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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】無線通信方法及び無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/18 20180101AFI20220804BHJP
   H04W 4/48 20180101ALI20220804BHJP
   H04W 76/19 20180101ALI20220804BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20220804BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20220804BHJP
【FI】
H04W76/18
H04W4/48
H04W76/19
H04W84/10 110
H04W88/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018061712
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019176296
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】大村 英雄
(72)【発明者】
【氏名】神沼 充伸
【審査官】青木 健
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0198290(US,A1)
【文献】特開2017-118325(JP,A)
【文献】特開2011-055472(JP,A)
【文献】特開2015-177229(JP,A)
【文献】特開2015-216595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯機との間で無線通信を行う無線通信装置の無線通信方法であって、
前記携帯機が前記無線通信装置から所定の範囲内に持ち込まれた際に、前記携帯機との間で第1の通信方式による無線通信を行い、
前記第1の通信方式による無線通信を監視し、前記第1の通信方式による無線通信の遮断を検出した場合には、前記第1の通信方式とは異なる第2の通信方式により、前記携帯機と無線通信を行って前記携帯機に状態変化が発生しているか否かを判定し、
前記状態変化が発生していないと判定され、前記第2の通信方式による無線通信により、前記携帯機からの応答信号が受信されない場合には、前記遮断の原因が前記無線通信装置と前記携帯機の間の通信異常によるものであると推定すること
を特徴とする無線通信方法。
【請求項2】
前記遮断の原因が、前記無線通信装置と前記携帯機の間の通信異常によるものであると推定された場合には、前記第1の通信方式による無線通信の、通信異常が発生したプロトコルレイヤで前記第1の通信方式による再接続を実行し、前記第1の通信方式による再接続ができない場合には、プロトコルレイヤを下位のプロトコルレイヤに順次変更して再接続を実施すること
を特徴とする請求項に記載の無線通信方法。
【請求項3】
前記第1の通信方式で無線通信した携帯機の情報を登録し、
前記第1の通信方式による無線通信の遮断の発生後、前記第2の通信方式により無線通信した携帯機の情報が登録されている場合に、この携帯機との間で前記第1の通信方式による再接続を実施すること
を特徴とする請求項1または2に記載の無線通信方法。
【請求項4】
前記携帯機との再接続を実施し、前記第1の通信方式による再接続ができないときには、前記携帯機の再登録を促す情報を前記携帯機のユーザに提示すること
を特徴とする請求項に記載の無線通信方法。
【請求項5】
前記携帯機を再接続する際に、前記携帯機の認証情報が存在しない場合には、前記携帯機の再登録を促す情報を前記携帯機のユーザに提示すること
を特徴とする請求項に記載の無線通信方法。
【請求項6】
前記第1の通信方式による無線通信の再接続の際に、前記無線通信装置から所定の範囲内に複数の携帯機の存在を検出した場合には、前回の通信終了時に前記第1の通信方式で無線通信を行った携帯機を他の携帯機よりも優先的に接続すること
を特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の無線通信方法。
【請求項7】
前記第2の通信方式は前記第1の通信方式よりも、消費エネルギーが小さい通信方式であること
を特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の無線通信方法。
【請求項8】
前記遮断の原因を推定した場合に、推定した原因を前記携帯機のユーザに提示すること
を特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の無線通信方法。
【請求項9】
携帯機との間で無線通信を行う無線通信装置であって、
前記携帯機が前記無線通信装置から所定の範囲内に持ち込まれた際に、前記携帯機との間で第1の通信方式による無線通信を行う第1無線通信回路と、
前記第1の通信方式による無線通信の状態を監視する無線通信監視回路と、
前記無線通信監視回路にて前記第1の通信方式による無線通信の遮断を検出した場合に、前記携帯機に状態変化が発生しているか否かを判定するIVI装置と、
