(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】眼科用顕微鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20220804BHJP
A61B 3/12 20060101ALI20220804BHJP
A61B 3/13 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
A61B3/10 100
A61B3/12
A61B3/13
(21)【出願番号】P 2018090269
(22)【出願日】2018-05-08
【審査請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】P 2017167793
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100123858
【氏名又は名称】磯田 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】230115864
【氏名又は名称】永島 孝明
(74)【代理人】
【識別番号】100149168
【氏名又は名称】若山 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】福間 康文
(72)【発明者】
【氏名】大森 和宏
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-023584(JP,A)
【文献】特開平8-66421(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0092615(US,A1)
【文献】特開2015-205176(JP,A)
【文献】特開2012-213634(JP,A)
【文献】特開2017-012429(JP,A)
【文献】特表2015-519095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼について前眼部観察と後眼部観察とを切り替えて行う機能を備えた眼科用顕微鏡において、
前記被検眼よりも手前に第1の合焦点を有する観察光学系と、
前記観察光学系における対物レンズの前記被検眼側又は前記被検眼とは反対側の位置にセットでき、または当該位置からリリースできるレンズであって、セットしたときの合焦点を前記被検眼の前眼部位置である第2の合焦点に設定する対物補助レンズと、
前記第1の合焦点よりも前記被検眼側の位置にセットでき、または当該位置からリリースできるレンズであって、セットしたときの前記被検眼の水晶体を介した合焦点を前記被検眼の後眼部位置である第3の合焦点に設定する前置レンズと、
OCT測定光学系対物レンズを有するOCT測定光学系と、
を備え、
前記前眼部観察に際し、前記対物レンズと前記被検眼との位置関係を変更することなく前記対物補助レンズがセットされかつ前記前置レンズがリリースされ、
前記後眼部観察に際し、前記対物レンズと前記被検眼との位置関係を変更することなく前記前置レンズがセットされかつ前記対物補助レンズがリリースされ、
前記観察光学系は、円形レンズの一部が切除された形状の前記対物レンズを有し、
前記OCT測定光学系は、前記対物レンズの前記切除された部分に配置された前記OCT測定光学系対物レンズを有するとともに、前記被検眼よりも手前に第1の合焦点を持ち、かつ、OCT測定光の光路が前記対物補助レンズを通過するように構成され、
前記対物補助レンズがセットされ前記前置レンズがリリースされたときに、合焦点が前記被検眼の前眼部位置である第2の合焦点に設定されて前記前眼部のOCT測定が行われ、
前記前置レンズがセットされ前記対物補助レンズがリリースされたときに、合焦点が前記被検眼の後眼部位置である第3の合焦点に設定されて前記後眼部のOCT測定が行われる、
ことを特徴とする眼科用顕微鏡。
【請求項2】
前記OCT測定光学系は、さらに
OCT光源からの光を第1の光軸方向に導光する第1光学部材と、
前記第1の光軸方向に導光された光を前記第1の光軸方向に略直交する第2の光軸方向に導光する第1反射部材と、
前記第2の光軸方向に導光された光をリレーする第2光学部材と、
前記第2光学部材によりリレーされた光を前記第2の光軸方向に略直交する第3の光軸方向に導光する第2反射部材と、
を有し、
前記OCT測定光学系対物レンズは、前記第3の光軸方向上に配置され、前記第3の光軸方向に導光された光を前記被検眼の所定箇所に照射する
ことを特徴とする、請求項
1に記載の眼科用顕微鏡。
【請求項3】
前記対物補助レンズがセットされたときに前記前置レンズがリリースされ、前記前置レンズがセットされたときに前記対物補助レンズがリリースされる機構を備えた請求項1
又は2に記載の眼科用顕微鏡。
【請求項4】
前記対物補助レンズが凹レンズである、請求項1~
3のいずれか1項に記載の眼科用顕
微鏡。
【請求項5】
前記前置レンズを複数種類有し、それぞれの前記前置レンズに対応した複数種類の前記対物補助レンズを有する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の眼科用顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼について前眼部観察(例えば、角膜、前嚢、強膜等の観察)と後眼観察(例えば、網膜観察)とを切り替えて行う機能を備えた眼科用顕微鏡に関し、特に、対物レンズと被検眼との位置関係を変動させずに前眼部観察及び後眼部観察ができる眼科用顕微鏡に関する。
