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特許7117133光サブアセンブリ及びその製造方法並びに光モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】光サブアセンブリ及びその製造方法並びに光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20220804BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20220804BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20220804BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
G02B6/42
H01S5/022
H01L31/02 D
G02B6/32
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018078336
(22)【出願日】2018-04-16
(65)【公開番号】P2019184941
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 康信
(72)【発明者】
【氏名】田中 滋久
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-003648(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0135618(US,A1)
【文献】国際公開第2014/030563(WO,A1)
【文献】特開2015-194689(JP,A)
【文献】登録実用新案第3193150(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を伝搬するための光導波路と、
前記光信号及び電気信号を少なくとも一方から他方に変換するための光電素子と、
前記光電素子に対向するレンズ及び前記光電素子とは反対側のミラーを一体的に有するレンズ素子と、
上面及び下面を有し、前記上面は前記下面に対して、3°以上10°以下の第1角度で傾斜し、前記レンズ素子が前記上面に搭載され、前記光導波路及び前記レンズ素子が固定された支持体と、
記光電素子及び前記支持体が固定された基板と、
を有し、
前記レンズ素子は、前記支持体の前記下面に対して前記第1角度で傾斜し、
前記光導波路の端面は、前記レンズ素子の光軸に直交する面に対して第2角度で斜めになっていることを特徴とする光サブアセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載された光サブアセンブリであって、
前記レンズ素子と前記支持体は、異なる光学的物性を有する材料で構成されていることを特徴とする光サブアセンブリ。
【請求項3】
請求項2に記載された光サブアセンブリであって、
前記レンズ素子は、前記光信号の光に対して70%以上の透過率を有する樹脂からなり、
前記支持体は、紫外光に対して60%以上の透過率を有する樹脂からなることを特徴とする光サブアセンブリ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された光サブアセンブリであって、
前記基板は、配線層と、前記配線層を覆うレジスト層と、を含み、
前記レジスト層は、前記支持体との対向領域の少なくとも一部を避けて設けられていることを特徴とする光サブアセンブリ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載された光サブアセンブリであって、
前記支持体は、前記基板に対向する側に凹部を有し、
前記光電素子は、前記凹部の内側に配置されることを特徴とする光サブアセンブリ。
【請求項6】
請求項5に記載された光サブアセンブリであって、
前記凹部の周囲で前記支持体と前記基板の間に介在する接着層をさらに有することを特徴とする光サブアセンブリ。
【請求項7】
請求項6に記載された光サブアセンブリであって、
前記基板、前記支持体、前記接着層及び前記レンズ素子によって、前記凹部が閉空間になることを特徴とする光サブアセンブリ。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載された光サブアセンブリであって、
前記凹部の内側に配置される集積回路チップをさらに有することを特徴とする光サブアセンブリ。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載された光サブアセンブリであって、
