(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】アルカリ電池
(51)【国際特許分類】
H01M 6/08 20060101AFI20220804BHJP
H01M 50/186 20210101ALI20220804BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20220804BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20220804BHJP
H01M 50/46 20210101ALN20220804BHJP
H01M 4/06 20060101ALN20220804BHJP
H01M 50/184 20210101ALN20220804BHJP
【FI】
H01M6/08 A
H01M50/186
H01M50/586
H01M50/591
H01M50/46
H01M4/06 D
H01M50/184 D
(21)【出願番号】P 2018085707
(22)【出願日】2018-04-26
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】野上 武男
(72)【発明者】
【氏名】國谷 繁之
(72)【発明者】
【氏名】夏目 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】安西 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄也
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-161025(JP,A)
【文献】特開平08-077987(JP,A)
【文献】特開平09-106805(JP,A)
【文献】特開平08-148157(JP,A)
【文献】特開2003-017078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 6/00- 6/22
H01M50/10-50/198
H01M50/40-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方を底部とする有底円筒状の電池缶内に、円環状の正極合剤と、前記正極合剤の内側に配置される有底円筒状のセパレーターと、前記セパレーターの内側に配置される負極ゲルとが封入されてなるアルカリ電池であって、
前記円環状の正極合剤は、上端面の内周側が
円環状に切り欠かれてなる凹部を備え、
前記セパレーターの外面と前記凹部の内面とによって形成された溝状の領域に、ペースト状のシール剤が前記セパレーターの外周側の側面に接する
ように配置されている、
ことを特徴とするアルカリ電池。
【請求項2】
請求項
1に記載のアルカリ電池であって、前記凹部は、前記円環状の正極合剤の外周側から内周側に向かって下方に傾斜する形状に形成されていることを特徴とするアルカリ電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
図1Aは、一般的なLR6型の円筒形アルカリ電池(以下、アルカリ電池101とも言う)の構造を示しており、この
図1Aでは、円筒軸100の方向を上下(縦)方向としたときの縦断面図を示している。図示したように、アルカリ電池101は、有底円筒状の金属製電池缶2、環状に成形された正極合剤3、この正極合剤3の内側に配設された有底円筒状のセパレーター4、亜鉛合金を含んでセパレーター4の内側に充填される負極ゲル5、この負極ゲル5中に挿入された棒状の金属からなる負極集電子6、皿状の金属製負極端子板7、樹脂からなる封口ガスケット8などにより構成される。この構造において、正極合剤3、セパレーター4、負極ゲル5が、電解液の存在下でアルカリ電池101の発電要素を形成する。なお、以下では、電池缶2の底部側を下方として上下方向を規定することとする。
【0003】
電池缶2は、電池ケースを兼ねるとともに、正極合剤3に直接接触することにより、正極集電体として機能する。この電池缶2の底面には正極端子21が形成されている。皿状の負極端子板7は、フランジ状の縁がある皿状で、皿を伏せたように底面を上にした状態で電池缶2の開口に封口ガスケット8を介してかしめられている。
【0004】