また、本発明は、眼科用顕微鏡の観察光学系にOCT測定光学系(OCT:Optical Coherence Tomography)を付加するためのOCT機能拡張ユニットに関し、OCT機能拡張ユニットを付加することで、対物レンズと被検眼との位置関係を変動させずに前眼部観察も後眼部観察との切り替えができるOCT機能拡張ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科用顕微鏡は、患者の被検眼を照明光学系により照明し、レンズ等からなる観察光学系により被検眼を拡大して観察することができる医療用又は検査用の機器である。
眼科用顕微鏡には、前眼部(例えば角膜、前嚢、強膜等)を観察する機能と、後眼部(例えば網膜)を観察する機能とを備えるものがある。
この種の眼科用顕微鏡では、前眼部観察に際しては
図16(A)に示すように、観察光学系の合焦点70に被検眼の前眼部が位置するように、対物レンズ71と被検眼72とを相対配置する。
一方、後眼部観察に際しては
図16(B)に示すように、対物レンズ71と被検眼72との相対位置を両者間距離が長くなるように変更するとともに、被検眼72と合焦点70との間に前置レンズ74を配置する。この前置レンズは、被検眼72の水晶体721を介して網膜722に合焦点が位置するように特性及び配置が選ばれる。
なお、
図16(A),(B)では、右側観察光学系の光軸及び左側観察光学系の光軸をO-R,O-Lで示してある。
【0003】
また、OCT機能が組み込まれた眼科用顕微鏡も種々知られている。
図17(特許文献1の
図1を引用した図面)に示されるように、眼科用顕微鏡は、左眼用観察光学系の光軸と右眼用観察光学系の光軸をそれぞれ透過させる左右に対となるレンズ群130,140,150,170,180からなる観察光学系と、左眼用観察光学系の光軸と右眼用観察光学系の光軸が共通して透過する一つの対物レンズ110と、OCT測定光学系200,250,450,460,470と、照明光学系310,320,330を有している。OCT測定光学系においては、OCT光源200からの出力光が、光ファイバ250を通過して出射され、2枚の走査鏡450,460により方向を制御された後、ビームコンバイナ340において照明光学系からの照明光と合流して、ビームスプリッタ120で反射され、被検眼1000に入射している。
図17に示した眼科用顕微鏡では、被検眼の網膜や角膜、前嚢、強膜等の断層像を得ることが可能となり、組織の表面だけでなく内部の状態も観察することが可能であり、これにより眼の疾患の診断精度を高め、また、眼科手術の成功率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、
図17に示したような従来の眼科用顕微鏡では、網膜を観察したり網膜のOCT断層像を取得するときと、角膜、前嚢、強膜等を観察したり角膜、前嚢、強膜等のOCT断層像を取得するときとでは、眼科用顕微鏡と被検眼との距離を変更しなければならず、検診,治療等の効率が低下するなどの問題が生じる。
そこで、本発明は、前記従来の状況に鑑み、対物レンズと被検眼との位置関係を変動させずに、前眼部及び後眼部についての観察及び断層像の取得ができる眼科用顕微鏡を提供することを目的とする。
また、既存仕様の眼科用顕微鏡に、対物レンズと被検眼との位置関係を変動させずに、前眼部及び後眼部についての観察及び断層像の取得ができる機能を組み込むことができる機能拡張ユニットを提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本願の発明者らは鋭意研究した結果、眼科用顕微鏡において、前眼部(例えば角膜、前嚢、強膜等)を観察するときと後眼部(例えば網膜)を検出するときとで、観察光学系の焦点位置を光軸に沿って変化させることで、眼科用顕微鏡と被検眼の位置を変動させることなく、前眼部の観察と後眼部との観察を行うことができるとの知見のもと本発明をなすに到った。
また、既存仕様の眼科用顕微鏡にOCT測定光学系を着脱可能にユニット化するに際して、観察光学系の焦点位置を光軸に沿って変化させる機能を当該ユニットに搭載することで、眼科用顕微鏡と被検眼の位置を変動させることなく、前眼部の観察と後眼部の断層像の取得を行ことができるOCT測定ができる眼科用顕微鏡を提供できるとの知見のもと機能拡張ユニットの発明をなすに至った。
【0007】
すなわち、本発明の眼科用顕微鏡は、以下を要旨とする。
(1) 被検眼について前眼部観察(例えば、角膜、前嚢、強膜等の観察)と後眼部観察(例えば、網膜観察)とを切り替えて行う機能を備えた眼科用顕微鏡において、
前記被検眼よりも手前に第1の合焦点を有する観察光学系と、
前記観察光学系における対物レンズの前記被検眼側(対物レンズと被検眼との間で、前記合焦点よりも前記対物レンズ側)又は前記被検眼とは反対側の位置にセットでき、または当該位置からリリースできるレンズであって、セットしたときの合焦点を前記被検眼の前眼部位置である第2の合焦点に設定する対物補助レンズと、
前記第1の合焦点よりも前記被検眼側の位置(前記第1の合焦点と前記被検眼との間の位置)にセットでき、または当該位置からリリースできるレンズであって、セットしたときの前記被検眼の水晶体(人工水晶体を含む)を介した合焦点を前記被検眼の後眼部位置である第3の合焦点に設定する前置レンズと、
を備え、
前記前眼部観察に際し、前記対物レンズと前記被検眼との位置関係を変更することなく前記対物補助レンズがセットされかつ前記前置レンズがリリースされ、