前記光導波路及び前記レンズ素子の少なくとも一方と前記支持体は、相互のアライメントマークを有し、
前記支持体と前記基板は、相互のアライメントマークを有しないことを特徴とする光サブアセンブリ。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1項に記載された光サブアセンブリを、光送信サブアセンブリ及び光受信サブアセンブリのそれぞれとして有する光モジュールであって、
メイン基板を備え、
前記光送信サブアセンブリ及び前記光受信サブアセンブリは、前記メイン基板に搭載されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項11】
光信号を伝搬するための光導波路を支持体に固定する工程と、
前記光信号及び電気信号を少なくとも一方から他方に変換するための光電素子を基板に固定する工程と、
前記光電素子に対向するレンズ及び前記光電素子とは反対側のミラーを一体的に有するレンズ素子を前記支持体の上面に固定する工程と、
記光導波路及び前記レンズ素子が固定された前記支持体を、前記光電素子が固定された前記基板に固定する工程と、
を含み、
前記支持体の前記上面は、前記支持体の下面に対して、3°以上10°以下の第1角度で傾斜し、
前記レンズ素子は、前記支持体の前記下面に対して前記第1角度で傾斜し、
前記光導波路の端面は、前記レンズ素子の光軸に直交する面に対して第2角度で斜めになっており、
前記光導波路及び前記レンズ素子の少なくとも一方と前記支持体との位置合わせをパッシブアライメントによって行い、
前記支持体及び前記基板の位置合わせをアクティブアライメントによって行うことを特徴とする光サブアセンブリの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載された光サブアセンブリの製造方法であって、
前記支持体を前記基板に固定する工程は、前記支持体及び前記基板の間に紫外線硬化型接着剤を設け、前記紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射することを含むことを特徴とする光サブアセンブリの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載された光サブアセンブリの製造方法であって、
前記支持体は、紫外光に対して60%以上の透過率を有する樹脂からなり、
前記紫外線の照射を、前記支持体を透過させて行うことを特徴とする光サブアセンブリの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光サブアセンブリ及びその製造方法並びに光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光モジュールの小型化・低コスト化が要求されている。特許文献1には、入力/出力光を反射するミラー及び集光するレンズなどの部品が一体化された光サブアセンブリが開示されている。特許文献2には、金属製のケース内に半導体光素子を収納した光モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5714229号公報
【文献】特開2017-135194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、マークを用いて位置合わせを行うパッシブアライメントによって部品を搭載することが開示されている。パッシブアライメントは製造コストを下げることができるが、特許文献1では、光ファイバとレンズとの位置が固定されて調整することができないので、部品公差の吸収ができない。
【0005】
特許文献2には、部品の搭載時に光学特性をモニタしながら光軸調整を行うアクティブアライメントが開示されている。アクティブアライメントは、安定した高い光結合特性が得られるが、工程数が増大し、難易度が高いので、製造コストが高くなる。
【0006】
本発明は、部品位置の容易な調整を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る光サブアセンブリは、光信号を伝搬するための光導波路と、レンズ及びミラーを一体的に有するレンズ素子と、前記光導波路及び前記レンズ素子が固定された支持体と、前記光信号及び電気信号を少なくとも一方から他方に変換するための光電素子と、前記光電素子及び前記支持体が固定された基板と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、レンズ素子は、支持体に固定してから光電素子との位置合わせをすることができるので、パッシブアライメント及びアクティブアライメントを組み合わせて、光電素子とレンズ素子との位置を容易に調整することができる。