負極ゲル5中に挿入された棒状の負極集電子6は、その上端が皿状の負極端子板7の下面7dに溶接されることで立設固定されている。なお、負極集電子6、負極端子板7および封口ガスケット8は封口体としてあらかじめ一体に組み合わせられている。アルカリ電池101を組み立てる際には、発電要素が収納された電池缶2の開口端側に封口体を挿入するとともに、この電池缶2の開口を内方に縮径加工する。それによって封口ガスケット8が電池缶2の開口縁部と負極端子板7におけるフランジ状の縁との間に挟持され、電池缶2が密閉状態で封口される。なお、セパレーター4の上端は封口ガスケット8の下面に当接している。それによって、電池缶2内における負極ゲル5の収納領域が閉塞され、アルカリ電池101を傾けた際に負極ゲル5が正極合剤3の収納領域に流入して内部短絡が発生するのを防止している。
【0005】
アルカリ電池101は、電池缶2内の圧力が異常に上昇した際に、その内圧をアルカリ電池の外方に解放する防爆安全機構を備えている。
図1Bに、この防爆安全機構の概略を示した。
図1Bは、アルカリ電池101における封口構造を示す図であり、ここでは、アルカリ電池101の上端側の縦断面を拡大図にして示している。封口ガスケット8は、表面に凹凸のある円盤の周囲に上方に立設する壁面(以下、外周部84)が巡るカップ状で、円盤の中心は、負極集電子6が圧入されるボス孔82を備えた円筒状のボス部81となっている。そして、防爆安全機構が作動していない状態では、ボス部81の外周から円盤の周縁に至る膜状の部分(以下、隔壁部83)が電池缶2における発電要素の収納空間を密閉している。
【0006】
封口ガスケット8の隔壁部83において、負極ゲル5に対面する領域には、ボス部81と同心円をなす溝状の薄肉部85が形成されている。図示した例では、ボス部81の外周に沿って薄肉部85が形成されている。そしてこの薄肉部85は、
図1Bにおいて、円筒軸100に対して紙面左方に示したように、電池缶2内の圧力が異常に上昇した際に封口ガスケット8の他の部位に先行して破断し、最終的に、その内圧の原因となったガスを負極端子板7に設けられた通気孔71を介して大気中に放出させる防爆安全機構として機能する。なお、アルカリ電池101の構造や材料、製造方法などについては以下の非特許文献1および2に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】電池便覧編集委員会編「電池便覧」、第3版、丸善株式会社、2001年2月、p.74-100
【文献】FDK株式会社、”アルカリ電池のできるまで”、[online]、[平成30年4月3日検索]、インターネット<URL:http://www.fdk.co.jp/denchi_club/denchi_story/arukari.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のアルカリ電池は、防爆安全機構として、封口ガスケットの隔壁部に薄肉部が形成されており、一次電池であるアルカリ電池が充電されるなどして電池缶内にガスが発生し、電池缶内が所定の圧力に達すると、この防爆安全機構が動作するように構成されている。しかし、薄肉部85の破断箇所は細いスリット状に開口するため、
図1Bにおいて、円筒軸100に対して紙面右方に示したように、放出ガスとともに移動した負極ゲル5によって破断箇所が閉鎖されてしまう場合がある。このような場合、負極ゲル5は行き場を失い、セパレーター4を破断して正極合剤3側に流出する可能性がある。その場合、負極ゲル5が正極合剤3に接触して内部短絡が発生し、アルカリ電池101が発熱する。
【0009】
そこで本発明は、防爆安全機構が作動した際に、負極ゲルがセパレーターを破断させることによって発生する内部短絡を防止することができるアルカリ電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、下方を底部とする有底円筒状の電池缶内に、円環状の正極合剤と、前記正極合剤の内側に配置される有底円筒状のセパレーターと、前記セパレーターの内側に配置される負極ゲルとが封入されてなるアルカリ電池であって、
前記円環状の正極合剤は、上端面の内周側が円環状に切り欠かれてなる凹部を備え、
前記セパレーターの外面と前記凹部の内面とによって形成された溝状の領域に、ペースト状のシール剤が前記セパレーターの外周側の側面に接するように配置されている、
ことを特徴とするアルカリ電池としている。
【0011】