前記後眼部観察に際し、前記対物レンズと前記被検眼との位置関係を変更することなく前記前置レンズがセットされかつ前記対物補助レンズがリリースされる、
ことを特徴とする眼科用顕微鏡。
(2) さらにOCT測定光学系を有し、前記OCT測定光学系はOCT測定光学系対物レンズを有することを特徴とする、(1)に記載の眼科用顕微鏡。
(3) 前記OCT測定光学系は、さらに
OCT光源からの光を第1の光軸方向に導光する第1光学部材と、
前記第1の光軸方向に導光された光を前記第1の光軸方向に略直交する第2の光軸方向に導光する第1反射部材と、
前記第2の光軸方向に導光された光をリレーする第2光学部材と、
前記第2光学部材によりリレーされた光を前記第2の光軸方向に略直交する第3の光軸方向に導光する第2反射部材と、
を有し、
前記OCT測定光学系対物レンズは、前記第3の光軸方向上に配置され、前記第3の光軸方向に導光された光を前記被検眼の所定箇所に照射する
ことを特徴とする(2)に記載の眼科用顕微鏡。
(4) 前記観察光学系は、円形レンズの一部が(光軸に平行な切断面を有するように)切除された形状の前記対物レンズを有し、
前記OCT測定光学系は、前記対物レンズの前記切除された部分に配置された前記OCT測定光学系対物レンズを有するとともに、前記被検眼よりも手前に第1の合焦点を持ち、かつ、OCT測定光の光路が前記対物補助レンズを通過するように構成され、
前記対物補助レンズがセットされ前記前置レンズがリリースされたときに、合焦点が前記被検眼の前眼部位置である第2の合焦点に設定されて前記前眼部のOCT測定が行われ、
前記前置レンズがセットされ前記対物補助レンズがリリースされたときに、合焦点が前記被検眼の後眼部位置である第3の合焦点に設定されて前記後眼部のOCT測定が行われる、
ことを特徴とする(2)又は(3)に記載の眼科用顕微鏡。
(5) 前記対物補助レンズがセットされたときに前記前置レンズがリリースされ、前記前置レンズがセットされたときに前記対物補助レンズがリリースされる機構を備えた(1)~(4)のいずれかに記載の眼科用顕微鏡。
(6) 前記対物補助レンズが凹レンズである、(1)~(5)のいずれか1項に記載の眼科用顕微鏡。
(7) 前記前置レンズを複数種類有し、それぞれの前記前置レンズに対応した複数種類の前記対物補助レンズを有する、(1)~(6)のいずれか1項に記載の眼科用顕微鏡。
(8) 観察光学系の光路上にセットし又はリリースできる前置レンズを有することにより、被検眼について前眼部観察と後眼部観察の切り替えを行うことができる眼科用顕微鏡本体に、OCT測定光学系を付加するOCT機能拡張ユニットにおいて、
前記顕微鏡本体の観察光学系の対物レンズを交換するための交換用対物レンズを有し、
前記交換用対物レンズは、円形レンズの一部が切除された形状を有しており、
前記交換用対物レンズの前記切除された部分にOCT測定光学系対物レンズを有しており、
前記対物レンズが前記交換用対物レンズに交換された前記観察光学系と、前記OCT測定光学系は、前記被検眼よりも手前に第1合焦点を有し、
前記交換用対物レンズと前記OCT測定光学系対物レンズよりも前記被検眼側又は前記被検眼とは反対側の位置にセットでき、または当該位置からリリースできるレンズであって、セットしたときの合焦点を前記被検眼の前眼部位置である第2の合焦点に設定する対物補助レンズを有し、
前記第1の合焦点よりも前記被検眼側の位置に前記前置レンズをセットしたときに、前記被検眼の水晶体を介した合焦点が前記被検眼の後眼部位置である第3の合焦点に設定され、
前記前眼部観察に際し、前記対物補助レンズがセットされかつ前記前置レンズがリリースされ、
前記後眼部観察に際し、前記前置レンズがセットされかつ前記対物補助レンズがリリースされることにより、
前記対物レンズと前記被検眼との位置関係を変更することなく、前記観察光学系と前記OCT測定光学系による前記前眼部観察と前記後眼部観察の切り替えを行うことができることを特徴とするOCT機能拡張ユニット。
(9) 前記OCT測定光学系が、
OCT光源からの光を第1の光軸方向に導光する第1光学部材と、
前記第1の光軸方向に導光された光を前記第1の光軸方向に略直交する第2の光軸方向に導光する第1反射部材と、
前記第2の光軸方向に導光された光をリレーする第2光学部材と、
前記第2光学部材によりリレーされた光を前記第2の光軸方向に略直交する第3の光軸方向に導光する第2反射部材と、
を有しており、
前記OCT測定光学系対物レンズは、前記第3の光軸方向上に配置され、前記第3の光軸方向に導光された光を前記被検眼の所定箇所に照射する
ことを特徴とする(7)に記載のOCT機能拡張ユニット。
【発明の効果】
【0008】
対物レンズと被検眼との位置関係を変動させずに、前眼部及び後眼部についての観察及び断層像の取得ができる。
OCT機能拡張ユニットにより、既存仕様の眼科用顕微鏡に、対物レンズと被検眼との位置関係を変動させずに、前眼部及び後眼部についての観察及び断層像の取得ができる機能を組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】前眼部を観察する際のOCT測定光学系を含まない本発明の第1の実施形態の眼科用顕微鏡を示す側面模式図である。
【
図2】前眼部を観察する際のOCT測定光学系を含まない本発明の第1の実施形態の眼科用顕微鏡を示す正面模式図である。
【
図3】
図3(A)は前眼部を観察する際の
図1及び
図2に示した眼科用顕微鏡の観察光学系(対物補助レンズが観察用対物レンズの被検眼側に設けられる観察光学系)を示す模式図であり、
図3(B)は対物補助レンズが観察用対物レンズの被検眼側とは反対側に設けられる観察光学系を示す模式図である。