【0009】
(2)(1)に記載された光サブアセンブリにおいて、前記レンズ素子と前記支持体は、異なる光学的物性を有する材料で構成されていることを特徴としてもよい。
【0010】
(3)(2)に記載された光サブアセンブリにおいて、前記レンズ素子は、前記光信号の光に対して70%以上の透過率を有する樹脂からなり、前記支持体は、紫外光に対して60%以上の透過率を有する樹脂からなることを特徴としてもよい。
【0011】
(4)(1)から(3)のいずれか1項に記載された光サブアセンブリにおいて、前記基板は、配線層と、前記配線層を覆うレジスト層と、を含み、前記レジスト層は、前記支持体との対向領域の少なくとも一部を避けて設けられていることを特徴としてもよい。
【0012】
(5)(1)から(4)のいずれか1項に記載された光サブアセンブリにおいて、前記支持体は、前記基板に対向する側に凹部を有し、前記光電素子は、前記凹部の内側に配置されることを特徴としてもよい。
【0013】
(6)(5)に記載された光サブアセンブリにおいて、前記凹部の周囲で前記支持体と前記基板の間に介在する接着層をさらに有することを特徴としてもよい。
【0014】
(7)(6)に記載された光サブアセンブリにおいて、前記基板、前記支持体、前記接着層及び前記レンズ素子によって、前記凹部が閉空間になることを特徴としてもよい。
【0015】
(8)(5)から(7)のいずれか1項に記載された光サブアセンブリにおいて、前記凹部の内側に配置される集積回路チップをさらに有することを特徴としてもよい。
【0016】
(9)(1)から(8)のいずれか1項に記載された光サブアセンブリにおいて、前記支持体は、前記基板に対向する下面と、前記レンズ素子が搭載される上面を有し、前記上面は、前記レンズ素子が傾斜して搭載されるように、前記下面に対して傾斜していることを特徴としてもよい。
【0017】
(10)(1)から(9)のいずれか1項に記載された光サブアセンブリにおいて、前記光導波路及び前記レンズ素子の少なくとも一方と前記支持体は、相互のアライメントマークを有し、前記支持体と前記基板は、相互のアライメントマークを有しないことを特徴としてもよい。
【0018】
(11)本発明に係る光モジュールは、(1)から(10)のいずれか1項に記載された光サブアセンブリを、光送信サブアセンブリ及び光受信サブアセンブリのそれぞれとして有する光モジュールにおいて、メイン基板を有し、前記光送信サブアセンブリ及び前記光受信サブアセンブリは、前記メイン基板に搭載されていることを特徴とする。
【0019】
(12)本発明に係る光サブアセンブリの製造方法は、光信号を伝搬するための光導波路を支持体に固定する工程と、レンズ及びミラーを一体的に有するレンズ素子を前記支持体に固定する工程と、前記光信号及び電気信号を少なくとも一方から他方に変換するための光電素子を基板に固定する工程と、前記光導波路及び前記レンズ素子が固定された前記支持体を、前記光電素子が固定された前記基板に固定する工程と、を含み、前記光導波路及び前記レンズ素子の少なくとも一方と前記支持体との位置合わせをパッシブアライメントによって行い、前記支持体及び前記基板の位置合わせをアクティブアライメントによって行うことを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、パッシブアライメント及びアクティブアライメントを組み合わせることで、光電素子とレンズ素子との位置を容易に調整することができる。
【0021】
(13)(12)に記載された光サブアセンブリの製造方法において、前記支持体を前記基板に固定する工程は、前記支持体及び前記基板の間に紫外線硬化型接着剤を設け、前記紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射することを含むことを特徴としてもよい。
【0022】
(14)(13)に記載された光サブアセンブリの製造方法において、前記支持体は、紫外光に対して60%以上の透過率を有する樹脂からなり、前記紫外線の照射を、前記支持体を透過させて行うことを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係る光サブアセンブリの概略斜視図である。
図2図1に示す光サブアセンブリのII-II線断面図である。
図3図1に示す基板の斜視図である。
図4】レンズ素子の斜視図である。