前記IVI装置にて、前記状態変化が発生していないと判定された際には、前記第1の通信方式とは異なる第2の通信方式により、前記携帯機と無線通信を行う第2無線通信回路と、
前記第2の通信方式による無線通信により、前記遮断の原因を推定する遮断推定回路と
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信方法及び無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の乗員(ユーザ)が所有する携帯機が車室内に持ち込まれた際にこれを認識して車載機と無線通信する技術が知られている。また、特許文献1には車室内に複数の携帯機が持ち込まれた際に、運転者が所有する携帯機を特定して車載機と無線通信する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-249005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車室内に持ち込まれた携帯機と車載機との間で無線通信を実施している際に、何らかの原因により通信の遮断することがあるが、上述した特許文献1では、遮断の原因を特定する対応について考慮されていない。このため、無線通信が遮断された際に、乗員は遮断の原因を認識することができず、適切な対応を採ることが難しいという問題が生じる。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、無線通信が遮断した際に、遮断の原因をユーザに認識させることが可能な無線通信方法及び無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願発明は、携帯機が無線通信装置から所定の範囲内に持ち込まれた際に第1の通信方式による無線通信を行い、第1の通信方式による無線通信の遮断を検出した場合に第1の通信方式とは異なる第2の通信方式により、携帯機と無線通信を行い、携帯機からの応答信号が受信されない場合には遮断の原因が無線通信装置と携帯機の間の通信異常であるものと推定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、無線通信が遮断した際に、遮断の原因をユーザに認識させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る無線通信装置の処理手順を示すフローチャートである。
図3図3は、図2に示した排他処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
図4図4は、図2に示した再登録処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
図5図5は、再登録を促す画像の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(本実施形態の構成説明)
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信方法が適用される無線通信システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る無線通信システムは、車室内(無線通信装置から所定の範囲内)に設置された車載機100(無線通信装置)と、車両の乗員(ユーザ)が携帯する携帯電話、スマートフォン等の携帯機3とを備えている。そして、車載機100と携帯機3との間の無線通信が遮断した場合に、車載機100による遮断原因の推定を行う。なお、本実施形態では、車室内に設置して該車室内に持ち込まれた携帯機3との間の通信を行う車載機100を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、鉄道車両の室内や一般家屋の室内等に設置する無線通信装置とすることもできる。
【0010】
図1に示す車載機100は、携帯機3との間でブルートゥース(Bluetooth)通信(登録商標;近距離無線通信)を行うBT通信機1と、IVI(in-vehicle infotainment)装置2を備えている。
【0011】
BT通信機1は、BT通信回路11(第1無線通信回路)と、低電力通信回路12(第2無線通信回路)と、通信制御回路13と、BTモジュール14を備えている。なお、以下ではブルートゥース通信を「BT通信」と略す。
【0012】
BT通信回路11は、車室内に持ち込まれた携帯機3との間で、BT通信(第1の通信方式による無線通信)により、通信を行うものである。BT通信では、2.4GHzの広帯域(2402~2480MHz)の中に、1MHz毎、79個のチャネルを設定しており、周波数ホッピング方式(FHSS:Frequency Hopping Spread Spectrum)を採用しており、1秒間に1600回のチャネル切り替えを行いながら通信を実行する。周波数ホッピングによって、周囲に干渉の原因となり得るデバイスが存在していても、その影響を極力少なくすることができる。例えば、携帯機3として携帯電話やスマートフォンが車室内に持ち込まれた場合には、携帯機3とBT通信回路11とのBT通信により、ハンズフリーの通話が可能になる。或いは、携帯機3に入力している音楽データの再生、ショートメールサービス等を行うことができる。
【0013】