【
図4】前眼部を観察する際のOCT測定光学系を含まない本発明の第1の実施形態の眼科用顕微鏡を示す側面模式図である。
【
図5】前眼部を観察する際のOCT測定光学系を含まない本発明の第1の実施形態の眼科用顕微鏡を示す正面模式図である。
【
図6】
図6(A)は後眼部を観察する際の
図1及び
図2に示した眼科用顕微鏡の観察光学系(対物補助レンズが観察用対物レンズの被検眼側に設けられる観察光学系)を示す模式図であり、
図6(B)は同じく対物補助レンズが観察用対物レンズの被検眼側とは反対側に設けられる観察光学系を示す模式図である。
【
図7】前眼部を観察する際のOCT光学系を含む本発明の第2の実施形態の眼科用顕微鏡を示す側面模式図である。
【
図8】前眼部を観察する際のOCT測定光学系を含む本発明の第2の実施形態の眼科用顕微鏡を示す正面模式図である。
【
図9】後眼部を観察する際のOCT測定光学系を含む本発明の第2の実施形態の眼科用顕微鏡を示す正面模式図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態の眼科顕微鏡のOCT測定光学系を示す模式図であり、
図10(A)は前眼部を観察する際のOCT測定光学系を示す模式図、
図10(B)は後眼部を観察する際のOCT測定光学系を示す模式図である。
【
図14】本発明の第2の実施形態の眼科顕微鏡で使用する、OCT装置の説明図である。
【
図15】本発明の対物レンズの設計態様を示す説明図である。
【
図16】
図16(A)は眼科用顕微鏡により前眼部を観察するときの観察光学系を示す図、
図16(B)は眼科用顕微鏡により後眼部を観察するときの観察光学系を示す図である。
【
図17】OCT機能を搭載した眼科用顕微鏡の従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1. 本発明の眼科用顕微鏡
本発明の眼科顕微鏡において、観察光学系とは、照明光学系によって照明された被検眼から反射・散乱された戻り光により、被検眼を観察することを可能とするレンズ,プリズム等の光学素子を含んで構成される。本発明において、観察光学系は、左眼用観察光学系と右眼用観察光学系を有することができ、左右の観察光学系により得られる像に視差を生じさせた場合には、双眼視により立体的に観察することも可能となる。
また、本発明の観察光学系は、アイピースや接眼レンズ等を通じて観察者の肉眼により被検眼を直接観察できるものであってもよく、また、撮像素子(CCD)等により被検眼からの反射光等を受光してディプレイに表示できるものであってもよく、あるいは、肉眼により直接観察できかつディスプレイに表示できるものであってもよい。
左眼用観察光学系と右眼用観察光学系からなる観察光学系では、左眼用観察光学系の光軸と右眼用観察光学系の光軸が共通して透過する対物レンズを含む。
本発明において、対物レンズは、たとえば眼科用顕微鏡本体において、被検眼の側に組み込まれたレンズである。
前置レンズ(ルーペ)は、対物レンズと被検眼との間(被検眼の近く)に挿脱自在に挿入して使用されるもので、本発明では対物レンズとは称さない。
なお、照明光学系は、被検眼を照明する光学素子を含んで構成される。照明光学系は、自然光を被検眼に導くものであってもよいが、通常は、照明用光源を含み当該照明用光源からの光を被検眼に導くように構成される。照明光学系は、上述した観察光学系に含まれている対物レンズを、含むように構成できる。
【0011】
本発明の顕微鏡光学系は、OCT装置に設けられたOCT光源からの光を取り込むと共に、当該光が照射された被検眼からの戻り光を前記OCT装置に送り返すコリメータ(OCTインタフェース用光学部材)を含むことができる。この場合には、顕微鏡光学系は、OCT測定光学系、またはさらにOCT参照光光学系を含むことができるし、さらにOCT光源を組み込みこともできる。
本発明の顕微鏡光学系では、観察光学系の対物レンズは一部が除去することができ、この除去された部分にOCT測定光学系の対物レンズが設けられる。
このような構成により、本発明の顕微鏡光学系では、OCT測定光学系は、観察光学系から独立している。したがって、本発明の顕微鏡光学系の光学設計に際しては、観察光学系とOCT測定光学系との相互影響を考慮する必要がない。
これにより、本発明の顕微鏡光学系は、光学設計の自由度が高まるという効果を奏する。
例えば、観察光学系の対物レンズとOCT測定光学系対物レンズとを、別々に位置制御することにより、観察光学系の焦点とOCT測定光学系の焦点を、独立して調整できる光学設計が可能となる。
なお、OCT測定光学系の測定光光路にXY走査機構やZ走査機構を搭載することができる。これらの機構は、たとえばMEMSにより作成することができる。
また、OCT測定光学系を1ユニットとして、観察光学系に対して着脱可能に組み込むことができる。なお、顕微鏡光学系に複数のOCT測定光学系を組み込むことで、観測対象のより詳細な三次元断層像を得ることができる光学設計も可能となる。
本発明において、観察光学系、照明光学系、OCT測定光学系に使用される光学素子として、例えば、レンズ、プリズム、ミラー、光フィルタ、絞り、回折格子、偏光素子等を用いることができる。
【0012】
本発明において、眼科用顕微鏡とは、被検眼を拡大して目視観察することができる医療用又は検査用の機器であり、ヒト用のみならず動物用のものも含む。
「眼科用顕微鏡」には、これらに限定されるわけではないが、例えば、眼底カメラ、スリットランプ、眼科手術用顕微鏡等が含まれる。
【0013】
2. 第1の実施形態