前記凹部は、円環状の正極合剤の外周側から内周側に向かって下方に傾斜する形状に形成されているとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、防爆安全機構が作動した際に、負極ゲルがセパレーターを破断させることによって発生する内部短絡を防止することができるアルカリ電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】一般的なアルカリ電池101を示す図である。
【
図1B】アルカリ電池101における防爆安全機構の概略および問題点を説明するための図である。
【
図2】本発明の第1の実施例に係るアルカリ電池1aの負極側の構造を示す図である。
【
図3】本発明の第2の実施例に係るアルカリ電池1bの負極側の構造を示す図である。
【
図4】本発明の第3の実施例に係るアルカリ電池1cの負極側の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ以下で説明する。なお、説明に用いた以下の図面においては、同一又は類似の部分に同一の符号を付すことによって、重複する説明を省略することがある。また、図面によっては、説明の際に不要な符号を省略することがある。
【0015】
===従来の防爆安全機構の問題点===
上述したように、アルカリ電池101の防爆安全機構が作動した際、負極ゲル5がセパレーター4を破断する場合がある。この負極ゲル5がセパレーター4を破断する現象について本発明者が検討したところ、セパレーター4は、主に、外接する環状の正極合剤3の上端面の内周の縁に当たって破断することが判明した。
【0016】
そこで本発明者は、電池内の適所に絶縁性のシール剤を配置しておき、セパレーター4が破断した際に、そのシール剤で破断箇所を覆うことができれば、負極ゲル5と正極合剤3との接触に伴う内部短絡を防止できると考えた。そして、本発明者は、このような考察に基づき、シール剤の最適な配置などについて鋭意研究を重ね、本発明に想到した。
【0017】
===実施例===
<アルカリ電池1の構成>
まず、本発明の第1の実施例に係るアルカリ電池の構造について説明する。
図2は、本発明の第1の実施例に係るアルカリ電池1aの上端側を拡大した縦断面図である。
図2に示したように、第1の実施例に係るアルカリ電池1aの基本的な構造や構成は、
図1Aに示した一般的なアルカリ電池101と同様である。しかし、第1の実施例に係るアルカリ電池1aは、シール剤9が、正極合剤3の上端面の全面にわたって塗布されている。このシール剤9は、例えば、アルカリ電池(1,101)における封口ガスケット8の封止用部材として一般的な、ポリブテンおよびアスファルトを主成分とするペースト状のものであり、絶縁性を有する。そして、第1の実施例に係るアルカリ電池1aでは、
図3において、円筒軸100に対して紙面右方に示したように、セパレーター4が破断すると、負極ゲル5の流出経路を遮るようにシール剤9が配置されているため、破断面41が閉鎖される。それによって、負極ゲル5が正極合剤3側に流出せず、内部短絡の発生が防止される。
【0018】
シール剤9の配置状態は、上記実施例に限らない。
図3および
図4に、シール剤9の配置状態が異なる第2および第3の実施例に係るアルカリ電池(1b、1c)を示した。
図3および
図4は、それぞれ、第2および第3の実施例に係るアルカリ電池(1b、1c)の上端側の縦断面を拡大した図である。そして、これらのアルカリ電池(1b、1c)は、正極合剤(3a、3b)の上端面の内周側が切り欠かれて凹部(31a、31b)が形成されている。なお、正極合剤3aの上端面に凹部31aを形成するためには、例えば、凹部31aに対応する内面形状を有する金型を用いて正極合剤3aを圧縮成形すればよい。あるいは、従来のアルカリ電池101と同様に環状に成形された正極合剤3の上端面を切削加工してもよい。
【0019】
図3に示した第2の実施例に係るアルカリ電池1bでは、正極合剤3aの内周側が円環状に切り欠かれてなる凹部31aが形成されている。それによって、セパレーター4の外面と、当該凹部31aの内面とによって、セパレーター4を同心状に囲む矩形断面を有する溝状の領域が形成される。そして、凹部31aの内方にシール剤9が配置されている。
【0020】