図5】支持体を斜め下から見た斜視図である。
図6】本実施形態に係る光サブアセンブリの製造方法を説明するための図である。
図7】本実施形態に係る光サブアセンブリの製造方法を説明するための図である。
図8】本実施形態に係る光サブアセンブリの製造方法を説明するための図である。
図9】実施形態の変形例に係る光サブアセンブリの断面図である。
図10】本実施形態に係る光モジュールの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。全図において同一の符号を付した部材は同一又は同等の機能を有するものであり、その繰り返しの説明を省略する。なお、図形の大きさは倍率に必ずしも一致するものではない。
【0025】
図1は、本実施形態に係る光サブアセンブリの概略斜視図である。図2は、図1に示す光サブアセンブリのII-II線断面図である。
【0026】
光サブアセンブリは、光電素子10を有する。光電素子10は、光信号及び電気信号を少なくとも一方から他方に変換する。光サブアセンブリは、例えば、発光素子を備える光送信サブアセンブリ(TOSA: Transmitter Optical Sub-Assembly)又は受光素子を備える光受信サブアセンブリ(ROSA: Receiver Optical Sub-Assembly)であり、発光素子及び受光素子の両方を備えることもある。
【0027】
光電素子10の隣に、これを駆動、制御、増幅等を行うための集積回路チップ12がある。集積回路チップ12及び光電素子10はワイヤ14によって電気的に接続されている。多チャンネル(例えば4チャンネル)の光電素子10を例に挙げると、各チャンネルに対応してワイヤ14が設けられる。光送信サブアセンブリでは、集積回路チップ12は、電気信号を出力するとともに光電素子10を駆動するためのバイアス電流を出力する機能を備えたレーザドライバ回路を備える。光受信サブアセンブリでは、光電素子10からの電気信号を増幅する機能を備えたトランスインピーダンス増幅回路を備える。
【0028】
光電素子10及び集積回路チップ12は、基板16に搭載(固定)されている。光電素子10及び集積回路チップ12は、それぞれの電極面が上部を向くように搭載(フェースアップ)してもよいが、少なくとも一方は、電極面が下向きになるようにフリップチップ(フェースダウン)で実装されてもよい。
【0029】
図3は、図1に示す基板16の斜視図である。基板16は、多層ビルドアップ基板であり、図2に示すように、ガラスエポキシ樹脂などの有機材料かからなるコア層18と、その上下に積層するプリプレグ層20を含む。基板16は、配線パターンを構成する配線層22と、配線層22を覆って保護するためのレジスト層24を含む。レジスト層24は、後述する支持体34との対向領域の少なくとも一部を避けて設けられる。
【0030】
光サブアセンブリは、光信号を伝搬するための光導波路26を有する。光導波路26(例えば光ファイバ)の先端部にはレセプタクル28が取り付けられている。複数の光導波路26が1つのレセプタクル28で連結されている。光導波路26は、レンズ素子30を介して、光電素子10と光学的に接続される。
【0031】
レンズ素子30は、レンズ31及びミラー33を一体的に有する。レンズ素子30は、光電素子10と光導波路26の間に配置される。レンズ31は光信号の光をコリメート又は集光し、ミラー33は光信号の光路を変換する。光電素子10の発光部または受光部の直上にレンズ31が位置する。例えば、レンズ素子30とミラー33の間の光路は基板16の表面に対して垂直であり、レンズ素子30と光導波路26の間の光路は基板16の表面に平行である。レンズ素子30は、光信号の光(波長:0.85~1.55μm)に対して70%以上の透過率を有する樹脂(例えばポリエーテルイミド樹脂(PEI))からなることが好ましい。
【0032】
図4は、レンズ素子30の斜視図である。レンズ素子30の側面及び底面のそれぞれに、多チャンネルに対応する複数のレンズ31が並列している。レンズ素子30は、レンズ31及びミラー33の相対位置精度を良くするために、金型を用いたモールディングなどで一体成形されていることが望ましい。レンズ素子31は、光の入射側及び出射側それぞれにレンズ31を設ける2枚レンズ構成に限らず、側面または底面のどちらか一方にのみレンズ31を有する構成であってもよい。レンズ素子30は、底面に、レンズ31が並ぶ方向で複数のレンズ31の両隣に、ガイドピン32を有する。ガイドピン32は、支持体34との位置決めに使用される。
【0033】