以下、本発明の実施形態に係る眼科用顕微鏡(以下、単に「顕微鏡」と言う)の一例を、図面を参照しながら説明する。
図1は、観察機能を持つがOCT機能(断層撮影機能)を持たない顕微鏡1の側面模式図であり、
図2は同じく正面模式図であり、それぞれ被検眼81の前眼部(例えば角膜、前嚢、強膜等)を観察する様子を示している。また、
図3(A)に、
図1及び
図2の顕微鏡の観察光学系400(対物補助レンズが観察用対物レンズの被検眼側に設けられる観察光学系)の模式図を示す。
図1に示すように、顕微鏡1は、観察光学系400のほか照明光学系300(
図2には示していない)を備えている。
観察光学系400は、観察対象(
図1及び
図2では被検眼81)の網膜を観察することができる。
図1に参照されるように、照明光学系300は、被検眼81の観察すべき部分を照明することができる。
図1及び
図2では、観察光学系は、被検眼81よりも手前に第1の合焦点U1を有している。
【0014】
図2に明示されるように、観察光学系400は、右眼用観察光学系400Rと左眼用観察光学系400Lを有している。なお、
図1では、右眼用観察光学系400Rについては全構成が示され、左眼用観察光学系400Lについては右眼用観察光学系400Rと共用される対物レンズ2のみが示されている。
また、
図2に明示されるように、右眼用観察光学系400Rの光軸O-400Rと左眼用観察光学系400Lの光軸O-400Lは、それぞれ対物レンズ2を通過している。
本実施形態では、照明光学系300と、観察光学系400は、顕微鏡本体6に収納されている。
図1及び
図2においては、顕微鏡本体6を一点鎖線で示す。
【0015】
図1に示した照明光学系300は、照明光源9、光ファイバ301、出射光絞り302、コンデンサレンズ303、照明野絞り304、コリメートレンズ305及び反射ミラー306を含んで構成されている。照明光学系300の光軸をO-300で示す。
図1に示されるように照明光源9は、本実施形態では顕微鏡本体6の外部に設けられている。照明光源9には光ファイバ301の一端が接続されている。光ファイバ301の他端は、顕微鏡本体6の出射光絞り302に臨む位置に配置されている。照明光源9から出射された照明光は、光ファイバ301により導光され、出射光絞り302を介してコンデンサレンズ303に入射する。
出射光絞り302は、光ファイバ301の出射口の一部領域を遮断するように作用する。出射光絞り302による遮断領域が変更されると、照明光の出射領域が変更される。それにより、照明光による照射角度、つまり被検眼81に対する照明光の入射方向と対物レンズ2の光軸とがなす角度を変更することができる。
【0016】
照明野絞り304は、対物レンズ2の第1の合焦点U1と光学的に共役な位置(×の位置)に設けられている。コリメートレンズ305は、照明野絞り304を通過した照明光を平行光束にする。反射ミラー306は、コリメートレンズ305によって平行光束にされた照明光を観察用対物レンズ2に向けて反射する。反射ミラー306により反射された光は、対物レンズ2を透過して、被検眼81に照射される。
被検眼81に照射された照明光は、網膜の組織で反射・散乱される。その反射・散乱した戻り光(「観察光」とも呼ばれる)は、対物レンズ2を透過して、観察光学系400に入射する。
【0017】
観察光学系400は、照明光学系300により照明されている被検眼81を、対物レンズ2を介して観察するために用いられる。
図1及び
図2に示されるように、変倍レンズ系401(レンズ401a,401b,401c)、ビームスプリッタ402(テレビカメラ表示用の画像情報を取得するためのビームスプリッタ)、結像レンズ403、像正立プリズム404、眼幅調整プリズム405、視野絞り406、及び接眼レンズ407を含んで構成されている。観察光学系400の光軸を、O-400で示す。
【0018】
図2に示されるように、右眼用観察光学系400Rのビームスプリッタ402は、被検眼81から右眼用観察光学系に沿って導光された観察光の一部を分離して撮影光学系1100に導く。撮影光学系1100は、結像レンズ1101、反射ミラー1102、及びテレビカメラ1103を含んで構成されている。テレビカメラ1103が取得した画像情報は図示しないモニターに送られて表示される。
【0019】
図1及び
図2に示されるように、像正立プリズム404は、倒像を正立像に変換する。眼幅調整プリズム405は、観察者の眼幅(左眼と右眼の間の距離)に応じて左右の観察光路の間の距離を調整するための光学素子である。視野絞り406は、観察光の断面における周辺領域を遮断して観察者の視野を制限するものである。視野絞り406は、対物レンズ2の第1の合焦点U1と共役な位置(×の位置)に設けられている。
右眼用観察光学系400R,左眼用観察光学系400Lは、光路から挿脱可能に構成されたステレオバリエータを含んで構成されてもよい。ステレオバリエータは、左右の変倍レンズ系401によってそれぞれ案内される左右の観察光学系の光軸O-400L,O-400Rの相対的位置を変更するための光軸位置変更素子である。ステレオバリエータは、例えば、観察光路に対して観察者側に設けられた退避位置に退避される。
【0020】
図1及び
図2の顕微鏡1では、観察光学系は、対物レンズ2と被検眼81との間にレンズが存在しない場合には、被検眼81よりも手前に第1の合焦点(U1で示す)を有している。
顕微鏡1では、対物レンズ2の被検眼81側に対物補助レンズ82が備えられている。
対物補助レンズ82は、第1の合焦点U1と対物レンズ2との間の対物レンズ2寄りの位置にセットされ、又は当該位置からリリースできる。対物補助レンズ82は、は、セットしたときの合焦点が被検眼の前眼部位置である第2の合焦点(U2)となるように選ばれている。