図4に示した第3の実施例に係るアルカリ電池1cでは、正極合剤3bの上端面が、外周側から内周側に向けて下方に傾斜する斜面を形成するように切り欠かれ、三角形状の縦断面を有する凹部31bが形成されている。それによって、セパレーター4の外面と、当該凹部31bの内面とによって、セパレーター4を同心状に囲む三角形状の断面を有する溝状の領域が形成される。そして、凹部31bにシール剤9が充填されている。
【0021】
<性能評価>
次に、以上に説明したシール剤9を備えた第1、第2、および第3の実施例に係るアルカリ電池(1a、1b、1c)における内部短絡防止性能や放電性能を評価するために、シール剤9の有無やシール剤9の配置位置などが異なる各種LR6型アルカリ電池1をサンプルとして作製した。具体的には、シール剤9の有無、シール剤9の配置位置や配置状態、セパレーター4の坪量、およびセパレーター4の巻数が異なる各種LR6型アルカリ電池1を作製した。
【0022】
各サンプルのセパレーター4には、いずれも、セルロースおよびビニロンを主成分とした、上下高100mmの長方形の不織布を有底円筒状に巻回したものを用いた。なお、この不織布を一周分だけ円筒状に巻回したときの幅は16mmである。したがって、この不織布を二回巻回すれば、上下高100mm、幅32mmの不織布をセパレーター4として用いることになる。シール剤9の配置には、精密ノズルを備えた周知の液剤定量吐出装置(ディスペンサー)を用いた。そして、これらのサンプルの全個体に対し、内部短絡の有無、および放電性能の各項目について、評価試験を行った。なお、各項目の評価試験のそれぞれについて、同じ種類のサンプルを10個ずつ用意した。
【0023】
内部短絡の有無については、150mAの電流で充電し、電池缶2内にガスを発生させて電池内圧を上昇させる充電試験を行い、防爆安全機構を作動させた。そして、サンプルの表面に熱電対を接触させて、防爆安全機構が作動した後のさらなる温度上昇の有無を測定し、内部短絡の有無を判定した。
【0024】
放電性能については、終止電圧を1.05Vとして、1500mWにて2秒および650mWにて28秒の放電サイクルを1時間あたり10回繰り返す試験を行い、終止電圧に至るまでのサイクル数によって評価した。そして、各サンプルにおける10個の個体におけるサイクル数の平均値を求めた。
【0025】
以下の表1に各サンプルに対する性能評価試験の結果を示した。
【0026】
【表1】
表1において、サンプル7は、
図1に示した従来のアルカリ電池101である。サンプル1~4はシール剤9を備えたアルカリ電池1である。サンプル1とサンプル2は、第1の実施例に係るアルカリ電池1aと同様に、シール剤9が、正極合剤3の上端面の全面を覆うように配置されている。サンプル1は、50mgのシール剤9が配置され、サンプル2では25mgのシール剤9が配置されている。
【0027】
サンプル3は、第2の実施例に係るアルカリ電池1bと同様に、正極合剤3aの上端面の内周側が矩形状に切り欠かれてなる凹部31aを備え、その凹部31a内にシール剤9が配置されたものである。そして、その凹部31aの内方に25mgのシール剤9が配置されている。
【0028】
サンプル4は、第3の実施例に係るアルカリ電池1cと同様に、正極合剤3bの上端面が、外周側から内周に向かって下方に傾斜するように切り欠かれてなる三角形状の断面形状を有する凹部31bを備え、その凹部31b内にシール剤9が配置されたものである。そして、その凹部31aに25mgのシール剤9が配置されている。
【0029】
サンプル5と6は、シール剤9に代わる内部短絡対策が施されたアルカリ電池1である。サンプル5は、セパレーター4の坪量が他のサンプルよりも大きい。すなわち、サンプル5に用いたセパレーター4は、不織布の繊維量が他のサンプルのセパレーター4よりも多く、目が細かい。そのため、サンプル1~4、7に用いたセパレーター4よりも破断し難い。サンプル6は、セパレーター4の巻数が他のサンプルよりも多く、セパレーター4の厚さが他のサンプルよりも厚く、サンプル1~4、7に用いたセパレーター4よりも破断し難い。なお、サンプル6以外のサンプルのセパレーター4は、上記不織布を二回巻回したものを有底筒状にしたものである。サンプル6のセパレーター4は、上記不織布を3回巻回して有底円筒状にしたものである。
【0030】