低電力通信回路12は、BTLE通信(Bluetooth Low Energy;第2の通信方式による無線通信)により、携帯機3との間で低電力の通信を行うものである。BTLE通信は、低電力で通信を行うことができ、例えば、ボタン電池1個で10年程度の駆動が可能である。また、低電力通信回路12は、BT通信回路11とは独立して通信を行うものであり、BT通信回路11によるBT通信が遮断した場合でも、低電力通信回路12による低電力の通信を実行することができる。なお、BTLE通信以外で、例えばビーコンを用いることも可能である。
【0014】
通信制御回路13は、BT通信回路11、及び低電力通信回路12を制御して、携帯機3との間での近距離通信を行う。また、通信制御回路13は、BT通信回路11によるBT通信に異常が発生した等の理由により携帯機3との間のBT通信が遮断した場合には、この遮断した原因を推定する遮断推定回路13aを有している。BT通信回路11によるBT通信(無線通信)を監視し、BT通信の遮断を検出した場合には、BTLE通信により携帯機3とのBTLE通信(無線通信)を行う制御を実施する。即ち、通信制御回路13は、BT通信による無線通信の状態を監視する無線通信監視回路としての機能を備えている。また、BTLE通信により、BT通信が遮断した原因を推定する制御を行う。
【0015】
また、通信制御回路13は、BT通信の遮断を検出した後、BTLE通信により携帯機3の状態の変化を検出し、状態の変化がない場合には、遮断の原因がBT通信機1と携帯機3との間の通信異常によるものと推定する制御を行う。状態の変化とは、例えば、携帯機3が車室内から外部へ持ち出された場合、乗員の操作でBT通信の遮断が操作された場合、電源がオフとされた場合等、乗員の操作に起因して生じる変化である。
【0016】
更に、通信制御回路13は、メモリ13bを有しており、BT通信を実行する携帯機3から登録要求がある場合には、この携帯機のID及び認証情報(パスキー等)をメモリ13bに記憶する。また、携帯機3との間でBT通信を行った場合には、該携帯機3の情報が通信履歴としてメモリ13bに登録される。
【0017】
BTモジュール14は、BT通信を行う際の、階層化された複数の上位プロトコルレイヤ(1)~(n)、及び、下位プロトコルレイヤが設定されている。また、BT通信に異常が発生した場合には、各プロトコルレイヤを解析して、どのプロトコルレイヤで異常が発生しているかを解析する解析部15を備えている。周知のように上位プロトコルレイヤは、「Generic Access Profile(GAP)」、「Generic Attribute Profile (GATT)」、「セキュリティ管理者(Security Manager)」、「Attribute Protocol (ATT)」、「論理リンク制御・適応プロトコル(L2CAP)」、等である。また、下位プロトコルレイヤは、「リンクレイヤ」、「物理レイヤ」等である。
【0018】
解析部15は、後述するように、BT通信が遮断する等の異常が発生した場合に、より上位のプロトコルレイヤから順に接続状態を確認し、どのプロトコルレイヤで異常が発生しているかを解析する。解析結果を通信制御回路13に出力する。なお、本実施形態では第1無線通信方式としてBT通信(ブルートゥース通信)を例に挙げて説明するが、Wi-Fi通信等の他の通信方式を用いることも可能である。
【0019】
図1に示すIVI装置2は、コントローラ21と、オーディオ制御回路22と、ディスプレイ23と、スピーカ24、及びマイクロフォン25、を備えている。
【0020】
マイクロフォン25は、車室内の乗員が発話した音声を電気信号に変換してコントローラ21に出力する。
スピーカ24は、携帯機3より送信された音声データ、音楽データを出力する。
オーディオ制御回路22は、マイクロフォン25より入力された音声データ、BT通信機1より送信された音声データや音楽データを、スピーカ24に出力可能なデータに変換する制御を行う。
【0021】
コントローラ21は、IVI装置2を総括的に制御する。特に、BT通信機1で受信した音声データ、音楽データ、SNS(social networking service)データ等の各種のデータを取得し、オーディオ制御回路22、スピーカ24、ディスプレイ23に出力する制御を行う。また、マイクロフォン25より出力された音声データをBT通信機1に出力する制御を行う。
【0022】
従って、車両の乗員は、マイクロフォン25に向かって発話し、スピーカ24より出力される音声データを聞き取ることにより、携帯機3との間のハンズフリーの通話が可能となる。更に、携帯機3より送信される音楽データをスピーカ24にて出力することにより、車室内で音楽を聴くことができる。また、ディスプレイ23を用いて、SNSを行うことができる。
【0023】
IVI装置2は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備えるマイクロコンピュータを用いて実現可能である。マイクロコンピュータをコントローラ21、オーディオ制御回路22として機能させるためのコンピュータプログラムを、マイクロコンピュータにインストールして実行する。これにより、マイクロコンピュータは、コントローラ21、オーディオ制御回路22として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによってIVI装置2を実現する例を示すが、各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、IVI装置2を構成することも可能である。更に、IVI装置2は、車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)等と兼用してもよい。
