異が所定の閾値以下となるように、メイン光源121への印加電力の大きさを制御する制御指令を出力する。
【0055】
これにより、メイン光源121への印加電力の大きさが調整され、メイン光源121や照明系12のばらつきに拘らず、照明光量を適切に制御することができる。また、メイン光源121が劣化して被検眼Eの位置での照明光量が低下した場合であっても、印加電力を適切に調整することでメイン光源121の光度を上げ、被検眼Eの位置での照明光量を回復させることができる。さらに、メイン光源121を交換することで、被検眼Eの位置での照明光量に変化が生じたときであっても、メイン光源121の光度を制御して、適切な照明光量とすることができる。
【0056】
(実施例2)
実施例2の眼科装置は、照明系が有する遮光部材に照明光を反射するミラーを設け、光量検出器をミラーの反射光路上に設けた例である。以下、実施例2の眼科装置を説明する。なお、実施例1の眼科装置10と同等の構成については、実施例1と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0057】
実施例2の研磨装置では、図5Aに示すように、照明系12の光束制御部128が有する遮光部材129において、視野絞り部126の遮光面126aにミラー126gが設けられている。
【0058】
ミラー126gは、入射した光をすべて反射(全反射)する鏡体である。ミラー126gは、図5Bに示すように、遮光面126aに設定された仮想円126β上に配置され、開口126eと開口126fとの間に位置している。これにより、このミラー126gは、視野絞り部126が回転中心126αを中心として回転することで、照明光軸O1に一致し、照明光軸O1上の光を反射することができる。また、ミラー126gは、回転中心126αに向かって次第に遮光面126aから突出するように反射面が傾斜している。そのため、ミラー126gが照明光軸O1に一致し、照明光軸O1上の光を反射したときの反射光軸O3は、照明光軸O1から外れて、視野絞り部126の外方に向かう。
【0059】
一方、実施例2の光量検出器130Aは、図5Aに示すように、ミラー126gの反射光軸O3上に設けられている。これにより、この光量検出器130Aは、メイン光源121からの照明光を、視野絞り部126の側方でミラー126gを介して受光する。そして、反射光軸O3上の光量を検出する。
【0060】
ここで、ミラー126gは、照明光軸O1上の光を全反射する。そのため、光量検出器130Aは、照明光軸O1から外れた位置であっても、メイン光源121からの照明光を照明光軸O1上で直接受光したときと同じ光量を検出することができる。
【0061】
すなわち、実施例2の眼科装置では、被検眼Eと光学的に共役な位置に配置された遮光部材129の視野絞り部126に直接光量検出器130Aを設けていなくても、被検眼Eと光学的に共役な位置での照明光の光量を検出することができる。これにより、光量検出器130Aは、被検眼Eの位置での照明光量と同等の光量を検出することができて、被検眼Eの実際の照明状態の把握精度を担保できる一方、光量検出器130Aのレイアウト自由度の向上を図ることができる。
【0062】
(実施例3)
実施例3の眼科装置10Bは、被検眼に治療光を照射するレーザ治療系と、治療光及び照明光の合波を複数の光に分離する光分離部材と、を有し、光量検出器を光分離部材の分離光路上に設けた例である。以下、実施例3の眼科装置10Bを説明する。なお、実施例1の眼科装置10と同等の構成については、実施例1と同等の構成については、実施例1と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0063】
実施例3の眼科装置10Bは、被検眼Eに向けてスリット光を照射する照明系12と、被検眼Eによる反射光を観察及び撮影する観察系13に加え、被検眼Eに治療用レーザ光(治療光)を照射するレーザ治療系30を備えている。そして、この眼科装置10Bでは、照明系12の照明光軸O1上に合波ミラー31(光分離部材)が設置されている。
【0064】
ここで、合波ミラー31は、被検眼Eと光学的に共役な位置であって、治療用レーザ光及び照明光が合波する合波位置に配置されている。このため、合波ミラー31により、レーザ治療系30から照射された治療用レーザ光の光軸(以下、「治療光軸O4」という)は、照明光軸O1と同軸に合波する。また、この合波ミラー31は、ダイクロイックミラーによって形成され、治療用レーザ光及び照明光の合波を、被検眼Eに向かって反射した第1の合波と、被検眼Eとは異なる方向に反射した第2の合波の二つの光(光軸)に分離する。なお、第2の合波は、治療用レーザ光及び照明光の合波の数%の光量である。また、図6において、符号O51は、第1の合波の光軸を示し、符号O51は、第2の合波の光軸(分離光軸)を示す。