なお、
図3(A)では、被検眼81の前眼部を観察する際の観察光学系において対物補助レンズ82が対物レンズ2の被検眼81側に設けられる場合を示している。本発明では、
図3(B)に示すように、対物補助レンズ82を対物レンズ2の被検眼81側とは反対側に設け被検眼81の前眼部を観察することもできる。
【0021】
図4は、
図1及び
図2で説明した装置において被検眼81の後眼部(例えば網膜)を観察する様子を示す
図1に対応する側面図である。また、
図5は、同じく
図2に対応する正面図であり、
図6(A)は同じく
図3(A)に対応する模式図である。
図4及び
図5において、前置レンズ14は、第1の合焦点U1よりも被検眼81側の位置にセットされており、セットされたときの被検眼81の水晶体を介した合焦点(第3の合焦点U3)は、被検眼81の網膜の位置(後眼部位置)に設定されている。
なお、対物補助レンズ82を対物レンズ2の被検眼81側とは反対側に設けた場合には(
図3(B)参照)、被検眼81の後眼部を観察する場合には、
図6(B)に示すように対物補助レンズ82をリリースする必要がある。
【0022】
3. 第2の実施形態
以下、OCT機能(断層撮影機能)を持つ眼科用顕微鏡1の実施形態を説明する。
OCT測定光学系は、観察光学系と照明光学系とを有する眼科用顕微鏡に、拡張機能として付加的に組み込むことができると好ましい。このように付加的に組み込むためには、OCT測定光学系の光路を2回折り曲げることで、顕微鏡が持つ本来の機能に適合させてコンパクトに組み込むことができることを本発明者らは見出した。
【0023】
すなわち、本発明の眼科用顕微鏡においては、さらにOCT測定光学系を有し、
OCT測定光学系が、
OCT光源からの光を第1の光軸方向に導光する第1光学部材と、
第1の光軸方向に導光された光を第1の光軸方向に略直交する第2の光軸方向に導光する第1反射部材と、
第2の光軸方向に導光された光をリレーする第2光学部材と、
第2光学部材によりリレーされた光を第2の光軸方向に略直交する第3の光軸方向に導光する第2反射部材とを有しており、
第3の光軸方向に導光された光を被検眼の所定箇所に照射できるように、OCT測定光学系対物レンズを、第3の光軸上に配置することが好ましい。
このような光学構成とすることにより、眼科用顕微鏡が持つ本来の機能に適合させてコンパクトにOCT測定光学系を組み込むことができる。
【0024】
以下、光路が2回折り曲げられたOCT測定光学系を有する本発明の眼科用顕微鏡の実施形態の例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図7~14は、本発明の眼科用顕微鏡の他の一例である第2の実施形態を模式的に示す図面である。
【0025】
図7は眼科用顕微鏡1の側面模式図であり、
図8は前眼部(例えば角膜、前嚢、強膜等)を観察する場合の正面模式図である。
図9は後眼部(例えば網膜)を観察する場合の眼科用顕微鏡を示す正面模式図である。
図7,
図8及び
図9に示すように、眼科用顕微鏡1にはOCT装置5が併設されている。
眼科用顕微鏡1は、照明光学系300(
図8及び
図9には示していない)と観察光学系400とOCT測定光学系500とを備えている。
観察光学系400は、観察対象(
図7,
図8及び
図9では被検眼81)の所定箇所を観察することができる。
図7に参照されるように、照明光学系300は、被検眼81の観察すべき部分を照明することができる。
【0026】
眼科用顕微鏡1に併設されたOCT装置5は、被検眼81の断層画像を取得することができる。OCT測定光学系500は、OCT装置5の一部として眼科用顕微鏡1に組み込まれている。OCT測定光学系500、前置レンズ14及び被検眼81の反射面(角膜、網膜等)により、測定光の往復導光路が構成される。
図8及び
図9に明示されるように、観察光学系400は、右眼用観察光学系400Rと左眼用観察光学系400Lを有している。なお、
図7では、右眼用観察光学系400Rについては全構成が示され、左眼用観察光学系400Lについては右眼用観察光学系400Rと共用される対物レンズ2のみが示されている。
また、
図8及び
図9に明示されるように、右眼用観察光学系400Rの光軸O-400Rと左眼用観察光学系400Lの光軸O-400Lは、それぞれ対物レンズ2を通過している。
本実施形態では、照明光学系300と、観察光学系400は、眼科用顕微鏡本体6に収納されている。また、OCT測定光学系500は、OCT機能拡張ユニット7に収納されている。
図7,
図8及び
図9においては、眼科用顕微鏡本体6を一点鎖線で示し、OCT機能拡張ユニット7を破線で示す。
OCT機能拡張ユニット7は、眼科用顕微鏡本体6に対し、図示しないジョイント部により、取り外し/取り付けが可能に連結されている。
【0027】
図7,
図8及び
図9に示されるように、OCT装置5は、OCTユニット10及びOCT機能拡張ユニット7からなる。
OCT機能拡張ユニット7には、OCT測定光学系500が収容されている。
図10(A)に
図8の構成時のOCT測定光学系500の斜視図を示し、
図10(B)に
図9の構成時の斜視図を示す。
図11はOCT測定光学系500の平面図、
図12は同じく側面図、
図13は同じく正面図である。なお、
図11及び
図13では、コリメートレンズ502、走査機能部503及び第1光学部材510(後述する)は図示していない。
図10及び