【0024】
(本実施形態の作用の説明)
次に、上述のように構成された本実施形態に係る車載機100(無線通信装置)の処理手順を、図2図4に示すフローチャートを参照して説明する。図2は全体処理を示すフローチャート、図3図2に示す排他処理の処理手順を示すフローチャート、図4図2に示す再接続処理を示すフローチャートである。
【0025】
車室内にスマートフォン等の携帯機3が持ち込まれると、図2に示すように、携帯機3と車載機100との間で、任意のプロファイルでのBT通信が行われる(ステップa1)。初期的には、携帯機3と車載機100とのBT通信を開始する際に、乗員による登録操作が行われる。登録操作により、携帯機3のIDが車載機100の通信制御回路13に設けられるメモリ13bに登録される。更に、携帯機3の認証情報(パスキー等)が設定され、IDとリンクしてメモリ13bに登録される。
【0026】
携帯機3のIDの登録操作が終了すると、携帯機3と車載機100との間でBT通信が行われる。IVI装置2は、BT通信を実行することにより、例えばハンズフリーの通話、音楽の再生、SNS、等の各種のアプリケーションを車載機100にて作動させることができる(ステップS11)。この際、通信制御回路13のメモリ13bには、携帯機3との間でBT通信を行ったことを示す通信履歴が登録される。
【0027】
また、何らかの原因によりBT通信が遮断すると(ステップa2)、IVI装置2ではBT通信の遮断が検出される(ステップS12)。
【0028】
IVI装置2は、携帯機3或いは車載機100に状態の変化が生じているか否かを判断する(ステップS13)。前述したように、状態の変化とは、例えば、携帯機3が車室内から外部へ持ち出された場合、乗員の操作でBT通信の遮断が操作された場合、電源がオフとされた場合等、乗員の操作に起因して生じる変化である。そして、状態の変化が生じている場合には(ステップS13でYES)、本処理を終了する。即ち、乗員の操作に起因してBT通信が遮断された場合には、BT通信を再接続する必要はないので、再接続処理を実施しない。
【0029】
状態の変化がないと判断された場合には(ステップS13でNO)、BT通信は何らかの原因で不作為に遮断したものと判断し、IVI装置2は、異常遮断が発生したことを報知する(ステップS14)。具体的には、図1に示すディスプレイ23に「BT通信が遮断されました」等の文字を表示したり、スピーカ24により音声出力することにより、乗員に報知する。
【0030】
更に、IVI装置2は、異常遮断の通知指令を出力する(ステップS15)。BTLE通信により、携帯機3の接続チェックを行う(ステップa4)。
【0031】
携帯機3より応答信号が送信された場合には(ステップa5)、IVI装置2は、携帯機3からの応答を確認する(ステップS16)。携帯機3からの応答信号が受信されない場合には(ステップS17でNO)、BTLE通信による通信が不能になっているので、乗員に携帯機3の再登録を促す。即ち、BT通信、及びBTLE通信の双方で通信ができない状態になると、再接続することが難しいので、携帯機3の再登録を行うように乗員に報知する。即ち、再登録を促す情報を提示する。なお、「提示」とは、画像の表示、音声出力、振動などの乗員に知らせる動作を示す。例えば、図5に示すように、「通信が遮断されました。再登録を実施してください。」等の再登録を促す情報をディスプレイ23に表示する(ステップS18)。
また、携帯機3の認証情報(例えば、パスキー等)が消失、破損等の理由によりメモリ13bに登録されていない場合についても同様に、再登録を促す情報を提示する。
【0032】
一方、応答信号が受信された場合には(ステップS17でYES)、ステップS19において、IVI装置2は、排他処理を実施する。
【0033】
以下、図3に示すフローチャートを参照して排他処理の手順について説明する。初めに、ステップS31において、IVI装置2は、BTLE通信よる接続チェックに対して応答のあった携帯機が1つであるか否かを判断する。例えば、車室内に複数の乗員が存在し、各乗員がそれぞれスマートフォン等の携帯機を所持している場合には、複数の携帯機からの応答が発生する。
【0034】
1つの携帯機である場合には(ステップS31でYES)、ステップS32において、IVI装置2は、その携帯機を通信対象として設定する。
【0035】
一方、車室内に携帯機が複数存在する場合(1つの携帯機でない場合)には(ステップS31でNO)、ステップS33において、IVI装置2は、複数の携帯機の中から直近に接続した携帯機を検索する。この操作は、通信制御回路13のメモリ13bに登録されている通信履歴から検索することが可能である。ある携帯機3(これを、携帯機3Aとする)でBT通信しているときに、何らかの原因によるBT通信が遮断した場合には、この携帯機3Aが直近に接続した携帯機として検索される。そして、ステップS34において、IVI装置2は、検索した携帯機3Aを通信対象として設定する。
【0036】
その後、図2のステップS20において、IVI装置2はステップS19の排他処理で通信対象として設定した携帯機3Aを特定する。
ステップS21において、この携帯機3Aに対して再接続処理を実行する。以下、図4に示すフローチャートを参照して、再接続処理の詳細な手順について説明する。
【0037】