光サブアセンブリは、光導波路26及びレンズ素子30が固定された支持体34を有する。支持体34は、レンズ素子30のガイドピン32を挿入するガイド穴36(図6)を有する。支持体34は、紫外光(波長:200~400nm程度)に対して60%以上の透過率を有する樹脂(例えばポリカーボネート樹脂)からなることが好ましい。支持体34は、レンズ素子30とは異なる光学的物性を有する材料で構成されており、要求に応じた材料が選択される。支持体34は基板16に固定されている。支持体34と基板16は、相互のアライメントマークを有しない。両者の固定は、接着層38によってなされている。接着層38は、基板16に設けられたレジスト層24の少なくとも一部との接触を避けており、これにより、接着力が向上する。
【0034】
図5は、支持体34を斜め下から見た斜視図である。支持体34は、基板16に対向する側に凹部40を有する。光電素子10は、支持体34の凹部40の内側に配置される(図2)。集積回路チップ12も凹部40の内側に配置されている。凹部40の周囲で支持体34と基板16の間に接着層38が介在する。基板16の表面において、レンズ素子30が搭載される領域の少なくとも一部からレジスト層24が除去されているので、レンズ素子30と基板16との接着強度が大きくなるとともに、環境温度の変動による接着層38の膨張収縮によってレジスト層24が剥離するといった不良を回避することが出来る。
【0035】
基板16、支持体34、接着層38及びレンズ素子30によって、凹部40が閉空間になる。光電素子10が閉空間に簡易的に封止されるので、外部からのゴミや埃、水滴等の異物の侵入による光路を妨げや光結合効率の劣化を防止することができる。
【0036】
本実施形態によれば、レンズ素子30は、支持体34に固定してから光電素子10との位置合わせをすることができるので、パッシブアライメント及びアクティブアライメントを組み合わせて、光電素子10とレンズ素子30との位置を容易に調整することができる。また、小型化を図るとともに安価な光サブアセンブリを得ることが出来る。
【0037】
図6図8は、本実施形態に係る光サブアセンブリの製造方法を説明するための図である。例えば、図6に示すように、光導波路26を支持体34に固定する。具体的には、支持体34に、光導波路26(光ファイバ)付きのレセプタクル28を固定する。レセプタクル28は、支持体34に設けたアライメントマーク42を観察しながら、所定の位置に固定する。また、レンズ素子30を支持体34に固定する。レンズ素子30は、ガイドピン32を支持体34に設けたガイド穴36に挿入し、勘合することで位置決めを行う。光導波路26及びレンズ素子30の少なくとも一方と支持体34は、相互のアライメントマークを有する。光導波路26及びレンズ素子30の少なくとも一方と支持体34との位置合わせは、パッシブアライメントによって行う。
【0038】
図7に示すように、光電素子10を基板16に固定する。例えば、基板16に光電素子10と集積回路チップ12をそれぞれ近接させて実装する。これらの実装方法は、フェースアップ又はフリップチップのどちらでも良い。また、光電素子10と集積回路チップ12をダイボンド実装した後に、それぞれの電極パッド(図示せず)をワイヤ14や半田ボールなどで電気的に接続する(図8)。
【0039】
図8に示すように、光導波路26及びレンズ素子30が固定された支持体34を、光電素子10が固定された基板16に固定する。支持体34及び基板16の位置合わせは、アクティブアライメントによって行う。例えば、支持体34が載置される領域に対応して、基板16に紫外線硬化型接着剤44を塗布しておく。紫外線硬化型接着剤44は、紫外線が照射するまで硬化が抑えられるので、塗布した後でも支持体34の位置調整が可能になる。
【0040】
例えば、光受信サブアセンブリの製造プロセスでは、光導波路26内に光信号S1を入力し、レセプタクル28およびレンズ素子30を介して、光電素子10(受光素子)の受光部に光を入力し、光電変換された後の集積回路チップ12から出力される電気信号S2をモニタしながら、出力値がすべてのチャンネルで最大になるようにXYZのそれぞれの方向で光軸合わせを行う。
【0041】
本実施形態によれば、パッシブアライメント及びアクティブアライメントを組み合わせることで、光電素子10とレンズ素子30との位置を容易に調整することができる。位置合わせは、支持体34及び基板16の間に紫外線硬化型接着剤44を介在させて行う。
【0042】
その後、紫外線硬化型接着剤44に紫外線を照射する。支持体34は、紫外光に対して60%以上の透過率を有する樹脂からなるので、紫外線の照射を、支持体34を透過させて行うことができる。
【0043】