図12において、OCT測定光学系500は、コリメートレンズ502、走査機能部503、第1光学部材510、第1反射部材511、第2光学部材512、第2反射部材513、及びOCT測定光学系対物レンズ507を含んで構成されている。
【0028】
走査機能部503はガルバノミラー503a,503bを有する二次元走査機構である。走査機能部503は、眼科用顕微鏡本体6の背面側(観測者から遠い側)に設けられている。
第1光学部材510は、OCT結像レンズであり、走査機能部503により走査された光を第1の光軸O-501の方向に導光させる。第1の光軸O-501は、眼科用顕微鏡本体6を正面から見たときに、眼科用顕微鏡本体6の右の外寄りの位置において奥から手前に形成されており、走査機能部503により走査された光は、第1の光軸O-501を奥から手前側に向けて導光する。
【0029】
図10,
図11,
図12及び
図13に示すように、第1の光軸O-501を導光する光は第1反射部材511により、第1の光軸O-501の方向に直交する第2の光軸O-502の方向に導光させる。
本実施形態では、
図8及び
図9に参照されるように、第2の光軸O-502は、眼科用顕微鏡本体6の右の外側から内側に向くように形成されている。
第2の光軸O-502には第2光学部材512が配置されており、第2光学部材512を通過した光は第2反射部材513により下向きに(第2の光軸O-502に略直交する方向に)反射される。この反射光路は、第3の光軸方向O-503で示されている。
【0030】
本実施形態においては、対物レンズ2は、
図7に示されるように、光軸O-400に略平行な切断面を有するように切り欠かれている。
本実施形態では、この切り欠き部分に、OCT測定光学系対物レンズ507が収容されている。
第3の光軸方向O-503に導光された光は、OCT測定光学系対物レンズ507により、被検眼81側の所定位置にて合焦される。
本実施例では、
図7,
図8及び
図9に示されるように、対物レンズ2の前側焦点位置(第1の合焦点U1)は、被検眼81の手前にあり、対物レンズ2の第1の合焦点U1側に対物補助レンズ82がセットされるときは、前置レンズ14がリリースされ(
図7,
図8及び
図10(A)参照)、逆に対物レンズ2の第1の合焦点U1側で対物補助レンズ82がリリースされるときは、前置レンズ14がセットされる(
図9及び
図10(B)参照)。
【0031】
上記したようにOCT測定光学系500の光軸O-503は、OCT測定光学系対物レンズ507を通っており、OCT測定光学系500の光軸O-503は、観察光学系400の光軸O-400と離れている。
したがって、OCT測定光学系500と観察光学系400とは相互に独立している。
【0032】
図14は、本実施形態の顕微鏡1で用いられるOCT本体ユニット10の光学構成を模式的に示す図面である。
図14に示されるように、OCT本体ユニット10は、OCT光源ユニット1001から出射された光L0を測定光LSと参照光LRに分割し、別の光路を経た測定光LSと参照光LRの干渉を検出する干渉計を構成している。
OCT光源ユニット1001は、一般的なスウェプトソースタイプのOCT装置と同様に、出射光の波長を走査(掃引)可能な波長走査型(波長掃引型)光源を含んで構成される。OCT光源ユニット1001は、人の眼では視認できない近赤外の波長において、出力波長を時間的に変化させる。OCT光源ユニット1001から出力された光を符号L0で示す。
【0033】
OCT光源ユニット1001から出力された光L0は、光ファイバ1002により偏波コントローラ1003に導かれてその偏光状態が調整される。偏波コントローラ1003は、たとえばループ状にされた光ファイバ1002に対して外部から応力を与えることで、光ファイバ1002内を導かれる光L0の偏光状態を調整する。
偏波コントローラ1003により偏光状態が調整された光L0は、光ファイバ1004によりファイバカプラ1005に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
【0034】
図14に示されるように、参照光LRは、光ファイバ1006によりコリメータ1007に導かれて平行光束となる。平行光束となった参照光LRは、光路長補正部材1008及び分散補償部材1009を経由し、コーナーキューブ1010に導かれる。光路長補正部材1008は、参照光LRと測定光LSの光路長(光学距離)を合わせるための遅延手段として作用する。分散補償部材1009は、参照光LRと測定光LSの分散特性を合わせるための分散補償手段として作用する。
コーナーキューブ1010は、コリメータ1007により平行光束となった参照光LRの進行方向を逆方向に折り返す。コーナーキューブ1010に入射する参照光LRの光路と、コーナーキューブ1010から出射する参照光LRの光路とは平行である。また、コーナーキューブ1010は、参照光LRの入射光路及び出射光路に沿う方向に移動可能とされている。この移動により参照光LRの光路(参照光路)の長さが変更される。
【0035】
図14に示されるように、コーナーキューブ1010を経由した参照光LRは、分散補償部材1009及び光路長補正部材1008を経由し、コリメータ1011によって平行光束から集束光束に変換されて光ファイバ1012に入射し、偏波コントローラ1013に導かれて参照光LRの偏光状態が調整される。
偏波コントローラ1013は、例えば、偏波コントローラ1003と同様の構成を有する。偏波コントローラ1013により偏光状態が調整された参照光LRは、光ファイバ1014によりアッテネータ1015に導かれて、演算制御ユニット12の制御の下で光量が調整される。アッテネータ1015により光量が調整された参照光LRは、光ファイバ1016によりファイバカプラ1017に導かれる。