【0065】
一方、実施例3の光量検出器130Bは、図6に示すように、合波ミラー31によって分離された第2の合波の分離光路(分離光軸O52)上に設けられている。これにより、この光量検出器130Bは、治療用レーザ光及び照明光の合波の一部を合波ミラー31の側方で受光し、分離光軸O52上の光量を検出する。
【0066】
ここで、合波ミラー31は、被検眼Eと光学的に共役な位置において、治療用レーザ光及び照明光の合波の数%を分離する。そのため、光量検出器130Bは、被検眼Eと光学的に共役な位置での治療用レーザ光及び照明光の合波を検出することが可能となる。また、光量検出器130Bによって検出される合波の光量は、予め設定された合波ミラー31による合波の分離割合で決まる。これにより、光量検出器130Bは、被検眼Eの位置での照明光量に対して所定の割合の光量を検出することができ、被検眼Eの実際の照明状態の把握を精度よく行うことができる。
【0067】
さらに、合波ミラー31は、治療用レーザ光及び照明光の合波を常時分離するため、光量検出器130Bは、常に合波の光量をモニタすることが可能となる。これにより、メイン光源121の劣化等を速やかに検知することが可能になる。
【0068】
以上、本発明の眼科装置を実施例1~実施例3に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0069】
実施例2では、照明光軸O1上の光を全反射するミラー126gを遮光部材129の視野絞り部126に設けた例を示した。しかしながら、これに限らない。ミラー126gは、被検眼Eと光学的に共役な位置での照明光を反射できればよいため、例えば、図7に示すように、被検眼Eと光学的に共役な位置に配置された遮光部材129のスリット部125にミラー126gが設けられていてもよい。
【0070】
つまり、スリット部125の一対のスリット刃125a,125bのメイン光源121側の面125cにミラー126gを設けると共に、この面125cを照明光軸O1側から周縁に向かって次第に突出するように傾斜させる。さらに、一対のスリット刃125a,125bを閉じたときに生じる反射光路(反射光軸O3)上に光量検出器130Aを配置する。
これにより、一対のスリット刃125a,125bを閉じたとき、光量検出器130Aによって、被検眼Eと光学的に共役な位置での照明光軸O1上の光量を検出することができる。
【0071】
また、実施例1では、視野絞り部126が回転中心126αを中心に回転し、光量検出器130の受光部130aが照明光軸O1に一致したとき、この光量検出器130によってメイン光源121からの照明光の光量を検出する例を示した。しかしながら、光量検出器130は、必ずしも照明光軸O1上に設けていなくてもよい。被検眼Eと光学的に共役な位置に設けられた遮光部材129の視野絞り部126やスリット部125に光量検出器130を設けることで、照明光軸O1から多少外れた位置であっても、被検眼Eと光学的に共役な位置での照明光を検出することができる。そして、被検眼Eの位置での照明光量とほぼ同等の光量を検出することができる。
【0072】
また、実施例2では、入射した光を全反射するミラー126gを遮光部材129の視野絞り部126に設け、照明光軸O1上の光を全て光量検出器130Aに向けて反射する例を示した。しかしながら、これに限らず、遮光部材129に設けるミラーは、照明光軸O1上の光の一部を反射するミラーであってもよい。
【0073】
さらに、実施例2では、ミラー126gを介して照明光を光量検出器130Aへと導いているが、これに限らない。例えば、視野絞り部126の遮光面126aに光ファイバの一方の端部を配置し、光ファイバの他方の端部近傍に光量検出器130Aを配置してもよい。すなわち、この光ファイバの端面から照明光軸O1の散乱光を取り込み、被検眼Eと光学的に共役な位置における照明光の光量を検出してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10,10B :眼科装置
12 :照明系
13 :観察系
30 :レーザ治療系
126g :ミラー
129 :遮光部材
125 :スリット部
126 :視野絞り部
126a :遮光面
130,130A,130B :光量検出器
E :被検眼
O1 :照明光軸
O2 :観察光軸
O3 :反射光軸(反射光路)
O4 :治療光軸
O52 :分離光軸(分離光路)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7