ステップS51において、IVI装置2は、BTモジュール14に設定されている複数のプロトコルレイヤの中から、異常が発生しているプロトコルレイヤを検出し、異常が発生しているプロトコルレイヤが検出された場合には、このプロトコルレイヤでの再接続を行う。
【0038】
ステップS52において、BT通信が再接続されたか否かを判断する。そして、BT通信が再接続された場合には(ステップS52でYES)、本処理を終了する。
【0039】
一方、BT通信が再接続されない場合には(ステップS52でNO)、一段階だけ下位のプロトコルレイヤでの再接続を試行する。ステップS54において、BT通信が再接続されたか否かを判断し、再接続された場合には(ステップS54でYES)、本処理を終了する。再接続されない場合には(ステップS54でNO)、ステップS55において、最下位のプロトコルレイヤであるか否かを判断し、最下位のプロトコルレイヤでない場合には(ステップS55でNO)、ステップS53に処理を戻す。従って、一段階ずつ下位のプロトコルレイヤに切り替えながら再接続を試行し、接続された場合には再接続処理を終了する。
【0040】
最下位のプロトコルレイヤである場合には(ステップS55でYES)、プロトコルレイヤでの再接続ができないものと判断し、ステップS56において、IVI装置2は、携帯機3の再登録指令を出力する。
【0041】
なお、上記したステップS51の処理において、異常の発生を検出したプロトコルレイヤが不明である場合には、最上位のプロトコルレイヤでの再接続を試行し、その後、ステップS52以降の処理を実施する。
【0042】
再接続が試行されると、図2のステップa6に示すように、BT通信機1は、BTLE通信により、携帯機3に再接続指令を出力する。ステップa7において、携帯機3より再接続要求が出力されると、ステップS22においてIVI装置2は、携帯機3とBT通信機1との間の再接続を行う。そして、ステップa8において、BT通信が再開されることになる。
【0043】
また、図4のステップS56において、再登録指令が出力された場合には、携帯機3はBT通信機1に対して改めて登録処理を実施し、BT通信を行う。
【0044】
こうして、携帯機3とBT通信機1との間のBT通信が遮断された場合でも、再接続が行われるか、或いは再登録の操作を促すことが提示されるので、乗員に不安感を与えることを回避できるのである。
【0045】
(本実施形態の効果の説明)
本実施形態に係る車載機100(無線通信装置)では、以下に示す効果を達成できる。
(1)
BT通信(第1の通信方式)による無線通信が遮断した場合には、BTLE通信(第2の通信方式)により、遮断の原因が推定されるので、例えば携帯機3を用いてハンズフリーによる通話が行われている途中に通信が遮断された場合でも、再接続により通話を継続することができる。
【0046】
(2)
BT通信に遮断が発生した場合には、BTLE通信により状態の変化を検出し、状態の変化がない場合に、遮断の原因が携帯機3と車載機100との間に通信異常が発生しているものと判断するので、例えば、乗員が携帯機3を車外に持ち出した場合や、故意に通信を遮断した場合等に、異常と判断することを防止できる。
【0047】
(3)
BT通信が遮断された場合で、携帯機3と車載機100との間に通信異常が発生していると判断された場合には、異常が発生したプロトコルレイヤで再接続を実施し、再接続されない場合には、下位のプロトコルレイヤに順次変更して再接続を実施するので、再接続に要する処理を軽減できる。このため、BT通信を根底から全てやり直す必要がないので、再接続を短時間に行うことが可能となる。
【0048】
(4)
BT通信(第1の通信方式)で無線通信した携帯機3の情報をメモリ13bに通信履歴として登録し、再接続を試行する携帯機3が通信履歴として登録されている場合に再接続を行うので、無関係な携帯機との間で誤って再接続することを防止できる。
【0049】
(5)
再接続を試行しても再接続できない場合には、携帯機3を再登録することを促す情報が携帯機3に画面表示や音声等により提示されるので、通信が突然遮断したことについての不安感を軽減することができる。
【0050】
(6)
携帯機3の認証情報(例えば、パスキー等)が消失、破損することに起因して再接続ができない場合でも、携帯機3を再登録する情報が携帯機3に画面表示や音声等により提示されるので、速やかに再接続の操作を行うことが可能となる。
【0051】
(7)
車室内(無線通信装置から所定の範囲内)に複数の携帯機が存在する場合には、前回の通信終了時にBT通信した携帯機を他の携帯機よりも優先的に再接続するので、BT通信が遮断され、その後、異なる携帯機と再接続するという問題の発生を回避することができる。
【0052】
(8)
BT通信の遮断を検出した場合には、遮断の原因が携帯機3に提示されるので、携帯機3を所持する乗員は遮断の原因を認識でき、乗員に不安感を与えることを回避することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0054】
1 BT通信機
2 IVI装置
3 携帯機
11 BT通信回路(第1無線通信回路)
12 低電力通信回路(第2無線通信回路)
13 通信制御回路(無線通信監視回路)
13a 遮断推定回路
13b メモリ
14 BTモジュール
15 解析部
21 コントローラ
22 オーディオ制御回路
23 ディスプレイ
24 スピーカ
25 マイクロフォン
100 車載機(無線通信装置)
図1
図2
図3
図4
図5