一般的に紫外線の透過率が高い材料は光通信用信号の波長帯(0.85~1.55μm)に対して透過率は高くないため、伝搬光の損失が大きくなってしまうので、レンズ素子30には光信波長号の透過率の高い材料を使用する。一方で、支持体34には、紫外線の透過率が高い材料を使用する。つまり、レンズ素子30と支持体34とで材料を使い分けている。これにより、安定した高い光結合特性を得る効果と組立工程数および製造コストを低減する効果を両立している。
【0044】
図9は、実施形態の変形例に係る光サブアセンブリの断面図である。この例では、支持体134は、基板16に対向する下面134aと、レンズ素子30が搭載される上面134bを有する。上面134bは、レンズ素子30が傾斜して搭載されるように、下面134aに対して傾斜(傾斜角θ)している。また、上面134bにはレセプタクル128が傾斜して搭載される。
【0045】
一般的に、空間に光を伝搬させる場合、空気と部品媒体の屈折率差によって光の反射が生じ、その反射光が光素子または光ファイバに戻ることで光素子の動作が不安定となり、ノイズが生じる。特にシングルモードの光学系においては、上記問題が顕著化するため、その対策として、部品の光入出射表面に反射防止(AR: Anti-Reflection)膜を施す。しかしながら、AR膜を設けたとしても完全には戻り光を防止することは出来ない。
【0046】
本変形例では、レンズ素子30は、光が反射するとしても傾斜しているので、反射光が光電素子10と再結合しないようになっている。なお、傾斜角θは、信号光との光結合効率をなるべく高く得ることと、反射光の影響の抑制効果を考慮し、概ね3°以上10°以下とすることが望ましい。また、光導波路126の端面126aも、反射光防止のため、レンズ素子30の光軸に直交する面に対して斜め(傾斜角α)になっていることが望ましい。
【0047】
図10は、本実施形態に係る光モジュールの分解斜視図である。光モジュールは、上ケース46及び下ケースに48に収納されてパッケージングされた複数の光サブアセンブリ50を有する。詳細は、上述した光サブアセンブリと同じである。光モジュールは、光送信サブアセンブリ(TOSA: Transmitter Optical Sub-Assembly)50Aと、光受信サブアセンブリ(ROSA: Receiver Optical Sub-Assembly)50Bを備えるトランシーバ(光送受信モジュール)である。
【0048】
光モジュールは、外部のホスト装置との電気通信信号(高周波信号)のやり取りを行う。ホスト装置から入力される電気信号は、信号変換処理が施されたのち、光サブアセンブリ(TOSA)50Aに入力され、光信号に変換されて出力される。一方、光サブアセンブリ(ROSA)50Bに入力される光信号は、電気信号に変換され、増幅などの処理がされて外部のホスト装置へ出力される。
【0049】
光送信サブアセンブリ50A及び光受信サブアセンブリ50Bは、メイン基板116を共有する。メイン基板116には、信号処理用の集積回路チップ112が搭載されている。メイン基板116の一方の端部には、駆動バイアスや電気信号を入出力するための電気的インターフェースとして端子52が設けられている。メイン基板116の他方の端部には、光信号を入出力するための光学的インターフェースとして光コネクタ54が搭載されている。光コネクタ54に複数の光導波路26(光ファイバ)がまとめて接続されている。本実施形態によれば、上述した光サブアセンブリを有するので、小型化が図られるとともに、安価な光トランシーバを得ることが出来る。なお、光送信サブアセンブリ50A及び光受信サブアセンブリ50Bの各部品は、基板16を用いずにメイン基板116に直接搭載されていてもよい。
【0050】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 光電素子、12 集積回路チップ、14 ワイヤ、16 基板、18 コア層、20 プリプレグ層、22 配線層、24 レジスト層、26 光導波路、28 レセプタクル、30 レンズ素子、31 レンズ、32 ガイドピン、33 ミラー、34 支持体、36 ガイド穴、38 接着層、40 凹部、42 アライメントマーク、44 紫外線硬化型接着剤、46 上ケース、48 下ケース、50 光サブアセンブリ、50A 光送信サブアセンブリ、50B 光受信サブアセンブリ、52 端子、54 光コネクタ、112 集積回路チップ、116 メイン基板、126 光導波路、126a 端面、128 レセプタクル、134 支持体、134a 下面、134b 上面。

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