【0036】
ファイバカプラ1005により生成された測定光LSは、光ファイバ501によりコリメートレンズ502に導かれる。
図10(A),(B)に参照されるように、コリメートレンズ502に入射した測定光は、ガルバノミラー503a,503b、第1光学部材510、第1反射部材511、第2光学部材512、及び第2反射部材513を経由して、被検眼81に照射される。測定光は、被検眼81の様々な深さ位置において反射・散乱される。被検眼81により測定光の後方散乱光は、往路と同じ経路を逆向きに進行して、
図14に示されるように、ファイバカプラ1005に導かれ、光ファイバ1018を経由してファイバカプラ1017に到達する。
【0037】
ファイバカプラ1017は、光ファイバ1018を介して入射された測定光LSと、光ファイバ1016を介して入射された参照光(LR)とを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。ファイバカプラ1017は、所定の分岐比(例えば50:50)で、測定光LSと参照光LRとの干渉光を分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。ファイバカプラ1017から出射した一対の干渉光LCは、それぞれ2つの光ファイバ1019,1020により検出器1021に導かれる。
【0038】
検出器1021は、例えば一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを有し、これらにより検出結果の差分を出力するバランスドフォトダイオード(Balanced Photo Diode:以下、「BPD」という)である。検出器1021は、その検出結果(検出信号)を演算制御ユニット12に送る。演算制御ユニット12は、例えば、一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、検出器1021により得られた検出結果に基づくスペクトル分布にフーリエ変換等を施すことで断面像を形成する。演算制御ユニット12は、形成された画像を表示部13に表示させる。
【0039】
この実施形態では、マイケルソン型の干渉計を採用しているが、例えば、マッハツェンダー型等の任意のタイプの干渉計を適用することができる。
【0040】
4.対物レンズの形状
図15は、観察光学系用の対物レンズ2及びOCT測定光学系対物レンズ507の他の具体例を示す説明図である。
図15(A)は円形の凸レンズを光軸に平行な曲面(平面視形状が部分円)で切り取った観察光学系用の対物レンズ2および切り取った部分に配置された円形のOCT測定光学系対物レンズ507(凸レンズ)を示す図であり、
図15(B)は円形の凸レンズを光軸に平行な平面で切り取った平面視が矩形の観察光学系用の対物レンズ2および切り取った部分に配置された平面視が矩形のOCT測定光学系対物レンズ507(凸レンズ)を示す図である。
【0041】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は、全て本発明の適用範囲である。
【符号の説明】
【0042】
図1~15で使用した符号が指し示すものは、以下のとおりである。
1 :眼科用顕微鏡
2 :対物レンズ
5 :OCT装置
6 :眼科用顕微鏡本体
7 :OCT機能拡張ユニット
9 :照明光源
10 :OCTユニット
12 :演算制御ユニット
13 :表示部
14 :前置レンズ
81 :被検眼
82 :対物補助レンズ
300 :照明光学系
301 :光ファイバ
302 :出射光絞り
303 :コンデンサレンズ
304 :照明野絞り
305 :コリメートレンズ
306 :反射ミラー
400 :観察光学系
400L :左眼用観察光学系
400R :右眼用観察光学系
401 :変倍レンズ系
402 :ビームスプリッタ
403 :結像レンズ
404 :像正立プリズム
405 :眼幅調整プリズム
406 :視野絞り
407 :接眼レンズ
500 :OCT測定光学系
501 :光ファイバ
502 :コリメートレンズ
503 :走査機能部
503a :ガルバノミラー
503b :ガルバノミラー
507 :OCT測定光学系対物レンズ
510 :第1光学部材
511 :第1反射部材
512 :第2光学部材
513 :第2反射部材
1001 :OCT光源ユニット
1002 :光ファイバ
1003 :偏波コントローラ
1004 :光ファイバ
1005 :ファイバカプラ
1006 :光ファイバ
1007 :コリメータ
1008 :光路長補正部材
1009 :分散補償部材
1010 :コーナーキューブ
1011 :コリメータ
1012 :光ファイバ
1013 :偏波コントローラ
1014 :光ファイバ
1015 :アッテネータ
1016 :光ファイバ
1017 :ファイバカプラ
1018 :光ファイバ
1019 :光ファイバ
1020 :光ファイバ
1021 :検出器
1100 :撮影光学系
1101 :結像レンズ
1102 :反射ミラー
1103 :テレビカメラ
L0 :光
LC :干渉光
LR :参照光
LS :測定光
O-300 :照明光学系の光軸
O-400 :観察光学系の光軸
O-400L :左眼用観察光学系の光軸
O-400R :右眼用観察光学系の光軸
O-500 :OCT測定光学系の光軸
O-501 :第1の光軸
O-502 :第2の光軸
O-503 :第3の光軸
U1 :第1の合焦点
U2 :第2の合焦点
U3 :第3の合焦点