表1に示した各評価試験の結果について、10個の個体の内、一個以上の個体に内部短絡が発生していれば内部短絡「あり」としている。放電性能についてはサンプル1を100としたときの相対値が示されている。表1に示したように、サンプル2と7とでは内部短絡が発生し、サンプル1および3~6では内部短絡が発生しなかった。サンプル1と2とでは、シール剤9の配置形状が同じであったにもかかわらず、シール剤9の量を25mgとしたサンプル2では内部短絡が発生した。したがって、第1の実施例に係るアルカリ電池1aのように、平坦な正極合剤3の上面にシール剤9を配置する場合は、シール剤9の量を適切に調整し、内部短絡を発生させないようにしておけばよい。一方、第2および第3の実施例に係るアルカリ電池(1b、1c)のように、正極合剤(3a、3b)の上端面に設けた凹部(31a、31b)内にシール剤9が配置されたサンプル3、4では、シール剤9の量が25mgであっても、内部短絡を防止することができた。すなわち、第2および第3の実施例に係るアルカリ電池(1b、1c)では、必要最小限のシール剤9の量で内部短絡を確実に防止することができる。これは、第2、第3の実施例に係るアルカリ電池(1b、1c)では、凹部(31a、31b)の深さにわたってシール剤9がセパレーター4の外面に接しているため、破断箇所を広い面積で覆うことができるためと考えることができる。なお、
図4に示した第3の実施例に係るアルカリ電池1cでは、凹部31bの底面が傾斜していることから、シール剤9に若干の流動性があれば、セパレーター4が破断した際、シール剤9が自重によって破断面41の方向へ移動し、より速やかに破断面41を閉塞する効果が期待できる。
【0031】
放電性能については、シール剤9による絶縁対策が施されたサンプル1~4では、従来のアルカリ電池101であるサンプル7と同等であった。すなわち、放電性能の劣化が認められなかった。一方、サンプル5と6とでは、内部短絡は発生しなかったが、放電性能はサンプル1の90%程度であった。これは、サンプル5では、従来よりも不織布の繊維量が多いセパレーター4を用いているため、サンプル6では、従来よりも不織布の巻数が多いセパレーター4を用いているため、他のサンプルに対して、正負極間のイオン伝導性が低下したと解釈できる。
【0032】
以上より、シール剤9を、少なくとも正極合剤3の上端側にセパレーター4に接するように配置することで、放電が安定的に行われ、内部短絡も防止できることがわかった。また、
図3、
図4に示した第2、第3の実施例に係るアルカリ電池(1b、1c)のように、正極合剤(3a、3b)の上端面に凹部(31a、31b)を形成することで、放電性能を維持しつつ、より少ない量のシール剤9で効果的に内部短絡を防止することができることがわかった。
【0033】
===その他の実施例===
なお、上述した第1~第3の実施例についての説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明が第1~第3の実施例によって限定されるものではない。本発明は、上記各実施例の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに本発明にはその等価物が含まれる。
【0034】
上記実施例におけるシール剤は、アルカリ電池の封止用部材として一般的な、ポリブテンおよびアスファルトを主成分とするペースト状のものであった。しかし、シール剤はこれに限定されず、絶縁性および流動性を有していれば種々のものが利用可能である。
【0035】
上記第2および第3の実施例において、正極合剤(3a、3b)上に設けられた凹部(31a、31b)の断面形状は、矩形状や三角形状であったが、もちろん、凹部の形状はこれらに限らない。凹部の断面形状は、正極合剤の内側にセパレーターが挿通されたときに、凹部の内面が、セパレーターの外周側の側面とともに、正極合剤の上端面の内周側に溝を形成することができる形状であればよい。すなわち、溝の内方に配置されたシール剤が、セパレーターの外面と接触する形状であればよい。
【0036】
表1に示したサンプル1~4におけるシール剤の塗布量は、LR6型のアルカリ電池の場合の量である。すなわち、シール剤の塗布量は、内部短絡の発生を抑止することができれば、アルカリ電池のサイズに応じて適宜増減させることができる。
【符号の説明】
【0037】
1,1a,1b,1c,101 アルカリ電池、2 電池缶、3,3a,3b 正極合剤、4 セパレーター、5 負極ゲル、6 負極集電子、7 負極端子板、8 封口ガスケット、9 シール剤、21 正極端子、31,31a,31b 凹部、41 破断面、71 通気孔、81 ボス部、82 ボス孔、83 隔壁部、84 外周部、85 薄肉部、100 円筒軸